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資料2

「私的録音録画に関する制度設計について」に関する意見

平成19年7月6日
社団法人日本記録メディア工業会
著作権委員会 委員長 井田倫明

 私的録音録画小委員会(第5回)において配付されました、資料1「私的録音録画に関する制度設計について」(以下、「資料1」といいます)に関し、以下のとおり、社団法人日本記録メディア工業会の意見を述べさせて頂きます。

1.   当工業会の基本的な考え方
 当工業会としては、2006年1月の文化審議会著作権分科会報告書(以下、「2006年報告書」といいます)に沿って、「私的録音・録画についての抜本的な見直し及び補償金制度に関してもその廃止や骨組みの見直し,更には他の措置の導入も視野に入れ,抜本的な検討を行うべき」と考えます。
 また、抜本的な検討を行なうためには、“どのような行為に、補償措置が必要であるのか”について、レンタルや配信ビジネス等の実態や「タイムシフト」、「プレイスシフト」といった利用態様との関係が十分に検討されることが不可欠であると考えます。
 そのような検討を経た上で、現在の状況が、補償金制度を存続させるに足りると判断される場合には、その補償が必要な部分について、どのような補償措置を施すのが適切であるかを検討するべきであり、何に対して補償が必要であるのかも分からない状況下で、闇雲に制度設計を行うことが適切とは考えられません。
 この私的録音録画補償金制度は、家庭内での複製行為を対象とした制度であり、国民生活に少なからぬ影響を及ぼすものであるにも関わらず、あたかも、一定の結論が先に存在するかのような構成の資料で検討がなされようとしていることに、強い懸念を覚えます。

2.   「前提条件の整理」について
(1) 「(1)第30条の範囲の縮小」について
 イにいかなるものが含まれるべきかについては議論のあるところですが、補償金制度が他に取りうる手段がないために設けられた妥協の産物という点については多くの委員が合意しているところからすれば、他の手段があるかどうか、すなわち、「利用者の録音録画を想定した対価を取得し得る、契約等の他の手段があるかどうか」という基準によって判断すべきと考えます。その上で、レンタル等についても個別具体的に検討すべきです。

(2) 「(2)著作権保護技術と補償の必要性との関係」について
 この検討の枠組みとして、本小委員会(第4回)において、資料3『「補償」の必要性についての考え方』が、社団法人電子情報技術産業協会の委員の方より提示されていますが、その内容はベルヌ条約の規定に則った合理的な内容と考えられますので、賛成の意を表します。
 なお、補償を要する損失とは何か、という消費者代表の委員の方からの再三の質問に対し、一部の国における権利者団体の補償金受領総額が「損失」であるような説明がなされていますが、両者に因果関係はなく、そのような説明には無理があると考えます。

3.   「2.仮に補償の必要性があるとした場合の私的録音録画補償金制度の基本的なあり方」について
(1) 補償金の支払義務者について
 2006年報告書では、ハードディスク内蔵型録音機器等や、汎用機器・汎用媒体の追加指定の是非を巡り、次のような問題点を示しています。

 指摘された制度上の問題点
実際に著作物の私的録音・録画を行わない者も機器や記録媒体を購入する際負担することとなる。この問題点を解消するための返還金制度も,そもそも返還額が少額であり実効性のある制度とすることが難しい。(複製を行う者の正確な捕捉の困難性)
汎用的な複製に用いられる機器(パソコン)や記録媒体(データ用CD-R)は,私的録音・録画に用いられる実態があるが,仮に指定すると音楽録音等に使用しない者にも負担を強いることとなり,指定は困難

 資料1の5〜6ページでは、消費者が支払義務者のまま、汎用にまで対象を拡大すれば、返還制度の問題点が拡大するとしていますが、その対応策として、支払義務者を製造業者等とすれば、返還制度を検討する必要がなくなり、汎用機器・記録媒体を対象とすることによって生ずる課題を解決できるかのような記載がなされています。
 支払義務者を製造業者等としたところで、事実上、消費者が何らかの負担を負うことに変わりは無く、むしろ、返還制度がなくなってしまうことで、私的録音録画を行わない消費者に対しても徴収がなされた上に、消費者がそれを取り戻す機会も取り上げられるという極めて不合理な状況となります。このように、状況を悪化させる制度の改定には、当然ながら、賛成できません。

 以下、仮に補償金制度を存続させることになった場合であって、消費者を支払義務者とし、製造業者等が従来どおり、協力義務を負うとした場合について、記述させていただきます。

(2) 対象記録媒体の範囲について
 資料1では、4ページにおいて「対象記録媒体の範囲を見直す必要があると考えるがどうか」との記載があるに留まっており、どのような見直しを想定しているのかについて、具体的な言及はありませんが、これが仮に、汎用記録媒体への対象拡大を意図しているのであれば、2006年報告書で指摘された問題点が解消されぬまま、私的録音録画に使用しない者からも一律に徴収することとなり、不当な負担を強いることになるため、断固として反対します。
 汎用記録媒体は、プライベートユースであっても、個人が撮影した写真や家族旅行などを撮影した動画の保存、さらにはパソコンデータのバックアップ等、私的録音録画以外の用途のみに用いられているケースが多々あると思われます。さらに、企業内でデータの保存・配付及びデータのバックアップなどに使用するビジネスユースも非常に多いと推測されます。このように様々な利用が想定される媒体の購入者から私的録音録画補償金を一律に徴収すれば、公平な負担どころか、不当な負担となり、私的録音録画補償金制度自体について、国民の理解を得ることは、ますます困難となるものと危惧いたします。
 このような私的録音録画以外の用途で複製する者への不当な負担が生じることがないようにするため、仮に一定の行為について補償の必要性があると判断され、補償金制度を存続させることになった場合には、コンシューマ市場向けの私的録音録画専用機器にて使用される専用記録媒体を対象とするという現行の枠組みを維持すべきと考えます。

(3) 対象記録媒体の決定方法について
 現行の政令指定方式は、2006年報告書にも記載されているように、「法的安定性、明確性」に優れていると考えられます。すなわち、何が補償金の対象となるかにつき、予測可能性が担保され、紛争防止機能が高いという点で、評価できるものと考えます。

以上


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