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著作権分科会 法制問題小委員会(第4回)議事録・配付資料
1.
日時
平成19年6月7日(木曜日)10時56分〜12時12分
2.
場所
経済産業省別館 10階 1020号室
3.
出席者
(委員)
市川,潮見,末吉,多賀谷,茶園,道垣内,苗村,中山,松田,森田,の各委員
(文化庁)
吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,亀岡国際課長,川瀬著作物流通推進室長ほか関係者
(説明者)
山元 裕史氏(法務省刑事局参事官)
古谷 洋一氏(警察庁生活安全局生活環境課知的財産権保護対策官)
4.
議事次第
1
開会
2
議事
(1)
デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方について
(2)
海賊版の拡大防止のための法的措置の在り方について
(3)
その他
3
閉会
5.
配付資料一覧
資料1
デジタルコンテンツの流通促進に関する諸提案に関する論点整理(案)
資料2
過去の放送番組の二次利用に関する論点整理(案)
資料3
デジタルコンテンツに関する今後の議論の進め方(案)
(PDF:62KB)
資料4
海賊版の広告行為に関する論点まとめ(案)
資料5
親告罪についての第3回までの意見の整理
資料6
親告罪関係資料(警察庁作成)
(PDF:497KB)
資料7
当面の審議日程(案)
(参考資料)
参考資料1
「知的財産推進計画2007(平成19年5月31日知的財産戦略本部決定)」−著作権等関係部分抜粋−
6.
議事内容
【中山主査】
それでは、全員おそろいのようですので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第4回を開催いたします。本日は御多忙中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、非公開にするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々には御入場いただいておりますけれども、このような処置でよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【中山主査】
ありがとうございます。
それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々には、そのまま傍聴をお願いいたします。
なお、本年も6月より、政府全体で「ノーネクタイ、ノー上着」という軽装を励行しているところでございまして、本日の小委員会でも、軽装で差し支えないということにさせていただいておりますので、御了承いただきたいと思います。私も率先してノーネクタイにしております。
それでは、議事に入ります。まず事務局から、配付資料の説明をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
クールビズの御連絡が直前になりまして、大変失礼いたしました。
それでは、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の下半分に、配付資料一覧がございますけれども、本日、7点の資料と参考資料を1つ、配付してございます。
資料1から資料3までは、デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方に関するものでございます。資料4は、海賊版の広告行為に関する論点のまとめ、それから資料5と資料6は、親告罪の関係の資料になっております。資料7が当面の審議日程で、最後に参考資料として、「知的財産推進計画」、先月末に知的財産戦略本部として決定したものでございますけれども、その関係部分の抜粋についてお配りしております。こちらについて、この場をお借りして、御説明させていただいてよろしいでしょうか。
【甲野著作権課長】
それでは1点だけ、簡潔に確認をさせていただきたい点につきまして、御説明をさせていただきます。「知的財産推進計画2007」の著作権関連部分、参考資料についてでございます。これは今も御説明がありましたとおり、政府の知的財産戦略本部が5月31日に策定したものでございます。知的財産戦略本部は、安倍総理を本部長として、関係閣僚、有識者からなる組織でございまして、中山委員にも本部委員としてお加わりいただいているものでございますが、特許に限らず、著作権の分野につきましても、さまざまな項目が入っておりまして、これはそれを抜粋したものでございます。流通に当たる部分、海賊版に当たる部分、多岐にわたりますので、一つ一つ説明するのは省略をさせていただきますが、1点、確認したいのが、17ページのところでございます。
ここのところでは、「コンテンツをいかした文化創造国家づくり」という章の中で、(1)の
でございますけれども、「デジタルコンテンツの流通を促進する法制度等を整備する」という項目がございます。これがいわゆる、いろんな形で新聞等でも取り上げられておりますデジタルコンテンツ流通法制と言われるもので、2年間で何か法律を創れというような形で報道されているわけでございます。報道内容につきましては、既に多くの委員の方々がお目に触れておられるかもしれませんけれども、過去のテレビ番組を実演家の権利を制限する形によって流通をさせると、それをここのところで検討するんだという形で報道されて、そういう方向性でもって検討しなければならないかというような形でも伝えられることもありますけれども、ここの文章を御覧になっておわかりのとおり、特にそういうような方向性ということは明示されない形で、しかしながら、流通を円滑にするためにはどうしたらいいのかという形で検討するということでございます。
その部分につきましては、ここでやるべきなのか、あるいはまた別の小委員会でやるのかというような問題もありまして、これから先、本日もテーマになっていくわけでございますけれども、特段そういう方向性があるわけではないという形で、検討していただければ、大変ありがたいと思いますので、その旨、ちょっと確認的に説明をさせていただきました。
よろしくお願いいたします。
【中山主査】
今、課長が話してくださいましたとおり、新聞報道は時々、ひどい誤報もしますので、今、課長のおっしゃいましたような方針で、議論をしてもらえればと思います。
それでは初めに、本日の議事の段取りについて、確認をしておきたいと思います。
本日検討いただきます議事は、これまでに引き続きまして、1番目、デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方について、2番目、海賊版の拡大防止のための法的措置についての2点でございます。
まず前半は、デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方について、これまでの御意見を踏まえまして、事務局で論点を整理したものと、この課題の今後の議論の進め方につきまして、事務局に御報告をいただきまして、その後、質疑応答及び自由討議を進めたいと思います。
後半は、海賊版の拡大防止のための法的措置についてでございますけれども、これにつきましては主な論点としては、1、海賊版の広告行為に対する取締りについて、2、著作権法における親告罪の在り方についての2点でございます。海賊版の広告行為につきましては、これまでの御意見を踏まえまして、事務局で論点をまとめた案について報告を頂戴した後、自由討議の時間としたいと思います。
次に、著作権法における親告罪の在り方につきましては、前回、捜査機関の実務の実態を踏まえた上で議論すべきであるという御意見を頂戴しましたので、今回は法務省・警察庁より担当者にお越しをいただきまして、現在の取り締まり実態について御報告を頂戴した後、質疑応答及び自由討議としたいと思います。
では初めに、デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方について、事務局で論点及び今後の進め方を整理した資料を用意してございますので、説明をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
それでは、資料1から資料3に基づきまして、御説明させていただきます。
資料1は、デジタルコンテンツの流通促進に関する諸提案に関する論点整理の案ということで御用意させていただいた資料でございますが、これまで第2回以降、タイプAからタイプDのような、関係の諸提案を素材といたしまして、法的措置の必要性や今までの法体系に照らしてどうかというような検討を行ってきたところでございます。とりあえず措置の必要性については別としまして、まず法制的に対応ができるのかできないのか、そういったことについて、方向性を整理してみたものでございます。前回の資料の項目に沿って、肉づけをするような形で作成しております。まだ意見の出ていないところでは事務局で書き加えさせていただいた部分もございますので、そういう前提で、御覧いただければと思います。
(1)でございますが、まず、「デジタルコンテンツ」を想定した「特別法」というものを制定することの是非でございます。こういった御提案が幾つかあったわけですが、「デジタルコンテンツ」に限定して、特別法を新たに制定しようということであれば、(1−1)でございますように、その「デジタルコンテンツ」とは、そもそもどういうものなのかと定義をしなければいけないことになると思います。ここで整理させていただいたのは、それぞれの提案の中で「デジタルコンテンツ」についてはっきりした定義は、必ずしも固まっていないのではないかということで、例えば、
については、商業利用ということに着目しても、同じコンテンツでも市場の状況によって変わり得るものでありますし、
は、アナログのコンテンツをデジタル化したものも含めて全て「デジタルコンテンツ」と呼ぶとすると、これは全てのものがデジタル化されることはあり得ますので、いずれにしても流動的な定義ではないかと考えられます。まとめてみますと、これらの提案は、「デジタルコンテンツ」というものに着目して、それに特有の法制度を想定したものというよりは、何か特定の利用方法をする場合に特別の法効果を持たせる法制度、そういった御提案だったのではないかと考えられます。
そういうことであれば、下の矢印の先にあるように、「デジタルコンテンツ」という定義にかかわらず、まず、どのような利用の場合にどういう課題があるのかと、そういった具体的な課題のほうを先に検討してはいかがかということで、まとめております。
次のページでございますけれども、(1−2)で、「特別法」という形式をとることについてです。いろいろな御提案の中で、特別法を提案する意図として、著作権以外の知的財産権や肖像権などを含めて、包括的な法制度を検討するというようなご提案があったと思います。こういった著作権以外の権利も含めての権利関係の整理についての重要性は、指摘されていることは確かでございますけれども、まず、この小委員会は著作権法上の課題を検討する場ということでありますとか、あとは肖像権について実定法が存在しないというような、そういった事情もありまして、矢印の先にあるように、特別法の制定の是非をまず論じるという順番でなく、まず著作権法に関して提案されている個別制度の内容について検討し、求められる措置を見定めて、その上で最後に、その措置に照らしてどのような法形式が適当なのかという順番で検討したほうがいいのではないかと、まとめております。
(2)でございますが、ここから先は個別の提案の中身になります。まず、著作権や著作者人格権の放棄などを活用したらどうかという御提案があったわけでございます。不特定多数の人がインターネットを活用して、互いに著作物を利活用し合うような状況があるわけでございますけれども、こういった場合には著作権や著作者人格権の放棄を活用することによって、安定的な取引を実現することができるのではないかという御提案ですが、それぞれについて、(2−1)では財産権の方の著作権でございますが、その放棄については、一般に財産権は権利主体の意思で放棄することは可能でありまして、特段の法的な措置は必要ないのではないかということで、まとめさせていただいております。
仮に、法的な仕組みが必要であるとすればということで、矢印の先では、放棄の意思表示の仕方について、例えば登録と絡めるなど意思表示の形式を固定させるとか、その逆に、登録をしたら放棄したとみなすというように特定の形式に絡める場合などが考えられるのではないかと整理しておりまして、これは後ほど、登録制度についての検討のところで、詳しく述べたいと思います。
次に(2−2)の人格権の放棄でございますけれども、こちらは、著作者人格権は、人格的利益を保護するために認められた権利でありまして、また実際に著作権法上でも、譲渡制限、一身専属性ということを規定しておりますので、これにかんがみて、著作者人格権の放棄ができるのかどうか、不行使を内容とする契約を結んだ場合には、どこまでが有効なのか、そういったことについて学説上の見解が分かれていると承知しております。仮に、そういったことで著作者人格権について法的な措置を考えるのであれば、先ほどの著作権の放棄の場合の同様の課題のほかに、意思表示の撤回について制限を行うといった法的措置がどこまで可能なのかと、いろいろな複雑な論点が加わってくるかと思います。また、著作者人格権については、社団法人著作権情報センターで、調査研究が行われておりますので、その結果も踏まえるべきではないかと、そういったことでまとめてはいかがかなと思っております。さらに、最後の「一方」の以下のところですけれども、仮に法的措置を検討するのであれば、放棄というような複雑な論点が絡むものを検討するよりは、むしろ、専ら流通に関係するところは、氏名表示権と同一性保持権だと思われますので、著作権に比べて、比較的、検討の対象は絞りやすいのではないかということで、もしターゲットを絞って立法を考えるのであれば、一定の利用形態に即した著作者人格権の権利制限、同意みなしや適用除外などの問題として捉え直すことも可能ではないかと思っております。
次の(3)でございますけれども、コンテンツの登録を求める新しい制度についてでございます。冒頭、登録制度についてなされた諸提案について、簡単に整理させていただいております。AからDまでございまして、それぞれ権利者の所在を明確化するための登録制度とか、いろいろなものが御提案されたわけですけれども、それぞれ一つ一つ、(3−1)以降で検討しております。
(3−1)は、権利者の明確化のために登録制度を設けたらどうかという御提案でございますが、こちらについては、登録制度というものは仮につくるとしても、登録すること自体は法律がなくてもできるわけでございまして、専ら問題になりますのは、登録によっていかなる法効果が発生するのかというところでございます。ですので、権利者もしくはその所在地を明確化するための登録制度ということでありましたら、それ自体には、特段の法的措置は要しないのではないかとまとめております。
次に(3−2)ですが、登録によって、一定の法効果を生じるという制度設計、例えば、登録した場合には一定の利用を許諾したものとして取り扱うとか、登録した場合にはその登録した利用条件に即した申し込みがあれば必ず許諾をしなければならないとか、こういった制度設計が提案されているわけでございますが、権利者の意思に基づいて登録されるものであれば、これは言ってみれば、当事者の合意に基づく法律関係でございますので、こういったものについても、特段の法的措置は必要ないのではないかと整理しております。
なお、この委員会での御指摘としては、そういった当事者の合意に基づく法律関係であれば、例えば、現にクリエイティブ・コモンズのように、当事者の意思表示によって円滑なライセンスを実現する取り組みが進められておりますので、特に登録制度ということにこだわる必要もないのではないかという御指摘もございました。
(3−3)でございますが、法的措置が必要な登録制度という御提案も幾つかございました。
から
まで整理させていただいておりますけれども、
は、特段の利用条件の明示がなかった場合には、法律により一定の意思表示があったものと推定したり、みなしたりといったことを登録制度に絡めてという御提案でございます。矢印の先では、先ほどのように、合意に基づく法律関係で、いろいろと効果を定めることもできるのにもかかわらず、生じさせる効果を法律で特定のものに定めてしまうということは、法律関係を単純化して、取引を容易にするというメリットがありますけれども、一方で逆に、うちの登録制度ならこうで、あっちの登録制度なら別でというような多様な契約形態の創意工夫が生じる可能性を妨げるというデメリットもあるのではないかと、両面あり得ますので、どういったことを当事者の自由な活動に任せるのか、どういったことを法律で一律に定めるのか、こういった部分を慎重に見きわめる必要があるのではないかと整理しております。
次の
でございますが、提案の中には、登録したコンテンツについては、法律で定められたものとは別の保護期間を与えるという御提案もあったわけでございます。こちらについては、法律よりも短い期間とすることは、一定の期間を経た後の権利の放棄という構成で整理できる可能性もあると思っておりますけれども、逆に、長い期間とするという御提案であったとするならば、これは特定の形式によって、権利の享有が決まるということで、ベルヌ条約の無方式主義との関係が議論になるのではないかと整理しております。
次のページの
でございますけれども、登録された内容が現実の権利関係と異なるものであった場合に、その登録内容を真正な権利関係と推定する、もしくは、みなすという御提案でございます。一定の権利関係をみなしたり、推定したりするという他法の例はあるわけでございますけれども、そういった民事法全体のバランスに照らして、登録を行ったという事実だけで、どこまでの内容をみなすことができるのか、例えば当事者の帰責性や相手方の主観的要素、もしくは登録機関に真実の権利関係を審査する能力が与えられているかどうか、そういったことを様々に検討する必要があると思われます。さらに、他の登記・登録制度とのバランスの関係で、こういった法効果を認めているものが、我が国の法制でどれだけあるのかというようなことも、御議論になるかと思います。
また、「一方」以下でございますけれども、仮に、複数権利者のうちの1人が登録すれば、他の権利者にも効果が及ぶといったことになれば、当事者の意思がなく、もしくは反して、何らかの法効果が生ずるということになりますので、これは民事法の原則に照らして、難しい場合があるのではないかと整理しております。
もう一つは、現行にも登録制度はございまして、例えば、処分の制限については登録をすることによって対抗力が生ずることになっておりますけれども、こういった現行の登録制度の効果と、コンテンツ全体の登録によって権利関係がみなされてしまう場合には、双方の法効果の優先関係をどうするのかといった問題も生ずるのではないかと、問題点を提起しております。
次の(3−4)でございますけれども、権利者以外の人が登録を行い、登録をした場合には、個別に権利者に許諾をとることなく利用可能とするとの御提案もあったわけでございます。こちらについては、矢印の先で、権利者の意思に反して、または意思にかかわらず、一定の制約が加わるということは、本人の帰責性などの事情も特段ないのであれば、法制的に正当性がないと考えられるけれども、どうか、と整理をしております。
なお、御提案によれば、権利者が利用条件を明示して登録をする、もしくは利用させないという登録があった場合には、権利者の意思を優先させるという内容でございましたけれども、これは言ってみれば、権利者側が自らの意思に従った権利行使をするためには、予防的に登録をしておかなければいけないということになりますので、権利行使に特定の形式が必要になるということで、つまりはベルヌ条約の無方式主義に抵触することになるのではないかと考えております。
(3−5)でございますけれども、登録制度についてはそのほか、以下のような指摘があったということで、今までのところでまとめ切れなかった意見に簡単に触れております。コンテンツについては、著作権のほかにも様々な権利があるわけでございますけれども、そういったもの全てを登録する制度は、現実的には困難ではないかという御指摘とか、登録者の側に登録するメリットがなければ、実際には登録制度の利用は進まないのではないかなどなど、様々な御指摘がございました。
その次の(4)でございますけれども、利用条件の調整のための仲裁機関、もしくは不正行為の監視のための機関をつくってはどうかの御提案もあったわけでございます。仲裁機関については、実態上、仲裁制度が我が国であまり使われていないという御指摘もございましたので、矢印の先では、導入する際には実際に機能するかどうかなどを検証しながら、また、実際の御提案では、登録制度の利用条件ということに絡めての御提案が多かったものですから、そういった登録制度についての議論を踏まえて検討を行うのがよいのではないかと整理をしております。
(4−2)の不正行為の監視機関については、強制調査権限がなければ意味がないのではないか、もしくは、私人間の解決の方がいいのではないかと、様々な御意見があったわけでございますけれども、そういったことを踏まえまして、矢印の先では、具体像や求める権能が現在は明らかではないので、不正防止のための取り組み全体像を把握した上で、その上で監視機関の必要性について検討してはどうかと整理をしております。
その次のページの(5)で、簡易な強制許諾制度、もしくは新たな権利制限規定を求める御提案もあったわけでございます。まず簡易な強制許諾制度については、矢印の先で、現行法の著作権法でも、
の著作権者不明の場合、
の放送、
の商業用レコード、こういったことについて裁定制度が用意されているわけでございますけれども、既存の裁定制度で対応できない事態、もしくは不都合な点にどういうものがあるのか、こういったものを整理した上で、必要な制度を検討してはどうかと整理をしております。
(5−2)では、提案の中には、米国のようなフェアユース規定、もしくは定性的な要件だけを規定した包括的な権利制限規定のようなものをつくってはどうかという御提案があったわけでございます。このうちフェアユース規定については、訴訟になってみないとわからないということでございますので、資金や時間がかかるということで、投資の観点からはむしろ困るのではないかという御意見とか、もしくは、アメリカのフェアユース規定は判例の蓄積を条文化したものでありまして、法規範の形成を全面的に裁判にゆだねるというものは、我が国の法制になじみにくいのではないか、といった御指摘があったわけでございます。
これを踏まえまして矢印の先では、アメリカのフェアユース規定は、アメリカの司法の状況とか関係者間・団体間の協議の慣行とか、いろいろな状況の中で機能している法理でございまして、一方、我が国では、個別の権利制限規定を列挙することで、事前にどういうことが適法なのかわかるように、法的安定性と予測可能性を高める構成をとっていると、こういう法体系の違いがございますので、フェアユース規定が直ちに日本に導入できるかどうかについては、両法体系の特徴とか司法の状況を勘案しなければならないのではないか、我が国の権利制限規定の構造を踏まえて、一定の条件下で、より柔軟な運用が可能になるような規定を検討していってはどうかということで、まとめております。
最後のページでございますけれども、今度は、人格権についての権利制限についての御提案ですが、名誉や声望を害しないような改変については、登録制度と絡めて改変に同意したとみなすといった御提案があったわけでございます。こちらについては、先ほどと同じように、著作者人格権がどこまで放棄可能かということについて、いろいろ見解が分かれておりますので、社団法人著作権情報センターの調査研究の結果なども踏まえて、検討したらどうかと整理しております。
そのほか、最後、インターネットを活用したいろいろな権利侵害の場合には、加害行為地や損害発生地などは必ずしも明らかではないので、日本だけが特別法を設けることに、どれだけ実現可能性があるのかという御指摘もあったというので、こちらは御紹介だけでございますけれども、こういった御意見がございました。
本日、こういった各制度の提案について、事務局で整理案を用意させていただきましたが、こういった整理の仕方でよいのかどうか御意見をいただければと思っております。
引き続きまして、長くなっておりますが、資料の2でございます。前回の委員会で、デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方について様々な提案がある背景について分析を行いまして、経済財政諮問会議において検討を求められた「デジタルコンテンツの流通促進」については、インターネット上でデジタルコンテンツを流通させるとのことであって、その内容は、過去のテレビ番組が主として考えられていたわけでございます。こちらについて、そういった形で過去のテレビ番組に焦点を当てた場合には、ということで、検討の方向性を整理したものでございます。資料は、前回御紹介した過去の放送番組の二次利用についての報告書をもとにして、前回の御意見を加えていくという形で、整理させていただいております。
(1)は、現状の問題点といたしまして、過去のテレビ番組の二次利用をめぐる問題点の整理でございます。前回、著作権に関する問題のほか、ビジネスの実態に基づく問題とか、著作権以外の権利についての問題があると御紹介させていただきました。1−1はビジネス上の課題でございます。放送では、1回の利用だけで、ほとんどの利益を回収する仕組みになっていて、二次利用はもともと想定されていないのではないかという御指摘とか、2番目で、そういったことのために、二次利用するために、改めてその場で契約をする必要があるわけでございますけれども、もちろんそのためには経費がかかります。そういった経費に対して、インターネット上の二次利用によって見合う収入が見込めないために、二次利用は進んでいないという原因があるのではないか。3番目では、二次利用を想定していないことが原因であれば、当初から全ての番組について、二次利用を契約すればいいのではないかとも考えられるわけでございますけれども、実際には2番目のように、見合う収入があるのかわからない部分がありますので、実際上は、放送局では、全てのものについて二次利用まで含めて契約をするわけではなく、事後に、二次利用について契約している実態があるということでございます。
そのページの一番下でございますけれども、その他の原因として、放送局自らが再放送するとか、他のメディアによって提供するという予定があることによって、インターネット上の提供をしていないという場合もあるのではないか。次のページでございますが、こちらは放送業界の実態に照らしての分析でございますけれども、キー局中心の系列が強いので、コンテンツの多様な流通ルートが育っていないという原因もあるのではないかという御意見もございました。
最後に、今後の見通しについての御指摘でございましたけれども、インターネットなどほかのメディアの流通が進むことによって、広告収入などが他の分野にも移ってきている現状がありますので、そういった収益構造が変わってくれば、今後の実態も変わってくるのではないか、そういった御指摘がございました。
そのほか、1−2で、技術上の問題で、インターネット上の配信インフラ、回線容量などの技術的な問題もあるのではないか。もしくは、2番目でございますが、そもそも番組が保存されていないことも、原因としてあるのではないかということでございます。
1−3は著作権以外の、肖像権、プライバシー権など様々な権利についても、あわせて契約しなければならない難しさもあるという御指摘がございました。
1−4が著作権に関する問題で、ここでの主題になりますけれども、ここについては大きく2点に整理させていただきました。1点目は、二次利用の契約についての問題点でございますが、著作権等の管理団体に権利を委託している場合とか、権利者団体と利用者団体の間で協定が結ばれているような場合には、実際には、こういったルールに従って、一定の使用料を払うことで、ほぼ自動的に二次利用の許諾が得られる仕組みが用意されているわけでございます。こういった仕組みが活用できない場合というのは、次の点ではないかということで、2つほど挙げております。団体に権利を委託していない場合やルールが定められていないような場合、それから、著作者、実演家の死亡、引退などによって、権利者の所在が不明になっているような場合でございます。
2番目では、二次利用されない理由として、実演家のイメージ戦略、もしくは露出をさせないことによって経済価値を維持する、そういった戦略上の問題、もしくは思想信条、つまり、番組に出演した当時とは考え方が変わっているというような事情がある場合もあるのではないかということで、整理しております。
こういった各課題についての考え方を(2)で整理してございますけれども、著作権以外に関する問題については、今後、関係者、関係機関において、それぞれ実態に応じて検討されるべき課題ではないかなと思っております。また、過去の放送番組を別とすれば、今後の取り組みによって解決可能な課題が多いのではないかと整理しております。
2番目は著作権に関するものでございますけれども、2つの課題のうち、実演家等のビジネス戦略や思想信条に関するものについては、尊重すべきものではないかと考えておりまして、検討すべき課題は主として前者の場合で、権利者の所在不明等の場合の問題について、いかに利用を円滑化するかとの方策として問題点を整理しております。
最後に、資料3でございます。こういったことについて、本日、論点をおまとめいただけた場合にはという前提でございますが、今後の議論の進め方について御提案をさせていただいております。
前回、この検討課題については、大きく2つに分けられるという整理をさせていただきました。1つが上段で、インターネットを活用した新たな創作形態に応じて、著作権法上の様々な課題についての検討が必要になる部分ですけれども、こちらは、実は本日も資料を御用意できておりませんで、それは、問題点の所在がまだあまり明確になっていないのではないかということでして、まずは現状の問題点の整理を行うことが必要ではないかと。そこで、提案としては、ワーキングチームや研究会など、まずどこか適切なところに、議論の前提を整理していただいて、それを踏まえて、この小委員会で必要な措置を検討するという手順を踏んではいかがかと考えております。
下の段は、過去のコンテンツの利用、主として放送番組についての課題でございます。こちらにつきましては、先ほどの整理案のように、コンテンツの利用の円滑化をどう進めていくか、そのために克服すべき課題は何なのかと、そういった問題でございますので、こちらについては、過去の著作物等の小委員会が別にございまして、その検討課題と重なる部分がございます。そちらの委員会でも今後、議論を進めていくことになりますので、この課題については、そちらの委員会の御議論を見てはいかがかと。もちろん権利制限規定の全体像とか、こちらの委員会で取り扱わなければならない課題がございますので、適宜、法制問題小委員会には御報告をしていただいて検討していただく、そういった形でご検討いただいてはどうかと御提案させていただいております。
長くなりましたが、以上でございます。
【中山主査】
それではまず、資料1の論点整理(案)につきまして、御質問あるいは御意見があれば、頂戴したいと思います。資料1について、お願いをいたします。何かございますでしょうか。どうぞ、道垣内委員。
【道垣内委員】
細かいところですけれども、4ページの上の「登録によって、一定の法的効果が生ずる登録について」ということころですが、2つの案があります。その2つを受けて、これはいずれも、その当事者の合意に基づく法律関係と考えられるので、特に法的措置は要らないのではないかというふうにお書きになっていますが、上のほうのやり方というのは、一方的な意思表示で、その段階で既に放棄があるという構成ではないかと思います。要するに、相手方が特定されてない、一方的な表示ではないかと思います。ここで「当事者の」とお書きになっているのは、きっと権利者と利用者のことだと思いますが、下の案というのは、確かに合意を擬制するというやり方なので、それは契約なのかもしれませんけれども、それと上の案とを一緒に扱うのは難しいのではないかと思うのですが。
【黒沼著作権調査官】
上のほうのものは、例えば、ここに登録する場合にはこういう条件になると、あらかじめメニューを提示した約款のようなものを用意した登録制度のようなものだったらということで整理をしてみたものなのですが、そういったものでも、やはり違いますでしょうか。
【道垣内委員】
放棄というのは一方的な行為、単独行為だと思いますので、単独の意思表示をするのかなと思いました。放棄の方式を定めているわけではなく、それもあり得る仕組みだとは思いますが、ただ、制度を安定させるためには、何らかの外形を整えて、一定の場合には放棄の撤回はできないこととするといったことも考えられると思います。安定した制度をつくるとすれば、何か法的な措置が、もしかすると要るのかなと思ったものですから。
【中山主査】
この2つをあわせて、当事者の合意に基づくというふうにまとめてしまったというところが、問題だという話ですね。ちょっとそこのところ、後で修正をお願いします。
ほかに何か。どうぞ、苗村委員。
【苗村委員】
私は第2回、第3回と2回欠席をしていましたが、私がいろいろと御質問したり、発言するべきところが、かなりカバーされていると思って、大変よかったと感じておりますが、1点ちょっと、文章の問題というよりも、これからの議論の進め方に関する意見を申します。
4ページの3−3の
です。登録制度を今後設けるとしたときに、その登録された、特にデジタルコンテンツについては、ある種の別途の保護期間を与える。言いかえると、デジタルコンテンツであって登録されてないものについては、何らかの意味で制限された保護期間とするという考え方は、非常に現実的なものだと思います。
そのときに当然、ベルヌ条約の無方式主義との関係が問題になるというのは、可能性としてあるので、この文章が間違っているとは全然思わないのですが、下でベルヌ条約の5条だけを引用されていますが、実際の保護期間を定めた7条では、例えば死後50年を原則とするというようなことを書いた上で、7条の6項で、同盟国は、その保護期間よりも長い保護期間を許与する権能を有すると書いてあると。この7条の最初のほうで定めた原則的な保護期間と、加盟国が持つ権能に基づいて定めた、より長い保護期間の、差を考えてもいいのではないかと思います。個人的には、ベルヌ条約そのものを見直すほうがいいのだと思うのですが、現実的ではないので、ベルヌ条約は準拠した上で、なお、例えば50年を超えるような保護期間を設けるのであれば、そのときは登録を必要とする。少なくともデジタルコンテンツで、ある条件を満たしたものについては、登録制度を前提とするということは、かなり現実的であり、効果が大きいのではないかと思います。
【中山主査】
その点について、事務局としてはどう考えますか。
【黒沼著作権調査官】
こちらについては、いろいろ御議論はあるかと思っておりますけれども、こちらで問題になる可能性があるのではないかと書かせていただいたのは、例えばこういう考え方があるのではないかということなんです。そもそも「著作権」だとすれば、無方式主義で享受できる。そして、仮にある国の権能で長い保護期間が定められたとして、その延びた部分についてもやはり「著作権」であるならば、その部分についても無方式主義でなければ、全体として条約との関係が問題になるのではないか、そういった考え方をとった場合には条約に抵触するのではないかということで、御紹介させていただいております。
いずれにしましても、こちらについては、過去の著作物等の小委員会の検討課題になると思いますので、そちらで、改めて詳しく御議論いただければと思っております。
【中山主査】
そういうわけでして、そういった議論を専門にやっている別の委員会がございますので、そちらで議論を進めることになろうかと思います。
ほかにございますか。
【多賀谷委員】
2,3ございます。まず、デジタルコンテンツの定義について意見を述べます。私もなかなか定義が難しいと思いますけれども、基本的に、どのような場合にどのような課題という形で、定義するのだろうと思うのです。要するに、デジタル化されただけではなくて、1つとしては、それはネットワークでデジタル送信されるという場合、そういう利用の場合であり、しかも検索可能な形で置かれている場合、要するに、イメージデータをただ単にイメージコンバートしただけでは、検索可能性は当然出てきませんので、検索可能である場合だろうと思います。
それから、3ページのほうのコンテンツの登録のところの話ですけれども、確かに登録制度自体、権利者明確化等のために、私人間での自主的な取り組みが可能であると言ってしまえばそうなのですけれども、実際の運用として、放送事業者等は二次利用等をするとき、権利者を探し出して承諾を求める作業それ自体が、多大な時間とコストがかかって、それが障壁になっているわけでありまして、私人間の自主的な取り組みでは限界があるということが、おそらく問題だろうと思います。
それから、登録制度についてのこのペーパーを全体的に見ていて感じたのですけれども、最後の、アメリカ法との違いというところで、端的に出てきているわけですが、我が国の場合には、著作権に対する個別の権利制限規定を設ける形で対処しているという、基本的に実体法的な考え方をとり、問題を処理していると思うのですね。私はそこから、登録制度によって、実体的な権利、著作権に対する権利制限が過剰に課せられるのは問題だというトーンだと思うのですけれども、おそらく、登録制度を主張する方々は、いろいろいるでしょうけれども、登録制度の仕組みそれ自体としては、実体的な権利制限をするのではなくて、ある意味での手続的な縛りをかけるという、多分、そういう方向性を考えている方々がいらっしゃるだろうと思うのです。
事後的に、アメリカで例えばフェアユースとか権利濫用とかそういう議論が出てくるわけですけれども、その場合、日本法的な考え方でいえば、公方的な発想ですが、要するに、どういう場合に権利濫用なり、あるいはフェアユースなのかどうかということは、事前にはわからない。したがって、そこは機能しないという場合に、ある種の手続的な仕組みがあって、そこで、それにのっとってやることによって、事後的な裁判等でも、立証責任が転換するといいますか、そういう機能があって初めて、実際上こういう仕組みは動くのではないかと思いますので、権利制限規定にこだわらないで、もう少し登録制度なり、あるいは何らかのガイドライン的な仕組みの運用というものを考えられたらいいのではないかというふうに考えます。
以上です。
【中山主査】
その点は、事務局、よろしいでしょうか。では、御意見を伺っているということで。
それでは、茶園先生。
【茶園委員】
2点ございまして、1点目は、今、多賀谷委員がおっしゃった7ページの5−2、新たな権利制限規定に関するものです。各提案では具体的にはよくわからないのですけれども、そこでフェアユースという言葉が使われていたとしても、それはアメリカの著作権法でいうフェアユースをそのまま導入するということを考えているのかどうかというのは、ちょっと違う面があるように思われます。例えば、現在の日本の著作権法の権利制限規定が厳し過ぎて、それよりももう少し緩やかにしたほうが流通促進につながるのではないか、そのために現在以上の権利制限を設けるといったこととか、あるいは、それが権利者の意思に基づくものだとしますと、権利者はある部分については権利行使しないという権利の不行使の意思表示を定めるとか、何かそういったことを主張するものがあるのではないかと思います。そういったことを、例えば特別法を使うことによって、定型化することにするとか、あるいは権利者の意思に委ねることにして権利の一部放棄のようなものを主張するものがあると考えられるのではないかと思います。このペーパーに書かれているように、アメリカのフェアユース規定みたいなものは非常に漠然としているので、そのまま日本に導入するということになると、あるいは結果的には目的が達せられないことになると思いますから、各提案は、アメリカのフェアユース規定のようなものの導入ということにはとどまらないものがあるのではないかというように思います。
2点目は、最初の1ページのデジタルコンテンツの定義に関してですけれども、いろいろな提案で対象にされているデジタルコンテンツについて、そもそもなぜデジタルなのかというのが、実はよくわかりません。流通円滑化について、おそらく今後、問題になる流通は、ほとんどがデジタルだと思うのですけれども、ここの提案を見てみますと、なぜアナログが入らないのか、入ってもいいのではないかとも思われますし、デジタルの特質というのが、ここで整理されている論点の中には基本的に出ていないように思われます。中心的な問題になる流通はデジタルなのですけれども、ここで整理されているところを見ると、あえてデジタルに限るということではないかなというように思います。
例えば、最後の不正監視といった場合に、権利管理情報とか、あるいは技術的保護手段を用いることによって、うまく制度を動かすという意味ではアナログではなかなか難しいからデジタルだというようなことは言えると思うのですけれども、あえてデジタルというところが、ちょっとよくわからないなというように思っております。
以上です。
【中山主査】
事務局から何かございますか。
あえてデジタルということを述べているのは、おっしゃるとおりだと思います。では、デジタルではない普通の出版は促さなくてもいいのかというと、それはそうではないと思うのですけれども、今は何が問題になっているかというと、やっぱりインターネットで一番問題になっていて、そこにいろんな問題が集約的にあらわれてきているから、多分デジタルについての議論をしていると思います。このAからDの案を出した人に聞いてみないとわかりませんけれども、多分そういう意識だろうと思います。例えばクリエイティブ・コモンズも全く同じでして、これはデジタルだけを扱っています。インターネットの世界だけを扱っていますけれども、それが今一番問題だから、それを扱っているわけです。もし普通の出版とか何とかも大事で、大いに奨励したいというなら、それはまた別途議論すべきだろうと、多分、そういう発想ではないかと思うのですね。
これは、インターネットのパトロールとかを考えてみますと、なかなか一緒にはできない、もしやるなら別途にという、多分そういう発想なのではないかと、私は推測しています。
それでは、松田委員、どうぞ。
【松田委員】
デジタルコンテンツ流通促進の法律を提言する人たちの考え方は、基本的に、権利者が従前の著作権法の上にあるデジタルコンテンツルールに従うことをよしとして登録をする、ある意味では、権利者の意思に基づいている制度だというふうに、私は最初に考えました。であるならば、著作権法の一つ上に、意思を解して新しいルールをつくればいいわけですから、著作権法自体は、ある意味では、いじらないでいいということになるのだというふうに思っていたのです。
今日の資料を見てみますと、まず登録する者は、どの説をとっても権利者というふうに考えていいのでしょうか。だとすれば、それは解決するのですが、資料の後半のほうに、利用者による登録ということで、許諾なく利用できるということになる説もあり、そうすると、私の整理というか、考え方が間違っていたのかなというふうにも思うのですが。著作権法はそのままにして、コンテンツを権利者の意思に基づいて新しいルールをつくる、法制をつくるというのであれば、5の3―4は出てくるはずはないと思うのですが、この点はどうなのでしょうか。著作権法の方まで入り込んで改正しなくてはいけないという考え方の方もいらっしゃるのでしょうか。これは基本的なところだと思いますが。
【黒沼著作権調査官】
5ページの3−4で整理させていただいたものは、第2回でご紹介したタイプDの御提案のものでございまして、他のものについては、権利者の意思に基づく登録を基本としたものでございます。ここの3−4の部分だけでございます。
【中山主査】
これは岩倉弁護士の提案だと思います。おっしゃるとおり異色ではあるのですけれども、こういう提案もあったということで、事務局は整理をしてもらっていると思いますので、これがいいとか悪いとかいう事務局の意図ではないと思います。
当事者の意思だけの問題なら、おっしゃるとおり、著作権法をいじくる必要はないのですけれども、多分、登録と言っている人は、少しは何かの効果を与えたいということなのでしょうね。クリエイティブ・コモンズは、完全な当事者の意思でやっているのですけれども、例えばにせものが紛れ込んでいる場合にどうなるかとか、効果の点で困る点もあるわけです。AからDのような多くの案については、希望としては、登録制度をつくったら、そしてそこに何かそこにプラスアルファをしてほしいということではないかと思うのです。だから、著作権法を全くいじらないでいいかというと、多分、AからDの案は、そうではないのだろうと思います。
ほかに何か御意見はございますか。どうぞ、苗村委員。
【苗村委員】
先ほど茶園委員からの御指摘のあったデジタルコンテンツに限る必要があるのかということについて、私の個人的な考え方を申しますが、まず例として、例えば百科事典をとりますと、従来はアナログといいますか、紙に印刷されて、製本されて、販売されていたと。その段階で、著作権法で保護されることについて、新たな法制度を必要とするというふうには全く考えられないわけですが、現在、例えばそういったものがデジタル化され、インターネット上に公表され、しかもその先に例えば映像とか音楽、その他のマルチメディア型の情報まで載せられるというものが出てきますと、1つは、最新の情報を追加して、常時更新するというような考え方が発生して、しかも実際に、容易に実現できるようになってきているわけですね。そのときに、例えば著作者人格権をどの程度、手厚く保護することが必要かというのは、従来の紙媒体で出版されていたものとは、やはり質が違うことが起きていると思います。
ただ、そうなったら、それでは既存の紙媒体で出版したものをデジタル化したときは、デジタルコンテンツに当たるか当たらないかという議論が当然あるわけですが、明らかにそのデジタルコンテンツが非常に増え、また先ほど申し上げたように、文字で書かれた著作物と、その他の著作物が一体化するような形で、ネット上で流通する。それをたくさんの人が、さらに手を加え、二次的著作物をつくり続けるという、そういったような状況が起きていることから、やはりこれは根本的に見直す必要があるだろうと思います。
それで、見直したときに、新しいルールを従来の著作物にも適用するべきかということなのですが、これは後で考えればいいのではないか。つまり、新しいルールを仮に入れたときに、それが例えば紙媒体のものにも適用すべきものなのか、あるいは、しないでもいいものかを考えればいいので、連続性があるから見直すべきでないというのは多分、世の中の質的な変化に、ある意味では矛盾するものではないかというのが、私の意見です。
【中山主査】
茶園委員も、別に反対という話ではないわけですよね。
【茶園委員】
もちろん、アナログも含めて考えるべきだとか、そういうことを申し上げたわけではありませんで、今、苗村委員がおっしゃった、ある種のデジタルコンテンツの特質で何らかの問題が発生し、その問題の解決が必要なのだということであれば、よくわかるのです。あるいは、それは程度の差ということにすぎないということなのかもしれませんが、ともかく、あえてデジタルコンテンツは何かというのを突き詰める必要があるのかと言われると、おそらくそうではないのではないかと思います。むしろ一般的に考えて、おそらく多くの問題はデジタルコンテンツでしょうし、問題になる多くの流通というか、そもそも円滑にしたいと考えられている流通はデジタルだと思うのですけれども、ただ、その、デジタルコンテンツだからとか、アナログとは別個の問題として、質的にアナログとは全く違うものがデジタルコンテンツにあり、そのデジタルコンテンツの流通促進のために、アナログとは全く別個の法制度を設けるとか、おそらくそういう質的な違いというのは、実はあまりないのではないのではないかと思います。程度の違いというのはあるとは思うのですけれども。
もっとも、程度の違いによって、例えばアナログの世界は今のままでよいが、デジタルの部分については何らかの措置を講じましょうということであっても、それはそれで構わないと思います。
先ほど言いましたように、デジタルコンテンツの定義を突き詰める必要は、少なくとも今のところは、ないというように思っておりまして、先ほどの発言はそういう趣旨で申しました。
【中山主査】
ほかに。どうぞ、松田委員。
【松田委員】
私も茶園委員の考え方とかなり似ていると思いますが、コンテンツを今、流通の点で促進されている部分とされてない部分があり、大きく分ければ、音楽についてはかなり流通しているのではないかと私は思います。それは、日本でいえば、音楽著作権をJASRAC(ジャスラック)が管理して、ある意味では、一元的に管理できている状態になっていて、なおかつ、あとは商用のビジネスとして音楽を発信することが、どんどん発展していって、その2つのリンクによって、権利処理がきちんとできているということが、できているのではないかと思います。これはもうアナログの世界であろうが、デジタルの世界でも同じです。
ところが、それができていないのは何かといったら、特に日本における映像なのではないかなというふうに思うわけです。その映像を、今言った音楽と同じようにデジタルの世界で流通するようにするには、確かにいろいろな法制、デジタルコンテンツ法の考え方も必要かもしれませんが、それを最も急いで、なおかつ問題が集約的に起こっているのは、もう一つの資料の放送番組の利用なのだろうと思います。それはどうも、このデジタルコンテンツ流通促進法をつくるだけではだめで、JASRAC(ジャスラック)のような団体がどこかで一元的に、また、非常に多元的であっても、利用する側が一元的に見えるようなシステムをつくり上げない限りは、JASRAC(ジャスラック)と配信業者がうまく管理ができているのと同じような状態は、なかなか映像ではできないのではないかと思います。だとしたら、デジタルとアナログというのではなくて、放送コンテンツの内容というか、分野別にどういうふうに権利処理をする団体をつくるかというほうが、私は重要ではないかなと思っています。
【中山主査】
ありがとうございます。
ほかに御意見ございましたら。どうぞ、森田委員。
【森田委員】
先ほどの多賀谷委員の御意見をもう少しお伺いしたいと思うのですけれども、権利制限ではなくて、手続的なものに置きかえることによって、似たような結果を実現する方策があるのではないかというのは、例えば先ほど出た3−4の、権利者以外の者が登録するという仕組みを設けた場合にも、応用可能なものなのか。それとも、それはやっぱり権利者がイニシアチブをとって、何かしているということを前提としているということなのかという点について、もう少しお伺いしたいと思います。
つまり、これからの制度なのか、という点です。過去の著作物の利用で、権利者が不明の場合の取引コストが高いというのが問題だとおっしゃったので、それとの絡みで考えますと、権利者が不明な場合に、利用したい側が一定のプロセスをとると、権利制限をしなくても、権利者が許諾したと同じような効果を認めることができるというのが、法制的にどういう仕組みを採ると可能なのかについて、もう少しお伺いしたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
【中山主査】
お願いします。
【多賀谷委員】
さすがに、利用者のほうから登録するという案について、そこまでは私も考えてはおりません。ただ、これ見ていて、実体法的に、要するに権利を放棄するか放棄しないか、二者択一的な仕組みになっているのはやはり私法的、実体法的という感じが非常にいたします。
手続法的といいますか、公法的な考え方をすれば、こういう場合においても、ある種の仮の地位みたいなものを認めることができないのかと。要するに、登録してしまえば、もう全て終わりという話ではなくて、ものによっては、個人情報保護法などでオプトアウト的な仕組みの議論があるわけですけれども、著作権の場合でも、要するに登録制度で考えられているのは、差し当たり権利者不明の場合、権利者の所在わからないような場合に、仮に使っていて、後でそれが判明したら、そこで利用を打ち切るといいますか、あるいは拒否の意見があったら利用を打ち切るというような、そういう仕組みというものをおそらく想定されているのだと思うのです。もちろん著作物の場合には、一旦利用させたら、それで終わりというような権利もあるでしょうけれども、そうではなくて、再利用する形で利用できるのだったら、そういう仮の地位みたいなものを認めるような仕組みが可能ではないかということが、多分、この登録制度の議論で出てきているのだろうと思うので、そういうことは、ひとつ検討するに値するだろうというふうに考えております。
【中山主査】
森田委員、よろしいですか。
【森田委員】
以前に、契約・流通小委員会でしたか、著作者不明の場合の裁定制度で、つまり強制許諾との関係で、著作権者を捜す相当な努力をするというのは、どこまでをすることなのかということで、さまざまな手続きの見直しがなされていることをお聞きしましたけれども、今の仮の地位というのは、ある意味では、一定の範囲の著作物については、利用者の側でそういうことをすると、権利者の側で申し出るなり何かをしないと、使ってもいいという仮の地位を与える、つまり、ある種の許諾が与えられたものとみなすという効果を与えることになるということでしょうか。しかし、許諾を与えられたものとみなすなどと裁定的にいうと、それは権利的な構成をとっていることになるので、そうではない形をとると、既存の法制度と矛盾なく、別のルートでパスすることができるという御趣旨なのでしょうか。そのあたりをどう受けとめていいのか、ちょっとまだ自分の中で整理できてないものですから御質問させていただきたいと思います。
【多賀谷委員】
例えばフェアユースのような場合には、事後的に裁判になったときに、それが違法な許諾された利用といいますか、合法的な利用であるかどうかということは、事後的に問題になるわけですね。その場合に、そういう仕組みに乗っているか、乗ってないかということで、結論が変わってくることはあり得るだろうということで、その場合に権利濫用であるか、それとも権利制限が有効、権利制限されているままであるかということは、最終的には裁判所が決めるのだろうということです。
【中山主査】
どうぞ、松田委員。
【松田委員】
権利者による登録をしたということになれば、権利を表示するだけでなく、法的効果がなければ意味はないわけですよね。そうすると、やっぱりインターネット上で利用することができるということを法律上、意思を決めておくかないのではないでしょうか。ないしは、何種類かの意思をあらかじめフォーマット化しておいて、それを選ばせるか。その限りにおいては、登録したら、もう許諾されているわけですから、まさに多賀谷委員が言う、実体法的に許諾されたことになるのではないでしょうか。もしも、それに瑕疵があれば、後日の問題は起こりますけれども、瑕疵がなかったとしたら、そういう実体法上の支分権の許諾があったということになるのではないでしょうか。
それが、手続を経ると、何か有利になるというようなことがあるとすれば、それは権利濫用の世界かもしれません。
【多賀谷委員】
そうです。権利濫用の世界だと思います。
【松田委員】
実体法として支分権はある。けれども、登録はした。場合によっては意思表示の問題があった。しかし、それで権利行使することについては、権利濫用になる。登録手続をきちんととっていて、利用者のほうはそれを信じるような社会的状況があった。こういう場合にはあるかもしれませんよね。
【松田委員】
そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
【多賀谷委員】
はい。
【中山主査】
ほかに何かございましたら。よろしいですか。
それでは、時間も押しておりますので、この問題は今日のところはこのくらいにいたしまして、続きまして、資料2の「過去の放送番組の二次利用に関する論点整理」について議論していただきまして、資料3の今後の議論の進め方につきましては、御質問、御意見があれば、頂戴したいと思います。
とりあえず、資料2について、では、お願いします。
【多賀谷委員】
すみません。私はもうそろそろ出なければいけないので、資料2について、あらかじめ申し上げますけれども、過去の放送番組の利用については、今国会では通らなくなりましたけれども、放送法の改正案にはNHKに対して過去の番組、既放送番組を自ら流通する、あるいは既放送番組を他の配信を行う事業者に対して提供するということができるという、目的遂行行為としてできるという規定が設けられております。
また、最近の新聞記事等によりますと、イギリスのBBCが前から検討していたアイ・プレーヤーという制度なのですが、これはインターネットを利用して、BBCで放送されたテレビ・ラジオ番組を放送後7日間に限って、インターネットもしくはケーブルテレビで、特にインターネットの場合には、経由で視聴をダウンロードすることができる。しかし、ダウンロードできても、ずっと保存できるのではなくて、一定程度、例えば1カ月ぐらいたったところで、利用できなくするような仕組みを設けているわけですけれども、そういう仕組みを、放送番組全てではないけれども、15パーセントという上限を設けて、使用してもいいということを、BBCトラストが認めたという記事がありますが、おそらく今後、放送局自体が、そういうインターネットで番組を提供するサービスが行われるということに多分なっていくだろうだと思います。
その場合に、放送局自身がサービスを提供する場合と、それから放送局が自らではなくて、卸売的に他のものに番組を提供するということを、NHKにはそうしろと言われているわけですが、そういうサービスがあり、それから、全く放送局を経由せずに、プロダクションがインターネットに対して、こういうブロードバンドサービスを行うという、そういう3つの流れが、多分、今後出てくるだろうと思います。
私は、どれが主流になるのかはわかりませんけれども、その3つの流れが今後、ブロードバンドネットワーク時代において、それぞれビジネスモデルとして発展できるかどうか試すことを、可能とする制度的土壌になっていなければいけないと思います。放っておくと、ある種の放送番組については、窓口権的な仕組みが機能して、要するに、放送局だけが自らインターネットのサービスを流す、あるいは卸売的に流すときに、ボトルネック的な仕組みをつくる可能性があります。そして、通信放送法制のほうでは、そのボトルネックを取り払おうとしているわけですけれども、その場合の最後の拠り所は、多分、著作権法制になってくると思います。それはやっぱり違うので、そこは放送局自体も、ほかの事業者とともにインターネットで自由に競争するような、そういう仕組みにしてほしいというような基本的な考え方を述べました。以上です。
【中山主査】
ありがとうございます。
資料2につきまして、ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。
それでは、資料3にありますように、上段の課題、新たな創作形態等ですけれども、この上段の課題につきましては、どなたか適当な方に調査を依頼いたしまして、まずは問題点を整理してもらうという形にして、それから下段の課題、過去のコンテンツの利用ですけれども、下段の課題につきましては、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の検討課題と重複する部分があると思われますので、当面、そちらの委員会に議論を預けるという形にしたいと思いますけれども、それでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
はい、ありがとうございます。
それでは、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会等への議論のつなぎ方につきましては、本日の議論も踏まえまして、事務局と私で調整をしたいと思いますけれども、御了承いただければと思います。
それでは、デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方につきましては当面、関係方面での議論の整理を待つことといたしまして、その報告を受けて、また議論を再開するということにしたいと思います。
それでは、続きまして、2つ目の議題であります海賊版の拡大防止のための法的措置に移りたいと思います。本議題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、1番目は、海賊版の広告行為に対する取締りについて、2番目は、著作権法における親告罪の在り方についての2点でございます。
まず初めに、海賊版の広告行為に対する取締りについて、事務局にこれまでの議論をまとめていただきましたので、その案文をもとに説明をお願いしたいと思います。
【大和著作権課課長補佐】
御説明いたします。資料4を御覧ください。
前回までは関係者からの要望、あるいはこの小委員会での意見をまとめながらディスカッションをしていただきましたけれども、今回は、それらを論点まとめの案という形で集約をしてみましたので、これに基づき、本日、御審議いただければと考えております。
最初に、検討の必要性というところで、背景あるいは現行規定の限界などを示しておりまして、冒頭、インターネットオークションを利用した広告行為については、現在の著作権法113条では、
としまして、情を知って頒布する行為、
といたしまして、頒布の目的をもって所持する行為が、権利侵害とみなされているわけですけれども、その前段階である広告行為、すなわち譲渡の申し出といいますか、このような行為については、侵害行為とはみなされていないという現状でございます。
しかし、インターネットを活用した広告行為については、権利侵害を助長する程度が高いということから、関係業界から対策の必要性が求められているわけでございます。
一方、この問題に関しましては、プロバイダ責任制限法に基づいて、発信者情報の開示請求ができる道も、なくはないわけですが、実は広告行為自体については、情報の流通によって権利侵害があった場合に該当しないということから、発信者情報の開示がなかなか困難だという実情があるというわけでございます。
こういったことから、海賊版の広告行為に対する何らかの措置が必要ではないかという流れになっているわけでございます。
そこで、同じ資料の2ページ目でございますが、現行規定での対応の可否について、整理をいたしました。前回はポンチ絵といいますか、イラストで、考えられる行為類型をお示ししたわけでございますが、それぞれの行為類型ごとの考え方というのを文章で本日は整理させていただきました。
委員の方々には、参考資料としまして、3ページ目、ポンチ絵、前回の絵と同じものを御覧いただきながら、今から読み上げますことで、間違いがないか、御確認をいただければと思います。
まず、行為類型1というのは、広告行為者が海賊版を所持して、なおかつ販売しているわけですけれども、こういった場合、広告行為者自身が同時に頒布を目的として所持をしていますので、現行法でも113条に基づいて、権利侵害を構成することはできるのではないか。
次に、行為類型2、類型2のパターンですが、これは、広告行為者は侵害品を所持していないため、広告行為をしただけでは、権利侵害を構成することはできないのではないかと思われます。ただし、この類型2の図でわかりますように、広告行為者が顧客からの窓口となって、販売行為の一部を担っているといいますか、広告行為者を経由して、注文が海賊版所持者、販売者に伝わるということから、広告行為者と海賊版所持者が共同行為者として構成すれば、権利侵害を追及できる可能性があるのではないかというふうに考えております。
それから類型3というのは、広告行為者は侵害品を所持しておりませんので、これも広告行為だけでは、権利侵害を構成することができないと思われます。また、広告掲載の依頼を受けて広告をしているだけですので、類型2でいうような共同行為者としても、せいぜい幇助の可能性があるにとどまるのではないかというふうに思われます。
類型4は、広告行為者は侵害品を所持していないため、広告行為だけでは、これも権利侵害を構成することはできないと思われます。ただし、広告行為者と海賊版所持者との関係が、例えば親会社、子会社のように共同して販売行為を行ってとらえられるような場合、特別な関係にあるような場合には、共同行為者としては、あるいは同一人格、いわゆる手足理論のような考え方ですか、こういった形で、権利侵害を追及できる可能性があるのではないかというふうに考えます。
また最後、行為類型5でございますが、広告行為者は、広告行為をした時点では侵害品を所持していない。注文を受けた後に製造するということですから、広告行為をした時点では、侵害品がまだ存在していないということになると思いますから、そういった意味では、頒布を目的として所持する行為ということができないわけで、権利侵害を構成することができないと考えられるというふうに整理をいたしました。
こういうふうな現行規定の限界を前提といたしまして、4ページ以降、検討の方向性を整理させていただいています。現状のように、上記2.で御説明しましたように、例えば行為類型3とか行為類型5については、現行規定のままでは、権利侵害を構成することは困難であろう。しかし、このような形で権利侵害品が流通する可能性が高いという実態も、多々存在するということから、頒布の目的をもって所持する行為だけではなく、広告行為についても捕捉していくことが必要ではないか。
したがって、前ページのような行為類型1から5が、いずれも対象となるように権利侵害行為によって作成されたものなどについて広告を行う行為について、権利侵害を構成するようにすることが適当であると考えるが、いかがかというふうに整理をさせていただきました。
なお、この際、次の点について留意する必要があるのではないかと考えておりまして、いかなる権利侵害を構成するかに関して、広告行為は、著作物等そのものを利用する行為ではないため、複製権等と並ぶ新たな支分権の一つとして位置づけるべきものではないと考えるけれども、いかがでしょうか。すなわち産業財産権の分野では、特許や商標にいう実施や使用の概念に、広告譲渡の申し出等があるわけですが、そのような実施の概念に含めるというものではないという方向で検討するということでよろしいかどうかということでございます。
それから次に、広告行為全てについて権利侵害と構成することは、次の点から問題であろう。したがって、一定の要件を付すべきではないかということでございます。例えば、海賊版の取引に加担する意識を持たずに、広告行為だけを引き受けた者についても権利侵害を追及することになると、非常に大きな影響が生じるというようなこと。あるいは、広告行為の時点で、海賊版か正規品を販売するかどうか明確でないような行為まで権利侵害を追及することは、正規品の取引をも萎縮させる効果を与えてしまう。だから、一定の要件を付すべきであるというふうに思われますが、いかがでしょうかというようなことでございます。
さらに、一定の要件を付して限定し、なおかつ、海賊版防止の実効が失われないような要件というものが考えられるかどうかというようなことについても、検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
以上、こういった構成で論点のまとめを整理いたしましたが、これに基づき、本日、御審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【中山主査】
ありがとうございました。それでは、ただいまの点につきまして、御質問、御意見ございましたら、お願いいたします。
どうぞ、市川委員。
【市川委員】
何かの要件を付け加えるかということでありますと、頒布や所持について、現在は「情を知って」ということになっておりますので、それが一番現実的かなというふうに現時点では考えております。その意味では、そういう形で立法の具体的な方策といえば、それでいいのかなというふうに考えておりますが、若干最近、気になって、まだ自分の考え方がまとまってない面はあるのですが、やはり差止めと損害賠償と分けたときに、差止めは速やかに出せるけれども、反対の利益を守るためであれば、それは損害賠償の要件の中で調整していくという立法の在り方もあるというふうに考えております。
今日の日経新聞によりますと、消費者の団体訴訟という形で、そういう制度もできたということで、消費者にとってのいろいろな被害の拡大を防ぐという意味からいいましても、差止めは速やかに出るそうでして、その方向に向けて考えたときに、現在の「情を知って」ということでいいのかどうか、将来的にはそういう問題も出てくるのではないかと考えております。
【中山主査】
はい。松田委員、どうぞ。
【松田委員】
私も、「情を知って」という要件は必要だろうと思います。前回、この5つのパターンで、幇助類型に入るものがあって、それについては現行法上、広告自体の差止めをすることの難しい部分があるというふうに私は言いました。主査が、それではどういうふうな意見を持ちますかということで、今回までちょっと留保させてもらったわけですけれども。「情を知って」ですけれども、その「情」ですが、当該広告の対象になっている製品、商品が、複製物が著作権侵害であることの「情を知って」だけで、私はいいと思っています。だれが販売しているかということは、知らないでいいと思います。そうでないと、広告を独立に差止めをすることが、かなり難しくなるだろうというふうに思っています。
これは多分、特許法の実施との関係で言えば、おそらくパラレルになるのではないかと思います。したがいまして、今の要件を加えて、みなし侵害規定で立法をすることの方向に私は賛成したいというふうに考えております。
【中山主査】
ほかに何かございましたら。どうぞ、森田委員。
【森田委員】
その「情を知って」の議論をする前提として、私だけ勘違いしているといけませんのでお尋ねします。例えば、私的利用の目的で複製をした後で、それを譲渡するというのは、ここでいう「海賊版」に当たるのか、当たらないのか、どちらなのかというのをちょっと教えていただきたいのですが。
【大和著作権課課長補佐】
検討の背景から考えますと、海賊版の防止ということから検討は始まっておりますので、当初は私的使用の目的をもって複製されたものを販売するようなことを射程に入れるかどうかについては、規定の中で当初より、海賊版流通防止と考えておりました。
【中山主査】
海賊版というのは定義がないのですけれども、違法複製物としてとらえれば、30条に違反して目的外使用した場合には、そこで違法複製とみなすということになっていますので、普通は入ってしまうのではないかと思います。特に立法で除けば別ですけれども。目的は確かに海賊版だけれども、海賊版の定義は、そもそもあまりないでしょう。ですから、今、普通に考えれば、違法複製物のことだと思います。
【大和著作権課課長補佐】
おっしゃるとおり、許諾を得ずに作成されたものであり、権利制限に該当しない場合は同等と位置づけられますので、特別に除くかどうかというのは、別の判断になると思います。
【中山主査】
そうですね。そうすると、販売広告する人が、これは30条違反の目的外使用でやったのか、あるいはやくざがやったのかわからないとか、あるいはデジタルの場合だったら、ほんとうに真正品なのか中古品なのかわからないとか、いろいろ出てくるので、「情を知って」ということは果たしてどうですかと、こういう議論になってくると思うのですけれども、30条の問題はどうでしょうか。ここでいうところの違法複製物と考えてよろしいでしょうね。
【吉田文化庁長官官房審議官】
30条で作成されたものが、その後、目的外に、つまり30条の範囲を超えて利用される場合には、49条で目的外使用という形になりますので、その際に改めて許諾を得られれば、そこは正規品になるわけですけれども、許諾を得ずに、何か頒布をするとかということになりますと、そこは、ある意味では一種の海賊版と、こういうことだと思います。
【中山主査】
どうぞ、潮見委員。
【潮見委員】
すみません、前回と前々回、欠席したので、何とも言えませんけれども、先ほど森田委員の発言もありまして、あるいは市川委員の発言もございましたが、この問題の中で、「情を知って」という要件を入れて、それで処理することで、合理的な対処ができるかどうかという、それだけの議論だけをしていていいのかと思います。結局はこの間接侵害の規定全体をどのようにとらえるかというところにも、大きな影響を及ぼしてきますよね。ですので、今日、ワーキングチームの主査が来られてないので、何とも言いようがありませんけれども、そちらとの議論の整合性というのは、ぜひ図っておいていただきたいと思います。そうでないと、向こうのほうにも影響を及ぼすというのは、ここに書いた以上に大きな意味を持つのではないかと思いますので、一言だけ申し上げました。
【中山主査】
ありがとうございます。どうぞ、道垣内委員。
【道垣内委員】
素人的な質問で申しわけないのですが、「情を知って」という要件を入れた場合、権利者からの通知があった場合には、その時点からは「情を知って」ということになるかどうかなのですが、ノーティス・アンド・テイクダウンのような考え方と同様に、権利者から通知があって、一定期間内にその措置をとらなければ、行為者は情を知ったことになるという扱いをしないと、実効的ではないのではないかと思うのですけれども、法制的にはその扱いは可能なのですか。
【市川委員】
現実に裁判例で出ているものを見ますと、やはりどうもそこまではいってないようでして、未確定ながら一審判決が出たとかそういう、ある程度、公的なものが出ないと、やはり「情を知って」というのは認めにくいということで、現状の実務は動いているように受け取っております。
【中山主査】
そうですね、学説的にもかなり、市川委員のおっしゃったとおりですし、他の同じ事件で、既にクロとなったので、この人はもうクロとわかっているはずだとか、その程度の強い理由が必要と解されております。一審や仮処分などが出れば情を知ったことになりますが、ただ、お前のところはクロだと言われただけでは、だめだというのが普通でしょう。ただ、プロバイダ責任制限法みたいなものをつくれば別ですけれども。ということは、逆に言えば、つくらなければ、あまり実効性はないかもしられないということなのかもしれません。
どうぞ、森田委員。
【森田委員】
先ほど潮見委員がおっしゃって下さったことが、私もお聞きしたかったところなのですけれども、ここで、侵害主体としてプロバイダは想定しているのかどうかという点については、当然想定しているという理解でよいのかどうかということなのです。まずこういう事例があった場合には、プロバイダに対して、広告の送信を止めてくれと言えるかどうか、それが一番重要なことだと思います。ここでの広告行為者が、広告をオークションで出している場合には、広告を出した者やそれを取り次いだ者だけではなくて、プロバイダも当然、侵害主体として想定しているという理解なのかどうかというのが、まずご質問の1点です。
それから、今の通知だけで広告を止めて良いかという点については、プロバイダ責任制限法に関する協議会があって、ガイドライン等を定めておりますが、そこでは、単に権利者が通知するだけでは足りないが、その通知に権利侵害行為があったことが確からしいことを示す一定の仕組みを組み込んだうえで通知がなされる場合には、裁判までやらなくても、プロバイダの側で一定の事実確認をしないと、権利侵害行為について認識があるとか、少なくとも重過失に当たる事情があるということになり得るという前提で動いております。したがって、単なる通知だけではだめだけれども、一定の事実が手順を踏んで確認されたうえでなされた通知であればプロバイダ側もこれを真摯に受けとめて対応しなくては責任を負う可能性があるわけですから、そのような通知の在り方については、実務的に権利者のほうで仕組みを工夫をすれば良いのではないかと思います。つまり、海賊版なのか正規品なのかということの区別について、権利者の側でどういう根拠でもってそれを判断したのかという客観的な資料まで付けてプロバイダに送れば、その時点でプロバイダは一定の措置をとらなければ、法的責任が問われるということがあり得るという理解になるのだと思います。
ただ、その前提として、そもそもプロバイダはここでは念頭に置いていませんということになると、いまのような議論をしてよいものかどうかがわかりませんので、プロバイダは侵害主体に当然含まれるという前提で考えてよいのかということなのですが。
【大和著作権課課長補佐】
事務局としては、プロバイダは広告行為の場を提供しているということで、広告行為の、みなし侵害の対象者というのは出品者を想定しています。プロバイダに対しては、プロバイダ責任制限法に基づいて削除請求、あるいは発信者情報の開示請求というような形で対応するという関係になるのではないかという整理しております。
【中山主査】
よろしいでしょうか、森田委員。
【森田委員】
なぜ当たらないのかというのが、よくわからないのですけれども。広告行為というのは、自ら売ろうとして広告するという人のことなのか。行為そのものを客観的に見ると、物品の販売を目的としてオークションサイトで広告という情報を発信しているのが広告行為なわけですよね。したがって、広告行為の主体から、プロバイダが当然に排除されることにはならないのだと思います。また、プロバイダを一律に排除してしまうと、ここでねらっていることの意味が、かなり削減されるのではないか。つまり、発信者情報開示請求というのは、反復継続して権利侵害物品の販売を行っている者に対して、抜本的な措置をとる場合には、だれが行っているかということを明らかにして、この者に対して一定の措置をとらなくてはいけないわけでしょうけれども、それ以前の段階でまずは広告をすぐ止めてくれというのが、権利者が一番最初にとるべき手段であります。しかし、プロバイダに対して広告の削除を求めても。それはすぐ止められませんということだと、ここで議論しているような侵害行為への対応としての実効性が著しく損なわれることになるのだと思いますので、もしそのような前提であるとすれば、その前提をそもそも考え直さなくてはいけないのではないかと思うのですが。
【中山主査】
では、松田委員、どうぞ。
【松田委員】
私は今、事務局が言われた範囲内で許容することしかできないと思っています。広告をプロバイダを介して公衆に発信する。ないしは、著作権侵害物をプロバイダを介して公衆に提供する。後者のほうは、プロバイダ責任制限法の範囲内に入るわけです。これはどうしてかというと、プロバイダそれ自体は、違法であるかどうかについての直接の発信者、自動公衆送信権の主体とはそのままではなり得ないという前提から議論したはずであります。だとすれば、広告のほうも、広告をプロバイダが物理的に出しているということだけで、広告の主体と考えるべきではないということになるのではないでしょうか。だから、今、ここで立法的措置をするならば、あくまでも広告主──アップロードしているほうですね──だけのみなし侵害規定を設けるべきではないかと。そして、プロバイダないしはプロバイダ責任制限法の範囲内に入る行為については、このみなし侵害規定では処理できないというふうにすべきだろうと私は考えております。それでも私は効果はあると思っております。
【中山主査】
どうぞ、潮見委員。
【潮見委員】
おそらく広告行為という意味自体の理解が分かれているのではないかと思います。個人的には、森田委員が言われたような形でかかるほうがいいのかなと思うのです。要するに、広告行為というもの自体を全体としてとらえて、実際に広告出した人、プラス、それに対して関わっている人たち、全体で一つの広告行為ととらえて、そして、その措置をどうするか、差止をどうするか、あるいはその損害賠償をどうするかというのを、一つの在り方として考えるべきではないかと思いますが、仮に、松田委員が言われたのは、そういう意味の広告行為のとらえ方ではなくて、むしろ広告主という言葉が出ておられたところからも明らかなように、実際にその広告を作成し、その行動を行っているものそれ自体を広告と指すと、広告行為ととらえるという見方だと思いますが、仮にこういう立場をとった場合でも、例の、先ほど申し上げた間接侵害のところで、あまり私は使いたくないのですけれども、このことは幇助行為という、幇助者に対する差止をどうするか、間接行為者に対する差止をどうするかという議論がありますから、その場面で、いわゆる狭い意味の広告を出した人以外に、こういうプロバイダに対して、幇助行為、あるいは間接行為者的な位置を見出して、それに対する差止をどうする、あるいはその他の措置をどうするかという議論は、あり得るのではないかというふうに思います。
【松田委員】
それはあり得ると思います。
【潮見委員】
ええ。ですので、少なくとも両方の、これは事務局にお願いすることになろうかと思いますけれども、広告行為という意味をどういう意味でとらえるのか。そして、それに対して、なぜどういう観点から規制が必要とされるのかというところを、ちょっともう少し整理していただいたほうがいいのかなという感じがします。
以上です。
【中山主査】
どうぞ。
【松田委員】
そこまで広げて、なおかつ効果のある法制をつくるということは、いいことかもしれませんが、現行法でも実は特許や商標の場合、実施にあたるとすれば、広告主は本来、プロバイダに関係なく差止めできるはずなのです。広告主がだれであれ。ただ、著作権法は今、それができてないわけです。その範囲内で、みなし侵害で対処するというところまでやるべきではないかというふうに考えているだけであります。
どうでしょうか。もし広告の主体をプロバイダ全体ということになったとしたら、これは著作権法だけの対処の問題ではなくて、全てのところについて、場合によっては違法な人格権侵害物品の広告をしているような場合でも、同じような問題が起こるのではないでしょうか。そこまで立ち入ることは、プロバイダ責任制限法を抜本的に改正しなければならなくなるはずです。そこに立ち入らないで、今、特許レベルの広告を規制できるようにすると、禁止できるようにするという範囲内で議論すべきだろうと私は思っております。
【中山主査】
特許では文言は広告ではなくて、譲渡の申出になっているので、広告とはちょっと違うと思いますけれども。
どうぞ、森田委員。
【森田委員】
人格権とおっしゃいましたけれども、現在、プライバシー侵害とか名誉棄損の関係では、プロバイダに対する差止めというのは、人格権に基づく削除要請として、これはもう当然に認められています。また、それから商標権との関係では、プロバイダに対する差止めというのは認められるという前提で実務は動いているわけですね。それでは、なぜ海賊版については今まで対応できてこなかったかというと、プロバイダが扱っている情報そのものが違法だとは言えなかったからです。違法情報の流通にプロバイダが直接に関与している場合には、プロバイダも直接侵害行為を行っているということになりうるわけですが、著作権の場合には、広告そのものではなくて、海賊版の譲渡とか頒布という行為は、契約が成立して、インターネットの外で直接に当事者間で行われますので、その海賊版の取引そのものは、情報の流通とは別に行われているわけです。したがって、プロバイダは違法情報の流通に直接関与していないからプロバイダに対しては削除請求しえないという理屈でしたので、法改正によって広告行為というそれ自体が違法情報の流通ということになれば、プロバイダは違法情報の流通を自ら行っているわけでありますから、当然、損害賠償や差止めの対象になりうるということだと思います。
それから、市川委員のおっしゃった主観的要件との関係なのですけれども、差止めの関係でも、海賊版かどうかわからないという場合に、そのような状態で侵害行為があるから差止めを認めるということにはやはり問題があるので、一定の主観的な要件、つまり海賊版であるということを認識した場合には、それでもなお削除請求に応じない場合には侵害行為があるといえるとなめるという形で、主観的要件がかかってくるわけです。したがって、差止めの場合であっても、損害賠償請求と同様に主観的要件がかかるというのが、現在の一般的な理解だと思います。差止めというのは将来に向かって削除を求めるものですから、過去については権利侵害の認識がなかったとしても、ある通知によって、プロバイダに権利侵害の認識が生じた、あるいは、プロバイダが少し事実を確かめれば、その認識が得られるという状態になれば、差止めの対象として考えてよいということになると思います。したがって、損害賠償と差止請求とで主観的要件を使い分けるという必要は、必ずしもないのではないかというふうに思います。
【中山主査】
どうぞ、末吉委員。
【末吉委員】
少し論点が関係なくなってしまうのですけれども、広告行為を考えるときに、ここまでの論点は、広告の主体をどこまで広げるかという論点だと思うのですが、海賊版の現物が現存しなければいけないのかという点はどうですかね。広告にかかる物がまだ現存しなくて、広告だけ先行して、例えばライセンスなどを受けないで明らかな海賊版の広告をやる場合とか、現物なしの海賊版の広告行為を反復継続しているような場合というのは、現物がなくても、広告行為は違法になるという考え方になるのですか。あるいは、そこまではいかないで、やはり現物は要るということを前提に海賊版を定義して、たとえば、違法複製物という様に特定し、「違法複製物にかかる広告」の如く、物が現存することを前提にした広告行為の概念という理解なのでしょうか。
【大和著作権課課長補佐】
実は4ページの一番下の丸のところで、その点、事務局としても、なかなか難しいのではないかというふうに思っているわけでございます。すなわち、例えば「情を知って」ということで、侵害物であることを知ってということで、権利侵害にかからしめようと考えているわけですが、当事者といいますか、広告行為者がそれを、警告とかを無視して、あるいは、これは海賊版でないことを信じているとかなどの理由によって広告行為を続けた場合、現実にその人の手元には物が存在しませんので、差止め請求できるという、権利侵害とみなすとしたところで、果たして実効があるのか。何か別の仕掛けが必要ではないのかというのが、気になる点でございます。まさしく今、末吉委員がおっしゃった点というのは、実効の問題で、ちょっと難しいところかなとは思っております。
【中山主査】
どうぞ、森田委員。
【森田委員】
本来であれば、その海賊版の頒布とか譲渡とか、その後の段階で侵害行為をとらえればいいはずのところを、もう少し前倒しにして、その広告行為がなされたという、いわゆる抽象的な危険の段階でとらえようということですので、その広告がなされた時点で現物がなくてはいけないということに論理的になるかというと、やはりそうではないのだと思います。抽象的な危険性の段階で侵害行為をとらえようということですから、そこは頒布や譲渡がその後になされる危険性があるといえる必要があります。ただ、そこから先はそのような危険性の立証をどうするかという問題であって、現物がない場合には、「あなたは海賊版を売ろうとしているということですね」という事実の立証が困難な場合が多いのかもしれませんが、あくまでそれは立証の問題ではないかと思います。あることを反復継続して行っている場合、例えば、受注生産でやっているという場合には、過去にもそういうことを海賊版の販売を何回かやった者であって、それらと同じ形で売っている場合には、過去の例から見て今回もそのような目的で広告をしているというふうに、ある程度まで言えるという証拠が出てくれば、その時点で止めるということもあり得るのではないかと思うのです。だから、主観的要件の立て方とか論点の危険性があるかというレベルで考えれば、そこの要件設定を検討したけれども難しいということになれば、最終的には断念するということかもしれませんけれども、今の段階で、論理的にそれは対象から除くべきだということにはならないのではないかという感じがいたします。
【中山主査】
ありがとうございます。ちょっと佳境に入っているのですけれども、実は次の議題の説明者の方にお越しをいただいておりますので、とりあえず、この点はこれで中断させていただきたいと思います。
次に、著作権法における親告罪の在り方についてでございますけれども、事務局から、これまでの意見の整理について、御説明をお願いいたしたいと思います。
また本日は、著作権法における親告罪に関する捜査の実務に関しまして、法務省の刑事局参事官、山元裕史様と警察庁の生活安全局生活環境課、知的財産権保護対策官の古谷洋一様にお越しいただいております。御報告を頂戴したいと思います。それでは、恐れ入りますけれども、御報告をお願いしたいと思います。
【大和著作権課課長補佐】
法務省の方、警察庁の方の御報告の前に、簡単に資料5について御説明させていただきます。これまで3回までの意見の整理でございます。今まで出されました意見をまとめ、特に黒丸のところが、前回お出しいただいた意見でございますが、特に前回の御意見の中で、捜査の実務上の問題、あるいはその効果について、いろいろ御意見が出されましたので、その点につきましては資料の3ページの中ほどあたり、「実務上の問題、効果について」という枠を設けまして、これまでの意見を整理させていただきました。
本日は、法務省の方、警察庁の方にお越しいただいて、具体的にそういったお話をお伺いできればと思っております。
以上でございます。
【中山主査】
はい。それでは法務省の山元様、よろしくお願いいたします。
【山元法務省刑事局参事官】
刑事局参事官の山元でございます。お世話になります。
親告罪の捜査実務上の問題点ということですので、基本的には捜査現場の問題ということになりますと、警察庁のほうから御説明が詳しくあろうかと思いますので、若干言わずもがなの点ございますが、親告罪あるいは告訴についての一般論を整理させていただければと思っております。
刑事訴訟法第230条が根拠になるわけですが、告訴とは、犯罪の被害者が捜査機関に対し、犯罪事実を申告して、犯人の処罰を求める意思表示ということでありまして、基本的には刑事事件の捜査の端緒、きっかけの一つであるというように言われております。ただ、犯罪の中にはこれを超えて、訴追の要件ということで、告訴権者の告訴があることが必要とされているものがありまして、これが今問題になっております親告罪ということになります。親告罪の場合には、この告訴が訴追の要件とされておりますので、告訴がなければ、検察官としては公訴を提起することができない。告訴なしに起訴を提起しますと、違法な起訴ということになりまして、公訴棄却ということになるわけでございます。
このように、親告罪とされている犯罪について概観いたしますと、大きく分けて2つに分けられるというように考えられております。その第一でありますが、犯罪の性質上、被害者の名誉を考慮しようとするものでございます。刑法で例を挙げさせていただきますと、1つは刑法177条の強姦罪、それから刑法230条の名誉棄損罪、ということで、刑事訴追によってその事件を公開のもとで審理して明るみに出すことによって、かえって被害者の不利益になるおそれがあるということから、被害者の意思を尊重する趣旨で、親告罪とされているものが、まずございます。
第2は、比較的軽微な犯罪ということで、被害者の意図にかからしめるということで、例えば刑法264条の器物損壊罪というのが、親告罪ということでされております。これは、被害者が訴追の意思を有していないという場合に、これを無視してまで訴追する必要はないというふうに基本的には考えられているものだろうと思われます。
さて、そこで、この親告罪と非親告罪が、手続的にどのような差異があるのかということでありますが、捜査実務での実際上の様々な相違等につきましては、後ほど御説明があるかと思いますので、基本的には制度的な面から若干御説明いたしますと、先ほど申し上げましたが、親告罪は公訴提起の要件として告訴があることが必要となりますが、告訴は捜査開始の条件とはされておりませんので、この親告罪であって、告訴が公訴提起の要件とされている親告罪であっても、告訴がない段階で捜査を開始することは、理論上は可能だというのが通常の整理でございます。ただ、問題点としましては、既にペーパー等で御指摘されておりますように、親告罪の告訴には、犯人を知った日から6カ月間という期限が、刑事訴訟法第235条で定められております。これは、色々な説明の仕方があるのですが、告訴権者が告訴をするかしないかによって、犯人の処罰の可能性が生じるか否かが左右されるということから、犯人の地位の不安定、あるいは刑罰権発動の不安定という点を考えたものというように言われているものであります。
捜査は、公訴提起の準備行為としての性格を持つことでありますから、親告罪に関して、例えば全ての告訴権者の告訴期間が徒過してしまうという場合には、法律上、およそ公訴提起の可能性がないということになりますので、刑事責任の解明を目的とする捜査は行い得ないというような解釈が、一般的ではないかと思います。
また警察官等の司法警察員が告訴を受理した場合の手続について申し上げますと、速やかに書類と証拠物を検察官に送付することとされておりますし、検察官は起訴、不起訴の処分をした場合に、その旨を告訴人に通知するということで、告訴をした場合の手続は定められております。
実務的な観点から、1点、若干の所感を申し述べますと、著作権侵害の罪等の著作権法違反の罪につきましては、実際問題、権利者からの被害申告が捜査の端緒となることが多いのではないかというように思います。全て網羅的に調査した上で申し上げているわけではありませんので、あくまで感触的なこととして御了承いただきたいと思いますが、ただ、捜査の過程におきましては、端緒が何であっても、権利者から、その権利の帰属や内容等について事情を聴取するというのは、これは当然行うべきものです。このことは例えば刑事訴訟法第248条、起訴便宜主義に関する条文でありますが、検察官は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重及び情状、並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができるとされておりまして、被害者の被害感情、あるいは被害の大きさ、重さ、その被害者にとっての重みというのでしょうか、あるいは、それに基づく訴追意思というものは、公訴提起の要否の判断においては当然重視されるべきものです。最近は特に被害者に関するいろいろな動きがございまして、この点についての重視という観点は、ますます軽視できないということになりますので、当然ながら、被害者の意思と無関係に訴追が行われることはないというのが、一般的であるということは念頭に置いていただければと思います。
さて、特許法を始めとしまして産業財産権法侵害の罪につきまして、平成10年の改正法によりまして、それまで親告罪とされていたものが非親告罪とされております。この種の事件の改正後の捜査実務につきまして、改正前と後で具体的にどんな変化があったのかというようなことをここで申し上げられれば、今回の御審議にも参考にされると思うのですが、期間の面や、あるいは実際問題の摘発の件数ということからしますと、非親告罪とされたことそのものによる変化や効果ということを、この場で法務省から申し上げるほどの資料を残念ながら持ち合わせていないということは、申し上げざるを得ないところであります。
他方、著作権侵害について、親告罪とされていることによって、実務上、支障があったということについても、直ちにこのような例がありましたということや、著作権について説明できるという事情も、残念ながら申し上げられるものがないということでありますので、何か御疑問の点ありましたら、後ほど御質問いただければ、その場で感触的に申し上げさせていただくことになろうかと思います。
さて、それでは現行法上、著作権侵害の罪が親告罪とされている理由ということなのですが、法務省として、これについて理由を申し上げるべき立場ではないのですが、せっかくですので、若干の所感を踏まえて申し上げさせていただきますと、これまでの考え方は、著作権が著作者の人格に密接に関連し得るものであるということから、ストレートな考え方として、訴追についても被害者の意思を尊重しようという考え方があったのではないかと思います。また、先ほどの第1、第2の例に即して考えますと、著作権侵害というのが、日常生活上いろいろな形でいろいろな場面、あるいはいろいろなところでいろいろな表現活動が行われますので、軽微な形でも出てくる場合もあるだろうということから、その著作権侵害が行われるような態様というようなことを考えますと、やはり被害者の意思を尊重した上で、考慮したほうがいいというような考え方があると思っております。
さて今後、親告罪ということを維持されるべきかどうかということでありますが、これについては、著作権法違反がなぜ親告罪とされているのかというような趣旨、それから、それが現実にどんな効果をもたらしているのか、あるいは、非親告罪とした場合の影響等を踏まえて、御議論いただければと思うのですが、先ほど御紹介しましたように、取締りへの影響という観点から申し上げますと、非親告罪としたことによって、捜査機関的な考え方、あるいは捜査実務の現場を考えますと、非親告罪化すれば、取締りが強化されるのかということについては、直ちにそうは言いにくいのではないかなというような感触は持っております。といいますのは、被害者からの申告や協力がなければ、実際問題、著作権の中身とか、あるいは著作権侵害の対応、あるいは影響ということが判断できませんので、実際問題、訴追するのが困難ではないかというような考え方に、検察官としてはなると思います。いずれにしても、被害者の御協力あるいはその意向というものなしに、訴追ということはちょっと考えられないだろうということであります。
簡単でございますが、とりあえず私からの報告でございます。
【中山主査】
ありがとうございます。それでは警察庁の古谷様、お願いします。
【古谷警察庁生活安全局生活環境課知的財産権保護対策官】
警察庁知的財産権保護対策官の古谷と申します。よろしくお願いします。
それでは、資料6のレジュメに従って、御報告させていただきたいと思います。
まず、知的財産権侵害事犯におけます親告罪と非親告罪の捜査の違いということについてでございますが、今ほど法務省さんからも御説明がございましたように、親告罪の告訴というのは訴追の要件でございまして、その告訴の有無が、捜査の可否や範囲に直接影響を及ぼすというものではございません。資料の3枚目のところに判例をつけております。また、国家公安委員会規則でございます犯罪捜査規範におきましても、告訴がない場合におきましても、強制捜査を含む捜査を行うことができることを当然の前提とした規定を置いておるところでございます。
知財関係の事件において告訴がない場合に逮捕状を請求するというのは、必ずしもよくあるわけではございませんけれども、いずれにしましても、実際に告訴を受理する前に、ある程度の捜査を行っているというのが、知財事件の捜査の実態でございます。
一般的な著作権侵害事犯の捜査の流れについて申し上げますと、まず、最初の段階は、端緒の入手ということでございます。権利者からの告訴、あるいは被害申告による場合が非常に多いのでございますけれども、第三者の通報、あるいは警察独自に情報を入手するという場合もございます。
次いで、これらの告訴や情報に基づきまして、各種の内偵捜査を行っていくということでございます。街頭事犯の場合におきましても、発見したら、即逮捕するということではございません。実際には一定の内偵捜査を行うというのが通常でございます。この過程におきまして被疑者を特定し、また製造、販売、ネット配信等の実態の解明を行っていきますとともに、サンプルを試し買いしたり、ネットに出ているような場合であれば、データをダウンロードしまして、それが侵害品であることの鑑定、確認ということを行います。
また、当該侵害の対象になっている著作権につきましても、その内容とか権利者の特定、利用許諾があるかないかといったことの確認等を行う必要がございます。
これらの捜査を通じまして、捜査重点をどこに置くか、そして、捜査をどの範囲まで広げていくかということにつきまして、捜査方針を決定し、その上で捜索、差押により、海賊版その他の具体的な証拠資料を押収するとともに、関係被疑者を逮捕しまして、その取り調べ等も行って証拠を固めた上で、検察官に送致するといいますのが、教科書的、標準的な捜査のパターンでございます。
問題の告訴につきましては、通常は内偵捜査の段階、すなわち強制捜査に入る前に受理することが多いというのが、実態でございます。これは、強制捜査をしたけれども、結局、告訴がなくて、事件にならないという事態を未然に防ごうということでございまして、捜査の流れによりましては、告訴の意思を確認するというだけで済ませて、実際の告訴は強制捜査の後に受理する場合というのもございます。
最近におきましては、著作権保護に関する権利者の意識も非常に高うございますので、大半の事例で告訴が行われているという状況にございます。ただ、権利者が告訴に消極的な事例というのも、皆無というわけではございません。そのような場合におきましては、警察としては告訴してもらうようにいろいろと働きかけるわけでございますけれども、それにもかかわらず、告訴がおよそ期待できないというような場合には、それ以上、捜査しても、結局、公訴することはできないということでございますから、警察の捜査もそこで止まってしまうということになります。
非親告罪であります特許法、商標法の違反事件等の場合におきましても、基本的な流れは同様でございます。ただ告訴につきましては、親告罪でございませんので、告訴があれば受理いたしますけれども、特に商標法違反の場合については、告訴がないままで送致している事例も結構ございます。もっとも、先ほど法務省さんからも御説明がありましたけれども、告訴がないからといって、権利者の協力も不要ということにはならないわけでございまして、その権利の内容の確認だとか侵害事実を特定したり、あるいは通常使用権を許諾しているかどうかとか、そういったようなことをいろいろと確認して、事件を立証していく上で、権利者の協力というのはやはり欠かせないものでございます。また告訴には、処罰を求める意思表示という機能があるわけでございますけれども、親告罪でない場合、告訴がない場合等におきましても、警察から検察に送致書類を送る際に、情状意見というのを付すわけでございますが、実務上、その権利者の処罰意思について聴取しておるところでございまして、被害者感情とか処罰感情といった点に、警察においても注意を払って捜査をしているという点におきまして、親告罪と同様のことをやっておるところでございます。
2点目の「産業財産権法における非親告罪導入に伴う変化・効果」ということでございますが、ここが空欄になっておりますのは、特許法、意匠法、実用新案法というのは、資料2ページ目につけてあります表のように、非常に検挙事例が少のうございますので、残念ながら、統計的に意味のある分析はできていないと申し上げざるを得ないような状況でございます。
また念のため、一応、都道府県警察47全部に調査をかけてみたのですけれども、この3法について、非親告罪化により、特段の効果があったという話は、今のところ出てきていない状況でございます。おそらくこれにつきましては、特許法等の技術とかデザインといった極めて専門性の伴う事件の捜査におきましては、権利者の協力ということが非常に重要でございまして、その過程で当然に告訴がなされるというのが、通常であるということから、そのように県警においても受けとめておるのではないかというふうに思っております。実際に、18年中だけでございますけれども、全て告訴が捜査開始の端緒になっておるということでございます。
3つ目の「親告罪であることによる実務上の支障」という点でございますけれども、基本的には、親告罪であるということが、著作権法違反事件の捜査にとって大きな障害であるという認識は持っておりません。それでも、年に1件、2件という程度のレベルではございますけれども、告訴が得られないために捜査が中断に至る事例が、あるにはございます。近年の事例といたしましては、例えば民事で賠償金が獲得されたということで、告訴が取り消された事例。これは言ってみれば、民事紛争を有利に解決するために刑事告訴を利用したとも受け取れるような事例でございまして、残念な事例でございます。
それから、権利者が告訴に極めて消極的であるということで、立件を断念した事例でございます。これは、捜査とか公判におきましても、その鑑定とか証言ということで協力をしていただくことになるので、その負担が重いということで、告訴をしていただけなかったのではないかというふうに思っております。個人や小規模事業者という形の権利者に限らず、業界の大手の場合であっても、そういう対応が見られる場合があるということは、少しございます。
それから3つ目として、権利者と連絡がとれない間に、被疑者が所在不明となってしまったというような事例、これも一応、支障といえば支障でございます。
それから4番目として、権利者が民事上の対応を先にしている間に、民事上うまくいかないので、じゃ、刑事告訴するかということになった時点で、告訴期間が経過してしまっていたといったようなものがございます。
このうち、最初に申し上げた告訴の拒否、告訴取り消し、権利者の所在不明という3つの問題につきましては、告訴が得られないというだけではなく、仮に無理矢理で得られたとしても、その他の捜査協力もなかなか得られない。ないしは、得にくい場合ではないかというふうには思いますので、これは親告罪であるということのみによる問題では、必ずしもないように思っております。
それから4番目の、告訴期間が経過してしまったものというのは、親告罪であるということ、プロパーの問題というよりは、告訴期間の問題ということでもあるのかなというふうに思っております。
以上のようなことでございますので、4番目の、非親告罪とすることによって捜査実務上どのようなメリット・デメリットがあるかということ、これはなかなか申し上げることが難しいわけでございますけれども、非親告罪化すれば、例えば社会に警鐘を鳴らす上で、検挙する価値が非常に大きい悪質な事件につきまして、ある程度、その捜査が進んで、証拠もある程度確保できたという段階で、突然、示談が成立したから告訴を取り消すといった形で捜査が頓挫するような問題は一応解消されるだろうということは言えると思います。
一方で、これはちょっと論証することは難しく、感覚的な議論ではございますけれども、従来、親告罪における告訴というのは、捜査への協力にあまり積極的でない権利者の方に協力を求めていく手がかりとしての機能も、事実上、果たしてきていたのではないかと私たちは感じております。これが、告訴は要らないということになりますと、著作権の場合は、特許権、商標権の場合以上に、個人とか小規模事業者の方が権利者になっている場合が多うございますので、そういった権利者の方々の協力意識、捜査に対する協力の意識に対して、どういう影響が出るかという点が、やや気になるところではございます。
警察にとりまして告訴というのは、処罰を求める意思表示ということにとどまらず、権利者が捜査に協力をすると、そういった協力意識のあらわれでもあるというふうにとらえているところでございまして、先ほども申し上げましたけれども、権利者の協力なくしては、知財事件の捜査は成り立たないと考えますことから、そのように、ちょっと気になっておるところでございます。
本問題、親告罪の非親告罪化という問題の御検討にあたりましては、著作権保護に対する権利者の認識、意識の水準といったようなことも、一つの考慮していただく事由になるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、御意見あるいは御質問ございましたら、お願いいたします。どうぞ、道垣内委員。
【道垣内委員】
2つお伺いしたいのですけれども、他の産業財産権について非親告罪化された中で、著作権についてこのままにするということが、社会の受けとめ方において、軽微な犯罪であるというのが国家としての捉え方であるという情報発信の意味も持ってしまうかもしれないのですが、それが刑事政策上、マイナスではないかというのが第1点です。それからもう一つは、手元に刑事訴訟法を持ってないのでわからないのですが、235条のその犯人を知ってから6カ月というのは特定の犯罪についてだと思うのですが、継続的に著作権侵害が起きている場合に、どのように犯罪を特定して1個と見るのかについて教えていただきたいと思います。交渉していて、最初はちょっとしか売ってなかったのだけれども、だんだんと大きくなったので、告訴というときに、もう継続的にわかっていたのではないかと言われるのかという点です。お願いします。
【中山主査】
はい。それではどちらから。
【山元法務省刑事局参事官】
それではまず答えやすいほうからお答えします。告訴期間の進行の問題で、継続犯的な犯罪の場合の取り扱いですが、今、手元に代表的なコンメンタールを持っておりますが、それを見ますと、継続犯においては、告訴権者が犯罪終了前に犯人を知っていたときは、当該犯罪終了のときが告訴期間の起算日となるということですので、継続的に法益侵害的な著作権侵害行為あれば、それが終了したときが、告訴期間の起算日ということになるのだろうと思われます。
次の、他の産業財産権が非親告罪化されたこととの関係で、経営政策上、著作権のみが親告罪とされていることによって、国家の刑罰意思として、著作権侵害を軽く見ているのかどうかという点の御質問だったと思います。非常に難しい御質問だとは思うのですが、基本的には、国家が当該犯罪についてどれだけ罰を与えるべきか、あるいは、どれだけの重い法益侵害があり得るかということを考えているかの第一義的なメルクマール、これは基本的には法定刑であろうかと思います。したがいまして、10年という法定刑が出てきておりますので、基本的に著作権法侵害が、ほかのものと比べて軽微であるというふうに国家刑事政策上思われることや、親告罪とされていることによって、これは言い方は悪いのですが、軽いものだというように思われるかというと、それはちょっと違うのだろうと思います。
先ほど申し上げたとおり、確かに第2の類型で、軽い侵害の場合があるからということを申し上げたのですが、器物損壊全体が軽いというわけではありませんで、その器物損壊が犯される種々の対応から、そういう場合もあるので、被害者の意思を尊重したほうがいいだろうということであります。ですから、著作権侵害違反について親告罪とされることによって、直ちにそういう誤解といってしまっていいのかわかりませんが、そういう危惧を持つのは、必ずしも当たらないと思います。むしろ、その権利の性質から、親告罪としておくほうがいいのかというところを純粋に考えたほうがいいと思っております。
【中山主査】
ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問ございましたら。どうぞ、道垣内委員。
【道垣内委員】
2番目にお答えいただいた点に関連しますけれども、ドイツの法律の紹介が以前のこの審議会であったのですが、一応、親告罪にしておきながら、しかし、重大な法益侵害だとみなせば、告訴がなくても捜査する、あるいは公訴を提起すると仕組みがドイツでは採用されているようです。そういう扱いもあり得ると思うのですが、それは日本としては受け入れられないような考え方なのかどうかということをお伺いしたいのですが。
【山元法務省刑事局参事官】
そういう御質問があろうかと思いまして、ドイツの件について、周りの者にちょっと聞いてみたのですが、すみません、ドイツの起訴法定主義的な考え方、あるいは著作権侵害についての親告罪の考え方を、正確に理解しておりませんので、なかなかお答えしにくいのですが、法益侵害が重い場合には、著作権者の意思を無視しても公訴提起すべきであるという考え方があり得るのか、あり得ないのかということについては、あり得るのかもしれません。ただ、同じような法益侵害行為について、態様あるいは結果が重いから、そのものだけを非親告罪にするという枠組みは、法制的になかなか難しいかなと思うのと、実務的に極めて困難を来たすように思います。というのは、重いか軽いのかの判断は、非常に微妙な問題がありまして、これこそ被害者の意図を忖度しなければ、確定し得ないであろう、あるいは支え得ないであろうと思います。訴訟に持ち込まれたときに、被害者は訴追をしなくてもいいと言っているけれども、重いから訴追をするというのは、若干、論理矛盾的な感じがあります。それはいろんな事情がありますから、直ちに矛盾するわけではないのかもしれませんが、あり得ないか、あり得るかということになれば、その類型としてどんなものを考えるのかにもよるのかもしれませんが、重い軽いで、直ちに親告罪にするかしないかというのは若干、違和感がある感じはいたします。
【中山主査】
ほかに何かございませんでしょうか。どうぞ。
【森田委員】
今日のお話をお伺いしますと、また、今の道垣内委員の御発言とも関係しますけれども、親告罪を見直すべきだと主張されている方の意図というのは、捜査の実態についての誤解があって、そういうことをおっしゃっていたということなのか、それとも、むしろそうではなくて、何かシンボリックな効果を狙って、国内の取締りを強化してますよということを示すというのが親告罪でなくする目的であって、必ずしも実際の捜査に影響があるわけではない、それとは独立に考えるべきだという、何かそういう御主張なのか。この件については、今日お配りいただいた「知的財産推進計画の2007」にも入っていますけれども、この意図というのはどう整理されているのかという点についてお聞きしたいと思うのですが。
【中山主査】
私はその策定の場にいましたけれども、はっきり言って、そのような細かい議論はしておりません。知的財産推進計画の非常にたくさんある項目の中の一項目ですから。ただ、そこで私はどういう効果があるのですかと聞いたら、違う専門家の委員は、それはシンボリックなものだと、広告効果があるだろうという、そういう話でした。ですから、これをやると一体どういういいことがあるか、どういう悪いことがあるかという細かい点は、詰めておりません。それはこの審議会で詰めろという、こういう趣旨だろうと思います。
ほかに何かございますか。
それでは古谷さん、私からお伺いしてもよろしいですか。著作権侵害を非親告罪としますと、最近、新聞などによく、学者の先生が盗作をした、あるいは新聞記者が盗作をしたと載っています。それで、本人もすみませんと辞任していて、会社や大学から処分もおりているということは新聞に載っているわけですね。10年以下の懲役で、しかもそのパクリが明らかなような事件で新聞に載って、10年という重い罪で、それで告訴がない場合はどうなるのでしょうか。もし、非親告罪にした場合、やっぱりそれはもう重いから、すぐ警察が乗り出すのでしょうか。
【古谷警察庁生活安全局生活環境課知的財産権保護対策官】
おそらく剽窃だとか、いわゆるパクリみたいなものというのは、ネット上などを中心にしまして非常に大量にございますので、どこで線引きをするかというのは非常に迷うところかと思います。社会的に非常に反響を呼んだという事件であれば、関心を持って見るとは思いますが、関係者が全部いいよといっているような場合にまで、刑事手続にのせて、懲役10年、まあ10年にはならないでしょうけれども、仮にしたとして、それはいかがかなという感じが、個人的にはいたしております。
【中山主査】
ただ、10年の犯罪が明らかだということが新聞に載っていても、これは権利者がうんと言わなければ、捜査しないでしょうかね。
【古谷警察庁生活安全局生活環境課知的財産権保護対策官】
大きな事件であれば、全く状況を調べもしないということではないのかもしれません。ただ、特に知的財産権の事件というのは、商標法にしましても何にしましても、立件している数というのは、本当に氷山の一角でしかないということですので、警鐘を鳴らすという意味での検挙というところが非常に強うございますので、犯情において悪質であるものというものが中心になっていくというところは出てくると思います。でも、犯罪は犯罪ではないかと言われると、痛いところはあるのでございますけれども、それを処罰までするのかどうかという、国民感情や、そういった相場観といったものを踏まえていくことになるのだと思います。
【中山主査】
確かに著作権侵害にはいろいろな対応があって、暴力団が絡んでいるような悪質なものから、新聞記者や学者がつい期限に間に合わずにちょっとやっちゃったというものなど、いろいろありますので、一律に非親告罪にすることがどうかと、こういうことをお伺いしたかったわけですけれども。
【古谷警察庁生活安全局生活環境課知的財産権保護対策官】
暴力団が絡んでいるということになりますと、大分、警察の取組み姿勢も変わってきます。おそらく所管部局も変わってくる可能性もございますけれども、そういったもろもろの事情ということだと思います。
【中山主査】
立法の方法として、例えば常習犯とか、あるいは組織暴力団とかそういうことに絡めて、それだけを非親告罪にするということは、立法技術上は可能でしょうか。
【古谷警察庁生活安全局生活環境課知的財産権保護対策官】
常習ということは、特に悪質性が高いということでございますので、警察庁から申し上げることではないのかもしれませんけれども、そういうことはあるのかもしれませんし、また暴力団というのも、組織的にやっているというようなことは、おそらく営利性が背後にあるというようなこと等で、違法性が通常の著作権侵害とは別途であるというようなことを考えれば、別途の対応をしていくということも、理屈としてはあり得るのかなというふうに思います。
【中山主査】
法技術としてそれを切り分けて、非親告罪とすることも可能だということでしょうか。
【古谷警察庁生活安全局生活環境課知的財産権保護対策官】
ただ、暴力団というのを身分として特定するというのは、なかなか難しい部分はあると思いますので、そこはかなり検討が必要だと思いますけれども、何らかの常習性とか営利性とかいうようなことをメルクマールにしてやるということはあるのかもしれません。その中に、実際にやっているのが暴力団がかなり多いといったような実態になってくるということではないかと思います。
【中山主査】
わかりました。
ほかにございますか。どうぞ、苗村委員。
【苗村委員】
産業財産権と比べて、この著作権の違いの一つが無方式主義ですが、この内偵の段階なり、そもそも端緒を入手する段階で、何かの影響があるのではないかと思いながら、この下のメリット・デメリットを伺いながら思いついたことなのですが、例えばもし非親告罪化するとしても、少なくともその対象となる原著作物は、登録されていることを条件とする、といったようなことが考えられるでしょうか。
【山元法務省刑事局参事官】
極めて著作権法内部の話という感じがいたしまして、そういうような制度が組まれたときに、例えば登録するということをどういう著作権との中で意味合いを持たせるのか。それに基づいて、著作権の主体の問題と公的な管理の問題との中で、被害者の意図をどこまで重視すべきなのかということを議論した上でということになると思いますので、必ずしも私から、それであればどうですという意見は言いにくい御質問だったように思います。そのあたりの御議論で整理をされた上であれば、あり得るのかもしれませんが、特定の同じ犯罪類型の中で、こういう権利については親告罪でない、こういう権利で、なおかつ親告罪であるという立法は、ちょっとこれまでは想定されてませんし、法技術的には問題があるという気はいたします。
【中山主査】
ほかに何かございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、どうも今日は貴重な御報告ありがとうございました。
それでは、時間ですが、茶園委員が、先ほど海賊版の広告行為の際に手を挙げておられましたので、何か御意見ございましたら。
【茶園委員】
すみません。広告行為のことで質問があります。これは立証の問題なのかもしれないのですけれども、前に、この小委員会にコンピュータソフトウェア著作権協会さんがお越しになられたときに、どのようなことを行いたいかについて話されていたと思います。海賊版の広告行為を侵害行為とした場合に、その行為に対して、行為者をどのように考えるかはともかく、差止請求とか、損害賠償請求をするという、特に訴訟でそういう請求をするというのだったら、話は別だと思うのですけれども、行いたいこととして話されていたのは、例えばプロバイダに対して、直ちに削除してほしいということだったと思います。
その部分だけを考えてみますと、例えば海賊版の広告行為を侵害行為だとしても、プロバイダにとって、見えるのはその広告だけであって、その広告だけを見て、侵害行為かどうかというのを判断するということになるでしょうが、海賊版を販売しようとする、広告行為をしようとする人は、当然、広告だけでは侵害行為とは分からないような対応をとるだろうと思います。今でしたら、広告行為は侵害行為にならないから、そのときにもおっしゃっていたと思うのですけれども、広告を見れば、若干、真正品と違うので、そこで海賊版とわかるのですということだったですが、広告行為を侵害行為だとすると、おそらくそういう違法行為をする人は当然、真正品を広告に出すことによって、広告を見ただけではわからないようにするのではないかと思います。だとすると、プロバイダに対して迅速にその広告行為をやめさせるということは、実際には行うことができないということになるのかなと思いまして、その点に関してどのような予測を持っておられるのか、お聞かせいただきたかったのです。
【中山主査】
事務局にお伺いしたいのですけれども、海賊版の広告行為についてはまだこれから議論する時間はございますでしょうか。今日で終わると、あまりにもフラストレーションがたまりそうなのですけれども、よろしいでしょうか。
【吉田文化庁長官官房審議官】
ええ、まだ時間はございます。
【中山主査】
では、今の茶園委員の御意見に対するお答えだけを事務局のからお願いします。
【大和著作権課課長補佐】
実効性の問題で、ひと目で海賊版とわかるようなものならまだしも、今、茶園委員おっしゃったようなケースがある場合に、権利者としてぎりぎり、どこまで押さえたいのかというのは、また事務局としても、関係者の意向を確認しながら、どういうふうな方策が可能か、これちょっとこれから研究してまいりたいと思います。
【中山主査】
それでは、広告の点についてはまた後日、議論するということにいたしまして、本日の会議はこれで終了したいと思います。
親告罪の在り方につきましては、本日の御議論を踏まえまして、次回の本小委員会で議論の整理を行っていきたいと思います。またデジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方の一部につきましては、ある程度、議論を整理することができました。海賊版の広告行為はもう一回、議論するといたしまして、それらの点につきましては、ある程度、議論の整理ができましたので、次回に整理をして出していただきたいと思います。次回からは、別の検討課題といたしまして、平成18年1月の分科会報告書から、引き続き検討課題となっております権利制限の見直しについての議論に入りたいと思います。
それでは最後に、事務局から何か説明、事務連絡がございましたら、お願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
次回の日程でございますけれども、6月29日金曜日の10時から12時、アルカディア市ヶ谷で開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
【中山主査】
アルカディアのほうですので、お間違いのないようにお願いいたします。
それでは、本日はこれで文化審議会の著作権分科会の第4回法制問題小委員会を終了させていただきたいと思います。長時間ありがとうございました。
(文化庁著作権課)
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