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著作権分科会 私的録音録画小委員会(第7回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年7月11日(水曜日)10時〜12時

2. 場所
フロラシオン青山 はごろも

3. 出席者
(委員)
石井、井田、大寺、華頂、亀井、河村、河野、小六、椎名、津田、筒井、土肥、中山、野原、野村、生野、松田、森田
(文化庁)
高塩次長、吉田審議官、亀岡国際課長、川瀬著作物流通推進室長ほか

4. 議事次第
(1) 制度の枠組みについて
(2) その他

5. 資料
資料1   前回の意見概要
資料2 井田委員提出資料
資料3 大寺委員提出資料(PDF:84KB)

参考資料1   私的録音録画に関する制度設計について
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料2 現行制度の概要について
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料3 検討の進め方
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)

6. 議事内容
(中山主査)
 それでは、時間でございますので、ただいまから、文化審議会私的録音録画小委員会の第7回を開催いたします。本日はご多用中、ご出席を賜りまして、ありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開には及ばないと考えられますので、既に傍聴者の方々にはご入場していただいておりますけれども、このような処置で特段異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

(中山主査) ありがとうございます。それでは本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々には、そのまま傍聴をお願いいたします。
 まず、事務局におきましては人事異動があるということでございますので、事務局より人事異動の報告をお願いいたします。

(木村課長補佐) 事務局の人事異動につきましてご報告いたします。
 本日、辞令交付にて出席しておりませんが、7月11日付で、山下和茂が、文部科学省初等中等教育局教科書課課長より文化庁長官官房著作権課課長に就任しております。また、前任の甲野正道でございますが、文部科学省大臣官房付に異動となっております。以上でございます。

(中山主査) それでは議事に入ります。まず、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

(木村課長補佐) 恐れ入りますが、お手元の資料の確認をお願いいたします。
 本日の配付資料の議事次第、1枚ものでございますが、下半分に配付資料を示させてもらっております。
 まず、資料1でございますが、前回、第6回の小委員会の意見の概要でございます。資料2でございますが、井田委員からの提出資料でございます。資料3でございますが、大寺委員からの提出資料でございます。
 そのほかに、参考資料1といたしまして、私的録音録画に関する制度設計について、参考資料2、現行制度の概要について、参考資料3、検討の進め方について、これは前回まで配付したものと同じものでございますが、配付しております。
 さらに、本日お手元に配付しております、配付資料の青い冊子がございますが、この中には、第6回委員会でご提出いただきました意見書等の資料もとじ込ませてもらっております。
 よろしいでしょうか。

(中山主査) それでは、議事の段取りについて確認しておきたいと思います。本日は、前回に引き続きまして、私的録音録画に関する制度設計についての議論を続けていきたいと考えております。
 最初に、前回議論いたしました、「制度の全体について」と「前提条件の整理(1)第30条の範囲の縮小」に関係する意見が、井田委員及び大寺委員から提出されておりますので、まず、両委員からご説明をお願いしたいと思います。
 なお、井田委員におかれましては、意見の内容のうち、「基本的な考え方」と「第30条の範囲の縮小」の関係についてのみご説明いただきまして、それ以外につきましては、おのおのの箇所でご説明していただければと思います。
 まず、井田委員、よろしくお願いいたします。

(井田委員) 日本記録メディア工業会の井田でございます。お手元に意見書としてお届けしておりますので、そちらを見ていただきながらで結構だと思うんですけれども、まず、私ども工業会の基本的な考え方といたしましては、2006年1月の文化審議会著作権分科会報告書にありますように、「私的録音・録画についての抜本的な見直し及び補償金制度に関してもその廃止や骨組みの見直し、更には他の措置の導入も視野に入れ、抜本的な検討を行うべき」という考え方で進めたいと考えております。
 前から申し上げておりますように、「抜本的な検討を行う」というためには、“どのような行為に、補償措置が必要であるのか”ということについて、例えばレンタルや配信ビジネス等の実態や「タイムシフト」、「プレイスシフト」といった利用態様との関係が十分に検討されることが不可欠であるという前提に立っております。
 こういった、何に対して補償が必要であるのかがわからない状況下で、やみくもに制度設計を行うということは適切ではないというふうに考えております。
 また、国民生活に少なからぬ影響を及ぼす内容であるにもかかわらず、あたかも一定の結論が先に存在するかのような構成の資料が検討されようとしていることに対して、強い懸念を感じております。
 以上が基本的な考え方でありまして、「前提条件の整理」について、まず、「(1)第30条の範囲の縮小」についての部分でありますけれども、特に、前回も申し上げましたけれども、イについて、いろいろ議論はあると思いますが、まだ十分議論が尽くされていないと考えておりまして、補償金制度が、ほかにとり得る手段がないために設けられた妥協の産物であるということは、多くの委員が言っておられる内容だと思うんですけれども、ほかの手段があるかどうか、つまり「利用者の録音録画を想定した対価を取得し得る、契約等の他の手段があるかどうか」という基準によって判断すべきと考えております。前回も申し上げましたように、レンタル等についても個別的、具体的に検討すべきだというふうな考えを持っております。
 以上でございます。

(中山主査) それでは、大寺委員、お願いいたします。

(大寺委員) 前回も、30条の適用範囲と有料放送の関係について意見を申し上げました。適法配信と形態的に似通っているじゃないかというようなニュアンス、印象を受けられたかもしれませんが、言葉が舌足らずだったかもしれませんので、念のため、具体的に中身を説明させていただきます。
 現在、ここにポンチ絵を描かせていただいておりますが、有料放送事業者につきましては、当然、権利者との間での権利の許諾、放送の許諾ということで契約を結んでおります。それから視聴者との関係においては、放送を行うということで課金をし、ということは視聴料をいただいているわけですが、一定のアクセスコントロールもかけているという状況です。
 左のほうに、録画云々と書いてありますが、ここが30条による私的録画ということですが、現状を申しますと、権利者とのライセンス契約については、先回も述べましたが、視聴者による録画というものは含まれておりません。また、視聴者からの視聴料の中身は、放送を見るということの対価でありまして、録画の対価というのは受け取っていないという状況にあります。これが現状です。
 そこでなんですが、有料放送なんですけれども、現在、視聴料と補償金の二重取りということについては、先回も皆さんご納得いただいたように、二重取りという形にはなっておりません。さらに、有料放送サービスというのは、録画を前提としたサービスではありません。2点、権利者との関係と視聴者との関係でお話を申し上げたいと思います。まず、権利者との関係において、すべての権利者から「視聴者の録画」の許諾を得るということは極めて困難であります。放送といいますのは、放送のみをライセンスの条件としますものです。また、放送は、時間的に連続的に編成、放送される一連の番組の集合でございます。その番組の中には、例えば権利者が不明になると、放送以外の複製録画の権利を許諾することができないようなものもございますし、また権利者の中には、複製録画に対して消極的な方のいる番組も実際にございます。
 さらにまた、放送は、録画を行う視聴者の数だとか、どの番組を実際に録画されているかということを具体的に把握するような仕組みを今持っておりません。ということで、録画の負担というのを実際に具体的に見積もることもなかなか難しい状況にあります。
 これと裏腹なんですが、視聴者との関係を申しますと、放送というのは、多数の番組を1つのチャンネルで、これを伝送路としまして不特定多数の視聴者に届けるという、片方向のサービスの形態です。個々の視聴者が番組を録画するか否かについて、放送事業者のサイドで把握するということはできない状況にあります。また、たとえば、視聴者において、伝送路が、例えば空中の電磁環境が悪くて電波が届かないとか、あるいは実際に録画機器の不具合で録画できないといったときに、それに対して放送側が再送信するようなサービス形態をとっておりません。
 ということで、録画を保証するということも、私どもの視聴者との間の契約においては入っておりません。これは、例えばiTunesなんかと違うところでございます。
 そういうことでございまして、有料放送というのは一見、適法配信と似たように見えますけれども、実際のサービスモデル、ビジネスモデルとしては大きく異なっています。そういう意味で、有料放送の私的録画を30条の適用範囲から除くということについては、適当ではないというふうに考えております。
 以上です。

(中山主査) ありがとうございました。前回の最後にも申し上げましたとおり、30条の範囲の縮小の問題についてはいろいろ意見が出まして、これで終わりということでなくて、これからも議論を続けていきたいということですけれども、ただ全体が関係しておりますので、ここだけじゃなくて、次の話に進んでいきたいと思いますけれども、しかし今、2人の委員からご説明がありましたので、それにつきまして特段のご意見、ご質問がございましたらお願いします。
 河野委員、どうぞ。

(河野委員) 有料放送のところでお話し申し上げたいんですが、それに入る前に、資料1の意見の概要に関することを1点だけ。先回、違法サイトとは何かという一連のお話があったと思うんですけれども、そこのやりとりのところがごっそり、意見の概要には入っていないのではないかと思いますので、そこをフォローしていただければというふうに思います。
 有料放送のところですけれども、今ご説明いただきまして、ありがとうございます。いただいた図には、保護技術との関係で言うと、黄色いの丸の中に「アクセスコントロール」というのが書いてございます。一方、青の丸の録画の領域のところには全く技術のことは触れられていないんですけれども、ここについても、コピーコントロールというのがなされています。二重取りかどうか、どういうビジネスモデルかどうかということで、私が知っております有料放送の事例を、これから2つご紹介したいと思います。委員の皆様にぜひ、こういう場合に二重取りに当たるのかどうかということを、ご一緒に考えていただければと思います。
 1つは、WOWOWさんがおっしゃっている意見です。こちらは、総務省のほうでずっとやられております、地上デジタル放送のコピーコントロールの見直しに関して、昨年、第3次中間答申が出たときに、パブリックコメントで出された意見です。関連すると思われるところを読み上げさせていただきます。
 「コピーワンジェネレーション」は、放送事業者のビジネスモデルに基づいて運用が行われている。BSや110度CSなどの有料放送事業者には、著作権者が著作権保護の仕組みの運用として「コピーワンジェネレーション」を必須とする番組が多数ある。各放送事業者と著作権者との契約内容を踏まえて、コピーコントロールの緩和の議論をしてほしいという趣旨のことが書かれています。
 ここでははっきりと契約上の前提として、私的複製の領域で行われるコピーの程度について、前提として考えているということが述べられているのではないかというのが私の理解です。
 もう1点は、CSですけれども、スカパー!さんのホームページを見てみました。そこに、「よくある質問」というコーナーがございまして、「録画制限(コピー制限)の種類」というページがあるんですね。そこで、スカパー!では、「番組によって「コピーコントロールイコール録画制限」を実施しています」。「録画制限の設定状況は、番組ごとに設定されており」、録画制限は、EPG、電子番組表ですけれども、「EPGで各番組の詳細情報を呼び出してご確認ください」というふうになっておりまして、コピーコントロールの種類をいろいろと丁寧に説明してくださっているホームページになっています。
 例えばアナログ録画をする場合でも、こういう場合はできますとか、こういう場合はできませんとか、数種類書いてあって、アナログ録画ができる場合、アナログ録画と言っているのはアナログ機器でアナログ記録をする場合ですが、アナログ記録をするのもできませんという番組もあれば、アナログ記録であればオーケーですと言っている番組もあれば、デジタル録画はできないけれどもアナログ録画はできますと言っている番組もあれば、デジタル録画であっても、コピーの制御がされていない番組もあるし、コピーが1回というふうになっているのもあるし、コピーができないという番組もありますということで、ご説明してくださっています。
 こういう幾つかのパターンで番組提供ができるようにするというインフラを、有料放送事業者さんは一生懸命おつくりになっているのではないかというのが私の理解です。
 1つだけ、メーカーとして残念だなと、大寺さんの資料を拝見していて思ったのは、技術により一定のコントロールをしていくということは、優良な放送コンテンツが継続して流れるためには必要であろうというふうに思うからこそ、一生懸命技術の提供であるとかいうことをして、秩序ある世界をつくろうと努力させてきていただいて、一緒にやってきたんだなと思っていたんですけれども、「視聴者の録画を管理できない」というふうに書かれてしまうと、今まで我々が技術的な提供、それからコンテンツの流通の市場を秩序あるものにしようとしてきた努力は一体何だったんだろうかと、ちょっと残念に思いました。
 最後に、私ごとで恐縮なんですけれども、私はWOWOW、スカパー!、両方とも契約視聴者です。あなたの払っている料金は受信機までで、受信して見るだけのお金であって、見るためであっても録画をする行為は別途お金をほかのところで払ってくださいと言われるのは、とても承服できないし、これは二重取りではないのかなと個人的には思います。以上です。

(中山主査) ほかにご意見ございましたら。
 よろしいでしょうか。先ほど言いましたように、この問題もまた関連で出てくると思いますので、とりあえず次に続けたいと思います。事務局のほうでは、いろいろ意見を整理して、また出していただければと思います。
 引き続きまして、参考資料1、私的録音録画に関する制度設計の項目に沿って、順次議論を進めていきたいと思います。
 なお、意見書を提出していただいている委員もおりますので、前回と同様、項目ごとの議論の中で、意見の内容を説明していただければと思います。
 まず最初に、「1 前提条件の整理」、「(2)著作権保護技術と補償の必要性との関係」から議論を進めていきたいと思います。
 一応、議論の目安といたしまして、1ページの「著作権保護技術と補償の必要性との関係」、この点についてのご意見をちょうだいしたいと思います。ご意見ございましたら。
 亀井委員、どうぞ。

(亀井委員) 今し方の河野委員のご発言にもかかわるところでございますが、JEITAといたしましては、第4回のときに、技術的保護手段と補償の要否という意見を出させていただいております。この参考資料1の上で議論するということでございますけれども、例えば最初の3行のところでは、問題の立て方といたしまして、「併存可能と考えられるが」というところ自体にJEITAは賛成していないということでございます。ここでは、併存可能であるのか、あるいは著作権保護技術が利用される場合に、補償は不要なのかというような論点であるべきと考えます。
 JEITAといたしましては、今は有料放送のお話でございましたが、無料放送においても、技術的にコントロールが可能である限りにおいては、著作権者の意思がそこに反映し得るということで、補償は必要ではないという意見を持っております。
 以上でございます。

(中山主査) どうぞ、大寺委員。

(大寺委員) 前回の私の意見書の中をなぞっていただきたいと思いますが、今の河野さん、亀井さんの話で、放送事業者としては、やはり権利者の方々への配慮ということで、できるだけ複製録画というものを抑えたいというのが私どもの考えです。ただ、30条で私的使用というものがあることから、一応権利者のほうの許諾、権利者の権利の制限という形で私的使用等がある。そうした中で、補償金制度というのは、放送の関係でいいますと、今まではコピーワンスだったんですが、1枚でもDVDがあると、全国すべて、いろいろな方々がそのDVDをつくられる可能性があり、私たちもそうですが、特に権利者のほうの権利もそれによって害される。
 例えば、現在いろいろ問題になっています、YouTubeなんかの話もそうですが、あるいは、よく警察が摘発する、路上での違法DVDの販売とか、いろいろな好ましくない状況を惹起する可能性も出てきているという状況であります。
 そういうことで、放送としましては、補償金制度というのはやっぱり必要なんだろうというふうに、一般的に思っております。
 著作権保護技術と補償の必要性の関係ですが、私のペーパーを簡単に要約させていただきます。一般的に申しますと、これまでの10数年、デジタル技術のコピー制御とそれを回避する技術開発とは、イタチごっこになっているという状況にあります。そうした中で、私たちとしましては、コピーワンスの導入というのは、視聴者に対して、30条に定める私的複製の範囲で、テレビ番組の録画機会を担保した上で、例えばインターネットオークションだとか動画投稿サイトに見られるような、テレビ番組の違法流出を防ぐために行っているという状況にあります。
 私的使用目的で録画されるテレビ番組が違法流出に供される場合も多くて、適法な複製と違法な複製の垣根がどんどん小さくなって、低くなっているという状況にあります。視聴者の録画について、あくまで30条の範囲で行われるものであるためには、放送事業者については、権利者からの複製の許諾を得ていないんです。視聴者に対しても録画を許諾しているものではありません。
 以上のように、著作権保護技術と私的複製を取り巻くさまざまな要素が相まっている状況において、何度も申し上げておりますように、業者、視聴者の利便性と権利者の利益のバランスをとるということから、補償金制度はやっぱり有用であるというふうに思っておりまして、これは維持すべきだろうと考えております。以上です。

(中山主査) どうぞ、華頂委員。

(華頂委員) 前回提出しました私の意見書は資料10になっていましたけれども、そこにも書きましたが、ア、イ、ウのいずれの場合にせよ、これまでその都度主張しているように、映画の著作物はコピーネバーが基本でありますので、DVD等のパッケージソフトや適法配信のように、権利者が主体性を持ってコピーコントロールを行うことができるという条件が整わない限り、補償金制度は必要であるというふうに考えています。
 映画の著作権者は、私的録音録画に関して、補償金を受け取ることを第一義的に考えたことは、いまだかつて一度もないです。現にDVD等のパッケージ商品については、複製禁止で補償金はなしという選択をしています。これは、DVD等のパッケージ商品を複製禁止としても、何ら不都合を来すことがないからです。ただ、フリーテレビのタイムシフト視聴に関してのみは、さまざまな問題を多数はらんで、不都合を生じる恐れがあるというふうに考えて、短絡的にコピーネバーにすることには馴染まないのではないかと思っています。
 総務省の検討会で、まさにそのことを半年以上、長きにわたって議論してきているわけですけれども、そのような経緯の中で、地上波デジタル放送の著作権保護技術に関して、映画の著作権者としては、補償金制度の運用との兼ね合いで譲歩せざるを得ないという結論に至ったわけです。苦渋の決断といいますか、非常に不本意ですが、そういうことになっています。

(中山主査) ほかに。どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) 意見書にも書いたことなんですが、まず、アの場合というのは、保護技術によって複製の総体が減少して、結局コピーができない状態が実現したということと読めばいいと思うんですが、ウの場合というのは、著作権保護技術と契約の組み合わせによって、個別課金ができるというふうな状況になったとき。このアとウの場合は確かに補償の必要性がなくなると思うんですが、問題はイの場合でありまして、意味合いとしては、アとウの中に包括されていくんだと思うんですね。ただ、書き方があいまいであるということで、いろいろな拡大解釈ができてしまって危険ではないかと思います。
 例えば、配信ビジネスというのがまだ黎明期にあって、いろいろな業態が出てきては一時的に寡占状態が起きたり、そういった時期にあって、配信のプラットホームからハードウエア、ユーザー端末に至るまで、一手に保有している業者さんなんかが一定のスキームを寡占的につくり出して、自分のコンテンツを流そうというときに、DRMの裁量についても裁量権がなく、また値づけについても裁量権がないというふうな場合に、しかしながら権利者が流そうとすると、それに同意しなければならない、せざるを得ないというふうな状況がある中で、イを拡大解釈して当てはめてしまいますと、補償金の持っている裏の意味といいますか、利益調整の部分が一切見失われてしまうのではないかという意味で、イの書き方というのは非常に危険なんじゃないかと思います。
 あと、亀井さんがおっしゃった、DRM、保護技術と補償金制度は併存する必要はないんだ、保護技術の発達によって補償の必要性は既になくなっているんだという議論を、かねてからそういうご主張をなさっていると思うんですが、先ほど来出ています、総務省の検討会の場では、コピーワンスからEPNという、ネットワーク送出しないけれどもコピーフリーであるというところまで、DRMの技術保護レベルを切り下げて、なおかつ補償金制度に言及されていないんですね。
 一方でDRMが補償金制度に取ってかわるとおっしゃっておきながら、一方総務省のほうでは、一切補償の必要性に言及されないままに保護技術レベルを変更なさることを主張された。これはちょっとおかしな話ではないかと思っています。以上です。

(中山主査) どうぞ、小六委員。

(小六委員) 前回、意見書を提出いたしまして、7の2というところで書いてございますけれども、著作権保護技術の進展により補償金制度が不要となると考えられるのは、著作権保護技術により私的複製がすべて禁止される場合か、あるいはすべてに課金できるようになる場合のいずれかではないかと考えております。
 それと、何度も申し上げておりますけれども、著作権保護技術が一体いつ効果的な進展を示すのか、まだ予想がつかない。もしそうだとしても、今あるような状況、あるいはこれから進展していくような状況で、著作権保護技術と補償金制度が併存可能であるということは、これまでの検討から見ても明らかだと思われますし、私たちはむしろ併存すべきものであると考えております。
 補償金制度というのは前提ですけれども、大量の私的録音録画が短時間に可能なデジタルの世界では、一定の回数などに関する秩序、すなわち30条の範囲内の複製にとめるための上限ルールが不可欠であると考えておりまして、その場合においても、かつてパソコンの登場によってSCMSが無効化されてしまったような経験がございますけれども、上限ルールとしての著作権保護技術が、勝手に無効化されてしまうようなルールといいますか、法律でルールを規定する等の保証も必要であるんじゃないかと考えております。

(中山主査) ほかに。どうぞ、生野委員。

(生野委員) 先ほど亀井委員のほうから、権利者の意思でコントロールできる利用というお話があったんですが、その定義に関して、そもそも権利者の意思でコントロールできるというからには、先ほど華頂委員からもあったように、映画についてはコピーネバー、自分のところはコピーワンス、コピー2回まで、3回まで、といったような著作権保護技術が個々に選択可能な状況において初めてコントロールできるというわけです。総務省のコピーワンスの議論でもありますとおり、関係当事者がいろいろ調整の結果、必ずしも権利者の意思がそのまま反映できるような形では決着しない、だからだめだというわけじゃないんですけれども、調整の結果のものは、権利者の意思でコントロールできる利用とは言わないんじゃないかということが1点。
 それと、仮に著作権保護技術が選択可能となり、コントロールできるようになったとしても、放送においてレコードは、レコード実演もそうなんですけれども、そもそもどういう回数制限であれば許諾しますということは言えないわけですね、報酬請求権ですから。だから、コピーネバーで使われようが、コピー5枚の番組で使われようが、何ら権利者の意思が反映できない面もあることをつけ加えておきます。

(中山主査) 井田委員、どうぞ。

(井田委員) アの点なんですけれども、先ほどから、「総体が減少し」という内容について、二、三の委員の方からは、すべてが禁止されたとき、補償金は要らなくなるのかなというご意見もございますけれども、私どもは別の見方をしておりまして、意見書の中でも申し上げておりますけれども、私的録音録画そのものが減らなくても、補償が必要な私的録音録画が減少していれば、補償金制度を維持する必要はないのではないか。これは、補償の要否ということをもっと議論すべきではないかとずっと申し上げているんですけれども、例えば「タイムシフト」や「プレイスシフト」といった利用対応が増えたところで、補償は不要と思われますということでして、そういった私的録音録画まで減って初めて補償金制度が要らなくなるというのは、おかしいような気がいたします。
 それから、同じくアのところで申し述べますと、「厳しく制限されれば」とありますけれども、なぜ厳しく制限されることが要件になるのかというのが、事務局の資料ではよくわかりません。
 いずれにしましても、以前、小委員会の第4回でJEITAさんのほうから、資料3で、「「補償」の必要性についての考え方」という資料が出されておりますけれども、そこにありますように、重大な経済的損失があるかどうか、それから著作権者等によって技術的コントロールが可能か否かといった視点で、補償の要否が判断されるべきだというふうに考えております。以上です。

(中山主査) ほかに。どうぞ、河野委員。

(河野委員) 著作権保護技術と補償の必要性との関係ということですけれども、前回の委員会で津田委員がお示しになっている意見書を拝見いたしました。その中に、仮に補償金制度というのを、権利者と利用者、エンドユーザーとの調整機能として意味を持たせていくのであれば、補償金を払っていることによって、家庭内で自分のために自由にコピーができる、それを担保していくというような考え方がとれるのであれば納得感があるという趣旨のことが書かれておりました。
 この話のときに、著作権保護技術と補償の関係を考えるにあたって、「自由にコピーできる」ということのとらえ方が、立場により異なっているのだと思います。コピーを禁止していないんだから自由はあるでしょうとおっしゃることと、何らかの制約があれば自由ではない、あるいはどの程度をもって自由に利用できている範囲だというのだろうかということに、乖離があるように思います。
 デジタルオーディオのときのSCMSというのは、孫コピーはできないけれども、1世代であれば数の制限なくコピーができました。もう一つ、今の録画補償金の対象となっているアナログ放送については、コピー制御が全くありません。この状態を仮に自由と呼んで、それに対して何らかの補償を払おうということにユーザーとして納得感があったんだとすると、どの程度のものであれば、保護技術がかかった上で補償金を払うという納得感があるのかという話なのではないかと思います。
 ここから先は、立場によってお考えが違っていたり、解釈の違いがあったらご指摘いただきたいんですけれども、私どもの考え方は、もともと30条は無許諾、無償でできたというのがあるわけですよね。そのときの考え方としては、零細性、閉鎖性という消極的な理由もあったと思いますけれども、一方で、新たな創造サイクルをつくっていく過程において、ある程度自由にできる範囲、公正な利用の範囲というのを、私的な使用の領域においても認めていくべきじゃないかという考え方もあったのではないかと理解しています。
 もともとそういう範囲については、積極的に無許諾、無償での利用を認めていこうという考え方を社会全体としてとるのであれば、デジタルになっても依然として、無許諾、無償でできていい範囲というのが、デジタル、ネットワークの時代になっても存在するべきではないかと考えています。もしその領域の存在が必要ないということであるとすれば、まずはその前提のあり方について議論すべきなのではないかと思います。

(中山主査) どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) 去年の議論に戻ってしまうかもしれないんですが、井田委員も、河野委員もおっしゃった、無許諾、無償であろうと思われる部分、例えば「タイムシフト」、「プレイスシフト」というのを盛んにおっしゃるんですけれども、自分で購入したCD以外は複製しない機器でありメディアであったならば、そういう話も成り立つと思うんだけれども、その実態は、そういったことが混然と行われた結果、複製の総体が増大していることが間違いないところだと思うんですね。
 それを、制度上切り分けるために峻別して概念規定するとすれば、例えば補償措置の必要性のところで、具体的な対象機器だとか、対象機器に対する課金の濃淡であるとか、そういうところでの機器の特性ごとに何らかの配慮をしていくということはあるのかもしれないけれども、実際に利用態様を峻別するような機器も媒体もつくられていないわけですよね。例えばウィンドウズみたいに、自分が買ってきたものを入れるとアクティベーションという作業があって、全くオーナー以外がそれをインストールすることができないという技術的な担保がないわけですよね。
 僕が再三言っているのは、そこのところはご主張としてはわかるけれども、そのことで先に進まないというのはおかしいのではないかなと。だから、そこのところを加味して制度設計をすればいいのであって、そこのところにこだわり続けると話が先に進まないのではないかなと思います。

(中山主査) ほかに。どうぞ、華頂委員。

(華頂委員) 映画のコピーコントロールに対するセグメント、分類は、ゼロかそれ以外です。ゼロ、すなわちコピーネバーか、それ以外、1枚以上複製されるケース。ですから、コピーネバーが選択できず、それ以外になった場合には、補償金の運用が前提となるというふうに考えています。

(中山主査) ほかに何かご意見ございましたら。どうぞ、津田委員。

(津田委員) これもそもそも論かと思うんですけれども、(2)の「著作権保護技術と補償の必要性との関係」でいくと、ここの議論自体をすることにあまり意味を感じないという部分があって、それはなぜかというと、僕も仕事でDRMの技術動向とか見ていたら、アにしても、イにしても、ウにしても、こういったものを想定するような事態が、少なくともここ1年とか2年で来るようなことは全くないだろうなというのがあるんですよね。
 インターネットが95年ぐらいに登場してきて、デジタルのDRM技術というのが発達してきて、各社さんいろいろやられていたんですけれども、基本的にはいろいろなものが出てはつぶれ、出てはつぶれという形になっていって、現実にいろいろなコンテンツ配信サービスが登場して、今ではPCの世界でどういうDRMが残っているのかというと、実質的にマイクロソフトのウィンドウズDRMとアップルのフェアプレーぐらいですよね。
 ほかにもありますけれども、現実に使われているDRMというのは非常に少ないというところがあって、フェアプレーにしても、ウィンドウズDRMにしても、どっちも技術的には今クラックされていて、ある種アングラな知識がある人であれば、コンテンツ配信で買ってきてDRMがかかっている音源でも、それを外してコピーすることは可能になっているという状況もありますし、例えば日本では、着うたフルとか携帯向けの配信は比較的DRMがしっかりしていますけれども、今度は携帯電話という機器自体が、例えば自分で音楽CDからリッピングしたデータだったり、動画だったというのを、ノンDRMの状態で転送して聞くということができるわけですから、ユーザーにそういう選択肢が与えられている以上、要するにすべてのDRMと機器で、2番で話されているア、イ、ウのような世界が来るということが、DRMの技術動向にしてもそうですし、当然DRMが発達するにはマイクロペイメントみたいなものの発達と結びつけなきゃいけないという面も含めて、環境的にも、技術的にも、当分こういった世界が来ないということを考えると、この話自体は、あまり今この委員会でする必要がないんじゃないのかなと思っていまして、こういう話をするのであれば、そういう状況がある程度見えてきて、70パーセント、80パーセントぐらいまで来たねというときにして、逆にほかの話で重要なことがいっぱいあると思うので、そういうのをしたほうがいいんじゃないのかなと思います。

(中山主査) 小六委員、どうぞ。次に亀井委員、お願いします。

(小六委員) 前回、森田委員が、そもそも補償とは何かという根本的な理解についての2つの立場があるとおっしゃったことは、皆さんもう一度ちゃんと考えていただきたいなと。利用することは自由ではなかったんですよね。30条をつくったときに、初めてそういうことが起きたわけです。ですから、大もとの権利というのは我々権利者に必ずあるという前提があってこそ、そこから出発しているということはぜひ認識する必要があると私は思います。
 現実的に30条の制限規定があったから、ある程度自由に利用できるということが起きて、それがあまりにも一般化し過ぎているという認識はちょっと違うと思っております。

(中山主査) 亀井委員、どうぞ。

(亀井委員) 2点ございまして、1点は、今し方の津田委員のご発言に関してなんですが、津田委員の想定されておりますDRMというものは、おそらく課金技術とセットになったものかなというふうに伺いました。ここで議論になっておりますのは、技術的保護手段ということでありまして、必ずしも課金技術とセットになっているかどうかは、おそらく問われないものだろう。コピーをコントロール、制御するものというのがここの議論の前提ではないかと考えております。
 それから、小六委員のご発言に関してですが、これはおそらく、著作権法とは何かという議論につながるような大きなお話ではないかと思いますが、そもそも情報が自由に流通するというのが自由主義経済の基本であって、その中で、著作権という形で情報を囲い込む術をつくったというふうな法律観があるのではないかと思います。そうであるとすると、囲わなかった部分というのはもとの自由なところへ帰するというふうに考えることもできるのではないか。これは私どものような素人が申し上げることではありませんが、そういう議論につながるものではないかと思っております。

(中山主査) ほかに何かございましたら。河村委員、どうぞ。

(河村委員) 総務省の委員会のほうにずっと出ておりましたので、放送のコピーコントロールの話が出ましたら、私も何か意見を申し上げたほうがいいのかなと思います。向こうの委員会でもいろいろ申し上げてきましたが、ひとつには、ここの補償金の議論とあわせて考えますと、コピーワンスは今度緩和される予定とはいえ、消費者は全く選択の余地なく、コピーワンスというものになって、ムーブしかできず、しかも、ムーブの失敗で大事なもの、オリジナルも消えてしまうというようなことも受け入れ、コピーワンスのときも補償金を取られる。コピーコントロールと補償金を両方とも、選択の余地なく押しつけられるわけですね。
 さんざん総務省で、公共性が求められている地上放送にコピーコントロールがなぜ必要かという議論をしてきたときにも、複製から海賊版ができるとか、あるいは華頂委員などは、原版に近いような画質での複製可能というようなことをおっしゃっておりましたけれども、そのとき私、何度も申し上げましたが、DVDというのは、アナログ放送であっても、デジタル放送であっても、標準画質でしか入らないんですね。アナログ放送では、コピーコントロールをかけないで放送されたもののデジタル録画が、コピーフリーでできているわけですね。
 そのことで何か大混乱が起きているとか、番組が調達できないような被害が起きていると聞いたことはございません。相変わらずジャニーズの方もテレビに出ていらっしゃいますし、2011年までの4年になりましたけれども、現状そのようになっているのに、こーピー制御をかけないと大変なことになるであるとか、大問題であるという意見に対しては、ずっと疑問だと申し上げてきました。
 このことは、補償金と必ずしも全部が関連する話ではないかもしれませんけれども、私が申し上げたいのは、そのようにコピーコントロール自体を見ても、納得感のないものを消費者は押しつけられるわけですね。n回になることが不本意だとおっしゃるかもしれませんが、逆に、消費者から見ても全く不本意なわけです。権利者さんは自分の意見が通らなかったというふうにおっしゃいますけれども、消費者の意見は全く通っていないわけですね。ですので、何度も繰り返しになりますが、コピーコントロールと補償金を両方、選択の余地なく押しつけられているというのが現状です。
 それから、ア、イ、ウに関してですが、30条の範囲と決めるときに、すぐに補償金から外すか、外さないかですべてを議論するから、とても混乱するのだと感じています。私は、私的な録音かどうかという30条の範囲と、補償金が必要である範囲であるかどうかということは別のように思います。
 私が申し上げたいのは、全部必要ないと結論を言っているのではなくて、この場合は必要であるとか、この場合は必要でないというようなことがあってもいいのではないか。コピーワンスでも補償金が必要だったのはなぜなのかが、私には理解できません。以上です。

(中山主査) どうぞ、華頂委員。

(華頂委員) 河村委員のご発言で、1点だけ。今、何ら問題が起こっていないから、問題が頻発していることも聞いたことがないから、このままフリーでいいんじゃないかみたいなことをおっしゃいましたけれども、予言者のように未来のこともすべて見通した上でのご発言なのかなと。映画の盗撮防止の法律が今回国会を通ったんですけれども、昔、映画のスクリーンをビデオで撮るなんて、だれも考えていなかったんですよ。機械がどんどん発達して、だれでも撮れるようになったので非常に困っている。ようやく法律で禁止したんです。そのころは予見していなかったんだけれども、今現実に起きている。そういうことが起こるかもしれない。だからこういう議論をしているんですよ。

(中山主査) ほかに。どうぞ、津田委員。

(津田委員) 先ほど亀井委員のほうからご指摘があった、僕の発言自体はどちらかというと、ほとんどコピーコントロールについての話をしていて、マイクロペイメントと言ったのは、あくまでDRMの普及を後押しする環境的な要因として、マイクロペイメントもあるだろうということを言ったので、基本的には、僕はずっとコピーコントロールの話をしていたつもりです。

(中山主査) どうぞ、河野委員。

(河野委員) 議論の前提、射程を確認させていただきたいんですけれども、先ほどの津田委員のご発言にもあったと思いますし、大寺委員の中にもそのニュアンスが含まれていたと思うんですけれども、著作権保護技術、技術的保護手段、技術的制限手段を回避する話が一緒になって出てくるように思うんですが、この委員会での前提は、基本的に30条の範囲内にある合法的な複製について、補償の必要な部分がどこかという話をするということでいいんですよね。ですから、クラックされることがある、イタチごっこになる、複製ができちゃっている部分が社会的にたくさんあるから、それを補償で何とかしようという話ではないという理解でよろしいですね。

(中山主査) どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) クラックに関して言うと、ほんとうにマニアの人が探り探ってダウンロードしてやらなければできないような状態から、例えばニッチなメーカーが、商品としてそのようなものを売ることによって一般化していった状況で、それは実質的にDRMが働かないんだから、そんなものは事実上DRMとして認知できないという状況があるならば、それはやっぱり加味して考えなきゃならないんじゃないかなと思います。

(中山主査) どうぞ、津田委員。

(津田委員) 今の河野委員のご発言で言うと、さっき聞いたクラックの問題というのは、いわゆる30条の技術的保護手段の回避という文脈で言っているのではなくて、現状のDRMとかコンテンツ配信の環境というのが、クラックだとか、例えばパソコンと携帯電話を接続して転送できたりみたいな、要するにDRMで管理される以外の抜け道がいっぱいあるということなんですよね。抜け道がいっぱいあるからDRMはなかなか普及しないということを言っているのであって、そこだけは誤解されるとあれかなと思いました。

(中山主査) どうぞ、小六委員。

(小六委員) 同じ意見になると思いますけれども、いわゆる保護技術というものに対して、我々権利者が持っている信頼性について申し上げたまでだと思います。

(中山主査) 河野委員。

(河野委員) 津田委員のご説明でよくわかりました。再度確認ですけれども、技術的保護手段の定義のところで、日本の著作権法は、その有効性について特段何も書いていませんので、今、法律上どうなっているかということだけに着目すれば、30条一項で、技術的保護手段の回避を伴う複製というのは違法になっており、それと全く別建てで、2項で補償金制度というのがある。なので、技術的保護手段の有無、その程度と補償の要否との法制度上の関係は、きちんと整理されるべき問題だろうというふうに思います。

(中山主査) 何かほかにございましたら。
 30条のそもそも論になりますと難しくて、もとはといえば、著作権法がなかった時代は全て自由であったものが著作権法制定で制限されて、30条でそれが一部解除されて、また補償金で解除を解いて補償金を課していりうということであり、どっちが原則かはなかなか難しいところです。先ほど津田委員の話にございましたけれども、現状と将来の問題は違うと思いますすが、とりあえず立法については現状を前提にしなければならないと思います。ほかにご意見ございませんでしょうか。
 それでは、この問題はまた返ってくると思いますので、次の、2ページの2の(1)制度設計の大枠という問題に入りたいと思います。この点につきまして、ご意見、ご質問ございましたらお願いいたします。
 どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) これも意見書に書いたことなんですが、制度設計の大枠として挙げられているアとイ、「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」と「録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計」というふうにあるんですが、制度設計の大枠としては、制度が調整するべき利害関係を考えた場合に、アの「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」以外の方法を採用することはナンセンスだと思います。

(中山主査) ほかにご意見ございましたら。どうぞ、小六委員。

(小六委員) 意見書にも書いてございますけれども、制度設計の大枠としては、(1)アの「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」を採用すべきであると考えております。

(中山主査) ほかにご意見ございましたら。生野委員、どうぞ。

(生野委員) (1)のイの「録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計」に関しましては、前も意見を言わせていただいたんですが、このペーパーでも問題点として書かれていますとおり、録音可能性を一切無視した制度でありますし、現行、日本及び海外で採用されている補償金制度がラフジャスティスだとしたら、単にラフにするだけの制度じゃないかというふうに考えます。

(中山主査) 室長、何かございますか。次に大寺さん、お願いします。

(川瀬室長) 改めて、ア、イと2つに分けた理由を事務局のほうからご説明しておきたいと思うんですけれども、今までの議論の中で、例えば有料放送とか無料放送のところでも議論がございましたけれども、私的複製について、放送事業者が責任を持つかどうかというような議論がございました。これは以前からいろいろな議論が出ておりまして、私どもの整理としましては、前期の小委員会でも明らかにしましたように、いろいろな契約書を調べましたし、関係者からお話も伺いました。
 その中で、いわゆる有料配信サービスと言われるものについては、ビジネスモデルが私的複製も含めた形になっておりますので、当然、配信事業者は私的複製について責任を持つということでもありますし、実態面でもコンテンツの提供の対価ということになっていますので、私的複製の分についても、例えば150円なら150円を視聴者から徴収した場合に、それも対価が含まれているんだろうということで、それ以外のものについては、いろいろな契約書とか関係者の話では、二重取りになっていないということになります。
 そうすると、今後、著作権の保護技術の発達の過程の中で、今まで確かに私的複製の分についても対価を払っていなかったわけですけれども、これから払うようにしたらどうかというようなご提案もあるわけでございます。そうすると、著作権の保護技術が発達したとはいえ、いわゆる消費者、利用者と権利者が直接契約を結ぶということはなかなか難しゅうございまして、特にコンテンツホルダーでない権利者が利用者と直接契約を結ぶということは非常に難しい現状でございます。
 したがって、間にある録音・録画源の提供者、例えば放送事業者とかレコードの製造業者、レンタル業者がその中に入って仲介をするということになるわけですけれども、そのときに、やはり法的根拠がないと、幾ら実務でといいましても、例えば大寺委員のお話の中で、放送局は私的複製について責任を負っていないということですから、権利者が放送事業者に私的複製の分も対価をくれと言っても、拒否されるということになります。
 ただ、仮に放送事業者にそういう義務が生じるのであれば、当然、法的に支払いの義務が生じますから、問題なく対価の徴収と分配がうまくいくということでございます。したがって、実務の契約の中で、事実上入れればいいではないかというご意見があるんですけれども、先ほど言いましたように、有料配信以外は現状には入っていませんので、これからの問題としてするためには、私どもとしては、法的にきちっと請求権があるということを明記したほうがわかりやすいのではないか。
 したがって、イという制度設計も、今までの委員のお話の中から、一つの選択肢としてあるのではないかという意味で、アとイというふうにさせていただいたわけでございます。

(中山主査) そういうことを前提に議論していただきたいと思いますけれども、大寺委員、どうぞ。

(大寺委員) 室長のお話に補足するような形なんですが、法的な根拠とかのほかに、物理的にそういうことが可能かどうかというところですね。それから、システムがきちんとそういうものを把握して、お金を取るという仕組みができるか。観念的なものというよりも、現在のビジネスの実態、それから、ある程度想定され、射程と置く近い将来の状況というものを念頭に置いて考えるべきじゃないかなと思っています。
 録音源そのものについての着目は、前から申していますように、私たちは録音・録画源については反対しています。詳しくは私のペーパーを見ていただければと思っています。

(中山主査) ほかにご意見ございましたら。亀井委員、どうぞ。

(亀井委員) 平成4年、現行法ができたときに、消費者の支払い義務とメーカーの協力義務というものが、それまで何かあったのかというと、なかったわけでございますので、新しい制度を考える上で、今ないからというのはあまり理由にはならないんだろうなと聞いていて思いました。
 基本的には、補償が必要とされる行為態様というものが、先ほど井田委員のご意見にもありましたが、まず明確にされて、それがどういうソースであって、あるいはどういう機器媒体でなされるのかという整理があって、その事実確認があった上での議論で、最終的に、今からどっちがいいと選択するのではなくて、そういう前提の上で、プレーンに議論すべきではないかと考えます。以上です。

(中山主査) 河野委員、どうぞ。

(河野委員) 先ほどの事務局のご説明を伺っていて、1つ質問させていただきたいことが出てきました。配信の場合というのは、ダウンロードされるところまではログがあることは承知しているんですけれども、その先に、例えばポータブルデバイスにどの曲が何回行ったかとか、CD−Rに何枚焼かれたとか、そのような実際の利用についてもログがあるのでしょうか。録画の管理、あるいは録音の管理がどこまでできているかというのは、私の理解では、上限として、例えばCD−R焼きは無制限、ポータブルデバイスは5台まで、PCだったら5台までみたいな、上限がこういうプラットホームになっていますよということが示されて、コンテンツを調達するときにそのようなプラットフォームであることを前提にコンテンツホルダーとサービス事業者の契約が成り立っているという理解でいるんですけれども、そうではないんでしょうか。

(中山主査) どうぞ、室長。

(川瀬室長) 私どもの認識としましては、有料配信サービスにつきましては、確かに河野委員ご指摘のとおり、パソコンにコピーするまでは配信業者の責任で、複製主体も配信業者だと考えています。それから、一旦パソコンにコピーしたものを著作権保護技術の範囲内でコピーする場合には、配信業者と利用者との契約内容を見れば、利用者の複製に関する契約があるものが多いので、その内容によっては、あれは利用者が勝手にやっているだけで私どもは知りませんということではなくて、パソコンにコピーされたものが、その先、著作権の保護技術の範囲内でコピーされるということを前提にしたサービスということになり、配信業者の業務形態に関しては、一般的な有料放送と違いまして、私的複製までをビジネスモデルにしており、私的複製の分も料金を徴収していると考えたほうがわかりやすいのではないかと思います。
 そうしますと、いわゆる二重取りということが起こってまいりますので、そこは、30条を外したとしても、消費者の方がそれによって不便になるわけでもなく、今までどおり自由に契約の範囲内でのコピーができるというふうになるので、両者の間でさまざまなビジネスモデルに合った契約書を交わして配信すれば、特に法的な問題は生じないと思われます。

(中山主査) どうぞ河野委員。

(河野委員) 私の質問の仕方が悪かったかもしれません。お聞きしたかったのは、物理的に実現可能性があるものは何かというお話をしたときに、現在配信で行われていることが、実際に複製された数等に基づいて、複製料として対価の回収ができる仕組みになっているのであれば、それは配信と有料放送というのは確かに違うかもしれないと思いましたけれども、こういうプラットホームでありますと、ユーザーがマックスに使ったらこういう利用のされ方がされますということで、上流の契約が結べるのであれば、有料放送と配信というのは、そういう仕組みに乗り移ることができる現実可能性としては同じなのではないかという疑問を持ったので、質問させていただきました。

(中山主査) 室長、どうぞ。

(川瀬室長) 私どもは、ポイントは、配信されたものが利用者の手元で複製される、それが有料配信事業の場合には一つのビジネスモデルになっているというふうに考えています。一方、例えば地上波無料放送の場合に関して言えば、複製を前提に配信しているということではございませんので、放送事業者が、ビジネスモデルの中で、複製についても自分らの責任を負っているということではないのではないかと思っております。そこの仕分けが一番の基準点だと思っているんです。

(中山主査) ほかにご意見はございますでしょうか。どうぞ、森田委員。

(森田委員) 今の議論状況がよくわからなくなったので確認したいのですが、制度設計の大枠として、アとイが論理的に考えられるのではないかという事務局からの提案に対して、イがよいというふうに主張されている方はおられるのか、おられないのかというのがよくわからなくて、もしおられないとすれば、現時点ではアを採るとすればという前提で次に進めていって、今後の議論の展開の中で、やはりイがよいという意見が出てくれば、そのときに改めてイを検討するということでよさそうな気もするのですが、現在、アよりイがよいという方はおられるのか、おられないのか。それぞれに関して出された理由づけをめぐって議論しているのであれば、それはそれで別問題でしょうけれども、議論状況としては、イはまだ支持者がいないという理解でよろしいのでしょうか。

(中山主査) 今まで聞いた中では、どうもいないようですけれども、いかがでしょうか。確かに世界で例を見ない、初めての画期的なシステムであるのですけれども。
 どうぞ、河野委員。

(河野委員) たびたび大変申しわけございません。イというのが実はよくわかっていないので、質問させていただいたということなんですけれども、基本的に、契約でできることは契約でやっていただく世界に行くということがいいのではないか。本来的に契約で処理できるのであれば、私的自治の原則から、なるべく法律の介入はないほうがいいんじゃないかなと思っているのですけれども、お話を伺っていると、制度的な裏づけがないと契約を推し進めることが難しいという状況があるのか、ないのか、それがよくわかりませんでしたので、それを判断するに当たってお聞きしたかったということで、質問させていただいた次第です。
 なので、契約による社会を推進するために、何らかの報酬請求権のような制度的支えが必要だということであれば、イは意味を持つと思っております。

(中山主査) おそらく契約ですべてができる状況ではないということを前提にしているので、補償金制度が必要であるとすればということだと思うのですね。ですから、契約で正確に全部課金できれば、この議論は済んじゃうというか、さっきの問題の、イでしたか、すべて契約でとれるという、そちらに変えれば済むわけで、ですからこれは仮の議論でやっていただきたいと思うんですけれども、とりあえず次に進んでよろしいでしょうか。
 それでは、次は2ページからの、4ページからですけれども、2の(2)録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計についての「1対象機器・記録媒体の範囲について」、「対象機器・記録媒体の決定方法について」という問題に移りたいと思いますけれども、この点について、ご意見がございましたらお願いいたします。
 どうぞ、河野委員。

(河野委員) たびたび申しわけございません。事務局に質問です。(2)1イの表ですけれども、これは、実は全く理解できていないので、ご説明ください。専用機器に入るポータブルオーディオレコーダーというのは例えばどのようなもので、汎用機器(録音録画が主たる用途)になるポータブルオーディオレコーダーには具体的にどんなものがあるのでしょうか。また、この場合の「録音録画」というのは、録音または録画が主たる用途なのでしょうか。それとも録音、録画あわせて主たる用途なのでしょうか。この表についてのご説明をお願いいたします。

(中山主査) 室長、お願いいたします。

(川瀬室長) 私どもの仕分けでございますけれども、横軸が、いわゆる分離型の機器ということで、機器と記録媒体を用いて録音録画をする、これは現行法の対象でございまして、右が、一体型の機器ということで、ハードディスク内蔵型の機械でございまして、左の縦軸が、専用機ということで、「まる」のところは現行法がカバーしている専用機であって、機器と記録媒体を用いて行う複製ということでございます。その右側の一体型の機器については、現行法の対象外になるということで、専用機器であっても一体型だということでございます。
 下2つが汎用機器ですけれども、録音録画が主たる用途のものでございます。(録音録画が主たる用途)というのは、録音または録画ということで、最近は同一機器の中で録音と録画ができるものが出てきましたけれども、そういうものも含んで、録音または録画というふうに考えております。それが、次の段落でして、例えばポータブルオーディオレコーダーについては、現在は専用機器としてのポータブルオーディオレコーダーもありますけれども、静止画の記録ができるとかテキストデータの記録ができるというものも出ているわけですが、消費者の用途としては録音録画が主たるものであろうということで、その2つが書かれております。
 左側の(SDメモリ付き)というのは、一たんポータブルオーディオにコピーしたものをSDメモリにコピーできる機械もあるというふうに聞いていますので、そういうものが考えられるのではないかと思っています。つまり一体型と分離型をあわせたような機能を持つものを想定していまして、ここに書いております。
 その下が、汎用機器(録音録画が主たる用途でない)ということで、パソコンを挙げておりますけれども、ハードディスクを内蔵しているものがありますし、そういう点では右側の下。それから左側の下につきましては、例えばDVD−RとかCD−Rの記録媒体によってコピーができるという機能もありますから、そういう意味で分離型の機器というふうに仕分けをしております。
 以上でございます。

(中山主査) 河野委員、何か問題ございますか。

(河野委員) ご説明ありがとうございました。大変申しわけないんですけれども、機器をつくっているメーカーの者として、やはりこの表はよくわからないんですね。そもそもポータブルオーディオレコーダーというカテゴリーがあったかなと思い出しておりまして、携帯オーディオプレーヤーというカテゴリーは間違いなくあるんですけれども、何をもって記録機能としレコーダーと呼んでいるのかなというところとか、ポータブルオーディオレコーダーの中で専用機器と汎用機器、どのメーカーのどういうものがどっちに入ってくるんだろうなということもよくわかりませんし、この表自体が、申しわけございません、今、理解できていませんので、これをもとに議論しろと言われるのが非常に厳しい状況でございます。

(中山主査) どうぞ、小六委員。

(小六委員) 今まさに河野委員がおっしゃったことが、実は問題だと思うんですね。つまり汎用機器と専用機器の違いがはっきりわからない。これはネーミングだけの問題じゃない。「ポータブルオーディオレコーダ」と書いてある、一体これは何なんだと言われれば、確かにそのとおりであります。そのとおりであることが実は問題である。つまりすべて使えるわけです。
 権利者としては、そこのところが非常に問題なので、制度設計によって、そこで金額を決めるときは、いろいろな使い方があるでしょうから、それ相応の必要があると思いますけれども、私の意見書にも書いてありますが、前回の7の2ですけれども、今回の見直しの最も重要な点は、従来の補償金制度が専用機器・記録媒体のみを対象としていたことが問題ではないか。もし見直すのであれば、この状況を改善することがよい策ではないかと思います。
 いろいろな名前で、いろいろなオーディオのコピーができますよ、こういう使い方ができますよという機器がいっぱい出ておりまして、それが汎用機器であるということをうたい文句にしている。大容量を武器に、大量の私的録音録画行為が可能であることを売り物にしているパソコンや音楽携帯は、音楽の利用を重要な前提としていることは間違いない。専用機器・記録媒体と汎用機器は何ら変わりがないということがわかると思います。
 それからポータブル、iPodに代表されるようなものですけれども、これは必ずパソコンへ一度落としまして、ライブラリーからコピーいたしまして、そこから分けていく。もちろんコンピューターでも聞けるようになっておりますよね。やっぱり私的録音録画が大量に行われている。パソコンに録音され、ライブラリー化され、ライブラリーでも視聴可能であるし、ライブラリー全部または一部は、それぞれの機器にまた分散されていく。
 この場合、どこが違うのであろうかということが一番問題になって、補償金の対象で、そこで汎用機と専用機を分けるということ自体がおかしいと我々は思っているわけです。ですから、実態に合わせて補償金額の設定を行わなきゃいけないと思いますけれども、そういう認識はぜひ必要であるということを申し上げたいと思います。
 それから現状ですけれども、補償金制度を、文化先進諸国における音楽用のCD−R/RWと代表的な汎用媒体であるCD−R/RWについて、前の意見書の中に表を掲げております。これを見ていただければ一目瞭然なんですけれども、音楽用とデータ用の枚数の歴然たる差がここに書いてございます。データで出ております。
 ちなみに、我が国の音楽用のCD−R/RWから得られている補償金金額は2006年度で1億円で、ほかの国と比較していただけると、どういう差があるかということが一目瞭然でわかっていただけると思います。
 このように、汎用と専用が非常に大きな問題となっているという認識をしておりますので、ぜひ改善していただきたいと思っております。

(中山主査) 3ページの表は、一応、現行制度は専用機器の分離型機器に課金をしている、そこに意味があると思います。そこに載っている「ポータブルオーディオレコーダ」なるものは、私もよくわかりませんけれども、名前は別として、現行の枠組みが現在の状況においてどうなのか。今、小六委員がおっしゃったのはそういう意味だと思うんですけれども、その点を中心に議論していただければと思います。
 どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) 結局、現行制度との関係で対象機器をまとめているので、こういう書き方にならざるを得ないと思っていて、例えば一番下の分離型機器のほうに書かれているパソコンというのは、その右の記録媒体という、いろいろな記録媒体を想定しての、記録媒体に対するパソコンという意味で、一体型機器と書いてあるところは、おそらくパソコンと、パソコンのハードディスクを指すんだと思うんですよね、一体になっているから。
 だから、今、小六先生がおっしゃったように、専用機と汎用機の概念が問題であるということもさることながら、事実上、分離型と一体型に分けられないんだと思うんですね。ハードディスクというのは単体でも存在するし、CD−R/RWというのは単体でも存在するし、パソコンの中におさめられているということもある。
 だから、これらの表は、あくまでも現行制度の見方から見た対象機器の分類ということで、これに加えて、あまねく私的録音録画に関与する機器、記録媒体という整理をもう一回やったほうがいいのではないかなと思いました。

(中山主査) ほかにご意見は。どうぞ、河野委員。

(河野委員) あまねく私的録音録画のところの録音録画源、要はソースの話なんですが、前提の確認をさせていただきたいんですけれども、私どもの意見は、何度も申し上げているように、契約でできるところについては契約でやっていただいたほうがいい。コンテンツを提供される方にとってもそのほうがいいんじゃないかと我々は思っているので、先ほど一応終了して進んでいる、適法配信のところとか有料放送がどうなったのか、よくわかりませんけれども、仮にアとイが30条の範囲から、全部仮にという議論なので、外れたとします。それが1つ。
 それから、(2)の保護技術との関係のところも、どういう前提になったのかよく理解できていないんですが、私どもの意見としては、コントロールされているものについては補償の対象にならないのではないかと思っているので、前々々回でしたでしょうか、お示しさせていただいた分類によると、録音については音楽CDを記録するものが主たる用途で、この主たる用途というのも、一体何を指しているのかよくわかりませんけれども、仮に実態というものを指しているとすれば、その前提。
 今申し上げたような、どのような録音源あるいは録画源をどの程度記録するのか。
 それから行為態様のお話もまだ議論がきちんと整理できていないと思いますけれども、例えばタイムシフト、プレイスシフト、それから保存視聴目的その他ですね。それも借りてきたところからするのか、自分の持っているものからするのかといったニュースソースごとに見た実態というものがないと、この表はおそらく埋まらないと思います。
 そういう前提のないところで議論しても、またその前提議論と行ったり来たりするのは仕方がないと思うんですけれども、ぐるぐる回ってしまうのかなと思います。
 議事進行について、津田委員からのご意見のペーパーの中にもありましたし、前回、野原委員のほうからもご意見があったと思うんですけれども、論点をきちんと絞って議論していくというときに、このペーパー自体、今までいろいろなところから意見が出ていますけれども、たたき台自体は全く変わらないまま議論を続けていくのでしょうか。もう少しきちんと論点を絞って、かみ合って建設的な議論ができるように、この紙のリライト自体を考えるということについては、皆様どうお考えでしょうか。

(中山主査) これは、一応議論を伺って、また書き直すわけですね。

(川瀬室長) はい、そういうことでございます。これはあくまでも事務局のたたき台でございますので、白紙ベースでといっても議論がまとまりませんので、一つの目安、事務局の案というふうに考えていただければ結構だと思うので、それによって論点が集約されてくると思いますので、その集約された論点を整理して、さらに議論を深めていけば、一つの合意点といいますか、考え方の整理ができるのではないかと思っていますので、別にこれにこだわらず議論していただければ結構ですし、その過程の中で、私どもとして、委員の発言の中から論点の集約に努めたいと思っております。

(中山主査) 津田委員、どうぞ。

(津田委員) まず1点、事務局にご確認したいのが、汎用機器、専用機器、一体型機器という分類でもあるんですけれども、先ほど小六委員のほうからお話がありましたけれども、かなり多くの、今発売されている携帯電話用の音楽再生機能というのがついていて、あれに関して言うと、やはり汎用機器など、専用機器ではないにしても音楽機能、録音機能が入ってきていることを考えたときに、どこに該当するのかなというのが、出ている台数がけた違いに多いので、入れるとしたら、一つの項目としてどこかに入れなきゃいけないのかなというのがあるので、その点をまずご確認させてください。

(中山主査) どうぞ。

(川瀬室長) 携帯電話やその他いろいろなデバイスがあるわけですけれども、機能は一様ではございませんので、結局は、それぞれの機能がどういう機能なのかということを勘案しながら、例えば対象となる機器を絞っていくのだと思っています。実はどのようにして対象を決めるかというのが次の問題としてあるわけですけれども、一般的な考え方について整理していただいたとしても、今の時代ですから、平成4年当時とは違いますので、機種とか機器によって、さまざまな機能が合体したり、それまである機能の一部の機能だったものが、一つの機能として世に出たりすることがございますので、そこのところは一般的な基準みたいなものを決めていただいて、現実に機器を特定しなければならないということであれば、次の段階で、どのような決め方にするのか、私どもは私どもで提案させていただいてますので、議論をしていただければ良いと思っています。

(津田委員) まさにそのところに重要な論点が含まれていると僕も思っていて、先ほど小六委員、椎名委員もお話しされていた、今は専用と汎用の区別がなくなっている時代じゃないかというのはもっともだなと思う反面、逆に、僕の実態とかを考えていくと、非常にあいまいというか、難しい部分があるなと思いまして、例えば音楽携帯と言われている、僕自身、今ソニー・エリクソンの携帯を使っていますけれども、これは音楽機能がかなり充実しているわけですよ。これで音楽を聞いているかといったら、全く使っていないんですよね。音楽を外で聞くのはiPodを使っているわけで、これは通話とインターネットしか使っていないのに、なぜか音楽の補償金を取られるということになったら、ふざけるなという話にエンドユーザーとしてはなるわけだし、それはパソコンも同じ話で、例えば家と事務所でパソコンを使っていて、家と会社のパソコンはiTunesを入れて、それで音楽を聞いていたりするわけですよ。でも、ノートパソコンで音楽は聞かないので、それには入れていないという話があったときに、汎用機器でも音楽に使っているものと使っていないものがある。
 もっとややこしくなっているのは、例えばデジタルカメラとかにも今、MP3が再生できる機能が登場したり、僕が今、取材で使っているICレコーダーなんていうのも、音楽を再生する機能があったりするわけですね。でも、それで音楽を聞いているかといったら使っていないみたいなのがあったときに、あまりにもいろいろな対応があり過ぎるので、だれが決めるのかということも含めて、それを個別にやっていくというのは途方もなく大変な作業になってしまうので、どうするのかという問題が1つ論点としてはあるでしょうし、もう一つ大きいのは、音楽の録音録画の目的に使っていないにもかかわらず、そこに補償金がかけられる。汎用機器にかけるかどうかという議論だと思うんですけれども、そういうことになったときには、エンドユーザーの意識としては全く納得できない。
 僕も、完全に消費者、エンドユーザーの代表として来ているかというと、微妙な部分もあるんですけれども、でも、これに関して言うと、汎用機器に全部かけるよみたいな話になったら、おそらくエンドユーザーの9割とか、99パーセント納得しないんじゃないかなと言えると思いますね。以上です。

(中山主査) 小六委員、どうぞ。

(小六委員) 今、津田委員がおっしゃったことは非常によくわかります。そのとおりだと思います。ただ将来のことを考えたときに、専用、汎用という範疇を超えて、例えばハードディスクであったり、メモリチップであったり、あとどういう形態かわかりませんが、全部ファイルになってしまう状況はどうしても見えてきますね。そうしますと、それこそ専用機器というのは一体何なんだろう。家にあるオーディオと携帯プレーヤーなのかというと、逆に専用機器がなくなってしまう可能性が僕は強いと思うんですね。
 そうしたときに、我々は一体どうするんだ。つまりこの状況というのはものすごい状況だと思うんです。音楽であり、画像を記録できるもの自体を今から想定して、それを対象としていくという考え方をある程度大前提で持っていないと、エンドユーザーが使う、使わないということは確かに難しい問題ですが、税金のようなものというふうな考え方はちょっと乱暴ですけれども、北海道の道路を一生通らない人間が北海道の道路財源をどこかで払っていたりするような、しかし、その額はどのぐらい払っているのかよくわからないですけれども、それはどういうものなのかというのが、一番最初に僕、甘い考え方かもしれない、あるいは情緒的に流れるかもしれませんけれども、文化ってそういうものじゃないかと考えたときに、そこに持っていくと、河村委員がまた何かおっしゃいそうですけれども、そういう前提がある。そのかわり、それほど高い金額ではないということは絶対、前提条件だと思いますが、そういう考え方をしないと、すべてに関して抑えがきかなくなるんじゃないか。
 今、津田委員もおっしゃったように、一々特定して、これはああだとやること自体がむだな状況になるんじゃないか。今はもちろん特定できるかもしれませんけれども、そんな気がしております、乱暴かもしれませんが。

(中山主査) 華頂委員、どうぞ。

(華頂委員) 津田委員のおっしゃっていることは本当によくわかるんですけれども、その逆のパターンもあるんですね。汎用機器とか記録媒体を内蔵した一体型の機器のうち、製造販売元が録音録画機能をあからさまにセールスプロモーションして、消費者の購買意欲を誘引している機器は現実にあるんですね。これは購入したユーザーの私的録音録画を前提としているのに、補償金制度の対象機器となっていない。こっちの矛盾もある。
 この間、量販店に行って見てきたんですけれども、例えばテレビパソコンと呼ばれているものがフロアのかなりの部分を占めているんですけれども、パンフレットを見ると、テレビが見れる。きれいに録画ができる。インターネットができる。ワードやエクセルで仕事をしようとは書いていないんですね。こういうふうなものが現実にあるので、こっちの矛盾はどうなのかなと思うんですね。

(中山主査) どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) 結局、対象機器・記録媒体を、法律の話をしているんだから、法律上でどう書くかという議論に落とし込まれていくんだと思うんですけれども、津田さんもおっしゃった、今の非常に複雑な利用態様、例えば携帯電話はコントロールできる、DRMの中でがちがちだといっても、リッピングのできる携帯もあるわけですよね。
 そのようなことを全部含めて、法律に、今は政令指定するんだよ、機器と記録媒体は分かれているものだよ、その機器の定義は何だ、光の太さがどうたらこうたらというのがあって、政令指定しようと思ったら、もうその機器がなくなっちゃったりするようなスピード感でいっているところで、対応できないということから考えると、ちょっと大胆な提案として、法律の書き方としては、私的録音録画に供される機器・媒体ですとシンプルに書いてしまって、そこから後の、例えばそれに対する補償金の金額の決定の際に、いろいろなことを差配して、いろいろなことを勘案して、この機器については私的録音録画に供されるけれども補償金はゼロねというふうなやり方で、コントロールしていくことも考えられないかなと思いました。

(中山主査) 亀井委員、どうぞ。

(亀井委員) このペーパーが、事務局が出された一つのたたき台、ご提案だということですが、パッケージとしてご提案を眺めると、まさに小六委員がおっしゃったような、ある種税金のようなものを考えようとしているとも考えられる。かつてあった物品税のようなものを想起しまして、税金であるようなものを、何らかの評価委員会のところで適宜決めることができるというようなもので果たしていいのか。広く薄く取るということについて、払う側の納得性がない限り、そういうものについて拡大するようなスキームをつくっていいのかという議論につながってしまうような気がいたします。
 このペーパー自身が、津田委員のご意見によれば、白紙撤回して、改めて論点のペーパーをつくり直すべきだというご意見もあるわけですけれども、この審議会のなれの果ては果たしてどこへ行くのかと少し心配になってきております。以上です。

(中山主査) どうぞ、森田委員。

(森田委員) 現行制度は、機器の客観的な性質によって補償金の対象を決めるという枠組みをとっているわけですけれども、先ほど河野委員がご指摘になられましたように、今後の方向というのは音源によっても補償金の対象が違ってくる。音源によって違ってくるということは、利用者が当該機器を何のために使っているかという利用態様によっても補償金の額の決め方が変わってくるという仕組みになるわけですから、そうなりますと、対象となる機器についても、機器の客観的な性格というよりも、多くのユーザーが何のために使っているかという主観的な利用態様を織り込んで対象を決めるということに、理屈の上ではならざるを得ないと思います。
 先ほど椎名委員がおっしゃったように、補償金がゼロということがあり得るとすると、ゼロとなる場合には果たして対象機器といえるかという、言葉遣いの問題になってくるわけですが、仮にそういう整理に立って、一応対象機器だけれども補償金はゼロの対象機器もありうるということになると、およそ録音録画のできるものは、この段階ではすべて広く対象機器ということになると思います。おそらくここで議論するとすれば、入り口の段階で対象から除外するものがあるかどうかということだと思います。
 したがって、今の議論というのは、具体的な補償金額の決め方を、利用態様を勘案して決めるという仕組みをどうつくるかという問題と切り離して、本来は議論しにくいところがあるのではないかという気がいたしますが、具体的な額の決め方のほうは、7ページに出てくるのですけれども、この点についてはあまりはっきりしていないところがありますので、この点を先にもう少し詰めていく必要があります。
 録音録画源については、利用者の利用態様を考慮してということになると、例えば、ある時点で、どのくらいの利用者がどのような録音録画源からある機器に私的録音録画しているかという実態調査をして、その利用割合を考慮した上で具体的な補償金額も決めていくということになります。そうしますと、対象機器についても、録音録画はできるけれども、ほとんどのユーザーは補償金の対象となる私的録音録画には使っていないものと使っているものとは区別していくべきであるということになります。
 客観的な機器の性格から見ると区別できないという意見に対しては、具体的な補償金の額の決定方式の問題の中で議論していくべきことであって、対象機器の問題だけを切り離してここで議論するというのは、どの立場の方から見ても難しくなっているということについては、意見は一致しているのではないかと思います。

(中山主査) ありがとうございます。河村委員、どうぞ。

(河村委員) 前回に提出しました意見書にも書きましたが、そもそも論に引き戻すつもりはございませんけれども、消費者としては、適切な説明があるとは全く思っていない状態で、機器の表だけから見て、これが妥当か、妥当じゃないかというような意見をもとに、この制度が拡大されて、補償金額が上がっていくということは全く納得できません。そこのところだけ、一見合理的な理屈をつけられても、先ほども申し上げましたけれども、私的録音録画の範囲であっても、無償でできる範囲を決めるという考え方もございますし、そういう考え方がないままで、汎用か、専用か、一体か、そうでないかという議論によって拡大していく路線をつくっていくというのは、納得することができません。
 資料に、記録媒体、機器の「提供という行為に着目」と書いてありますけれども、消費者からみますと、「提供という行為」といわれましてもピンときません。消費者がすべて払っているわけですから。消費者は専ら払う側なのです。機器も買っている。媒体も買っている。補償金も払っている。適法配信のお金も払っている。専ら払う側です。もし複製をどこかに転売する方がいるとしたら、それは消費者ではないわけでして、私的録音録画からそんなことをする方は取り締まっていただければよいわけですね。
 ですから、補償金というものが何をカバーしているのかという説明があいまいな中で、機器の表だけを見て、一見合理的かのような理論が展開されて拡大していくということは、納得することができません。

(中山主査) 松田委員、どうぞ。

(松田委員) 最初にこの制度ができるときは、3ページの機器の中では「まる」印のところと、それからパソコンしか想定されるものはなかった。パソコンは、音楽音源等をあえてコピーしよう、蓄積しようと思えば、できない機器ではなかった。こういう社会状況の中で、制度をつくられました。それは間違いないことだろうと思います。
 しかし、専用機器も専用だけでない利用もありますし、パソコンも、かなりコンテンツの利用にシフトしてきた機器ないしは販売方法があるというのは、まさにそのとおりで、これはテクノロジーが進めば進むほど、実は機器におけるコンテンツの利用というものがごく当たり前の使い方になってきているんじゃないかと思うわけです。
 そういう状況の中で、一定の期間ごとにコンテンツに使われている割合というものをちゃんと調査して、この調査がどれだけ精密かということはもちろん議論があり得ますけれども、それを調査して、パーセンテージに反映するような制度をつくっていかないとだめなんだと、私ずっと言い続けているわけです。
 しかし、皆さん方、きょうのご議論でわかるように、私的録音録画補償金制度を全廃するという意見のほかには、その方法しかないのではないかというふうに私は思って、あえて心強くしているわけであります。

(中山主査) ほかにご意見ございましたら。津田委員、どうぞ。

(津田委員) 先ほど小六委員の話にもありました、文化を守るためのインフラ論というところで言うと、あえて暴論を言ってしまうんですけれども、僕も一応、文章を書いてお金をもらっていて、日経新聞とかに原稿を書くわけですね。そして日経新聞のサイトに載って、それがブログとかでコピーされまくっているわけですね。でも、別にそれに対して補償金とか全くなくて、全部パソコンに補償金が返ってきて、僕のところにチャリンチャリン来るんだったら、それもいいなと思うんですけれども、例えばパソコンでの利用というのを調査して、30パーセントぐらいの人が録音に使っています、40パーセントの人が録画に使っています、じゃ、これぐらいのパーセンテージでやりましょうというと、でもコンテンツって、もっといろいろ増えていますし、コンテンツ自体がミックスされているような状況になっていると、当然僕みたいなテキストを書いている人もいれば、アニメをつくっている人もいる、漫画をつくっている人もいる、美術もある、ゲームもあるみたいな話になってくるので、録音録画だけが補償金の対象になるという状況自体がおかしいんじゃないか。
 文化、インフラということを言うのであれば、むしろほかのコンテンツもあまねくそういう形にしなきゃいけないというときに、これは前回も言いましたけれども、そうすると、ほんとうに録音録画だけの話をここの委員会でするのが適切なのかという話が若干あるのかなと思っていまして、そういう意味で言うと、今ここで話しているのは、どこで、どの機器がどうなるのかという話なわけですから、むしろそっちのほうを中心に話をしたほうがいいのかなという気がしました。要するに、文化インフラをつくろうみたいな話をするんだったら、僕らも文化にまぜてよというところもあるので。

(中山主査) 松田委員、どうぞ。

(松田委員) 録音録画という言葉が我々の中で当たり前に使われるのは当然ですが、今テキストとブログの話が出ましたが、ブログで使われたときは違法なわけですから、その違法な部分について、録音録画について補償金の問題って、一切ないわけですよね。違法な部分は何かということを、まず、すみ分けをしなきゃならないわけですけれども、それについては、資料の一番先に行われている、アとイになるわけですけれども、その違法な部分については、とりあえず議論の対象外だということはご理解願いたい。
 それから、録音録画という言葉の中には、実はテキストだって保護されているんです。脚本だって、小説だって、映像になれば配分を受ける形になっているわけです。そうですよね。もちろんテキストの中にはカシもありますけれども、それが私的録音録画の範囲内で使われるときには、ちゃんと配分されているわけです。その配分ルールについては、それぞれの協会の中で行われているわけですから、違法な部分をまず排除して、それについては30条の問題ではないということ。
 それから録音録画ということで、音楽家と映画をつくる人だけに配分されているように誤解されますけれども、そうではない。それによって利用されている、著作権者には配分が行っている。こういう制度であるということを理解していただきたいと思います。
 そのことと、利用によって消費者がお金を払っているというのは、最終的には河村委員の言うとおりだと思います。どういう制度をつくったって、添加されれば消費者が払わざるを得ないという状況があるんだろうと思います。
 しかし、制度がなかった場合に、消費者はどうなるんだろうかということも考えなきゃいけなくて、この制度の置きどころというものを考えれば、ある程度は制度を維持することはやむを得ないのではないか、消費者にも若干メリットになっているところはあるのではないか、その選択の中で、実は制度をつくるときに考えられた。そして、ラフジャスティスのもとに、全体としては承認されるジャスティスだという世界的な判断もあって、行われたということを理解してもらいたい。言ってみますと、一定の者だけがもうけるためにやっている制度ではないんだと私は理解しております。

(中山主査) 河村委員、次に椎名委員、お願いします。

(河村委員) これまで、何度も同じことを問いかけてきました。何のために補償しているのか、何で私的録音録画には補償金を必ず取られなければいけないのか説明してほしいと言いますと、複数の委員の方が、権利者の方も権利者じゃない方も、じゃあ30条がなくていいのか、私的録音録画ができなくていいのかとおっしゃるんですね。私が聞いているのは、なぜ必要なのかを説明してほしいということです。30条がなくなってもいいのかというのは、必要かどうかの答えになっていないのですね。ようするに、「それはセットだ」、「必要だといったら必要だ」と言っているのと同じでして、私の「なぜ」質問の答えになっていない。そういうことを複数の委員の方がおっしゃる。必要性について聞くと、じゃあ、私的複製ができなくなっていいのかと言われるのは納得できません。
 先ほどの繰り返しになりますけれども、例えば放送のことで言えば、コピーワンスであっても補償金を取られなければいけない制度に今なっています。どんなときでも、言われるままにコピーコントロールも受け入れ、補償金も払っている。それで、パソコンだ何だとおっしゃいますけれども、適法配信から課金されたものを利用した機器であるという可能性も高いわけですよね。そういう不公平なことを全く考慮に入れなくて、60パーセント使っているとか30パーセント使っているといわれるのは納得できません。技術が発達して、クリエーターの方たちはいろいろな技術を選択できるのではないでしょうか。
 意見書の最後に書かせていただきましたけれども、適切に課金された、豊かなコンテンツビジネスを展開していただいて、もっと豊富な利益を真っ当なビジネスから得るという方法を今、考えられる時代に来ていると思うのです。そのほうが、クリエーターの方々の創造へのインセンティブには確実につながると思っております。

(中山主査) 椎名委員、どうぞ。

(椎名委員) 発言したかったことの前に、河村さんの今のお話にちょっと申し上げたいんですけれども、不利益が立証できていないじゃないかとおっしゃいますけれども、きょうの意見概要の1ページの4つ目の「まる」にも書いてありますけれども、CDの売り上げの減少に伴って、権利者の不利益の一端が見えますよねということはご説明しましたよね。それから、利用実態調査とかといって、去年の委員会に提出されている資料もある。不利益の立証がされていないと真っ向からおっしゃることの論拠がないと思うんですよ。僕は立証していると申し上げているんです。それを、不利益の立証として正確ではない、あるいは信用できないとおっしゃるんだったらわかりますけれども、不利益の立証をしていないというところをパターンのようにおっしゃるんですが、それについては何回もお話したと思います。
 それから、さっきの河野委員の、コントロールされた技術的保護手段がかかっている機器は除外されるんだろうなということで言うと、この中に書いてあるものでそういう対象になる機器はないんだと思うんですね。それから利用態様ごとに機器の属性を分けるべきだということで言うと、例えばネットワークからしか複製ができないものとか、CDからしか複製ができないものということでは分けられると思うんですが、現状、例えばタイムシフト、プレイスシフトしかできない機械、あるいはそれ以外しかできない機械、メディアというのはありませんので、そういう属性の分け方はできないんじゃないかと思います。
 ざっくり考えて、30条以降の整理がどういうふうに落ちていくのかわかりませんけれども、CDと放送を対象とした制度なんだろうなという観点から分けていけばいいのではないかなと思います。
 それから、さっきの森田先生にご指摘を受けた部分なんですけれども、ゼロパーセントと申し上げたのは、例えば実態調査をして、それの関与度が12パーセントだったら、ゼロとカウントしてもいいよねというジャッジがあってもいいんじゃないかという意味で、ゼロパーセントと申し上げました。以上です。

(中山主査) 河村委員。

(河村委員) 自分のこれまでの発言をすべて精査したわけではないですけれども、誤解があるようなので申し上げますが、私は一度も損害の立証をしてくださいと申し上げたことはありません。おそらく立証という言葉を使ったことはないと思います。説明してくださいと申し上げているんです。数字を出して立証しろとは言っていないのに、ほかの方が私がそう発言したかのように、立証は無理だとおっしゃるのです。
 私はそんなことを求めていません。CDの売り上げを見れば損害だとおっしゃいますけれども、実際の損害に対する補償だというのなら、たとえば、自分が買ってきたCDを自分で別の機器で聞くためにコピーしたときに何の損害が起きているのかと思いますけれども、それも補償金の範囲ですよね。そのときに今度、別の説明がなされるわけですね。もともとただではないのだ。1つ1つに許諾が必要であれば、お金が必要であるはずだと。既にこのふたつで、説明が違うんですね。損害があるからという話と、損害がなくても、1回ごとに許諾していればお金がかかったはずなんだと、どちらでもいいじゃないかと権利者の方は思うのかもしれませんけれども、その場その場で都合がいいように変わる。これでは説明できていないと私は言っているのです。
 立証してほしいとか、数字を挙げてほしいとかではありません。何に対して補償しているのかを、統一見解として説明してほしいと求めているのです。

(中山主査) どうぞ、椎名委員。

(椎名委員) そういう意味で言うと、今の言い方にお答えすると、さっきからも申し上げているように、自分のためにコピーするのはどういう不利益があるんだとおっしゃるけれども、河村さんのお宅にある機械と媒体は、自分のためにしかコピーができない機械なんですかということですよ。実際に行われる複製というのは、混然一体として行われていて、例えば権利者の側から見ると、CDの売り上げが落ちたということも、その中に不利益の一端は入っていますよねと、立証しているのがいけないんだったら、説明をしたつもりです。
 以上です。

(中山主査) 補償金制度自体の正当性につきましては、現行法ができるときにさんざん議論してやってきたので、この委員会では、その当時と現在とどう違うのか、現在の技術状況のもとにどうなのかということを中心に議論していただければと思うのですが、津田委員、どうぞ。

(津田委員) 先ほど松田委員からご指摘があったので、1個訂正させてください。確かにブログの例は適切じゃなかったので、ユーザーのパソコンで印刷されたり保存されたりみたいなことが、私的複製の範囲で行われているというふうに訂正させてください。
 もう一個ついでに言うと、汎用機器の問題で、返還制度が今、有効に機能していないというのもすごく大きいと思うんですよね。例えば汎用機器、携帯電話を買って、音楽携帯を買ったけれども、音楽には使わないよと言って、補償金を取られた。でも、非常に簡単な手続で、返還制度でお金が戻ってくるみたいな、ほとんどコストがかからないみたいなものがあれば、逆にユーザーは受け入れたいみたいな話もあるので、そういうところも含めて議論していくのも、一つの方向性なのかなと思いました。以上です。

(中山主査) どうぞ、室長。

(川瀬室長) 多分、次の項目には進めないと思いますので、私どもの説明の補足をしておきます。録音録画機器、それから記録媒体に着目した制度設計をする場合には、どうしても制度を維持するためには、どの機器、どの記録媒体が対象かということを整理しないと、あとの補償金の徴収とかそういったものに問題がありますから、当然のことながら、これは整理してもらわないと困ると思っております。
 ただ、河野委員、河村委員からの意見書で、きょうはご発言されませんでしたけれども、ご指摘があったように、専用機器、汎用機器というのは便宜的にわかりやすくするために分けておりますが、もともと法律で、専用機器という定義をしているわけではございませんので、ただ制度設計としては、専用機器を想定していることは間違いないです。
 その専用機器といいますのは、何も録音録画という単体の機能だけのものが専用機器ではなく、例えば平成4年当時でも、ラジオ付きの機器とか、いわゆるラジカセと言われるようなものも専用機器というふうに概念をされておりましたので、何が専用機器か、汎用機器かという整理は、確かに河野委員のご指摘のように、私どもで十分されていないのかもしれませんけれども、単体ということじゃないことは、誤解をしないでいただきたいと思います。
 それともう一つは、これは森田委員がおっしゃったとおりでございまして、制度設計の全体を考えますと、例えば現行のように、利用者が支払い義務者で、メーカーが協力義務者という制度を維持する場合の対象機器の問題と、例えば支払い義務者がメーカーの場合の対象機器の定め方とは、考え方の差があるような気がします。また、補償金額の決め方につきましても、そういうことで差が出てくる可能性はあると思います。
 また、著作権保護技術の内容によって補償金額を変える、そういうことを加味して補償金額を決めるというのを私どもは提案していますが、そういうことによっても考え方は変わってくると思いますので、全体的に議論していただきまして、さらに論点を深めていっていただければと思っております。

(中山主査) そろそろ時間でございますけれども、今、議論している問題が、おそらく一番中心的な問題じゃないかと思いますので、どうしても今日言っておきたいということがございましたら。
 河野委員、どうぞ。

(河野委員) 最後に1点だけ、手短にお話しさせていただきます。今のご説明にもありましたように、現行の著作権法は、録音または録画の機能を有する機器ということで、機能に着目していたということなんだと思います。きょうのお話全体を聞いておりますと、機能ではなくて用途というものに着目してみたらどうかということを、おそらく多くの方がおっしゃっているのだというふうに理解いたしました。
 そうだとすると、まさにどういう用途が補償の必要となる用途なのかということについての前提が、きちんと皆さんで共有できていないといけないのではないかと思います。それが共有できた上で、まさに実態として、どういう用途に用いられているのかということをきちんと把握すべきだと思います。
 さきに録音録画補償金制度を検討した第10小委員会のときも、きちんと審議会として、目的にそった実態調査をされていたと思いますので、今までどこかにある調査を拾ってきて、こういう使い方がされているよねというような、つまみ食いのデータではなくて、まさにどういう用途で使われることが補償の必要があるというふうに、この委員会としては考えて、それについて実態を調査するということが必要だと思います。

(中山主査) ほかに、どうしても述べたいことがございましたら。
 よろしいでしょうか。それでは、途中でございますけれども、本日の討議はこのぐらいにしたいと思います。
 次回の小委員会の内容につきまして、事務局から説明がありましたらお願いいたします。

(川瀬室長) 本日はどうもありがとうございました。本日の議論につきましても、事務局で論点の整理、集約に努めたいと思っております。
 次回の小委員会でございますけれども、7月26日の木曜日、1時半から3時半まで、場所は、アルカディア市ヶ谷で開催を予定しております。
 以上でございます。

(中山主査) 本日はこれで、文化審議会著作権分科会の第7回私的録音録画小委員会を終了いたします。長時間のご議論、ありがとうございました。

−了−

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)


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