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2 外国人児童生徒教育に関する検討課題と国、地方公共団体等の役割と責任

1.外国人児童生徒教育に関する検討課題

  •  本検討会では、1において触れた外国人児童生徒の教育に関する現状等を踏まえつつ、主に次の2点について検討を進めた。また、外国人生徒の進路の問題や学校と地域との連携による教育支援などの問題についても、併せて検討した。
    • ア 外国人の子どもに対する就学支援について
       我が国においては、外国人にも公立の小学校、中学校等において無償での受入を行っている。しかし一方で、就学していない外国人の子どもの問題も強く指摘されており、この問題への対応は極めて重要である。その背景として、就学に関する情報の不足や保護者の意識の問題、外国人の居住情報の不正確さの問題、学校の受入体制の不十分さの問題、さらには外国人の保護者の不安定な生活環境の問題等が考えられる。
       本検討会では、これらの点を踏まえつつ、外国人の就学情報の適切な把握と効果的な就学支援策を中心に検討を行い、具体策を取りまとめることとした。
    • イ 外国人児童生徒の適応指導や日本語指導について
       外国人児童生徒に対しては、初期の適応指導や日本語指導を行うとともに、外国人児童生徒の日本語能力等を踏まえつつ適切な教科指導を行い、上級学校への進学や就職などの際に求められる学力を育成することが重要である。このためには、外国人児童生徒に対する指導の内容を一層向上させるとともに、学校を中心に教員や支援員の配置等の指導体制を整えていくことが必要である。
       本検討会では、外国人児童生徒の教育に関する指導内容の改善・充実をどのようにして図るのか、また、外国人児童生徒の指導を行う人材の養成・確保や学校での指導体制等について検討を行い、具体策を取りまとめることとした。
  •  また、上記の課題の検討にあたっては、以下の視点を踏まえることとした。
    • ア 中央教育審議会から教育振興基本計画について答申が出されたこと等を踏まえ、本検討会の提言も今後概ね5年間において実施すべき施策を中心に検討すること。
    • イ 効率的かつ効果的な取組の在り方の検討を進めるため、国、地方公共団体など外国人児童生徒の教育に関する各当事者の役割と責任を踏まえるとともに、企業、NPOやボランティア団体、大学等を含め、相互の連携と協力について考慮すること。

2.国、地方公共団体等の役割と責任

  •  上記1に関連して、外国人児童生徒の教育に関与する国、都道府県、市町村及び企業の役割と責任について、以下に述べる。

(1)国、都道府県、市町村の役割と責任

  •  教育に関する国及び地方公共団体の役割分担については、中央教育審議会教育制度分科会の地方教育行政部会が平成17年1月13日にまとめた「地方分権時代における教育委員会の在り方について(部会まとめ)」において、次のように述べられている。

    「教育とりわけ義務教育の実施に当たっては,国,都道府県,市町村それぞれが役割を分担し責任を負っている。市町村は小中学校の設置義務が課され,義務教育の直接の実施主体として責任を負っている。都道府県は,小中学校の教職員を任命してその給与費の2分の1を負担し,広域で一定水準の人材を確保する責務を負っている。国は,学校制度の基本的な枠組みの制定や教育内容に関する全国的な基準の設定を行うとともに,教職員の給与費の2分の1を負担するなど義務教育の実施のための財政支援を行っている。」(注)

    • (注) なお、義務教育費国庫負担金については、現在3分の1となっている。
  •  本検討会では、上記の内容を踏まえつつ、外国人児童生徒の教育に関する国及び地方公共団体の基本的な役割分担について、概ね以下のように整理した。
    • ア 国は、外国人児童生徒の教育に関し、基本的な政策の企画立案や取扱いの方針の策定、教員の配置やモデル事業等を通じた先進的な取組の普及等による支援を行うこと。
    • イ 都道府県は、外国人児童生徒の教育に関し、域内における政策の企画立案や事業の実施、外国人児童生徒の指導にあたる教員等の確保と研修の実施、市町村の取組への支援を行うこと。
    • ウ 市町村は、外国人児童生徒の教育に関し、小学校、中学校の設置者として外国人の子どもを受け入れる学校の管理運営に携わるとともに、外国人の子どもの就学相談などの就学促進活動や学校への支援員の配置等を行うこと。
  •  なお、国、都道府県、市町村は相互に連携・協力しながらそれぞれの役割を適切に担っていくことが重要である。このため、国、都道府県、市町村においては、その必要性に応じ、外国人児童生徒の教育に関する専門性を有し、関係する機関・団体との連絡調整や指導・助言を行う職員を確保し、配置を進めていくことが必要である。

(2)企業の役割と責任

  •  現在、国内において雇用される外国人労働者数は、平成元年の入国管理法の改正以降増加しており、厚生労働省の「外国人雇用状況報告」によれば、平成18年度において、直接雇用の者は約22万2千人、間接雇用の者は約16万7千人となっている。
  •  今後、我が国の少子高齢化が進むとともに人口の減少が予測されており、将来的にも国内における外国人労働者数は増加し、我が国の産業が外国人労働力に依存していく傾向が強まっていくことが考えられる。
  •  こうした中、近年、増加する外国人労働者やその家族の受入に関する社会的なコスト負担を、産業界や個々の企業に求める声が生じてきている。もちろん企業においては、その活発な諸活動によって、我が国の雇用を創出し確保され、豊かな国民生活を実現するとともに、我が国の主要な納税者として我が国の社会制度の維持・発展に貢献していることは言うまでもない。
  •  しかしながら、外国人労働者が増加し、それに伴って地域において様々な住民間の軋轢が生じたり、福祉や教育等の面で社会的なコストが増加しつつある中で、直接雇用であれ間接雇用であれ外国人労働者を雇用する企業や産業界に対し、より目に見える形で外国人の問題に積極的にかかわるべき責任があると考える。
  •  企業において、外国人学校への備品や教材の寄付、インターンシップ生の受入等を通じたキャリア教育への取組支援・協力、大学と連携した外国人児童生徒向けの教材の開発、外国人児童生徒の教育支援のための基金の創設などの支援が行われている例があるが、まだ限定的な取組にとどまっている。こうした支援が外国人児童生徒の教育の改善につながっていることを考えると、外国人労働力を活用する地域の企業や経済団体においては、社会貢献活動の一環として、このような取組を更に推進するとともに、外国人労働者の子どもに対する就学案内への協力や外国人児童生徒の就職等の進路相談への協力など、様々な形での教育支援に一層取り組むべきである。
  •  また、これらの企業においては、外国人家庭の生活基盤の充実や外国人の子どもの将来の進路の確保のためにも、外国人の雇用の安定化に努めることを期待するものである。
  •  なお、地方公共団体においても、企業や経済団体との連携を図り、企業等における外国人児童生徒の教育支援のための社会貢献活動を促進させるよう取り組むことが必要である。

(3)NPOやボランティア団体等の役割

  •  外国人児童生徒に対するより充実した教育を行うためには、学校だけでなく地域全体で外国人児童生徒の教育を進めることが重要である。
  •  このため、地域のNPOやボランティア団体、社会教育団体等においては、行政や学校、大学、企業と連携をしながら、地域における外国人児童生徒の日本語や学習の支援、外国人の子どもの就学支援のための取組に大きな役割を果たすことが期待される。また、学校における外国人児童生徒の指導にも、学校の求めに応じて支援・協力していくことが考えられる。