第2節 学術の振興

2.学術研究の推進方策

 第3期科学技術基本計画においては,研究者の自由な発想に基づく研究(学術研究)と,政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究について,それぞれ,意義を踏まえて推進することとしています。文部科学省では,この第3期科学技術基本計画や科学技術・学術審議会における審議などを踏まえて,新しい知を生み続ける重厚な知的蓄積の形成を目指し,幅広い分野の多様な学術研究を長期的視点の下で推進しています。国立大学の法人化など近年の学術研究を取り巻く大きな状況変化を踏まえ,具体的には,以下のような取組を行っています。

(1)基盤的経費の確実な措置と競争的資金の拡充

 国立大学法人運営費交付金などの基盤的経費を確保するとともに,科学研究費補助金をはじめとした競争的資金の拡充を図るなど多様なファンディングの拡充に努めています(参照:第2部第6章第1節第2部第7章第2節)。

(2)学術研究基盤の着実な整備の支援

 科学技術創造立国を標榜する我が国に不可欠な国家的基盤である学術研究基盤が着実に整備されるよう,国公私立大学等に対する計画的な研究施設・設備の整備・充実の支援,コンピュータやネットワーク,学術図書資料などの学術情報基盤の整備の支援,生物遺伝資源などの知的基盤の整備の支援を行っています(参照:第2部第6章第1節第2部第7章第3節)。

(3)世界的研究教育拠点の一層の整備と世界で活躍できる若手研究者の育成

 「21世紀COE(注)プログラム」によって,国公私立大学を通じて,世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援し,国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進しています。また,大学共同利用機関や国立大学の全国共同利用型の附置研究所などの研究機関を中心に,独創的・先端的な学術研究を推進するため,全国の関連研究者からのニーズにこたえながら,個々の大学が単独で維持することが難しい大型の実験・観測装置・学術資料センターの整備等への支援を行っています。例えば,宇宙の果てに挑む天文学研究,物質の究極的な構造などの解明を目指す加速器科学,地球環境問題の解決を目指す地球環境学,未来のエネルギー源を開発する核融合科学研究,宇宙の進化の謎に迫るニュートリノ研究などの世界最高水準を目指した研究を重点的に支援しています(参照:第2部第3章第1節第2部第6章第1節)。
 一方,学術研究の推進のためには,その担い手である優秀な研究者が育ち,十分に能力を発揮できる環境を整備することが重要です。文部科学省では,長期的な視点に立ち,日本学術振興会の特別研究員事業などを推進し,次代を担う創造性に富んだ優れた若手研究者の養成・確保に努めています(参照:第2部第7章第1節)。

  • (注)COE
      Center of excellence(卓越した研究拠点)

(4)その他の推進方策

1国際的に開かれた大学等づくりの推進

 国際的な研究水準を追求し,我が国に海外の優秀な研究者の「知」を結集して研究を行うため,日本学術振興会の先端研究拠点事業などにより,国内の大学などにおける研究拠点と海外拠点との間の国際的な連携を支援しています。

2学際的・学融合的研究分野の推進

 我が国全体の学術研究の発展のため,大学や大学共同利用機関において,広く国内外の研究者と連携を図りながら,従来の学問分野を超えた学際的・学融合的研究分野の様々な取組が進められています。例えば,大学共同利用機関法人では,自然環境をも視野に入れた人間文化に関する総合的研究,自然科学における分野間連携や新分野の創生を目指した取組などが行われています。また,日本学術振興会では,課題設定型の「人文・社会科学振興プロジェクト研究事業」を推進しています(参照:第2部第6章第8節)。

前のページへ