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本調査研究の成果の概要

 生涯学習情報収集・提供検討会では、文部科学省の委託を受けて「生涯学習情報の提供のあり方に関する調査研究」を行なった。その成果の概要は以下に示すとおりである。

1. 生涯学習情報の提供の現状
 
(1) 生涯学習情報提供システムについて
 
60を越える都道府県や政令指定都市において「生涯学習情報提供システム」が運用されている。
市町村のシステムを含めると、現在約220の地方公共団体において生涯学習情報提供システムが運用されている。
主な提供情報としては、学習機会(講座・講演等)、学習施設(公民館・図書館等)、講師、団体・グループ情報などである。
(2) 最近の社会状況の変化について
 
インターネットの普及によって、各家庭から直接生涯学習情報提供システムにアクセスできるようになった。
地方分権の進展や三位一体の改革に伴い、国と地方の役割の見直しが進められており、国から地方への大きな流れが起きている。そのため、国と都道府県・市町村の適切な役割分担と連携が重要となっている。
情報化の進展に伴って、自宅や職場で学習できる環境が整いつつあり、生涯学習に期待をもつ者が増加している。
個人情報保護法が施行され、個人情報についての留意が必要となっている。

2. 生涯学習情報の整理
   生涯学習情報の整理・分類について検討した。
(1) 国と自治体との役割分担と連携について
 
地域住民に最も身近で役に立つ生涯学習情報が市町村から提供されている。
都道府県からの生涯学習とともに、都道府県では市町村を支援する立場から生涯学習情報の提供がされている。
国として提供すべき生涯学習情報が多数あり、国が重点的に取り組んでいる事項に関する情報が提供されている。
これらの生涯学習情報の提供にあたっては、国と都道府県や市町村との役割分担を明確にして、連携協力する必要がある。
(2) 行政機関と民間機関等の生涯学習機関との役割分担と連携について
 
民間のカルチャースクール等を中心に、趣味・教養、スポーツなどの生涯学習情報が多く提供されている。
大学等においても公開講座や市民講座、eラーニングによる専門的な生涯学習情報が提供されている。
これらの生涯学習情報との役割分担を明確にして、連携協力が求められている。
(3) 生涯学習情報の収集・整理・提供にあたっての留意事項
 
従来は学習者向けの生涯学習情報の提供が中心であったが、学習者が企画者になる市民塾型の学習が重要になってくると予想される。
学習情報そのもの(一次情報)と、一次情報の所在を示す情報(二次情報)に関する扱いを明確にして提供することが必要となっている。
(4) 提供すべき生涯学習情報の分類例
 
生涯学習情報の一次情報を大きく、1国が保有する生涯学習情報、2自治体が保有する生涯学習情報、3国も自治体も保有しておらず、情報収集・加工によってできる生涯学習に分類した。
国や自治体が保有する生涯学習情報は、インターネットで提供されている情報と、提供していない情報にさらに分類した。
生涯学習情報を主に提供する対象者としては、1学習者、2企画者、3企画者にも学習者にもなりうる生涯学習情報に分類した。

3. 収集した生涯学習情報と提供システム
 
  インターネットで現在提供されている生涯学習情報を精力的に収集し、合計で126,532件を教育情報ナショナルセンター(National Information Center for Educational Resources以下、略してNICERとする)から提供できるようにした。
  生涯学習情報を保有する地域や機関、キーワードにより情報検索が可能である。
(1) 国が提供する生涯学習情報
 
収集した国の提供する生涯学習情報は2,019件で、政策に関する情報が1,389件、学習機会情報が206件、統計資料が178件、資格試験関係情報が246件である。
省庁別に見ると、外務省関係が最も多く(588件)、国土交通省(236件)、法務省(224件)、文部科学省(198件)、財務省(168件)となっている。
(2) 地域が提供する生涯学習情報
 
地域の生涯学習提供システムや国の府省のホームページから半自動的にデータを収集し、124,513件にLOM(Learning Metadata Object)と呼ばれる分類情報を付加した。
これらの生涯学習情報は、教材等が115,970件、各種の資格情報が8,543件である。
都道府県別に見ると、神奈川県が最も多く(30,157件)、石川県(11,424件)、富山県(9,699件)となっている。
なお、0件となっている都県があるが、生涯学習情報が提供されていないことを意味しているわけではなく、今回の自動収集による結果であることをお断りしておきたい。

4. 学習者情報の扱いに関する実態調査の結果
 
  生涯学習情報提供システムやホームページ等においてユーザ(学習者)登録を実施している割合は20パーセントである。
  ユーザ登録時の入力情報は、氏名(94パーセント)、メールアドレス(82パーセント)、住所(76パーセント)、電話番号(59パーセント)、性別(59パーセント)などとなっている。
  ユーザ登録により可能になる主な機能としては、メールマガジンの配信、学習履歴管理、情報交換・意見交換などとなっている。
  ユーザ登録を実施しているシステムのうち、利用規約を作成している割合は64パーセントで、検討中が18パーセントである。
  利活用をさらに促進するためには、個人情報の取り扱いについて利用規約等で定めることが不可欠である。

5. 生涯学習情報提供に関する今後の課題
 
(1) 生涯学習情報の提供内容について
 
社会状況の変化、自治体や大学・民間等の関係機関との役割分担及び連携を踏まえ、国として収集・提供する生涯学習情報の整理が課題である。
その上で、国立教育政策研究所が運営する教育情報ナショナルセンター(NICER)において生涯学習情報提供システムを構築し、情報提供の拡充が必要である。
職業に関する生涯学習情報を提供する場合、各職業に必要な能力標準との関係から、自分の能力を自己チェックできて、自分に欠けている能力を知った上でそれに関する内容を学習できるようにすることが今後の課題である。
(2) 生涯学習情報提供の対象者について
 
本検討会では、生涯学習情報を提供する対象者を、1学習者、2学習者兼企画者、3企画者の3つに分類整理したが、1職業に関連した専門職、2高齢者、3若者、フリーター、ニートを対象に対する生涯学習情報を明確にすることが今後の課題である。
ただし、高齢者を対象にした生涯学習情報の提供に際しては、インターネットでの生涯学習情報の提供だけでなく、インターネットによるコミュニケーション支援、人が介在した種々の支援を総合化した仕組みを構築することが課題である。
(3) 生涯学習情報の作成等について
 
今後、国が保有している情報及び、地方が保有している情報に関する国と地方から提供される多くの情報について、生涯学習情報としてニーズを明確にした上で提供する情報を収集、体系化する必要がある。
情報収集・加工によってできる情報については、現在インターネットでは提供されていない情報や、されていても体系化されていない情報を調査して、それをある考え方でデータベース化するなどする必要がある。ただし、継続的に実施する必要がある。
(4) 生涯学習情報の提供システムついて
 
生涯学習情報そのものを蓄積したリポジトリー(情報貯蔵庫)とする場合、一次情報を同一のサーバーに蓄積することになるため、著作権契約を明確にすることが求められる。
生涯学習情報の概要と所在情報を集めたメタデータデータベースとする場合、情報の更新する体制の整備や、情報がなくなってNot Foundとなる場合を避ける仕組みも必要である。
また、生涯学習に関する学習コースなどを提供する場合、個人情報保護の観点を十分配慮する必要があり、そのガイドラインの作成が必要である。
生涯学習者はインターネットの情報検索に不慣れである場合が多いため、何らかの支援が必要である。
(5) 生涯学習をより推進するための仕組み作りについて
 
生涯学習をより推進するためには、インターネット利用だけで実施することではなく、人間同士のコミュニティとの連携を如何に構築するかが重要となる。
生涯学習を促進するためには、公民館活動との連携、カルチャーセンターとの連携、海外との連携などが成功の鍵となると考えられ、その方策に関する検討は今後の課題である。
(6) 生涯学習情報提供の目標設定について
 
生涯学習情報の提供を考える際に最も重要なことは、必要性の明確化と構築すべき目標を明確にすることである。
特に、政府から出されている「IT新改革戦略」との関係も踏まえて、今後の生涯学習情報の提供について検討することが望まれる。

6. 生涯学習情報提供に関する今後の方向性
   本検討会では生涯学習情報の提供に関する今後の方向性を以下のようにまとめた。
(1) 生涯学習情報の拡充について
 
平成17年度については、時間的・技術的な制約から十分ではなく、学習者のニーズや国家的な重要性・緊急性を踏まえながら、情報の拡充を図っていく必要がある。
企画者向けのコンテンツ(一次情報)が拡充されることが重要であり、具体的な方策について今後検討を進める必要がある。
国民の学習ニーズの多様化に伴い、国が提供すべき生涯学習情報に対する期待が大きいため、今後も国の政策上の重要性等をふまえながら、学習者向け、企画者向け双方のコンテンツを拡充することが不可欠である。
(2) NICERの運営体制の強化
 
NICER(教育情報ナショナルセンター)は、今後は、コンテンツの拡充に加え、利便性の向上や利活用の促進など、更に運営体制の強化を図る必要がある
NICERの具体的な活用方策については、1ニーズを踏まえた情報提供の円滑化・利便性の向上、2利活用の促進が挙げられる。
(3) 関係機関との連携の強化
 
生涯学習情報の提供を推進するためには、多くの関係機関との連携を強化する必要がある。
特に、1国や自治体等との連携強化、2独立行政法人メディア教育開発センターが提供しているゲートウェイであるNIME−gladとの役割分担及び連携、3教育情報衛星通信ネットワークの今後の展開となる新エル・ネットとの連携など、関連機関との連携を強化する必要がある。

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