令和8年7月3日児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

8初児生第10号
令和8年7月3日
 
 各都道府県教育委員会指導事務主管課長
 各指定都市教育委員会指導事務主管課長
 各都道府県私立学校主管課長
 附属学校を置く各国立大学法人担当課長
 附属学校を置く各公立大学法人担当課長   殿
 小中高等学校を設置する学校設置会社を
 所轄する構造改革特別区域法第12条
 第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当課長
 
 
              文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
                        千々岩  良英
                            
 
 

児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

 
 
 標記については、これまでも自殺対策基本法(平成18年法律第85号)等に基づき、学校等において、児童生徒の自殺予防の取組の充実に取り組んでいただいているところです。
 しかしながら、厚生労働省・警察庁の自殺統計によると、令和7年の児童生徒の自殺者数は、538人(令和6年確定値:529人)と過去最多となりました(別添資料1)。 如何なる事情であれ、子供たちが自ら命を絶つようなことはあってはならず、極めて重大に受け止める必要があります
 児童生徒の自殺は、平成21年以降の児童生徒の自殺者数を日別でみると、8月後半から増加し、特に長期休業明けの9月1日に多くなる傾向にあります。地域別にみると、北海道・東北地方においては、その他の地域よりも2週間ほど自殺者数が増加する時期が早く、これは長期休業明けが1~2週間早い傾向にあることと関連があると考えられています(別添資料2)。さらに、別添資料3のとおり、直近2年間(令和7年及び令和6年)は、9月の自殺者数が最も多い状況にありました。こうした状況を踏まえると、児童生徒の尊い命を救うため、特に長期休業の開始前から長期休業明けの時期にかけては、学校として、児童生徒の自殺予防について組織体制を整え、取組を強化することが必要です。
 また、令和7年の児童生徒の自殺の原因・動機として、学校問題のうち、約6割が学業不振や入試、進路に関する悩みであることが分かっており、長期休業において進路等を検討する児童生徒がいると考えられることも踏まえて、進路指導の充実や見守り活動を丁寧に実施していただくようお願いします。加えて、自殺の原因・動機のうち、いじめが16件(令和6年:9件)と前年に比べて増加していることから、いじめが被害児童生徒の生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあることを改めて認識いただくとともに、いじめの積極的な認知や早期発見・早期対応を徹底いただくようお願いします(別添資料4)。
 さらに、「自殺対策基本法の一部を改正する法律の施行について(通知)」(令和8年3月31日付け こ支総第125号、7文科初第2849号、社援発0331第52号 こども家庭庁支援局長、文部科学省総合教育政策局長、文部科学省初等中等教育局長、文部科学省高等教育局長、厚生労働省社会・援護局長通知)においても周知しているとおり、自殺対策基本法の一部を改正する法律(令和7年法律第64号)について、令和8年4月1日に全面施行されたところです。各学校・教育委員会等におかれましては、従前より自殺予防に向けた取組を行っていただいているところですが、今般の法改正を踏まえて、関係機関との連携強化を含め、学校における自殺予防の取組の一層の充実を図っていただくようお願いいたします。
 また、こども家庭庁から「こどもの自殺対策に係る取組について(依頼)」(令和8年7月3日付けこ支総第198号こども家庭庁支援局総務課自殺対策室長通知)、厚生労働省からは「令和7年度「自殺予防週間」に向けた啓発活動等の推進について(依頼)」(令和8年7月3日付け参自発0703第2号厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)通知)が発出されていますので、各地方公共団体の関係部局等とも連携し、児童生徒の自殺予防に取り組んでいただくようお願いいたします(別添資料5、6)。
 これらを踏まえ、上記の取組を行っていただくとともに、長期休業の開始前から長期休業明けにおける児童生徒の自殺予防に向けて、下記のとおり、学校として、保護者、地域住民、関係機関等と連携の上、全力で取り組んでいただくよう、お願いいたします
 これらのことについて、都道府県・指定都市教育委員会担当課におかれては所管の学校等及び域内の市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、都道府県私立学校主管課におかれては所轄の学校法人等を通じてその設置する学校に対して、国公立大学法人附属学校事務主管課におかれてはその設置する附属学校に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して、周知を図るとともに、児童生徒の自殺予防について特段の御配慮をお願いします。

 

 

1.学校における早期発見に向けた取組について
 各学校において、長期休業の開始前から、アンケート調査、教育相談等を実施するとともに、一人一人に対して面談を行うなど、悩み、不安や困難を抱える児童生徒の早期発見に努めること
 その際、児童生徒の心や体調の変化や、個別の児童生徒の状況を多面的に把握するICTツールを適切に活用することにより、教職員がこれまで気付いていなかった児童生徒の心身状態に気付くことができ、教職員の児童生徒理解の幅が広がり、悩み、不安や困難を抱えた児童生徒の早期発見や早期支援につながると考えられる。
 「こどもの自殺対策緊急強化プラン」(令和5年6月2日こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議決定)では、「1人1台端末の活用等により、自殺リスクの把握や適切な支援につなげるため、有償・無償で利用できるシステムやその活用方法、マニュアル等を整理・作成し、全国の教育委員会等に周知し、全国の学校での実施を目指す」としていることを踏まえ、文部科学省においては、児童生徒の心や体調変化の早期発見のため、1人1台端末等を活用した心の健康観察の導入(※)を推進しているところ、令和7年度から、学校のICT環境整備3か年計画(2025~2027年度)における、1人1台端末を活用した児童生徒の学校生活を支援するツール(例:児童生徒の心や体調の変化を早期に発見し、支援するツール)の整備に必要な経費を踏まえて地方財政措置が講じられている(別添資料7)。
 以上を踏まえ、各教育委員会及び学校においては、1人1台端末等の活用による心の健康観察などによるSOSの早期把握に努めるとともに、その結果を学級担任だけでなく管理職、養護教諭等が確認できるようにするなどして、学校内で速やかに情報が共有され迅速に対応できる体制を構築し、組織的に児童生徒の自殺の未然防止に取り組むこと
 また、全ての教職員が児童生徒の自殺のサインを見逃すことなく、的確な対応ができるよう、「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」や生徒指導提要(改訂版)を参考に、児童生徒の自殺予防に関する校内研修を実施すること。
さらに、学校が把握した悩みや困難を抱える児童生徒や、いじめを受けた又は不登校となっている児童生徒等に対しては、夏休みなど長期休業期間中においても、全校(学年)登校日、部活動等の機会を捉えた面談の実施や、保護者への連絡、家庭訪問等により継続的に児童生徒の様子を確認すること。
 また、児童生徒の自殺の背景の一つとして精神疾患が上位の項目に挙げられていることを踏まえ、学級担任や養護教諭等を中心としたきめ細やかな健康観察や教育相談の実施等により、児童生徒の状況を的確に把握し、スクールカウンセラー等による支援を行ったり、スクールソーシャルワーカー等を活用して医療等の関係機関に繋いだりするなど、心の健康問題への対応を徹底すること。

教師が知っておきたい子どもの自殺予防
生徒指導提要(改訂版)
 
(※)1人1台端末等を活用した心の健康観察の導入に当たっては、文部科学省において、1人1台端末等を活用して、無償・有償で利用できる健康観察・教育相談システムを別添資料8のとおり整理するとともに、Google フォーム又はMicrosoft Formsを活用して同様のアンケートフォームを作成するためのマニュアルを別添資料9のとおり作成しているので、合わせて参照いただきたい。なお、利用にあたっては各自治体における教育情報セキュリティポリシー、教育データの利活用に係る留意事項における「生徒の心の健康状態を把握するツールを利用する」場合の事例等もあわせてご確認いただきたい。

〇 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月)
教育データの利活用に係る留意事項 第4版(令和8年4月)
公立学校編P82~、国立学校編P57~、私立学校編P56~


2.教育相談体制の構築や学校を中心とした組織的な対応等について
 生徒指導提要(改訂版)に記載しているとおり、自殺への対応については、専門家といえども一人で抱えることができないほど重く、かつ困難な問題であり、きめ細かな継続的支援を可能にするためには、校内の教育相談体制を基盤に、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーや関係機関の協力を得ながら、全教職員が自殺予防に組織的に取り組むことが必要である。そのため、校内研修会などを通じて、教職員間の共通理解を図るとともに、実効的に機能する自殺予防のための教育相談体制を築くこと(詳細は、別添資料10参照)。
 その上で、児童生徒が自殺をほのめかしたり、深刻な自傷行為に及んだりするなど、自殺やその他の重大な危険行為の予兆を捉えた際には、教職員が一人では抱え込まず、教育相談体制の構成メンバーを基盤に、校長をリーダーとする「校内連携型危機対応チーム」を組織し、危険度に応じた対応を行うこと。また、平常時に、危機対応のための態勢づくりやマニュアルづくりなどを進めておくこと。
 さらに、実際に自殺や自殺未遂が発生した場合には、校長のリーダーシップの下、「校内連携型危機対応チーム」を中心にしつつも、学校だけで抱え込むのではなく、教育委員会等や専門家、関係機関のサポートを受けながら、全教職員の力を結集して対応することが必要であり、校内連携型危機対応チームを核に、教育委員会等、専門家、関係機関との連携・協働に基づく「ネットワーク型緊急支援チーム」を立ち上げ、周囲の児童生徒や教職員等への心のケアも含めた対応に当たること(詳細は、別添資料11参照)。


3.自殺予防教育の実施及び相談窓口の周知等について
 「SOSの出し方に関する教育」を含めた自殺予防教育を実施すること等により、児童生徒自身が心の変化や危機に気付き、身近な信頼出来る大人に相談できる力を培うとともに、児童生徒が安心してSOSを出すことのできる環境の整備に努めること。
 さらに、「24時間子供SOSダイヤル」を始めとする電話相談窓口や、SNS等を活用した相談窓口の周知を積極的に行うこと。相談窓口の周知にあたっては、教室など児童生徒が気付きやすい場所への掲示に加え、1人1台端末等を活用する際のポータルサイト、ブラウザのお気に入り機能等を活用するなどの方法も考えられる。また、複数の相談窓口を周知する場合は、悩みや不安を抱える児童生徒がどこに相談すべきか混乱してしまわないよう、必要に応じて児童生徒の悩みや不安に応じた相談窓口を整理し、周知すること。その際、文部科学省でまとめたホームページも参考にすること。加えて、児童生徒が悩みや不安を抱えたときに、すぐに相談ができるようにするためには、単に相談窓口を周知するだけでなく、児童生徒に相談方法等を理解させることが重要であり、例えば、長期休業の開始前に、1人1台端末等に掲載した相談窓口の連絡先や相談方法等について、児童生徒自身に実際に端末を操作させ、相談の手順等を確認させておくなど、丁寧な周知に努めていただきたいこと。
 さらに、長期休業明けの直前に、1人1台端末等を活用し、児童生徒に対して、相談窓口を再度周知することや、悩みや不安を抱えている場合は積極的な相談を促すことなど、児童生徒に寄り添った発信を行うこと。

(※)自殺予防教育については、「子供に伝えたい自殺予防-学校における自殺予防教育導入の手引-」を参照。

〇 子供に伝えたい自殺予防-学校における自殺予防教育導入の手引-
〇 子供のSOSの相談窓口

4.保護者に対する家庭における見守りの促進
 
保護者に対して、長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りを行うよう促すこと。保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については、積極的に学校に相談するよう、学校の相談窓口を周知しておくこと。その際、「24時間子供SOSダイヤル」を始めとする電話相談窓口や、SNS等を活用した相談窓口をはじめ関係機関が開設している各種相談窓口についても、併せて保護者に対して周知しておくこと。なお、これらの各家庭における保護者による見守りについては、長期休業の開始前又は長期休業期間中における保護者会等の機会や学校(学級)通信を通じて、保護者に促すことが考えられる。学校は、保護者から相談を受けた時には、必要に応じて関係機関と連携しながら、適切に対応すること

5.学校内外における集中的な見守り活動について
 長期休業明けの前後において、学校として、保護者や地域住民の参画を得て、また、関係機関等と連携して、学校における児童生徒への見守り活動を強化すること。さらに、放課後から夜間等における学校外の見守り活動については、保護者又は地域住民その他の関係者が担う体制に委ねつつも、自殺未遂等の事案が発生した場合に速やかに対応することができるよう、教育委員会等において、学校、警察等関係機関、地域の連携を一層強化する体制を構築し、取組を実施すること。その際、警察との連携においては、「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(令和5年2月7日付け4文科初第2121号)において指定を求めている「学校・警察連絡員」が情報共有を図り、緊急を要する事案を含め緊密に連携して対応に当たること。特に、学校において、児童生徒が自殺を企図する可能性が高い場所については、長期休業明けの前後の時期に見守り活動を集中的に実施することが有効であること。なお、学校・警察連絡員の指定を行った学校の割合が約6割にとどまることから、指定を行っていない学校に対し、指定を促すこと。

6.ネットパトロールの強化について
  児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす等の書き込みを発見することは、自殺を企図している児童生徒を発見する端緒の一つである。このため、教育委員会等が実施するネットパトロールについて、長期休業明けの前後において、平常時よりも実施頻度を上げるなどしてネットパトロールを集中的に実施すること。自殺をほのめかす等の書き込みを発見した場合は、即時に警察に連絡・相談するなどして当該書き込みを行った児童生徒を特定し、当該児童生徒の生命又は身体の安全を確保すること。また、警察等関係機関においてネットパトロールが実施されている場合には、当該関係機関との積極的な連携に努めること。
 

【添付資料】  


【参考資料】

 〇子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き
 〇小学生用啓発教材「わたしの健康」、中学生用啓発教材「かけがえのない自分 かけがえのない健康」、高校生用啓発教材「健康な生活を送るために」              

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

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