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7.生涯学習情報の提供における今後の方向性

 前章までの成果を踏まえて、本検討会では生涯学習情報の提供に関する今後の方向性を以下のようにまとめた。

(1) 生涯学習情報の拡充
   本調査研究において、国が提供すべき生涯学習情報についての基本的な考え方について整理した。また、国が保有する情報としては、各省庁の政策・法令や統計情報、国家資格に関する情報などを、また、自治体が保有する情報としては、教材情報・資格情報等を中心に情報の約12万件の情報を収集し、NICERから提供を行ったところである。ただし、平成17年度については、時間的・技術的な制約から十分ではなく、今後、どういった優先順位で、情報の収集・提供を行っていくかは課題として残っている。したがって、学習者のニーズや国家的な重要性・緊急性を踏まえながら、情報の拡充を図っていく必要がある。
 また、企画者向けの情報提供の必要性を認識しながらも、まだ、多くのコンテンツがインターネット上で公開されていないこともあり、平成17年度においては、十分な情報収集と提供ができていない。企画者向けの情報については、まず、国を含め、それぞれの関係機関において、企画者向けのコンテンツ(一次情報)が拡充されることが重要であり、具体的な方策について今後検討を進める必要がある。その際には、学習者が企画者としての活動も行うインターネット市民塾のような事例も留意する必要がある。その上で、NICERにおいて情報の共有化を図っていく必要がある。
 さらに、国民の学習ニーズの多様化に伴い、国が提供すべき生涯学習情報に対する期待が大きいため、今後も国の政策上の重要性等をふまえながら、学習者向け、企画者向け双方のコンテンツを拡充することが不可欠である。

(2) NICERの運営体制の強化
   NICER(教育情報ナショナルセンター)は、これまで、コンテンツの拡充を中心として運営体制整備を行ってきたところである。特に、NICERの特徴は、インターネット上にある教育・学習コンテンツを収集し、体系的に整理して、検索できるようにしている点である。したがって、教育・学習用コンテンツそのものをNICERとして開発しておらず、インターネットで提供されている教育・学習コンテンツにリンクするシステムとしている。ただし、文部科学省が委託して開発された教員研修用のコンテンツなどをNICERのサーバーに蓄積して提供している。そして、1つ1つの教育・学習コンテンツについては、そのコンテンツの特徴をLOM(Learning Object Metadata)と呼ばれるデータを作成し、データベースにしている。そこで、本検討会で収集した約12万の情報もNICERの検索システムにおけるLOMのデータベースを構築した。
 今後は、コンテンツの拡充に加え、利便性の向上や利活用の促進など、更に運営体制の強化を図る必要がある。具体的には、有識者や関係者で構成される体制を整備し、技術革新や運営全般についての助言を得ながら、国として真に求められている生涯学習情報を精査しつつ、歩調を合わせた検討を進めていく必要がある。以下にNICERの具体的な活用方策について挙げる。
1 ニーズを踏まえた情報提供の円滑化・利便性の向上
   NICERにおいては、これまでも、利用者ニーズを踏まえ、画面レイアウトの改善を図ってきているところであるが、今後は真に必要な生涯学習情報の把握や利用者の利便性の向上を図る観点から、各コンテンツへのアクセス情報などを集計・分析し、特に、アクセス数の多い情報を公表することが望まれる。また、アクセス情報のみならず、ホームページ等から利用者からの意見を吸い上げ、より利便性の高いシステム作りに努める必要がある。
2 利活用の促進
   NICERの利活用の促進方策としては、これまでもパンフレットを作成したり、各種セミナー等において周知・広報を行ったりしてきたところであるが、更に、これまでの広報活動を見直すとともに、一層の利活用促進のための取組が不可欠である。また、利用者登録した学習者に対するメールマガジン等による積極的な情報提供や、企画者向けに掲示板等による情報交換ページの作成など、今後さまざまな手段を活用して利活用の促進を図る必要がある。

(3) 関係機関との連携の強化
   生涯学習情報の提供を推進するためには、多くの関係機関との連携を強化する必要がある。特に、以下に示す機関との連携強化が当面の課題である。
1 国や自治体等との連携強化
   生涯学習情報の提供体制を確立するためには、国と自治体など、関係機関同士の連携を強化する必要がある。その際、それぞれの機関の役割を明確にするとともに、連携する情報の内容と情報流通と共有化のあり方を早期に検討して、その実施体制を確立することが急務である。また、地方の情報を国が収集して提供するということよりも、地方の提供システムに組み込まれていくような仕組みを確立することが望ましいと考えられる。
 また、生涯学習情報の提供システムの構築だけではなく、運用面での連携が最も重要で、国と都道府県、市町村などの各地域との人的連携のあり方を明確にすることが先決である。
2 NIME−gladとの役割分担及び連携
   高等教育機関が保有する生涯学習情報の収集及び提供に関しては、独立行政法人メディア教育開発センターが運営している能力開発・学習ゲートウェイ「NIME−gladGateway to Learning for Ability Development)」において、広範な情報が提供されている。NIME-gladにはNICERと同様なLOM検索機能を有しているが、学習コンテンツそのものをNIME-gladに蓄積して提供するとともに、学習支援を行っている。特に、大学入学者の学力低下の問題に対応して学力保証教育(リメディアル教育)用のeラーニングコースや、企業が求めている大学卒業時の能力(例えば、情緒力など)を学べるeラーニングコースの開発に力を入れている。そのため、NICERにはない以下の機能をNIME-gladが持っている。
  (a)  学習コンテンツ(eラーニングコースなど)を提供する機能
(b)  学習履歴・成績を管理して、学習者を支援する機能
(c)  eラーニングコースの開発支援機能(オーサリングツール)
(d)  大学など他機関との連携機能(ユーザ認証・シングルサイン)
(e)  海外の教育用ゲートウェイとの連携機能(メタデータ交換)
 これに対して、NICERではインターネット上にあるたくさんの情報の中から教育・学習コンテンツを収集し、体系化してリンクしているシステムで、学習者が求める情報を探しやすくするシステムであるので、両者の連携強化を図ることによって総合的な生涯学習情報の提供がより高度化させることが可能であると考えられる。
3 新エル・ネットとの連携
   「教育・学習情報の発信・提供の在り方に関する検討会」報告書(平成17年12月26日)において、現在衛星通信を活用しているエル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)について、平成20年度を目途にインターネット環境へ移行するとの提言がなされている。
 基本的には、インターネットに移行した新エル・ネットにおいても、エル・ネットと同様に動画像を中心として一次情報の提供を積極的に図ることにしている。したがって、NICERにおける二次情報の提供とは、役割分担を図り連携することとなるが、単なるリンクをはるだけではなく、LOMの付与についても、今後更に検討を進めことが期待される。

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