高等学校等の新学習指導要領のスタートを契機とするこれからの高等学校教育について
(全ての高等学校教育関係者の皆様へ、文部科学大臣からのメッセージ)

令和4年3月25日(金曜日)
教育

高等学校等の新学習指導要領のスタートを契機とする これからの高等学校教育について (全ての高等学校教育関係者の皆様へ、文部科学大臣からのメッセージ)

 新型コロナウイルス感染症対策と学びの保障に尽力されている教職員の皆様をはじめ、全ての関係者の方々に、改めて敬意を表します。文部科学省においては、引き続き、学校現場への支援を迅速かつ柔軟に実施してまいります。
 令和4年度は、高等学校教育にとって大きな節目となる年です。令和4年度入学生から高等学校等の新学習指導要領が年次進行で実施されます。また、「令和の日本型学校教育」の実現に向け、高等学校等の特色化・魅力化に向けた改革が本格的にスタートする年でもあります。さらに、成年年齢や裁判員等の対象年齢が18歳に引き下げられます。こうした節目の年度を迎えるにあたり、ここに改めて、生徒を主語にした高等学校教育の実現に向けて、学校関係者の皆様のご理解とご協力をお願いするものです。

高等学校等の新学習指導要領の実施について

 新学習指導要領では、これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活かし、子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成することを目指しています。このため、全ての教科等において①知識及び技能、②思考力、判断力、表現力等、③学びに向かう力、人間性等の3つの柱で再整理し、資質・能力をバランスよく育成することとしています。また、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めることや、各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立により組織的・計画的に教育活動の質を向上させること、資質・能力の3つの柱に対応した3つの観点に基づき学習評価を改善することを求めています。また、新科目「情報Ⅰ」「公共」「現代の国語」「言語文化」「理数探究」の新設など、教科・科目構成の見直しも行いました。
 各高等学校等やその設置者におかれましては、これまでも新学習指導要領の実施に向けて準備いただいたところです。来年度からは、その趣旨を改めて教職員や学校関係者と共有し、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を通じて主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に取り組んでいただくようお願いします。
・学習指導要領「生きる力」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

ICT環境整備・活用の充実

 新学習指導要領を着実に実施し、全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びを一体的に充実するためには、高等学校教育においてもICT環境の整備とその活用は必要不可欠です。
 来年度からは、GIGAスクール構想に基づいて自分専用の端末で学んできた中学3年生が、高等学校へ進学します。新学習指導要領では、情報活用能力を学習の基盤となる資質・能力の一つとして位置付け、教科等横断的な視点に基づき育成するとともに、その育成の中核を担う「情報Ⅰ」を必履修科目として新設するなど情報教育を推進しています。また、新型コロナウイルス感染症への対策に予断を許さない状況が続いており、1人1台端末の環境の整備は、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させ、高校生の学びを止めないためにも重要です。
 本年1月には、私と牧島デジタル大臣との連名で、「高等学校における1人1台端末の環境整備について」と題するメッセージを発信しました。多くの関係者の多大なるご協力・ご支援を賜り、全国の都道府県において、新1年生には1人1台端末環境が整う見込みが立ちましたことに、深く感謝申し上げます。文部科学省においては、今後は授業などで端末をマストアイテムとして活用していくための支援を行ってまいります。また、新科目「情報Ⅰ」については、文部科学省ホームページ内に「高等学校情報科に関する特設ページ」を設置し、研修等の充実に向けた教材や実践事例集等、外部人材の活用や教員の複数校配置に関する資料を公表していますので、ぜひご活用ください。また、「子供の学び応援サイト」においても、高等学校情報科の指導に関する動画教材や、プログラミングを体験できるツールを提供している民間企業等の取組を紹介していますので、あわせてご活用ください。
・高等学校における1人1台端末の環境整備について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_01773.html
・高等学校情報科に関する特設ページ
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1416746.htm

スクール・ポリシー等の高等学校改革について

 また、高校生の学習意欲を喚起し、その可能性や能力を最大限に伸長するための各高等学校の特色化・魅力化が重要です。このため、来年度より、各高等学校が「スクール・ポリシー」を策定し、公表することとしました。スクール・ポリシーは、各高等学校が、その社会的役割を踏まえて、どのような資質・能力を、どのようなカリキュラムで育成するのか、どのような中学生に入学して欲しいのかを示すことで、中学生に各高等学校が持つ特色への理解を促すもので、生徒や保護者、地域社会に対し、その高等学校の特色・魅力を明らかにするものです。また、同時に、スクール・ポリシーも踏まえ、行政機関、事業者、大学等、また、国の機関、国際機関等、多様な関係機関との連携・協働体制の整備に各高等学校が努めなければならないこととしました。新しい時代における高等学校教育においては、探究的な学びや、STEAM教育等の教科等横断的な学びを、これら関係機関等と連携しながら推進することが大切です。
 学校における学びが社会に通じるという「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、文部科学省においては、多様な各高等学校の特性を踏まえた取組を支援してまいりますので、各高等学校におかsssれましても、スクール・ポリシーに基づく特色化・魅力化を強力に推進いただくようお願いします。
・新時代に対応した高等学校教育に関する制度改正
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/mext_01290.html

成年年齢の引下げ等について

 成年年齢の引下げは、若者の積極的な社会参加を促すなどの重要な意義を有するものです。このため、高校生が、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力や社会の形成に主体的に参画するための資質・能力を身に付けることは極めて重要です。一方で、保護者の同意なく、自らの意思のみで契約を結ぶことができることから、消費者として被害を受けることも懸念されています。文部科学省においては、これを見据え、新学習指導要領の家庭科に盛り込んだ「契約の重要性」や「消費者保護の仕組み」に関する指導内容を前倒しして、その実施等に取り組んでまいりました。4月からは、新しい必履修科目「公共」や、「家庭科」の新しい教科書で、一層充実した教育を進めてまいります。また、今後とも消費者庁と連携を取りながら、消費者教育の取組を着実に進めていきます。
 さらに、この4月には、裁判員や検察審査員の対象年齢が18歳以上になります。刑事司法に多様な意見を反映するという点で意義深いものであり、生徒から候補者に選ばれた旨の相談があった場合には、制度の趣旨等を踏まえつつ、必要な情報提供や助言をお願いします。
・成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等に関する留意事項について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/mext_00002.html

 高校生たちは、「非連続的」と言えるほど急激に変化する社会に羽ばたいていくことになります。高校生が多様化する中にあって、生徒達が、その能力・適性、興味・関心等に応じた学びを通じて、多様な他者と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となっていくために必要な資質・能力を身につけることが極めて重要です。一人ひとりの生徒を主語とした高等学校教育の実現に向けて、今後とも、皆様のより一層のご理解・ご協力を心からお願い申し上げます。

令和4年3月25日
文部科学大臣 末松信介