7.日本レコード協会

1.「100ページ〜109ページ、第7章第2節 著作権法第30条の適用範囲の見直しについて」

【意見】

  • (1)違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外すべきである。
    平成18年の音楽配信売上は535億円(前年同期比156パーセント、当協会調査)であり、配信技術の進展やカタログの充実、サービスの多様化等に伴うユーザー利便性の更なる向上により、今後も一層の成長が期待される。しかしながら、中間整理に記載のとおり、インターネット等においては違法な利用による夥しい量の音楽コンテンツが流通し、権利者に深刻な被害を与えている。特に、音楽配信売上の9割を占めるモバイル向け音楽配信分野において、一昨年頃から、違法音楽配信サイトが急増し、その利用の蔓延により正規の音楽配信市場の成長が大きく阻害され(注)、モバイル向け音楽配信のビジネスモデルの維持・発展が困難な状況に至っている。
     拡大する音楽コンテンツの違法な流通を防止し、音楽産業の健全な発展を図るためには、違法音楽配信サイトからのダウンロードを著作権法第30条の適用範囲から除外し違法とするとともに、民間レベルでの広報・啓発活動及び学校における著作権教育を一層充実させ、ネットワーク環境に適合したITモラルの涵養を図ることが必要である。
     なお、無許諾のアップロードを違法とすることで十分との意見があるが、権利者の被害は実質的にはダウンロードされることにより生じるものであることから、現在権利者が受けている被害実態を勘案した場合、違法サイトからのダウンロードを合法とすることは適当でないと考えられる上、自動公衆送信においてはリクエストによって違法送信が行われ、そのリクエストをするのはダウンロード側であることから、ダウンロードを違法とすることによって違法送信を減少させることができる。更に、海外で日本向けのサイトが多く公開されている事実を踏まえると、アップロード側だけへの対処では違法送信を撲滅することが容易でなく、ダウンロードを違法とする実益がある。
     また、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、インターネット利用を萎縮させる懸念もあるとの意見もあるが、違法サイトと承知の上で(「情を知って」)録音録画する場合に限定するなど適用除外の範囲に一定の条件を課すことにより、知らずに罪を犯すリスクをユーザーに負わすことのない制度設計とすることができるので、上記の懸念は当たらない。なお、権利者としても適法サイトを識別するためのマークを制定し広くユーザーに周知を図る予定である。

    • (注) 当協会が昨年11月に実施した調査によると、モバイル向け違法音楽配信サイトからのダウンロード数(着うた及び着うたフルの合計)は、年間2億8,700万ファイル以上と推定されるが、これは昨年のモバイル向け有料音楽配信ダウンロード数(着うた及び着うたフルの合計)2億8,257万回に匹敵する規模である。
  • (2)他人から借りた音楽CDからの私的録音およびレンタル店から借りた音楽CDからの私的録音の取扱いについては、私的録音実態の推移や権利者への影響等を見ながら、今後も継続して検討すべきである。

2.「110ページ〜122ページ、第7章第3節 補償の必要性について」

【意見】

 「権利者が被る経済的不利益」は、「私的録音録画のために権利者の許諾を得る必要があるとすればそこで支払われたであろう使用料相当分が経済的不利益である」と考えるのが妥当である(補償措置は権利制限の代償)。そして、第2章記載の私的録音録画の実態から明らかなとおり、権利者の経済的不利益は受忍限度を超えていると考えられる。
 なお、「権利制限することによって、権利者の許諾を得て行われる事業(販売、配信、放送等)に与えた経済的損失が経済的不利益であるとする考え方(補償措置は新たな権利の付与と同様)」は、ベルヌ条約等に定められた、いわゆる「スリー・ステップ・テスト」の考え方に適合しないと考えられる。なぜなら、権利者の許諾を得て行われる事業に経済的損失を与えるのであれば、それは“著作物等の通常の利用を妨げる”利用形態であり、そもそも権利制限の代償として補償措置を講じたとしても許容されない(権利制限が許されない)こととなるからである。

3.「126ページ〜142ページ、第7章第5節 私的録音録画補償金制度のあり方について」

【意見】

  • (1)現行の私的録音録画補償金制度が導入された平成4年以降の技術の発達等による私的録音録画実態の大幅な変化に対し、制度が追いついていないため、権利者の経済的な不利益がますます拡大している。この場合、特に補償金の対象機器・記録媒体の見直しが急務であると考える。私的録音録画を主たる用途としている機器である限りは、分離型機器と一体型機器を区別する理由はない。従って、少なくとも携帯用オーディオ・レコーダーやHDD録画機器は補償金の対象とすべきである。
     なお、著作物等が著作権保護技術を用いて提供されるもの、例えば、地上デジタル放送に関する私的録画については補償の必要性がないとの意見があるが、本件は総務省のコピーワンスの見直しに関する検討プロセスにおいて明らかなとおり、権利者が補償措置を前提に、ユーザーの利便性を最大限に配慮した結果であり、権利者において個々に著作権保護技術の選択ができない現状からして、これを本来の権利者の意思ということはできず、補償措置から除外することは適当でない。
  • (2)対象機器・記録媒体の決定は、迅速に行われることが重要である。そのために今後予定されている「公的な評価機関」の検討にあたっては、委員構成の公平性、審議過程の透明性に加えて、議決方法も明確にすることが必要であり、一人でも反対者がいれば対象機器・記録媒体として指定されない、ということのないようにすべきである。
  • (3)補償金の支払義務者は、現行制度においても製造業者等の協力義務は事実上の支払義務を負っているのと同様であり、返還制度の実効性等を勘案した場合、機器・記録媒体の製造事業者等とすべきである。
  • (4)補償金額は、記録媒体および一体型機器については録音録画可能容量に応じた補償金とする等、当該機器の価格に影響されない金額とするべきである。また、権利者と機器等の製造事業者間で補償金の額について協議が整わなかった場合には、前記の「公的な評価機関」が妥当な補償金の額を決定すべきであり、両者間で合意がない限り評価機関で審理しない、という取り扱いにならないようにすべきである。

以上

前のページへ

次のページへ