ここからサイトの主なメニューです

 (4) 使用料規程、協議・裁定制度

1 使用料規程の制定・変更時の意見聴取の義務化について

ア. 現行制度の概要
 管理事業者が利用者から徴収する使用料額を定める使用料規程は、基本的には管理事業者自身が決め、文化庁に届出ればよいことになっている(法第13条第1項)。

 しかしながら、商品の価格等と異なり、使用料には原価がよくわからないものが多いなどの使用料の特殊性を考慮し、使用料の制定、変更に当たっては、利用者又は利用者団体から、あらかじめ意見聴取をするよう努めなければならないことになっている(法第13条第2項)。

 なお、現行法が努力義務となっているのは、管理事業者の中には小規模で利用者への影響が極めて小さい事業者もいることが想定されることや、使用料規程の内容に対する意見を申し述べることができる利用者又は利用者団体が存在しない場合も想定されること等を踏まえてのものである。

 また、管理事業者が使用料規程を文化庁に届出する際には、意見聴取に努めたことを疎明する書面を添付することになっており(規則第14条)、添付された書面の内容から意見聴取努力義務を充分つくさなかったと認められると、文化庁長官は、著作物等の円滑な利用を阻害すると認定し(規則第15条)、使用料規程の実施禁止期間を、当初の届出から30日以内から最大3ヶ月まで延長することができるようになっている(法第14条)。

イ. 意見募集の内容
 利用者側からは、管理事業者が使用料規程を制定するときは、一般国民を含めた広範囲な利用者の意見を聴取するようにすべきである、利用者又は利用者団体の意見は必ず聴取しなければならないようにすべきである、使用料規程に関する協議・裁定制度を指定管理事業者以外の全管理事業者にも拡大するべきであるなどの意見があった。

ウ. 検討の結果
 利用者側にとっては管理事業者の使用料の額がどの程度になるかは最大の関心事であり、出来るだけ管理事業者の使用料額の決定に関与したいと考えるのは理解できる。そのため、管理事業法では、使用料規程の届出制、使用料規程作成時の意見聴取努力義務、使用料規程の実施禁止期間の設定と実施禁止期間の延長制度、大規模事業者である指定管理事業者の使用料規程に関する協議・裁定制度などを整備しており、管理事業者の著しく高額な使用料の設定には一定の規制が定められているところである。

 先述したように管理事業法では、管理事業者の使用料規程は届出制とし、基本的には、事業者間の競争を通じ市場原理により適切な額に収斂するという考え方を採用しているところから、これ以上管理事業者に過度な義務を課すことは、この基本原則の大幅な変更にもなりかねず、適当ではないと考える。

 なお、現行法においても、意見聴取努力義務規定違反や、管理事業者が著しく高い使用料を設定した場合は、文化庁は使用料規程の実施禁止期間の延長命令等により、管理事業者に対し是正措置を求めることができるので、文化庁が現行法の適切な運用を行うことで一定の対応ができると考える。

2 指定管理事業者の使用料規程に関する協議・裁定制度について

ア. 現行制度の概要
 管理事業法では、事業者間による適切な競争が期待できない大規模管理事業者が存在する場合は、当該管理事業者を指定管理事業者に指定し、指定管理事業者が使用料規程で定めた利用区分における利用者代表との使用料規程に関する協議の制度及び協議の不調に終わった場合の文化庁長官による裁定制度を設け、これを通じて適正な使用料額の形成を図る制度となっている(法第23条、第24条)。

イ. 意見募集の内容
 利用者側からは、利用者代表が存しない利用区分は、指定管理事業者と利用者代表との使用料規程に関する協議・裁定制度が活用できないので、この問題を解消してほしい、利用者代表以外の利用者の意見が反映できるようにしてほしい、利用者団体等との協議が円滑に行えるよう指定している利用区分の細分化ができるようにしてほしいなどの意見があった。

ウ. 検討の結果
 多くの指定管理事業者は、旧仲介業務法の時代に文化庁長官から許可を得て業務を実施していた団体であるところから、使用料規程を定めるに当たっては、従来から利用者団体と十分協議をし、合意又はほぼ合意された規程案が申請され、文化庁長官によって認可されるという実態があった。

 このことから、管理事業法の施行後も何回か指定管理事業者から使用料規程の変更の届け出があったが、いずれの場合にも事前に利用者代表(利用者代表が存在しない場合は関係の利用者団体)と十分協議したものであり、裁定制度が実行されるという事態には至っていない。

 また、利用者代表の問題であるが、管理事業法では指定管理事業者に利用者代表の求めに応じ使用料規程に関し協議を行う義務を課しているが、利用者側がこの制度を有効に活用するためには、利用者側も利用者代表といいうる組織を作るために努力する必要がある。また、利用者側には様々な意見があると思われるが、それらの意見を集約し利用者側として1つの意見にまとめるよう努力することも利用者代表に課せられた義務である。

 なお、指定管理事業者としての指定は、管理事業者の使用料規程上の利用区分に基づき行うこととなっているが(法第23条第1項)、指定管理事業者は、利用者団体の意見を踏まえ、合理的と判断される場合には、利用区分を利用実態に適合するよう変更していく必要がある。

 更に、管理事業法上、文化庁長官は管理事業法第23条第1項括弧書の規定に基づき、著作物等の利用の状況を勘案し利用区分を細分化した方が合理的であると認めるときは当該細分化した利用区分において指定管理事業者を指定することが可能であるので、利用区分が利用実態に適合しておらず、著作物等の円滑な利用の妨げとなっている場合であって、管理事業者に利用区分変更の意思が無い場合には、文化庁が法律で認められた権限を適切に行使することで、これを改善することができると考えられる。

 以上の点から、現状では、制度改正の必要性はないと考えられる。ただし、文化庁は、協議・裁定制度が円滑に機能するよう、指定管理事業者に対しては、利用実態の変化に沿った使用料規程上の利用区分の見直しや、利用者側に対しては利用者代表としての組織化や運営のあり方について、指導助言を行っていくことが必要である。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ