H−Aロケット14号機の打上げに伴い発生する落下物等及びロケットの飛行に対する安全対策、並びに航空機及び船舶の安全を確保するため、これまでの打上げ経験を踏まえて以下に示す安全対策がとられている。
これら飛行安全確保業務として、打上げ執行責任を持つMHIが、飛行安全解析を実施して、飛行安全要求適合報告書を機構に提出し、打上げ安全監理責任を持つ機構が、MHIの飛行安全要求適合性報告書を評価・審査し、飛行安全計画書を制定し、飛行安全運用を実施する。
以上のような形で、安全確認が徹底されている。
打上げに伴い発生する落下物等に対する安全を確保するため、飛行計画の策定に際しては、ロケットの正常飛行時の落下物の落下予想区域とともに、推力停止した場合の落下物に対する警戒区域及び落下予測点軌跡について下記(1)及び(2)のとおり十分に安全確保が考慮されている(飛行経路は図−6)。
ロケットが正常に飛行した場合の落下物としては、2本の固体ロケットブースタ(SRB−A)、4本の固体補助ロケット(SSB)、4個の固体補助ロケットノズルクロージャ、衛星フェアリング及び第1段機体がある。固体補助ロケットノズルクロージャを除く、これらの落下中の大気抵抗等を考慮した落下予想区域は、図−7のとおりとなり、陸地及び外国の周辺海域に影響を与えないよう設定されている。
万一、ロケットに異常が発生し、飛行中断措置等により推力停止し落下する場合にも、破片の衝突、固体推進薬の二次爆発並びに搭載推進薬の流出によるガス拡散等による射場の周辺における被害の発生を防止するなどのため、飛行安全に係る警戒区域が設定され、警戒が行われる。
飛行安全に係る警戒区域は、二次爆発の影響を含めた落下破片、搭載推進薬の流出によるガス拡散の及ぼす影響を考慮して、射点を中心とする半径3キロメートルの区域等が設定されている(図−2)。
また、固体補助ロケットのノズルクロージャの落下予想域を含む射場周辺の海域については、海上警戒区域(図−3)を設定し、その中に船舶が入らないように警戒を行い、その海上警戒区域外では発射直後の飛行中断に伴う破片の落下分散が評価され、飛行中断に伴う破片の落下による船舶被害の発生の可能性が極めて小さいと評価されている。打上げ事故時には、海上における通報連絡範囲内の船舶等に対して船室内への退避及び射点から約4,500メートル外への避難を行うよう連絡がとられる。
さらに、射場周辺から離れた地域についても、落下予測点軌跡(推力飛行中のロケットが突然推力停止の状態に陥った場合に予測される落下点の軌跡)の分散域が、可能な限り人口稠密地域から離れて通過するよう飛行経路が設定されている(図−8)。
ロケットの飛行に対する安全を確保するため、飛行中の状態監視を行い、必要な場合は飛行の中断が安全に行えるよう、以下のとおり適切な対策がとられている。
ロケットの位置、速度、内部機器作動状況等について、図−9に示すように、光学設備、ITV、レーダ、テレメータ等により監視し、安全確保上必要な範囲において飛行中の状態監視が行われている。
安全を確保するために必要な範囲において、飛行中断によるロケットの落下あるいはロケットの破壊時の破片の落下による影響が陸地等に及ばないよう、落下限界線が設定されている(図−4)。
次のいずれかの場合に該当するときは、飛行安全主任の指示により、ロケットの指令破壊等が行われ、飛行が中断される。
なお、正常飛行範囲を飛行するロケットの飛行中断時の落下予測域が落下限界線を通過する場合には、その直前までの飛行状況を十分監視して、正常であることを条件として、上記の飛行中断条件の適用を見合わせることとしている。
ロケット打上げから飛行安全管制終了まで安全に飛行させるため、回線のマージンもあり、安全確保上必要な電波リンクが確保されている。
ロケット打上げ時において、航空機及び船舶の航行の安全を確保するため、3にあるように、適切な時期に必要な情報が通報されている。
軌道上に残るものとしては、第2段機体、WINDSがある。
第2段機体については、推進薬タンク及びヘリウム気蓄器の内圧上昇による破壊を防止するため、ミッション終了後に、推進薬等の放出が実施されるとともに指令破壊用火工品の作動を防止する措置がとられている。
なお、第2段機体に搭載されているタンク等は内圧上昇に対する機械式の安全弁を備えている。
衛星分離機構は、作動時に破片等を放出しないよう考慮されている。