「権利者が被る経済的不利益」は、「私的録音録画のために権利者の許諾を得る必要があるとすればそこで支払われたであろう使用料相当分が経済的不利益である」と考えるのが妥当である(補償措置は権利制限の代償)。そして、第2章記載の私的録音録画の実態から明らかなとおり、権利者の経済的不利益は受忍限度を超えていると考えられる。
なお、「権利制限することによって、権利者の許諾を得て行われる事業(販売、配信、放送等)に与えた経済的損失が経済的不利益であるとする考え方(補償措置は新たな権利の付与と同様)」は、ベルヌ条約等に定められた、いわゆる「スリー・ステップ・テスト」の考え方に適合しないと考えられる。なぜなら、権利者の許諾を得て行われる事業に経済的損失を与えるのであれば、それは“著作物等の通常の利用を妨げる”利用形態であり、そもそも権利制限の代償として補償措置を講じたとしても許容されない(権利制限が許されない)こととなるからである。
以上