19.コンピュータソフトウェア著作権協会

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第7章第2節22a12「私的録音録画物、違法サイトからの私的録音録画」について

●意見

 違法サイト等からの私的録音録画につき、利用者保護の観点から一定の条件をつけて30条の適用範囲から除外するという結論の基本方針については賛成ですが、「30条の適用範囲から除外する場合の条件」のイについて、対象を「録音録画」に限定することは不十分であると考えます。

 確かに、違法サイト等からの私的録音録画の問題に関しては、権利者として法的責任を問うべきは、原則として、著作物を無許諾でファイル交換ソフトやWebサイトにアップロード(送信可能化状態を含む公衆送信。以下「無許諾公開」とする。)している者であることは当然であり、当協会としても、様々な対策や広報、啓発活動を行っております。
 しかしながら、無許諾公開された著作物をダウンロードする者が無許諾公開を助長し、違法な自動公衆送信を誘発していることは否定できず、公開者の特定が技術的に難しいインターネットを通じた著作権侵害行為に対しては、当該著作物をダウンロードした者に対しても一定の法的責任が認められないことには、権利者による実効性のある侵害対策を行うことは困難です。その意味において本中間整理の結論の基本方針には賛成です。

 しかし、ファイル交換ソフトのネットワークには録音録画物だけでなく、コンピュータソフトウェアを始めとする他のコンテンツも違法に流通しております。
 2006年に当協会等で実施した「ファイル交換ソフト利用実態調査」によると、ファイル交換ソフトを現在利用している者が過去1年間にダウンロードしたコンピュータソフトウェアの数は年間8.7本となっています。これをファイル交換ソフトを現在利用している者の推定数(175.51万人。数字は共に「2006年ファイル交換ソフト利用実態調査」による)を乗じると、推定値による計算ではありますが、一年間で約1,527万本(中間整理におけるインターネットユーザー数の補正を考慮した場合でも約633.3万本)ものコンピュータソフトウェアがダウンロードされたことになります。
 もちろん、音楽・映像ファイルのダウンロード数に比べれば我々の調査でも絶対数が少ないのは事実ですが、上記推定値自体を見れば、決して少ないとは言えませんし、ダウンロードされた1本あたりのプログラムの収録数(1つのファイルに多数のプログラムが収録されている場合があります。)や価格を考えると一概に被害は録音録画物と比べることはできず、当協会としては、無許諾公開によるコンピュータソフトウェア産業の被害は重大であると考えております。
 このように、少なくともプログラムの著作物については、権利者が有償でダウンロード販売又はパッケージ販売しているものを、ファイル交換ソフトの悪用等により、対価を支払わずに不正に取得しようと企て、対価を支払った正当な購入者と同等の経済的効用を不当に享受している人たちがいるのであり、ダウンロード数をもっても被害が重大であることは明らかです。それにもかかわらず、本問題について、著作物全体から問題となるものを検討することなく、「録音録画」に限って議論を行っていることは、議論が不十分ではないかと考えております。
 もちろん、当協会としましても、全ての違法にアップロードされた著作物のダウンロードを30条の範囲外とすべきとは考えておりません。必要なことは、どの著作物の私的ダウンロードが30条から除外することが相応しいかにつき、録音録画に限定せず、一から議論していただきたいということです。
 つきましては、今後は著作権制度全体の観点から30条から除外すべき著作物について、録音録画物以外にもどのような範囲であるかにつきご検討いただきたく存じます。

 なお、いずれにしても一定の場合にダウンロードを違法とする以上、その実効性を上げる必要があると考えます。本中間整理では、本改正につき他の30条の適用がない私的使用目的のための複製と同様に、罰則の適用除外としておりますが、罰則の適用がないとなると、権利者は民事手続きしか権利侵害の対応策として取り得ないこととなります。そこで、民事手続きの実効性を上げるシステムについて検討する必要があります。確かに、権利者等からユーザーへの啓発活動を行うための根拠として違法サイト等からの無許諾著作物ダウンロードを違法とすることにも一定の意味がありますが、それ以外にも、特に悪質なケースの場合には、実際に法的措置を講じることができるようにするための手段を検討し、実効性を上げるための手当をすることが必要であると考えます。

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