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1. | 台湾大地震での総合的な心のケア活動 |
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平成11年9月21日午前1時47分、マグニチュード7.6の大地震が台湾中部を襲った。全土では約40万人が被災。死者約2,300名。全壊約26,800戸、半壊約24,500戸の被害があった。活断層が動き、大地が数m移動し、多くの断層や地割れができた。台中日本人学校関係者は幸いにも人命を失うことはなかったが、深夜の高層マンションでの被災体験は大きな恐怖体験となった。日本人学校は断層の上にあり、校舎・グランドは壊滅的な被害を受け、使用不能となった。また、阪神・淡路大震災とは異なり、長期間余震が続いたため、不安と緊張が長期にわたり継続し、PTSDの発生が懸念された。 この事態に際し、文部科学省は、カウンセラー及び兵庫県復興教員を順次派遣するとともに、現地カウンセラーを採用し、日本人学校教職員とともにチームによる長期的な総合的ケア活動を実施した。 |
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<心のケアに関する支援スタッフ派遣期間> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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<被災後の主な心のケア活動> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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<まとめ> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
台湾大地震の被災という事態に対し、台中日本人学校教職員も派遣支援スタッフも暗中模索の状態であったが、できうる最善の対応を協力して実施した。これら多くの関係者の愛、努力と英知の総和が心のケア活動であり、この総合的な支援活動が児童生徒の心の回復に役立った。 |
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2. | 米国同時多発テロ事件での心のケア活動 |
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平成13年9月11日、米国で起きた同時多発テロ事件は、複数の民間航空機をハイジャクし、世界貿易センタービル(以下、「WTC」という。)と国防総省の建物に激突させるというこれまでの常識を越えたテロ事件であり、罪もない多くの人達の命が失われ、また多くの人達が恐怖と悲しみの体験を強いられた。マスメディアから報道された映像と情報は、世界中の人々に大きなショックを与えた。その後の米国を中心とするアフガニスタンのテロ組織への軍事攻撃と炭素菌事件の発生や世界各地で発生した報復テロは、市民の不安を増大するとともに、世界の人々に国際平和や社会のあり方を問うことになった。 テロ事件では、被災地がWTCとその周辺のビルであり、直接的な被害を受けた人々やその家族は、マンハッタン地区とそのベッドタウンに集中していた。WTCの2つのビルが壊滅的に崩壊したため、約4,000名の者が行方不明となり、学校関係者では、児童生徒の保護者数名が行方不明になった。倒壊の現場から命からがら逃げ出したり、崩れ落ちるビルや落下する人を目撃したなど多くの人達がトラウマ体験をした。 また、この事件の持つ異常性と戦争やテロの危険性が高いこと、マスメディアによってテロ事件のショックな映像が何度も繰り返し報道されたことなどから、不安・緊張を抱えた人々は、N.Y.およびワシントン周辺の地域全域に及んだ。このテロ事件の心のケアには、N.Y.地区の学校教職員、ニューヨーク日本人教育審議会教育相談室(以下、「教育相談室」という。)、総領事館精神科医や外務省職員、文部科学省事務官、現地在住のクリニカルサイコロジスト、ソーシャルワーカーなどの専門家など多くの者が、事件発生直後から迅速な対応を行った。 |
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<事件発生後の経過と実施された主なケア活動> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
9月11日午前9時頃、同時多発テロ事件が発生した。事件当時、グリニッチ校8年生が修学旅行で現場近くのホワイトハウスを見学していたが、校長の引率により児童生徒の安心を確保しながら無事帰校した。各校では、児童生徒を動揺させないよう普段通りの授業が行われた。児童生徒の安否は当日に確認されたが、保護者の安否確認は連絡が取れない地域もあり、夜を徹して行われた。翌日は各校とも休校し、グリニッチ校で教育相談室が中心となり、この事態への対応が検討された。平常どおりに学校を運営することが児童生徒の心のケアのために重要であることから、翌々日から学校が再開された。土日に開校される補習授業校のテロ事件後の最初の授業日には、N.Y.地区在住の精神科医や臨床心理士の協力を得て、各校に専門家が派遣され、授業前に教員に対する指導と保護者に対する説明会が実施された。また、N.Y.総領事館顧問医らにより作成された小冊子「心の傷とその対応」が全教員に配付された。現地の専門スタッフは、テロ事件直後からカウンセリングやケア活動を実施するとともに、N.Y.在住のサイコロジスト、ソーシャルワーカー、精神科医、文部科学省事務官、総領事館職員などとネットワーク会議を重ね、電話相談を始めとする各種の支援サービスの立案と実行及び関係機関との調整を行なった。教育相談室へは、事件直後、一日100件を越える電話相談があり、限られたスタッフでN.Y.地区の学校全体をカバーすることは困難であることから、文部科学大臣宛てに専門家の派遣を要請する緊急要望書が提出された。 文部科学省は、事件発生後一週間目から、二週間にわたり心のケア指導員を派遣した。心のケア指導員は、アウトリーチによる活動を行い、N.Y.地区およびその周辺地区の日本人学校、補習授業校、私立学校、幼稚園、日本人クラブなど計14の施設で、約1,200名の児童生徒へのセルフケアとリラクセーションの指導の他、約200名の教職員、保護者に対するストレスマネジメント研修を延べ39回行い、講演後、個別相談活動を実施した。 また、日本国内の日本臨床心理士会や臨床心理士の有志は、被災者支援のHPを立ち上げ、帰国者へのカウンセリング体制を整えるなど連携活動を行った。各校では、その後も教育相談室相談員や専門家による教員研修会を数回にわたって実施し、行方不明の保護者をもつ児童生徒とその家族への継続的なサポートを継続した。各校では、「Let's do it as usual with a smile」のスローガンをかかげるなど、温かい雰囲気の中で児童生徒が安心して学校生活を送ることができる環境づくりと心のケア活動を積極的に行った。12月には、小学校5年生以上の児童生徒と保護者を対象にPTSDの調査(3ヶ月経過後)を実施した。調査の結果、児童生徒の約10パーセント、保護者の約10パーセントがPTSDを疑わせる結果であった。調査の結果から、PTSDの症状は、身近な人がテロ現場に居合わせたり、テロ事件によって命を失ったことと強く関係していること、また、事件の映像をテレビで見るなどの間接的体験によっても影響があることが明らかになった。N.Y.市内の公立学校でも同様の結果が報告されており、今回のテロ事件とその後のアフガニスタンへの軍事行動、テロの脅威などの社会的な不安の持続が児童生徒に心理的影響を及ぼしていることが示唆された。この調査結果をふまえ、教育相談室は、N.Y.周辺地区に暮らす日本人への相談体制を充実させるため、相談員を2名から3名に増強し、長期的なケア活動を継続した。 |
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<多様な心のケア活動> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
同時多発テロの事件に対する心のケア活動では、次のような様々な取り組みが実施された。
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