資料2 競争的資金の拡充と制度改革の推進

科学技術・学術審議会
基本計画特別委員会(第8回)
平成17年2月15日

○ 創造的で質の高い研究開発成果を創出するためには、研究機関の内外で競争原理が働き、研究者が切磋琢磨する環境の中でその能力が最大限に発揮される研究開発システムを構築することが不可欠。競争的資金は、このような研究開発システムの根幹の一つとなるものであり、第2期科学技術基本計画期間中にその規模の拡充と制度改革が着実に行われてきたところ。

○ 第3期科学技術基本計画においては、研究テーマ設定の自由度、研究のフェーズや研究分野等に応じて、多様な競争的資金制度の中から研究者が最適な制度を自ら選択できる環境の整備を目指し、引き続きその規模の拡充と制度の多様化を図ることが必要。
 また、競争的資金制度は
 ・優れた研究者が育つシステム
 ・公正かつ透明性の高いシステム
 ・研究者が使いやすいシステム

であるべきであり、公正で透明性の高い評価システムの確立、配分機関の体制強化、間接経費の拡充などの制度改革を積極的に行うことが必要。

○ 大学等においては、高度な人材養成や揺籃期にある研究など日常的な教育研究活動を支える基盤的経費と、優れたものを優先的・重点的に助成する競争的資金の二本立て(デュアルサポートシステム)によって研究体制が構築されることが必要。

  1. 競争的資金制度の充実 (資料2-1(PDF:64KB))(※下記参照)
  2. 競争的資金のマネジメントの強化 (資料2-2)(※下記参照)
  3. 公正で透明性の高い評価システムの確立 (資料2-3)(※下記参照)
  4. その他の制度改革の推進 (資料2-4)(※下記参照)
  5. 基盤的経費の確実な措置 (資料2-5)(※下記参照)

1.競争的資金制度の充実

■ 第3期基本計画において採るべき主要な方策(案)

○ 第1期、2期における競争的資金の拡充により、研究者の競争的資金に対する認識も高まり、外部資金による研究が相当程度定着。一方、競争的資金制度の採択率は、例えば文部科学省所管の競争的資金制度においては、約5~25%と低く(平成16年度新規採択分)、研究者のニーズに対応し切れていない(米国のNSF、NIHの採択率はそれぞれ約27%、30%(2003年度))。(図表1-5(PDF:64KB))(※下記参照)
 また、研究環境の向上やマネジメント体制の整備に不可欠な間接経費も着実に伸びてはいるものの、すべての競争的資金制度で30%の間接経費を措置するには至っていない。
 研究者のキャリアパスにおいても極めて重要な時期であるポストドクターから助教授クラスまでの期間における制度(若手研究者向け制度)の充実が必要。

○ 競争的資金については、第3期基本計画において、政府研究開発投資全体の拡充を図る中で、基盤的経費を確実に措置しつつ、第2期計画期間において達成できなかった競争的資金の倍増目標の早期達成を目指すべき。

○ また、研究者のニーズや行政ニーズを踏まえた制度の多様化を図ることが重要。その制度設計に当たっては、目的を明確にするとともに、研究費規模、研究期間、研究体制、評価方法等がその制度の趣旨に応じ最適になるよう検討されるべき。(図表1-6(PDF:64KB))(※下記参照)

2.競争的資金のマネジメントの強化

■ 第3期基本計画において採るべき主要な方策(案)

(1)PO、PDの充実強化

○ PO、PDの登用に当たり、能力ある研究者を確保できるよう処遇に配慮する。PO、PDが研究者のキャリアパスとして位置づけられるよう、研究機関等においては、PO、PDとしての経歴を適切に評価する。

○ 優秀なPO、PDの育成・確保が重要であり、海外研修、国内セミナー等の充実を図る。

(2)独立した配分機関への移行

○各競争的資金制度の趣旨に応じ、本省の配分機能を独立した配分機関へ着実に移行していく。
 その際、配分機関が独立行政法人であるがゆえの予算上の制約がないようにする。
 一方、わが国の技術戦略や国際貢献等の政策的観点を重視した制度設計を行う必要があることなどにより、国が直接実施する場合には、その効率的・弾力的な運用に努める。

○  PO、PDのみならず、その活動を支援するための調査・分析機能や審査・交付・管理等の実務機能の充実・強化が不可欠であり、例えば競争的資金予算の一定割合をその体制強化のために確保するなどにより、着実に体制整備を行う。

3.公正で透明性の高い評価システムの確立

■ 第3期基本計画において採るべき主要な方策(案)

○ 課題の審査・評価を充実するため、審査・評価体制を抜本的に強化する。

○ 課題の審査に当たっては、審査員等の増員と研究計画書の充実、審査基準や審査の観点の見直し等により、研究者の地位や肩書きに拠らない、申書の内容と実施能力の観点をより重視した審査を行う。また、さまざまな角度・視点から評価を行うため、各競争的資金制度の趣旨に応じて民間人、若手研究者、外国人等多様な審査員の登用に努める。

○ 評価過程や評価結果の適切な開示は、評価システムの透明性の確保に加え、研究者の資質向上にもつながるため今後とも推進する。特に、評価結果の内容等をできる限り詳細に被評価者に伝えることを積極的に推進することにより、研究計画の充実や改善が図られるとともに、研究者(特に若手研究者)の表現力等資質の向上に寄与することが期待される。

○ 上述の審査・評価の充実に当たっては、そのために必要な体制を整備し、研究者(申請者及び評価者)の過大な負担にならないよう十分配慮する必要がある。

4.その他の制度改革の推進

■  第3期基本計画において採るべき主要な方策(案)

(1)間接経費の拡充

○ 間接経費は、競争的資金を獲得した研究者の研究環境の改善や研究機関全体の機能の向上のための経費であるが、資金を獲得できる研究者の価値を高め、研究者及び研究者の属する研究機関の競争促進を図る観点からも極めて重要。

○  競争的資金の拡充を図っていく中で、全制度において、第2期基本計画で掲げられた30%の間接経費の措置を実現する。その際、直接経費への影響がないようにすることが重要。(図表4-1)(※下記参照)

○  間接経費は、基本的には、研究機関が全体を取りまとめて機関として研究開発環境の整備等幅広く活用することが適当。各研究機関においては、それぞれの自主的判断のもと、間接経費を活用した魅力ある研究環境の構築や、競争的資金を獲得した研究者に対する適切な評価・処遇等により、研究機関・組織間で競争が行われ、更なる競争的資金の獲得に結びつくというサイクルが構築されることが重要。

(2)若手研究者等の活性化

○  テニュア・トラックにある若手研究者を対象とした競争的資金を重点的に拡充し、若手研究者の自立性や流動性を高める。

○  現在の助手のうち、教育研究を主たる職務とし将来の大学教員又は研究者となることが期待される者に相応しい職として新たに「助教」の職が今後、新設される方向であることを踏まえ、大学院における教育研究活動を活発化し、このような職にある大学の若手教員の活躍の場を確保していくための競争的資金を新たに創設することも考えられる。なお、その際、大学の組織全体の中での「助教」等の役割、連携体制の確保に配慮することが必要。

○  若手研究者の育成の観点から、制度の趣旨に応じ、審査員等への積極的な登用を図る。

○  女性研究者等がその能力を最大限発揮することができるようにするため、競争的資金における出産・育児等への配慮を行う(出産・育児に伴い受給の一定期間の中断や期間延長を認める等)。

(3)制度運用の改善

○ 引き続き研究者の視点に立った使いやすい制度とするため制度及びその運用の改善を進める。

(4)電子システムの導入

○ 政府研究開発データベースの充実、申請書の受付や書面審査、評価結果の開示等への電子システムの導入を図る。

(5)研究費の過度の集中・不合理な重複への対応

○ 過度の集中や不合理な重複が生じないよう、関係府省等の共通指針を定めて対応する。

(6)不正使用への対応

○ 競争的資金が公的資金であることにかんがみ、その不正使用については、研究者に申請資格の制限を課す等厳格に対処。また、研究者の所属する研究機関においても、適切な執行を確保するための体制や効率的な執行システムの整備に努める。

(7)社会への貢献

○ 競争的資金が公的資金であることにかんがみ、競争的資金を獲得した研究者に、自らの研究内容や研究成果等について、国民に分かりやすく説明するための活動(アウトリーチ活動を含む)の実施に対し競争的資金からの支出も可能とするなど、これらの活動を促進するための仕組みを導入する。(図表4-6、図表4-7)(※下記参照)

○ 競争的資金による研究開発の成果については、国や独立した配分機関、研究機関においても、積極的に社会に発信するなど社会への普及・還元に努める。

○ 競争的資金により実施された研究成果の公開を促進するため、各研究者が研究成果を公開できるようなインターネット上のポータルサイトや研究成果の検索サイトの構築について検討する。

5.基盤的経費の確実な措置

■ 第3期基本計画において採るべき主要な方策(案)

○ 学術研究は、研究者が旺盛な知的好奇心により「思考、仮説、検討・検証」のサイクルを繰り返すことから無限の可能性を秘めた「芽」が育つ段階(模索期・揺籃期・萌芽期)に始まり、独創的な発想や新規性の高い着想から発展する本格的な研究段階(成長期、発展期)に至ると考えられる。

○ 我が国の大学等においては、「基盤的経費」が研究組織の存立(人材の確保、研究環境の整備等)を支え、多様な「芽」を育むことを前提とした上で、「競争的資金」が研究目標の明確な優れた研究計画を優先的・重点的に支援するような二本立て(デュアルサポートシステム)によって研究体制が構築されている。
  基盤的経費と競争的資金とは相互補完的な関係にあり、多様な「芽」を伸ばすための競争的資金が有効に機能するためには、まず基盤的経費を確実に措置し、研究の裾野を広げ、学問領域の確立や研究の新たな展開に必要な「多様性の苗床」の肥沃化を図る必要がある。

○ 基盤的経費は、日常的な教育研究活動を支える資金として、研究者や研究支援者の人件費、最低限の研究費、研究基盤の整備費(施設整備費、設備費等)として支弁される。
 このような基盤的経費は、思いついたときにすぐ研究活動に取りかかれるための資金(機動性)であり、競争的資金の獲得に至らない構想段階の研究も開始・続行できるための資金(継続性)として、必要不可欠である。また、発展期のプロジェクトの推進においても、大学附置研究所、研究センターの整備等、基盤的経費の果たす役割は大きい(持続発展性)。

○ 一方、競争的資金は、優れた研究を成長・発展させることに重点を置いた研究費である。競争的資金が獲得できる研究は、研究計画や研究目標が見通せている段階のものであるため、競争的資金制度のみでは研究の多様な「芽」が生み出されてこない。
 すなわち、基盤的経費の役割は、模索期から萌芽期、成長期、発展期までの研究段階を一貫・継続して支えることであり、競争的資金制度(間接経費を含む)ですべてを代替することはできない。

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科学技術・学術政策局計画官付

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(科学技術・学術政策局計画官付)