22.ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)

1.補償金制度の抜本的見直しについて

(1)BSAは、(ア)補償金制度が元来アナログ時代に創設されたものでありデジタル時代にふさわしくないこと、(イ)補償金制度がオンライン配信の進展を妨げること、(ウ)補償金制度は不公平な制度であること、および(エ)最新の技術開発がコスト高になり、消費者の技術アクセスが妨げられることから、私的録音録画補償金制度の拡大に反対し、廃止の検討を進めるべきであると考える。

 私的録音録画補償金は、元来アナログ時代に創設されたものであり、現在のデジタル時代には、ネットワーク社会の長所を活かして多数の人にコンテンツの配付を可能としつつ、DRMで複製をコントロールし、権利者に対して複製の数や態様に応じてごく精微にわたり対価を支払う多様な手法が確立している。にもかかわらず、利用者の複製の態様を考慮せずに、十把一からげに機器に補償金をかけ、金銭を徴収するしくみを続ければ、デジタル時代に即した手法の活用が進まず、その結果、オンライン配信の進展を妨げることにもなる。
 中間整理においても確認されている平成18年1月の文化審議会著作権分科会報告書指摘のとおり、補償金制度は、複製を行なうものの正確な捕捉、対象機器・記録媒体の正確な捕捉及び分配を受ける権利者の正確な捕捉が困難であり、オンライン配信事業においては課金と補償金の二重取りの可能性があり、返還制度が十分機能していないことなどの問題点があり、非常に不公平な制度であるといわざるを得ない(これらの制度上の問題は平成18年1月の報告書作成当時から何ら解決されていない)。消費者の認知が低いこと、不公平な制度であること、最新の機器利用がコスト高になることが相まって既に問題を抱えた制度であり、このような状況下で補償金を拡大することには、消費者の理解を得ることも大変困難である。

 以上により、補償金の拡大には反対である。

2.30条の適用範囲について

 中間整理は、権利者に著しい経済的不利益を生じさせ、著作物等の通常の利用を妨げる利用形態の検討と、30条の適用範囲の見直しを検討している(もっとも、違法物のダウンロードと30条の適用範囲の問題は、私的録音録画補償金の検討の過程ではなく、別個に論じられるべき問題であることを付言する)。
 ネットワークの高速大容量化及び機器の処理能力の向上等により、現在、ファイル交換ソフトを利用した違法なソフトウェアのアップロードおよびダウンロードによる甚大な被害が生じているのは明らかである。ダウンローダーが存在するのでアップローダーも存在するという需要と供給の関係があるため、アップロードは違法とされているものの、需要があることから終息する気配がない。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会及び社団法人日本音楽著作権協会が行なった実態調査(注)によれば、2006年10月10日の18時から24時までの6時間に、ビジネスソフトウェア約61万タイトル(平均価格換算で約19.5億円相当)、ゲームソフトウェア約177万タイトル(同約51.3億円相当)が流通していたとされている。消費者のインターネット利用を萎縮させないことが重要であることを考慮し、30条の適用を除外する場合について、違法なダウンロードであると知っている場合に限定すること、利用者への周知を十分に行なうこと、罰則の適用から除外することには賛成するものの、適用の範囲を録音録画に限定することは上記被害実態に照らしても適当とは言えない。録音録画はやめるべきであるが違法なソフトウェアの複製物のダウンロードは引き続きやっても良い、という誤ったメッセージを利用者に伝え兼ねない点でも賛成できない。特に、ビジネスソフトウェアについては、職場でライセンスを適正に得て使用しているものと同じものを家庭で違法にダウンロードして使用する場合に、違法性の認識は十分にあり、認識の点において問題がない場合がより多いと考える。従って、違法なソフトウェアの複製物のダウンロードについて、上記の条件付きで30条の適用範囲から除外し違法行為とすべきと考える。

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