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参考資料5 海外における規制の現状

(1) 英国
 放射性物質の放出についての規制は、環境庁(イングランド、ウェールズ)、スコットランド環境防護庁(スコットランド)、環境汚染及び放射化学物質管理局(北アイルランド)が行っている。また、使用・保管・輸送については環境輸送地方省(DETR)が、職業被ばくについては保健安全執行部(HSE)が規制している。
 自然放射性物質の免除レベルは、1993年に制定された放射性物質法(RSA93)に基づいた定義数量を用いており、固体のトリウムは2.59ベクレル毎グラム、固体のウランは11.1ベクレル毎グラムである。例外として免除されるものは、リン酸塩、希土類、または自然放射性元素のみが含まれる物質であって、各元素の濃度が14.8ベクレル毎グラムを超えない固体/液体、濃度が37ベクレル毎グラムを超えない合金などである。さらに、条件付でリン酸肥料、地質標本、ウラン・トリウム、鉛などが免除対象となっている。

(2) フランス
 政令2001-270及び州議会令2002-460により自然放射性物質の産業利用についての規制は、地方政府(環境保護規制部局)が行っている。
 免除レベルは、1トン未満のものはBSS免除レベルで、それ以上の物量の利用については、場合に応じて線量評価を行い、1ミリシーベルト 毎年の線量規準で、規制対象としており、作業従事者の被ばく線量が1ミリシーベルト 毎年(ラドンを除く)を超える場合は届出が必要となる。規制内容は、作業者の線量評価があるレベル(2003年5月現在まだ決っていない)を超えた場合に環境への影響評価を行う義務を課すとしている。

(3) ドイツ
 2004年1月から施行する放射線防護令に基づき、輸送を除き、連邦環境・自然保全・原子力安全省で規制される。線量規準は、核燃料物質については10マイクロシーベルト 毎年、それ以外の自然放射性物質については1ミリシーベルト 毎年としている。
 U-238系列核種、Th-232系列核種を含む放射性残渣については、各放射性核種の比放射能が0.2ベクレル毎グラム以下では基本的に規制対象としない。監視レベルとしては、放射性残渣の再利用について、利用場所ごとに0.5〜5ベクレル毎グラムまで、また、集積においては、面積及び立地条件により0.05〜1ベクレル毎グラムまで段階的に規定されている。
 作業者については、年に6ミリシーベルト(ラドンを含む)を超えて被ばくするような場合、3ヵ月以内に担当部局に報告するよう義務付けられており、届出を必要とする作業者の線量限度は、年に20ミリシーベルト 毎人、総従業員で400人・ミリシーベルトと規定されている。
 作業活動に伴う放射性物質の排気及び排水に係る規制は規定されていない。

(4) 米国
 自然放射性物質の規制は、放射線防護法令10CFR Part20に規定されているほか、自国の検討結果によって設定した基準に基づいて、自然放射性物質の種類や存在形態ごとに個別注釈に行われているものがある。BSS免除レベルは現時点では法令に取り入れられていない。
注釈 大気汚染規準40CFR Part61「リン鉱石起源の石膏堆積物から放出されるラドンの規制」
飲料水規準40CFR Part141「飲料水中のラジウムやウランの規制」
ルイジアナ州規準「油田・ガス田の缶石の規制」

(5) カナダ
 原子力安全管理令(2000年)第10条において、自然放射性物質については、原子力エネルギーの開発、生産及び使用に関わるもの、また、核物質の輸送、核不拡散に関わる輸出入を除き、すべての規制から免除されるとしている。
 核物質及び放射性機器に関する法規(2000年)において、約110核種に 1かける10のn乗の形で放射性物質の放射能の免除量を定めており、濃度の規定はない。ウランに対しては天然ウランのみを定義し、飛散しやすい形状に10キロベクレル、飛散しにくい形状に10メガベクレルの値が与えられている。トリウムはTh-232のみ免除量が規定され、その値は100ベクレルとなっている。ウランの壊変核種のうちRa-226、Po-210、Bi-210について免除量が規定されている。免除量の表に載っていない核種については、α線を放出しないものは10キロベクレル、原子番号が82(鉛)より大きくてα線を放出するものは500ベクレルとなっている。

(6) オーストラリア
 オーストラリアにおける放射線関連の規制は、州ごとに規定されているために、国として統一的な値がなく州により違いがある。
 いずれの州においても、自然放射性物質の規制に対する考え方はほぼ同様で、使用目的、分野を問わず、ある値以上の物質は規制対象としている。規制対象となる産業分野の具体例としては、ウラン、トリウムに限らず金属や石炭の鉱業(ボーキサイトからアルミナをとった残土である赤泥)、石油・天然ガス、リン酸肥料、建材などが挙げられる。

(7) 中国
 環境保護法の下に放射性物質による汚染の防止と修復に関する法が制定され、放射性物質の管理が行われている。
 放射線源と行為の規制からの免除についての原則(1992年)により人工放射性物質を5グループに分け免除レベルを決めているが、自然放射性物質に対する規定はない。
 原子力施設の鉄鋼及びアルミニウムのリサイクル及び再使用のためのクリアランスレベル(1998年)についても人工放射性核種に対しての規制値はあるが、自然放射性物質についての定めはない。
 電離放射線に対する防護と線源の安全についての基本基準(2003年)によりBSS免除レベルを基本的に全て(自然物を含む)取り入れるが、次の条件がある。
1 このレベルは免除の適用のためにあるのであって、免除は規制当局により認可されなければならず、自由には行えない。
2 規制当局は、状況によりいくつかのそれよりも低い(1より小さい数を乗ずる)免除レベルを使うことを要求できる。これは、BSS免除レベルが少量の物質の使用を想定しているためである。


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