10.音楽制作者連盟

●「第7章 検討結果」に対する意見

「第2節 著作権法第30条の適用範囲の見直しについて」に対する意見(101頁〜)

  • (104頁〜)違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外するとの意見については賛成である。適用範囲から除外する場合の条件について、「情を知って」録音録画する場合に限るといった一定の条件を課すことについても、合理的といえる範囲内であると考える。
  • (108頁〜)適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外するとの意見については、趣旨としては理解できるものの、その趣旨は、権利者が配信を許諾する際に、その自由な意思(私的自治)に基づいて、私的録音録画も含めた許諾を行い、かつ、その対価を徴収しているという関係が存在してはじめて成り立つものである以上、そのような前提を成り立たせるだけの状況(適法配信事業者が配信の対価に含めて徴収する私的複製の対価額が明確化されることや、権利者が「自由な意思」によりそのような許諾を行ったと言いうるに足るだけの選択肢が与えられているか否か等)についての議論、関係者間のルール作りが必要であり、その議論が十分に尽くされないまま導入することは避けるべきである。

「第3節 補償の必要性について」に対する意見(110頁〜)

  • (111頁〜)私的録音録画補償金は、その制定経緯から考えても、権利制限の代償措置と考えられる。したがって、111頁の「経済的不利益の評価について」の法律的視点についても、アの「私的録音録画のために権利者の許諾を得る必要があるとすればそこで支払われたであろう使用料相当分を経済的不利益とする考え方」が妥当である。
  • (119頁〜)同頁において「権利者の受忍限度」について記載されているが、今日では、私的録音録画補償金制度導入時に比べ、デジタル方式による音楽や映像の複製機能を訴求した製品が著しく普及し、それにより私的複製全体のボリュームも飛躍的に増大しているのであるから、権利者の被る不利益は「受忍限度」を明らかに超えているというべきである。
  • たしかに119頁「4」においても記載されているように、私的録音録画補償金により補償の対象とされる経済的不利益は、著作権保護技術の進展及びその利用方法如何によっては補われる可能性があることは否定しないが、121頁冒頭にも述べられているように、著作権保護技術の選択においては、その選択肢の設定において権利者側の意向が反映されない場合が多く、権利者側が「自由な意思」(私的自治)により、著作権保護技術の選択を通じて、私的録音録画をコントロールするという状況は、容易に想定しがたい状況であることに注意する必要がある。

「第4節 補償措置の方法について」に対する意見(123頁〜)

  • 権利者への補償措置は、補償金制度により対応することが適当である。補償金制度は、私的領域におけるユーザーの利便性の確保と、権利者の保護との間を調整する方法として優れた方法であり、かつリーズナブルな制度であると考える。また、私的な複製に供される機器、媒体を販売することで利益を上げる機器等の製造事業者等が関与しない制度設計はあり得ないことから、アの「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」とすることが妥当であると考える。

「第5節 私的録音録画補償金制度のあり方について」に対する意見(126頁〜)

「1 対象機器・記録媒体の範囲」について(126頁〜)

  • 現行制度においては、実際に私的録音録画に供されているにもかかわらず、制度上の制約から対象とはならない機器、記録媒体が数多く存在しており、そうした機器や媒体に使用実態が遷移したことにより、制度そのものが空洞化し、また不公平が生じる結果ともなっている。補償されるべき録音や録画に供される機器や媒体は本来変遷していくものであることから、制度導入時に考えられた機器の類型等により取り扱いを変えることの正当性はもはやなく、129頁のアに示されているように、「録音録画機能が附属機能であるかどうかにかかわらず著作物等の録音録画が行われる可能性のある機器は原則として対象にすべきであるという考え方」とするべきであると考える。
  • 特に、130頁のbにもあげられているハードディスク内蔵型録音録画機器等は、iPodなどの例を見ても明らかなように消費者に対する広告宣伝態様に照らしても、また、現実の用途に照らしても、社会的実態として、私的録音録画を主たる用途としているものであり、制度の対象とすべきものである。
  • ただし、パソコンなど多目的な汎用的機器については、補償金額の決定のプロセスにおいて、実態調査等による私的録音録画への関与割合に応じて補償金額を按分するなどの配慮を行うことが望ましい。また仮にパソコンが除外される場合にも、パソコン用のCD-R/RWについては、音楽CDを複製する媒体として利用される実態が顕著であり、その影響も大きいことから制度の対象とすることが望ましいと考える。またこの場合、パソコンと同様に、補償金額の決定プロセスにおいて、一定の配慮を行うことが望ましい。

「2 対象機器・記録媒体の決定方法」について(133頁〜)

  • 対象機器、記録媒体の決定にあたっては、いかなる方式を採用するとしても、技術の変遷や多機能化に対応できるような柔軟な仕組みが必要である。ここで整理されているように、公的な「評価機関」の審議による場合には、委員構成の公平性や審議過程の透明性が担保されることが需要であり、その議決方法を明確化した上で、いつまでも結論が得られないような可能性を排除すべきである。

「3 補償金の支払義務者」について(135頁〜)

  • 補償金制度を導入している国のうち、わが国を除く全ての国がメーカー、輸入事業者を支払義務者と定めている。私的領域において行われる複製の受益者は一義的には複製を行うユーザーであるが、メーカー等も、複製手段を提供することにより利益を上げていることから、複製を行わなかったユーザーへの返還制度が機能しないといった現行制度の問題点を解決するためにも、メーカーを支払義務者とするべきである。
  • 私的複製に関連して、補償金制度と表裏の関係にあるといえる「コピーワンスの緩和」を検討した総務省の「デジタルコンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」においては、コピーワンスを緩和することの前提として、コンテンツへのリスペクトと、コンテンツの流通の成果をクリエーターに適正に還元することを理念として掲げて議論を重ねた結果、緩和を実現した経緯を持つ。私的領域におけるコンテンツ流通の受益者であるメーカー等が、その成果のクリエーターへの還元について、進んで分担しようとする姿勢を持たない限り、私的領域における複製に関する問題は本質的に解決しないと考える。

「4 補償金額の決定方法」について(138頁〜)

  • 補償金額は、対象となる機器や媒体の実態調査等に基づく私的録音録画への関与割合や、利用の態様、著作権保護技術の影響等を加味して決定されるべきである。また現行制度では、補償金額の決定において、対象機器・媒体の価格に比率を乗じて算出する方式を採っているが、昨今のオープン価格の導入や、発売後の価格の下落が著しいことから、商品の価格が下がれば補償する金額が下がるという矛盾を持っており、現行の「定率制」ではなく「定額制」に改めるべきであると考える。また現行の決定方法においては、権利者とメーカーが交渉を行って決定する形をとるが、交渉が難航する結果、いつまでも結論が得られないなどのこともあり、前出の評価機関などの場において、その議決方法を明確化した上で、いつまでも結論が得られないような可能性を排除すべきである。

「5 私的録音録画補償金管理協会」について(139頁〜)

  • 音楽と映像に関わる機器が汎用性を帯びてきている昨今、録音専用機器、録画専用機器にカテゴライズできない製品も増えてきていることから、録音と録画を分離して管理することの合理性は失われつつあると考える。よって、録音と録画をひとつの管理協会で管理することが妥当であると考える。

「6 共通目的事業のあり方」について(140頁〜)

  • 共通目的事業は、全ての権利者が特定できないことから「間接的な分配」としての意味合いを持っている。その点から見れば、必ずしも権利者のみを対象として使われていないとの批判もあるが、権利者の辺縁にいる新人クリエーターに対する助成など、広義に権利者全体の利益に使われることは、この制度の社会的な意義に照らせば趣旨に合致していると考えられ、現状の比率、目的で維持することが妥当と考える。また事業の透明性をより確保する意味から、事業内容の公開などを義務付けるなどの措置は必要であると考える。

「7 補償金制度の広報のあり方」について(141頁〜)

  • この制度の優れている点について広報をすることは、消費者、メーカー、権利者のいずれにとっても有意義なことと考える。

以上

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