情報通信技術は電子商取引,電子政府,在宅勤務,遠隔医療,遠隔教育の実現・普及など,産業のみならず日常生活までの幅広い社会経済活動に大きな変革をもたらすものであり,国民が安心して安全な生活を送るための重要な基盤となりつつあります。また,情報通信分野における国際的に優位にある技術に中長期的な観点から重点的に投資を行うことは,科学技術や学術,産業の国際競争力の強化につながります。
平成18年3月に策定された第3期科学技術基本計画において,情報通信分野はライフサイエンス分野,環境分野,ナノテクノロジー・材料分野と並んで,特に重点的に研究開発を推進すべき「重点推進4分野」と位置付けられています。また,18年3月に総合科学技術会議が策定した「分野別推進戦略」では,国家基幹技術である「科学技術を牽引する世界最高水準の次世代スーパーコンピュータ」や「次世代を担う高度IT人材の育成」などの戦略重点科学技術が選定されました。これらは,情報通信分野の重要な研究開発課題を解決する技術の中から,これからの5年間において集中投資して行くべき分野とされています。さらに,内閣官房の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)では,18年1月に「IT新改革戦略」を策定しました。この戦略では,「いつでも,どこでも,誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」を目指しています。これに基づく「重点計画2006」では,我が国が世界をリードする分野の競争力維持や次世代の情報通信社会の基盤の構築などに資する戦略的な研究開発の取組を進めています。
情報通信分野の「分野別推進戦略」を受け,平成18年7月に,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会において,「情報科学技術に関する研究開発の推進方策について」を取りまとめました。これは,文部科学省として重点的に実施すべき研究開発を戦略的に取りまとめたものであり,この中では,研究開発を進める上で,次の点に対する配慮が必要とされています(参照:第2部第11章Topics 1)。
また文部科学省としては,次のような役割を果たすべきと提言されています。
文部科学省では,情報通信分野の「分野別推進戦略」や,「情報科学技術に関する研究開発の推進方策について」などに基づき,以下の施策を実施しています。
現在,数多くの研究機関に分散している「知」を効率的に結合並びに融合させる最先端学術情報基盤(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の実現に必要な技術を確立するため,以下の施策を実施しています。
世界最高水準の高度情報通信システム形成のためのかぎとなる基盤ソフトウェアを開発し,いつでもどこでもだれでも安心して参加できるIT社会を構築する「e-Society基盤ソフトウェアの総合開発」などを実施しています。
これまでは,情報通信技術をより多くの領域でより多くの人々が利用することが目標とされてきました。これからは,情報通信技術が社会により広く浸透したユビキタスネット(注)社会において,情報通信技術による社会的課題解決を可能とすることが求められてきます。このため,以下の施策を実施しています。
大学間や産学の壁を越えて潜在力を結集し,教育内容・体制を強化することにより,世界最高水準のソフトウェア技術者として求められる専門的技能を有するとともに,社会情勢の変化などに先見性を持って柔軟に対処し,企業等において先導的役割を担う人材の育成を行う「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」を推進しています(参照:第2部第3章Topics 4)。