資料1

機器利用時、通信過程における一時的固定の法制上の論点について 審議経過報告

平成20年1月24日
デジタル対応WT報告

 機器利用時・通信過程における蓄積(以下、総称して「一時的固定」という。)については、平成17年度のデジタル対応ワーキングにおいてその取り扱いについて議論がなされ、平成18年1月の著作権分科会報告書では、

「・・・法的予測可能性を高め、萎縮効果を防止することにより、権利者や利用者が安心して著作物を流通・利用できる法制度を構築する観点から、今後も立法措置の必要性について慎重な検討を行い、平成19年を目途に結論を得るべきとした。」

とされている。
 これを踏まえ、今般、新たな技術動向も見極めつつ、機器利用時、通信過程における一時的固定の著作権法上の取扱いに関し、立法措置のあり方について検討を行っている。

1.18年1月報告書における整理

2.検討状況

(1)平成18年報告書を踏まえた論点

 今般、ワーキングチームでは、平成18年報告書で残された論点について、検討を行い、立法措置の可能性について、以下のような論点が挙げられた。

  • 平成18年報告書では、大きく分類して1コンピュータ等の機器を用いて著作物を使用又は利用する場合の過程に関する行為と、2インターネット等を通じた情報通信が行われる場合の過程に関する行為を、包括的に「一時的固定」という視点のもとで複製権を及ぼすべきでない範囲を整理していると考えられる。
  • しかしながら、実際の状況に鑑みると、12ではそれぞれ蓄積行為の意図や態様など法的評価の前提が異なっていると考えられるところを、平成18年報告書では、双方について「一時的固定」という一律の観点から整理しているため、結果として、本来権利を及ぼすことが適当でないと考えられるにもかかわらず要件から外れてしまう行為が生じうる懸念があるのではないか。
  • とりわけ、2については、これまで「一時的固定」の枠組みのなかで議論されてきたような附随的または不可避的な蓄積というよりは、むしろ情報伝達の効率化(ネットワーク伝送過程におけるトラフィックの煩雑化の回避やアクセスの負荷分散等)や、通信伝達の信頼性確保(情報の安定的かつ確実な流通・提供等)といった積極的な理由から行われる行為であり、権利を及ぼすべきでない行為の要件についてもそのような観点からの検討が必要ではないか。
  • なお、1については、同報告書の権利を及ぼすべきではない行為の要件について例えば、3つ目の要件である「合理的な時間の範囲内」は、近年の技術動向(注2)等を踏まえれば、定量的な時間によらずに要件を設定すること等も検討すべきではないか。

    • (注2) 例えば、これまで、蓄積媒体としてのRAMは揮発性があると捉えられてきたが、現在、不揮発性のRAMが開発されており、将来において本格的に市場に流通していく可能性がある。

(2)今後の方針

 以上の検討経過を踏まえ、当ワーキングでは、今後以下の方針で検討を進めることとする。

  • 平成18年報告書の整理を基礎としつつ、技術動向などを踏まえ、日常的に行われているような機器の通常の使用や円滑な通信に支障が生じないようにするためにはどうすべきか、という視点から、権利を及ぼすべきでないとする要件について、利用と保護のバランスに注意しつつ検討を加え、立法措置のあり方について検討する。
  • 1については、これまでの経緯においても、機器等による著作物の使用又は利用に際して附随的又は不可避的に生じる「一時的固定」の問題として扱われてきたところであり、原則として、平成18年報告書の考え方を基礎としつつ、権利を及ぼすべきではない行為の要件については、近年の技術動向等を踏まえつつ、必要に応じて所要の修正を加えることとする。
  • 2のインターネット等を通じた情報通信が行われる場合の過程に関する行為については、情報伝達の効率化や、通信伝達の信頼性確保といった観点から、権利を及ぼすべきでない行為の要件について別途検討することとする。

以上