著作権分科会 法制問題小委員会(第11回)議事録・配付資料

1.日時

平成20年1月24日(木曜日)10時〜12時

2.場所

三田共用会議所 3階 「大会議室」

3.出席者

(委員)

市川、大渕、末吉、多賀谷、茶園、苗村、中山、松田、村上、森田 の各委員

(文化庁)

吉田長官官房審議官,山下著作権課長,ほか関係者

4.議事次第

1 開会

2 議事

  1. 機器利用時・通信課程における一時固定の取扱いについて
  2. 私的使用目的の複製の見直しについて
  3. 今期の審議の経過について

3 閉会

5.配付資料一覧

資料1
  機器利用時、通信課程における一時的固定の法制上の論点について審議経過報告(デジタル対応WT)
資料2−1
  私的録音録画小委員会中間整理 抜粋
資料2−2
  第23回文化審議会著作権分科会における意見の概要
資料2−3
  私的録音録画小委員会中間整理に関する意見募集の結果について
資料2−4
  著作権法第30条の適用範囲の見直しに関する論点の整理について
(以上、私的録音録画小委員会)
資料3
  私的使用目的の複製の見直しについて
資料4
  平成19年度法制問題小委員会の審議の経過について(案)

6.議事内容

10時1分開会

【中山主査】

 それでは、時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会第11回を開催いたします。
 本日は、御多忙中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開にするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々には御入場いただいておりますけれども、特段異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】

 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々はそのまま傍聴をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、お手元の議事次第の下半分に配付資料一覧がございますので、それと見比べながら御確認をお願いいたします。
 本日、資料4点ございますが、資料2につきましては、資料2−1から資料2−4まで4つに分かれてございますので、合計7点お配りしてございます。過不足等ございましたら、事務局のほうまで御連絡をお願いいたします。

【中山主査】

 よろしいでしょうか。
 本日は、まず今期の本小委員会の検討課題として残されている課題のうち、機器利用時・通信過程における一時的固定の法制上の論点について、デジタル対応ワーキングチームからの御報告をいただきたいと思います。
 また、私的使用目的の複製の見直しにつきましては、私的録音録画小委員会における検討状況とあわせて、事務局より御報告をいただきたいと思います。
 その後、これらの課題も含めまして、また前回の意見募集の結果についての検討も踏まえまして、今期の本小委員会の審議経過案について議論をしたいと思います。
 それでは、まず最初に、機器利用時・通信過程における一時的固定の取扱いにつきまして、デジタル対応ワーキングチームの茶園座長より御報告をお願いいたします。

【茶園委員】

 では、御報告させていただきます。
 資料1をごらんいただきたいのですけれども、機器利用時・通信過程における蓄積、以下これを総称しまして「一時的固定」といいますけれども、一時的固定につきましては、この法制問題小委員会より検討するようにということで、平成17年度のデジタル対応ワーキングチームにおいて議論をいたしました。そして、18年1月の著作権分科会報告書では、後でその検討結果を御報告いたしますけれども、平成19年度を目途に結論を得るべきというようにされておりました。これを踏まえまして、今般、新たな技術動向を見極めつつ、一時的固定の取扱いにつきまして検討を行っております。
 次の1.ですけれども、18年1月の報告書におきましては、次のように考え方を整理しておりました。下の図をごらんいただいたら、よくわかると思いますが、いわゆる一時的蓄積につきましては、瞬間的・過渡的な蓄積とそうでないものを分けまして、前者の、瞬間的・過渡的な蓄積については、そもそも複製には当たらないものとしておりました。
 一方、その他のものを一時的固定と呼びますが、それらは一応複製に当たるといたしますと、では、複製権を及ぼすべきかどうかということが問題になるわけです。最後の下の中黒のところですけれども、瞬間的・過渡的な蓄積ではない蓄積につきましては、現に日常的に行われているような機器の通常の使用や円滑な通信に支障を生じる場合などは、権利を及ぼすべきではない場合が多いだろうということで、では、どういうものについて権利を及ぼすべきではないのかということを検討いたしまして、次の2ページをごらんいただきますと、枠のところですけれども、次の3の要件をすべて満たす場合には権利を及ぼすべきではないのではないかというように考えました。
 1つ目が著作物の使用または利用に係る技術的過程において生じる、2つ目が付随的または不可避的、3つ目が合理的な時間の範囲内と、こういう3つの要件を考えたわけでございます。ただ、この報告書においても、2ページの最後の中黒のところですけれども、技術の進展に伴い、さまざまな形態の一時的固定が出現してきており、また今後も出現されることが予想されるため、上記1から3の要件では、権利を及ぼすべきではない場合のすべてを対象とすることは困難であると考えられると思われるということで、権利制限を新たに設ける場合においても、明示的に権利が制限されていない一時的固定がすべて複製権の対象であるとする反対解釈は避けるべきである、さらに必要な場合を想定し、個別に別個の権利制限規定を設けるなど、必要な措置を追加して検討する必要があると考えられると、このような留保をしておりました。
 今般、この報告書を踏まえまして検討しているところでございます。3ページのところですけれども、次のような問題、論点があるということを考えております。
 1つ目の中黒ですけれども、平成18年報告書におきましては、大きく分けて、1コンピュータ等の機器を用いて著作物を使用または利用する場合の過程における行為と、2インターネット等を通じた情報通信が行われる場合の過程に関する行為の2つを包括的に一時的固定というふうに整理して検討したということです。
 次の2つ目の中黒ですけれども、しかしながら、実際の状況にかんがみますと、12は相当に内容が違って、また法的評価の前提も異なっているというように考えられることから、これらを一律の観点から整理するというのは適切ではないのではないかということです。
 3つ目の中黒ですけれども、とりわけ2、すなわち通信の過程における行為ですけれども、これは、今まで一時的固定の枠組みの中で議論されてきたような付随的・不可避的な蓄積というよりは、むしろ情報伝達の効率化や通信伝達の信頼性確保といったそういう積極的な理由から行われる行為でありまして、1とは異なる観点からの検討が必要なのではないかということです。
 最後の4つ目の中黒ですけれども、一方、1の機器利用時の行為ですけれども、1につきましても、先ほど3つの要件を立てたと言いましたが、3つ目の要件である合理的な時間の範囲内というものは近年の技術動向等を踏まえますと、定量的な時間によらずに要件を設定すること等も検討すべきではないかということです。以上の4つの論点を挙げております。
 そして、現在検討を進めているのですけれども、今後の検討方針としては次のようなことを考えております。(2)のところですけれども、1つ目の中黒で、平成18年報告書の整理を基礎としつつ、技術動向などを踏まえ、日常的に行われているような機器の通常の使用や円滑な通信に支障が生じないようにするためにはどのようにすべきかという観点から、権利を及ぼすべきではない要件について、利用と保護のバランスに注意しつつ検討を加え、立法措置のあり方を検討する。
 そして、1の機器利用時の行為と2の通信過程の行為ですけれども、これらをきちんと分けて検討すべきだろうということで、前者の1につきましては、これまでの経緯においても機器等による著作物の使用または利用に際して付随的または不可避的に生じる一時的固定の問題で取り扱われていたところであり、原則として、平成18年報告書の考え方を基礎としつつ、権利を及ぼすべきではない行為の要件については、近年の技術動向等を踏まえつつ、必要に応じて所要の修正を加えることとする。
 後者の2につきましては、2のインターネット等を通じた情報通信が行われる場合の過程に関する行為については、情報伝達の効率化や通信伝達の信頼性確保といった観点から、権利を及ぼすべきではない行為の要件について別途検討することとする。以上のようにデジタル対応ワーキングチームでは考えておりまして、検討を進めているところです。
 報告は以上です。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、今の御報告に関しまして、御意見、御質問ございましたらお願いいたします。何かございませんでしょうか。
 どうぞ、松田委員。

【松田委員】

 1ページ目の整理でありますけれども、従前、一時的蓄積といっていたものについても、どうも2種類あると。これは、著作権法上の概念として複製に該当しないものと、当たったとしても権利を及ぼすべきでないという2つです。こういう考察が必要だという整理のようであります。そして、最後のページの1も、おおよそその方向で、これから検討をさらに重ねるということになるのだろうと思います。12とそういうことですね。

【中山主査】

  12というのは……

【松田委員】

 4ページの、これからさらに検討するというふうになっておりますところです。12のところで、「権利を及ぼすべきでない行為の要件については」とあって、「権利」になっているんです。だから、一時的固定を複製としたうえで、複製権を及ぼすべきでない行為ということを考えている。多分12ともにそういうことでよろしいでしょうか。

【茶園委員】

 すみません、ちょっと質問の趣旨が分からないのですが。

【松田委員】

 一時的固定のことを言っていますから、権利を及ぼすべきでない行為というのは、複製権が及ぶべきでない行為というふうに考えてもよろしいですよね。

【高柳国際著作権専門官】

 事務局から補足させていただきますと、前回の報告書では、いわゆる瞬間的や過渡的な蓄積は複製に該当しないと。それらの一時的固定については複製に該当するのではなかろうかというふうな整理をしていたわけでございますが、その部分を、今回、そもそも複製を及ぼすべきなのか、そうでないのかというところを、及ぼすべきでない範囲があるだろうというふうなことを考えておりまして、具体的にどういう形でそもそも複製を及ぼすべきでないような形にするのかというところに関しましては、また今後検討していくというふうなことになろうかなと。すなわち、複製には該当しないというふうなところに関しましても、まだ必要に応じて、検討の余地があれば検討するということになってくるわけでございますが、少なくとも前回の報告書では、一旦は、瞬間的・過渡的蓄積以外のものについては、複製に該当するのではないかというふうな整理になっておりますので、それを基礎としながら検討を進めていくというふうなことを考えております。

【松田委員】

 すみません。私の理解が足りないんだろうと思いますが、18年の報告書は、瞬間的・過渡的蓄積については複製に該当しないということになっていた。私も、賛成なんですね。著作権法上の権利が最初から及ばない複製に該当しない範囲としてあるんだろうというふうに思っていたんですね。
 4ページの1は、一時的固定の中で、18年度の報告書の基本的な考え方に立っているのだが、これは複製に該当しないと言っているのではなくて、「権利が及ぼすべきでない行為」として検討するというように整理をされています。この関係がわからないんです。

【茶園委員】

 すみませんでした。最初の1ページ目における一時的蓄積と一般に観念できるものの中で、瞬間的・過渡的な蓄積とは、本当に時間的に0.何秒とかのもので、そういうものはそもそも複製にも当たらず、そのため、当然複製権は及んでこないだろうということです。これに対して、平成18年1月の報告書の際の議論で念頭に置いていましたのは、コンピュータを使う場合のCPU内で、複製らしきものが行われているという場合です。それについては、これまでは日本では複製ではない、ですから複製権が及ばないという考え方があったと思うのですけれども、そのようなものを複製と考えたとしたときに、複製権を及ぼすべきではないという場合があるだろうが、それはどういう場合かということを考えたということでございます。現在行っている議論でも、瞬間的・過渡的な蓄積は複製ではないという考え方を前提にしておりまして、そうでないものを検討しているわけです。平成18年1月の報告書では、今いいましたように、コンピュータのような機器利用時の場合を念頭に置いていたんですけれども、その際にも通信の場合にはちょっと違うのではないかという認識はあったのですが、現在は、この両者は明確に違うものだろう、かなり性質が異なるものだろうという認識に立って議論を進めていくべきだというように思っております、それが1の機器利用時と2の通信の過程に分けるということです。1につきましては、平成18年報告書の3つの要件というのを基礎にして、必要であれば修正を加えていく。2につきましては、あるいはこの3つの要件に似たものになるのかもしれませんけれども、通信というものの性質にかんがみまして別途検討を加えていくということでございます。

【松田委員】

 今の説明でわかりました。全く複製という概念に当たらないものと、当たるけれども12があると、こういう考え方ですね。

【茶園委員】

 複製に当たるだろうというものの中で、やはり権利を及ぼすべきだということがあるのかもしれません。一時的固定という概念で想定されるものはさまざまあると思うのですけれども、その中で機器利用時と通信過程を分けて、権利を及ぼすべきではない行為はどういうものか、それらをどういう要件で考えることができるかということを検討しております。【中山主査】ほかに。
 どうぞ、苗村委員。

【苗村委員】

 今の質問と関連をしますが、1つは確認で、あとはコメントです。
 2ページ目の真ん中に表がありまして、その上で「一時的固定の代表的な事例について、上記3要件に基づいて以下のように整理している」と書いてありますが、先ほど来の御説明を伺っていると。以下のようにというのは、以下のイとウのように整理をしているという意味で、アは一時的固定ではないというふうに解釈してよろしいですね。この表がちょっと誤解を招くおそれがあるなというのが1つです。
 それでコメントですが、この分け方そのものは、私、基本的に大賛成で、大変難しい問題を整理されてよろしいと思うんですが、そうはいいましても、今、私が前に申し上げたことと関連して、アとイの境界が必ずしも明解ではないと。例えば、下のネットワークにおけるデータの伝送の場合を例にとりますと、電子メール等の伝達過程における蓄積はアであると。しかし、中継サーバーにおけるキャッシュはイであるというふうになっておりまして、基本的にはそうするのが合理的だと思うんですが、アとイの境界で、電子メールは仮にアであり、それが例えばウェブサーバーから読み出したものはイであると仮に解釈して本当に合理的なのか、電子メールに類するものでも実はイに該当するのもあるでしょうし、ウェブサーバーから読んだものもアに該当するのもあると。そういう意味で非常に境界が不明確なんだと思うんです。
 コメントは、アとイの境界を厳密にすること自身は、最終的には余り重要ではなくて、むしろイとウの境界を明確にすることのほうに現実的な意味があると思われますので、むしろその点に力を入れていただいたほうが、実態としてよろしいのではないかというのが私の考え方です。
 ありがとうございました。

【茶園委員】

 どうもありがとうございます。
 おっしゃられるように、現実に機器の内部で行われているものとか、あるいは通信過程で行われているものは、いろいろな性格のものがございまして、なかなか最初から、今おっしゃられたメールの場合はこうだとか、あるいは通信の場合はこうだというように言い切れないのだろうと思います。先ほど12、機器利用時と通信過程を分けると言いましたけれども、これについても機器が通信につながっている場合には、どのように考えるのかが問題となります。この行為は1の行為、この行為は2のものですというように厳密に分け切れないところがあるかもしれないと思っております。とりわけ技術動向によりまして、今想定されているものとは違うというものも出てくる可能性も思いますので、最初から断定的にカテゴライズすることは避けて検討したいというように思っております。貴重なコメントをありがとうございました。

【中山主査】

 ほかに御意見等ございましたら。
 どうぞ。

【多賀谷委員】

 コメントで、別に御返答いただかなくても結構ですけれども、今後この形でイかウかわからないような状態は、特に情報通信の関係での移動体端末で数多く出てくる可能性があると。というのは、移動体端末というものは通信容量が限定されていますので、これからそれで画像を送る場合、ストリーミングで送ることはできないので、必ず携帯等の移動端末で一度保存してから流すというタイムシストが大幅に起こることがあります。それをどうするかというのは多分ビジネスと関係してくる。そういう場合に、通信端末の場合どうなのかというのは、結局ここでは情報伝達の効率性とか通信伝達の信頼性確保という話なんですけれども、基本的に通信回線を事業者もしくはプロバイダーが管理していて、そこで内容的な利用ができないようなセキュリティー装置が加えられているということが多分必要だと思うんですね。今までは一時的固定と、一時だから大丈夫だったんですよ。恐らくそうじゃなく、そこのセキュリティーの管理権限が及んでいるかどうかと。例えば、Cのハードディスクにデータを保存された場合に、そこのハードディスクから解除して見ることを、ユーザーができるのか、それとも通信事業者がネットワークでというか、通信回線の別のほうにいる者がネットワークで信号を送った場合だけ解除できるかという、多分そういう話になるのではないかと思います。
 以上です。

【茶園委員】

 どうもありがとうございます。
 いろいろな技術があるようでして、そういうところをきちんとこちらで把握した上で検討を進めていきたいと思っております。どうもありがとうございます。

【中山主査】

 この問題は次々と新しい技術が出てきて、追いついていくだけでもなかなか大変ですけれども、よろしくお願いします。
 ほかに何かございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この問題はこのくらいにいたしまして、次の問題に移りたいと思います。
 次は、私的使用目的の複製の見直しについて、事務局より説明をお願いいたします。

【川瀬著作物流通推進室長】

 それでは、私のほうから資料2―1と2と3と4に基づきまして、私的録音録画小委員会における検討の現状について、簡単に御報告をさせていただきたいと思います。
 まず、資料2−1でございますけれども、その前に、特に30条の適用範囲の見直しについて中心に御説明をしたいと思います。
 資料2−1をごらんいただけますでしょうか。これは、10月12日に著作権分科会が開催されまして、そこに御報告をし、公表した中間整理からの抜粋でございまして、以前この小委員会でも、まだ案の段階でございましたけれども、御説明をしておりますので、ポイントだけ簡単に説明させていただきます。
 まず、30条の適用範囲の見直しにつきましては、利用形態ごとの私的録音録画の契約実態について、まずは整理をさせていただきました。これが1の1ページでございます。
 2ページをあけていただきますと、その内容でございますけれども、基本的には(2)の1ですけれども、私的録音録画の実態から権利者に著しい不利益を与えているという御指摘があった利用形態の中で違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画、それから、他人から借りた音楽CDからの私的録音というようなことについて、実態調査等をもとにして整理をしたわけでございまして、特にaにつきましては、正規商品等の流通や適法ネット配信等を阻害しているという実態が報告されたわけでございます。
 それから、その下の2ですけれども、利用契約の実態から、私的録音録画の対価が既に徴収されているのではないかという指摘があった利用形態としまして、適法配信事業者から入手した著作物等の録音物・録画物からの私的録音録画の問題、それから、次のページにまいりまして、bのレンタル店から借りた音楽CDからの私的録音、それから、4ページの適法放送のうち有料放送からの録画について、その実態面を整理しました。
 それから、2の30条の適用範囲から除外することが適当と考えられる利用形態ということで、2つの利用形態を選択しているわけでございまして、1つは、権利者に著しい経済的不利益を生じさせ、著作物等の通常の利用を妨げる利用形態のうち、5ページを開いていただきますと、違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画については、その実態で正規品の流通等を阻害する実態が明らかになっておりますので、その下のアですけれども、ベルヌ条約のスリー・ステップ・テストから、通常の利用を妨げる利用形態であるのではないかとか、秩序の変更を伴うけれども、違法サイトからの録音録画物が違法であるという秩序は利用者にも受け入れられやすいんではないかとか、それから、違法サイトの利用が抑制されるんではないかと、違法サイトが減少すれば、違法状態が放置されることにはならないんではないかというようなことが整理されました。特に、アの通常の利用を妨げる利用形態につきましては、脚注を見ていただきますと、52というところですけれども、国際的にもその方向で法律改正が行われており、また、現行法で判例等でその違法性が確認されているというところが多いわけでございます。
 中間整理後の状況ですけれども、ドイツは2003年に法律改正をしましたけれども、昨年新たな法律が通りまして、この1月1日から施行された法律では、ドイツ法の2003年法の明確化を図るために、違法サイトからのダウンロードについて違法だということを明確にしたというような世界的な流れもございました。
 ということで、6ページにまいりまして、この分野につきましては、一番上でございますけれども、第30条の適用を除外することが適当であるという意見が大勢でありました。ただ、次の段落にいきまして、これに対して、そこまで違法とするのは行き過ぎであるという反対意見もあったのは事実でございます。また、30条の適用範囲から除外する条件としましては、その下のところのアでございますけれども、違法サイトと承知の上で録音録画の場合や、明らかな違法録音録画物からの録音録画に限定するなど、適用除外に関しての範囲については一定の条件を課すと。それから、イでございますけれども、権利者の不利益が顕在化している録音録画に限定をするというようなこと、それから、7ページのウにまいりまして、罰則の適用は除外をするというような条件が整理されたところでございます。
 また、その下の(2)ですけれども、音楽・映像等のビジネスモデルの現状から契約により私的録音録画の対価が既に徴収されている。またはその可能性がある利用形態、これは契約モデルで解決をするべきではないかという御指摘でございますけれども、その中で、9ページにまいりまして、適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画については、利用形態の実態からいわゆるオーバーライド契約によって複製の対価も含まれているという可能性があるというようなことも前提にしまして、契約による解決にゆだねる趣旨から、30条から除外することが適当であるという意見が大勢でございました。
 その他レンタル点から借りた音楽CDからの録音録画や、適法放送のうち有料放送からの私的録画についても検討されましたけれども、この2つの分野については慎重な意見が大勢でございました。
 その中間整理を御報告しました文化審議会著作権分科会における意見の概要でございます。これが資料2−2でございまして、その際、分科会の委員から御発言があった内容を簡単にまとめておりますけれども、1につきましては、30条の適用範囲から除外するためには被害の実態が必要であろうという御意見。それから、次のところですけれども、録音録画に限定をするという中間整理のまとめでございましたけれども、音楽・映像のみならず、ゲームソフトとかビジネスソフトなどのコンピューターソフトウエアについても、権利者の不利益が顕在化しているということですから、限定する必要はないんではないかという御意見が出ております。
 また、2の事項につきましては、もともとこの議論は著作権料と補償金の二重取りというところから検討が出発したわけでございまして、その二重取りの議論の中で、二重取りではないのではないかという意見があり、また、消費者の方から二重取りではないかというような御意見がで、それから、法律家の目から、一番下でございますけれども、どちらとも理由づけができるんではないかと考えるが、二重取りであるかどうかの議論を余り続けていても生産性はないんで、その点だけを追求しても妥当な結論が出ないであろうというような御意見がございました。
 それから、資料2−3でございますけれども、10月12日に分科会に報告した後、10月16日から11月15日まで意見募集をした結果でございまして、文化審議会著作権分科会関連の小委員会の報告としては異例の8,720通の御意見を頂戴したわけでございます。その8,720通の約7割は30条の範囲の点の意見でございまして、多くの方が関心を持たれているということがわかるわけでございます。
 その募集結果について簡単に概要を紹介しますと、2ページを開いていただけますか。これが30条の見直しの具体的な意見でございますけれども、まず2ページの違法録音録画物、違法配信からの私的録音録画については、最初の丸から4ページの2つ目の丸までがいわゆる賛成の意見でございまして、2ページから見ていただけますように、各権利者関係の団体につきましては、基本的には賛成ということでございます。また、3ページの上を見てみますと、日本経団連の知的財産委員会等からも賛成というような御意見が来ております。もちろん、個人の意見としても賛成だという意見も多数ございました。
 4ページの3番目の丸、4番目の丸のところは慎重というような意見でございます。
 また、その次の丸から大体最後にかけましては、基本的には反対という意見でございまして、特にインターネット上のテンプレートを利用した意見をもとに、そのままないしはそれに自分の意見を加えたような形で提出されているものが主でございまして、例えば4ページの一番下の丸ですけれども、ダウンロードしたファイルが違法かどうかわからないという意見、ダウンロードした後でも、その区別をするのは難しいという意見。それから、ダウンロードした時点で違法サイトと承知しているかどうかが難しいという意見。適法マークについての取り組みが権利者団体で進んでいるんですけれども、それ以外はすべて違法というように扱うのは乱暴であるという意見。一般のユーザーは常に犯罪を犯すリスクにさらされるというような御意見、また、次の5ページの丸のように、違法サイトへのアクセスの減少を起こすばかりか、適法サイトへのアクセスの減少をさせてしまうんではないかとかという意見など有効性や技術的側面の問題等について御指摘をされております。
 また、個別の問題に移りますと、6ページの一番下ですけれども、違法サイトと適法サイトの区別について御意見もいただいております。また、技術的な問題は7ページでございますけれども、それから、8ページにいきますと、送信可能化権による対応で十分じゃないかという御意見がある一方、最初の丸のように、海外から送信される場合や送信元が秘匿されるようなP2Pソフトウエアが利用される場合など、公衆送信権で違法を追求するだけでは十分な対策をとれないんじゃないかというような御指摘もございました。また、その下のように、振り込み詐欺等の架空請求のおそれがあるんではないかという意見も賜っております。
 それから、特記すべき事項は9ページでございまして、30条の適用範囲とするについては、まず2つ目の丸ですけれども、録音録画に限定せずに議論すべきであるという御意見が、特にソフトウエア中心の団体ないしは会社から来ております。
 また、その下ですけれども、この意見については明確に違法なソフトウエアのアップロード及びダウンロードによって甚大な被害が生じているというようなところから、そのソフトウエアについても、やはり規制の対象にすべきではないかという御意見が来ているわけでございます。
 そういうような御意見を踏まえまして、2−4でございますけれども、12月18日の私的録音録画小委員会で30条の適用範囲の見直しに関する論点の整理という事務局ペーパーを出しまして、集中的に議論をしていただいたところでございます。
 まず、違法複製物または違法配信からの録音録画の取扱いについては、改正の必要性ということで通常の流通を妨げる利用であり、先進諸国等の動向を勘案すれば、やっぱりその方向でいくべきじゃないかというような論点、それから、これは意見募集から出てきましたように、違法な送信可能化や公衆送信を行う者を特定するのが困難というようなところがあって、送信可能化権や公衆送信権では十分対応できないという御意見についてどう考えるのかという議論をしました。
 それから、特に利用者の方から大きな反響があった利用者保護の問題でございまして、法律的な対応以外にも、法律内容の周知や違法サイトに関する情報の提供、それから、警告や執行方法の手順に関する周知、相談窓口の設置など、また、これは従来から検討していただきました適法マークの推進等について、運用面の工夫で政府ないしは権利者に汗をかいていただくような方策が必要なんじゃないかなというような点が議論をされたところでございます。
 また、特に投稿サイト等の視聴に伴いますストリーミングに伴うキャッシュの取扱いについて、これも利用者の方から御指摘があったわけでございます。それから、適用対象の範囲で、一応中間整理では録音録画に限定するというふうになっておりましたけれども、コンピューターソフトについてどう考えるのかというような観点から、議論が行われたわけでございます。2につきましては、見ていただければわかると思います。
 なお、補償金制度についての小委員会での取扱いでございますけれども、特に著作権保護技術と補償金制度の関係について大きな意見の隔たりがあり、中間整理ということになったわけでございますけれども、無制限の複製の拡大防止に著作権法技術というものが有効であるということ、それから、著作権法技術の開発、普及を前提としまして、基本的には補償金制度を縮小する方向で他の方法に置きかえていく。ただ、当面音楽CDからの録音やデジタル無料放送からの録画については補償金制度を残していく等の事務局提案を出しまして、現在その案をそれぞれの関係者が持ち帰って検討していただいているということでございます。したがいまして、今期の小委員会での報告書の取りまとめというものはできませんでしたので、来期に向けて検討したいというふうに考えております。
 以上でございます。

【黒沼著作権調査官】

 引き続きまして、資料3に基づきまして説明させていただきます。
 こちらは、私的録音録画小委員会の検討を受けまして、本小委員会としてどのような課題設定をすべきかと、そういう点について簡単に整理をしてみたものでございます。
 1のところは、問題の背景及び検討経緯ということで、今までの経緯をまとめただけですので簡単にいたしますが、検討の背景としては、近年の複製ですとか通信技術の発達によりまして、私的領域でも大量かつ広範な複製が可能になったこと、あるいは契約や著作権法技術の変化など、こういったことを背景にしまして、平成17年1月の「著作権法に関する今後の検討課題」において、条約上の制約や私的使用目的の複製の実態を踏まえて、認められる範囲の明確化を図ると、こういったことが元々の検討課題として設定されていたわけでございます。
 これに基づきまして、平成18年度の法制問題小委員会でも検討が行われまして、19年1月の報告書におきましては、私的複製と契約や保護技術との関係ですとか補償金制度、それから、違法複製物等の扱いについて、これらを具体的な検討課題だと設定しまして、その上で私的録音録画小委員会の結論を踏まえて、必要に応じて私的複製のあり方全般について検討を行うということにしていたわけでございます。
 次のページに行っていただきまして、先ほどの私的録音録画小委員会の検討経過の報告を踏まえまして、どうするかということでございますけれども、先ほど御説明があったとおり、私的録音録画小委員会では、録音録画に関しまして、1違法複製物または違法配信からの私的複製ですとか、2適法配信事業から入手した著作物の録音・録画物からの私的複製を取り扱っていたわけでございます。その中でも先ほど御紹介あったように、1番の点につきましては、ゲームソフトやビジネスソフトなどについても不利益が顕在化しているという意見もあって、録音録画に限定せずに、著作物を全体として議論を行うべきであるという、そういった御指摘もあったわけでございます。こういった御指摘も踏まえまして、本小委員会としては、録音録画以外の分野についても検討を行うか、その検討の範囲をどのようにとらえるべきかと、そういったことについて30条全体のバランスを見渡す観点などから、本日御意見を賜れればと思っております。
 具体的には、1つ目は、違法複製物または違法配信からの私的複製についての検討の範囲を録音録画に限るかどうか、あるいはプログラムについて含めるか、あるいは著作物全体について含めるかという点でございまして、私的録音録画小委員会では、いろいろと実態を、違法複製物の流通実態とかそういったものを踏まえての上で議論をしていたところですので、本小委員会でも、検討範囲をどうするかを検討するに当たっては、それぞれの種類の著作物ごとに私的複製の実態がどうなっているのか、まずは関係者などからの意見聴取を行っていく必要があるのではないかと思っております。この点についてどのように考えるべきか御指摘を賜れればと思っております。
 2つ目は、それ以外の課題でございますけれども、私的録音録画小委員会では、様々な検討の中から、適法配信事業者から入手した著作物の複製物からの私的複製について措置をすべきというような方向で議論が行われたという御紹介がありました。
 こちらについても、では検討の範囲をどうするのかという違法複製物の場合と同じような問題が考えられるわけですけれども、先ほどの違法複製物の場合と違いまして、現在のところ、関係者から録音録画以外の分野について検討をすべきというような具体的な要請は特に伺っておりません。また、先ほども説明あったように、この適法配信事業者からの問題の関係は、私的複製と契約との関係ですとか著作権法技術との関係で、事実上対価が徴収されている場合があるという問題と、私的録音録画補償金制度との関係と、そういったものの関連から検討が進められた事項であるというふうに思われますので、補償金制度のある録音録画の分野とそれ以外の私的複製の分野において、前提には大分差があるのかなとも思われまして、こちらの適法配信事業関係の私的複製の取扱いについて、録音録画以外の分野をどのように考えるのかについても御指摘をいただければと思っております。ただ、音楽配信ですとかそういったものと同様の実態がどのぐらいあるのかという実態を調べてみないと、なかなか議論がしにくい点もあるかと思いますけれども、もし何らかの御示唆をいただけるならと考えております。
 次のページ以降は諸外国の状況でして、先ほど御紹介ありましたので省略をいたします。よろしくお願いいたします。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの報告につきまして、御意見を頂戴したいと思います。御意見、御質問ございましたら、お願いいたします。
 どうぞ、市川委員。

【市川委員】

 御説明を聞かせていただきまして、どうもやはり録音録画に限定するのは、何かちょっと狭いという感じがしまして、流通実態をいろいろお調べいただいて、広げるべきところは広げる方向で御検討いただいたらいいのではないかという感じを持っております。
 それから、適法物からのものについては時期尚早ということで、ちょっとそれは置いておいてもいいという感じを持っております。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 ほかに御意見ございましたら。
 村上委員、どうぞ。

【村上委員】

 どうもおくれて申しわけありませんでした。1つ、前提で伺いたいので、一般論としては、市川委員のとおりであると思って、調査して広げ方を決めるということでいいと思いますが、その前提として、違法サイトを承知の上でというふうに書いて、その後まとめている言葉が「情を知って」という言葉が使われていて、それを最終的な法律の条文にするのかという、そこだけ確認をさせていただきたい。というのは、一般的な違法性の意識を持って、違法だと認識してこういう行為を行うという、いわゆる故意過失の故意という概念はあるので、それと比べて「情を知って」と書くと、かなり違法をはっきり知ってという、非常に強い意味が出てくるのではないかという気がするので、最終的にも「情を知って」という言葉を使って法文書かれる話になるのか、もうちょっと違う書き回しになる可能性があるのかという、そこだけ前提としてお伺いしたいと思います。

【中山主査】

 室長、どうぞ。

【川瀬著作物流通推進室長】

 審議会の報告書レベルの話ですので、報告書の趣旨というのは、やはりそこに何か限定的な条件をつけるべきだろうということで、例えばということで「情を知って」とか、ドイツが採用している、日本で条文になるかどうかわかりませんが、「明らかな違法複製物から」というようなのが例示として挙げられておりますので、具体的に法律にするときには、そういう審議会報告書の趣旨を踏まえた上で、法律上の整理をしながら条文はつくっていきたいというふうに思っております。

【村上委員】

 わかりました。あくまで例示ということで。

【中山主査】

 そうですね。「情を知って」というのは113条に現にあるわけで、著作権法では例外的な言葉ではないように思いますが。
 ほかに何かございましたら。よろしゅうございましょうか。
 それでは、この問題はこのくらいにいたしまして、次の項目に移りたいと思います。
 次に、今期の審議経過報告の案につきまして議論をしたいと思います。
 ここ数年の小委員会では、毎年1月に任期末報告書という形で取りまとめを行っておりましたけれども、今期はまだ検討途上の課題も残されておりますので、任期末の著作権分科会には、現在の進捗状況について経過報告をするという形にせざるを得ないのではないかと思われます。その点も含めまして、事務局より説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、資料4に基づきまして説明をさせていただきます。
 こちらは、1月30日に今期最後の著作権分科会が予定されておりまして、そこの場で各小委員会の検討を報告するということになりまして、そのための資料でございます。
 主査から御説明ございましたように、ここ最近であれば、毎年1月に報告書という形をとっているわけでございますが、お手元の資料では、タイトルにございますように、審議の経過ということについての案にしております。この趣旨といたしましては、本日議論しました2つの課題ですとか、前回の意見募集の結果でさらなる課題が残された検討課題などもございましたので、このような形にしてはどうかという御提案でございます。以下、また順を追って、その中で説明をしていきたいと思います。
 まず、「はじめに」の部分でございます。この部分は報告の全体構成を述べている部分ですが、第1段落では、まず検討課題を列記してございますけれども、10月に著作権分科会に報告したものからは、5番の私的使用目的の複製の見直しのところと6番の2つ目の機器利用時・通信過程における一時的固定の検討課題が加わっているところでございます。
 そして、2段落目が10月以降の検討経緯について御報告をする部分でございまして、10月12日の本分科会で中間まとめを報告した後、10月16日から11月15日までの1カ月間、意見募集を実施しまして、全体で546通の意見がありまして、これについては1月11日の小委員会で概要を御紹介して、争点を整理した上で意見交換を行っていただきました。
 最後の段落は、このような状況を受けて、本審議経過の報告は中間まとめの内容とその後の意見募集を受けた検討を踏まえて、各課題についての審議の進捗状況ですとか、残された課題という点で現状を整理したということでございます。そういう形で、各課題の詳細については記載をせずに、現状で残された課題のみを書く、そういった構成で審議経過報告としてはどうかということでございます。
 次のページ以降は、検討課題ごとに、具体のどこの部分に課題が残っているのかなどを記述した部分です。(1)のデジタルコンテンツ流通促進法制の部分は、1段落目は中間まとめの要約ですので省略いたしして、2段落目の「今後」のところからですけれども、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で一部検討されている課題の進捗状況ですとかネット上の創作などに関係する新たな課題についての実態調査等を踏まえるとともに、「また」以下のところは意見募集等を踏まえた記述でございますけれども、その他の権利制限の見直しなどの関連する課題も必要に応じて射程に含めつつ、総合的に検討を進めるという形で、今後の課題を書かせていただいてございます。
 (2)の海賊版拡大防止のための措置の1のところは、譲渡等の申し出を行う行為、特にインターネットを想定して議論をしまして、これについて、一定の要件のもとで権利侵害をみなすことが適当としていたわけでございますけれども、一方で、中間まとめで触れている留意事項のほかにも、意見募集では、譲渡告知行為の外形からは海賊版の譲渡告知行為なのか、正規品などの譲渡告知行為なのかが判別しにくい場合もあるというような懸念も寄せられましたので、これらにつきまして、今後、制度運用の際に困難を生じないような工夫について検討が求められるのではないかと、そういうことで課題を記載させていただきました。
 その次の親告罪の範囲の見直しのところは、中間まとめでも慎重に検討すべきという方向性を示していただいております。それに対しまして、意見募集においても様々に慎重にすべきというような意見がございましたので、こちらについては、最後の部分ですが、現状では、中間まとめにあるように慎重な見極めが必要との方向性が適当という形で記載をいたしました。
 (3)の権利制限の部分ですけれども、1の薬事関係からまいりますと、こちらについては一定の前提と一定の要件のもとで権利制限を行うことが適当と、中間まとめではされていたわけでございます。「一方で」以下の部分が今回の記述ですけれども、中間まとめの意見募集に対して寄せられた意見では、前回の小委員会でも御議論をお願いしましたが、文献提供に関する包括契約の存在ですとか実務の実態に照らすと、迅速な文献提供が必要という観点から権利制限を行うということについて正当性があるのかないのか、あるいは国際条約との関係で、いわゆるスリー・ステップ・テストをクリアできているのかどうかといった点の基本的な部分について見解が大きく分かれている部分がございました。こういったことを踏まえまして、今後医薬品等の製造販売業者による文献提供の実態をさらに詳しく実態を精査しつつ、今述べたような点を含めて検討を進めるべきではないかというふうに整理をいたしております。
 その次の2障害者福祉関係ですけれども、こちらについても権利制限の範囲を拡大する方向性が示されていたわけですが、「この点」以下でございますけれども、意見募集でもおおむね中間まとめの基本的方向性と趣旨を同じくする意見が多かったと思われます。ただ、意見募集では、特に映像資料の分野でいろいろ懸念が示されておりまして、これらにつきましては、中間まとめでも検討を加えている範囲ではあるのですが、なお流通防止のための利用者確認ですとか技術的保護手段ですとか、時差再送信のことについて重ねて懸念が示されていることがございますので、今後適切な制度設計ですとか運用、そういったところで適切な取扱いが確保されるように留意すべきということにしております。
 次の3ネットオークション関係ですけれども、こちらも一定の条件のもとで権利制限を行うことが適当ということにしてあったわけですけれども、これに対しまして、意見募集では特に漫画やイラストなどの出版物に関して多く、例えば必要以上の画像掲載が行われるのではないかですとか、不法に入手されたものの譲渡を助長することになるのではないか、そういった懸念が寄せられていたわけでございます。このうち、後者については、海賊版の譲渡告知行為の防止策などのほかの手段によって対応を図るべき部分も中にはあると思われますけれども、今後中間まとめで触れられていたような権利者の利益を不当に害しないための条件について検討を進める中で、寄せられた懸念に配慮して適切な制度設計ですとか運用が確保されるように留意すべきではないかということにしてございます。
 そのほか、4で今期の少委員会で取り扱った以外の権利制限についての技術を幾つか補足してございます。その他で寄せられている検討要望としましては、図書館関係ですとか学校教育関係が、平成18年1月の報告書で引き続きの検討課題となっているわけでございます。ただ、図書館関係の一部につきましては過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で一部議論が進められておりまして、本小委員会では、この進捗状況を踏まえながら適宜検討を行うという方針ではいかがと思っております。
 それから、次の段落ですけれども、こちらは意見募集ですとか各検討課題の検討を行う中で、目立った点について記述をしている部分です。特にデジタルコンテンツ流通促進法制ですとか、デジタル対応ワーキングチームの検討課題の中ではいろいろと議論が出ていたようでございますけれども、そういった関連でも広く権利制限が話題になる場合があったようでございます。本小委員会では、個別の改正要望が寄せられた事項についてそれぞれ検討を行ってきたわけでして、それだけでも大量にあることはあるのですけれども、今後につきましては、こういったその他の検討課題などの検討を通じまして、そういった権利制限が広く話題になる背景などを把握しつつ、必要に応じてより総合的または広い観点から、権利制限のあり方が検討されることが適当ではないかということで記載をしております。中間まとめの際に、前々回の小委員会になりますか、まだまだ拾えていない要望などもあるのではないかという御指摘いただきましたので、そういったことも踏まえまして、こういう記述を加えております。
 (4)私的使用目的の複製の見直しは、こちらは、先ほど御議論をいただいたばかりですが、本日が今期最終回ということで、御議論いただく前に仮置きとして文案を用意させていただきました。もし本日の議論とそぐわない点があれば、適宜御指摘いただければと思っております。
 まとめ方といたしましては、私的録音録画小委員会においては、意見募集の結果を踏まえて30条の適用範囲の見直しについて検討されてきたところでありますけれども、今後の検討においては、私的録音録画小委員会の検討結果を踏まえるとともに、機器利用時・通信過程における一時的固定の検討との整合性などを必要に応じて検討するとともに、著作物の種類として、録音録画以外の分野でも同様の検討が必要であるかなどについて、私的複製の実態を踏まえながら精査を行うことが適当であると。仮置きの文案だったのですが、先ほどの御意見のラインからはそうは離れていないかなと思っておりますけれども、御指摘賜れればと思います。
 (5)検索エンジンのところでございますけれども、こちらは一定の権利制限などの対応をすべきということでしたが、中間まとめでも幾つか課題が残されていた分野でございます。「今後」以降が今回の記述ですが、実務の実態等に照らして、現実的に対応可能な範囲や権利制限の趣旨等も踏まえつつ、早急に結論を得るよう検討を進めるということで、意見募集などで寄せられた意見も踏まえてこういった表現にしてございます。
 (6)の一時的固定の部分については、こちらも本日の議題の部分でございますけれども、「今後の検討においては」というところで、機器利用時における蓄積と通信過程における蓄積とに分けて検討し、平成18年報告書時点からの技術の変化などを踏まえて、これらの報告書に掲げられた要件の再検証を行うとともに、立法措置のあり方について検討すると。本日ワーキングチームから御報告をいただいたラインで記載案をまとめてございます。
 (7)ライセンシーの保護と(8)の間接侵害の部分は、中間まとめでも継続的に検討を続けるとしていた部分でありますので、その検討の観点について御意見があった部分を追記する形にしてございます。ライセンシーの保護については、中間まとめに対する意見募集でも、関係団体から実務の実態に即した検討を続けるよう要望があったということもございまして、今後とも、より適切な方策の検討を含め検討を続けるとしております。同じく(8)の間接侵害の部分では、意見募集では、侵害とすべき類型を個別に列挙すべきという意見ですとか、逆にそういったことによって立法化によって硬直させるべきではないというような非常に幅広い意見が寄せられておりまして、さらなる検討を続けるということでどうかと思っています。また、あわせて損害賠償のあり方についても検討を求める要望がございましたので、引き続きこういった意見も踏まえつつ検討を続けるという形にしてございます。
 こういった形でそれぞれ検討課題があるわけですけれども、総括としまして「おわりに」の部分で、上記のように一定の結論の方向性を得つつも、さらに整理が必要な事項が残されている検討課題が複数あったことから、本報告は最終的な報告書とせずに、審議経過報告として審議の状況や残された課題の整理にとどめ、来期も引き続き必要な検討を行うことを期したものであると、こういった形でこの審議経過の報告の性格について総括をしてございます。
 それから、これらの検討課題については、来期の小委員会においても速やかに結論が得られるよう調整や検討、事柄によって濃淡あると思いますけれども、そういったものを行い、結論が得られたものから適宜報告をまとめることとしたいと。小委員会の来期の検討課題ですとか、小委員会の設置につきましては著作権分科会でお決めいただく事項ですので、こういった表現をしているところでございます。
 以上でございます。御指摘等賜れればと思いますので、よろしくお願いいたします。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 ただいまの今期の審議経過報告の案につきまして、御意見を頂戴したいと思います。何か御意見ございましたらお願いいたします。
 どうぞ、苗村委員。

【苗村委員】

 先ほど資料3で御説明のあったことと関連しますが、資料4の5ページの一番上の段落のところです。私的複製に係る権利制限の範囲を見直すべき著作物の種類として、私的録音録画小委員会で検討された録音・録画以外の分野でも同様の検討が必要であるか等について云々と書いていますが、資料3を見ますと、実際に私的録音録画小委員会での検討としての中間整理を公表したときに意見が出されたものの、主な追加すべきものとして意見が出されたのは、ゲームソフトやビジネスソフト等の被害で、実際に権利者の不利益が顕在化しているので、プログラムの著作物についても検討を行うということが提案されたと理解していますが、そういう意味で資料3を見ると、明らかにプログラムの著作物についてはかなり優先順位が高そうだと。その他については特段の権利者側からの要請は来ていないという理解をしていますので、資料4のほうでいきなり録音録画以外の分野でもと書きますと、ありとあらゆる種類の著作物について現状を精査するというふうに読み取れるおそれがありますので、例えば次のように書きかえていただいたらどうでしょうか。この小委員会で検討された録音・録画以外にも、例えばプログラムの著作物等についても同様の検討が必要であるか等についてという明示をしていただいたほうがよいのではないかと思います。

【黒沼著作権調査官】

 わかりました。もし他になければ、御指摘を踏まえまして修正の方向で御相談したいと思います。

【中山主査】

 では、そういうふうな方向でよろしいでしょうか。
 では、その修文はお任せ願えればと思います。
 ほかに何か御意見ございましたら。
 どうぞ、市川委員。

【市川委員】

 そうしますと、今回の審議の中で比較的早く立法につながりそうなのはどの点ということになるのかという、それはどんな感じですか。

【黒沼著作権調査官】

 まだ審議経過報告ということで、残された課題それぞれあるわけでございます。ただ、こちらの文案でも多少文言に濃淡をつけてございまして、大きく意見が分かれている課題が残されている分野と、留意事項という形で運用上に支障が生じないような実態上の工夫を講じれば済むような部分とそれぞれあると思います。もちろん、それについても、実際に実務上のガイドラインですとか、実際の運用についていろいろ関係者間で話し合っていただく中で、話し合いがこじれれば実行が難しいということもあるかもしれないですし、今後この審議経過も踏まえて実態を聞いてみないと、どれが早くいけるかというのは今の時点でははっきり言いがたいところではございますけれども、ただ基本的には、やはり、文言上でさらに大きな検討課題があるというようになっていない部分については、比較的まとまりやすいのかなと思っております。

【市川委員】

 そうすると、ちょっと気になりますのは、障害者福祉関係が比較的速やかに実現していただきたいということはずっと感じていましたので、そういう趣旨が含まれている表現を採用したということの御説明だと理解してよろしいですかね。

【黒沼著作権調査官】

 そのような趣旨を含めて表現を工夫しているつもりでございます。

【中山主査】

 ほかに何かございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、意見も尽きたというふうに感じられますので、今期の本小委員会の審議の結果につきましては、審議経過報告という形でまとめることといたしまして、引き続き整理を要するとされた論点につきましては、来期も引き続いて審議をするということにしたいと思います。
 なお、報告書の文案でございますけれども、苗村委員から出ました意見を考慮いたしまして修文させていただきたいと思いますけれども、その点はお任せ願えればと思います。そういうことでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】

 ありがとうございます。
 それでは、本審議経過につきましては先ほどの文言を修正いたしまして、1月30日の著作権分科会において、私から報告をするということにしたいと思います。また、引き続き整理を要するとされた論点等につきましては、来期も引き続き検討を進めたいと思います。
 本日はこれにて終了したいと思いますけれども、最後に、吉田審議官のほうからごあいさつをお願いいたします。

【文化庁長官官房審議官】

 今期の著作権分科会法制問題小委員会を終えるに当たりまして、一言お礼を申し上げたいと存じます。
 今期の法制問題小委員会におきましては、最初のデジタルコンテンツ流通促進法制という非常に広いテーマからそれぞれ個別のテーマにわたる問題、さらには私的録音録画小委員会のほうから投げかけられました私的複製の範囲の見直しの問題など、非常に多種多様、多岐にわたります課題につきまして御審議いただきまして、昨年10月には中間まとめという形でおまとめいただきました。その点につきまして、誠にありがとうございます。
 今期で結論を出すには至らなかったわけでございますけれども、先ほどの整理がございましたように、基本的方向についてはおおむね異論がなくて、障害者関係のように、より詳細な制度設計ですとか運用のあり方ですとか、そういったところに踏み込んでいくものもありますと同時に、一方では、基本的な方向性についてもさまざまな議論があったりいたしまして、さらに検討を続けるべき事項と、いろいろと多様な状況でございます。
 来期におきましては、できるだけすべての課題につきまして、早急に結論を得ていきたいと思っておりますけれども、審議のあり方については、基本的な点について異論があるものとそうでないもの、このあたりは少し区別をいたしまして、めりはりをつけた審議をお願いするような形を私どものほうとしては考えております。文化庁も、事務局としても早急な結論が得られますよう全力を挙げて取り組む覚悟でございますので、委員の皆様にも引き続き御指導をいただければと思います。
 改めまして、お忙しい中にもかかわらず、頻繁な会合に御協力いただきましてありがとうございました。これをもちましてお礼の言葉とさせていただきます。
 ありがとうございました。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 現在の著作権法は、今でもデジタル化、インターネット化の波に洗われていて、非常に大きな問題を多数抱えているわけでございます。この小委員会もそれらと関係しているものが非常に多いわけで、したがってなかなか解決が難しい問題も多いわけですけれども、しかし他方、先ほど市川委員のほうから話がございました障害者関係のように、早急にやらなければならない問題も抱えております。したがいまして、次期の法制問題小委員会、なかなか早くやらなければいけないもの、深く検討しなければいけないもの、いろいろございますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 難しい問題を長期間にわたりまして議論いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、本日はこれをもちまして文化審議会著作権分科会の第11回法制問題小委員会を終了させていただきたいと思います。
 本日は、ありがとうございました。

11時14分閉会

(文化庁著作権課)