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付録1 用語解説
 本用語解説は、本報告書内で使用されている用語について本文の内容の理解を助けるために解説したものであり、学術的や専門的な用語の定義を厳密に示したものではなく、一般的な用語解説と異なる場合がある。ただし、出典が記載されているものは、この限りではない。

あ行

「一般消費財」(Consumer goods)
 本報告書では、自然放射性物質を含むことにより被ばくを生じうるような機器製品をいう。これらの機器製品は、コンシューマグッズ (Consumer Goods)、コンシューマプロダクト(Consumer Products)、コモディティ(Commodity)などの用語で呼ばれている。

「永続平衡」(Secular equilibrium)
 親核種の半減期が、娘核種の半減期に対して、十分に長い場合は、その親核種の放射能が変化しないような期間での観察では、娘核種の放射能も変化せず、親核種のそれと等しくなる。このような状態を永続平衡という。例えば、自然に存在するトリウム系列の核種については、親核種のTh-232の半減期が約1.4かける10の10乗年であり、その壊変後に生成する核種の半減期がこれに比べて十分短いので永続平衡の状態となっているので、同じ場所に存在する娘核種の放射能は、親核種の放射能に等しい。

か行

「介入」(Intervention)
 “放射線被ばくを低減させる人間活動”と定義され、特にすでに存在している放射線源からの被ばくを低減するために実施される活動をいう。 被ばくは、放射線源が環境に存在し、そこへ人が立入る一連の過程で生ずるが、介入はこの線源から被ばくへと至る過程がすでに存在している場合(すなわち、事象が発生した後)に講じられる低減措置である。介入が適用される事象として、自然放射線源である高濃度の屋内ラドンや過去の活動に起因する残留放射能などで公衆が被ばくする状況、屋内退避・避難などの対策がとられる事故・緊急事態発生時等がある。

「介入の免除」(Intervention exemption)
「介入免除レベル」(Intervention exemption level)
 介入の免除とは、すでに存在する線源からの被ばくによる健康に対するリスクが無視できることから、介入を行う必要がないことをいう。
 ICRPは、1990年勧告において特に国際貿易の際に不必要な制限を避けるために、輸出入が自由に許されるものと、放射線防護についてのある制限の対象となる境界線を示すレベルとして介入免除レベルを提案した。ICRPPubl.82(1999)において、このレベルは長期被ばくを含む公衆が使用する商品にも適用できることが示された。レベルに対応する個人線量規準として、主な商品については、およそ1ミリシーベルト 毎年であるが、建材や食品など生活に欠かせないものは、これらと同じ規準を使うべきではなく、消費財を使用する行為についての免除については、国際的に数十マイクロシーベルトの線量規準が用いられることも、考慮するように言及している。

「壊変生成物」(Decay Products)
 ある放射性核種が、放射性壊変により他の核種に壊変する場合において、元の核種を親核種と呼び、壊変後の核種を娘核種(Daughter)、子孫核種(Progeny)または壊変生成物(Decay Products)と呼ぶ。

「缶石」(scale)
 液体中の塩が析出して配管やタンクなどに付着した物

「規制免除」(Exemption)
 ある放射線源について、それによる健康への影響が無視できるほど小さく、放射性物質として扱う必要がないことから、当該放射線源について放射線防護に係る規制の対象としないことをいう。これらの放射線源には、研究用のトレーサー、校正線源等の少量のものや、極僅かの放射性核種を含む一般消費財のような低濃度のものがある。これらの放射線源に起因する線量は、自然界の放射線レベルと比較しても十分小さい。
 免除の判断基準となる放射性物質の放射能及び濃度を「免除レベル」という。

「行為」(Practice)
 ICRP1990年勧告では、「個人の被ばくや被ばくする個人の数を増やすなど全般的に放射線被ばくを増やす人間の活動」と定義されている。本報告書では、この定義で用いる。

さ行

「サーベイメータ」(Survey meter)
 放射線の量を測って空間の線量当量率やものの表面の放射能を求める測定器である。
放射線の種類や使用目的に合わせて様々な種類のサーベイメータが製造されている。
 主なものを示す。
  電離箱式サーベイメータ
 プラスチックなどで作られた円筒形の容器にアルゴンガスなどを入れ、中心電極と壁材の間に電圧を加えておき、通過した放射線により生じた電流を測るもので、1マイクロシーベルト/毎時〜3マイクロシーベルト/毎時の範囲で低エネルギーX線、β線、γ線が測定可能である。
  GM式サーベイメータ
 円筒形の内部にヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを封入し、中心電極と壁材の間に700〜1000ボルトの直流電圧を加え、壁材と反応した放射線が起こした放電によるパルスを計測するもので、比較的感度が高く、応答も速いが、放電が消滅するまでの時間や放電の大きさがもとに戻るまでの時間がかかるため、高い線量当量率の測定は注意が必要。
  シンチレーションサーベイメータ
 微量のタリウム(Tl)を含むヨウ化ナトリウム(NaI)の結晶(シンチレータ)を検出部とし、検出部に入射した放射線による微発光を増幅して放射線量を測定するものである。感度が高いため0.01マイクロシーベルト/毎時〜100ミリシーベルト/毎時の範囲で自然放射線の変動レベルが測定可能である

「除外」(Exclusion)
 自然界に存在する放射線源による被ばくのように、制御できず、規制の対象としてなじまない被ばくを、規制の対象にしないことをいう。宇宙線や自然放射性物質(土壌、空気等に含まれるウラン、ラドン、カリウム-40等)による被ばくの大部分は、規制のしようがないか、または規制をしても効果がほとんどないことから、除外が適用される。

「実効線量」(Effective dose)
 確率的影響が発生する確率は、人体が受ける被ばく線量とともに増加するが、単純に物理的な被ばく量と比例するわけではなく、同じ線量であっても人体のどの臓器に被ばくするか、また部分的な被ばくや全身的な被ばくによって影響の発生確率が異なる。ICRPは、これらを考慮するために導入した線量概念が実効線量である。その定義は、下に示すように、被ばくしたすべての臓器の等価線量(用語解説参照)にその臓器についての組織荷重係数という係数を乗じた値を全身について総和した値である。

イコールシグマかける

ただし、E:実効線量、w:臓器Tの組織荷重係数、H:臓器Tにおける等価線量

 各臓器は同じ線量を受けても、その影響の発生頻度は異なるため、その程度で荷重した組織荷重係数をあらかじめ規定している。この値は、例えば生殖臓器は0.2、骨髄、肺、胃などは0.12、である。実効線量の単位は等価線量と同じ、Sv(シーベルト)を用いる。

「線量拘束値」(Dose constraint)
 ICRP1990年勧告で導入した概念で、ある線源に対する放射線防護方策を検討する場合に、その線源からの被ばく線量をできる限り低く(最適化)するための目標となる制限値のことである。線量限度は、規制の対象となる関連するすべての行為による個人の被ばく線量の合計についての限度であるのに対し、線量拘束値は、ある一つの行為に関係する特定の線源により与えられる線量の制限に用いられるものである。例えば、ある公衆に対して、複数の事業所の活動が被ばくを与える場合に、その公衆の線量限度である1ミリシーベルト 毎年をある割合でそれぞれの事業所で割り振して制限を行うが、その割り振り値が線量拘束値である。

た行

「対策レベル」(Action level)
 対策レベルとは、その値以上で実施した防護対策が介入を正当化するのに十分大きな線量を低減できるような値である。例えば、食物消費の制限あるいは家屋内のラドン低減措置のようないろいろな防護対策にあてはまる。

な行

「NORM」(Naturally Occurring Radioactive Materials)
 自然起源の放射性物質で、詳細な定義としては、自然に存在する放射性核種を含み、それ以外の放射性核種について有意な量を含まない物質のことである。(IAEA Safety Glossary,2000による)

は行

「バックグラウンド」(Background)
 バックグラウンドとは、注目する放射線源以外のすべての線源による線量や線量率のことである。自然バックグラウンドは、制御ができない自然放射線源または他の環境のいかなる線源からの線量や線量率を示す。(IAEA Safety Glossary,2000による)

「比放射能」(Specific Radioactivity)
 比放射能とは、放射性同位元素を含有する物質の単位質量当たりの放射能の強さを表わす。単位として、放射能の強さをBqで表わし、その元素または物質1g当たりの放射能とする。
 単体の比放射能とは、単一の元素に対する比放射能を示す。

「放射能」(Activity, Radioactivity)
 放射能は、専門的には以下の2通りの意味で用いられる。

  (1)  単位時間あたりの放射性壊変数を示し、その単位は、Bq(ベクレル)が用いられる。1秒間に1回放射性壊変を起こす場合に放射能が1Bqであるという。
  (2)  放射性物質が放射線を放出する性質を意味する。

 また、一般的には、放射能が放出されるというように、放射性物質と同じ意味で用いられることもある。
 本報告書では、全般にわたり(1)の意味で用いている。

や行

「誘導プラズマ質量分析装置」Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)
 試料中の原子または分子をイオン化し、その質量ごとに数を計測する高感度・高性能の溶液中無機元素分析装置をいう。イオン源としてのICP部とそのイオンを分離・測定するMS(質量分析)部から構成される。検出限界が非常に低く、ppt(1兆分の1)レベルまでの定量が可能となっている。



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