9.日本音楽事業者協会

『該当ページ及び項目名』97ページ〜 第7章 第1節 私的録音録画補償金問題の検討にあたっての基本的視点について 及び全体

現行の私的録音録画補償金制度は10余年もの議論を経て、関係利害者間の合意のもと設けられた制度である。その制度が技術の発展により、実態からかけ離れ、権利者が経済的損失を被っている状況にあることは、既に言うまでもない。
今回、制度の見直しを目的に公の場で、消費者・メーカー・権利者の代表が意見を交わし、中間整理を取りまとめた行為については一定の評価をするが、両論併記という結果に終わり、合意の上での中間答申ができなかったことは残念である。
本会は私的録音録画補償金制度が関係利害者間のバランス調整にとどまらず、我が国における文化的所産を国民が広く共有できる政策となることを切に願っている。であるがゆえ、その原点を担う権利者にしわ寄せを強いるような制度設計は、直ちに見直すことが必要と考える。
以下、中間整理に対する本会の意見を列記した。今後の最終結論に向けての議論の中で、反映されることを期待する。

5.6.
『該当ページ及び項目名』100ページ〜 第7章 第2節 著作権法第30条の適用範囲の見直しについて

違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画と、適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画を第30条の適用除外とすることに賛成である。
前述は、通常の利用を妨げる利用形態であり、権利者側としては容認できる利用形態ではない。秩序としても、違法サイト等からの複製は違法という立法趣旨は、消費者にも受け入れられやすいと推測する。
後述については、権利者が著作物等の提供者(配信事業者等)と契約し、この契約内容に基づき、当該提供者と消費者が契約を結ぶことにより、消費者の録音録画を管理することが可能である。よって、録音録画の対価を確保することも可能であり、第30条の適用除外としてもよいと考える。

一方で、レンタル店で借りた音楽CDからの私的録音、適法放送のうち有料放送からの私的録画について、契約時に複製の対価が含まれており、二重取りになっていないかという指摘については、当該事業者からも説明があったように、本会も同様、複製の対価が含まれているとは考えていない。また、他人から借りた音楽CDからの私的録音を除外することに関しては、取り締まれるすべもなく違法状態を放置するだけと推測する。
よって、これらを第30条の適用除外とすることは適当ではない。

5.6.
『該当ページ及び項目名』110ページ〜 第7章 第3節 補償の必要性について

著作権法第30条(私的使用のための複製)は権利制限であり、本来、著作者等が有する複製権(実演家には録音権及び録画権)が例外として免責されるというものである。免責される条件として併記されている補償金制度を、バランスを考慮せず一方のみ廃止という意見はナンセンスであり、受忍限度を遥かに超えた今日の状況下では、権利者が被る経済的不利益に対して、その対価相応の補償の必要性があることは言うまでもない。

たとえ著作権保護技術によって、複製回数に一定の制限があるとしても、大半の範疇で対応しているわけではなく、不備のあるDRMも混在する中、補償の必要性はないというのは誤った解釈である。

今日、著作権保護技術の普及は不十分であり、権利者側がその内容を選択し、行使できるような状況にもない。また、著作権保護技術の普及による権利の保護が整い、対価が確保できる仕組みが構築されるには、ほど遠い道のりである。よって、著作権保護技術により補償の必要性がない、補償金制度廃止を唱えるのは時期尚早である。

5.6.
『該当ページ及び項目名』123ページ〜 第7章 第4節 補償措置の方法について

補償措置の方法としては、従来通り補償金制度による対応がふさわしいと考える。また、録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計に賛成する。ただし、現行制度の中では、その機能が十分に果たされていない部分もあり、メーカーが支払義務者として責任を負ったり、料率制を定額制に変更するなど、制度設計を変える必要がある。

5.6.
『該当ページ及び項目名』126ページ〜 第7章 第5節 私的録音録画補償金制度のあり方について

補償金対象機器・記録媒体の範囲の見直しについては、直ちに消費者の利用実態から乖離した現在の制度を見直し、修正しなければならない。
具体的には、著作物等の録音録画が行われる可能性がある機器(パソコン関連等の汎用機器、媒体を含む)は原則として、全て対象にすべきと考える。その上でバランスを考慮した金額を設定することが望ましい。
現状の政令指定方式では、即時性、柔軟性に欠ける面があり、指定が遅れることにより、権利者は多大な損害を被っている。よって、議決方法の明確化を図るための公的な「評価機関」を設け、前述のような問題点が是正されることに賛成する。
また同時に、審議は製品の流通前に行われ、消費者が手にする前には、必ず政令指定の決定がなされていることを要望する。

支払義務者については、諸外国同様、メーカーが支払義務者となるべきである。唯一日本だけが協力義務者となっている現状は、国際的に見てもメーカー側の主張に整合性がなく、不合理と言える。メーカーは責任を消費者に転嫁するのではなく、メーカー自らが支払義務者となって、製造コストに計上し、そこから支払うべきである。これによって、返還制度も廃止でき、消費者の疑念も払拭できよう。消費者・メーカー・権利者が互いに恩恵を享受できるような構造にするには、メーカーのより一層の責任と理解が不可欠だと考える。

補償金額の決定にあたっては、利用実態に応じた課金が望ましい。当然、著作権保護技術の影響度も考慮しつつ、プレイスシフト、タイムシフトなどの要素も反映させるべきであろう。また、認可申請前に関係者が意見交換を行い、合意された金額が申請される慣行を継続することに賛成である。

私的録音補償金管理協会、私的録画補償金管理協会を統合し、合理的運営を行うことに賛成である。近年、補償金の対象となる機器・媒体が、録音専用・録画専用と明確に区分できない、兼用型であるケースも増えてきており、そういったものに対し、どちらと区分するよりも、一括して取り扱う方が適当ではないかと判断する。

共通目的事業の継続は賛成である。ただし、全体の2割以内という現在の比率は適当な範囲であり、これ以上の拡大は本会として望んでいない。現状の範囲内において事業費を有効活用し、権利者全体しいては広く社会全体が利益を享受できるような事業を計画・実施することが共通目的事業継続賛成の条件である。

以上

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