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著作権分科会(第16回)議事録

1   日時   平成17年9月8日(木曜日)午前10時〜午前11時55分

2   場所   霞が関東京會舘「シルバースタールーム」(霞が関ビル35階)

3   出席者
   
(委員)
石井,入江,大林,岡田,加藤 さゆり,加藤 幹之,角川,金井,金原,神山,後藤,迫本,佐々木,佐藤,里中,佐野,瀬尾,大楽,辻本,常世田,土肥,中山,野村,松田,三田,村上,森の各委員及び大渕専門委員,茶園専門委員
(文化庁)
加茂川次長,辰野長官官房審議官,甲野著作権課長,池原国際課長ほか関係者

4   議事次第
   
1   開会
2   議事
(1)   各小委員会における検討状況について
(2)   その他
3   閉会

5   配付資料
   
資料1 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過(PDF:1,193KB)
(※諮問・答申へリンク)
資料2 著作権等管理事業法の見直しに関する報告書(案)
資料3 文化審議会著作権分科会国際小委員会中間報告書
(※諮問・答申へリンク)
参考資料1 文化審議会著作権分科会委員等名簿
参考資料2 「知的財産推進計画2005」(平成17年6月10日知的財産戦略本部)における著作権関係部分の抜粋
(※平成17年6月30日文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)配付資料へリンク)
参考資料3 「文化審議会著作権分科会・各小委員会 審議日程(予定)
参考資料4 文化審議会著作権分科会(第15回)議事録
(※第15回議事録へリンク)

6   議事内容

【野村分科会長】 定刻になりましたので、これから文化審議会著作権分科会の第16回を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 なお、事前に事務局からお知らせがございましたように、現在、政府全体でノーネクタイ、ノー上着という軽装を励行しているところでありまして、本日の本分科会でも軽装で差し支えないということでございますので、御了解いただきたいと思います。

 議事に入る前に、本日の会議の公開につきまして、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、すでに傍聴者の方に入場していただいているところでありますが、このことについて特に御異議ありませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことにいたします。

 また、前回の会議、2月の28日ですが、以降に事務局に異動がありますので、事務局から御紹介をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは御紹介をさせていただきます。4月1日付でございますが、文化庁長官官房審議官、それまで森口泰孝前審議官がおりましたが、交代をいたしまして、後任といたしまして文化庁文化財部長の辰野裕一審議官が着任をいたしました。

【辰野長官官房審議官】 辰野でございます。よろしくお願いいたします。

【甲野著作権課長】 また、7月20日付でございますが、文化庁長官官房著作権課に異動がございました。著作権調査官として山口顕前調査官が代わりまして、後任といたしまして白鳥綱重調査官が着任をしております。

【白鳥著作権調査官】 白鳥でございます。よろしくお願いいたします。

【甲野著作権課長】 また最後になりましたが、私、同じく7月20日付で吉川晃前課長の後任といたしまして著作権課長に就任いたしました甲野でございます。どうかよろしくお願いをいたします。

【野村分科会長】 それでは、まず事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 はい。それでは議事次第の1枚紙の下段に配布資料の一覧がございますので、併せて御確認ください。配布資料は合計3点です。資料の1が法制問題小委員会の審議の経過、資料の2が著作権等管理事業法の見直しに関する報告書の案、資料の3が国際小委員会の中間報告書(案)でございます。参考資料につきましては4点ございます。参考資料の1ですが、著作権分科会の委員等の名簿、参考資料の2が「知的財産推進計画2005」における著作権関係部分の抜粋、参考資料の3が著作権分科会・各小委員会の審議日程の予定、参考資料の4が前回の著作権分科会の議事録でございます。各資料の右肩に資料番号を付してございますので、御照合の上、万一不足等ございましたらお知らせいただきますよう、お願いいたします。以上でございます。

【野村分科会長】 それでは議事に入りますが、本日は各小委員会における検討状況についての報告が議題となっております。本分科会に設置されている各小委員会におかれましては、それぞれの分野において精力的に検討を進めていただいておりますが、今後一般からの意見募集等も行い、さらに審議を進めていく予定と聞いております。本日の会議においては、意見募集に先立って各小委員会における検討の状況について、各主査から御報告をいただきたいと思います。

 それでは最初に法制問題小委員会において取りまとめました「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 審議の経過」につきまして、中山主査より御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【中山主査】 中山でございます。法制問題小委員会より審議の経過を御報告申し上げます。

 まず検討の経緯でございますけれども、本年1月24日に本分科会にて取りまとめられました、「著作権法に関する今後の検討課題」における検討課題のうち、本小委員会の委員及び関係団体から多数の改正の要望が出され、制度と実態の乖離が見られるなどにより、緊急の検討を要する課題といたしまして、権利制限の見直しと私的録音録画補償金の見直しについて取り上げ、検討を進めてきたところでございます。

 また、併せて本小委員会のもとに「デジタル対応ワーキングチーム」、「契約・利用ワーキングチーム」、「司法救済ワーキングチーム」の各ワーキングチームを設置し、検討を進めるとともに、裁定制度のあり方に関しては、著作権分科会契約・流通小委員会において検討を行い、それぞれから検討結果を御報告いただきまして、本小委員会において議論を行いました。

 本小委員会では本年2月から7回にわたり議論を進めてまいりましたが、このたび「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 審議の経過」を取りまとめましたので、本日御報告を申し上げる次第でございます。

 次に検討の項目でございますけれども、これにつきまして大きく分けて以下の項目について議論を進めてまいりました。

 1.権利制限の見直しについて、2.私的録音録画補償金の見直しについて、3.デジタル対応について、4.契約・利用について、5.司法救済について、6.裁定制度の在り方についてでございます。

 次に検討内容ですけれども、検討内容の1.権利制限の見直しにつきまして、御報告申し上げます。

 まず検討内容1、「権利制限の見直し」についてですけれども、「特許審査手続に係る権利制限について」、「薬事行政に係る権利制限について」、「図書館関係の権利制限について」、「障害者福祉関係の権利制限について」、「学校教育関係の権利制限について」の各論点について検討を行いました。「審議の経過」の2ページ以降を御参照ください。

 まず、最初に「特許審査手続に係る権利制限について」でございますけれども、行政目的のために必要な場合については、内部資料として必要と認められる限度においてのみ複製が許容されております。42条です。特許審査手続において、審査官や出願人が非特許文献を複製したり、これは12に書いてありますけれども、複製をしたり、それから特許庁への情報提供のために非特許文献を複製すること、これは3に書いてありますけれども、これにつきましては非特許文献は入手困難なものも多く、審査に必要とされる迅速性、正確性の確保の観点から権利制限を認めることが必要であるとする意見が多数挙げられました。

 なお、その場合、複製物が当該手続外で利用されることがないことが担保されるよう配慮する必要があり、また特許法のみならず、実用新案法、意匠法、商標法についても同様に考える必要があるとの意見がございました。

 また、非特許文献を出願・審査情報の一環として電子的に保存するために特許庁による複製、これは4でございますけれども、これにつきましては著作権法42条の行政目的のための内部資料として必要と認められる場合に該当するため、現行法でも可能と考えられるとする意見が多数挙げられました。

 次に「薬事行政に係る権利制限について」でありますけれども、承認・再審査・再評価制度、それから副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、副作用等の発言にかかる提出書類に研究論文等を添付するために行う複製、これは12ですけれども、これにつきましては権利制限を認めても著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件として、行政手続のために必要と認められる場合の一つとして権利制限することが適当と考えられるとする意見が多数挙げられました。

 なお、医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために製薬企業が行う研究論文の複製頒布、これは3ですけれども、これにつきましては当面構築されている許諾システムが有効に機能していくか見守ることとするが、条件を付した上で権利制限を認めること等について検討を行うことが適当であるとの意見がございました。

 次に「図書館関係の権利制限について」ですけれども、他の図書館等から借り受けた図書館資料の複製、これは1ですけれども、これにつきましては借用を依頼し、現に責任を持って当該資料を管理している貸出先の図書館等において、著作権法31条1号の条件を満たす場合には、当該資料の複製をすることができるとする方向で権利制限を認めるのが適当であるとする意見が多数挙げられました。

 なお、その他の論点、2から6についてでございますけれども、これについては要望内容や実態等を踏まえた上で現行法の枠組みでどこまで対処が可能であるかも含め、引き続き検討する必要があるとする意見が多数挙げられました。

 次に「障害者福祉関係の権利制限について」ですけれども、視覚障害者情報提供施設等において、もっぱら視覚障害者向けの貸出しの用に供するため、郵送の代替手段として公表された録音図書を公衆送信すること、これは1ですけれども、これにつきましては、視覚障害者による録音図書の利用をインターネットにより促進することが情報通信技術のもたらす利益を社会的弱者に広く及ぼすという意味で、極めて大きな公益的価値を有すると認められるため、対象者が専ら視覚障害者に限定されることを条件に、本件要望の趣旨に沿って権利制限を認めるべきという意見が多数挙げられました。

 なお、その他の論点、2から4でございますけれども、これにつきましては提案者による必要性及び趣旨の明確化を待って引き続き検討する必要があるとする意見が多数挙げられました。

 次に「学校教育関係の権利制限について」ですけれども、同一構内における無線LANについて、有線LANと同様に、原則として公衆送信には当たらないとすること(3)につきましては、無線LANによる送信も、通信の安全性の技術や送信の機能等が有線LANと同等であると評価できるという観点から、公衆送信の定義から除外する必要があるという意見が多数挙げられました。

 なお、その他の論点、12でございますけれども、これにつきましては、教育行政及び学校教育関係者からの具体的な提案を待って改めて検討することが妥当との意見がございました。

 次に検討内容2の「私的録音録画補償金の見直し」についてでございますけれども、これにつきましては「ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定について」、「汎用機器・記録媒体等の取り扱いについて」、「政令による個別指定という方式について」の各論点について検討を行いました。審議の経過の35ページ目以降を御参照ください。

 まず最初に、「ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定について」でございますけれども、家庭内における私的な複製につきましては、30条1項により例外的に権利者の許諾なく行うことができるとされておりますけれども、デジタル方式の録音録画機器の普及に伴いまして、著作権者等の経済的利益が損なわれるようになった状況に対応するために、私的録音録画補償金制度が導入されております。これは30条2項でございます。

 この補償金の対象として、ハードディスク内蔵型録音機器等を追加指定すべきか議論されましたけれども、この問題をめぐりましては賛否をめぐり、委員の間で見解が大きく分かれておりまして、現時点では特定の結論に意見を集約するには至りませんでした。したがいまして、引き続き検討を行う予定でございます。意見の概要は37ページを御覧ください。

 次に、「汎用機器・記録媒体の取扱いについて」でございますけれども、パソコン等のいわゆる汎用機器・記録媒体を補償金の対象とすべきかにつきましては、録音や録画を行わない購入者からも強制的に一律に課金することになり、私的録音録画補償金制度が不適切な制度となる等の観点から、汎用機器等は私的録音録画補償金制度と対象とすべきではないという意見が多数挙げられました。

 次に、「政令による個別指定という方式について」でございますけれども、現在、私的録音録画補償金制度の対象は政令で個別指定されております。このような方式につきましては、法的安定性、明確性の観点から現行の方式を維持すべきであるとする意見が多数挙げられました。

 なお、以上の議論の中で早急に対応すべき課題といたしまして、私的録音録画補償金制度のあり方自体の見直しを検討すべきであるとの意見が多数挙げられました。

 次に検討内容3の「デジタル対応について」でございますけれども、これにつきましては、(1)機器利用時・通信過程における一時的固定について、(2)デジタル機器の保守・修理時における一時的固定及び複製について、(3)技術的保護手段の規定の見直しについての各論点がデジタル対応ワーキングチームで議論され、法制問題小委員会に報告が行われました。「審議の経過」の41ページ目以降を御参照ください。

 これらの事項のうち、(2)デジタル機器の保守・修理時における一時的固定及び複製につきましては現行法の解釈で認められないのかという意見とともに、権利制限を認めるべきとするデジタル対応ワーキングチームの検討結果の趣旨に賛成する意見が多数の委員より出されました。

 ただし、仮に法改正の必要があるとされた場合、権利制限が認められる場合の具体的条件及び義務に関する効果的な立法的措置やその他の事項も含め、デジタル対応ワーキングチームで引き続き検討することとされました。

 次に検討内容4の「契約・利用について」でございますけれども、「審議の経過」の44ページ目以降をご参照ください。これにつきましては(1)著作権法と契約法の関係について、これは契約による著作権のオーバーライドの問題でございます。(2)許諾に係る利用方法及び条件の性質、これは63条2項の解釈の問題でございます。(3)著作権の譲渡契約の書面化について。(4)一部譲渡における権利の細分化の限界、これは61条1項の解釈でございます。(5)第61条2項の存置の必要性について。(6)未知の利用方法に係る契約について。以上の各論点が契約・利用ワーキングチームで議論され、法制問題小委員会に報告が行われました。

 譲渡契約の書面化や未知の利用方法などにつきましては、実務的にも重要な問題であり、他の事項も含め契約・利用ワーキングチームで引き続き検討をするということになりました。

 次に検討内容の5の「司法救済について」でございますけれども、「審議の経過」の48ページ以降をご参照ください。いわゆる「間接侵害」規定の創設の必要性について司法救済ワーキングチームで議論され、法制問題小委員会に報告がなされました。これについては著作権法112 条において、誰に対してどういう理論で差止請求権が認められるのかということなどにつきまして、司法救済ワーキングチームで引き続き検討をするということとされました。

 次に検討内容6の「裁定制度の在り方について」でございます。「審議の経過」の50ページ目以降を御覧ください。裁定制度の在り方といたしましては、「著作権者不明等の場合の裁定制度」、「著作物を放送する場合の裁定制度」、「商業用レコードへの録音等に関する裁定制度」、「翻訳権の7年強制許諾」、「新たな裁定制度の創設について」の各論点が契約・流通小委員会で議論され、法制問題小委員会に報告がなされました。

 契約・流通小委員会からの報告では、著作権者不明の場合の裁定制度については、貴重な著作物を死蔵化させず世の中に提供し活用させるために有効であることから存続すべきであり、その他の裁定制度については直ちに廃すべき必要性がないとされました。法制問題小委員会では、情報化時代において著作物は可能な限り利用される方向で見直すべきであり、特に著作権者不明等の場合の裁定制度はより利用しやすいシステムを模索し、より一層具体化に努めるべきであるとの意見があったところでございます。

 以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは質疑に移りたいと思います。なお本日は本分科会の委員ではありませんけれども、法制問題小委員会の下に設けられた各ワーキングチームで座長をお務めいただいております大渕委員、茶園委員にも御出席をいただいております。同じく座長をお務めいただいております土肥委員も含めまして、それぞれ御検討いただいた事項については適宜対応をお願いしたいと思います。

 それではただいまの中山主査の御報告につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。それではまず岡田委員から、お願いいたします。

【岡田委員】 岡田でございます。私はこの35ページの「私的録音録画補償金の見直しについて」というところでございますが、これに関しましてiPod等のハードディスク内蔵型録音機器について、速やかに追加政令指定をしていただきまして、私的録音補償金の対象にするべきだと考えております。

 これらの機器というのはMDに比べて大容量で、しかも売れに売れておりまして、MDに取って代わる勢いであるにもかかわらず、MDが補償金の対象でiPod等がいまだに野放し状態で補償金の対象になっていないということは、まったく理解できない事でありまして、納得できません。iPod等の政令指定が遅れているという課題の解決を、現行の補償金制度の運用ではなく、DRM、Digital Rights Managementに期待するという意見もあるようですが、DRMというのは今はまだまだイメージの段階でありまして、現実的な議論ではないと思われます。iPod等への課金が遅れれば遅れるほど、30条の2項が機能不全に陥っていると考えざるをえません。

 2項が機能不全になっているとすれば、理屈といたしましては、1項の見直しをしなければならないということになると思うのですが、そうなりますと結局、私的録音の全面禁止あるいはその都度の課金ということになり、これは私的録音補償金を払うよりも消費者にとっては非常にお高くつくことになりまして、消費者にとってはデメリットであります。

 逆に言えば、私的録音補償金制度というものが、ユーザーにはメリットのある制度であるということでございまして、ここで消費者、そしてメーカーの一段階上の御理解をいただきたいと思います。

 iPod等への政令指定に反対している人たちは、不正録音が非常に蔓延している、すごい勢いで蔓延しているということにちっとも触れようとしないで、お金を払いたくないという、ただその一点で議論を展開していらっしゃるように思えてなりません。

 歌を作るということは文化的な行為でありまして、文化的な行為の所産が作品でありますが、その作品がレコード会社に持ち込まれまして商品になった時、それは経済行為になります。我々の仕事というのは文化的行為と経済的行為というものが表裏一体になっている世界です。創作が経済行為になった時、そこから我々は生活の糧を得ることになるわけでありまして、著作権者に君たちは文化的な行為をしているのだからお金については何も言うなというのは、霞を食べて生きていけと言われているようなものであって、納得できません。

 メーカーは色々な機器を作っていらっしゃいますが、それにかかる自分たちの特許という権利については必死で守りつつ、著作権という他者の権利については守ろうとする意志も理念もないということは、大きな自己矛盾であるということに気づくべきだと思います。

 著作権の保護というのは音楽文化の振興を支えるものでありまして、音楽文化というのは人の心を豊かにするものです。そして知的財産立国を目指す日本から国際的な大ヒット曲が出れば、それは国としても非常に潤うことでもございます。

 今、権利者側でこれらの機器を利用した私的録音の実態を調査しているところでありまして、この調査結果も参考にして、今後の議論をお願いしたいところでございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。他に御意見、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【佐藤委員】 日本レコード協会の佐藤でございます。私も同じく、「私的録音録画補償金の見直しについて」に関連して意見を述べさせていただきます。

 権利者、メーカー、ユーザーの利益を調整する制度として、私的録音録画補償金制度の果たすべき役割はなお存在するものと考えております。私的録音録画補償金制度が権利者団体、メーカー団体、消費者団体、学識経験者などによる10年以上にわたる議論の末創設された制度であることを、十分踏まえて議論をお願いしたいと思います。

 今求められているのは、制度導入時のように権利者、メーカー、ユーザーなど関係当事者が高い視点から知恵を出し合って現状に応じた私的録音録画補償金制度を作ることだと思います。特にハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定の問題については、結論を先送りすることのないように重ねてお願いしたい。以上でございます。

【野村分科会長】 他に御意見、いかがでしょうか。では、加藤幹之委員。

【加藤(幹之)委員】 日本経団連を代表させていただいております加藤幹之でございます。大変難しい検討課題について、法制問題小委員会の委員の皆様方、大変真摯に議論していただきまして、その御尽力に感謝申し上げたいと思います。

 特に時代の変化に制度がきちんと対応できているかどうかという観点からのいろいろな課題の検討というものは、今大変重要なことだと思います。著作物の権利をきちっと確保するということと同時に、その利用を拡大するというバランスを守るということが非常に重要なわけであります。

 例えばこの10年間の制度改正ということを振り返りますと、著作権者の保護が強化される一方、今回検討されてきましたような権利制限による利用者の利害との調整、この部分について一歩検討が遅れていたのではないかというような気がいたします。権利制限については著作権者の利益を不当に害することがないと、そういう前提で著作物の利用に関する社会的な要請に応えて、速やかに一定の措置を講じていくということが必要だと思います。

 「審議の経過」で書かれている法制問題小委員会の権利制限に関する検討結果というのは、現時点でいずれについても基本的に妥当な結論が示されていると思います。例えば迅速かつ的確な特許審査を行うために、あるいは国民の生命、健康を守るために非特許文献の特許庁への提出、製薬企業が薬事法に従って行う行政官庁や医療機関等への論文提出などについて、権利制限を認める方向で検討を進めることに賛成であります。

 その際、仮に権利制限規定を置くことによって著作権者の利益が不当に害される恐れがあると、そういう懸念があるのであれば、どのような手だて、要件を講ずればそれが払拭されるのか。そういうことについても、併せて検討するべきだと思います。

 また今回、いろいろと継続検討とされている権利制限事項につきましても、利害のバランスを配慮しつつ速やかに結論を出していただく必要があると思います。以上でございます。

【野村分科会長】 はい。先に神山委員。

【神山委員】 神山でございます。今の経団連の方の御意見があったのですけれども、私が権利制限の中でちょっと疑問を感じているような部分もございます。

 例えば、製薬会社による副作用情報の提供というようなことが出ておりますけれども、これは私見を言えば、製薬会社といえどもこれは営利を目的とした企業でありまして、そういう企業にとって副作用情報の提供というのは自らのコスト負担で当然にやるべきことだと私は思っております。国民の生命、安全を守るという一番大事なところですから、それを製薬会社が当然の義務として自らの負担でやるというのが私は筋だと思います。そこの部分を著作権者にコストを転嫁するような形の権利制限というのは、少し筋が違うのではないかという感じがいたします。

 特許関係についてもそうなのですけれども、現行法の42条の読める範囲は結構だと思うのですけれども、特許も特許を取得したいと思う企業がやはり自らの負担でコストを負担してやっていくという部分が必要なのではないか。ですから、その点に関しては権利制限するのであれば、少しそのやり方を考えないと権利者にとっては何か釈然としないという感じがいたします。

 それから少し話が変わって申し訳ないのですけれども、もう一点、「学校教育関係の権利制限について」、一言述べさせてください。これは今回はLANの問題以外は引き続き検討というようなことになっているので、むしろ引き続き検討する場でぜひ検討していただきたいということを言いたいのですけれども。

 一つは教育と一言でいっても猛烈に幅が広い。小中学校の義務教育から大学、大学院の教育、さらには予備校とかカルチャースクールとか、様々な教育という概念の中には幅広いものがありますので、現行法では営利を目的としたと言っているのですけれども、これも学校法人なら営利を目的としていないのかというと、必ずしもそうでもない実態があるだろう。予備校が学校法人になったりしているということを考えれば、そういう実務的な面での教育の線引きというのは難しいのかもしれないのですけれども、一律に教育目的だからという考え方は少し整理していただきたいというのが一つ。

 それからもう一つは、例えば鉛筆1本、事務用の鉛筆は有償で教育用の鉛筆は無料かというとそうではないのですね。学校は電気代無料かというとそうではない。それでは、なぜ著作物だけは無料、無償、無許諾無償ということが出てくるのか。これは実務的な面からいえば、ある程度やむを得ないところがあるので、権利制限について一切ノーということを考えているわけではないのですけれども、やはり全体的な権利のバランス、特に知的財産という財産ですから、これは私有財産制の下でそこを制限していくということについては、やはり全体的なバランスということを改めて小委員会でも検討していただきたいと思います。

【野村分科会長】 それでは、金原委員。

【金原委員】 日本書籍出版協会の金原でございます。今のお二人の意見に関連することでありますが、私も基本的には公共利用目的あるいは教育利用目的、あるいは学術研究といった分野において、著作権法において著作者の権利を制限するということはある程度あってしかるべきであろう。それによって利用を促進するということは、その目的を果たす上において非常に重要なことであろうと思っております。

 しかし、それを実行するに当たっては、やはりベルヌ条約のスリーステップテストはぜひ検討すべきことであろう。特に著作者の権利を不当に害しないこと、それから著作物の通常の利用を妨げないということは、絶対に守らなければいけないと思います。

 その上で、ではどのようなものがどのような状況において利用できるのかということは、例えば公共目的、教育目的あるいは学術研究目的、それぞれの分野において、そういった目的が出版物あるいは著作物の主たる販売対象である、あるいは利用対象であるというような場合には、このスリーステップテストに違反するという危険性が非常に高いであろう。つまり、形態だけにとらわれてこのことの検討をするということではなくて、どのような著作物が利用されるかということも含めて小委員会では検討していただきたいと思います。

 教育利用目的の出版物が教育場面で利用されるということは、やはりその出版物の通常の利用を妨げるという要素が非常に高いと思いますし、特許、理工学専門書あるいは薬事における医学専門書のようなものがそういった場面で利用されるということになりますと、通常の利用を妨げるという要素が非常に大きいであろう。今回の特許の問題あるいは薬事の問題においても、そのような要素が非常に高いと考えざるを得ない場面があります。小委員会では、ぜひその辺を含めて御検討いただきたいと思います。

 それからもう一つ質問なのですが、薬事法の第3項目、ページにしますと11ページになりますが、文章の下から3行目の辺りから、「製薬会社による情報提供に支障が出ない状況にあると思われることから、著作物の通常な利用を妨げず、かつ、著作者の正当な理由を不当に害しないことを条件として、権利制限を認める」とありますが、具体的にここは何かお考えがあるのでしょうか。それとも今後の検討課題だということなのでしょうか。もしお分かりになりましたら、教えていただきたい。以上です。

【野村分科会長】 それは事務局の方からお願いしましょうか。

【甲野著作権課長】 現時点におきまして、特にこういうような制度を設けることによりまして権利制限を認めるという具体的なプランがあるわけではございません。可能性としては、例えば何らかの補償金をつけることとか、いろいろなパターンが想定されると思いますけれども、これらはすべてこれから先の小委員会での議論になるかと思われます。

【野村分科会長】 よろしいでしょうか。それでは佐野委員、どうぞ。

【佐野委員】 主婦連合会の佐野です。私的録音録画補償金のことについて、意見を申し上げたいと思います。

 この制度が導入された時、消費者にはほとんど情報がありませんでした。いまだにこの制度を知らないという消費者はかなりいると考えています。機器を購入するだけで補償金を払い、またサービスを受ける時、今iPodの話がありましたが、1曲いくらというお金を払っていると、やはり私たちにとっては二重に払っているような気がしております。私は機器に対しての補償金ではなくて、やはりサービスを受ける、そのサービスに対しての課金をするべきで、一本に絞る方がいいのではないかと思います。その方が分かりやすいと思っています。

 また、個別指定制度については、小委員会の方ではこのままでという御意見がありましたが、他の法律とか東京都の条例などでも、かなり指定制度というものがありますが、今この日本の中でも非常に時代が変わっていくのが速い時に、いちいち指定をしたり、または市場にないものを削除したりする労力というものは非常に大きいと思います。ですから、この個別指定ではなく、どちらかといったらサービスに対するという、今度パソコンだとかiPodというわけではなくて、サービスに重点を置いた方がより早く世の中の動きに対応できるのではないかと思いますので、その点も小委員会の方に御検討願いたいと思います。

【野村分科会長】 岡田委員、どうぞ。

【岡田委員】 今、佐野委員から二重課金ではないかというご意見がございましたけれども、二重課金というのは流布されている誤解でございます。ネットから音楽を1曲買ってお金を払った時、それは150円とか200円程度で安いかもしれませんが、イメージとしてはパッケージの商品を1枚買ったということと同じでございます。それを次にiPodに入れるということは、イメージとしてはパッケージの商品をiPodに録音するということと同じでございまして、ネットからダウンロードして買ったものは、もうそこでお金を払ったのだからiPodに課金されるのはおかしいという考え方は間違いです。反対のための反対をしている人たちがそういう意見を流しているような気がするくらいでございます。

【野村分科会長】 では、先に佐野委員の方から、どうぞ。

【佐野委員】 まさにそのように、もしかしたらCDを普通の市場で買うのと同じかもしれません。でも、私たちにとってはやはりそのサービスに対しての課金であって、その機器を買った時の補償金制度というのはやはり理解できないのですね。ものを買う時に、そのサービスを受ける時にそれに対象するようなお金を払うということに関しては、決してやぶさかではない。もちろん払わなければならないと思っていますが、機器を買うということに対してというのはやはりちょっと二重という感覚が非常に残ってしまう。消費者に誤解を与えるような制度にならないようにするべきではないかなと考えます。

【野村分科会長】 それでは岡田委員から、もう一度ありますか。

【岡田委員】 すみません、ではもう一言。今、機器に課金することに対して疑問だとおっしゃいましたけれども、その考え方には著作権というものに対する思想が皆無だと思われます。飴玉1個買うにしても、おせんべい1枚買うにしてもお金を払わなければ手に入らないのに、音楽にはお金を払わなくてもいい、払いたくないという考えは、著作権に対する思想がない人の考え方だと思われます。

 そのためにここ文化庁でも、子どもたちに対する著作権思想の普及ということに力を入れていらっしゃいます。この課金の裏側には著作権という権利があるということを認識していただきたいと思います。

【野村分科会長】 それでは松田委員に、先にちょっと御意見をいただいて。

【松田委員】 松田です。今のお二人の議論は、実は私、詰めていけば極めて重要な中心的な議論になるだろうというように思っています。その結論はどうであるかは別論としておきますけれども、この制度のあり方について、私、ずっと審議に参加してきましたから、今日恐らく意見を言うのは最後になるだろうと、この報告書の前のです。

 それでこの議論がどのように今まで行われてきたかという、これは第10小委員会で平成3年の12月に私的録音録画補償金制度の導入ということが方向としては決まったのですが、それがどういうふうに決まってきたかということはやはり大変重要だろうと思いまして、この報告書と、その前の第5小委員会報告書というのをもう一度読み直してみました。

 実は平成3年の導入提言の報告に至るまでの間、15年間もの審議をしていたのだということに気がつきました。というのは、これはデジタル時代になってから平成3年まとまるわけですけれども、アナログの時代から30条の2項の問題としては、特に権利者団体からは家庭内でのコピー、それ自体はもうベルヌ条約9条2項の範囲を超えているのではないかという議論がなされていました。それは国際的にも国内的にも並行的に議論がされてきたという歴史的経過があると思います。

 ところが、何でそれでは日本も、それからほぼ同時期に国際的にも、それから外国でも、このように類似の制度が導入されなければならなかったかという背景を考えますと、やはりデジタル化が決定的だったのだろうと思います。

 というのは、もう言うまでもありませんけれども、正規製品といいますか。パッケージで売り出されるものと同質のものが家庭内で個人的に複製できる技術が生まれてきたということは、極めて大きな技術的、文化的な影響を与えたのだろうと思います。それで平成3年に審議会もこの報告をまとめるわけでありますけれども、この段階でもどういう議論がなされたかということは、大きく分ければ、私、2つだろうと思います。今言いましたように、デジタル機器の出現、もうDATは平成2年、MD等につきましては平成4年の商品化が目前にありましたから、このことがあったことは、関係がないことはないと思います。

 それから国際的動向につきましては、後で少しだけ御説明させていただきたいと思いますけれども、やはりこのままいけば、ベルヌ条約9条2項の通常の利用ないしは正当な利益を不当に害するということがないという、この範囲内で国内法上認められる9条2項のルールが崩れてしまうのではないかという、そういう危機感といいますか、議論がなされていたというように思います。

 それでその背景の下に、実は平成3年の報告書は大変な御苦労の末、権利者団体も機器のメーカー等も一定のコンセンサスが得られて提言にまとまったわけであります。ただし、注意的に言いますと、報告書を正確に読んでみますと、必ずしもデジタル化に限るということまではっきり言っているわけではないように思います。しかし、もうターゲットはデジタル化だったと思います。

 それから報告書の中には、政令指定という方法は必ずしも明記されていませんでした。これはどういうことかというと、この辺についてはもうデジタル化の方向ではいいのだろうというようになったわけでしょうけれども、機器の指定については将来何が起こるか分からないので政令指定の方法で法制で全部固める、法律で全部固めることはできないのではないかという議論がなされたのだろうと、私は考えております。

 さて、もしこのままデジタル対応につきまして私的録音録画補償金等の導入がなかったとした場合には、恐らく国際的には、日本から発信したかもしれませんけれども、ベルヌ条約第9条2項の特に正当な利益を不当に害する状況が生まれているから、30条の改廃問題や9条2項によって国際的な議論をしなければならないという議論が生まれたと思います。それをある意味では阻止したといいますか、議論をしないで済んだ状況を平成3年、平成4年で国際的にも外国法制でも形成していったのだろうと思います。私、これは無視すべきではないと思います。

 と言いますのは、もしこういう制度が実質的に崩れたとしたら、また同じ議論が起こりまして、権利者から30条問題というものを抜本的に提起されるということになる可能性があるし、そうなった時にはむしろ利用者も、それから機器メーカー等についても大きな負担を逆に負うようなことになりかねないなということも思いますし、もしそれが混沌とした状況になりました場合には、私はP2P事件のように実質的な侵害の可能性のあるサービスか、システムかというような議論が法廷の場で国際的にも行われる可能性が生じてしまうと思います。そういうことはぜひ避けた方が、私は得策ではないかなというように思っております。

 さあ、そこで結論的なことでございますけれども、政令指定の段階でDAT、DCC、MD、これらが指定され、なおかつこれに対応する機器が指定されたわけでありますけれども、現段階でまさに爆発的に売れているところのハードディスク内蔵型録音機器がその段階にあったら、私は政令指定した典型的な商品になるのだろうというように認識しております。少なくとも、その認識が間違っているとしても、社会状況としてはMDからこのハードディスク内蔵型録音機器に市場としては変換していくだろうということはもう明確だろうと思います。それを放置するということになったとしたならば、現行法制、著作権法上入っている制度を実質的には何も機能させないということに私はなると思います。その単なる法制上の規範性の問題だけではなくて、次に起こることは、そうであるならば、先ほど言った30条問題、それからベルヌ条約9条2項問題が起こるだろうし、場合によっては混沌とした状態が起こる可能性がなしとはしないと思います。

 ぜひ、私の最終的な意見でありますけれども、市場としては内蔵型録音機器は当時指定した媒体以上に市場で頒布される、売れる可能性はあると思います。その影響は極めて大きいし、現行の著作権制度を守るためには至急の政令指定が必要だろうというふうに、私は考えております。以上です。

【野村分科会長】 それでは、村上委員。

【村上委員】 一橋大学の村上でございます。私はむしろ小委員会のメンバーだったもので、この議論の過程はよく知っておりまして、この審議の経過はその議論の経過を非常に的確に表現してあると思います。

 特に37ページの賛否の意見のところは、多分今回の補償金制度自体についてやはり著作権法上も本質的な問題を抱えているのだということ。それとデジタル化、その他で変化が非常に速い分野であるので、それに対する対応も何かせざるを得ないであろう。そして多分、これが共通の認識であったと思います。

 それで最後の方の結論が、40ページの方で抜本的な見直しも含めてより検討を進めるべきであろうというのが、この書いた結論です。これもこのとおりだったと思います。というのは、この問題自体はとりあえずは年内に何らかの決着がつくし、処理すべきものだと思いますが、むしろ私が心配しているのは、これだけ労力をかけて議論している話ですので、やはりこれは何らかの決着がつくと、そこでもう固定化するというか、その時点でとりあえず議論は打ち切ろうというような心理とか、そういう動きが出てくるというのを私は一番心配しておりまして、やはりこれだけ本質的な問題を抱えている問題であるということと、それから時代の変化が速い分野であるということからは、ぜひいずれの結論に達するにせよ、その後も継続して議論するというか、この問題については継続して議論していって最終的な法的枠組みを決めるという、そういう形の体制はぜひ作っておいてほしいというのが、小委員会でも話したことになりますけれども、要望ということになります。

【野村分科会長】 それでは、大林委員。

【大林委員】 芸団協の大林でございます。先ほど松田先生、国際法の関係からも非常に重要なことをおっしゃられました。私は、ここにいらっしゃる方々にはもう釈迦に説法だと思いますけれども、著作権法の「目的」のところにあります「著作物の公正な利用に留意しつつ、権利者の権利を守り、文化の発展に寄与する」という、この力強い後段の部分をぜひこの議論の中でも忘れないようにしていただきたいなと思います。

 補償金制度の最初の段階の議論というのは多分いろいろあって、甲論乙駁あり、その中でこの制度が決まってきた。今言われている議論の中には、こういうふうな新しい技術が出てきた、じゃあその技術に対応するにはどうするかと、こういう発想も生まれてきているようですけれども、やはり元のところにドンと帰って、本当にそういう形でこの著作権法の目的が遂げられるのかということも常に考えながらやって、これから継続審議ということですけれども、それは是非やっていただきたいと思うと同時に、先ほどありました可及的速やかに指定しなければならない、もうまさにそのものであるというような機器は、政令指定という制度が今現在あるのですから、これは継続審議の間でも、是非指定されるということが必要だと思います。

 審議の過程の中でちょっと気になったことがございます。新聞紙上に法制問題小委員会の複数の委員の方、現任の方が意見を述べられる、これは自由だろうと思いますが、その中に例えば先ほどの二重課金の問題にしましても、ある種の誤解を持ったままそのまま書かれているというようなところがあり、そのようなことで自由だから何でもできる、やらせてくれというようなことで非常に乱暴な議論も出てきています。中にはこの制度自体が物品税ではないかみたいな、極論まで出てきている。著作権法というきちんとした理念をもった法律を議論している場ではないところで、何か場外乱闘のようなことが起きているというのは、少し残念だなと思っております。

 我々権利者の方としては、本当に可及的速やかに指定されてしかるべきものがありますので、それは是非指定していただき、さらにこの制度自体の検討を続けていただくことには何ら異論もありません。

 それから、例えば汎用機のことなどでも、ほとんど著作物の録音録画に利用する人が相当の割合を占めるとは考えにくいというような議論がされていたようですが、これは本当に統計をお取りになったのかどうなのか。実際に我々のところではある種のアンケートで半分を超えている人たちはもうすでに日常的にやっています。そういう実態もやはりきちっと見ていく必要があるのではないかというふうに思っております。

【野村分科会長】 何かありますか。はい、どうぞ。

【森委員】 民放連の森でございます。私的録音録画補償金制度の話の中で、iPod問題については私は極めて中立的な立場でものを言えるのかなという気がしますが、常識的に見て30条2項の理解の仕方としては、速やかな政令指定あるべきと考えるべきではないかという意見の方を、もしどっちがといわれたら、そういう理解の仕方をすべきではないかという意見でございます。

 それから先ほど汎用機の話が一つ。意見が少ないのでありますが、汎用利用であるが故にもう対象から外すという単純な理論であるべきではないので、やはり権利者の権利がこの利用によってどんな影響を受けるかということを、先ほど大林さんがお話になったような見地から、やはり今後ともぜひこれで議論を打ち切るので、多数だからといって議論を打ち切るのではなくて、さらに議論をしていただきたいと、こういうふうに思うわけでございます。以上でございます。

【野村分科会長】 加藤さゆり委員、どうぞ。

【加藤(さゆり)委員】 補償金問題についてでございますけれども、私も法制問題小委員会の一委員としてこれまでの審議に関わってまいりました。それで本日配っていただいております参考資料の2、知財推進計画2005の14ページのところを御覧いただきたいと思います。14ぺージです。

 そこに補償金のことについて書いてございますけれども、「私的録音録画補償金制度に関し、権利者、消費者、関連産業等を含めた関係者の意見を踏まえ、対象機器等の取扱い等について実態に即した検討を行うとともに、技術的保護手段の進展やコンテンツ流通の変化等を勘案しつつ」と、こう書いてございます。

 つまり、先ほど松田先生おっしゃいましたように、補償金制度導入に至るまで、十数年前導入というところに至る過程のところでは相当の時間的にも人的にもコストをかけて始まったということ、これは理解しております。

 しかし、やはり十数年前に本制度が導入された当時とやっぱり今の時代ともう十数年経ているわけでございますので、音楽を聞く環境等々についても大きく様変わりしているということは、これはもう皆さん共通の御認識をいただいていることと思います。

 本日の法制問題小委員会の「審議の経過」、資料1でございますけれども、ここに明記されております35ページから40ページまでのその他を含めたこの内容につきましては、法制問題小委員会のところで消費者の私だけではなく、様々な先生方から頂戴した貴重な意見が35ページから40ページに込められているわけでございます。これは、決して消費者はお金を払いたくないがために本制度の課金対象の拡大等々に反対しているわけではないということ。これは権利者の方たち等にもきちんと御理解をいただきたいと思います。

 やっぱり本制度が、先ほど佐野委員からもございましたけれども、十数年、昨日今日できた制度ではございませんのに、十数年経た制度であるにもかかわらず、ことほどさように多くの消費者に知られていない。知られていないにもかかわらず、またその用途にも使わないにもかかわらず広く薄くという観点からなのでしょうけれども、その機器、媒体を購入した人すべてからお金を徴収するということに対して私は理解できません。

 そのようにいくつかの問題を抱えている制度であるにもかかわらず、基本的な本制度の見直しのところをきちんと議論しないままに、やれiPod、やれ何だというふうに課金対象を拡大していく道筋をつけてしまうということは、これは私は権利者の人にとっても、それからメーカーも含めて消費者にとっても、誰にとっても最終的にはいい結果には至らないのだろうというふうに、私は思います。

 それからベルヌ条約に関しては、私は国際条約について語る資格はございませんので、これは文化庁並びに他の先生方の御意見を頂戴したいと思います。果たして国際条約に照らして何が違反となっていくのかということをつまびらかにしていただくということが、即ち著作権法、これほど分かりにくい著作権法に対する消費者の理解というものを促進していく一つのきっかけになろうと思います。

 それは、補償金制度そのものについてもそうでございます。新聞等でやっと補償金制度を書いてくださるようになりました。このことは権利者にとっても消費者にとってもメーカーにとっても、それぞれ自分たちが思っていないようなことを言うとか、あるいはどうとかというふうに自分たちの利害からすれば反対のことが明記されているかもしれませんけれども、私は著作権分科会法制問題小委員会等を含めて、多くの消費者の人たちに、国民に知ってもらうというきっかけづくりを新聞紙上でしてもらってありがたいなというふうに私は思います。その責務を私たちは負っているわけでございます。

 この平場のところで、閉じられた空間のところだけで議論していたのでは、著作権に対する理解なんていうのは一歩も進まないだろうと思いますので、それは文化庁ももう少し御努力いただいて、いろいろなメーカーも含めた人たちを呼んだ議論、あるいはヒアリングというものを、これまでにもヒアリングはなされましたけれども、やはりもう少し広い視点でいろいろな意見の方たちの意見が、みんなが揃っているところで見えやすいような形で議論が行われるような仕掛けを、文化庁ももう少し御努力いただけたらありがたいなというふうに思います。

 総務省なんかのデジタルの議論なんかにつきましても、複数のメーカーを呼んで、消費者も入って、研究者も入って、その中でいろいろなメーカーがいろいろなことを言うわけですけれども、そのことによって誰がどういう意見を持っているということが非常によく分かるわけですよね。ですから、もう少しそこはヒアリングをいろいろな方たちのお立場が反映されるようなふうに、うまく申し上げられないのですが、文化庁も御努力いただきたいというふうに思います。以上でございます。

【野村分科会長】 はい、それでは大林委員、お願いします。

【大林委員】 今、消費者団体の方からだと思うのですが、この制度が知られていないということをおっしゃられました。最初の導入時からの議論の中にも、やはり消費者団体の方々は入っていらっしゃったと思います。それから十数年の間、消費者団体の方も入ってこの問題に取り組む話がされてきているわけでしょうから、その間にどういう形でそれぞれの団体が責任を持ってそういうことを告知されてきたのかということは、われわれ権利者団体だけでなく、初期の頃から、賛同されてこの制度を導入された、それぞれの団体の方々にも責任はあると思います。一方的に良いとか悪いとかという評価は避けたいと思います。

 十数年経ったから制度が疲労しているということで検討されるというのは、これは大賛成です。ただ、その時に先ほど申し上げたように、何を根本に据えて考えるかというと、やはりこれは文化の問題でもある。我々はものを作っていく中で、この制度は必要であろうというふうに考え、そして新しい創造、新しい作品を作っていく中で、またそれを社会に還元していくというところで必要ではないかというふうに考えておりますし、現在実際に役に立っています。そういう視点も是非取り入れていただきたいなと思っています。我々は何もいたずらに権利を振りかざしているわけではありません。著作権法の目的の中にあるものは、非常に優れたものだと思いますので、それを生かした、著作権法の枠の中での議論ということであれば、その精神を生かしていただきたいと思います。著作権法はいらないというのであれば、何をか言わんやですが。

【野村分科会長】 他にいかがでしょうか。はい、瀬尾委員、お願いします。

【瀬尾委員】 今の私的録音録画補償金の見直しの件なのですけれども、まず家庭内での利用、私的利用ということが実際の法律の作られた時点から今だいぶ内容的に変質してきているということに非常に問題があるような気がします。

 例えば画像にしても音にしても、まったく同じものが家庭で複製できるという状況が想定されていなかった。そして、まったく同じものを非常に大量に作れるという家庭内利用が現実にはできるようになってしまったという、ここに非常に問題があると思うのですね。これをデジタル機器の録音の時に何とかしようとしてこの補償金の話ができてきたと、私は理解しています。

 そういうふうな形でできてきたのですけれども、確かに先ほどからあるように、DRMで1対1で1つずつ課金をしていくという方向性は、逆に家庭内利用自体も、私的利用自体もなくする、すべて1対1できちんとお金を払ってという原則に立ち戻る方向性というのをはらんでいるように思います。これは私は一つの方向性として今後あり得るだろう。これはすべての家庭内であろうが何であろうが、著作物を利用する場合には一つずつお金を払う。この家庭内、私的利用という聖域がいろいろな意味での問題を含んでいるというのは、他の分野でも相当大きな影響を持っているところです。

 ですので、一つそれはやはり今後この技術とともに検討されるべき課題だと思いますが、実際にiPod、このハードディスクの件に関しては、直接利害関係は私ございませんけれども、はっきり言って、これを本質論を話すことによって半年、1年延ばすことの実損というのは、実は著作者にとっては非常に大きな実損です。この本質論をやっている間に、それこそじゃあ2年間は著作者は飯を食うな、本質論が終わるまで飯を食うなというのはちょっと酷かなと。やはりここは現時点での私的利用の形態の延長線上で、ともかく大きな変化の時ですから、緊急な応急処置は必要ではないかというふうに思います。

 ですのでこれは課金して、とりあえずお金を払っていく。ただ、期限を付けるとか、何らかの形をしつつ、本質論を話していくという形にしないと、あまりに時間的に実損が多すぎるのではないかというふうに思います。

 そしてもう一つ、やはりこの技術の進歩とこういうふうな件に関しては、もっと本質的な定義とか、そういうふうな部分も含めて抜本的にもっと先ほど言った広報もすべて含めて社会的に考えていかないと、著作権の基本的な問題になっていくのではないかなと思います。

 ただ、最後にDRMについて一つだけ付け加えさせていただければ、実は小さな金額でかつ大量に消費していく、例えば音楽とかその他のいろいろなものもあると思います。それを1対1で課金するということ。実はこれは非常に分かりやすいように思えますが、消費者の方たち、実際使う側の利用者の方たちは大変な不便を被る。実は私が今、複写権についていろいろなそういうふうな調査とか話を聞きますけれども、あれを1対1で1個ずつ全部細かな利用まで課金していくなんて考えられない話です。ですので、やはり利用者の方たちはある程度の包括ということを望んでいらっしゃるという意見を伺っております。

 同じように音楽もすべてが1対1で管理されていく時代になった時に、果たして利用者は本当に利便性と納得ができるのかどうか。それについてはやはり利用者の方たちの御意見も伺ったりとかしながら、新しい視点を模索していくべきではないか。

 ですので、本質的な意味での議論というのは非常に重要な議論が必要な時期だと思います。それを継続しつつ、やはり実損に対する対応、応急処置的な意味で速やかなiPodの指定というものがやはりあるべきではないかなというふうに思います。以上です。

【野村分科会長】 はい。いかがでしょうか。権利制限の見直しと。どうぞ、里中委員。

【里中委員】 私も著作者としまして、音楽ではないのですけれども、著作者の1人として著作権というものには大変敏感に生きてまいりました。これまで自分が振り返ってみまして、自分自身もいろいろな音楽の利用とか画像の利用をやっております。その中でこの私的録音録画補償金制度そのものを知ったのは、ごく最近だったのですね。ですから著作権者の権利を守るためにということで、とにかく急いで何とかしなければいけないと思いつつも、先ほどからお話を聞いてますと、十何年もかかってできてきた制度だというのも今になって分かります。分かりますけれども、先ほどからお話があるように、今大きな転換期だということであるならば、真の著作者の権利を考えて、実際どういう利用のされ方をしているものなのか、デジタルと一言でいいましてもいろいろあります。いろいろな使われ方があって、いろいろな機材があるわけですね。ですから、1対1というのは消費者にとって大変だといわれますが、実際著作物を利用するとなると、1対1で課金できるような技術的な面を可能にしておくということは大事だと思うのですね。それをどう利用するかはともかくとして。

 先ほどから話題になっておりますiPodに代表されます携帯型の汎用ハードディスクなのですけれども、私はあれが登場した時に、実は著作権者の1人として歓迎いたしました。なぜならば、これまでのデジタル機器と違って、iPodに代表されるといいましても私自身はiPodを使った上での経験ですが、自分のパソコンからの情報しか取れないわけですね。そして、また自分のパソコンとのやりとりしかできないわけです。だから自分のパソコンの一部を携帯用に移動させるという、そういう使い方なのですね。だから、ほかの方のパソコンにコピーはできない。ああ、こういうのが出てきて初めて音楽の違法コピーは減っていくのではないかと、大歓迎の気持ちでいたのです。

 でも、何だか音楽業界の方からは、どうも危機的な存在のように思われていて、私の知識が足りないのかもしれませんけれども、むしろそういうふうに使い方に制限を設けられている機材を消費者が個人で、パソコンとかあとCD何枚も持ち出して外でCDプレーヤーで聞くというのは面倒ですから、持ち運びもいやですよね。ですから、自分専用の音楽倉庫を外に持ち出すという形だったら違法コピーができないのであるから、これはいいことだと思っていたのですけれども、どうも大容量の音楽が入れられるということのみが危機感を煽っているような気がしております。

 現実には私自身はiPodに何を入れているかというと、自分で撮った写真とか画像の倉庫として持ち歩いております。ですから、それに課金されるとなると、私は消費者としてやはり二重課金であるという実感は抱くだろうと思います。ましてやこれまでだって、生DVDとか生CDに結局は他人の著作物を入れるのではないのにずっとお金を払い続けてきたわけですね、知らない間に。この不公平感というのは、積もり積もると消費者の不信感につながると思うのです。

 実際に機器というのは非常に発達しておりまして、私自身がテレビ番組、とあるテレビ番組をデジタルで受け止めた電波をアナログのビデオに入れて、気に入ったらDVDに焼こうと思ってとりあえずアナログのビデオに保存いたしました。そしてその保存する時に早回しできちんと見たいので、いったんハードディスクに移しました。見たところ、気に入りましたので、さあDVDに焼いて保存しておこうと思いましたら、いったんアナログ機器を通しているにもかかわらず、コピー・ワンスであるという警告が出まして、コピーができなくなったのですね。ですから、技術の進歩というのはものすごいもので、もちろん私は違法コピーをする気はありませんでしたけれども、違法コピーをすることを防ぐための技術というのは、やろうと思えばかなりできるのである。

 ましてや音楽においては、今後ネット上での配信というものが増えて、そこで課金できるわけですから、1対1だと消費者が大変だといいましても、携帯などにおいて手軽にダウンロードしておりますので、消費者の使い方も変わってくると思います。ですから、現状に即した考え方で制度を考えていく、あるいは当てはめていくということを考えますと、これから先の使われ方を予測した上で幅をもたせて制度というものは決めていかなければいけないと思います。でないと、必ずいつの日か今のように消費者が理解しにくい制度になってしまっている。そういう恐れがあります。

 ですから一口にデジタルといいましても、様々な発達の仕方をしているということで、むしろ著作権を守る方向にあるシステムに関しては、応援すべきではないかと個人的には思っております。そしてわが国が真に著作権を守る、そういう機材を作る、そういうシステムを応援することによって、世界に胸を張れる著作権を守る国になる。そっちにエネルギーを注いだ方がいいのではないかなと、個人的には思っています。

 ただし、法的なことについてはあくまで消費者としての立場でしか理解できませんので、いろいろ間違っているかもしれませんが、先ほどから、ちょっと一方的な感想があるような気がいたしましたので申し上げました。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。他によろしいでしょうか。それでは角川委員、お願いします。

【角川委員】 現在、非常に議論の途中でデジタル化といった問題が出てきてよかったなと思っております。今、著作権法というのはいろいろな時代の挑戦を受けているなと思っております。そういう中でデジタル化というのは大きなキーワードで、これが著作権法の存立を危うくしているというふうに私も感じております。

 もう一方で、いま知財というものが内閣で検討されておりますけれども、それについては参考資料2の知的財産推進計画2005という中で、かなり著作権法の方向については示されている部分もございます。そういった点で今度の著作権法、今日のこの議論だけではなくて、著作権法全体がこの知財時代にどうやって生かされていくかということも、この著作権分科会で検討されていただきたいなということを感じております。

 それからもう一つ、最後にですけれども、子どもの教育ということをよく考えていくべき時代に来ているのではないかと思います。私は、インターネットあるいはデジタルといった問題が、子どもの教育に光と影という形でやっぱりかなり大きく影の部分がいま問題になってきているはずだと思います。社会的にも、社会的モラルという点でも、アナログのことで許されないことがデジタルで許されるというふうなものが出てきております。インターネットで不当にダウンロードされることによって、子どものものに対する意識が低下していくということで非常に危険だといっていることが、また著作権法にも触れてくるのではないかと思うわけです。そういった点で町に出れば、町場に出ればパッケージとして買えるものがインターネットではただでもらえるということが、やっぱりおかしいというふうなことになっていくべきだと思いますし、それから方向としては、著作権法というものが特許法に、あるいはものを取ってはいけないという、そういうものと著作権法のモラルというものがだんだん高くなっていかないといけないというふうに思います。世界的にも非常に知財に対して、著作権に対して意識が高まっている時に、日本だけがそれに立ち遅れてはいけないという視点もぜひ考えていただきたいと思います。

【野村分科会長】 はい、どうもありがとうございました。それではだいたい御意見いただいたかと思いますので、最後に主査の方から御発言をお願いしたいと思います。

【中山主査】 私、主査を務めておりますので、あまり個人的な見解をここで述べるつもりはないのですけれども、小委員会での審議の状況について若干御説明をいたしたいと思います。

 小委員会におきましては、著作権法の趣旨を無視してもいいとか、あるいは権利者の利益は無視してもいいという意見は皆無であります。問題は現在の技術の状況を踏まえて、いかなるシステムを構築することが著作権法1条に書いてあるように公正な利用を確保し、権利者の利益も確保し、よって文化の発展を促進するかという観点から議論をしているわけです。

 現在の技術の置かれている状況は、すべての著作物についてコントロールできるという状況にはない。かといって、すべての著作物がまったくコントロールされていないという状況にもない。つまり、その中間段階にあるわけでして、この中間段階をどういうふうに見て、また明日の技術状況をどうにらんでシステムを構築していくことが権利者と社会一般の調和に資するかという、こういう観点から議論をしているわけでして、決して権利者の利益を無視してお金を払わなくていいという、それだけではないということは御理解いただきたいと思います。

 したがいまして、これは今年度中に結論が出るわけですけれども、仮にiPod等について追加指定をしないとした場合でも、あるいは仮に追加指定をするとした場合でも、いずれにいたしましても30条に関する根本的な議論を早急にしなければいけないという点については、小委員会ではコンセンサスを得ております。つまり、これは仮にiPodに課金しなくても、何らかのことを考えて、やはり権利者にそれなりの利益は還元しなければいけないということが根底にあるわけです。

 したがいまして、今年度の末の結論がどうなるかはまだ決まっておりませんけれども、そういうことを念頭に置いた上で今日の御議論も参考にさせていただいて、また議論を進めてまいりたいと思います。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは本日いろいろ貴重な御意見をいただきまして、それからこの後、一般の意見募集も予定されておりますので、そういった議論を反映させて、また小委員会の方で御議論をお願いしたいというふうに思います。

【大林委員】 すみません。ちょっと最後に一言だけよろしゅうございますか。

【野村分科会長】 はい、どうぞ。

【大林委員】 申し訳ございません。お時間拝借します。今日ここに出されている資料1の中にはございませんが、毎回申し上げているのですけれども、実演家の保護期間の延長というのを是非お考えいただきたいなということでございます。我々が実演をした時点から50年間という保護期間というのはあまりにも短いのではないか。存命中にもう権利が切れてしまうということは、あってはならないと。これは我々としては可及的速やかに改正をしていただきたいので、是非お考えをいただき、継続的によろしくお願いしたいと思います。それだけでございます。

【野村分科会長】 これは事務局の方で何かございますか。

【甲野著作権課長】 今後、法制問題小委員会でどういうテーマで議論するにつきましては、またよく関係の先生方とも御相談しながら決めるべき問題かと思いますので、御発言につきましては事務局としては承知をしたということでよろしくお願いしたいと思います。

【野村分科会長】 それでは契約・流通小委員会において取りまとめられました、「著作権等管理事業法の見直しに関する報告書(案)」について、土肥主査より御報告をお願いいたします。

【土肥主査】 土肥でございます。それでは契約・流通小委員会における検討状況について、報告申し上げます。

 契約・流通小委員会では、これまでに2つの検討を行いました。1つはお手元の資料にございますように、著作権等管理事業法についての検討でございます。資料2も後ほど報告を申し上げます。それから、2つ目は裁定制度のあり方についての検討です。これは先ほど資料1により、法制問題小委員会審議の経過の冒頭の部分にもございますように、法制問題小委員会における検討に先立ち、契約・流通小委員会で検討を行い、7月28日の法制問題小委員会へ報告をいたしたものでございます。その内容につきましては、先ほどから、法制問題小委員会の報告として中山主査より報告があったとおりでございます。

 それでは資料2に基づきまして、「著作権等管理事業法の見直しに関する報告書(案)」、これにつきまして報告をいたします。

 まず資料の2の1ページ、1.はじめに、ここを御覧ください。当小委員会では、平成13年10月に施行されました著作権等管理事業法について、同法附則第7条による制度の見直し条項に基づき検討を行ったわけでございます。検討に当たりまして関係者や一般の方々からあらかじめ意見の募集を実施いたしまして、そこに寄せられた意見及び管理事業の現状を踏まえ検討課題を整理いたしまして、平成16年9月8日開催の契約・流通小委員会以降、平成17年4月26日の小委員会まで計6回の審議を行い、この報告書案を取りまとめたわけでございます。

 なお、意見募集の状況につきましては、本報告書案の後半の部分、ページを打ってないようでございますけれども、もし打つとすれば21ページに資料2として添付してございます。

 それから2ページの2.著作権等管理事業の現状についてというところを御覧ください。著作権等管理事業者は平成17年8月1日現在で36の事業者が登録をされておりまして、うち28の事業者は管理委託契約約款及び使用料規程を届け出て、事業を現に実施しております。管理事業者の概況の説明は省略いたしますけれども、これも資料の1、19ページの次の20ページのところになろうかと思いますけれども、そこに添付しておりますので参照をお願いいたします。

 3ページを御覧ください。ここは管理事業者への指導及び監督の状況でございます。平成16年度より事業実施報告の提出を求めておりまして、また同年度より立入検査を定期的に実施することとしております。

 それで少し戻るわけでございますけれども、目次のページを御覧ください。3.著作権等管理事業法見直しに関する検討課題と検討結果についてですけれども、意見募集の結果等を踏まえ、(1)から(5)までの検討課題として整理いたしまして検討を行ったわけでございます。

 まず(1)の規制の対象となる事業の範囲、これは4ページになるわけでございますけれども、意見募集では非一任型の管理事業も規制対象にすべきであるという、こういう御意見や、文献複写等の分野における管理事業者の一元化を望む意見などがあり、1及び2の事項について検討をしたわけでございます。

 それから7ページですけれども、適格性を欠くと思われる管理事業者への対応です。意見募集では、ノウハウ等を有していない管理事業者も散見されるために、現在の登録要件の強化あるいは登録手続きを厳格にすべきではないかと、こういう御意見もありました。そこで1の事項について検討をしたわけでございます。

 それから次に8ページの(3)ですけれども、管理事業者に対する規制です。意見募集では、公正な事業を行われるよう同一分野の複数管理事業者の役員の兼務を制限すべきではないかとこういう御意見、あるいは利用者から得た情報の目的外使用を禁止することを管理事業法上、明定すべきではないかという御意見、それから管理著作物等の情報提供について義務規定にするよう求める御意見、あるいは管理事業者に対して利用者の求めに応じて著作物等の管理権限を明らかにするよう、こういう義務を課すべきではないかという御意見などがあり、これについては1から6までの事項について検討、1から6ですね。ここまでの事項について検討をしたわけでございます。

 それから14ページですけれども、これは(4)の使用料規程、協議・裁定制度の部分でございますけれども、意見募集では管理事業者が使用料規程を設定する時は広範囲な利用者の意見を聴取すべき等の意見がありまして、12についての事項について検討をいたしました。

 それから最後に16ページのところ、その他でございますけれども、意見募集としましては包括利用許諾契約のあり方の見直し、こういったことを求める御意見もございまして、1の使用料のあり方等についての検討をしたわけでございます。

 以上の検討事項に基づく検討結果について、御報告を申し上げます。これは18ページの4のまとめを御覧ください。

 まず全体的な評価でございますけれども、管理事業法が施行から4年ほど経過いたしまして、同一分野に複数の管理事業者が存在する状況も生まれておりまして、著作権者等の選択の幅が拡大しております。また、管理手数料の引き下げ等のサービスの向上や、経営面での改善が見られるという前向きの評価もいただいておるところでございます。

 他方、意見募集の結果からは、同一分野に管理事業者が複数存在することによる許諾手続きの複雑さ、あるいは信頼度の必ずしも高いとはいえない新規参入事業者の存在等の問題による、いわば旧仲介業務法に基づく秩序の変更に伴う戸惑い等もあるように思われ、特に利用者側からは規制の強化を求める意見が多く見られたところであります。

 当小委員会におきましては、検討の結果として次のような提言となったわけでございます。

 まず、ただちに管理事業法を改正し対応すべき事項というものは見当たらないということでございます。ただし、非一任型の管理事業の規制、管理事業者の役員の兼務、兼職ですね。それから管理事業者の守秘義務、管理著作物等の情報の提供、管理権限の開示義務及びインターネットによる公示につきましては、管理業務の実態をよく調査するとともに、ある程度の期間を経た段階で改めて制度改正について検討する必要があると考えられるということでございます。これは18ページのアのところで述べてある部分でございます。

 それから、またこれらの課題について文化庁はガイドラインを策定するなどいたしまして、適切な管理事業が実施されるよう、管理事業者に対する指導・助言を強化していく、そういう必要性があるということでもございます。これについては19ページのウのところに述べてある部分でございます。

 次に、文化庁は管理事業者への指導・監督を的確に実施していくことが必要ではないかということでございます。定期報告徴収及び定期立入検査など、現在実施している施策は内容の充実を図り、今後も継続をしていくことが重要であり、また相当期間にわたり管理委託契約約款等を未提出である、こういう管理事業者、あるいは事業の実態がないと思われる管理事業者につきましては、廃業届の提出を求める等、文化庁は管理事業者への指導監督を的確に実施していくことが必要であるということでございます。これにつきましては18ページのイのところで述べてある部分でございます。

 それから最後に19ページのエのところでございますけれども、文化庁は手続の改善等に配慮すべきであるということでございます。届出事項の変更届出期間の緩和とか、管理委託契約約款等のインターネットによる公示については、現行法の枠内で十分対応が可能であると考えられ、文化庁はその手続の改善等に配慮すべきであるということでございます。

 報告書案の説明については、以上のとおりでございます。今後の検討のスケジュールでございますけれども、今後この報告書案に対し広く一般からの意見募集を行いまして、提出された意見を踏まえ当委員会で検討をし、最終の報告書として取りまとめていきたいと、こういう予定でおるところでございます。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それではただいまの御報告につきまして、御意見、御質問があればお願いしたいと思います。

 いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。もし特にございませんようでしたら、続いて国際小委員会において取りまとめられました「文化審議会著作権分科会国際小委員会中間報告書」につきまして、大楽委員の方から御報告をお願いいたします。

【大楽委員】 大楽でございます。本日は道垣内主査ご欠席のため、私、担当させていただきます。

 国際小委員会は、前回第15回の文化審議会著作権分科会の開催が2月28日にございましたが、それ以降4回開催いたしました。本委員会における検討状況については、お手元の資料3を御覧ください。

 国際小委員会における検討事項としては4つございました。2枚目の目次を御覧いただきますと、第1に放送条約への対応のあり方、第2にフォークロアの保護への対応のあり方、第3にアジア諸国等との連携の強化及び海賊版対策のあり方、そして第4にデジタル化に伴う著作権の課題への対応のあり方ということでございます。

 検討結果の概要を御報告いたします。まず放送条約への対応のあり方でございますが、WIPOでの検討状況の報告と、それから条約テキストの論点に関する議論を行いました。放送条約については今年、今月末のWIPOの一般総会で外交会議の開催可能性について議論される予定ですが、委員会ではこれまでの各国提案、議論を踏まえて、WIPOにて作成された条約テキストについて検討を行いました。

 総論として、国際的議論も熟しておりますので、まず早期採択を目指して努力すべきだという合意を得ました。各論については、本文2ページ以降に2.がございます。その(1)として放送条約の保護の趣旨、(2)条約の保護の対象、(3)支分権の内容、そして(4)技術的保護手段及び権利管理情報の論点、といった問題点についてわが国の交渉方針を整理しました。

 また欧米から提案がありましたウェブキャスティングの保護については、将来の国際的議論に備えて本委員会で引き続き検討を進める必要があるという意見が出されました。

 次にフォークロアの保護への対応のあり方について、WIPOでの検討状況の報告と主要論点についての議論を行いました。7ページからそれについての記述がございます。

 WIPOでの検討状況については、本年6月の第8回WIPOでの、「遺伝資源、伝承知識及びフォークロアに関する政府間委員会(IGC)」の会合において、その会期を延長して引き続き検討するという提案を今後の一般総会に提案するという方向となったということが、事務局から報告されました。

 わが国としての方針については10ページの3.にございます。フォークロアの保護については、いろいろな制度を柔軟に選択して、自国の文化、慣習に合わせた保護制度を包括的に構築するということを目指して、当面は条約ではなく、ガイドラインとかモデル規定を模索するという方向で議論することが適当だという結論となりました。

 次に11ページの、アジア諸国との連携の強化及び海賊版対策のあり方ということですけれども、現在、FTA交渉などを通じてアジア諸国などとの連携が深まっております。その一方で、依然として大量の海賊版が流通しておりまして、官民連携して海賊版対策に力を注いでいるということが事務局から報告されました。

 わが国としては、今後海賊版対策として、お手元の資料14ページ以降に、(1)侵害国等に対する働きかけ、(2)アジア諸国などにおける著作権制度及び著作権思想の普及の支援、(3)わが国の権利者による積極的な権利行使の支援、(4)官民連携の一層の強化、(5)欧米などとの連携の強化、といった点が重要であるという指摘がなされました。

 最後に、デジタル化に伴う著作権の課題への対応のあり方について議論を行いました。16ページにございますが、デジタル化、ネットワーク化が進展するにしたがいまして、P2P技術の活用によるファイル交換やコンテンツの安全な取引ということが問題になってまいりまして、デジタル著作権管理技術がコンテンツの安全な取引の推進には必要となるわけですが、それらについて国際的な対応のあり方が課題になっております。

 これらの課題については、技術の標準化や相互運用について、関係者の自主的な取り組みを尊重する一方で、政府としては著作権関連条約への加盟を促進すること、それから裁判管轄や準拠法についての整理をすること、それから主要国間の連携強化を進めるということが重要であるという指摘を行いました。これらは、16ページ以下にまとめられております。

 今後の検討スケジュールとしては、この中間報告に対して広く一般から意見を聴取した上で、今月末からのWIPO一般総会での国際的動向も踏まえて委員会で検討した上で、最終報告案を取りまとめる予定です。以上です。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。それではただいまの御報告につきまして、御意見、御質問等ございましたら、御発言をお願いしたいと思います。

 はい、岡田委員、どうぞ。

【岡田委員】 14ページのアジア諸国等における著作権制度及び著作権思想の普及への支援ですけれども、これはぜひとも強力にやっていただきたいと思います。我々は甚大な被害を被っているのですが、あちこちでそれぞれに努力されているにもかかわらず、改善されたという実感が全然湧いてきません。日本はリーダーシップをしっかり発揮して、アジア諸国に対する著作権の啓発に関して、国としてご尽力いただきたいと思います。

【野村分科会長】 他に御意見、いかがでしょうか。よろしいでしょうか、何か。

 はい、角川委員、どうぞ。

【角川委員】 この海賊版の問題はかなり深刻になってきていると思います。知財でも条約を結んでいこうと、各国のアジアの国々と条約を結んでいこうと、そういう方向で検討されているというふうに思っております。私は東京国際映画祭の支援もやっておりますけれども、過日のこの著作権分科会で劇場内で私的録画という形でビデオを、デジタルビデオに映画を撮っているということについての一つの危機感を申し上げましたけれども、今回のこの東京国際映画祭で各国から非常に厳しい出品制限が行われてきております。と申しますのも、映画祭の上映の中でデジタル機器によって録画されて、それが国際マーケットに流出していくということなのであります。

 私たちはともすれば私的録画という立場で、息子さんが映画館に行けないようなお母さん、お父さんに映画を見せてあげたいのだなと、そういうふうに好意的に受け止めて、そういうものだったら大したもの、いちいちうるさく言うのはいやだなと思っておりましたけれども、日本の東京の映画館で私的録画ということの許可を楯にして外国人が、特にアジアの人たちなのですけれども、積極的に録画をして、それを香港だとか中国大陸あるいは韓国に流出しているというルートがだんだんはっきりしてまいりました。そんな立場からも、私はやっぱりこの私的録画という問題は大変難しいということは重々わかった上で、この海賊版の取り締まりという問題の視点も必要だということを申し上げたいと思います。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。他に御意見、いかがでしょうか。

 それではほかに御意見がないようでございますので、この委員会の審議をこれで終わりたいと思いますが、各小委員会におきましては本日各委員からいろいろいただいた御意見、それからこれから行う意見募集で寄せられた意見等を踏まえて、引き続き御検討を進めていただきたいと思います。

 では、事務局の方から今後の予定につきまして、簡単に御説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 お手元に参考資料3を配布しておりますので、御覧いただきたいと思います。今後の著作権分科会、各小委員会の審議日程の予定というものを付けております。一番左が著作権分科会でございますが、本日第16回、9月8日、各小委員会からの報告を賜ったところでございますが、それぞれの報告等につきましてはそれぞれの小委員会の部分に記載をしてございますが、本日より10月7日まで意見募集ということを行う予定でございまして、今後の小委員会の議論等に反映をするということを考えているところでございます。

 そして、この著作権分科会につきましては、12月に第17回を開催を日程、予定として組んでおりまして、そこでは各小委員会からの報告、そして分科会としての報告書取りまとめということを予定をしております。なお、この分科会の報告につきましては、例年ですとその翌年に文化審議会の総会がございますが、そこで報告をするというスケジュールになっております。

 また、法制問題小委員会、契約・流通小委員会、そして国際小委員会につきましても、ここに記載されているとおり、それぞれ与えられた課題につきまして検討をされていくということでございます。

 なお、1点修正をさせていただきたい点がございます。法制問題小委員会のところで、12月に第11回の予定を入れさせていただいているところでございますが、全体としてはスケジュールは今後の審議日程によりまして変更があるわけでございますが、現時点におきましては第11回は予定をしておりませんので、これは削っていただければと思います(※事務局注:ホームページに掲載している資料は修正後のものです。)。以上でございます。

【野村分科会長】 ありがとうございました。そのほかに事務局の方から御連絡事項ございましたら、お願いいたします。

【甲野著作権課長】 特にはございません。

【野村分科会長】 はい。それでは、どうもありがとうございました。以上をもちまして、第16回の文化審議会著作権分科会は終了とさせていただきます。御多用の中、各委員におかれましては御出席をいただきまして、どうもありがとうございました。

〔了〕



(文化庁長官官房著作権課)

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