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参考資料4 欧州委員会報告書RP-122の概要

 欧州委員会報告書RP-122第2部「規制免除とクリアランスの概念の自然放射線源への適用」について

  概要
 本報告書は、欧州委員会の専門家グループにより、EU指令書(96/29/Euratom)(基本安全基準)タイトル7に基づいて、鉱石を採掘または処理する産業から生じる物質あるいは自然起源の放射性物質(NORM)を考慮した規制免除レベルとクリアランスレベルを導出するための方法を提案したものである。指令書は、介入と行為に加え、3番目のカテゴリーとして自然放射線に含むものとして、作業活動(Work Activity)を導入している。
 この報告書の内容は、自然放射線源の規制の方針、自然起源の放射性物質を処理する産業の現状(表3参照)、規制免除とクリアランスの概念適用のための原則、及び一般クリアランスレベルと規制免除レベルの算出方法とその値を示している。これらの値は、鉱石中で通常見いだされる濃度の高いほうの範囲内にあり、規制が実行可能であるとしている。
 結論として、以下のとおりである。
NORM産業により処理され、放出される物質は、大量であるので、規制免除とクリアランスの概念は一緒になり、それらは1組のレベルを定めることが適切である。
作業活動に対する規制免除とクリアランスの基本概念と規準は、行為に対するものに似ているが、行為の線量規準(10マイクロシーベルト 毎年)を基礎にしてレベルを定めることは意味がない。バックグラウンド被ばくに加わる300マイクロシーベルト 毎年のオーダーの線量増加分とするのが適切である。

  線量規準
 自然線源に対する値の規定は、基本安全基準の付属書1の中で確立されている「取るに足らないリスクの規準」に基づいて進めることができない。作業活動に対しては、個人の年間被ばくは10マイクロシーベルトよりずっと高いことがあり、また集団線量が非常に重要になりうる。10マイクロシーベルトで制限を課すならば、実際、自然の変動以下の、自然放射線バックグラウンドに対しそのような小さい増加を管理体系に適用することは一般に不可能であろう。したがって、自然起源の放射性核種に対する規制免除−クリアランスレベルは、行為に対するよりも高い線量レベルに設定すべきであり、年間300マイクロシーベルトの規準を提案する。
 この規準は、以下の理由で正当化される。
自然放射線バックグラウンドからの全実効線量の地域的変動と同程度か、それより小さい(外部被ばくのみ)
建築材料に対して提案された規制免除レベル(RP-112)と一貫している。
廃液の管理に対して役立つように考えられているいかなる線量拘束値(行為に対してICRPにより勧告されている300マイクロシーベルト、作業活動に対してはさらに高い1ミリシーベルト)とも一貫している。

 行為による被ばくは高い潜在リスクを考慮する必要性があるのに対し、作業活動は自然放射線による被ばくの通常における高い変動性を考慮すればよい。よって作業活動による被ばくにおいては、取るに足りない被ばくはそれ程意味がなく、被ばくが容認できるレベルに対応するならば、放射能レベルは適切である。

  線量計算
シナリオの選択と被ばく経路
 NORM作業活動に対する一般的なシナリオは、制限的なケースに対しては、行為に対するよりもっと堅固である。
リサイクル
  長距離/短距離輸送(作業者)
中量の屋内貯蔵(作業者)
大量の屋外貯蔵(作業者)
NORMを含む道路建設(作業者)
NORMを含む建材を用いる建築(作業者)
希釈されてないNORMを用いる建築(作業者)
公共の場所/運動場の表層のNORM(一般公衆)
NORMを含む建材による家の住人(一般公衆)
希釈されていないNORMを用いた家の住人(一般公衆)
処分
  長距離/短距離輸送(作業者)
山積みまたは埋立による処分(作業者)
山積みまたは埋立の近くの家の住人(一般公衆)
NORMのタイプ
  岩石廃棄物


鉱滓
石油/天然ガスからのスラッジ

計算結果
表1 各タイプのNORMの規制免除レベル/クリアランスレベル (キロベクレル毎キログラム)
核種 岩石廃棄物 鉱滓 スラッジ
作業者 公衆 作業者 公衆 作業者 公衆 作業者 公衆 作業者 公衆
U-238sec 0.65 0.43 0.68 1 0.68 0.43 0.49 0.43 5.6 70
Unat 5.2 28 5.2 29 5.2 30 5.2 33 85 1900
Th-232sec 0.45 0.3 0.49 0.72 0.49 0.3 0.35 0.3 3.9 53
Th-232 5.4 3.1 5.4 16 5.4 28 5.4 22 100 290
K-40 8.3 4.2 9.9 10 9.7 4.2 6.6 4.2 78 1700

親核種の計算に含まれる核種
U−238sec U-238, Th-234, Pa-234m, Pa-234(0.3%), U-234, Th-230, Ra-226, Rn-222, Po-218, Pb-214, Bi-214, Po-214, Pb-210, Bi-210, Po-210
Unat U-238, Th-234, Pa-234m, Pa-234(0.3%), U-234, U-235,(4.6%), Th-231(4.6%)
Th-232sec Th-232, Ra-228, Ac-228, Th-228, Ra-224, Rn-220, Po-216, Pb-212, Bi-212, Po-212(64.1%), Tl-208(35.9%)
Th-232 Th-232

 NORM産業における放射能濃度の分布はあまり幅広くないので、数値の端数を処理することの経済的意味合いは重大である。有効数字1及び5へ端数を処理することが、より厳しい対数目盛りで端数を処理することが適当であると結論された。
7.07 かける 10のnマイナス1乗 小なり x 小なり 2.24 かける 10のn乗 を 1 かける 10のn乗
2.24 かける 10のn乗 小なりイコール x 小なりイコール 7.07 かける 10のn乗 を 5 かける 10のn乗

表2 自然放射性物質の免除レベル/クリアランスレベル(丸めた値)(ベクレル毎グラム)
親核種 すべての物質 石油/ガス産業等の湿ったスラッジ
U-238sec 0.5 5
Unat 5 100
Th-232sec 0.5 5
Th-232 5 100
K-40 5 100


表3:自然起源の放射性核種の高められた濃度をもつ物質が係わることのある産業の例
産業/生成物 放射性核種及び代表的な放射能濃度
リン酸塩産業(肥料製造)
リン酸(洗剤及び食品)
副産物石膏:1キロベクレル毎キログラム Ra-226
高濃度のRa (100 キロベクレル毎キログラム)はプラント中で沈澱することがある(缶石)
硫酸製造 黄鉄鉱:大なり1 キロベクレル毎キログラムを含む鉱滓
炭坑の脱水プラント スラッジは50〜100 キロベクレル毎キログラムを含むことがある(処分)
石炭及びフライアッシュ フライアッシュ:代表的には0.2 キロベクレル毎キログラム U,Th 10 キロベクレル毎キログラムまでのレベルが特別な状況で報告されていた。建築材料としてのフライアッシュの再使用
金属製造:精練所 放射能がスラグ及び炉粉じん中に濃縮することがある。廃棄物(〜100 キロベクレル毎キログラム)の再使用
マグネシウム/トリウム合金 最終製品の合金中で最高 4% Th
原料合金中の代表値 20% Th
希土類:モナザイト砂の処理、その他 セリウム、ランタン、その他の希土類鉱石:最高10 キロベクレル毎キログラム U、最高100 0キロベクレル毎キログラム Th
廃棄物の流れ及び粉塵中の放射能は非常に高いことがある
鋳造砂 ジルコン砂(1〜5 キロベクレル毎キログラム
モナザイト砂(最高 1000 キロベクレル毎キログラム
耐火材、研摩材、セラミック ジルコニウム鉱物:5 キロベクレル毎キログラム U, 1 キロベクレル毎キログラム Th
石油/ガス産業 缶石中のラジウム(通常1〜100 キロベクレル毎キログラム、しかし、最高 4000 キロベクレル毎キログラム
Th及び壊変核種(最高50%)もおそらくそうである
TiO2顔料産業 原材料物質:チタン鉄鉱及びルチル:1 キロベクレル毎キログラム U , Th;5 キロベクレル毎キログラムまでの廃棄物の流れ
トリウム溶接棒及びガスマントル トリウム溶接棒:最高 500 キロベクレル毎キログラム
トリウムガスマントル:酸化トリウム95%
陶歯 最高 0.03% U
光学産業及びガラス製品 ある種の研磨粉中の希土類化合物(例えばセリウム):Th,U
ある種のガラス製品:最高10%のUまたはTh.
眼鏡及び接眼鏡用の光学ガラス:着色のため U または Th を添加。ある種の光学レンズ:Th 最高 30%;
ある種のレンズコーティング物質。


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