著作権分科会(第24回)議事録・配付資料

1.日時

平成20年1月30日(水曜日)10時〜12時

2.場所

如水会館 2階 「オリオンルーム」

3.出席者

(委員)

青山、石坂、大林、大渕、岡田、加藤、金原、河村、後藤、迫本、佐々木、里中、瀬尾、高井、玉川、道垣内、常世田、土肥、永井、中田、中山、野原、野村、福王寺、松田、三田、宮川の各委員

(文化庁)

高塩文化庁次長、吉田長官官房審議官,山下著作権課長 ほか関係者

4.議事次第

  1. 開会
  2. 法制問題小委員会の審議の経過について
  3. 私的録音録画小委員会の審議の経過について
  4. 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の審議の経過について
  5. 国際小委員会の審議の経過について
  6. 閉会

5.配付資料

資料1
  平成19年度 法制問題小委員会の審議の経過について
資料2
  平成19年度 私的録音録画小委員会の審議の経過について
資料3
  平成19年度 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の審議の経過について
資料4
  平成19年度 国際小委員会の審議の経過について
参考資料1
  文化審議会著作権分科会(第23回)議事録
(※(第23回)議事録・配付資料へリンク)

6.議事内容

10時 開会

【野村分科会長】

 定刻が参りました。御出席予定でお見えになっていない委員の方がまだ2、3名おられますけれども、ただいまから第24回文化審議会著作権分科会を開催いたします。
 本日は御多忙の中、御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、公開としたいと思いますが、このことについて特に御異議はありませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野村分科会長】

 それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことにいたします。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 お手元の議事次第の下半分に配付資料の一覧を記載しております。本日は資料1から資料4までの4点、小委員会ごとに審議の経過について1つずつの資料、それから参考資料として、前回10月の分科会の議事録を御用意しております。
 それから、机上だけですが、10月の分科会で配付されました法制問題小委員会、私的録音録画小委員会、過去の著作物等の小委員会のそれぞれの10月の提出資料を置かせていただいております。
 過不足等ございましたら、御連絡をお願いいたします。

【野村分科会長】

 それでは、議題に移りたいと思います。
 昨年3月以降、各小委員会におかれましては、それぞれの分野において精力的に御検討いただいてきましたが、本日は今期の当分科会の最後の会議となりますので、各小委員会の審議経過について、それぞれの主査より御報告いただきたいと思います。
 まず、法制問題小委員会の審議経過について、中山主査より御報告をお願いいたします。

【中山委員】

 それでは、概要につきまして私から御報告をさせていただきまして、その後、事務局から補足説明をさせていただきたいと思います。
 今期の検討課題や審議の状況につきましては、昨年10月の著作権分科会におきまして中間まとめとして報告したところですが、その後、1カ月間の意見募集を行い、その結果も踏まえた検討を行うとともに、機器利用時・通信過程における一時的固定及び私的使用目的の複製の見直しといった残された検討課題についても、あわせて審議を行ってまいりました。
 これらの検討の結果を踏まえますと、一定の結論の方向性を得つつも、さらに整理が必要な事項が残されている検討課題が複数ございましたので、今回の報告は期末の最終的な報告書とはせず、審議経過報告として、来期も引き続いて必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
 それでは、中間まとめで御報告いたしました点のほか、前回の本分科会でいただいた意見や意見募集の結果を踏まえた主な検討につきまして、御紹介申し上げます。
 まず、海賊版の譲渡告知行為の防止策につきましては、譲渡告知行為の外形からは、海賊版の譲渡告知行為なのかどうか判別しにくい等の懸案が寄せられておりまして、制度上の工夫等についての検討が求められるといたしました。
 次に、親告罪の範囲の見直しにつきましては、中間まとめに対する意見募集でも多数の慎重意見が寄せられておりまして、中間まとめにあるように、慎重な見極めが必要との方向性が適当といたしました。
 次に、薬事関係の権利制限につきましては、権利制限の正当性の有無や、国際条約におけるいわゆるスリーステップテストとの関係等について見解が大きく分かれておりまして、今後、実態を精査の上、検討する必要があるといたしました。
 次いで機器利用時・通信過程における一時的固定につきましては、平成18年1月の著作権分科会報告書で既に一定の結論が書かれてはおりますが、その時点からの技術の変化等を踏まえ、要件の再検証を行うといたしました。
 このほか詳細につきましては、事務局から説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 引き続きまして、資料1に基づきまして御報告いたします。
 検討事項が多々ありますので、今、中山主査から御説明のあった残りの事項について、御報告いたしたいと思います。
 1ページに今期の審議の経過が書いてありますが、意見募集につきましては、10月から11月にかけての1カ月間行いまして、合計546通の意見が寄せられたところでございます。10月の分科会以降、前回の本分科会でいただいた御意見ですとか、意見募集の結果を踏まえて検討を行いましたが、この資料1は、中間まとめの要約に、その後の意見募集等を踏まえた検討課題、検討の視点などを書き加える、そういう構成になっております。
 それでは、課題ごとに簡単に御説明させていただきます。
 まず2ページ、デジタルコンテンツ流通促進法制でございます。
 こちらは10月の分科会で報告されたものから大きな変化はございませんが、最後の段落の部分で、意見募集などを踏まえ、中間まとめで掲げられました2つの課題、インターネットでの過去の著作物の二次利用上の課題、インターネット上の新たな創作利用形態に伴う課題ですが、その他に、権利制限の見直しなどに関連する課題も必要に応じて射程に含めつつ、総合的に検討を進めるという観点を追記しております。
 次のページに行っていただきまして、(3)権利制限の見直しでございます。
 こちらは10月の分科会でも多々御意見をいただいた部分でございますけれども、1番目の薬事関係は、先ほど中山主査から御説明がありましたように、意見募集で、基本的な部分で大きく意見が割れておりまして、その点につきまして3ページの一番下に記載してございます。権利制限を行うことの根拠、それから国際条約との関係などについて意見が分かれているということでございます。
 4ページ、障害者福祉関係でございます。こちらの権利制限は、中間まとめでも現行の権利制限の範囲を拡大するという方向をいただいておりまして、中間まとめに対する意見募集でも、おおむねこの中間まとめの基本的方向性と趣旨を同じくする意見が多く見られたのではないかと思っております。ただ、意見募集では映像資料の分野で幾つかの懸念が寄せられておりまして、それらにつきまして適切な制度設計や運用を確保されるよう留意すべきということで、留意事項を書かせていただいております。
 次は、3ネットオークション関係です。こちらも、この分科会では幾つか御意見いただいた部分でございまして、中間まとめでは「権利者の利益を不当に害することがない」という条件のもとに権利制限をすることが適当とされていたわけですが、懸念事項としましては、必要以上の画像掲載が行われたり、不法に入手されたものの譲渡を助長するといった懸念が寄せられましたので、こういった部分につきましても、権利者の利益を不当に害しないための条件の検討を進める中で、留意すべきであると記載してございます。
 その他の権利制限につきましては、10月の分科会でも幾つか御意見ございましたが、特に図書館関係、学校教育関係については、この小委員会の引き続きの検討課題になっておりまして、それにつきまして記述をつけ加えてございます。図書館関係は、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で既に一部分について検討が進められておりますので、今後、その進捗状況も踏まえて、適宜検討を行うという形で記載しております。
 そのほか、全体にまたがる話ですけれども、この権利制限の見直し以外の検討事項でも、いろいろと権利制限に関する話題が目立ちましたので、そういった背景を把握しつつ、必要に応じてより総合的、広範な視点から権利制限のあり方を検討することが適当である点を追記しております。
 5ページ(4)私的使用目的の複製の範囲の見直しでございます。
 こちらは昨年の著作権分科会報告書で一定の審議結果が示されておりますが、その中で、私的録音録画小委員会の結論を踏まえて、必要に応じて私的複製の在り方全般について検討を行うこととされていた課題でございます。
 私的録音録画小委員会では録音と録画に関して、意見募集などもいろいろ踏まえまして、第30条の適用範囲の見直しについて御検討されておりますが、10月の本分科会でもいろいろ御意見がありましたように、録音録画以外にも、例えばプログラムの著作物等に関しても同様の検討が必要かなどについて、今後、実態を踏まえながら精査を行うことが適当としております。
 (5)検索エンジンの部分です。
 ここは中間まとめとほぼ同様ですが、権利制限の対象範囲とか違法複製物への対応などの論点について、実務の実態に照らして現実的に対応可能な範囲、権利制限の趣旨などを踏まえつつ、早急に結論を得るよう検討を進めることにしております。
 (6)は、先ほど中山主査から御説明がありましたので飛ばしまして、その次の6ページ、(7)ライセンシーの保護等の在り方、(8)いわゆる「間接侵害」等でございます。
 こちらの2つは、中間まとめでも引き続き検討するといった趣旨の御報告でしたが、中間まとめへの意見募集などを踏まえて、いただいた意見の検討の観点を付記しております。
 例えば(7)では、最後の2行あたりに記載しておりますが、実務の実態に即した検討を続けるよう要望があったので、より適切な方策の検討を含め、検討を続けるという記述でございます。間接侵害の方も、意見募集でさまざまな意見がございまして、侵害とすべき類型を個別に列挙すべきという意見ですとか、立法によって要件を硬直させるべきではない等、非常に幅広い意見がございましたので、これらの意見を踏まえつつ、さらに検討を続けることにしております。
 こういった形で、残された検討課題が複数ありましたので、来期も引き続いてこれらの検討を行いつつ、速やかに結論が得られるように引き続き調整、検討を行って、結論が得られたものから適宜報告をまとめることとしたいということで、今期の審議経過報告を作成しました。
 以上でございます。

【野村分科会長】

 ただいまの御報告について、御意見ありますでしょうか。

【松田委員】

 デジタルコンテンツの流通促進法に関して、10月の中間まとめのときには政府等の見解につきましても説明がなされておりまして、平成19年までの閣議決定が示されております。
 つい最近だったと思いますが、特に日本のコンテンツを海外における流通を促進する必要性があるということで、閣内にそういう組織ができて、それを促進しようではないかという報道がなされました。これは報道しかないものですから、私はよくわからないのですが、これは従前の閣議決定と格別な差異がないのか、もしくはどういう方針をお持ちになっているのかといったことをお聞きしたい。せっかく平成19年までの資料を入れてありますので、それとの整合性があるのかないのか、どういう方針なのかといったことも加えられたら加えた方がいいと思うのですが、その点、事務局はどのように対処するお考えでございましょうか。
 1月中にあったのですが、経産省の方でまとめた「マルチユースの海外における発展」それを閣内でさらに促進するというのが1月中のニュース、多分1週間か2週間ぐらい前だったと思いますが、小さいニュースが載っていました。これについてはいかがでしょうか。

【吉田長官官房審議官】

 今、松田委員がおっしゃいました、海外へのコンテンツの展開を促進するために政府内に何かそれを取りまとめるような組織ということについては、それぞれの省庁がそれぞれの所管する分野において、いろいろとその構想は練っておられるということはあると思います。
 また、私は知財推進事務局の次長も兼務しておりますので、そちらの方で、ただいま知財計画の策定に向けていろいろな準備作業を進めておりますが、その中で、コンテンツの海外展開についてさまざまなアイデアを出していただいて取りまとめをしている中に、官民挙げて日本のコンテンツを海外にどんどん展開していくためのさまざまな施策といったものはもちろん出てきておりますけれども、恒常的な本部みたいなものを設けてというところまでは、私はまだ承知しておりません。
 なお、最初におっしゃいましたデジタルコンテンツ流通法制の関係でございますけれども、昨年5月末に策定されました知財計画2007の中では、今後2年以内にデジタルコンテンツ流通法制の整備を進めるという形になっております。それにどのように対応していくかということで、著作権分科会でもデジタルコンテンツ流通法制について御議論をいただいておりますけれども、ここに整理しましたように、二次利用に関する問題と新たな創作にかかわる問題と両面ありまして、二次利用につきましては、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の方の議論と相当重なってまいりますので、そちらの議論を見守る。創作の部分につきましては、法制問題小委員会で引き続き検討ということでございますので、2年ということで、まだ1年ちょっと余裕がございますけれども、その点について、引き続き来期、御審議をいただければと考えております。

【岡田委員】

 コンテンツ流通促進法に関連して、国内のコンテンツ流通の促進も結構ですし、海外へもどんどん展開していただきたいと思いますが、流通を促進しようとするあまり、権利制限をしようという風潮が強く感じられております。検討は慎重にしてほしいし、そして、その検討も権利者の保護を大前提に考えてほしいと、ここで切にお願いしておきます。

【金原委員】

 権利制限についてお願い申し上げたいと思います。
 この報告書自体については、継続検討するということですので、それはぜひ次回の法制問題小委員会で慎重に検討していただきたいと思います。
 この権利制限、特に薬事の問題で、迅速な対応が必要だと挙げられておりますが、医療の現場において迅速に対応しなければならない場合に、本当に文献の複製が必要であるかどうかは慎重に議論していただきたい。私も医療に近いところにおりますので、患者の命が危機に瀕しているときに、文献を実際に使うことはほとんどあり得ないだろうと考えております。その辺りの問題について、ぜひ実態に則した検討をしていただきたいと思います。
 それから、スリーステップテストの関係では、当然権利者の利益を不当に害しない、あるいは通常の利用を妨げないという観点で検討しなければならないと思っておりますので、権利制限することによって通常の利用を妨げない、あるいは権利者の利益を不当に害しないことの立証責任は、要望を提出している側でするべき問題であると思っております。
 この2つの点について、ぜひ慎重に検討を継続していただきたいと思います。

【加藤委員】

 2点コメントさせていただきたいと思います。
 まず第1に、今回は最終報告書に至らなかったわけですけれども、取り扱っていただいている内容が非常に多岐にわたっているということで、合意形成が難しい問題もありますが、一方では、かなりコンセンサスが得られつつある項目もあると思います。来期以降、検討されるに当たって、コンセンサスが得られたものから順に制度改定を進めていただくのがよろしいのではないかと思います。
 例えば、権利制限の見直し規定の中でも障害者福祉関係の規定ですとか、さらに検索エンジンにかかわる法制上の問題、この辺りは中間取りまとめ以降もおおむねその方向でコンセンサスが得られつつあるのではないかと思います。そういうことにぜひ御配慮いただきながら、決められるものは早く決めていただくのがよろしいかと思います。
 2点目は、今、金原委員からも御指摘がございました薬事関係の権利制限の見直しの点でございますが、中間まとめに対して、基本的な部分に問題があるのではないかというような御意見が、特に海外からもあったと聞いております。中間まとめのどこに問題があると考えていらっしゃるのかをよく調べていただいて、その結果を踏まえて法制小委員会で再度、日本としてどうすべきかをしっかり議論していただきたいと思います。

【福王寺委員】

 権利制限の見直しの中で、ネットオークションなどということで出ております。ネットオークションはもちろんですけれども、美術作品のオークション会社が今現在、日本に幾つかございますけれども、そこが発行しておりますオークションカタログ、これは印刷物です。図録の状態になって本になっているのですが、そういうものの中に、著作権者の許諾をとって掲載しているものと、許諾をとらずに掲載しているものがあります。今のそういう状況の中で、ネットオークションの方で許諾なしにこういうことができるようになると、印刷物であるオークションカタログの今の状況に追い打ちをかけるようなことになるのではないかと思うのです。
 印刷物として出す場合には許諾をとるという大前提はあると思うのですが、そういうものに対して、ネットオークションのそういう状況がとても心配されます。オークションカタログについては、物故作家もありますし現存作家も出ておりますが、そういう状況の中で、許諾なしに行いうるようにすることが適当というのはいかがなものかと思います。
 これについては前回、10月12日のこの会議でも申し上げましたけれども、慎重に審議していただきたいと思います。

【常世田委員】

 今回、報告という形ではないということでありますので、基本的には法制化への手続がとられないと理解してよろしいかと認識しております。
 非常に残念なのは障害者福祉関係でありまして、今回「情報アクセスの保障」「情報格差是正」とはっきり文言でも表現されるようになったことは非常に重要なことだと思いますが、これまでも申し上げていますように、知る権利ですとか学習権の保障という基本的な人権と言えるような、そういう法の前での健常者との平等が保障されていないという非常に大きな問題が存在していると思います。
 今回、パブコメでも賛成という意見が多かったということがありますので、本当であれば、この部分だけでも法制化に向かうべきだと考えております。確かに、映像関係の部分での健常者への流出防止についての課題はありますけれども、それであれば、映像以外の部分だけでも法制化に取り組むべきだと考えております。

【三田委員】

 インターネットの発達によって過去の著作物の二次利用が盛んになりつつありますし、これからなお盛んにしようと言われているわけでありますけれども、我々が文化芸術を享受できる時間は限られております。1日は24時間でありますし、その間、寝る時間も働く時間もありますので、楽しむ時間というのは限られているわけですね。インターネットで昔の映画や昔のテレビ番組を見ている時間には、今、放送されているテレビを見ることはできないわけです。ですから、過去のものが利用できるということは、今つくられている芸術を楽しむ時間が少なくなっていくということであり、現行のクリエイターにとっては大変重要な影響が出てくることにもなります。
 今、言われているネットの利用を促進しようというのは、言ってみればネット業者さんとネット機器のメーカーさん主導で動いておりまして、そういう人たちの中には、過去の著作物というのは既にもとをとったものであるから、二次利用に関してはただでもいいのではないか、あるいは非常に少ない利用料とか補償金でクリアできるのではないかといった考え方をお持ちの方が大変多いと思います。
 しかし、今、言いましたように、過去のものが利用できるということは、これから新たにクリエイティブなものをつくっていく人々にも大きな影響をもたらすということがありますので、文化芸術を守るという点でも、ただ二次利用を促進すればいいということではなくて、文化をどのように守っていくのかという視点が必要であります。どうも昨今の動きを見ておりますと、ネット業者さんとメーカーさん主導で、文化をつくっている人たちの立場がなおざりにされる傾向があるように思います。
 私たちは、今年に入ってからですけれども、「Culture First」という運動を始めました。これは「初めに文化ありき」ということでありまして、文化芸術がなければコンピュータもテレビもただの箱であります。文化を大事にするということは、経済産業省さんとかよりも文化庁さんに頑張っていただきたい、文化を守っていただきたいということであります。
 そういう基本的な姿勢で、単に便利になるように法律を改正するのではなくて、文化を守るという視点で新しいシステムについて考えていただきたいと切望します。

【瀬尾委員】

 ネットオークションとか検索エンジンの権利制限、その他、今回テーマになっているということですけれども、実際にインターネット上の定義がとてもあいまいで、何だかわからない状態になっている、しかし必要性が生じてきているということで、特に、私は実際、写真を撮っていますが、写真もデジタル化しているし、アナログからデジタルへの移行を非常に感じています。
 今、やっていることを1つずつの事柄で「これはいい」「悪い」だけではなくて、アナログからデジタルになってインターネットでコンテンツが流通する時代の法制と仕組みを我々は考えているのだという視点を強く持たなくてはならない、場当たり的に絆創膏を貼っているような処置だけではだめだと、私は非常に強く感じております。
 サーチエンジンの方向性は出ている、ネットオークションが出ていない。ネットオークションに関して、ざるになってしまうのではないかという懸念を前回も申し上げましたけれども、手法として、きちんとデジタルに対応していく新しい枠組みと定義をまず議論すべきである。ですので、このネット関係に関しては、大きなところから見たことをまず考えて決めていかないと、場当たり的に拙速になってもいけないし、ざるのような法律をつくってしまうと、それこそ後々の責任になってしまうと思います。
 ですので、この辺りの問題は、特にここは著作権分科会ですので、別々の事象ではなく全体を考えた上での議論をしていったらよいのではないかと思います。
 もう一つ、先ほどから文化という話がいろいろ出ておりますけれども、インターネットが流通ということだけで語られてしまうということではなくて、インターネットによって今後、デジタルの文化がどのようにあるのかという文化論も、実はそういう議論の根底にはあるのではないかと思います。ですので、確かにこの中では権利制限もしくは権利の拡大、そういう二方向的な考え方があるかもしれませんし、具体的にはそういう問題が重要だと思います。
 ただ、やはり今回、特に今期、強く感じているのは、デジタル時代への対応をこの著作権分科会で方向性を出していく、そういうことがあってもいいのかなと思っておりますので、今日が今年度最終ということでちょっと言わせていただきますけれども、特に法制問題小委員会のそれぞれのテーマに関しては、来期、そういう大きなところから見た方向性といった点についてもぜひ皆さんの御意見をいただいたり、方向づけをしていったりすると、よりスムーズになるのかなと思います。

【野村分科会長】

 他に、いかがでしょうか。
 それでは、法制問題小委員会の御報告については、このくらいにしたいと思います。
 次に、私的録音録画小委員会の審議経過について、中山主査より御報告をお願いいたします。

【中山委員】

 それでは、私的録音録画小委員会の審議経過について御報告いたします。
 私的録音録画小委員会では、昨年10月12日に著作権分科会で中間整理を御報告した後、その中間整理につきまして、10月16日から11月15日までの間、意見募集を行い、8,720通、内訳としては団体から110通、個人から8,610通の御意見が寄せられました。
 意見募集の結果につきましては、11月28日の私的録音録画小委員会において概要を紹介し、意見交換を行いました。12月18日の私的録音録画小委員会におきましては、意見募集において違法複製物及び違法配信からの録音録画の取り扱いに関する意見の割合が約7割に上ったことを踏まえまして、改正の必要性、利用者保護のための措置、キャッシュの取り扱い等について改めて集中的に検討を行いました。
 また、同日、これまでの議論を踏まえ、将来における著作権保護技術の発達・普及を前提に、娯楽目的の私的録音録画については、著作権法第30条の私的使用のための複製に関する複製権の制限の対象外として、契約による解決に委ねることを内容とする事務局案について、検討を行いました。
 さらに、本年1月17日には、著作権保護技術と補償金制度について、機器等のメーカーに一定の負担を強いることは関係者の理解を得られなくなってきており、現行の補償金制度による解決は今後縮小し、他の方法による解決に移行すること、音楽CDからの録音と無料デジタル放送からの録画については、当面補償金制度で対応を検討する必要があること、他の利用形態で権利者への保障の必要性が否定されない分野については、契約モデルによる解決に委ねることとし、利用者の利便性の確保を前提として、例えば適法配信など可能な分野から、第30条の適用範囲を段階的に縮小していくことを骨子とする事務局案について、検討を行いました。
 これらの事務局提案につきましては、現在、関係団体において検討されている状況でございます。したがいまして、今期の私的録音録画小委員会では、報告書の取りまとめはできませんでしたが、関係団体における検討が進展することを期待しつつ、来期も継続して検討する必要があると考えております。

【野村分科会長】

 ただいまの御報告について、御意見をお願いいたします。

【石坂委員】

 違法サイト等からの私的録音録画の取り扱いの件ですが、今期の小委員会では、報告書の取りまとめができなかった故に審議経過報告の形になったと伺いましたが、違法サイト等からの私的録音録画につきましては、著作権法第30条の適用範囲から除外する方向性が見えていると理解しております。
 去年11月に日本レコード協会が行った調査によりますと、携帯電話向けの違法音源提供サイトからのダウンロード数は年間で約3億9,900万ファイルと推計されます。この3億9,900万ファイルというのは、有料であった場合の正規の金額に換算しますと約860億円に相当します。これは日本のパッケージのシングル盤の年間の総売上額よりも大きい。さらに、正規の着うた、着うたフルの配信ダウンロード数、約3億2,700万ファイルが売上では約560億円でございますので、はるかに違法の方がまかり通っていることになります。
 ネット上の違法な流通は、かつては考えられないほど瞬時かつ大量に行われるために、権利者の被害の深刻さの度合いは日々急速に深まっております。こうした事態が正規の音楽配信ビジネスを大きく阻害している実態から、違法サイト等からの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外する著作権法の改正を、ぜひ早急に実現していただきたいと考えております。
 2点目は、私的録音録画補償金制度の見直しです。
 私的録音録画から生じる権利者の不利益がこれ以上拡大することのないように、ぜひ早期の問題解決に向けまして、関係者の皆様方のさらなる御努力をぜひお願いしたいと思います。

【迫本委員】

 私的録音録画小委員会の審議経過について申し上げる前に、今、私は映像産業振興機構というNPO法人の仕事にもかかわらせていただいておりますので、日本における文化ということを少し言わせていただきたいと思います。各国の文化戦略を見ますと、欧米はもちろんのことアジア、インド、アフリカ等に至るまで、文化産業を国家の戦略的事業という位置づけで非常に積極的にやっていると思っておりまして、私はそれに対して、文化庁さん始め本当にいろいろよくやっていただいていると思うのですが、もっと国家横断的に、省庁を超えて、単年度予算を超えて取り組むような形にしていかないと、日本の文化産業はどうなるのかという危機感を持っております。
 我々に諸外国と比べて欠けている視点は、文化に触れることによって、例えばアメリカの映画だけではなく音楽、文学等に触れることによってどれだけアメリカ人が得しているか、諸外国の方が日本の文化に触れることによって日本の国益にどれだけ資するかという観点を持って立ち向かわなければならない時期に来ているという点です。もう各国とも本当に文化戦略に対する取り組み方というのは真剣かつ大規模に、ダイナミックに、スピーディにされている中で、日本はこれでいいのかという危機感を非常に持っております。
 そのことを最初に申し上げて、文化庁さんだけでなく各省庁と協力しながら、日本のためになるようなことを積極的にやっていかなければならないのではないかと思っております。
 この審議経過について申し上げますと、地上デジタル放送におけるダビング10が6月から開始されます。この議論は一応終息した形になっておりますけれども、映画に関して申しますと、今もって本当に必要かと思っております。一般のお客様、利用者の方々で、映画を10回コピーして御覧になる方がどれだけいらっしゃるのか。これは映画業界を育成するということだけではなくて、企画を活性化させて本当に多様な内容をお客様に楽しんでいただくという意味から、本当に利用者の方々にも資することになるのかということで疑問には思っておりますが、決まったことですからそれはさておき、最低限度、補償金はせめて諸外国並みに、やはり権利者に与えられてしかるべきだと思っております。
 それに関しましては、来期の小委員会で補償金制度の存続を前提に具体的な検討が行われると聞いておりますので、意見はそこでの話に譲るといたしまして、私は、そこでせっかくそういう議論をするのであるならば、そこの議論が本当に実質的になるようにと思っております。対象機器として「次世代DVD」と称されるBlu-rayディスクやHD DVDというのは、録画専用の機器・媒体であるために、これを政令によって速やかに対象機器及び媒体に指定していただかないと、せっかくそこで議論しても実質的な議論は実らないのではないかと思いますので、そのことについては強く要望させていただきたいと考えております。

【玉川委員】

 私的録音録画小委員会について、今年度は17回という回数で大変エネルギッシュに御議論いただいたということで、主査の中山先生、委員の皆さん、また文化庁の事務局の皆さん、大変御努力をいただいたということで、敬意を表する次第でございます。
 ただ、この小委員会が立ち上がってから既に2年が経過して、その前段階からいきますと4年経過しているわけですけれども、ここで何らかの結論に至っていないことは大変残念なことでございます。
 私どもとしては、私的録音録画補償金制度は番組を録音できるという視聴者の利便性を守りながら、権利者の正当な利益を確保し、両者のバランスを図るために必要不可欠な制度であると考えておりまして、来期、引き続き御検討ということでございますので、ぜひ関係者の前向きな議論をお願いしたいと思っております。
 特に今回、中間整理が出されまして、かなりコンセンサスが得られたものもあります。こういうものについては、結論が得られたものから順次法制化、制度整備をすることはできないのかと考えております。ぜひ結論が出たものから順次、制度整備をしていただきたい。
 特に現状におきまして、中間整理の中では一定のコンセンサスを得られていると考える記録媒体内蔵型の録音録画機器はもとより、迫本さんからも御発言がありましたとおり、いわゆる次世代DVD、Blu-ray、HD−DVDですね、これらが対象機器、媒体になっていないことは、現在の対象機器等との間で著しく公平性を欠いているのではないでしょうか。こういうものについては至急に補償金制度の対象に追加していただくようお願いしたいと考えているところでございます。

【大林委員】

 文化を大切にするという視点から言えば、ものを創って、それを利用する、そして楽しむという、3つの立場にいる3者それぞれが互譲互恵の精神でこの補償金制度をやっていくことは、絶対必要だと思います。
 具体的な問題としては、6月には先ほど出ましたいわゆる「ダビング10」という機能を搭載した機器が発売されます。もう検討、検討と言っている段階ではなく、5月までには、制度設計まできちんとした結論を出すぐらいのスピード感でやらなければ、現実の事態だけが先行していってしまいます。
 先ほどの違法サイトの問題にしても、HD−DVDやBlu-rayのAACS機能を解除したり、暗号を復号化するソフトを付録につけたり、違法サイトの利用を煽っていたりする雑誌もどんどん発売されています。これが日常です。
 録音録画機器を売り出す方々は、決してこれをボランティアでやっているわけではないでしょう。そこで利益を得るビジネスとしてやられている。人類のここ数千年の文化史の中で、非常にいい言葉が残されている「論語」の“憲問編”に、「利を見ては義を思う」という言葉があります。利得を前にしては、その道義を考えることが必要であろうということです。文化とビジネスの問題は、これに尽きるのではないかと思います。
 ぜひ、6月のいわゆる「ダビング10」機能搭載の録画機器の発売前に、議論が集約されて、三方一両損のような大岡裁き、即ち三者それぞれが互譲互恵の精神で補償金制度を維持し、文化におけるもの創りの「創造のサイクル」が確立していくといういい方向へ向かえないものかと考えています。

【岡田委員】

 2、3名の方たちのお話と重複するところがあるかと思いますが、この審議はもう4年も経過しているわけで、その間にいろいろな私的録音録画用の機器も売れているわけでして、売れているということは権利者の利益が損なわれているということですので、先ほど玉川委員もおっしゃったように、一日も早く、できるところからでもいいから結論が出るものは出して、そして対処していってほしいと思います。
 そして、先ほどから文化ということが盛んに議論の中に出てきますが、私も、この議論はお金を払う人とお金を頂戴する人との綱引きであってはならないと思っております。「Culture First」という運動が起こりましたが、初めに文化ありきで、文化を創造する人、文化のクリエイターを支えるという意味もあります。そして、その文化の創造者を支えることで、文化の恩恵を受けて楽しく暮らしていけるわけで、やはりそれはみんながみんなをカバーしつつ世の中が回っていくという考え方ではないかと思いますので、やはりここはお金のことにこだわらないようにして、もう少し広い意味から、広い心から物事を考えていっていただきたいと思います。

【永井委員】

 この審議会は長いことやっておりますが、技術の発展と文化がぶつかり合う、大変判断の難しい審議であろうと思います。
 ただ、1つ申し上げたいのは、ここに「娯楽目的の私的録音録画」とありますが、この「娯楽」という範囲が私は非常に難しい、特定しにくいと思います。エンターテイメントの中にも教養的精神を刺激するようなものもございますし、この範囲をどこで判定するのだろうという一つの疑問がございます。
 それから、文化的に非常に水準の高いものは、どうしても人々の評価と時間的なずれがございます。前世紀で評価されなかったものが今世紀になって非常に評価されるといった面があります。そして、なかなか難しいのですが、二次利用だけを考えて創作者がつくるというようなリスクも出てくるわけでございます。そうしますと、本当に創造的なもの、文化的に水準の高いものは初期段階で出にくいという側面もあるわけでございます。
 こういうことを考えて、文化審議会としては、それこそ文化に配慮した結論を持たなければならないと思います。
 それから、先ほど迫本さんがおっしゃいましたように、日本はもう少し文化戦略─という言葉は嫌いですが、文化戦略という言葉が、今は方法論としては既に戦略的なものになっておりますね。そういうものをぜひとも持たなければならないと考えております。よろしくお願いいたします。

【河村委員】

 消費者、視聴者、利用者という立場で申し上げたいと思います。
 ダビング10の問題が何人かの委員から上がったので、私から視聴者、利用者としての意見を言わせていただきます。
 私的録音録画小委員会の委員もしておりますので、そこで申し上げたことと重なる部分もありますけれども、まずはダビング10になったことで損害が大きくなったという話になるならば、まずはデジタル録画に関して補償金が導入された経緯について触れる必要があると思います。つまり、地デジの放送が始まる前、アナログ放送のデジタル録画が無制限にできてしまうから補償金が導入されたという経緯です。無制限にできてしまうのは大変なことだといって、補償金が導入されました。その後、地デジが放送を始め、コピーワンスとなって、利用者にとってはたった1回しかできない、ムーブしてデータが壊れてしまうかもしれない、そういう機械に対しても全く同じ金額の補償金がかけられています。そして今回、ダビング10が6月に出ることが大変だとおっしゃいますけれども、無制限で大変だと言われたときに決まった金額が1回しかできない機器にも採用され、見直されなかったわけですから、10回となって損害だというのは説得力がないのではないかということでございます。
 無制限のときに決められた金額であれば、この前も申し上げましたが、1回になったときに無制限分の1になるべきだった。いろいろな方がダビング10のことをおっしゃいますので、これは消費者からすれば、機器1個にかけられている補償金というのはコピーワンスの機器に関しては返還請求ができるぐらいの問題である、返還訴訟を起こしてもいいのではないかと思うぐらいの問題であると思っております。
 あと、迫本委員が諸外国並みのことを考えればとおっしゃいましたけれども、諸外国並みの利便性が日本の視聴者には全く確保されていません。諸外国には地上放送にそのような著作権保護技術がかけられておりません。かけてはいけないというルールがある国まであります。そういう場合、映画に関して誰もが10個の複製をつくるというような、非現実的なことで判断するわけではないのですね。私的な範囲において、その人が何ら法律を侵さない範囲において、公共性の高い地上波放送においては利便を確保しましょうということであって、何も違法なことをしていいとか、それを売っていいと言っているわけではないのです。基幹放送に関しては、プライベートな範囲でその人の利便を確保するのだという姿勢が、諸外国にはあると思っております。
 それからもう一つ、法制問題小委員会に関してですが、私、1人の消費者として、1人の市民として、三田委員がおっしゃったことに大変抵抗を感じました。
 過去の著作物へのアクセスが確保されると今のコンテンツをつくっている方が損害を受ける、文化を大切にすることに反することであるといった言い方は、全く説得力を感じません。時間が限られているというのは、確かにそうかもしれません。でも、それは図書館に過去の著作物があることが、今、本を書いている人にとって損害だとおっしゃるのと同じことです。文化を大切にするということは、あらゆる今までの文化を大切にすることなのではないか、今、つくっている人たちの収入を保護することとは別のことなのではないかと思います。過去の著作物へのアクセスのネットでの利便を高めることを反対するために「Culture First」というお言葉を使われるのは抵抗を感じました。

【中山委員】

 私的録音録画については、期間がかかり過ぎであるという御意見を多数頂戴いたしまして、この委員会以外でも、長過ぎるというおしかりをいただいております。主査の私のせいでもあるのですが、ただ、これは政令として追加すればいいという問題ではなく、デジタル技術、インターネット技術における著作権というのは一体どうあるべきか、そこに根差しているものですから、おまけに技術の動向もなかなか定まらないという状況ので、議論がたくさんあります。
 例えば、無料デジタル放送と補償金制度の関係についても、今、河村委員がおっしゃったように反対説も非常に強くありますし、あるいは貸しレコードのCDからの録音、これは補償金から外してしまおうという意見も非常に強くあります。そういう中で何とかコンセンサスを得ようと努力しておりまして、時間がかかっておりますけれども、申しわけございません。

【野村分科会長】

 それでは、私的録音録画小委員会の御報告についてはこのくらいにしまして、次に、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の審議経過について、大渕主査より御報告をお願いいたします。

【大渕委員】

 私の方から概要について御報告させていただきます。
 お手元にあります資料3が「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の審議の経過について」というものでございますので、御覧いただければと思います。
 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会は、資料3の最後のページの参考資料で開催状況を記載しておりますが、昨年10月12日に本分科会におきまして検討状況の報告があった後に、第9回、第10回と2回の小委員会を開催いたしましたので、この2回の小委員会の審議経過について、御報告いたします。
 1点目は、1ページ(2)過去の著作物等の利用の円滑化について、でございます。
 この点につきましては、真ん中辺りの1にあります著作権者所在不明の場合の裁定についての現行制度の改善についてと、2の著作隣接権に関する裁定制度の導入の可否について検討を行いました。今後、諸外国の状況や国際条約との関係を精査しつつ、制度導入の可否について検討を行う予定でございます。
 また、複数の権利者が存在し、一部の者の許諾が得られないときの利用円滑化方策については、共有著作権に係る規定の活用範囲や運用の見直しや、いわゆる共同実演の適用範囲の解釈の明確化について検討を行いました。
 現在は、実務の実態等を踏まえて専門的な検討をすべきとの観点から、小委員会のもとに共有ワーキングチームを設置し、これらの問題について法的な問題点の整理を行っております。
 その次の論点が、2ページの(3)アーカイブ事業の円滑化についてでございます。
 アーカイブ事業の円滑につきましては、まず、望まれるアーカイブ像について関係者の方々から現状等を聴取いたしまして、それに基づいて意見交換を行いました。また、図書館関係の権利制限をもとに現行規定の解釈の範囲や、さらに取り組むべき事項についても議論を行いました。
 アーカイブ活動については、国民ができるだけ幅広く著作物へのアクセスができるような環境が整備されるべきという基本的な観点はありますが、他方、具体的に解決すべき課題となりますと、コンテンツ事業者が自ら保存、提供を行う場合と、他の者がコンテンツを収集・保存等する場合とでは解決すべき課題の性質が異なるように思われる次第でございます。そこで、コンテンツ事業者以外が行うアーカイブといたしまして、図書館を題材といたしましてアーカイブワーキングチームを設置いたしまして、データ提供の範囲や条件等について専門的に整理を行っております。
 その次の点は、3ページの(4)著作権等の保護期間の在り方やその他の課題についてでございます。
 この著作権等の保護期間の在り方やその他の課題についても、引き続き順次検討を行う予定でございます。その検討に当たりましては、利用円滑化の具体策やその他の課題の検討状況との相互の関係性に十分留意しながら、究極的には、保護と利用のバランスがとれた結論が得られるよう検討していきたいと思っております。
 以上、簡単ではございますが、前回報告があった以降の審議状況について御報告いたしました。残された課題につきましては、来期も引き続き審議いたしまして、速やかに結論が得られるよう努めたいと思っております。

【野村分科会長】

 ただいまの御報告について、御意見ございましたら御発言をお願いしたいと思います。

【三田委員】

 先ほど録音録画補償金のところでも、審議が長引いている間に補償金なしでどんどん製品が売られてしまうと言われておりましたけれども、保護期間の延長に関しましても、審議が1年、2年と延びていきますと、その間に、例えば50年前に亡くなった方の権利が今年、正確に言えば来年ですけれども、消滅してしまいます。
 従来の例でありますと、1度消滅してしまった権利は、例えば2年後、3年後に延長が実現したとしても、もはや復活はしないわけですね。ということは、50年前に亡くなられた権利者の御遺族の方は、固唾を飲むような思いで審議の成り行きを見守っておられるということであります。そのことを念頭に置いて、できる限り速やかな御検討をお願いしたいと思います。

【福王寺委員】

 保護期間の延長について、今、50年から70年にするということで御審議されていると思うのですが、これは決まるとすれば経過としてこの文化審議会で決まって、国会の方に上げていくということですが、今年中に決まるとすれば決まるものなのでしょうか。
 今日は美術家連盟の方で来ておりますが、日本画家の大先輩である横山大観先生、今、国立新美術館でも展覧会を開催しておりますけれども、昭和33年に亡くなられて、今年で切れてしまうんですね。ですから、来年1月1日からということになると思うんですが、その辺りのことでとても心配しています。ぜひともなるべく早く決めていただきたいと思います。

【野村分科会長】

 御意見として伺っておくということでよろしいかと思います。

【大林委員】

 保護期間の延長ですが、隣接権者として、実演家として、私は審議会当初からずっと申し上げてきています。保護される年数は著作者の方と同じ50年ですが、起算の時点が全く違いまして、実演を行った時点から50年です。既に切れてしまっている方が多数いますし、これからもっと生存中に保護期間が切れてしまうという問題が多発してきます。
 生存中に権利の保護期間が切れてしまうというのはおかしいのではないでしょうか。国際的な問題等もあることは承知しておりますが、ぜひ今後御検討いただきたいと思っております。
 よろしくお願いいたします。

【野村分科会長】

 他に、いかがでしょうか。
 それでは、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の審議経過については、以上にしたいと思います。
 次に、最後になりますけれども、国際小委員会の審議経過について道垣内主査より御報告をお願いいたします。

【道垣内委員】

 資料4に基づきまして、国際小委員会の審議経過について御報告申し上げます。
 この小委員会に与えられた主な任務は、WIPOにおける条約作成、それに日本としてどう対応するかという問題、もう一つは海賊版対策でございました。しかし、今年度のこの小委員会におきましては、取りまとめには至りませんでしたので、他の小委員会と同じく、その審議の経過について御報告申し上げます。
 まず第1に、放送条約が現在、WIPOにおける最も採択される可能性がある条約として検討されているところでございますけれども、この条約につきまして、昨年11月に予定されておりました外交会議が見送られました。これはWIPOに国際機関としての問題があるようでございまして、WIPOの新年度の予算も否決されているという状況で、混乱があるようでございます。この放送条約が直ちに動き始めるかという点については、当面は悲観的にならざるを得ないのではないかということでございます。
 しかし、それ以外に国際的な場はあるわけでございまして、2国間交渉その他の場を利用して、この条約のモメンタムを維持し、また推進していくことについて、我が国としては積極的に対応していくべきであるという意見が示されました。
 次に、海賊版対策でございますが、日本のイニシアチブもあって、WIPOの枠外で検討されている模倣品・海賊版拡散防止条約構想について、条約の作成に向けて、かつ実効性のある内容にしていくべきであるという意見が示されました。
 インターネットを通じた海賊版の問題は、国内でもいろいろ問題でございますけれども、国際的な枠組みをつくってきちんと秩序立てませんと実効的ではありませんので、国際的な視点での検討が必要だということでございます。
 途上国における海賊版の被害状況はさまざまでございまして、これまでも我が国としては、さまざまな対策を講じてきたところでございますが、今後も各途上国の政府と特に人材育成の面についても日本として力をお貸ししていくことが必要ではないかという意見がございました。
 (3)は、私どもに与えられたミッションを超える話でございまして、本来は、この分科会でお考えいただくところでございますが、ミッションを受ける側として、今後このような点を考えてはどうかという意見がございましたので、その点も御報告申し上げます。
 それは、国際的な著作権ルールの形成については各国さまざまなスタンスがありまして、特に途上国と先進国の関係は非常に難しいところがあります。先ほどのWIPOの問題もそういうところに起因しているようですが、そういう中で、我が国の国益につなげるためにどのような国と連携をとっていくのか、有利な流れをつくっていくのかというもっと戦略的な議論が必要ではないかという意見がございました。
 もう一つ、国際的な著作権ルールの合意形成に向けた戦略的な対応ができるように、先ほどから御議論ございましたが、機動的かつより深い議論ができるように、国際小委員会の検討のあり方自体も見直してはどうかという意見がございました。

【野村分科会長】

 ただいまの御報告について、御意見、御発言ございましたらどうぞ。

【後藤委員】

 映画の著作権の保護期間に関して、皆さん御存じのように、例えば、黒沢明作品のDVDに関しては、旧法の解釈によって保護期間内であり、一方、「シェーン」などは既に保護期間が切れているから自由にDVDを発売していいというように非常に多様な判決が出ている中で、昨年、いわゆる北朝鮮の映画をテレビで無断で放映したことに関して、北朝鮮の著作物が保護されるべきではないかという裁判において、「国交のない国の著作物の保護は不要である」という地裁の判決があったという記事が出ていました。
 その記事には、「文化庁は2003年に、我が国は北朝鮮を承認していないから条約上の権利義務関係は生じない。我が国は北朝鮮の著作物について、ベルヌ条約に基づき保護すべき義務を負わないという見解を示している。今回、東京地裁の質問に対して、文部科学省もほぼ同様の回答を行った」とあります。「著作権保護は、国家の枠組みを超えた普遍的に尊重される価値を有するものと位置づけるのは困難」というのが地裁の判決ですけれども、そういうことになれば当然、日本映画も北朝鮮で保護されないことになると思いますが、私個人としては、この判決はいかがなものかと異を唱えるものですけれども、この2003年の文化庁の見解に関して、この機会に直接どのようにお考えかお伺いしたいと思います。

【吉田長官官房審議官】

 北朝鮮が2003年の初めに、ベルヌ条約に加入いたしました。その関係で、北朝鮮の、特にテレビ番組などを日本の放送局が使用している実態もございましたので、北朝鮮のテレビ番組の著作権が日本でも保護されるかどうかが議論になってまいりました。
 その後、日本の放送局から私どもの方にいろいろと御相談がありまして、その説明の過程で、先ほど御紹介がありましたような内容のメモのような文書をお渡ししたといったことはございます。
 今回の裁判におきましては、そのメモのことも含めまして、その後、裁判所から文部科学省と外務省と両方に対して条約上の取り扱いについての考え方について意見照会がございました。私どもは2003年のときと同様に、ベルヌ条約への加入によって具体的な権利義務関係が直ちに発生するということではなくて、あくまでもそれは国交があるかどうかが前提となって初めて権利義務関係が生じるのであろうという考え方から、北朝鮮については日本国としてまだ承認はしておりませんので、現時点では、北朝鮮との間で条約上の権利義務関係は生じない、こういった見解をとってきているところでございます。
 先般の東京地裁の判決では、そのような私どもの考え方が受け入れられたものと理解しております。
 そのようになりますと、翻って日本の映画ですとかテレビ番組ですとか、そういったものが北朝鮮では保護されないという可能性も出てまいりますけれども、これはやはり著作権だけの問題ではなくて、国交をどのように樹立していくかという大きな部分にかかわってくる問題でございますから、これについて今の段階では特段コメントはできませんけれども、できるだけ広く、国際的に著作権を保護し合う関係ができることは望ましいことだと思いますが、やはり国交があるかどうかは、権利義務関係を考える上では大きな要素だと思っております。

【野村分科会長】

 他に御発言、いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。
 それでは、国際小委員会の審議経過については以上にしたいと思います。
 まだ若干時間がございますので、著作権分科会全般の事項について、何か御意見ございましたら御発言いただければと思います。

【三田委員】

 先ほど消費者の代表の方から、文化というものについて御発言がありましたので、一言だけ申し上げたいと思うのですが、先進国では、図書館でただで利用者の方に本を貸し出すことに関しましては、税金で著作者にお金が支払われております。例えばイギリスでは、日本円にして年間15億円ぐらいの予算でお金が払われているんですね。過去の文化は尊ばなければならないものでありますけれども、尊ぶ気持ちを、補償金を支払うことによって文化を生み出す人たちを支援するということをやっております。
 先進国でこういう図書館に関する補償金の制度がないのは、アメリカと日本だけでありまして、簡単に結論づけるのはよくありませんけれども、アメリカと日本は文化をあまり大切にしていないのかなという疑問を感じざるを得ません。
 ただ、私は以前、この図書館に関する補償金を早くつくってくれと言っていたんですけれども、最近は言わなくなりました。日本の図書館があまりに貧乏なので、まずしっかりと図書館で本を買っていただきたい。図書館が本を買うことは、今年、本を出した出版社や著作者を支援することになるので、それが過去の文化を大切にすることにつながっていくだろうということなので、補償金制度よりも、むしろ図書館予算を増やしていただきたいと考え方を変えております。
 文化をどういう形で大切にするかというのは、さまざまな要素がありますので簡単には言えないと思うんですけれども、私的録音録画補償金に関しまして一言言わせていただければ、私は一介の消費者、利用者でありますけれども、利用の利便性を考えると、やはり私的録音録画はやりたいわけですね。
 例えば、今、カーナビで音楽を聞きますと、勝手に録音するようになっています。それから、パソコンで音楽を聞きますと、私は録音するつもりはなかったんですけれども、外国から取り寄せたリアルプレーヤーというものが最初に起動したので英語の表示が出て、よくわからないで「OK」と答えたら、録音しているんですね。これ、やってみると非常に便利なんですね。いちいちCDを差し込まなくても音楽が聞ける。これはもちろん私的録音でありますから、私に与えられた権利であろうと思うんですけれども、レコード会社さんのことを考えると、これはやはりちょっとでもお金を払った方がいいのではないかと考えます。
 もしもこれに完全なコピーガードがついて、そういう録音ができなくなってしまいますと、利用者としては大変不便なんですね。ですから、私的録音録画できる権利を保障するために、消費者一人一人がわずかでもいいからお金を払うという考え方も1つ重要なやり方ではないか。
 現行ですと、音楽専用の機器だけ補償金が支払われているんですね。ですから、パソコンとかカーナビとか、今のところiPodも汎用性があるということで補償金はかけられていないんですけれども、しかし、パソコンを利用する人の多くは音楽を聞いているし、カーナビで音楽を聞かない人はないんですね。そういうことを考えると、ある音楽専用の機器だけに補償金をかけてもあまり意味がないのではないか、むしろ全体の補償金の金額を安くして、いろいろな機械にお金がかかっているということで音楽関係の著作者を支援していく、これは利用者の側から考えても必要なことではないかと考えます。
 これがベストだとは思いませんけれども、一つの考え方として、利用者、消費者というのはびたお金を払わないんだということではなくて、利用の利便性を確保するためにお金を払うということも考えるべきではないかと考えます。

【中山委員】

 その点について一言申し上げたいと思いますけれども、音楽のユーザーにはびた一文払わないという考え方はないと思います。何らかの形で便益を受けていれば、それは払うべきだろうということで恐らくコンセンサスがあると思います。しかし、それを補償金制度という形で実現するかどうかが今、議論されているわけです。
 例えば、汎用機器になればなるほどコピーする人としない人がいます。不公平が生じます。あるいはコピーする人でも1回する人もいれば100回する人もいる、同じ額では不公平が生ずる。しかし、従来、不公平が生じても他に方法がなかったので補償金制度がつくられたわけですけれども、今、全部とは言いませんけれども、ある方面ではコピーの回数ごとにチャージできるシステムもあるわけです。そういう技術発展の状況において、どういう形でユーザーから権利者の方に金を流したらいいかを検討しているわけで、びた一文払わないという意見はこの審議会の中でもございませんので、その点は御理解賜れればと思います。

【常世田委員】

 三田委員のお話、日本の図書館が貧しいというところは、まさにおっしゃるとおりでありまして、ヨーロッパで公貸権という制度があるのは、日本の3倍も4倍も5倍も本が貸し出されているという実態がまずあるということです。
 それから、補償金という表現をされましたけれども、ヨーロッパの場合には、考え方としてはむしろ報奨の意味が強い国の方が多いです。それは国のために国の文化を、その民族の文化、民族のアイデンティティを保障するために文化活動をしているということで、作家の方には年金もないということで、文化政策として行われている面が多いわけです。
 表現も、100パーセント補償金だと表現している国は、ほとんどありません。
 そういう意味で言うと、保護期間の問題についても、保護期間のことだけで議論するのはナンセンスで、国によって著作権のあり方はかなり違うわけであります。フェアユースの概念がある国もありますし。もし欧米並みということであれば、保護期間以外の部分についても同様に議論しなければならないということが当然起きてくるわけでありまして、これは必ずしも権利者の皆さんに有利なことばかりではないと思っています。
 私的録音録画の件についてでありますけれども、コンテンツを買っているのか、コンテンツが乗っている媒体も含めて買っているのかという議論をもっとするべきであると思います。私などは音楽やビデオを買ったら古いVHSで見るので十分でありまして、何も新しい機械を買わされる理由はないわけでありますが、技術革新という名のもとに、古い機材での再生ができなくなり新しいものを買わされていくことについては問題があると思います。このことは公共機関でも問題になっています。
 ただ、一方で貿易という面で、日本は日本の工業製品を売って暮らしを立てていくという面がありますので、これを経済政策として考える側面も当然あるわけでありますけれども、しかし、そのような視点で考えると全部消費者が負担することは変な話だと思っております。
 そういう意味で言いますと、この保護期間についても私的録画録音につきましても、各小委員会で議論するのは当然なんですけれども、日本の文化政策として、あるいは経済政策としてどうなのかという視点で考えませんと、いつまでも水掛け論になってしまう。
 私は瀬尾委員と、個別のところでは意見は違いますけれども、大所高所で考える、いわゆる政策的な判断が必要だというところについては、私は賛成でございます。

【里中委員】

 先ほど三田委員から図書館のお話がありましたけれども、日本の図書館は確かに貧乏かもしれませんが、理想的に言えば、著作権者に対してのある程度の見返りといいますか、それを国が出すということで、国が各図書館にその分、予算を増やせばいいのではないかと思うので、図書館で買い上げていただける本は少し上乗せしてとか、要するに展示権、閲覧権に関しまして貸与権が通ったように、何とかならないかと望んでいたわけですけれども、図書館は、公共の利益のためにただで本を貸すことになっております。このまま今後のアーカイブ化という話になりますと、図書館が自分のところで持っている本をアーカイブ化して、それを配信するということも考えられなくはありません。現実に、ごく一部の図書館ではありますが、「うちにはこんな本があります」といって中身までネット上ホームページで紹介しているところもあります。
 ですから、後手後手になって取り返しがつかなくならないために、デジタル時代を迎えて、やはり図書館の持っている権利制限は何らかの見直しが必要ではないか。でないと、図書館がアーカイブ化するというときに、またそれが大きな問題を生むのではないかと案じております。
 このデジタルというのは大変厄介なんですけれども、新しいものができて早速にいろいろ法を固めてしまいますと、後になって不都合が生じるということはたくさんありますので、私的録音録画補償金制度も、「何とかしなければ」ということで成った経緯は存じてはおりますけれども、今や様相は変わってきておりまして、一般ユーザーとしては、創作者の方に何がしかをお支払いするのは決してみんな嫌ではないと思うんですね。びた一文払いたくないとは思わないと思います。ただし、この私的録音録画補償金制度の形が整ったときに、そのお金の流れのシステムですね。それが等しく全創作者に戻っているのかどうか、その辺、システムとしての機能のあり方に問題がある。ですから何か決めたら、では、それをどう分けるかというときに、気づいたもの勝ちみたいになってしまって、後から入り込むすきがない創作者団体はたくさんあるわけです。そういう面で不公平も生じてきているので、あり方そのものを見直すことは勇気を出して、より気持ちよく創作者と消費者がお互いに支え合っていけるような形を考える時期に来ているのではないかと、個人的な感想で申しわけありませんが、そう思います。
 ですから、こういうことすべて「では、何も決まらないではないか」と、先ほど来、2年かかっているのに何も決まらない、4年かかって何も決まらないと言われていまして、そのような微妙な問題を含んでいるので大変だと思うんですけれども、一般消費者の方々に御理解いただけるような形でみんなが知恵を出し合うのが、こういう会の役割だと思いますので、いい方法が見つかればと思います。
 感想のような意見のような、中途半端で申しわけありませんが、述べさせていただきました。

【大林委員】

 クリエイター、事業者、消費者(視聴者)、この3者は決して対立するものではないと思います。文化を創り、利用し、楽しむ、そして楽しむ人が、また創り手になる。数千年という人類の大きな文明の歴史から考えても、この関係は不変です。たかだか十数年ですよ、デジタルの技術は。なぜバタバタと、さあ大変と大騒ぎするのでしょうか。単にお金がどうこうではなく、文化を考えその問題を審議しているこの場では、まず何が大切なのか、不変の関係にある3者の間で互譲互恵の精神で事を進めていく、問題を考えていくことが必要だと思います。
 この不変の関係を踏まえた上で、現実が先行している問題については、きちんと対応していかなければならないでしょう。その辺、切り分けて考えることは必要です

【野原委員】

 皆さんの議論を伺っていて、2つ言いたいと思います。
 1つは、この著作権分科会で検討するスタンスとして、先ほど中山委員もおっしゃいましたが、今の時代というのは、改めて言うまでもなくデジタル化が進展し、インターネットが普及し、ICTでいろいろな技術環境が変化して、その結果、市場環境というか、著作権を利用する環境は大きく変化しているわけで、著作権の位置づけだとかあるべき姿が大きく変わっている時代だと思うんですね。そういう大変革の時代にいるわけです。
 だから、現在の課題に対して場当たり的にパッチを当てていくような制度変更ではなく、変化の状況をよく見通して、過去、現状、それから今後の方向性もよく考えて、どう解決していくかを考えていくべきであると思います。
 もちろん「そんなことはわかっている」と思われる方も多いと思いますが、それにもかかわらず、実際の議論の場を見ますと、従来からの関係者というか、現在の著作権者あるいはこれまでにつくっていた業界団体の方々での議論が中心になっていて、新しい変化の方向性が適切に反映されているんだろうかと疑問に感じます。今ももちろん、将来の方向性も考えて検討すべきだと思っている方もいらっしゃると思うんですけれども、よりそういう視点をきちんと入れ込めるように努力したいと思います。
 法制度は、一たん決めると数年で変えましょうというわけにもいきませんので、今の問題だけ解決するのではなくて、将来の方向性を踏まえて検討するという観点は非常に重要だと思います。
 もう一つは、私的録音録画補償金制度に主に関係することですが、この制度は基本的には、関係者間の調整をして補償金で調整を図るということであって、実際にお金のかかわることであり、それが法制度で行われているということは、ある意味、著作権者への保護政策だと思うのです。それは、先ほど言ったような大きな変革の時代の中ではあまりすべきことではないのではないかと私は思います。文化的な観点も重要ですが、基本的にはビジネスとして物事が起こっているわけで、消費者もメーカーも著作権者もメディアの人も、皆さんが経済活動の中で価値があると思うものに対して、対価を支払ってサービスを受けているという関係なわけです。理想論で言えば、従来からの制度や商習慣などのない環境下で、どういう環境を作ればいいかという議論をしたいところです。
 そういう状況の中で、今ある保護的な政策を厚くするというのは、新しい世界へのステップを遅れさせてしまうと感じます。
 文化を守るという意見が先ほどから出ておりまして、私もごもっともだと思いますが、例えば、アニメやゲームは、海外の若者にも大人気で、「ジャパンクール」と言って、彼らにとって日本は憧れの国なんですね。こうした新しい文化が日本の価値を高めていると思います。
 こうした国際競争力を持つ新しい文化の領域は、比較的規制が少なく、自由な競争の中で磨かれて、世界に通じる文化となって、産業となって海外へ出ていっていると思うので、そういう意味でも、あまり保護的な政策はすべきではないと思います。
 それと、ユーザーが補償金を支払う、支払わないという話も先ほどから何度も出ていますけれども、基本的には消費者、視聴者から言うと、自由に文化を楽しみ、自分の欲しいコンテンツを聞く、見るために、私的録音録画補償金だけでなくいろいろな対価を支払っているわけです。プレーヤーを買ったりCD等のメディアを買ったりということも含めて、その対価の総量たるやかなりな金額になっているわけです。それらが、著作権者、メディア、メーカー等の関係者間でうまく分配されていないことが問題で、それは消費者に対して意識が低いとかいうことではなくて、むしろ関係者の業界がうまくビジネスの形態をつくれていないところに根本があると思いますので、繰り返しになりますが、基本はやはりビジネスなんだ、契約関係で解決していくことを前提に、次の世界をつくっていくといったスタンスで議論できたらと思います。

【瀬尾委員】

 全体ということなので、先ほどと重複する部分はありますが、もう一度申し上げます。
 今まで物、例えばCDでも何でも、写真でもそうなんですけれども、フィルムなどの「もの」が流通していたので、個人でも何となく管理ができるし、結構そこら辺の管理はみんなきちんとして食っていたんだと思うんですね。でも、デジタルになったときに、みんなネットで送るし何度も複製できるし、管理し切れなくなったし拡散もしてくるという状況があって、個人の中で著作物自体が管理できなくなったということがまずあります。
 そんな中でどんなことが起きているか、少し現状についてお話ししますと、写真家にしてもグラフィックデザイナーにしても、一生の仕事とできなくなってきている状況があるのです。若いうちは競争原理に乗っかる、そしてバッと売る、10年売って40過ぎたときに、残るのはほんの数パーセントです。みんな食えなくなって仕事をやめます。そういったクリエイターの使い捨てが起きています。
 一番若いうちにどうなるかというと、例えばデジカメで写真を撮ります。データをその場で抜いていきます。「はい御苦労さま、1万円」ということで、日当で終わりです。そこには著作権もなにもない。撮影したデータをそのまま抜かれてしまうような状況があります。
 要は、今のような流通原理に文化を任せるだけでいいのかどうかが一番の根本なのではないでしょうか。どんどん競争していいものをつくって、どんどん流通していけばいいんだと。けれども、一生できる仕事ではないと思ったときに、どれだけの人がそれを目指すのでしょうか。
 例えば美容師さんは、まちに美容院があったりして美容師試験を受ける方は多いです。しかし、写真の学校、専門学校がありますが、現在どんどんなくなっています。志望しないんですね。一生の仕事にできない。ただ、写真に対する興味はあるから一時的にやるんですけれども。そういうこともあって、よく漫画家で、今、里中委員いらっしゃいますけれども、松本零士先生がおっしゃるように、僕たちは命を懸けていると。私も友人に何人か漫画家がいるんですけれども、一生食える方は本当に少ないですよね。みんな消えてしまうんですよ。それで、どうするか。何の保障もないんですね。競争原理だからそれはいいと言ってしまうことも、確かに真理としてあると思います。
 でも今、例えば日本で少なくともコンテンツをつくって知的財産で推していき、文化を考えるのであれば、どうやってクリエイターたちが社会の中で一生の仕事としてやれるか社会的に多少考えること、今の野原委員の話とはちょっと正対します。使い捨てでいいのか、社会として保障しなくていいのか。それはいいのかもしれないし、悪いのかもしれない、私は結論はわかりませんけれども、でも、その議論はするべきだと思います。
 要は、クリエイターが使い捨てられて、売れるものだけ売れて、先ほど、すぐにいいものは出てこないという御意見もありました。私もそう思います。例えば20年前の記録的な写真や何かで非常に価値が出てくるもの、例えば環境関係とかいろいろあるんですけれども、そういうものはその時には評価されないんですよね。それで、その人は食えなくなっていなくなってしまうんですね。そういう社会でいいんでしょうかね。どんどん使って捨てて、新しいものは繰り返して。
 アニメーターにしても、アニメーターの友人を見ると描いている人たちは悲惨ですよ、本当に。いろいろなことを考えて、労働基準法なんてあるのかなというぐらい厳しい環境で、日本のあのすばらしいアニメはつくられているんですよ。そういう現状抜きにして、みんながベンチャー的にやっていくだけで本当に文化が維持できるのかどうか、私は大変疑問です。
 そして、先ほどの常世田委員の御発言の中で、報奨金的な意味合いがあるというお話がありました。それは、やはり社会的にそういうクリエイターたちをバックアップするシステムの一環ではないかと思います。日本にそういうシステムがどれだけあるのか。
 私は、今の教育政策の中で、例えば新しい学科をつくったりする、これは実は教育という観点もいいけれども、職を増やしたという点でとてもすばらしいなと実は私は評価しています。ですので、今、我々がしていることは、流通原理の中だけでコンテンツをつくり出すことがいいのか、それとも社会としてコンテンツをつくり出す環境をバックアップしていくのがいいのか、この中で考えていかないと、私は結論は出ないと思います。
 私は、日本がもし日本の文化を世界に発信するとか、例えば知財立国とかいう方針を挙げるのであれば、やはり社会的なクリエイターの保護はあるべき話だと思います。ただ、これは私の考えですので、いろいろなお考えもあるでしょう。ただ、具体的な事象論ではなくて、そういう文化をどうしていくのか、社会的に保護するのか、流通に任せるのかということが根本ではないかというところを私は言いたいですし、その結果としての今のクリエイターの現状を一言お話ししておきたかったということです。

【中山委員】

 今、瀬尾委員のおっしゃることはよくわかります。私も東大の写真部の顧問をしていて、写真にはいろいろ興味があるのではよくわかるのですけれども、それを著作権制度の中でやるとなりますと、具体的にはどういうことをお考えでしょうか。

【瀬尾委員】

 今、例えば50年、70年の保護の話があって、これは実利に直接的に関係ない、著作者が死んだ後ですから、本人が受け取るわけではないですよね。その本人が生きている間の、例えば教育とか、先ほど図書館の公貸権の話もありましたけれども、何らかのものが、ある程度の年齢に行ったときに、例えば学校を増やすでもいいですし、図書館から報奨金的な手当てをしたり、いろいろ複合で、結局後々をサポートしていくシステムをこの中でもつくれるのではないかと思うんですよね。
 具体的に例えばどういう制度ですかと言われると、それに関して明確には言えないけれども、ただ、この中でそれにかかわれる部分は、私は多いように感じているんです。

【中山委員】

 著作権制度というのは文化政策のほんの一部なので、著作権ですべてのことはできないんですけれども、著作権法としては、どういうことができますかとお伺いしているわけです。

【後藤委員】

 瀬尾委員に全部言っていただいたので、全く同意見なんですけれども、ちょっと参考に映画の状況を言っておきますと、今、大体1年に650から700本ぐらい劇場用映画がつくられているんですよ。びっくりすると思いますけれども、そのうちの半分近くが劇場で公開されないんです。また、その何分の1かはレイトショーとかモーニングショーで、全国で1館で1週間ぐらいやるだけなんです。それで終わりなんですね。そのギャランティはというと、多くの監督は、一般サラリーマンの初任給の1カ月分ぐらいでしょう。
 そういう状況の中で、今、団体協約がありまして、二次使用が監督にも1.75パーセント入ります。ところが、二次使用と言いながら、二次使用がメインなんですよね。その二次使用も、団体協約ですから、あくまでも映連を中心とした制作会社と監督協会との団体協約の中で払われている。でも、これも残念ながら、先ほど野原委員がビジネスだから契約だと言いましたけれども、もう完全に、はっきり言えば、山田洋次監督はもう全部OKです。でも、やはり新人監督は、これから育っていくような監督は、ほとんど払われないケースが多い。
 そうすると、今、おっしゃった例えばどういう形でということですが、第一歩としては、団体協約の二次使用を法制化できないだろうか。監督は今、著作者であって著作権者ではありませんから、著作権者である制作会社と著作者との、例えばポーランドかどこかではそういうことが法制化されて、劇場でも何パーセント支払われる、二次使用の場合も何パーセントか支払われる、これは監督だけではなくて撮影監督、美術監督にもきちんと支払われるようになっていると聞いています。日本も監督に著作権をと声高に叫んでも、なかなか難しいことがありますけれども、まず今、映画制作者と著作者との間で結ばれている団体協約を法制化することによって、次につくっていくエネルギーが生活を基盤としてできないだろうかということなんですね。
 ですから、さっき野原委員はすべて契約で、ビジネスでとおっしゃいましたけれども、やはりものをつくるには生活の基盤があまりにもなさ過ぎるという現状もちょっと、びっくりするような現状も理解していただいた上で、そういう形の法制化ができればいいかなと考えます。

【野原委員】

 私の発言が大変誤解を招いていると思うので言いたいのですが、私は、先ほど言われたような労働環境がよくないといったこと、それはそれでちゃんと検討すべきだと思います。ただ、私は今、私的録音録画補償金制度を考えることにおいて言っているわけで、だから私的録音録画補償金を増やすということとは違うと思っています。
 全体の就業環境をどう考えるかとか、過当な競争が起こっているのであればそれをどう改善するのかということは、著作権法とはまた違った場で検討すべきかと思います。
 なので、保護政策は尽くすべきではないということは、すべてにと言っているわけではないんですけれども、全体的に私はそういう方向で考えていますけれども、少なくとも先ほどの発言は、私的録音録画補償金制度の検討においてそのように考えているということです。
 あと、確かにいろいろ厳しい環境の中で仕事をしていらっしゃる方は多いと思いますが、そんなに他の世界だって甘くないと思います。新しいベンチャーが起業して、そのうち何社が5年後に残りますか。それをだれが支えてくれますか。それはもう少し別の場できちんと議論すべき問題だと思います。

【大林委員】

 中山委員が「著作権法上でどのようなことができるか」とおっしゃったので、述べさせていただきます。
 その1つが、私的録音録画補償金制度だと思います。
 先ほど「たかだか十数年のデジタル技術」と申しました。これは極論かもしれませんが、「ダビング10」機能搭載の録画機器は、透かし入りの1万円の真札を10枚印刷していいですよという、技術的にはそういう意味を持った機器であり、その製造、販売に対し社会的責任があると思います。
 また、私的録音録画の補償金が、きちんと権利者に届いているのか疑問だという意見がございました。それに対しては、私的録音補償金管理協会、私的録画補償金管理協会があります。関係団体が参加し、さまざまな議論と検討をしながら運営しております。クリエイター、事業者以外で、せっかく理事なっていらっしゃるのにほとんど一度も出席されなかった団体の方もいらっしゃいますが、かなり門戸は開かれて運営されていますし、分配についても関係者は大変な努力をしています。
 何度も言いますが、文化を守りつつ、新しい文化を創り出す源泉となっている先人の知恵が作り出した、この私的録音録画補償金制度の持っている文化的意味は非常に大きいのです。
 文化におけるビジネスの問題は、市場原理だけで御しきれるものではありません。会社経営と文化の創造活動についてどう考えるか等は、別に席を設けてでも徹底的にやりたいですね。

【中山委員】

 補償金制度を仮にもっと充実するといたしましても、これによって金が回ってくるのは売れている作曲家とか売れている歌手とか、あるいは売れている監督なのですね。先ほど瀬尾委員の仰った点ですが、写真は現在の補償金制度にはこれに入っていないのですが、仮に入れたとしましても、新人にまで回っていくとか、あるいはあまり映画館にかからない、あるいは放送されないような監督にまでは回っていかないんですね。
 どうも聞いていますと、かなり社会保障的な観点でおっしゃっているのではないかという気がするのです。それも必要かもしれませんけれども、それは最近の非正規社員が多いとかいうのと同じような問題でして、これは著作権法でどう扱ったらいいんですか、そういう質問なのです。著作権法というのは売れている人により金が行く制度であって、新人のためのとか、売れない人を何とかしてほしいと言っても、著作権法で扱うにはもともと無理があります。

【大林委員】

 補償金制度について、今、中山委員がおっしゃったことの一部、つまり、売れている、データとして大きく上がってくる実演家に分配が行くという意味では、はそのとおりです。しかし、補償金制度には共通の目的で使うということも認められております。これは、今後更なる検討が必要だとは思いますが、売れていようが、売れていまいが関係なく、広く還元されていくという、先人の知恵が活かされてます。

【金原委員】

 著作権分科会の議論の大きな流れ、背景の1つに、インターネットによる情報提供というものがあると思っております。また、それはこの文書でもさまざまなところに出てきております。
 文化政策上というんでしょうか、このインターネットによる情報伝達というものがプラスになっている面は、たくさんあると思います。文化を伝える上で、あるいは学術を伝える上で、こんな便利なものはないと言っても過言ではないと思います。そういう意味では、これはうまく使うべきであるわけですが、同時に、インターネット上の情報の流れというのは日本国内だけではなくて、やはり海外からの情報の入手というのも当然あるわけで、そうなりますと、やはり著作権法を考える上で、海外との整合性も保つべきではないかと思います。
 これは映像の分野でも、あるいは音楽の分野でもすべて同じだと思いますが、我々が直接今関係しているところでは、学術の分野でも、例えば先ほどの薬事に関連するところは、学術の分野では半分ぐらいが海外の文献であるということになりますと、やはり海外の著作権法の考え方がどうなっているかを検討した上で審議をすべきではないかと思います。
 これは権利制限の問題だけではなくて、例えば検索エンジンの問題もそうだと思います。それから、私的録音録画の問題もそうではないかと思います。そういう議論がこの著作権分科会、あるいは法制問題小委員会の中で少し足りないのではないかという気がいたします。その辺りを含めて、ぜひ考えていきたいと思っております。
 それから全体、今の私的録音録画の問題もそうですし、そのほかの権利制限あるいは新たな著作権法における物の考え方もそうだと思うんですが、一体その対象となるものの全体量がどのぐらいあるのかという議論があまりないような気がいたします。私的録音録画は我々には範囲が違いますのでよくわかりませんが、どういう状況にあるのか、どのぐらいの全体量があるのか、それによってベルヌ条約あるいはTRIPS協定との整合性をどのように保つのか、そういう議論をすべきではないかと思います。それによって関係する人たちの利害関係がどうなるのかが大きく左右されると思いますので、その辺の議論を深めていただきたいと考えております。

【青山委員】

 各団体の代表者の方から大変生々しいお話を聞きまして、私の属している法制問題小委員会などの議論と比べて大分違和感を覚えたものですから、一言しゃべらせていただきたいと思います。
 著作権という権利は、御存知のとおり非常に弱い権利です。登記や登録があるわけではないし、非常に侵害されやすい権利です。そして、侵害された場合に回復が非常に困難な権利でございます。ですから、著作権を権利として保護することはやはり非常に大事なことでございまして、この権利の保護そのものは経済的な「保護政策」とは全く無縁なものであります。正当な権利を正当なものとして保護し、権利者の利益を保障するというのは当然のことでございます。
 今日の議論を聞いていますと、著作権を保護することが直ちに一方ではクリエイターの保護につながり、また、保護することが消費者の不利益につながるといったように時に聞こえるような議論がありまして、こういう議論が無駄であるとは思いませんけれども、著作権分科会の在り方として、こういう議論だけをすることはあまり生産的な結論にはなり得ないのではないかと少し危惧いたします。
 全体会議でこういう議論が繰り広げられること自身は非常に大事なことですけれども、権利をどういう形で適正に保護し、それがまた文化の振興にどのようにつながっていくかということは、こういう熱気のある議論とはまた別に、先ほどからたくさんの方がおっしゃっておりますように、海外の状況もありますし、現場で働いている方々の状況もありますし、そういうものを精査した上で冷静で生産的な議論に結びつけていくのが次の著作権分科会に向けての一つの課題ではないかと感じた次第でございます。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、予定の時刻も参りましたので、この辺で議論は終わりにしたいと思います。
 本日は今期最後の著作権分科会となりますので、高塩次長から一言御挨拶をお願いいたします。

【高塩文化庁次長】

 今期最後の著作権分科会の閉会に当たりまして、一言御礼を申し上げたいと思います。
 委員の先生方におかれましては、御多忙の中、本日も含めまして大変熱心な御審議を賜りまして、まことにありがとうございます。これまでの皆様方の御尽力に対しまして、心より御礼を申し上げる次第でございます。
 本日、各小委員会におきます検討状況につきまして御報告をいただいたわけでございますけれども、それぞれ著作権法の整備やその運用のあり方に関すること、また、私的録音録画に関する制度の見直しに関すること、利用の円滑化方策や保護期間の延長の是非に関すること、国際的なルールづくりへの参画への在り方に関することなど、大変数多くの多岐にわたる課題につきまして御審議をいただき、今後の施策の方向性につきまして重要な御示唆をいただいたと思っております。
 今期は審議の経過報告ということでおまとめをいただいたわけでございますけれども、来期も引き続きまして、これらの案件につきまして御審議を賜りたいと考えております。
 私ども文化庁といたしましては、御審議の結果を踏まえまして、また関係者間の調整を十分に行いまして一定の結論を得るべく、これまで以上の努力を重ねたいと考えている次第でございます。皆様方におかれましては引き続きお力をお借りしたいと考えており、またこれまで以上の御協力と御理解を賜りたいと考えている次第でございます。
 改めまして、今期の皆様方の御尽力に対しまして御礼を申し上げます。ありがとうございました。

【野村分科会長】

 それでは、本日はどうもありがとうございました。
 最後に当たりまして、私からも一言御挨拶申し上げたいと思います。
 各小委員会では、先ほどの経過報告にもありましたように熱心に御討議いただいてきたわけですけれども、最終的な結論をまとめるところまでは至らず、次期の分科会に積み残すことになったわけでございます。それは私的録音録画問題、あるいは保護期間の問題など、いずれも非常に重要な課題であることを意味しており、今後なお検討が必要でありまして、もちろんこの1年間で全く議論が進んでいないということではありませんで、ある程度、進んでいる部分もありますので、次期にはぜひともいろいろな問題について結論をまとめて、改正につなげていきたいとお願いしたいと思います。
 また、本日はいろいろな御意見、特に全体についてもいただきましたので、これも次期の分科会に引き継いでいただければと思います。
 1年間にわたりまして本当にどうもありがとうございました。

12時4分 閉会

(文化庁著作権課)