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著作権分科会(第17回)議事録

1. 日時
  平成18年1月12日(木曜日)10時〜12時10分

2. 場所
  グランドアーク半蔵門「富士 西」

3. 出席者
 
(委員)
  入江,大林,岡田,加藤 さゆり,加藤 幹之,角川,金井,金原,神山,後藤,迫本,佐々木,佐藤,里中,佐野,瀬尾,辻本,常世田,土肥,永井,中山,野村,松田,三田,村上,森,紋谷の各委員及び道垣内専門委員
(文化庁)
  河合長官、加茂川次長,辰野長官官房審議官,甲野著作権課長,池原国際課長
ほか関係者

4. 議事次第
 
(1) 平成17年度使用教科書等掲載補償金について
(2) 平成17年度教科用拡大図書複製補償金について
(3) 各小委員会における検討結果について
(4) その他

5. 配付資料
 
資料1−1   教科書等掲載補償金関係規定
資料1−2 諮問(平成17年度使用教科書等掲載補償金額(案))
資料1−3 平成17年度使用教科書等掲載補償金について(案)
資料2−1 教科用拡大図書複製補償金関係規定
資料2−2 諮問(平成17年度教科用拡大図書複製補償金額(案))
資料2−3 平成17年度教科用拡大図書複製補償金について(案)
資料3 文化審議会著作権分科会報告書(案)
参考資料1 文化審議会著作権分科会委員等名簿
参考資料2 文化審議会関係法令等
参考資料3 文化審議会著作権分科会(第16回)議事録
(※(第16回)議事録へリンク)

6. 議事内容文部科学省
 

【野村分科会長】 それでは定刻になりましたので、これより文化審議会著作権分科会(第17回)を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日の会議が、今期最後の著作権分科会となります。
 議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、議事の(1)及び(2)については、「使用料部会の調査審議事項に係る案件」ですので、平成17年2月28日、著作権分科会で決定をいただいております「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」の1(2)に基づき、非公開としたいと思います。なお、その内容については、同決定6及び7に基づきまして、議事要旨を作成し、公開することにしたいと思います。
 また、議事の(3)については、特段非公開にするには及ばないと思われますので、公開としたいと思いますが、このことについていかがでしょうか。御異議なければ、そのようにさせていただきたいと思います。

(「異議なし」の声あり)

 それでは、傍聴者の方には議事(1)及び(2)の終了後に入場いただくということにしたいと思います。
 初めに、まず事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。
 (白鳥著作権調査官) 議事次第の1枚紙の中段以下に配付資料の一覧がございますので、御確認ください。
 資料の1の関係ですが、「教科書等掲載補償金関係」の資料です。資料の1−1が関係規定、資料1−2が諮問、資料1−3が「平成17年度使用教科書等掲載補償金について(案)」でございます。続きまして資料の2ですが、こちらは教科用拡大図書複製補償金関係の資料でございます。2−1がその規定、資料2−2が諮問、資料2−3が「平成17年度教科用拡大図書複製補償金について(案)」でございます。資料3は、「文化審議会著作権分科会報告書(案)」でございます。
 なお、参考資料といたしまして、参考資料の1が当分科会の委員等の名簿、参考資料の2が文化審議会関係法令等です。それから最後になりますが、参考資料の3です。第16回の著作権分科会の議事録となります。万一不足等がございましたらお知らせ下さい。

【野村分科会長】 それでは議事に入ります。

議事(1)平成17年度使用教科書等掲載補償金について
使用料部会長及び事務局より説明があり、諮問案のとおり議決された。

議事(2)平成17年度教科用拡大図書複製補償金について
使用料部会長及び事務局より説明があり、諮問案のとおり議決された。

【野村分科会長】 それでは次の議事(3)以降は、先ほど御承認いただいたとおり、会議を公開といたしますので、事務局の方は傍聴者の入場の誘導をお願いいたします。

( 傍聴者入場 )

 それでは、「各小委員会における検討結果について」ということで、各小委員会の検討結果の報告に移りたいと思います。昨年の2月以降、各小委員会におかれましては、それぞれの分野において精力的に御検討いただいてまいりましたが、本日は今期の当分科会の最後の会議となりますので、各小委員会の検討結果について、それぞれの主査より御報告をいただきたいと思います。そのため、国際小委員会の道垣内主査は専門委員でいらっしゃいますが、本日は御出席をいただいております。
 各小委員会の検討結果につきましては、資料3の「文化審議会著作権分科会報告書(案)」の各章として組み込まれております。本日の分科会において御了承いただきましたら、このような形で著作権分科会の報告書として公表することを予定しておりますので、その点も御留意の上、御審議をいただきたいと思います。
 それでは法制問題小委員会の検討結果について、中山主査より御報告をいただきたいと思います。

【中山主査】 それでは、法制問題小委員会の検討結果についての御報告を申し上げます。
 まずはじめに、検討の経緯といたしましては、著作権分科会法制問題小委員会におきましては、昨年1月24日に著作権分科会で、今後優先して対応すべき著作権法上の問題を大局的・体系的な観点から抽出・整理をし、「著作権法に関する今後の検討課題」として取りまとめたことを受けまして、これらの検討課題のうち、本小委員会の委員及び関係団体から数多くの改正の要望が出され、制度と実態の乖離が見られるなどにより検討を要する課題について取り上げ、昨年2月から検討を進めてきたところであります。
 本小委員会では昨年2月から10回にわたり議論を進めてまいりましたが、このたび本小委員会における検討結果を取りまとめましたので、本日御報告する次第でございます。
 まず、検討項目ですけれども、本小委員会の検討につきましては、大きく分けて以下の報告について議論を進めてまいりました。1.「権利制限の見直しについて」、2.「私的録音録画補償金の見直しについて」、3.「デジタル対応について」、4.「契約・利用について」、5.「司法救済について」、6.「裁定制度の在り方について」、以下、これらについて説明申し上げます。
 まず検討内容1.「権利制限の見直しについて」でございますけれども、これは「特許審査手続に係る権利制限」、「薬事行政に係る権利制限」、「図書館関係の権利制限」、「障害者福祉関係の権利制限」、「学校教育関係の権利制限」の各論点につきまして検討を行いました。「文化審議会著作権分科会報告書(案)」の6ページ以降を御参照ください。
 まずはじめに特許審査手続に係る権利制限についてのご報告を申し上げます。これは7ページ目から12ページ目でございます。
 現行法では、第42条において、行政目的のために必要な場合については、内部資料として必要と認められる限度においてのみ複製が許容されております。12にあるように特許審査手続において審査官や出願人が非特許文献を複製したり、3特許庁への情報提供のために非特許文献を複製することにつきましては、非特許文献は入手困難なものも多く、的確・迅速な審査手続の確保の観点から、権利制限を認めることが必要であるとする意見が多数挙げられました。
 なお、その場合、複製物が当該手続以外で利用されることがないということが担保されるよう配慮が必要であり、また特許法のみならず、実用新案法、意匠法、商標法、国際特許出願についても、基本的に同様の規定があるものにつきましては、同様に考える必要があるという意見がありました。
 また、4非特許文献を出願・審査情報の一環として電子的に保存するための特許庁による複製ですが、これにつきましては著作権法上、第42条の「行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」に該当するため、現行法でも可能と考えられるとする意見が多数挙げられました。
 次に薬事行政関係、これは13ページから17ページでございますけれども、これは承認・再審査・再評価制度、副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、12の副作用等の発現に係る提出書類に研究論文等を添付するために行う複製、これにつきましては著作権者の通常の利用を妨げず、かつ著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件として権利制限することが適当と考えられるとする意見が多数挙げられました。
 なお、3医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、製薬企業が行う論文の複製頒布の場合ですけれども、これにつきましては、当面は構築されているシステムが関係者の最大限の努力の下、使用料の徴収の観点から有効に機能し、著作権処理の適正化が行われていくか注視することとするが、医薬品等の適正使用に必要な情報提供の複写の実態を十分に踏まえた上で、著作権者等への影響を勘案し、適切な措置について引き続き検討を行うことが適当とされました。
 次に図書館関係、これは17ページから29ページでございますけれども、1他の図書館等から借り受けた図書館資料の複製及び2図書館間におけるファクシミリ、電子メール等を利用した著作物の送付、これらにつきましては、権利者団体と図書館関係者間において協議を行っているところから、協議の状況等を踏まえて検討を行うことが適当とされました。
 なお、その他の論点、3から6でございますけれども、これにつきましては、要望内容や実態等を踏まえた上で、現行法の枠組みでどこまで対処が可能であるかを含め、必要に応じ検討することが適当であるとされました。
 次に障害者関係、これは29ページから33ページでございます。1視覚障害者情報提供施設等において、専ら視覚障害者向けの貸し出し用に供するため、郵送の代替手段として公表された録音図書を公衆送信すること、これにつきましては、視覚障害者による録音図書の利用を促進することが情報通信技術のもたらす利益を社会的弱者に広く及ぼすという意味で、極めて大きな公益的価値を有すると認められるため、対象者が専ら視覚障害者に限定されることを条件に、本件要望の趣旨に沿って権利制限を認めることが適当であるとされました。
 なお、その他の論点、2から4でございますけれども、これらにつきましては、提案者による必要性及び趣旨の明確化を待って、改めて検討することが妥当であるとされました。
 次に学校教育関係ですが、33ページから38ページですけれども、4同一構内における無線LANによる送信、これにつきましては、無線LANによる送信も通信の安全性の技術や送信の機能等が有線LANと同等であると評価できるという観点から、公衆送信の定義から除外することが適当であるとされました。
 なお、その他の論点、12でございますけれども、これにつきましては、教育行政及び学校教育関係者からの具体的な提案を待って、改めて検討することが適当であるとされました。
 その他の問題、これは38ページでございますけれども、以上の権利制限の各課題に合わせて、権利制限のうち適当な事項を政令等へ委任することについても検討を行いました。これにつきましては、現在の著作権法は細かすぎる面もあり、社会情勢の急激な変化等にも迅速に対応できるように、技術的な事項については積極的に政令等に委任することを考慮すべきであるとされました。
 次に検討内容の2.「私的録音録画補償金の見直しについて」でございます。家庭内等における私的な複製につきましては、第30条第1項により、例外的に権利者の許諾なく行うことができるとされておりますが、デジタル方式の録音・録画機器の普及に伴い、著作権者等の経済的利益が損なわれるようになった状況に対応するために、私的録音録画制度が導入されております。第30条第2項でございます。
 この私的録音録画補償金につきましては、「ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定」、「汎用機器記録媒体等の取扱い」、「政令による個別指定という方式」の各論点について検討を行うとともに、「私的録音録画補償金制度の課題」の検討も併せて行いました。報告書では39ページ以降で私的録音録画補償金の趣旨や実態等について概観した上で、各論点の検討結果につきましては52ページ以降に記載されております。
 まず、ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定につきまして、これは52ページでございますけれども、まず補償金の対象としてハードディスク内蔵型録音機器等を追加指定すべきかについてでございますけれども、この点につきましては賛否をめぐり、委員の間で見解が大きく分かれている状況の下では、本委員会としては現時点で内蔵型機器の指定を行うことは必ずしも適当ではないと思料し、来年以降、私的録音・録画の検討において補償金制度について抜本的に検討を行う中で検討すべきであるとされました。
 次に汎用機器記録媒体等ですけれども、これは53ページでございます。パソコン等のいわゆる汎用機器記録媒体を補償金の対象とするべきかについてですが、これは録音や録画を行わない購入者からも強制的に一律に課金することになり、制度の対象とすべきではないとする意見が多数挙げられました。
 なお、汎用機器等の取扱いは、今後の私的複製における重要な課題であることから、来年以降の私的録音・録画の検討の中で十分な検討を行い、結論を得ることが必要であるとされました。
 次に政令による個別指定という方式でございますけれども、これは53ページでございますけれども、これは現在、私的録音録画補償金制度の対象は政令で個別指定されておりますが、このような方式について法的安定性、明確性の観点から、現行の方式を維持するべきであるとする意見が多数挙げられましたが、補償金制度の見直しの際に併せて検討すべきであるとされました。
 それから、私的録音録画補償金の見直しについてですけれども、私的録音録画補償金制度につきましては、今回の検討の過程で補償金制度の在り方について様々な問題点や社会状況の変化の指摘があったことを踏まえ、私的録音・録画についての抜本的な見直しや、補償金制度に関し、廃止やその骨組みの見直しや他の装置の導入等も視野に入れて、抜本的な検討を迅速に行うべきであるとされました。
 次に検討内容3.「デジタル対応」でございますけれども、これは機器利用時・通信過程における一時的な固定、デジタル機器の保守・修理時における一時的固定等、技術的保護手段の規定の見直しの各論点は、デジタル対応ワーキングチームで検討された後、本委員会で報告、検討が行われました。報告書の56ページ以降を御覧ください。
 これらの事項のうち、デジタル機器の保守・修理時における一時的固定について、保守・修理時に複製物を破棄することを条件として、機器に取り込まれたコンテンツを機器の保守・修理のために一時的に複製することができるよう、権利制限を認めることが適当とされました。
 また、その他の事項につきましては、デジタル対応ワーキングチームで適宜引き続き検討することとされました。
 次に検討内容4.「契約・流通」でございますけれども、これは報告書の91ページ目以降の「契約・利用について」を御覧ください。
 ここでは「著作権法と契約法の関係について(いわゆる契約による著作権のオーバーライド)」及び「著作権法第63条第2項の解釈について(許諾に係る利用方法及び条件の性質)」、次に「著作権の譲渡契約の書面化について」、それから「著作権法第61条第1項の解釈について(一部譲渡における権利の細分化の限界)」、「著作権法第61条第2項の存置の必要性について」、「未知の利用方法に係る契約について」の各論点が契約・利用ワーキングチームで議論された後、本小委員会で報告・検討が行われました。
 譲渡契約の書面化や未知の利用方法などについては実務的にも重大な問題であり、他の事項も含め、契約・利用ワーキングチームで適宜引き続き検討することとされました。
 それから検討内容5.「司法救済」でございますけれども、これは報告書の139ページ目以降でございます。いわゆる「間接侵害」規定の創設の必要について司法救済ワーキングチームで議論された後、本小委員会で報告・検討が行われました。これにつきましては、比較法研究を含めた総合的な研究を踏まえた上で、さらに検討を継続すべきものとされ、司法救済ワーキングチームで引き続き検討することとされたところです。
 次に検討内容6.「裁定制度の在り方について」でございますけれども、これは報告書の160ページ目以降を御覧ください。
 裁定制度の在り方といたしましては、「著作権者不明等の場合の裁定」、「著作物を放送する場合の裁定制度」、「商業用レコードへの録音等に関する裁定制度」、「翻訳権の7年強制許諾」、それから「新たな裁定制度の創設について」の各論点が契約・流通小委員会で議論された後、本小委員会で報告・検討が行われました。現在の裁定制度の廃止や新たな裁定制度の創設は慎重な検討が必要であるとされ、著作者不明の場合の裁定制度については、制度を有効に活用するためには制度面や手続面の改善を行う必要があるとの意見がございました。
 報告は以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御報告につきまして、御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。はい、金原委員、どうぞ。

【金原委員】 権利制限規定、権利制限の見直しについてですが、ここで報告書に含まれております特許あるいは薬事、あるいは教育という問題について、非常に公共性の高いということはよくわかるところでありますが、見直しをするに当たって、ぜひ考慮していただきたいのはベルヌ条約との整合性であります。
 ベルヌ条約では御承知のとおり、公共的なものについての要素は入っておりません。特別な場合であるか、あるいは著作物の通常の利用を妨げるかどうか、あるいは著作者の正当な利益を不当に害するかどうか、この3点について検討を加えなければならないわけですが、報告書にあります特許、薬事、教育というところにつきまして、そのような部分において利用される著作物というものが、そのような市場向けに作られている場合には、やはり著作物の通常の利用を妨げるということになるのではないかということをぜひ考慮した上で進めていただきたい、というふうに思います。
 それは教育の場面でもまったく同じことでありまして、教育、特に教科書の類、参考書の類については、そのようなものが複製利用されるということについては非常に大きな問題であるというふうに考えております。
 それから薬事の3番目の項目につきましては継続審議ということでありますが、9月30日の法制問題小委員会でも非常に膨大な量の複製が行われている、4社で150万ページという報告がありましたが、非常に膨大であるということを考えますと、この部分においても著作者の正当な権利を不当に害するという要素が非常に強いものでありますので、その辺についてはぜひ慎重に、継続審議するにしても慎重に対応していただきたいと思います。
 それから薬事のところで報告がありますが、製薬企業が複製物を提供するということは直接の対価を得るものではないということでありますが、製薬会社と医療従事者というのは業務の対等、対応する立場でありまして、複製物が提供されるかどうかということは業務に密接に関係があるというふうに私は思います。したがって、その辺も含めて検討いただきたいと思います。
 それから最後、42条との関連ですが、現在の42条は行政目的における内部利用でありまして、それを対外的なことまで含めて同様の趣旨であると考えるのは少し行き過ぎではないかなというふうに思います。あくまでも内部資料としての利用ということに限定されたのが42条でありますので、これを対外的な頒布まで含めて延長線上である、あるいは同種であるということまで含めて考えるのは少し拡大解釈があるのではないかなというふうに思います。
 それから、ところどころに入手困難、これは許諾の入手困難という意味であると思いますが、現在権利団体が機能しておりますので、入手困難という状況はないし、時間がかかるという状況もないのではないかというふうに思います。その辺も含めて御検討いただきたいというように思います。以上です。

【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。ほかに御意見、はい、それでは神山委員、どうぞ。

【神山委員】
 今の金原委員の御意見にも関連するのですけれども、私はこの前のこの分科会でもちょっと発言したのですけれども、この今回の権利制限、特に特許、薬事に関する権利制限には、私ははっきり言って反対です。
 なぜかということなのですけれども、そもそも著作権法上で権利制限というのがなぜ認められているかということを考えてみますと、例えば引用というのはちょっと考え方が違うと思うのですけれども、私的複製を除けばその大部分は例えば教育目的、あるいは福祉目的、例えば点字図書とか録音図書とかですね。あるいは図書館での利用とか、42条の裁判や行政の目的もそうでしょう。そのほかの例えばそういう事情がおありですとかってありますけれども、細かいものは。いずれも基本的にはその利用の目的が極めて公共性あるいは公益性という観点での利用であることと、それからもう1つ、私的複製も含めてそうなのですけれども、その利用の形態が非営利であるということだと思うのですね。
 例えば教育目的でも、35条では営利を目的としない教育機関という限定を加えているくらいですから、そういう意味で公共性、公益性、あるいは非営利の利用であるということで権利者側も権利制限することにいわば納得しているという部分があると思うのです。
 ところが今回提案されている特許とか薬事とかというのは、例えば特許を得たい、あるいは新薬の承認を得たい、副作用情報を提供する必要がある。こういったことはいわば営利を目的としている一私企業の、まさに営利を目的とした行為に対して権利制限を認めようということで、私はこれははっきり言って筋が違うと思います。
 例えば特許を得るために必要な手続がある。その必要な手続のためにコストがかかる。それは特許を得たいという企業が当然に負担すべきものであって、それに権利制限を求めるというのはいかがなものかと私は思っております。
 副作用情報の提供なども、これは企業の社会的責任として当然自分のコストで行うことであって、これを権利制限してほしいというのもいかがなものかという感じがいたします。
 それから先ほど金原委員からもお話がありましたけれども、入手が困難であるということは、実態からいえば、必要な情報を探し出すことが大変だと。そのために今、特許関係等では専門のリサーチャーがいて、図書館にこもってそういう文献を探してらっしゃる。企業がそういうリサーチャーに頼んで必要な文献を探している。こういう実態があるわけですね。そういう実態がある中で、実際に必要な情報が見つかれば、そこから先の許諾を得るということは、これは権利処理団体が今だんだんできている中ではさほど面倒なことでもないし、権利制限したから入手が容易になるわけでもないわけですね。必要な情報を探し出すまでは大変。そのためにリサーチャーにお金を払って頼んでいる。ところが、著作権者にはお金を払いたくないというのも、これまた変な話だと思います。
 特許権、著作権、いずれも知的財産権です。特許権の保護を得たいから著作権の尊重についてはちょっと勘弁してほしいというのは、ちょっと虫のいい要求ではないかなと。また、企業のコンプライアンスという観点から見て、少し違うのではないかなと、私はそう思います。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。ほかに御意見、いかがでしょうか。

【中山主査】 よろしいですか。沢山意見がございました。特許1つだけとってお答え申し上げますけれども、これは特許の出願人が自分の利益のためにコピーをするということではなくて、むしろ出願された特許が無効原因を含んでいるということで、第三者がこの特許を潰すために、あるいは特許の権利の範囲を狭くするために用いるということが大半でして、出願人としてはむしろそんなもの出てこないほうが好ましいので、これは特許権者が自分の利益を得るために必要なものではなくて、特許という重大な権利が、瑕疵ある権利が社会で力を持たないようにするという、こういう公益目的もあるという点でございます。

【神山委員】 今の点についていえば、その特許を潰したいという企業は潰したいなら自分のコストで潰しなさいということです。

【野村分科会長】 瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】 今の複写の件ですけれども、今回の件で非常に公益性のある事業、複写というのは比較的地味な分野でございますし、小口で多数という特殊事情もございます。その中で迅速にこの3点に関わる権利制限をというお話がございましたけれども、基本的にこれは法律改正ではなくて、システムの改善によって解決すべき問題だというふうに私は考えます。
 というのは、先ほど金原委員や神山委員がおっしゃったような基本的な筋論があると思うのですけれども、基本的にシステムを改善しなければならないだろうと。実際に今の複写の実態として、日本国内の特に薬事に関わる支払い金額というのは非常に低いですね。欧米に比べまして、非常に低い金額だと。ということは、流通していないということなので、これはやはり権利者の側もシステム構築や何かを相当一生懸命やって欧米並みにしなかったら、国民の福祉にはやはり邪魔だてをしているということをいわれてもしょうがない。そういうところは反省すべき点はあると思うのですけれども、基本的にきちんとしたシステムを構築して欧米並みの市場規模、要するにきちんと対価をお支払いいただき、権利者もきちんとそれを許諾できるシステムを作っていくということが、それでほぼ改善されているだろうというふうに思います。
 ただ、基本的に私が今回ちょっと申し上げたいのは、公益性ということで権利制限を行うという基本的な問題について一言申し上げたいと思っております。公益性があるからといって権利制限を行うということは、権利制限は著作者の権利、これは財産権ですから、国民の特定の、著作者という特定の人間に福祉の負担を負わせて、そして公共性があるからといって権利制限をしていく姿勢はいかがなものか。
 確かにわれわれは、私も権利者の1人として考えますと、公共の福祉のために自分の財産権を自らボランティアとしてある程度出していくということに対して、否ということはありませんけれども、それが普通だということではないですよね。国民の特定の、著作者という特定の国民に福祉の負担を負わせて、それによって公益性を維持していくということは、これは基本的には一考の余地があるのではないかというふうに思います。
 今回は特に企業さんの、営利企業についての問題ですので、ともかくちょっと基本的な問題がまず論点が違うということと、先ほど申し上げたシステムの改善に対してお互いの協調と円滑な流通が必要であるということに対して、この2点についてここでちょっと申し上げておきたいと思って申し上げました。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。それではほかに御意見、どなたかございませんでしょうか。はい、三田委員、どうぞ。

【三田委員】 毎年、教育、福祉、図書館等から権利制限の拡大の要求が出てきます。先ほどまで各委員が主張されましたように、権利制限の拡大というのは権利者にとっては権利の剥奪でありますので、それに関しては慎重に考慮していただきたいと思います。
 一方では様々な利用者の立場を考えましたらば、新しいシステムの構築が必要であるということはわれわれも十分に理解しております。それに対応するために、例えばわれわれ文芸家協会では、私立の中学、高校の方々及び予備校の方々と新しい補償金制度ができないかということを検討しておりまして、実際に運用を始めております。それから現在交渉中でありますけれども、大学とも現在交渉しておりまして、35条範囲外の日常使用について、それから36条の入学試験について権利制限になっていない、例えばホームページに掲載するとか、そういうものについても何らかの形、例えば補償金制度というものを実施することによって対応するということを検討しております。
 そうなっても、文芸家協会に登録している著作者というのは著作者全体の一部でありますので、将来的には権利制限の拡大ということも検討しなければならないと思いますけれども、まず補償金制度の可能性について試みてみるということは有意義であろうかというふうに思っております。
 現在、利用者の方々から要求されております権利制限の拡大というのは、そういうことをまったく考慮せずに無償で提供せよということでありますので、そういう一方的な要求にはわれわれとしては簡単には応ずることはできないのですけれども、われわれとしては窓口を設けて、実際に利用者の立場に立って、支障のないような形で利用ができる方法を検討するということをやっておりますので、その成果を踏まえた上で来年以降は検討していただきたいなというふうに考えております。
 例えば視覚障害者の団体が作りましたびぶりおネットというシステムについては、システムのスタートの段階からわれわれの意見を取り入れてもらって、われわれはこういう支障が出るのではないかという提案に対して、十分に対応してシステムを作っていただいております。ですから権利制限の拡大の要求、今回やりましたけれども、われわれとしてはどうぞやってくださいというふうに安心して答えることができるわけですね。
 同じように、公共図書館においてなぜ録音図書の配信ができないかというと、そこにはいろいろな障害があります。例えば視覚障害者というのは非常に限定されているわけでありますけれども、公共図書館ではそれ以外の障害者に対しても録音図書を貸し出しております。
 これは実は問題でありまして、例えば読書障害の児童というのがおります。それから脳梗塞などで識字障害ということが起こります。それから寝たきり老人というような方で、自分でページがめくれない方がいらっしゃいます。そういう方たちにも録音図書を提供するということは、私自身は必要なことであるというふうに考えておりますし、私自身、やがて病気になって識字障害になるだろうし、寝たきり老人にもなる。ここにいらっしゃる方、皆さんいずれ寝たきり老人になるだろうと思うのですね。そういうふうに自分自身のことと考えれば、そういうものに対してどうするかということは十分に検討しなければならないというふうに考えるのですけれども、実際問題、それをやってみるということになりますと、その障害がどの程度であれば、これはどうしても対応しなければならないということになるのか。
 例えば寝たきり老人というものも、本当に起き上がれない方なのか、ずぼらで寝たままになっている方なのかという、その境目をはっきりしておかないと、どうぞやってくださいという形にはならないし、われわれ著作者だけではなくて出版社等も、際限もなく権利制限が拡大されてしまうのではないかという不安があるわけですね。
 これに対しては文部科学省や文化庁だけでは対応できない問題であろうと思います。障害の認定の基準をはっきりするとか、そういうことが必要になってきますけれども、そういうことを何らかの形で文化庁にお願いをして、厚生労働省なりに働きかけて、障害とは何かということを考える。そういうことをやっていただかないと、権利制限の拡大に簡単には応じられないということがあります。
 そういうことを考慮していただかないと、来年も再来年も同じような形で利用者の方から権利制限の拡大の要求が出てきて、われわれはそれには応じられないと、押したり引いたりの綱引きが無限に続くことになってしまいます。もう少し具体的にどうすべきかということを考えながら検討していただきたい、というふうに考えます。以上です。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。はい、加藤幹之委員。

【加藤(幹)委員】 日本経団連の代表の委員として、一言コメントさせていただきます。御承知のとおり、日本経団連は著作権に関連して権利を沢山お持ちの企業、並びにそれを利用させていただく企業、いろいろな会社が参加されております。
 今、中山先生からずっと法制問題小委員会の御報告を伺いまして、本当に著作権というものがいろいろな人々に関与する、非常に広い広がりのある問題を持ってきているなというふうにつくづく思いました。大変難しい問題を広く取り扱っていただいた上で、ここまで成果を出していただいたことにまず感謝申し上げたいと思います。確かに今、いろいろと継続審議になっている点とか、内容についても御意見がございましたけれども、それ以上に多くのことをまとめていただいた、決めていただいたということを、まずその成果を率直に評価させていただきたいというふうに思います。
 さらに検討を継続する事項につきましては、これだけまとめていただいたこの成果をもとに、審議の経緯、内容、十分に踏まえてその整合性をとった形で進めていただきたいと思います。
 それから先ほどから例えば非特許文献、薬事行政に関わる複製等、権利制限の点についての御指摘がございましたけれども、われわれは現在まとめていただいた報告書はいろいろなバランスをよく考えていただいて、権利制限を一定の範囲で、限られた範囲で認めるべきだということでございまして、その内容については異論はございません。その中で権利制限として認めるべきだということになった点については、法律には反していないということを早急に確認する必要があるという意味でも、速やかに法律の改正に向けて最後まで努力を継続していただきたいというふうに思います。
 権利制限以外にいろいろな継続審議事項というのがありますけれども、とりわけこの中で取り上げられている私的複製の見直し、並びに私的録音録画補償金制度、この辺りにつきましては産業界におきましてもいろいろな意見がございますし、いろいろなお立場からまだまだ検討を継続していただく必要があるものだと思います。
 ただ、先ほども申し上げましたとおり、ここまで具体的な問題を御指摘いただいているわけですから、この報告書の線に沿って、この内容をベースにして、さらに具体的に著作権本来の趣旨を実現するためにどのようなことが必要かということを検討していただきたいと思います。
 特に今後の継続審議事項、いま申し上げました私的録音録画補償金制度等の継続審議におきましては、せっかくまとめていただいた内容について不用意に議論を蒸し返すことのないように、その前提で議論を進めていただくことが大事であると思います。
 2つ目に、実際上、この分野の技術というのはどんどん進んでおります。いろいろな問題が新しい技術、ビジネスの変化に応じたものである必要があるということで、もう一度いろいろな方々の御意見を聞いていただいて、実務的な解決をぜひ進めていただきたいというふうに思います。
 3つ目に、当然法制問題小委員会で今まで検討いただいた中について、実務的な問題があるとは言いながらも、それがまた法律の見直しとかということにつながる可能性があると思いますけれども、そういう法律問題がもし議論される必要がある場合は、引き続き現在の法制問題小委員会で御検討いただくということをお願いしたいと思います。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。それでは岡田委員。

【岡田委員】 岡田でございます。私的録音録画補償金見直しについてのところでございますが、このほどハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定が先送りということで決定したようでございますが、私は今でも現行の制度の下で補償金支払いの対象とすべきであって、補償金制度の抜本的な検討とこれとは別問題だと考えております。
 この報告書(案)では39ページから、縷々権利者の権利が侵害されているということが述べられておりまして、これをずっと読んでいくと、すぐに政令指定をしなければならないという結論に達するのかと思うとそうではない。なぜこのような権利侵害が確認されているのに政令指定に至らなかったのかということに関して、もう少しここに書かれている以上の、例えば法律的なネックが何だったのかとか、そういうことについて詳しくお聞きしたいと思うことと、科学技術はどんどん進んでいくわけでして、今度再検討に入る時にもっと具体的に実効性のある解決策をしっかり見出していただきたいということを期待いたします。
 そして今、加藤委員がおっしゃったことですけれども、この報告書に書かれていることを蒸し返すことなく前提とした上で議論をしていただきたいとおっしゃいましたが、これは報告書であって絶対的なものではないわけで、これの中に間違いがあった時に、これを絶対的なものとして議論を進めていくというのは、そこからまた間違いが広がるということでして、蒸し返しだとか、もう一度振り返るということは大切なことです。この報告書を前提としなければならないという考え方はちょっとおかしいのではないかなと思います。
 以上です。先ほどの質問に対して答えていただきたいのですが。

【中山主査】 iPod等に課金をしないことが権利を侵害しているということではないわけです。権利というのは現在著作権法に書かれている内容が権利であって、著作権法では政令で指定するとありますから、政令で指定されていないものについては権利の侵害はありません。けれども、実際上の利益の侵害、あるいは不公平感はあるかもしれませんが、権利と事実上の利益の侵害は違います。もし権利侵害があるとすれば、これは直ちに違法ですから何とかしなければいけないということになるわけです。
 それを前提としてお話しいたします。これは私見も若干入っているかもしれませんけれども、著作権の全体のシステムというものは、これは利用者から権利者へ適当な金額が還流されるというところに意味があるわけです。その還流される方法として、現行法はデジタルについては補償金という制度を作ったわけです。この補償金制度を作る時には、恐らくそれが最良であると考えられたし、恐らくそれ以外にはなかっただろうと思われます。
 しかし、時代の進展によって、その補償金制度が最良のシステムであるかどうかということについて疑問が出てきたわけです。現在の状況を見ますと、これは個別的な課金というものがすべてできないというわけでもないし、すべてできるというわけでもないという、中間的な段階にあるわけです。この中間的な、中二階的な現在の状況を踏まえて、先ほど言いました利用者から権利者へいかにしてうまくお金を還流させるかという、そういう抜本的なことを考える時に来ているのではないかというのが、この報告書であります。
 報告書では、iPod等に課金をすることはけしからんとか、課金すべきである、ということについては述べてはいない。もっともっと大きな問題も含めて、30条全体がどうかは別といたしまして、30条の見直しを早急に行わなければいけないという、こういう結論です。
 したがいまして、これは利用するほうは何でもかんでも、ただで利用していいということを言っているわけではありませんし、法制問題小委員会でもそういう意見は皆無でした。補償金制度を続けるかどうかは別として、見直しも含めて新しいシステムを考えましょう、早急に考えましょう、こういう結論です。

【野村分科会長】 大林委員、どうぞ。

【大林委員】 私的録音録画補償金制度のところなのですけれども、この3つの方針、それぞれ最後は検討するという文言で終わっていますが、これからここで、この案に対して何らかの意見を闘わせて、いろいろなものがひっくり返って行くというような場ではないのかなということをわきまえた上で申し上げます。3つの方針が出ました。それぞれ委員の皆様が真剣に御検討なさった結果だと思いますし、これはこれとして出て来たものに対しては有り難く思っておりますが、ここに書かれている議論の中で、いろいろなことが並列的に出ています。
 そのことは、議論が闘わされる中で、消化しきれていないということであると思います。多分検討するということでこれからつながっていくのだろうと思いますが、ここでちょっと質問しますけれども、以後のこの小委員会というものはどういう委員構成になって、議論をどういう形で進めるのでしょうか。利害関係者はここには入っていないということをおっしゃっていらっしゃいましたが、ここまできちっとした方針を出されたわけですから、これ以後は細かいいろいろなことが出てくる。具体的な問題をと先程も御意見がありましたが、そうした具体的な問題が出てくるわけですから、ぜひ権利関係の方々、直接の当事者の方々を入れていただいて、激論でも何でもやったらいい。せっかくこういう使用者それから権利者のバランスがとれたものでやってきている制度を廃止する、あるいは変える、という形で見直しをするということなのですから、はっきりその議論は闘わせた方がいいと思います。
 何故かと言いますと、例えば二重徴収に当たるという意見の論旨の中に「ユーザーの複製を前提とした配信サービスにおけるビジネス問題云々」とあります。別なところの制度上の問題点というところで、この制度に対する反対意見、無くした方がいい、あるいは大幅な見直しでしょうか、多分無くした方がいいという意見なのかと思いますが、そこにはこうあります。「複製に用いられる汎用的な機器や記録媒体を私的録音・録画に用いられる実態があるが、仮に指定すると音楽録音等に使用しない者にも負担を強いる」つまり、ここでは実態を認めつつも「音楽の複製・録音等に使用しない」そういう人が前提となっている。しかし、その前では複製を前提としている。私の誤解かもしれませんが、どうもこの辺が矛盾した意見がそのままになっていると思われる。この辺も整理する必要があるのではないかということも含めて、やはり実質議論の中に当事者である権利者の方々をぜひ入れていただきたい。
 そして、実演家にとって、この議論の中で不変のものがあると思います。それはソフトを作る、流通させる、そしてソフトを享受することの中で、ソフトを作る関係者とそれを利用して利益をあげるハードの関係者、ソフトがあってハードがあるというこの関係はもう絶対的に変化がないわけです。その中でオリジナルなものを作っていくクリエーターの人たちに対して、きちっと目を行き渡らせて行くことが大切です。そもそも著作権法はということは、この場ではもう言いませんけれども、以上のことはやはりきちんと押える必要があるのではないでしょうか。
 今後の議論では「著作権法そもそも論」にもう一度返って、全体はどうかということを俯瞰で見ながら、いろいろな直接的利害関係の方々を入れた中で話し合いを進めていくようお願いできないでしょうか。意見のぶつかり合いは当然ですし、そういう形での2年間の検討ということであれば、それは大きな意味をもっていくのではないかと考えます。
 産業が発展して行くということは必要でありますし、エンドユーザーのことはこれからも考えなければならないことに変わりはありません。しかし、ここに御参加の皆様方すべてがエンドユーザーでもあるように、エンドユーザーの気持ちや考え方というのもそれぞれいろいろでありますから、それを反映させつつも、次の議論では、くどいようですがきちっと関係者を入れた議論をするという方向でお願いしたいと考えております。

【野村分科会長】 本日はこれ最後の分科会で、任期が終わるわけで、次期の分科会でどのようにこの問題を扱っていくかというのは、ここで決めるというような性格のものではもちろんないと思いますが、他方で検討課題としてこちら、今後も検討してくださいという、そういうところはあるので、ちょっとやや微妙なところかと思いますけれども、今の段階で事務局のほうで何かございましたら。

【甲野著作権課長】 事務局といたしましては、関係の方々の御意見をよく聞きながら、新しい体制での分科会長あるいは副会長によく御相談をして、御審議いただく案というものを作成して、今後の検討課題の体制を考えていきたいと思っております。

【野村分科会長】 佐野委員、どうぞ。

【佐野委員】 今の件なのですが、確かにそのとおりで、委員が替わるということもあると思いますが、1年間、約10回、御苦労なさってきたのをもう一度やり直すというのは非常に無駄があると思いますので、ぜひ今の現委員の方がいやでないとおっしゃるのだったら、ぜひ続けていただいて、この上に積み重ねていっていただきたいと思います。せっかくここまでの報告書が出たのですから、それを無駄にせずに、その上にさらに積み重ねるという形のほうが、もっと実効性があるのではないかなと思います。
 それから大林さんがおっしゃった利害関係者というのも、ぜひそういう意見があるのでしたら、さらに加えるという形で、委員の方を増やすという形で続けていくのもいいかと思いますが、とにかく現段階で今まで御苦労なさったこれを無駄にしないためには、ぜひ続けていっていただきたいというふうに思います。

【野村分科会長】 ほかに御意見いかがでしょうか。土肥委員、どうぞ。

【土肥委員】 法制小委に参加しておりました者として一言申し上げたいと思うのですけれども、権利制限を中心に各委員の議論、御意見、出ております。著作権も財産権として、これは公共の福祉の制限を受ける。これはもう当然でございます。したがいまして、この現行の著作権法制度がこの昨今の技術の進展、あるいは情報化社会の中でどういう形である必要があるか、これは非常に重要なところであります。
 先ほど来から補償金の問題が出ておりますけれども、十数年前に補償金制度が入って、その時にDRM、そういったものはなかった。しかし、DRMというのがいま現在完全かというと、そうでもないし、仮に10年後、DRMがすべてつけられるようになったとしても、著作権者はDRMをつけないといけないのか。これもそういう義務は当然ないのだろうと思います。
 したがって、まさにこの端境期にあるこのいま現在において、権利制限がどういう形であるか、補償金を含めてどういう形であるかということをここで検討しよう、こういうふうに位置づけるわけでございまして、そこは十分にご理解をいただきたいと思います。
 補償金の問題にとりましても、確かに実際上、様々な不利益の状態が起きているのだろうと思われます。これについて、これは若干表現上の問題で気になっているので、細かいことで申し上げますけれども、「来年以降、引き続き検討する」と、こういうふうになっておりますが、これは恐らく平成18年1月の時点でこういうものを取りまとめていくわけでありますから、これは今年という意味ですよね。引き続き検討するという趣旨だろうと思いますので、そこは適宜御調整いただきたいと思いますけれども(※事務局注:御指摘のあった52頁23行目及び53頁20行目の「来年」は「今年」に修正いたしました。ホームページに掲載している資料は修正後のものです。)、いずれにしても補償金制度というものがこの端境期にあって、それから仮にDRMが完全にできるような時代になったとしても、補償金制度はなくならないのだろうと思います。
 そうするとこの問題は、引き続き非常に集中的な議論をしないと極めて現在利益を損ねておいでになるような場合がもしあれば、それは非常に不公平な状態が起こるのだろうと思いますので、そういう集中的な短期的な議論がなされる必要があると思います。
 それから権利制限のところで、どうも一般に権利制限をしてしまえば著作権者はゼロになるのではないかと、そういうニュアンスで御議論があるかもしれませんけれども、そこは確かに現在の著作権は許諾権構成になっておりますから、許諾権がなくて複製ができるという意味で著作権が制限されるだけだという、そういう話でありますので、さらにその中をいろいろ精査して、例えば著作権者の経済的な利益を反しないような仕組み、先ほど確か三田委員がおっしゃっておられたと思いますけれども、補償金制度のようなものを加える。こういう行き方も含めた、そういう権利制限の話を議論していこうというのがこの報告書の趣旨でありますので、情報化社会、技術が発展したこの今日、十数年前と比べてまったく違う、パソコンも当時にすれば家庭にどれくらい入っておったでしょうか。インターネットにつながった家庭がどのくらいあったでしょうか。
 そういう時代がまったく変わっている。そういう中で著作権をどうするか、制度をどうするか。しかも、それが市民権を得るような形で著作権制度を作ろう。こういう非常に燃えた、これだけボリュームの厚い報告書でございますので、ぜひとも私はこれに賛成しておりますけれども、御賛成をいただきたいというふうに思っております。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。それでは瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】 先ほどのお話でちょっと中山主査に御質問なのですけれども、この私的録音録画補償金の見直しの中で、結局最終的には私的使用の見直しまで踏み込んだ議論が必要というふうに、これは理解してもよろしいのでしょうか。
 といいますのは、いま現在のこの私的使用に関して、音楽だけでなく、今までは私的使用というのは非常に個人的に簡単にやるようなものだったのが、今や普通の人が簡単に家庭内ですごく精度の高い、本物と同じような複製が容易にできて、さらにそれを周りに発信もできてしまう可能性があるような、非常にその技術によって家庭内という今まであった定義というものが当てはまらなくなってきているような気がするのですね。
 でも、そういうふうな、家庭内の私的使用というのはどこまでが範囲で、どのようにして許されていくのか。例えば今までの権利制限の中で、例えば映画を無料で上映できるとか。映画というのは昔は大変だったかもしれないけれども、今はスクリーンとプロジェクター、コンピュータがあればすぐできてしまうとか。技術の進歩によって、今まで私的使用といっていた範囲で収まらない、もしくはその境界線が非常にグレーゾーンがものすごく増えてきてしまっていることで、音楽だけじゃなくて、いろいろな分野がものすごく潜在的に影響を受けていると思うのですね。そこの私的使用の範囲とか内容にまで踏み込んだ議論に、この録音録画の補償金の元にしていくというふうな方向づけなのかどうかについて、お伺いしたいと思います。

【中山主査】 瀬尾委員のおっしゃるとおり、30条にはいろいろな問題があることはもう広く知られているところでございますけれども、現段階では30条全体を見直すかどうかという点については議論しておりませんし、決まっておりません。これからの問題だろうと思います。
 ただ、この後は私の個人的な見解ですけれども、仮に30条を全部最初から見直すということになると、相当な期間が必要だと思います。1年や2年ではとても無理であろうという感じはします。
 したがって、とりあえずはハードディスク内蔵型とか、その程度の問題について処理をして早くやるのか、あるいは10年かけて30条を見直すのか。その辺りは私はまだわかりませんし、小委員会としてはその辺りは議論しておりません。今後の課題だろうと思います。

【野村分科会長】 それでは常世田委員、どうぞ。

【常世田委員】 権利制限について、図書館の立場から一言お話をさせていただきたいと思います。権利者側の方から見ると、図書館はあたかもエンドユーザーの権利代表のように見えてしまうかもしれませんけれども、図書館では実際には権利者の側の権利を守るために、体を挺して仕事をしているという面もございます。実際に図書館において権利制限を巡って利用者からのクレームをうけて、図書館職員が小突かれたりすることは、日常的に起きている状態です。私たちは権利制限について、利害が鋭く対立する現場で、双方の権利を守るために働いているという認識があります。
 図書館で仕事をしておりますと100年、200年、場合によっては1000年たってしまったような著作物を扱うことが珍しくない。そういう私たちの感覚からしますと、50年、70年という非常に限定された期間についての検討だけというのはどうも心に響いてこない。著作権が切れた後の100年、200年、1000年、2000年という長い期間に著作物が日本、あるいは人類全体に対して、あるいは産業界や文化や、国の存亡に関わるような事柄に対して、多様な影響を及ぼしていくということが、著作物そのものについての最も重要なポイントではないかと感じるわけです。
 そのような長い期間、著作物が人類の社会に及ぼす影響と、権利が存在している期間の間のバランスをどうとるかという冷静な議論が必要ではないかと思います。
 ミクロに見た場合、確かに権利制限があった場合、権利者の側に経済的損失が生まれる可能性は否定できないわけではありますけれども、しかしそれによって産業が振興し、経済が活性化し、それによって日本全体が豊かになっていく。それが回り回って、権利者の皆さんに対しても経済的な収入が増えていくというようなことがあるのではないか。
 例えばアメリカでは高速道路はフリーウェーというように、無料で車を通してしまって、それによって産業振興して、全体の収入を増やしていくというような考え方をとっていると聞いたことがございます。長期的にマクロな視点で見た場合どうなのか、精査する必要もあるのではと感じます。
 図書館における権利制限について、個々のことについて少しお話をさせていただきます。他館から借りた本についてのコピーについては、いま権利者の皆さんの御理解を得て、ガイドラインというものが動き始めております。それによって一定程度問題は解決できると思います。しかし権利者団体にすべての権利者が参加しているということではありませんし、図書館というのは行政組織でありますので、ガイドラインというような法的に完全に策定されていないものについては、過剰に自己規制してしまう図書館が出てくる可能性があります。したがってガイドラインだけで完全に問題が解決したとは思っておりません。
 それからこの6つの要望について、委員の方がこの6つについてはすべて多数が支持したというふうな表現になっているにもかかわらず、継続というようなことになっているのは奇異な感じがしますし、前回の経過報告と比べると大幅に後退しているような印象を受けるのは、私だけではないのではないかと思っています。
 私が注目したいのは38ページの「7 その他」の部分の「積極的に政令等に委任する」というところで、ここが重要なポイントと考えます。法改正が大変であれば、政令等で対応するという手段もあるわけでありますので、今回のこの「積極的に政令等に委託する」という表現があるにもかかわらず、その手段をとられていないことについては残念だというふうに思っております。
 4番の再生手段の入手困難ということにつきましては、2003年の分科会の審議経過報告で明確に法改正をすべきだというふうになっているものでございます。最近の国会図書館の調査によりますと、同図書館が収集しているデジタル系のパッケージの50パーセント以上はOSとかアプリケーションのバージョンの変更によって再生が不可能になっているという報告があります。
 また、16ミリ映写機につきましては、国内外のメーカーはすでに生産中止しておりますので、16ミリフィルムの上映につきましては、部品が保証されるあと3〜4年の範囲しか保証されないというようなことが起きております。文化の継承という点からも早急に法改正の必要があると考えます。
 また、5番の公官庁の発行物について自由にコピーをするということについては、自由利用マークのことについて言及されておりますが、これは実効が上がっていないということで今回要望させていただいております。基本的に自由にコピーできるということにしておいて、不可の場合のみ許諾しない旨の表現をするほうが現実的ではないかと考えます。
 6番の障害者関係につきましては、これも前回もお話ししましたけれども、障害を持った方に関して実際に法の前の平等というものが保障されていないという非常に基本的なことが、憲法に保障されているものにも抵触するような状況だということをもう一度お考えいただきたい。
 それから視覚障害者についてはある程度保障があるのですけれども、それ以外の障害者については、先ほど三田さんのお話にもありましたように、まったく対応されていないというような部分があるということも御理解いただきたい。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、あと2つの小委員会の報告もございますので。

【中山主査】 よろしいですか。先ほどから権利制限につきましては、私企業の利益のためにやっているのではないかという、こういう御意見がありましたが、小委員会では別に私企業の利益というか、私企業のエゴを通すための議論をしているわけではないわけでして、例えば、先ほどの薬事行政につきましては一番念頭に置いているのは患者です。患者を目の前にして、早急に資料を提供しなければいけないという時にいったいどうしたらいいか。仮に権利者団体がうまい組織を作ってくれて、リーズナブルな対価で、かつ早急に対処してくれるのは、恐らく反対する人はいない。別に製薬業界に無料でコピーさせて業界を保護しようという考え方ではありません。
 特許もそうですけれども、特許制度について詳しくお話しする時間はありませんが、無効な特許が世間に出回るということは、これは公益に対して著しい影響を与えます。誰でも使える情報を公益代表である特許庁で審査をして、特別なものだけに独占権を与えている。本来なら特許庁が完全な審査を行えばよいのですが、それはとても不可能ですから、そのための資料として特許庁に情報を提供している。これは警察等にわれわれが情報提供するのと同じでして、単に公益代表の特許庁のお手伝いをしているわけです。その公益の点を考えているわけでして、結果的にある程度、私企業が無料でコピーできるという場合もあるかもしれませんけれども、あくまでも目標は公益です。しかし、だからといって、私企業には無料でいいかという点についてはすでに議論をしているわけで、その辺のバランスを常に考えているわけで、特定の私企業に利益を与えるという、そういう観点で議論をしてきたわけではないということを付け加えておきたいと思います。

【野村分科会長】 それでは法制問題小委員会の報告につきましては以上にしたいと思うのですけれども、検討事項の中身に関わる御意見、それから今後の検討の在り方についての御意見、いろいろいただきましたけれども、これらにつきましては次期分科会に事務局を通じてきちっと伝えていただいて、十分考慮していただくということにしたいというふうに思いますが、それでよろしいでしょうか。
 それでは続きまして、契約・流通小委員会の報告に移りたいと思いますが、土肥主査より御報告をお願いいたします。

【土肥主査】 それでは契約・流通小委員会より、検討結果について御報告いたします。この報告書の175ページ以下を御覧ください。実際の具体的な記述については177ページ以降ということになっております。
 まず、検討項目について最初にお話しいたしますと、本年度、本小委員会では、平成17年3月から平成17年11月まで、7回にわたって177ページのところにあります著作権等管理事業法の見直し等、それから214ページのところにございますけれども著作権契約の在り方等、それからさらに裁定制度の在り方について検討を行いました。
 このうち裁定制度の在り方につきましては、法制問題小委員会での検討に先立って検討を行ったものでありますので、本件の検討結果は先ほど法制問題小委員会の主査である中山委員からすでに御報告をいただいておりますから、ここではこれを除いた著作権等管理事業法の見直し等についてと著作権契約の在り方等についての2点について、御報告をいたします。
 それで、報告書の177ページ以下を御参照いただきたいと思います。著作権等管理事業法の見直しにつきましては、これは平成13年10月に施行されました著作権等管理事業法について、同法附則7条の制度の見直し条項に基づき、検討が求められたものでございます。
 検討に当たりましては、二度の意見募集を行い、その結果を踏まえつつ議論を進めたわけでございます。検討結果につきましては、以下のとおりということでございます。
 まず、法改正の必要性があるかどうか。こういうことでございますけれども、結論から申しますと、現時点で直ちに法改正をすべき事項というものはなかったわけでございます。
 まず、非一任型の管理事業の規制。これは179ページですけれども、以下から見ておるところでございます。それから管理事業者の役員の兼職の問題、これは184ページですね。それから管理事業者の守秘義務、これは186ページ。それから管理著作物等の情報提供、これも186ページ。それから管理権限の開示義務、これは187ページ。それからインターネットの公示、これが188ページにそれぞれ出ておるわけでございます。
 特に一番最初の非一任型の管理事業の規制の問題については様々な御意見があったところでございまして、これは179ページからそれらの意見の紹介をしておるところでございます。様々な意見を出していただいたわけでございますけれども、例えば兼業の管理事業者の問題、つまり一任型と非一任型を使い分けているのではないかというような問題とか、様々な問題をいただいておるところでございます。
 こういう御意見を踏まえて議論したわけでございますけれども、現行の法制度で対応できる部分も当然あることから、まず十分実態の把握に努める必要がある。その実態の把握に努めた上で、調査の結果ある程度の期間を経た段階で、改めて制度改正を検討する必要があるのではないかというのが、このそれぞれの項目についての法改正の必要性があるかないかの結論でございます。
 また、文化庁も管理事業法が適切に実施されるように、管理事業者に法律の枠の中で指導助言を行い得るところがございますので、そういった部分はきちんと法律上どおりに指導助言をしていく。あるいは、必要に応じてガイドラインを策定する。こういうことも書いておるところでございます。この辺りについては、それぞれのところを御覧いただきたいと思います。
 それから189ページ以下に、使用料規程及びそれに関する協議・裁定制度、これも出ておるところでございます。が、この使用料規程そのものは従前の認可制から届出制へということで、現行法を改めたわけでございます。つまり、事業者間の競争を通じて市場原理に委ねていくと、こういう考え方をとっておりますので、やはり3年という期間の経過の中では、いま少し現行法の仕組みというものの中で見守っていく必要があるのではないか。これは協議・裁定制度についても同じことでございまして、円滑に機能するように文化庁の指導助言、そういったものを図りつつ状況を見ていく必要があるのではないかということでございます。
 それから183ページのところに管理事業者への指導監督の的確な実施の問題があるわけでございますけれども、管理事業者への指揮監督が的確に実施されるように、定期的な報告聴取、及び定期立ち入り検査、管理事業者向けの講習会等の施策については、さらに内容の充実を図った上で今後も継続すべきである、こうしたところでございます。
 また、相当期間にわたり管理委託契約約款や使用料規程の未提出の管理事業者及び事業の実態がないと思われる管理事業者につきましては、業務の実態をよく調査した上で適切な監督を行う必要がある、こうしております。
 それから手続等の改善、これはいくつか出ておりますけれども、例えば185ページの届出事項の変更届出期間の緩和、それから188ページにあるところの管理委託契約約款・使用料規程のインターネットの公示、これについては現行法の枠の中で十分運用で対応可能であると、こう考えられますところから、さらに文化庁はその手続の改善等に配慮すべきであると、こうしておるところでございます。
 それから、報告書の214ページ以下を御覧いただきたいと思います。これは著作権契約の在り方等についてということでございます。
 本委員会ではコンテンツに係る著作者等とコンテンツ製作者等との契約や取引形態によっては、コンテンツの流通を不必要に制限し、分野によっては著作者等に不当な契約条件を強いている。こういう場合があるのではないかという指摘を踏まえ、望ましい契約システムの実現のために関係者がどのような方向性で取組むべきか、取組みを行うべきか、これについて検討を行い、以下のような提言をまとめております。
 まず、223ページを御覧ください。223ページのところに、まず(1)として書面による契約の促進と、こうあるわけであります。権利義務関係を明確にしまして、利用条件をめぐる事後的なトラブルを防止するために、必要に応じて書面による契約を行うのが望ましいということにしております。
 それから、さらにその下にコンテンツ、契約当事者間が納得できる契約内容の策定ですね。当事者が納得できる契約内容の策定の問題ですけれども、当事者双方が納得できる契約を結べるように、著作者等の交渉力が相対的に弱い場合には権利者の組織化を進め、コンテンツの製作者等との協議を通じて一定の契約条件を策定しましたり、また標準的な契約内容を含めたひな型や約款を策定したりする方法があること等々を指摘しております。224、225ページ辺りに出ているところでございます。
 それから(3)としまして、これは225ページですけれども、管理事業による著作権等の集中管理の促進でございます。一任型管理事業は、利用者側から見ますと一定の使用料を支払いさえすれば許諾を得られる仕組みであり、二次利用にかかる契約の円滑化のため有効であるといたしました。
 また、円滑な利用秩序を早期に形成するため、必要に応じて管理事業法の使用料設定の仕組みを有効に活用する必要がある。これは23条3項ですけれども、そういう指摘をしております。
 それから226ページの権利者所在情報の提供のところでございますが、著作物等の利用の際に、著作者等の特定を容易とするため、各権利者団体等が協力し、権利の所在情報を整理、提供する体制、これは様々な体制が考えられておるようでございますけれども、そういうものを整備していくことが重要であるといたしました。
 それから(5)、226ページですけれども、国内外の事例研究。これは著作権契約の在り方に関する今後の検討の基礎資料とするためにも、国内外の著作権契約の事例に関する情報の収集、分析、これが重要であるとしております。
 それから最後に(6)、227ページでありますが、文化庁の支援等でありますけれども、(1)から(5)の課題につきましては、むろんこれは当事者間で取組むべき事項でありますけれども、文化庁も著作権契約にかかる関連情報の提供や相談等への対応ですね。関係団体間の円満な合意形成向けた積極的な支援を継続的に行う必要があるとしておるところでございます。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。それではただいまの御報告について、御意見、御質問等ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。それでは引き続きまして、国際小委員会の検討結果について、道垣内主査より御報告をお願いいたします。

【道垣内主査】 それでは国際小委員会につきまして、御報告をさせていただきます。資料の3の229ページが扉になっておりまして、実際は231ページからのところでございます。
 国際小委員会は平成16年9月以降、2年間にわたりまして計8回の会合を開催し、議論を進めてまいりました。その検討の事項でございますけれども、4つございます。それぞれまた後で細かく申し上げますけれども、第1は放送条約への対応の在り方、第2番目にフォークロアの保護への対応の在り方、3番目にアジア諸国等との連携の強化及び海賊版対策の在り方、4番目がデジタル化に伴う著作権の課題への対応の在り方、以上でございます。
 検討結果につきましては、昨年9月の中間報告の段階で一度御報告させていただいておりまして、その時とは若干といいますか、全体としては重なるところがございますけれども、以下では前回から変更がありました点を中心にしまして、9月以降の国際的な動きや、あるいは意見募集の結果を踏まえた検討結果について御報告をさせていただきたいと思います。
 まず、232ページの放送条約への対応の在り方でございます。世界知的所有権機関、以下WIPOと申しますけれども、への検討状況の報告と、条約テキスト案の論点に関する議論を行いました。
 小委員会では、これまでの各国の提案、それから議論を踏まえまして、WIPOにおいて作成されました条約テキストについて検討を行い、総論としては、国際的な議論も熟していることから、早期採択を目指して努力すべきであるという結論に達しております。
 個別の論点でございますけれども4つございまして、放送条約の保護の趣旨、それから条約の保護の対象、支分権の内容、技術的保護手段及び権利管理情報という論点、4つでございます。このそれぞれにつきまして論点の整理をし、わが国の交渉方針について議論をいたしました。
 また、欧米からの提案がありますウェブキャスティングの保護につきましては、将来の国際的議論に備えて引き続き検討を進める必要があるとの意見が出されております。
 また、中間報告の後、昨年9月にWIPOの一般総会が開催されましたので、その結果についての記述を加えております。一般総会では同条約採択のための外交会議の開催可能性について議論されておりまして、一部の国の強い反対もあったようでございますけれども、そういうこともあり、さらに2回のWIPO著作権等常設委員会を開催して、再修正された条約テキスト案及びウェブキャスティングについての作業文書を元にその議論を加速し、昨年秋の一般総会において、2006年12月または2007年の外交会議の開催を求めるということにされております。
 また、この決定を受けまして、昨年11月には第13回WIPO著作権等常設委員会が開催されました。そういった情報がこの報告書の中には含まれております。
 2番目のフォークロアへの保護への対応の在り方、これは239ページ以下でございます。この点につきましては、WIPOでの検討状況の報告と主要論点についての議論を行いました。昨年6月の第8回WIPO遺伝資源、伝承の知識及びフォークロアに関する政府間委員会という会合がございまして、そこでその会期を延長して引き続き議論をするという方向になっております。
 わが国といたしましてこの問題に対しましては、制度を柔軟に選択し、自国の文化、慣習に合わせた保護制度を包括的に構築することを目指し、当面は条約ではなく、ガイドラインやモデル規定とする方向で議論することが適当であるというのが、この委員会の議論の結果でございます。
 3番目、244ページ以下のアジア諸国等との連携の強化及び海賊版対策の在り方についてでございます。現在、FTA交渉等を通じ、アジア諸国との連携が深まっている一方で、依然として大量の海賊版が流通しており、官民協力して海賊版対策に注力しているところでございますが、この小委員会といたしましては、今後の海賊版対策といたしまして5つの点の指摘をこの報告書の中でしております。
 1つは、侵害国等に対して働きかけを継続していくということ。2番目に、アジア諸国等における著作権制度及び著作権思想の普及への支援を行う。3番目が、わが国の権利者による積極的な権利行使を支援していく。4番目が、官民の連携の一層の強化。最後5番目ですが、欧米等との連携の強化。以上が重要であるとの指摘がございました。
 中間報告の後、APEC(エイペック)において日米韓がアジア地域における知的財産権の保護に関する取組みとして共同提案をした「模造品・海賊版対策イニシアティブ」に基づきまして、昨年11月にモデルガイドラインが合意されましたので、その旨記述を行われております。
 最後、4番目のデジタル化に伴う著作権の課題への対応の在り方、250ページからでございますけれども、この点についても国際小委員会としての立場からの議論を行っております。デジタル化、ネットワーク化の進展によって、P2P技術を活用したファイル交換やコンテンツの安全な取引を推進するデジタル著作権管理技術について、国際的な対応の在り方が課題になっております。これらの課題につきましては、技術の標準化や相互運用について関係者の自主的な取組みを尊重する一方、政府としては著作権関係条約への加盟の促進、国際的な裁判管轄、どこで訴えを起こすかということや、準拠法、どこの法律を適用するか、そういった問題の整理、さらには主要国間の連携強化等を進めることが重要であるという指摘をこの中でしております。以上が主要な4つの論点についての概要でございます。
 なお、昨年9月から10月にかけて、意見募集を行いまして、その中ではウェブキャスティングの保護の問題、それからファイル交換等におけるダウンロード行為及び映画館での盗み撮りの違法化、それから法定損害賠償制度の導入といった提案がございました。これらの提案は必ずしも国際小委員会だけの検討項目というのではなくて、むしろ法制問題小委員会の問題が多いかと思いますけれども、国内法制における検討とともに、今後検討が必要であるということで、この中間報告自体にはその点についての変更を加えておりません。
 以上、この国際小委員会といいますのは国際的な切り口で議論をするということでございますので、若干国内の議論とはオーバーラップするところもございますけれども、以上で報告とさせていただきます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それではただいまの御報告につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは以上で各小委員会の検討結果の御報告を終わりますが、資料3として配付されておりますように、このような体裁で当分科会の報告書というふうにしたいと思いますが、事務局から報告書の全体の構成と今後の取扱いについて、御説明をお願いします。

【甲野著作権課長】 それでは、御説明をさせていただきます。資料3の厚い報告書の案を御覧いただきたいと思います。表紙をめくっていただきますと目次がございます。ここにあります第1章から第3章までは、すでに本日各委員会の主査、小委員会の主査から御説明をいただいた部分でございます。そして分科会としての報告書ということでございますので、ここに「はじめに」と「おわりに」というものを付けさせていただいております。「はじめに」におきましては、これまでの経緯等々を記してございます。また、「おわりに」につきましては、今後継続して検討という事柄を書かせていただいているところでございます。
 そしてこの本報告書でございますけれども、「案」が取れまして本日御決定をいただいたということになりましたら、公表というふうに事務的にはさせていただきたいと思っております。
 さらに2月3日に当分科会の親委員会でもあります文化審議会が開催を予定されておりますので、そこで分科会長より、この報告書の内容について御報告をいただきたいと考えております。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。ただいまの御説明について、御質問とか御意見とかございましたら、御発言をお願いしたいと思います。
 よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。著作権分科会の報告書につきましては、このような形で決定とさせていただきたいと思います。
 本日は今期最後の著作権分科会になりますので、河合文化庁長官から一言御挨拶をいただきます。

【河合文化庁長官】 今期最後の著作権分科会の閉会に当たりまして、一言御挨拶させていただきます。
 御承知のように、知的創造活動の成果を適切に保護すると同時に、有効に活用していこうという機運の高まりに応じまして、「知的財産立国」の実現に向けて様々な取組みが進められております。文化庁におきましても、文化発展の基盤である著作権の分野について、このような動きに対応した施策を着実に進めてまいりました。
 著作権分科会におきましては、著作権法の課題を大局的・体系的な観点から抽出・整理をし、昨年1月に「著作権法に関する今後の検討課題」として取りまとめていただきました。
 今期の各小委員会におきましては、著作権法の整備やその運用に関する具体的な検討、前期から継続して行っておりました著作権等管理事業法の見直しに関する検討、国際条約など国際的ルールづくりへの参画の在り方に関する検討などの課題につきまして、さらに御審議をいただきました。
 本日、各小委員会における検討の結果について各主査より御報告をいただきましたが、委員の皆様方には御多忙の中、昨年の2月以来、各小委員会では合計22回の会議を開催していただくなど、熱心に御審議をいただきまして、今後の施策の方向性を示していただきました。これまでの皆様方の御尽力に対しまして、心から御礼申し上げたいと思います。
 この小委員会においては、今後も引き続き検討すべき課題として残されたものもあり、来期もそれらの課題について引き続き御検討いただくことが必要だと考えております。
 今期、委員をお引き受けいただいた皆様方のお力を再びお借りすることもあろうと存じますので、その際にはどうか御協力をお願い申し上げます。
 最後に、改めまして皆様方の御尽力に対し、厚く御礼申し上げまして、挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【野村分科会長】 それでは皆さん、どうもありがとうございました。最後に当たりまして、分科会長としても、大局的な観点から著作権法の課題を検討するということで、これが第1年目ということで大変過密なスケジュールでいろいろな問題を御検討いただきまして、誠にありがとうございます。この中で本日報告としてまとめられておりますが、いくつかすでに立法化の方向が結論として出ている問題がございますので、こういった問題については文化庁のほうで早急に立法化をお願いしたいというふうに思います。
 それからもう1つ、私的録音・録画問題を含めまして、今後の検討課題というのは沢山ございますので、これらについても適宜分科会で精力的に御審議をお願いしたいというふうに思いまして、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。
 それでは、今期の文化審議会著作権分科会はこれで終了させていただきます。御多用の中、各委員におかれましては誠にありがとうございました。

〔了〕

(文化庁長官官房著作権課)

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