4.日本民間放送連盟

<「私的録画補償金制度」に関する基本的な考え方>

 「私的録画補償金制度」は、番組を録画できるという“視聴者の利便性”を守りながら、“権利者の正当な利益”を確保し、両者のバランスを図るために必要不可欠な制度である。

<「中間整理」の個別項目に関する意見>

(1)補償の必要性について

 放送番組について“放送時点で広告収入により投資回収は完了していること、放送番組の二次利用は進んでおらず、録画によって正規品の購入や再放送の視聴が妨げられるとはいえない”(117頁)といった意見が取り上げられているが、放送番組を「一度でも」録画されれば、放送事業者が放送番組の二次利用を行うにあたり、正規品の購入や再放送の視聴が妨げられるとともに、インターネットでの放送番組配信など将来のビジネスチャンスにまで影響を及ぼす可能性がある。
 このように「一度でも」録画が行われれば、権利者には不利益が生じており、その不利益は軽微なものではない。また、便利で記録容量の大きい録画機器が販売されることによって、私的録画量が増大する環境が作られていることや、消費者のニーズを反映し、総務省・情報通信審議会「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」が、デジタル放送の複製回数を、現状のコピーワンスからコピー10回へ大幅に緩和することを提言しており(第4次中間答申)、その実現に向けて関係各機関で調整中であることなど状況変化が生じてきていることから、それによって権利者の被る不利益に対する補償措置が必要である。

(2)タイムシフト目的の録画について

 そもそも私的録画はすべての権利者の権利を「制限」することにより可能となっているもので、視聴者が当然に持つ「権利」ではない。この「制限」がなければ許諾を得て、使用料を支払って録画しなければならないと考えれば、この点はタイムシフト目的の録画も他の私的録画と同じである。また、「一度でも」録画されれば権利者に不利益が生じるのは、(1)で述べたとおりであることからも、“(タイムシフト目的の録画は)他の利用形態に比べて経済的不利益が相対的に低い”(119頁)とはいえない。したがって、“タイムシフトの要素を補償金額の設定に当たって考慮事項とすること、反映すること”(119、138頁)には反対する。

(3)著作権保護技術と補償の関係について

 著作権保護技術が施されている場合も、(1)のとおり、「一度でも」録画ができれば、権利者には不利益があり、補償の必要性があることに変わりはない。
 デジタル放送に施している著作権保護技術は、中間整理でも触れられているとおり、視聴者の私的録画の回数をコントロールするためではなく、視聴者の利便性に配慮しつつ“デジタル録画された高品質の複製物が私的領域外へ流出することを抑制する”(115頁)ことを目的とするものであり、権利者が積極的に私的録画を許容する意図をもつものではない。したがってデジタル放送において複製回数に制限があっても、録画ができる以上は当然に補償が必要である。

(4)私的録音録画補償金制度の対象機器・媒体について

 「私的録音録画小委員会」は、利害関係者を含めて構成する小委員会であることから、多くの点で意見の一致をみていないが、現状において記録媒体内蔵型録音録画機器や、いわゆる次世代DVD(ブルーレイディスク、HD−DVD)が対象機器・媒体になっていないことは、現在の対象機器等との間で著しく公平を欠いている。少なくともこれらの機器等については早急に補償金制度の対象に追加することを強く要望する。

(5)著作権法第30条の適用範囲の見直しについて

 有料放送からの私的録画を著作権法第30条の適用範囲とするかどうかの検討においては、利用者から私的録画の対価が徴収されている実態が確認できないことを述べたうえで“現行の契約体系を変更することが困難である”として“適用範囲から除外することについて慎重な意見が多かった”(109頁)とした点に賛同する。法改正により、現行のビジネスモデルや権利者・視聴者と有料放送事業者間の契約に大きな変更を余儀なくされることは、いずれの関係者(視聴者・権利者・有料放送事業者)にとっても有益なことではない。

以上

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