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 (3) 管理事業者に対する規制

1 管理事業者の役員の兼職について

ア. 現行制度の概要
 現行制度は、管理委託契約約款の作成・届出義務、また管理事業者の応諾義務、使用料規程の制定に関する利用者団体からの意見聴取努力義務や指定管理事業者における協議・裁定などの措置により、管理事業者の不当な権利行使には一定の歯止めがかけられていることを考慮して、管理事業者の役員の兼職について特段の規制を設けてはいない。

イ. 意見募集の内容
 本来競合すべき同一の分野において、ある管理事業者の役員が他の管理事業者の役員を兼務している例が見られ、公正な事業が行われるかどうか疑義があるので、管理事業者の役員の兼職のあり方等について再検討すべきである旨の意見があった。

ウ. 検討の結果
 意見募集における指摘のとおり、例えば文献複写の分野で、ある管理事業者の役員が別の管理事業者の役員を兼務している実態があるが、これは社団法人である管理事業者の構成団体が別の管理事業者であることから生じた事態であり、やむを得ない状況と考えられる。

 確かに、例えば、役員の兼務を認めると同一分野の管理事業者が話し合いをして、一斉に使用料を値上げするなどの弊害も考えられないことはないが、こうした取引については、独占禁止法で一定の規制が行われることなどを考えると、特に管理事業法において制度改正を考慮するような状況には至っていないと考えられる。

2 届出事項の変更届出期間の緩和について

ア. 現行制度の概要
 管理事業者は、管理事業法第7条の規定に基づき、文化庁長官に提出した登録申請書の記載事項に変更があった場合はその旨を2週間以内に届け出なければならないこととされている。

イ. 意見募集の内容
 管理事業者が登録事項の変更の届出を行う場合の添付書類として、必要に応じ、変更の事実に係る登記事項証明書が求められるが、変更の決定から変更の登記を行い文化庁に届け出るために要する時間が実務上2週間を超えてしまう場合が少なくないことから、管理事業者からは、2週間の期間を遵守することが困難であるとの意見があった。

ウ. 検討の結果
 管理事業法施行規則第8条第2項では、添付資料として「登記事項証明書又はこれに代わる書面」を求めていることから、文化庁は、法人である管理事業者が2週間以内に登記事項証明書を準備することが困難な場合には、登記事項証明書に代わる書面として、例えば、総会の議事録等を認めるよう運用を変更すべきである。

3 管理事業者の守秘義務について

ア. 現行制度の概要
 管理事業法上特段の規定は設けられていない。

イ. 意見募集の内容
 管理事業者は、利用許諾の条件として、利用者から利用実績に係る情報の提供を受けるが、この提供情報の中には利用者にとって他の利用者等に知られたくない営業上の秘密も含まれている。

 このため、利用者から、管理事業者に守秘義務を課し、利用者から得た情報の目的外使用を禁止することを管理事業法上に明定すべきとの意見があった。

ウ. 検討の結果
 一般に法人の役員は、当該法人に対し、善良の管理者としての注意義務(民法第644条)を課されており、事業上得た秘密を外部にもらしてはいけない守秘義務があると考えられている。また、従業員についても、労働契約上生じる義務として守秘義務が課されていると考えられている。

 また、利用者側でより高度な守秘義務が必要であると考えれば、利用許諾契約の際、その旨の契約をすれば、ある程度対応できる。更に、外部にもらされては困るとする情報が、不正競争防止法上の営業秘密に該当すれば、同法により民事上、刑事上の措置を求めることができる。

 以上の点から、現時点ではこの問題は管理事業法固有の問題とは考えられず、管理事業法による規制の必要性は現時点では認められないが、文化庁においては、管理事業者講習会の場等を通じて、情報保護法制等に関し情報提供をしていく必要がある。

4 管理している著作物等に関する情報提供について

ア. 現行制度の概要
 管理事業者は、管理事業法第17条に基づき、著作物等の題号、名称その他取り扱っている著作物等に関する情報及びその著作物等ごとの取り扱っている利用方法に関する情報を利用者に提供するように努めなければならないことになっている。

 なお、現行法が努力義務規定となっているのは、特に新規事業者のような人的・物的資源に欠ける事業者に提供義務を課すのは負担が大きいこと、また既存の管理事業者によっては、作品毎に委託する方法を採用しておらず、管理している著作物等を具体的に把握していない場合もあることなどからである。

イ. 意見募集の内容
 管理事業者が管理している著作物等の情報を提供しないので、事前に管理事業者間の権利競合等を確認できない、管理事業者が利用者に包括契約を要求しながら情報提供しないので契約できないなどの弊害が生じているので、現行法の努力義務規定を義務規定にするよう求める意見があった。

ウ. 検討の結果
 利用者側から見れば、各管理事業者が管理している著作物の題号やその利用方法が常に明らかになっていることが望ましいのはいうまでもない。

 しかしながら、現行法が努力義務とした理由にも示されているとおり、例えば、データベースの作成など情報提供システムを整備するコストに全ての管理事業者が耐えられるかどうか、また、著作物等や利用区分の特性、管理事業者の管理方法等に応じ、どの程度の情報提供が必要かなどについては、管理事業者の実態をもう少し見極める必要があるところである。

 なお、管理事業者は管理著作物が多くの利用者に利用され、それに応じた手数料収入増を事業実施の目的としているので、そのために、管理事業者は「顧客」である利用者に対し、「商品」である管理著作物等の情報を積極的に提供することは、ある面では管理事業者として当然のことでもある。意見募集における意見は、新規参入事業者についての意見がほとんどであるところから、もう少し長い期間で実態を見ると、事業者間の競争関係を通じ、一定の秩序形成が行われることが考えられる。

 以上のとおり、現状では、直ちに制度改正をすべき状況ではないが、特に音楽の分野では混乱が生じているとの指摘もあることから、当面は、文化庁で情報提供の方法についてガイドラインを設けるなどして、各事業者が情報提供を積極的に進めるよう指導・助言をしていくことが重要と考える。

5 管理権限の開示義務について

ア. 現行制度の概要
 管理事業法上、管理事業者は、利用者からの求めに応じて、著作物等に関する管理権限(著作権者と委任契約又は信託契約を交わしている事実)を明らかにする義務は課されていない。

イ. 意見募集の内容
 利用者側からは、特に新規参入管理事業者の場合、当該事業者に対する信頼性がないので、当該管理事業者から許諾申請の求めがあっても、本当に許諾権限があるかどうか分からないので、管理事業者に対し利用者の求めに応じて著作物等に関する管理権限を明らかにする義務を課すべきであるとの意見があった。特に外国楽曲については、利用者自らが委託者(著作権者)に確認することが困難であるとしている。

ウ. 検討の結果
 基本的には、情報提供の義務化の場合と同様、事業者間の競争関係を通じ、利用者側からの信頼を得られない管理事業者は整理されていくと考えられるので、管理事業者の実態をもう少し見極める必要があり、直ちに制度改正すべき状況ではないと考えられる。

 なお、この問題についても、情報提供の義務化の場合と同様、特に音楽の分野でこのような実態が見られるとの指摘がある。また、著作物等には代替性が低いものが多いが、特に映像作品に使われている原作、脚本、音楽、実演等については、原則として代替性がないので、映像作品を二次利用する場合、管理権限があるかどうか疑わしい管理事業者から許諾申請を求められても、著作物等を差し替えることもできず、円滑な利用が阻害される可能性があるとの意見もある。したがって、当面は文化庁でガイドラインを作成し、管理事業者に対する指導・助言を行っていくことが必要である。

6 管理委託契約約款・使用料規程のインターネット公示について

ア. 現行制度の概要
 管理事業者は、管理事業法第15条の規定に基づき、管理委託契約約款及び使用料規程を公示しなければならない。

 公示の方法は、管理事業法施行規則第18条において、
(ア)  事業所における掲示
(イ)  インターネットによる公開
(ウ)  その他公衆が容易に了知しうる手段
  のいずれかの方法によることとなっている。

イ. 意見募集の内容
 利用者側から、事業所における掲示のみの方法で公示している管理事業者の管理委託契約約款及び使用料規程の内容確認が煩雑であることから、全ての管理事業者に対し、インターネットによる公示を義務付けるべきとの意見があった。

ウ. 検討の結果
 インターネットによる管理委託契約約款等の公示は、利用者の閲覧に要する時間的制約、距離的制約を軽減することになり、利用の円滑化に資するところである。インターネットを活用し情報の提供を行うことは、あらゆる業種の事業者に普及しつつある。管理事業者においてもできるだけインターネットを利用した情報提供を進めるよう努力する必要があり、文化庁もその方向で講習会等の様々な機会を通じて管理事業者へ指導助言すべきであるが、情報伝達手段の開発普及は急なものがあるので、公示の方法を特定の手段に限定するような、制度改正は必要ないと考える。

 なお、インターネットによる公示を行うことができない管理事業者も存在すると考えられるので、このような事業者の使用料規程等については、現在文化庁が実施しているインターネットによる管理事業者の情報提供欄中で公表7することにより利用者の便を図ることを検討すべきと考える。また、これに関連して、文化庁は管理事業者に係る様々な情報について積極的に公表するよう努力する必要があると考える

 文化庁は、ホームページにて、著作権等管理事業者登録原簿を公表しており、登録に係る届出事項を閲覧することができる。

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