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第3章 教員のICT活用指導力の基準の策定について

 本章においては、「教員のICT活用指導力の基準」策定の経緯について報告するとともに、基準を提示し、その解説を行う。

第1節 「教員のICT活用指導力の基準」策定の経緯

1. 策定手法

(1) トップダウンとボトムアップ
 ICT活用指導力の基準を策定にあたっては、まず大項目(カテゴリー)を定めて、それからチェック項目(能力基準)、指導項目例(具体的な指導例)と整理していく方法(トップダウン方式)と、まずは、教育現場における具体的なICT活用指導項目例を整理・分類し、それからチェック項目(能力基準)を整理し、さらに大項目を策定していく方法(ボトムアップ方式)とが考えられる。

(2) トップダウンとボトムアップの併用
 トップダウン方式は、論理的・意図的に指導力の基準を作成することができるが、その内容が教育現場の指導場面と整合しないものが含まれる恐れがある。一方、ボトムアップ方式は、教育現場のICT活用指導例を積み上げて整理するため実態との整合性は高いが、すべての教科のすべての指導場面を網羅的に列挙できない。そのため、必要とされるICT活用指導力の項目に不足が生じる恐れがある。
 そこで、本検討会においては、トップダウンによる大項目・チェック項目の整理を検討会で行う一方、作業部会を設置し、ボトムアップによる指導項目例・チェック項目の整理を平行して行い、両者の整合をとりつつ検討を進めた。

2. 策定の経緯

(1) ICT活用指導力のとらえ方について
 検討会では、ICT活用指導力をどのようにとらえるかについて、議論を行った。
 ICT(情報コミュニケーション技術)の定義については、コンピュータなどの情報機器やインターネットなどの情報通信ネットワークという理解でほぼ一致しており、特段の議論はなかった。
 一方、ICT活用指導力については、ICT活用能力とは異なるという合意は得られたものの、さまざまな意見が出された。例えば、ICTを活用するのは教員に限るのか、あるいは、児童生徒がICTを活用することを含むのかどうか、といったICTの活用主体について議論があった。これについては、児童生徒がICTを活用することを指導する能力も含めて考えることとなった。
 また、ICT活用能力とICT活用指導力についても意見が出された。すなわち、ICT活用指導力がない場合として、次の4つがあり得る。
指導力はあるが、ICT活用能力がないためにICT活用指導力がない場合
ICT活用能力はあるが、指導力がないためにICT活用指導力がない場合
ICT活用能力も指導力もないために、ICT活用指導力がない場合
ICT活用能力も指導力もあるが、ICT活用指導力がない場合
 そもそも指導力が十分ではない教員の場合には、ICT活用の有無は関係がなく、まずは指導力そのものを向上すべきという意見も出されたが、一方で、ICTの活用を通じて指導方法を改善することもできるのではないかという意見も出された。また、ICT活用指導力とは、そもそも教員が備える指導力を、適切な場面などでICTを活用することにより、更に増大することではないかという意見も出された。いずれにしても、教員のICT活用指導力の向上のためには、教員のICT活用能力が不可欠であるという意見で一致した。

(2) 学校種(発達段階)別に基準を作成する必要性の有無
 これまでは、小・中・高等学校の学校段階に関係なく、一律に教員のICT活用指導力の評価を実施しているが、児童生徒のICT活用能力の進展や、小学校のクラス担任制と中学校・高等学校の教科担任制の違いなどを考慮すると、学校段階別に基準を作成した方が良いのではないかという意見が出された。 一方、ICT活用指導項目例は、当然教科や学校種(発達段階)で異なるが、それらを束ねて作成するチェック項目は、各学校種で(発達段階が違っても)共通になる部分が多い上、大項目は、そもそも同一にすべきではないかという意見も出された。そこで、検討会においては、トップダウン方式については、学校段階に関係なく同一にする方向で、ボトムアップ方式については、まずは、学校種別に整理を進めることとした。
 その結果、大項目及びチェック項目については、「小学校版」と「中学校・高等学校版」の2種類を策定することとした。

(3) 大項目やチェック項目の分量等について
 大項目やチェック項目の分量についてはさまざまな意見が出されたが、教員が自己評価を行う際に、大きな時間や負担がかからないよう、また、一見で基準の全体像が把握できるよう、A4版用紙1枚程度に収まるチェック項目を作成することとした。
 また、第2章で述べた諸外国の基準等も参考にしながら、大項目については、4、5項目程度、チェック項目については、20項目前後を1つの目安として検討を進めることとした。

(4) 大項目の構成
 大項目の構成については、ICTの活用形態によって大項目を分ける案(A案)と、授業の準備から評価までの流れに沿ってチェック項目を分ける案(B案)が出された。B案の方がわかりやすいという意見もあったが、ICTの活用主体が教員なのか児童生徒なのかを明確にした方がよいという意見もあり、両方の案を折衷する形で大項目を作成することとした。
 また、社会的に情報モラル教育の充実が強く求められていることから、その重要性を踏まえ、情報モラルなどの指導については大項目を設けることとした。
 さらに、校務活動や学級経営にICTを活用することについては、直接的なICT活用指導力ではなく、ICT活用能力であるが、諸外国の基準にも含まれていることや、校務情報化の重要性を踏まえ、政策的に大項目を設けることとした。
 大項目については、「〜指導する能力」または「〜活用する能力」という記述で統一している。

(5) チェック項目について
 チェック項目については、簡潔な表現にすべきという意見も出されたが、指導項目例を見なくても自己評価が可能となるよう、できるだけわかりやすい表現にすることとした。その結果、少し長い記述となっている。
 また、当初は、「〜することができる。」という表現になっていたが、評価段階との表現の重複を避けるとともに、教員の負担感を低減する観点から、「〜する。」という表現で統一することとした。
 なお、チェック項目の数を20個程度にする中で、1つのチェック項目に複数の能力が含まれている場合は、それらを総合的に評価することとした。

(6) 指導項目例について
 指導項目例については、各チェック項目毎に評価を実施する際に、チェック項目だけでは内容がわかりにくい場合、指導項目例の教科毎の具体的な指導例を見ることにより、チェック項目の内容が理解できるようになることを意図して作成することとした。しかしながら、高等学校については、教科が多数あるため、全ての教科の指導項目例を挙げることは困難であることから、他の教科の指導項目例を見ることにより、参考とすることを想定している。

(7) 評価段階について
 当初は、「かなりできる」「すこしできる」「あまりできない」「ぜんぜんできない」という言葉がほぼ等間隔であるという研究報告を踏まえ、この表現を用いていたが、「かなりできる」と「すこしできる」の間隔が大きいという意見が多かったこと、教員数十人に試行調査を実施したところ、「かなりできる」と「ぜんぜんできない」に評価する割合が大変低かったことなどから、最終的には、「4:わりにできる」「3:ややできる」「2:あまりできない」「1:ほとんどできない」の4分類とすることとした。
 なお、当初は、左から右へ「1→2→3→4」という順序にしていたが、「わりにできる」を先にもってくるべきという意見が多かったことから、右から左へ「4→3→2→1」という順番に変更した。

(8) ICT環境の整備状況の考慮について
 チェック項目を策定する過程において、ICTを活用して指導するための学校のICT環境をどのように仮定するかという論点が挙げられた。すなわち、自己評価を行う際に、仮にICT活用指導力があったとしても、学校現場のICT環境が整備されていないために、ICTを活用して指導することができないと判断する教員が存在するのではないかという懸念である。
 そこで、チェック項目による自己評価の際には、「ICTが整備されていることを前提」として評価することとした。

(9) 特別支援学校の教員における活用について
 特別支援学校の教員については、全ての教員に求められるICT活用指導力の基準を適用する観点から、小学部の教員は小学校版を、中学・高等部の教員は、中学校・高等学校版のチェック項目を使用することを想定している。

第2節 教員のICT活用指導力の解説

 第1節の経緯を踏まえて策定されたチェック項目の小学校版を表3−1(PDF:151KB)に、中・高等学校版を表3−2(PDF:156KB)に示す。以下では、AからEの5つの大項目について解説の後、A−1からE−2の18のチェック項目について解説する。

1. 5つの大項目について

(1) 教材研究・指導の準備・評価
 「A 教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力」は、授業の準備段階及び授業終了後の評価段階において、教員がICTを活用する能力についての大項目である。
 この大項目は、児童生徒を前にして「指導」している場面ではないことから、狭い意味での「指導力」には含まれないことになるが、各教科等において効果的にICTを活用して授業を行うためには、授業設計や教材研究、授業評価を担う大項目は極めて重要であることから、広い意味での「指導力」の一部と捉え、「ICT活用指導力」の大項目の1つとした。

(2) 授業中のICT活用指導
 「B 授業中にICTを活用して指導する能力」については、授業の中で、教員が資料を説明したり課題を提示したりする場面や児童生徒の知識定着や技能習熟を図る場面において、教員がICTを活用する能力についての大項目である。
 この大項目は、教員が授業の中でICTを活用して、児童生徒の興味や関心を高めたり、課題を明確に把握させたりする内容を示しており、「わかる授業」を実現するためには極めて重要である。また、基礎的・基本的な内容を定着させるためのICT活用に関する能力基準も含まれる。そこで、教員が授業の中でICTを効果的に活用して授業を展開できる能力を「ICT活用指導力」の大項目の1つとして位置付けた。

(3) 児童生徒のICT活用指導
 「C 児童(生徒)のICT活用を指導する能力」については、学習の主体である児童(生徒)がICTを活用して効果的に学習を進めることができるよう教員が指導する能力についての大項目である。
 児童(生徒)がICTを学習のツールのひとつとして使いこなし、学習に必要とする情報を収集・選択したり、正しく理解したり、創造したり、わかりやすく表現・伝達したりすることなどは、児童(生徒)にとって必要な能力である。そこで、児童(生徒)がICTを活用して効果的に学習を進めることができるよう教員が指導する能力を「ICT活用指導力」の大項目の1つとして位置付けた。

(4) 情報モラルなどの指導
 「D 情報モラルなどを指導する能力」については、インターネットや携帯電話が普及する中で、児童(生徒)が情報社会で適正に行動するための基となる考え方と態度の育成が求められていることを踏まえ、すべての教員が情報モラルなどを指導する能力を持つべきという政策的な観点から、「ICT活用指導力」の大項目の1つとして位置付けた。
 なお、「情報モラル」という語は、狭義には、情報教育における倫理的、規範的な内容を指す場合が多いが、ここでは「情報モラルなど」として、倫理的・規範的なものだけではなく、ルールやマナー、著作権や個人情報保護、更には情報セキュリティなどを含む広義の意味で用いている。

(5)  校務におけるICT活用
 「E 校務にICTを活用する能力」については、校務は児童(生徒)の直接的な指導にかかわる能力ではないものの、校務分掌や学級経営などは教育活動において欠かすことはできない。また、教員が日頃からICTを校務処理の道具の1つとして活用することが、各教科等の指導におけるICT活用能力の向上に資することから、大項目の1つとして位置付けた。
 ここでは、日常的に行われる文書作成や情報の収集・整理などにおいてICTを活用し、校務を効率的にかつ確実に遂行するための能力を挙げている。また、校内のネットワーク環境を活かし、教員間で情報共有やコミュニケーションを行う能力も含まれる。さらに、インターネットなどを利用して、保護者や地域など校外との連携を図る能力についても想定している。

2. 18のチェック項目について

(1) A−1
 A−1については、教員が授業の計画段階において、どの場面にどのようにしてコンピュータやインターネットなどを利用すればよいのか、すなわち、教員が授業におけるICT活用のイメージを持つことができるかどうかの能力を評価するチェック項目である。

(2) A−2
 A−2については、教員が指導に必要な資料を収集する際に、インターネットなどの豊富な情報源を利用することが考えられる。それらの情報源を用いて、効率的な収集方法で指導目標に沿った内容を的確に収集できる能力を評価するチェック項目である。

(3) A−3
 A−3については、授業で活用する資料を作成する際に、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトを活用することが考えられる。資料作成において、ICTを活用して、準備時間を短縮したり効率的に作成したりする能力を評価するチェック項目である。

(4) A−4
 A−4については、コンピュータやデジタルカメラなどを活用して児童生徒の作品や学習状況、成績など管理し、表計算ソフトなどを用いて集計することで、より効率的な評価を充実させることが可能となることから、教員が学習評価に必要な能力を評価するチェック項目である。

(5) B−1
 B−1については、教員がコンピュータや提示装置などを活用して、資料などを拡大して提示することで、学習内容に対する児童生徒の興味や関心を高めて、主体的な学習が展開できるようにする能力を評価するチェック項目である。

(6) B−2
 B−2については、教員がコンピュータや提示装置などを活用して、児童生徒に課題解決のイメージを持たせ、課題を明確につかませて、自ら学び自ら考える主体的な学習が展開できるようにする能力を示すチェック項目である。

(7) B−3
 B−3については、教員がコンピュータや提示装置などを活用することにより、児童生徒に課題解決の糸口を与えることが可能であると考えられる。課題解決の場面において、教師がICTを活用して、児童生徒の思考を深めたり理解を深めたりする能力を評価するチェック項目である。

(8) B−4
 B−4については、教員がコンピュータや提示装置などを活用して資料や教材をわかりやすく提示することで、児童生徒の知識の定着や技能の習熟を図ることが可能となり、学習をまとめる場面において教員に必要な能力を評価するチェック項目である。

(9) C−1
 C−1については、児童(生徒)がコンピュータやインターネットなどを活用して、学習に必要な情報を収集したり、収集した多くの情報から課題の解決に必要な情報を選択したりできるように、教員が指導する能力を評価するチェック項目である。

(10) C−2
 C−2については、小学校の低学年では児童が自分の考えをお絵かきソフトなどで絵や文字で表したり、小学校の高学年から高等学校では児童(生徒)が自分の考えをワープロソフトで文章にまとめたり、調べた結果を表計算ソフトで表やグラフなどにまとめたりできるように、教員が指導する能力を評価するチェック項目である。

(11) C−3
 C−3については、児童(生徒)がプレゼンテーションソフトなどでつくった絵図や表、グラフなどを提示したり印刷したりして、他の児童(生徒)にわかりやすく説明したり、自分の伝えたいことを効果的に表現したりできるように、教員が指導する能力を評価するチェック項目である。

(12) C−4
 C−4については、児童(生徒)が学習用ソフトやインターネットなどを活用して、繰り返し学習したり練習したりして、知識の定着を図ったり身に付けたい技能の習熟を図ることができるよう、教員が指導する能力を評価するチェック項目である。

(13) D−1
 D−1については、児童(生徒)が情報社会に参画する中で、情報を活用する際に責任ある態度と義務が必要であることを理解し、情報に関して正しい判断を行い適正な行動がとれるよう、教員が指導する能力を評価するチェック項目である。

(14) D−2
 D−2については、児童(生徒)が情報活用する際に、ルール、マナー、法律など社会規範に従って行動するために、授業等の教科指導に限らず、課外活動や校外活動など授業外においても指導する必要があり、教員がその能力を評価するチェック項目である。

(15) D−3
 D−3については、児童(生徒)がインターネットなどを利用して情報を収集し利用する際に、健康面や精神面に配慮し、情報の正確さや信頼性などに留意して情報を安全に活用し、悪意のある情報による被害などから身を守れるよう、教員が指導する能力を評価するチェック項目である。

(16) D−4
 D−4については、児童(生徒)が情報を活用する際に、IDやパスワードの必要性を理解し、自分や他人が情報にアクセスする際の権利を守ることの重要性を意識し、情報セキュリティに関する基本的な態度を育成できるよう、教員が指導する能力を評価するチェック項目である。

(17) E−1
 E−1については、校務文書の作成にワープロソフトを活用したり、児童(生徒)の情報を管理する際に表計算ソフトを活用したり、更には、校務に必要な情報をインターネットなどを活用して収集するなど、教員が校務や学級経営などにICTを活用する能力を評価するチェック項目である。

(18) E−2
 E−2については、校内ネットワークやインターネットなど、比較的時間と場所の制限を受けない情報交換手段を活用することで、教員間での情報共有や保護者・地域住民などとの連携を円滑に行う能力を評価するチェック項目である。

第3節 教員のICT活用指導力の指導項目例について

1. 指導項目例の目的

 チェック項目だけでは、具体的なICT活用指導のイメージが想起されない場合に、各教科等において具体的な指導例を提示することにより、チェック項目の自己評価を適切に行うことができることから、作業部会を中心として、過去の指導例を整理し、【資料編】1に示すとおり、指導項目例の一覧表を作成した。

2. 指導項目例の表の見方

 縦軸は大項目及びチェック項目に応じて整理し、横軸は、指導例の番号、指導例、校種、教科、関連項目となっている。
 校種の略号の意味は、次のとおり。
  E:小学校(Elemntary School
EL:小学校低学年(Elementary School, Lower grade
EU:小学校高学年(Elementary School, Upper grade
SL:中学校(Lower Secondary School
SU:高等学校(Upper Secondary School
 教科における「共通」とは、各教科等に共通する内容であることを示している。
 また、関連項目は、指導例が他のチェック項目にも関連する場合に、その関連するチェック項目の番号を記載している。
 以下では、各学校段階毎に、指導項目例の表について補足説明する。

3. 具体的な指導項目例の解説

(1) 小学校版
小学校版の特徴
 小学校は、クラス担任制であり、担任の教員が全ての教科等においてICTを活用した指導を進めることが想定される。そこで、教科等で共通するICTの活用場面や活用方法を抽出して、「共通」と記載した。例えば、中項目B−1「学習に対する児童の興味・関心を高めるために、コンピュータや提示装置などを活用して資料などを効果的に提示する。」では、「直接観察できない現象をシミュレーションやアニメーションなどで提示し、児童の興味や関心を高める」という指導例を設定し、理科や社会科などの複数の教科における活用場面がイメージできるようにした。
 また、教科独自の特徴的な指導例であったり、その教科でより効果的な活用が想定できる場合については、教科ごとに指導例を明示した。例えば、中項目C−3「児童がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを活用して、わかりやすく発表したり表現したりできるように指導する。」では、共通の指導例であるプレゼンテーションソフトを活用した発表場面の指導の他に、音楽で曲作りや演奏におけるコンピュータや音楽ソフトなどの活用、図画工作でのコンピュータを活用したポスター作成などの指導例を設定した。
 さらに、低学年と高学年において教科が異なり、発達段階による指導の違いを明確にするために、低学年と高学年での指導例を分けて設定した。クラス担任の立場からすると、教科の違いよりも学年の違いが大きい場合があり、学年に合わせたICT活用指導力がイメージしやすいように工夫した。

小学校版の利用時の留意事項
 中項目を評価する際に、イメージしにくい中項目については「共通」の指導例を参照するとともに、担任している学年の指導例もあわせて参照する。さらに、教科の指導例を参照して、教科の目標や授業でのねらいに沿ったICT活用や授業展開を具体的にイメージする。
 ICT活用の経験が少ない教員にとっては、共通の指導例を参照することで、複数の教科で取り組むための具体的なイメージを持つようにし、ICT活用の経験が豊富な教員にとっては、活用経験の少ない教科での指導例を参照することで、日常的・継続的なICT活用を進めることにつながる。
 また、小学校段階では、体験活動や具体的な操作活動などとの関連も考慮して指導例を設定しているので、児童の発達段階に応じて、段階的にICTに触れる機会を増やしていくような指導が期待される。

(2) 中学校版
中学校版の特徴
 中学校は、教科担任制であり、教科によって指導する内容が異なることからICTの活用方法が異なり、例えば、チェック項目「C−3 生徒がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを活用して、わかりやすく説明したり効果的に表現したりできるように指導する。」を示しただけでは、具体的なICT活用指導のイメージが想起しにくい。そこで、美術では生徒がイメージした色をすばやく描くことができる描画ソフトなどを活用して作図やデザインで表現する事例を示したり、音楽では音楽ソフトなどを活用して簡単な曲作りをしたり演奏したりして表現する事例を示したりすることで、どの教科の教員にもチェック項目(C−3)のイメージを具体的に想起できるようにした。そのため、教科欄には、どの教科にも共通する指導例には「共通」と記載し、特定の教科での活用や指導に当てはまる指導例には教科名を記載した。

中学校版の利用時の留意事項
 チェック項目(能力分野)を評価する際に、内容がイメージしにくいチェック項目については「共通」の指導例を参照し、該当する教科の指導例がある場合には教科の指導例を参照する。その際、例えば、チェック項目(C−3)は、「生徒がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを活用」とあるので、生徒がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを操作できるように指導するとともに、「わかりやすく説明したり効果的に表現したりできるよう」教科の内容に即した説明の仕方や表現の仕方で相手にわかりやすく説明したり効果的に表現したりできるように指導することが大切である。

(3) 高等学校版
高等学校の特徴
 高等学校は、中学校の場合と同様に教科担任制であることから、個々の教科に応じたICT活用方法が考えられる。また、それぞれの教科には一般的に複数の科目が設定されていることにより、中学校の場合と比べてさらに多くの指導事例が想定される。このため、大項目(カテゴリー)B「授業中にICTを活用して指導する能力」と大項目C「生徒のICT活用を指導する能力」については、中学校における具体的指導事例と同様に、教科において共通すると考えられる指導事例の他に、教科あるいは科目ごとに指導事例を明示した。この際、数学や理科など一部の教科においては比較的多くの指導事例が想定されるが、ここでは典型的な指導事例を示すにとどめた。また、音楽や美術など教員の指導方法によって様々なICT活用方法が想定される場合は、一般的な指導事例を明示することとした。この他の特徴については上述の中学校版の特徴を参照されたい。

高等学校版の利用時の留意事項
 高等学校版の指導事例を参照する場合、担当する科目の指導事例が例示されていない場合、同じ教科に属する他の科目の指導事例を参照し、当該の指導事例を想起する。また、その科目が属する教科において「共通」と表示された指導事例を参照し、そこから当該科目における指導事例を想起する。この他の留意事項については上述の中学校版の利用時の留意事項を参照されたい。

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