12.教科書無償給与制度
1. | 義務教育教科書無償給与制度の趣旨 義務教育教科書無償給与制度は、憲法第26条に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するものとして、我が国の将来を担う児童生徒に対し、国民全体の期待をこめて、その負担によって実施されています。 教科書無償は、義務教育無償という理念のもとに広く世界中で行われていますが(4.参照)、殊に我が国においては、教科書の役割の重要性から、その使用義務が法律で定められており、就学義務と密接なかかわりのあるものとして、授業料の不徴収に準じて教科書を無償給与すべきことと考えられます。 また、この制度は、次代を担う児童生徒の国民的自覚を深め、我が国の繁栄と福祉に貢献してほしいという国民全体の願いをこめて行われているものであり、同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果をもっています。 |
2. | 義務教育教科書無償給与制度の実施の経緯(付表5参照) この制度は、「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」(昭和37年3月31日公布、同年4月1日施行)及び「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」(昭和38年12月21日公布、同日施行)に基づき、昭和38年度に小学校第1学年について実施され、以後、学年進行方式によって毎年拡大され、昭和44年度に、小・中学校の全学年に無償給与が完成し、現在に至っており、今日では、国民の間に深く定着した施策となっています。 |
3. | 無償給与の対象 教科書無償給与の対象となるのは、国・公・私立の義務教育諸学校の全児童生徒であり、その使用する全教科の教科書です。 また、学年の中途で転学した児童生徒については、転学後において使用する教科書が転学前と異なる場合に新たに教科書が給与されます。 |
4. | 諸外国における無償制度の状況 諸外国における教科書無償制度の状況をみると、先進諸国においてはもちろんのこと、その他の国々においても無償制とするものが大勢を占めています(表9参照)。 ただし、無償制をとる国の中には、それぞれの国における教科書の在り方の違いなどから、貸与制をとる国と給与制をとる国がありますが、いずれにしても、保護者に教科書費用の負担を課していません。 |
国 名 | 初等教育 教科書 |
中等教育 教科書 |
備 考 | ||
---|---|---|---|---|---|
無償 | 有償 | 無償 | 有償 | ||
イギリス | ○ | ○ | |||
ドイツ | ○ | ○ | |||
フランス | ○ | ○ | ○ | 後期中等教育教科書は有償 | |
スウェーデン | ○ | ○ | |||
フィンランド | ○ | ○ | |||
ノルウェー | ○ | ○ | ○ | 後期中等教育教科書は有償 | |
アメリカ合衆国 | ○ | ○ | |||
カナダ | ○ | ○ | |||
韓国 | ○ | ○ | |||
インドネシア | ○ | ○ | ○ | 中等教育教科書は学校により異なる | |
ニュージーランド | ○ | ○ | |||
タイ | ○ | ○ | |||
中国 | ○ | ○ | |||
シンガポール | ○ | ○ | |||
ロシア連邦 | ○ | ○ | 有償化の傾向にある | ||
マレーシア | ○ | ○ | ○ | ○ | 低所得家庭の子女には無償 |
オーストラリア | ○ | ○ | ○ | ○ | 学校により異なる |
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