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3 外国人の子どもに対する就学支援について

1.現状

  •  憲法及び教育基本法は、国民はその保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うものとしていることから、普通教育を受けさせる義務は、我が国の国籍を有する者に課されたものであり、外国人には課せられないと解される。しかしながら国際人権規約等の規定を踏まえ、公立の小学校、中学校等では入学を希望する外国人の子どもを無償で受け入れる等の措置を講じており、これらの取組により、外国人の子どもの教育を受ける権利を保障している。
  •  このような方針の下、外国人の子どもの受入が行われており、通常、義務教育の就学年齢にある外国人の子どもが外国人登録されれば、市町村教育委員会はその登録内容に基づき、外国人の保護者等に対して就学案内を行うとともに、外国人の子どもが公立の小学校や中学校等への入学を希望する場合には、市町村の教育委員会は入学すべき学校を指定し、当該学校に入学させることとなる。
  •  国においては、外国人の子どもの就学を促進するため、上記の取扱いを周知するために各都道府県教育委員会等に対し通達を発出するとともに、教科書の無償給付措置や就学援助措置(学用品の購入費、学校給食費、修学旅行費等の援助措置)を日本人の児童生徒の場合と同様に取り扱うこととしている。
  •  また、各地方公共団体等の就学案内に関する事務の支援のため「就学ガイドブック」及びその簡略版の「就学ガイド」をポルトガル語、中国語等7カ国語で作成し、全国の都道府県、市町村や在外公館等に配付している。
  •  さらに、平成17年度から平成18年度にかけて「不就学外国人児童生徒支援事業」を全国13の地方公共団体に委嘱して実施した。本事業においては不就学の実態調査を行うとともに、教育委員会と首長部局の連携による就学案内の実施等の取組を行った。平成19年度以降は「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」のプログラムの一つとして就学に関する相談員を教育委員会に配置して就学相談を行うなどの事業を行っている。

2.今後の方策

  •  現在、上記のような取組が行われているが、より充実した就学支援を行うためには以下のような課題がある。
    • ア 適切な就学支援を行うための前提となる外国人の子どもの就学状況の継続的な把握
    • イ 外国人に対する適切な就学案内や就学情報の提供の実施
    • ウ 関係機関、団体との連携による効果的な就学促進活動の実施
  •  これらの課題に対応した取組について順次提言するとともに、外国人児童生徒が分散して学校に在籍している地域における受入体制や外国人児童生徒の受入に関する学校間の連携も重要な課題であることから、これらの取組についても述べることとする。

(1)外国人の子どもの就学状況に関する調査の実施

  •  外国人の子どもの適切かつ有効な就学支援方策を実施していくにあたっては、外国人の子どもの就学状況を調査し、その把握に努めることが重要である。上述のように、国においては、平成17年度から平成18年度にかけて一部の地方公共団体に委嘱して調査を実施したところであるが、引き続き、就学状況調査を定期的かつ継続的に実施していくことが必要である。
  •  ただし、外国人の場合、外国人登録上の住所地と実際の住所地が異なるなどの問題があり、就学状況を把握するためには外国人の家庭を戸別訪問するなどの方法によらなければならない等の問題がある。このため、当面は、一部地域を対象とした抽出調査を行うとともに、効率的な調査方法の研究を行うことが適当である。
  •  また、現在検討されている外国人の在留管理制度の改善や外国人版の住民基本台帳制度が導入され外国人の正確な居住情報が把握できるようになった場合には、悉皆調査など規模の大きな方法での調査の実施を検討することが必要である。
  •  就学状況についての調査の実施にあたっては、地方公共団体における理解と協力が不可欠である。

(2)外国人に対する就学案内や就学相談の実施

  •  外国人の場合、我が国の教育制度や地域の学校に関する知識が乏しく、言語上の問題もあり、こうした情報にアクセスしづらい状況にあることが考えられる。したがって、外国人の子どもの就学を促進するためには、外国人本人がその子どもの就学の希望を伝えに来るまで待つのではなく、当該市町村において外国人に対して積極的な就学案内を行い必要な情報を提供することにより、外国人の子どもの就学の機会を逸することがないようにすることが重要である。
  •  このため、市町村においては、外国人の子どもの就学相談のための窓口を設置するとともに、国において配付した「就学ガイドブック」を活用するなどして地域の実情に応じた市町村独自の就学ガイドブックを外国語により作成・配付すること、また、外国語の話せる相談員を教育委員会等に配置し、外国語による就学案内、就学援助制度等の教育関連情報の的確な情報提供を行うことを推進する必要がある。

(3)関係機関・団体の連携による就学促進活動の実施

  •  (2)のような就学案内や就学相談を適切に行うためには、外国人の就学事務を担当する市町村教育委員会が外国人登録情報を適時において把握することが重要である。
  •  このため、市町村の外国人登録の担当部署と教育委員会の就学事務の担当部署が連携し、外国人登録情報を速やかに教育委員会の担当部署に提供できる体制をとったり、市町村の外国人登録の担当部署に外国人が登録のために来訪した際に教育委員会の窓口を紹介するなどの取組を実施することが必要である。
  •  また、不就学の状態にある外国人の子どもの就学を促進するため、市町村教育委員会においては、こうした子どもの情報を収集するとともに家庭訪問等の方法により就学相談や就学案内を行っていくことが必要である。この際、例えば、外国人を支援する地域のNPOやボランティア団体、自治会、また、児童相談所等の関係機関、スクール・ソーシャルワーカー等と連携・協力しながら取り組むことが考えられる。
  •  なお、国や都道府県においても、市町村における取組を促進するため、先進的な取組を行う市町村の事例等の情報提供を行うとともに、モデル事業による調査研究等を通じて、このような取組を促進していくことが必要である。

(4)拠点校方式による受入等

  •  「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況等に関する調査」の平成18年度の調査結果においては、日本語指導が必要な外国人児童生徒を受け入れる小学校、中学校、高等学校等のうち、1人のみと回答した学校の割合は47.3パーセント、2人と回答した学校の割合は17.6パーセントであり、日本語指導が必要な児童生徒の受入数が4人以下の学校は79.1パーセントとなっている。
  •  このことは、外国人児童生徒は、特定の学校に集中して在籍する場合よりはむしろ地域内の複数の学校に分散して在籍している場合が多いことを示している。このような分散的な受入状況となっている場合への対応として、市町村の中には、拠点校・センター校を設けて外国人児童生徒の受入を行ってきているところがある。
  •  具体的には、地域の実情に応じ小学校や中学校の通学区域制度の運用の弾力化や手続きの明確化等が図られており、これらの措置を活用し、地域において日本語指導体制が整備されている拠点校等への通学を認める取組が行われている。また、拠点校等に外国人児童生徒担当教員や指導補助員を重点的に配置し、当該学校に在籍する外国人児童生徒の指導にあたるとともに、近隣にある外国人児童生徒の小規模受入校への巡回指導を行う場合などがある。
  •  国においては、「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」において、このような方式での外国人児童生徒の受入・指導体制をモデル的に進めているところであり、引き続き本取組を実施するとともに当該取組による成果を全国に普及していくことが重要である。
  •  また、外国人児童生徒を分散して受け入れる市町村においては、このような方式の先進的な取組を参考にしながら、それぞれの地域の実情に応じた受入方策を工夫する必要がある。

(5)進学・転校等の場合の学校間の連携

  •  外国人児童生徒の場合、学校生活や地域社会への適応、日本語の習得、教科の学習などについて、日本人の児童生徒よりも指導にあたり配慮すべき事柄が多いことが考えられる。
  •  外国人児童生徒の指導を効果的に行うためには、学校は、このような指導上の配慮事項をしっかりと把握し、適切な指導を行うことが必要である。しかしながら、外国人児童生徒が進学した場合や転学した場合などにおいて、外国人児童生徒に関するこのような配慮事項に関する情報が学校間で十分に伝達されない場合があることが指摘されている。
  •  一般に、小学校から中学校へ進学する場合や他校に転校する場合等においては、転出元の学校の校長は指導要録の写しを作成し、転入先の学校の校長に送付することとされており、外国人児童生徒についても同様の措置が取られている。
  •  これに加え、学校は、外国人児童生徒の進学や転校等の場合において、効果的かつ継続的な指導が行われるよう、児童生徒の指導上の課題等について前在籍校から連絡や必要な情報の提供を受けるなどの連携を図ったり、受入時の面談等の際に児童生徒本人やその保護者から前在籍校での様々な状況についてヒアリングをするなどして、きちんと把握すべきである。また、市町村教育委員会においても、外国人児童生徒の進学や編・転入学にあたっては、学校間の連携について十分に配慮することが必要である。なお、国は、外国人学校に通う外国人の子どもが、小学校、中学校へ進学や編入学を希望する場合について、国際化の進展や本人の年齢・心身の発達状況等を踏まえた柔軟な取扱いとなるよう検討することが必要である。このほか、外国人学校に通う外国人の子どもが高等学校へ進学を希望する場合について、中学校卒業程度認定試験の制度が十分に周知されることが求められる。