オープンサイエンスに関する勧告

オープンサイエンスに関する勧告(仮訳)

 

2021年11月23日 第41回ユネスコ総会採択

 

前文

 国際連合教育科学文化機関(以下「ユネスコ」という。)の総会は、二千二十一年十一月九日から二十四日までパリにおいてその第四十一回会期として会合し、
 人及び地球に対する複雑な及び相互に関連している環境、社会及び経済についての課題(貧困、健康の問題、教育を受ける機会、機会の不平等及び格差の拡大、科学、技術及びイノベーションの格差の拡大、天然資源の枯渇、生物の多様性の喪失、土地の劣化、気候変動、自然及び人為的な災害、連鎖的に進行する紛争及び関連する人道上の危機を含む。)に取り組むことの緊急性を認識し、
 人類の福祉を改善し、環境の持続可能性並びに地球上の生物の及び文化の多様性に対する尊重を促し、社会及び経済の持続可能な開発を助長し、並びに民主主義及び平和を促進するための解決策を提供することによりこれらの課題に対応するためには、科学、技術及びイノベーション(STI)が極めて重要であることを認め、
 また、人間の進歩を加速化し、及び知識社会を助長する情報通信技術及び世界規模の接続性の拡大によりもたらされる機会及び可能性を認め、並びに国と地域との間並びに国及び地域の内部に存在するSTI及びデジタルにおける格差の縮小の重要性を強調し、
 STIにおける既存の不平等を減らし、並びに二千三十アジェンダの実施及び持続可能な開発目標(SDGs)等の実現を加速化するオープンサイエンスの変革的な潜在的可能性(特に、アフリカの国、後発開発途上国(LDCs)、内陸開発途上国(LLDCs)及び島嶼(しよ)国(SIDS)におけるもの)に留意し、
 ユネスコの世界全体としての優先事項、すなわちジェンダー平等及びアフリカ、並びに不平等の根本的な原因に対処するため及びその効果的な解決策を提供するためにこれらの全ての面をオープンサイエンスの政策及び実践において主流化することの必要性に留意し、
 一層開かれた、透明性のある、協働的な及び包摂的な科学の実践は、一層アクセス可能な及び検証可能な科学的知識で厳格な審査及び批判を受けるものを伴うことにより、科学の質並びに科学の再現性及び影響力を向上させ、並びにこれにより確固とした意思決定及び政策並びに科学における信用の強化に必要とされる証拠の信頼性を向上させる、より効果的な企てとなることを考慮し、
 また、世界的な新型コロナウイルス感染症による保健危機が世界的な緊急事態に対応し、及び社会の強靱(じん)性を向上するために、科学的情報への衡平的なアクセスを助長し、科学の知識、データ及び情報を共有することを円滑にし、並びに科学の協力及び科学及び知識に基づく意思決定を強化することの緊急性及びニーズを世界的規模で証明したことに留意し、
 適用される国際協定に基づく権利及び義務(例外及び柔軟性を含む。)に従って、現在及び将来の国際的な保健及びその他の危機に対応するために必要とされる科学的知識、科学的データ、科学的方法及び科学的プロセスが全ての国でその自由な利用が確保されることにより、科学の進歩から生ずる利益へのアクセスという点において、いかなる者も取り残さないことを約束し、
 世界人権宣言の原則(特に第十九条及び第二十七条に含まれる原則)及び二千七年の先住民族の権利に関する国際連合宣言を確認し、
 ユネスコ憲章第一条に定めるとおり、ユネスコの主要な機能の一つが知的活動の全ての部門における国家間の協力(出版物、芸術的及び科学的に意義のある物並びにその他の資料の交換を含む。)を奨励し、並びにいずれの国の人により作成された印刷物及び刊行物であっても全ての国の人々が利用できるようにする国際協力の方法を発案することにより、知識を維持し、増進し及び普及させることであることを想起し、
 ユネスコ総会がその第三十九回会期において採択した、特に共有財としての科学の重要な価値を認識する二千十七年の科学及び科学研究者に関するユネスコの勧告に基づき、
 また、二千十九年のオープン教育資源(OER)に関するユネスコの勧告及び千九百七十一年のユネスコの万国著作権条約を想起し、並びにユネスコ総会がその第三十六回会期において採択した科学的情報及び研究の開かれたアクセスを促進することに資するユネスコの戦略及びその第三十二回会期において採択したデジタル遺産の保護に関するユネスコの憲章に留意し、
 また、既存の国際的な法的枠組み、特に知的財産権(科学者の科学的生産物に対する権利を含む。)に関するものの重要性を認識し、
 さらに、協力及び共有する価値に根ざしたオープンサイエンスの実践が既存の知的財産制度に立脚し、並びに開かれた取組方法であって科学及び社会の利益のために全ての人に対して知識へのアクセスの機会を拡充し、並びにイノベーション及び知識の共同創出への参加の機会を促進するためオープンライセンス供与の利用を奨励し、資料をパブリック・ドメインに供し、並びに適当な場合には知的財産制度に存する柔軟性を利用するものを促進することを認め、
 さらに、開放性、透明性及び包摂性を促進するオープンサイエンスの実践が全世界において既に存在すること並びに科学的産出の数が増加し、既にパブリック・ドメインにあり、又は特定の条件の下における自由なアクセス、再利用及び配布を認めるオープンライセンスの制度の下でライセンス供与されていること(その作成者が適切に認定されている場合に限る。)に留意し、
 さらに、オープンサイエンスが、デジタル時代の変化、課題、機会及び危機に適応し、並びに科学の社会的影響力を高めるために科学の実践を変革する運動として数十年前に始まったことを想起し、また、これに関して、千九百九十九年の科学及び科学的知識の利用に関するユネスコ及び国際科学会議の宣言(行動枠組)、二千二年のブダペスト・オープンアクセス・イニシアティブ、二千三年のオープンアクセス出版に関するベセスダ・ステートメント並びに二千三年の自然科学及び人文科学における知識のオープンアクセスに関するベルリン宣言に留意し、
さらに、オープンサイエンスの実践及び基盤への投資が経済的な利益と実質的な収益をもたらし、イノベーション、活発な研究及び経済上の連携を可能にすることについての利用可能な豊富な根拠を認識し、
 科学的プロセス及び科学的産出へのアクセスの拡大が、データ及び科学的資料を収集し、作成し、変換し、及び再利用することにおける重複するコストを削減し、並びに同じデータを用いてより多くの研究を行わせることによって並びに研究過程における地方、国、地域及び世界全体での参加のための機会を増加させ、並びに科学の知見に関する一層広範な普及のための機会を増加させることによって、科学の社会的影響を高め、それにより科学体系の有効性及び生産性を向上させることに合意し、
 複雑な問題を取り扱う共通の研究課題を推進するため、共有する知識の基盤を利用する研究コミュニティが行う集合的な科学的プロセスの重要性が増大していることを認識し、
 オープンサイエンスの協力的かつ包摂的な特性は、新たな社会的関係者が科学的プロセスに関与すること(市民科学及び参加型の科学によるものを含む。)を認めることにより、知識の民主化に貢献し、誤情報及び偽情報と戦い、既存の制度的な不平等及び富、知識及び権力の障壁に対処し、並びに社会的に重要な問題の解決に向けた科学の活動の指針となるものであることを考慮し、
 オープンサイエンスは、科学コミュニティの間における科学的知識の共有の促進を助長するのみならず、伝統的に過小評価されてきた又は除外されてきた集団(女性、少数民族、先住民の学者、相対的に不利な国及び言語資源の乏しい国出身の学者等)の学問的な知識の吸収及び交流を促進し、並びに各国及び地域の間の科学の発展、基盤及び能力についてのアクセスの不平等を減らすことに貢献すべきであることを認め、
 また、オープンサイエンスは、先住民及び地域社会との開かれた対話並びに現在の問題の解決及び変革的な変化に向けた新たな戦略のための知識を有する多様な者への尊重を促進しつつ、持続可能な開発の基盤として全世界の文化及び知識の体系の多様性を尊重することを認識し、
 この勧告を採択し及び適用するに当たり、異なる国における科学、技術及びイノベーションに関する様式及び組織を決定する法律、規則及び慣習の多大な多様性を考慮して、
 1 このオープンサイエンスに関する勧告を二千二十一年十一月二十三日に採択する。
 2 加盟国が、自国の管轄内においてこの勧告の原則の効力を生じさせるため、各国の憲法上の実践及び統治体制に従い適当な措置(立法措置その他の措置のいかんを問わず必要とされるものを含む。)をとることによって、この勧告の規定を適用することを奨励する。
 3 また、加盟国が、この勧告について、科学、技術及びイノベーションに責任を有する当局及び団体の注意を喚起し、並びにオープンサイエンスの関係者と協議することを奨励する。
 4 さらに、加盟国が、オープンサイエンスの促進のための二国間の、地域の、多国間の及び地球規模の自発的活動において協力することを奨励する。
 5 加盟国が、この勧告に従ってとった措置について、決められた期日及び様式により、ユネスコに報告することを奨励する。

Ⅰ この勧告の目的

 1 この勧告の目的は、オープンサイエンスの政策及び実践に関する国際的な枠組みであって、オープンサイエンスの展望における学問分野上の及び地域的な相違を認識し、学問の自由、ジェンダー変革的な取組方法及び個別の課題を考慮し、並びに国の間及び自国内に存在するデジタル、技術及び知識の格差を減少させることに貢献するものを提供することである。
 2 この勧告は、国際的な段階におけるオープンサイエンスに関する共通の定義、並びに共有する価値、原則及び基準を定め、並びに個人の、制度上の、国内の、地域の及び国際的な段階において全ての人のためのオープンサイエンスに関する公正かつ衡平な運用化に資する一連の行動を提案する。
 3 その目的を達成するため、この勧告の主要な目的及び行動の分野は、次のとおりとする。
  (i) オープンサイエンス並びに関連する利益及び課題に関する共通の理解並びにオープンサイエンスに通ずる多様な道筋を促進すること。
  (ii) オープンサイエンスを可能にする政策環境を発展させること。
  (iii) オープンサイエンスの基盤及びサービスに投資すること。
  (iv) オープンサイエンスのための人的資源、研修、教育、デジタルリテラシー及び能力開発に投資すること。
  (v) オープンサイエンスの文化を促進し、及びオープンサイエンスのためのインセンティブを調和させること。
  (vi) 科学的プロセスの異なる段階においてオープンサイエンスのための革新的な取組方法を促進すること。
  (vii) オープンサイエンスの文脈における、デジタル、技術及び知識の格差を減少させるための国際協力及び多面的な利害関係者との協力を促進すること。

Ⅱ オープンサイエンスの定義

 4 二千十七年の科学及び科学研究者に関するユネスコの勧告に従い、「科学」とは、人間が、個人又は大小の集団として、協力及び競争して、観察された現象の客観的研究並びに研究結果やデータの共有及び査読を通じた検証という手段により、一連の因果関係、関係、又は相互作用を発見し及び修得するために組織的な試みを行い、体系的な思考及び概念化によって知識の下位体系を協調的な形で集約すること、そして、それによって自然及び社会において起こる過程及び現象についての理解を自らの利益になるよう使用する機会を提供する企てをいう。
 5 オープンサイエンスは、学問の自由、研究の健全性及び科学の卓越性に関する本質的な原則を基礎として、科学のコンテンツ、科学的ツール及び科学的プロセスの開放性の向上から生ずる再生産性、透明性、並びに共有及び協力の実践を科学的事業に統合する新たな模範を確立する。
 6 この勧告の適用上、オープンサイエンスとは多様な運動及び実践を組み合わせた包摂的な構成物であって、多言語の科学の知識を全ての人が自由に利用し、アクセスし、及び再利用することができるようにし、科学及び社会の利益のための科学の協力及び情報の共有を拡大し、並びに伝統的な科学コミュニティを越えた社会的関係者に対して科学的知識の創出、評価及びコミュニケーションに関する過程を開放することを目的とするものをいう。オープンサイエンスは、全ての科学の学問分野及び学術の実践の側面(基礎科学及び応用科学、自然科学及び社会科学並びに人文科学を含む。)から成り、並びに次の主要な柱(オープンサイエンス知識、オープンサイエンスの基盤、科学的コミュニケーション、社会的関係者の開かれた関与及びその他の知識の体系との開かれた対話)を基礎とする。
 7 「オープンサイエンス知識」とは、科学的出版物、研究データ、メタデータ、オープン教育資源、ソフトウェア並びにソース・コード及びハードウェアへの開かれたアクセスであって、パブリック・ドメインにおいて又は著作権の下で特定の条件の下でアクセス、再利用、転用、改訂及び再配布が認められるオープンライセンスの下でライセンスが供与され、並びに全ての関係者(居所、国籍、人種、年齢、ジェンダー、収入、社会経済的事情、職業段階、学問分野、言語、宗教、障害、民族若しくは移住資格又は他の理由のいかんを問わない。)に対して直ちに又は可能な限り速やかに提供され、及び無償であるものをいう。「オープンサイエンス的知識」とは、また、調査の方法及び評価の過程を開設する可能性をいう。したがって、利用者は、次のものへのアクセスが無償で認められている。
  (a) 「科学出版物」は、特に、査読付きの学術誌の論文及び書籍並びに研究報告及び会議文書を含む。科学出版物は、出版者によりオープンアクセスのオンライン出版プラットフォーム上で配布することができるものとし、又は出版の後に学術機関、学術団体、政府機関、又は、オープンアクセス、無制限の配付、相互運用性並びに長期的なデジタル保管及び蓄積を可能とする公共の利益に貢献するその他の確立した非営利団体によって支持され、及び維持されているオンライン・オープンリポジトリに寄託され、直ちに利用可能とすることができる。オープンライセンスが供与され、又はパブリック・ドメインに供されたもの(出版物に関連する科学的産出(例えば、最初の科学研究の結果、研究データ、ソフトウェア、ソース・コード、原料物質、ワークフロー及びプロトコル、画像及び図式素材のデジタル表現並びに学術的なマルチメディア資材)は、当該出版物に適切に関連付けられる適切な技術的基準に従って、適当なオープンリポジトリに寄託されるべきである。科学出版物への即時のアクセスが支払と引換えにおいてのみ認められるペイウォール方式の出版方法は、この勧告に沿うものではない。第三者への著作権のいかなる譲渡又はライセンス供与も、科学出版物への即時かつ開かれたアクセスを可能とする公衆の権利を制限すべきではない。
  (b) 「オープン研究データ」は、特に、デジタルデータ及びアナログデータ(未処理のもの及び処理済みのもの)並びに付随するメタデータ並びに数値的根拠、文字による記録、画像及び音声、プロトコル、分析コード並びにワークフローであって、謝辞を条件として、いずれの者も自由に使用し、再利用し、保有し及び再配布することができるものをいう。オープン研究データは、優れたデータのガバナンス及び管理に関する原則、特に、FAIR(検索可能な、アクセス可能な、相互運用可能な及び再利用可能な)原則に従って、適時のかつ利用者に優しい、人間可読及び機械可読の形式並びに実効可能な形式で使用できるものであって、定期的な収集及び維持によって支えられる。
  (c) オープン教育資源は、二千十九年のオープン教育資源(OER)に関するユネスコの勧告に定めるとおり、あらゆる媒体(デジタル媒体又はその他の媒体)の教育、学習及び研究の資料であって、パブリック・ドメインとなった、又はオープンライセンスの下で公開され、他の者による無料のアクセス、使用、改訂及び再配布をいかなる制約も課さず又は制約を限定して認めたもの(特に、その他の自由にアクセス可能な科学の知識に関する理解及び使用に関連するもの)をいう。
  (d) 「オープンソースソフトウェア」及びソース・コードは、一般的に、他の者が使用し、アクセスし、修正し、拡大し、研究し、派生作品を作成し、並びにソフトウェア及びそのソース・コード、設計又は設計図を共有する権利を与えるオープンライセンスに基づき、適時のかつ利用者に優しい方法で、並びに人間可読及び機会可読の形式並びに修正可能な形式で、ソース・コードが公に利用可能なものであるソフトウェアを含む。ソース・コードは、ソフトウェアリリースに含まれ、及びリポジトリ上で自由に入手可能とされなければならず、また、選択されたライセンスは、同等の又は相当する開かれた条件の下で修正され、並びに派生作品の作成及び共有を認めなければならない。オープンサイエンスの文脈において、オープンソースコードが研究過程の構成要素である場合には、その再利用及び複製を可能とするためには、一般的に、オープンソースコードがオープンデータ及びそれを編集し及び実行するために必要な環境に関する開かれた仕様を伴うことを必要とする。
  (e) 「オープンハードウェア」は、一般的に、物理的な物体の設計に関する詳細であって、可能な限り多くの人々に対してハードウェアの設計及び機能に関する知識を構築し、適応し、及び共有する能力を提供しつつ、いかなる者によってもその物体が研究され、修正され、作成され、及び配布され得るような方法でライセンス供与されたものをいう。オープンソースソフトウェア及びオープンハードウェアの双方において、再利用を可能とし、持続可能性を向上させ、及び努力の不要な重複を減少させるためには、貢献、帰属及び規律のためのコミュニティ主導による過程が必要である。ソフトウェア・コード、ツールについての説明、機器の見本及び機器自体は、自由に配布し、及び改訂することができるが、安全な使用を確保するための国内法令に従うことを条件とする。
 8 科学の知識へのアクセスは、可能な限り自由であるべきである。アクセスの制限は、均衡がとれ、及び正当である必要がある。その制限は、人権、国家安全保障、秘密、研究対象者のプライバシーの権利及び尊重、法的手続及び公共の秩序の保護、知的財産権及び個人情報の保護並びに神聖かつ神秘的な地域固有の知識及び希少な、脅威にさらされている、又は絶滅のおそれのある種の保護に基づいてのみ、正当と認められる。もっとも、自由に入手可能ではなく、アクセス可能ではなく、再利用可能ではないデータ又はコードであっても、地方の、国の又は地域の関連する統治者により作成された定義されたアクセスの基準に従って、特定の利用者の間で共有することができる。データが自由に利用できない場合には、適当なときは可能な限り多くのデータが共有され得るよう、データを仮名化及び匿名化するためのツール及びプロトコル並びに媒介したアクセスのためのシステムを開発することが重要である。また、正当とされる制限の必要性は、時間とともに変化するものであり、将来的にデータがアクセス可能となるよう許可し、又は後にデータへのアクセスを制限するようにする。
 9 「オープンサイエンスの基盤」とは、オープンサイエンスを支援し、及び様々な共同体のニーズを満たすために必要となる、共有の研究の基盤(仮想の又は物理的なものであり、主要な科学の設備又は機器の一式、知識に立脚した資源(収集物、学術雑誌、オープンアクセスの出版プラットフォーム等)、リポジトリ、アーカイブ及び科学のデータ、現行の研究情報システム、科学の領域を評価し、及び分析するための開かれた計量書誌学的及び計量科学的システム、協調的かつ多学問分野のデータ分析を可能とする開かれた計算及びデータ処理サービスの基盤並びにデジタル基盤を含む。)をいう。オープンラボ、出版物、研究データ及びソース・コードについてのオープンサイエンスのプラットフォーム及びリポジトリ、ソフトウェアフォージ及び仮想の研究環境並びにデジタルの研究サービス(特に、単一の永続的識別子によって科学の対象を明確に識別できるもの)は、オープンサイエンスの基盤の重要な構成要素の一つであり、アクセス、移植性、データの分析及び連合、科学的文献、課題別の科学の優先順位、又はコミュニティの関与を管理し、及び提供するために不可欠である開かれた及び標準化されたサービスを提供する。異なるリポジトリは、そのリポジトリが格納する対象(出版物、データ又はコード)の特徴、地域的事情、利用者のニーズ及び研究コミュニティの要求により調整されるが、リポジトリの内容が人及び機械により適切に検証され、発見可能であり、及び再利用可能であることを確保するために、相互に運用可能な基準及び最良の方法を採用する必要がある。インキュベーターを含むオープンイノべーションの試験設備、アクセス可能な研究施設、オープンライセンスの管理並びにサイエンスショップ、科学博物館、サイエンスパーク及び実験施設は、物理的な施設、能力及びサービスへの共通のアクセスを提供するオープンサイエンスの基盤のその他の例である。オープンサイエンスの基盤は、しばしばコミュニティによる形成の努力の結果であり、その基盤の長期的な持続可能性のために重要であり、したがって、非営利とすべきであり、並びに可能な限り全ての公衆にとって永続的な及び無制限のアクセスを保証すべきである。
 10 「社会的関係者の開かれた関与」とは、研究過程の一部である実践及び手段を開放すること並びに新たな形態の協力及び活動(クラウドファンディング、クラウドソーシング、科学的なボランティア等)に基づき科学の過程をより広範な探究心のある社会に対して包摂的かつアクセス可能なものとすることによって、科学者と科学コミュニティを越えた社会的関係者との間における協力を拡大することをいう。問題の解決のための集合知を発展させる(学際的な研究方法の使用を通してのものを含む。)という観点から、オープンサイエンスは、全ての利害関係者に対してその関心、ニーズ及び願望と合致する研究を発展させる際の発言の機会を与えつつ、知識の創出への市民及びコミュニティの関与の基礎並びに科学者、政策立案者、実業家、起業家及びコミュニティの構成員の間で促進される対話の基礎を提供する。さらに、市民科学及び市民の参加は、専門家ではない科学者により行われる科学の研究モデルとして発展し、科学的に有効な方法に従って、ウェブプラットフォーム及びソーシャルメディア並びにオープンソースハードウェア及びオープンソースソフトウェア(特に低コストのセンサー及びモバイルアプリ)を相互交流の重要な媒体として利用し、公的な科学プログラム及び専門家の科学者と連携して、頻繁に実施されてきた。市民科学及び参加型の科学による産出の他の関係者(科学者を含む。)による効果的な再利用のため、これらの成果物は、全ての者の利益の最大化を確保するために必要なキュレーション、標準化及び保管方法に従うべきである。
 11 「他の知識体系との開かれた対話」とは、異なる知識の保有者の間の対話であって、二千一年のユネスコの文化的多様性に関する世界宣言に従って多様な知識の体系及び認識の体系の豊かさ並びに知識の生産者の多様性を認識するものをいう。それは、伝統的に疎外されてきた学者の知識の包摂を促進すること、並びに多様な認識の体系の間の相互関係性及び補完性、国際的な人権規範及び基準の遵守、知識の主権及び規律の尊重並びに知識の利用から生ずる恩恵の公正かつ衡平な分配を受け取る知識の保有者の権利について認識を向上することを目的とする。特に、二千七年の先住民族の権利に関する国際連合宣言及び地域固有のデータの規律原則(例えばCARE(集団の利益、管理の権限、責任及び倫理)のデータの原則)に従って、地域固有の知識の体系とのつながりを構築する必要がある。その取組は、伝統的な知識並びにその土地及び資源に関するデータの保管、所有、運用について規律し及び決定する先住民族及び地方共同体の権利を認めるものである。 
 12 公的部門は、オープンサイエンスの実施において主導的な役割を果たす。もっとも、オープンサイエンスの原則は、民間部門の資金提供を受けた研究も指導するべきである。さらに、研究及びイノベーションの体系には、多面的な関係者及び利害関係者が存在し、それぞれがオープンサイエンスの運用化において果たす役割を有する。国籍、民族、ジェンダー、言語、年齢、学問分野、社会経済的事情、資金提供の基盤及び職業段階又は他の理由のいかんを問わず、オープンサイエンスの関係者には、特に、研究者、科学者及び学者、研究機関の責任者、教育者、学術界、専門団体の構成員、学生及びキャリアの短い研究者の組織、情報専門家、図書管理、利用者及び公衆一般(共同体、土地固有の知識の保有者及び市民社会組織を含む。)、コンピュータ科学者、ソフトウェア開発者、コーダー、クリエイター、イノベーター、エンジニア、市民科学者、法学者、立法者、裁判官及び公務員、出版者、職能団体の編集者及び構成員、技術スタッフ、研究資金の提供者及び慈善家、政策立案者、学術団体、専門分野の実務者、並びに科学、技術及びイノベーション関連の民間部門の代表者を含む。

Ⅲ オープンサイエンスの中核的な価値及び基本原則

 13 オープンサイエンスの中核的な価値は、科学を社会に開放すること及び科学的研究のサイクル全体に開放性の原則を拡大することの権利に基づいた、倫理的な、認識論的な、経済的な、法的な、政治的な、社会的な、多面的な利害関係者の及び技術的な影響に由来する。当該価値は、次のとおりとする。
  (a) 質及び健全性:オープンサイエンスは、学問の自由及び人権を尊重し、並びに知識に関する複数の情報源を結合し、並びに研究の方法及び成果を厳格な検討及び厳格な審査並びに透明性のある評価過程のために広範に利用可能とすることにより、質の高い研究を支援すべきである。
  (b) 集団利益:オープンサイエンスは、世界的な公共財として、人類に共通して属するべきであり、及び人類に利益をもたらすべきである。このため、科学的知識は自由に利用可能なものとされ、及びその利益は普遍的に共有されるべきである。また、科学の実践は、包摂的で、持続可能で、及び衡平であるべきであり、これは科学の教育及び能力向上のための機会においても同様である。
  (c) 衡平性及び公正性:オープンサイエンスは、先進国及び途上国の研究者の間における衡平性を確保し、並びに科学の投入及び産出の公正かつ相互的な共有並びに知識の生産者及び消費者(居所、国籍、人種、年齢、ジェンダー、収入、社会経済的事情、職業段階、学問分野、言語、宗教、障害、民族若しくは移住資格又は他の理由のいかんを問わない。)の双方による科学的知識への同等のアクセスを可能とすることにおいて、重要な役割を果たすべきである。
  (d) 多様性及び包摂性:オープンサイエンスは、知識、慣行、ワークフロー、言語、研究の結果及び研究事項の多様性であって、科学コミュニティ全体、異なる研究団体及び学者並びに伝統的な科学コミュニティを越えた公衆一般及び知識の保有者(先住民族及び地域共同体並びに適当な場合には異なる国及び地域からの社会的関係者を含む。)のニーズ及び知識の多元主義を支援するものを包含すべきである。
 14 オープンサイエンスに関する次の基本原則は、上述の価値を支持し、及びオープンサイエンスの理想を現実化することを可能にする条件及び実践についての枠組みを提供する。
  (a) 透明性、厳格な審査、批評及び再現性:開放性の向上は、科学的結果に関する証明力及び厳格性を強化し、科学の社会的な影響を増大させ、並びに複雑で相互に関連する問題を解決するための社会全体の能力を向上することを目的として、科学的試みの全ての段階において促進されるべきである。開放性の向上は、科学的情報の透明性及び信頼性の向上につながり、証拠に基づき並びに現実、論理及び科学界関係者の精査に照らして審査される歴然たる知識の形としての科学の根本的特徴を強化する。
  (b) 機会の平等:全ての科学者及び他のオープンサイエンスの関係者及び利害関係者(居所、国籍、人種、年齢、ジェンダー、収入、社会経済的事情、職業段階、学問分野、言語、宗教、障害、民族若しくは移住資格又は他の理由のいかんを問わない。)は、オープンサイエンスにアクセスし及び貢献し、並びにオープンサイエンスの利益を得る平等な機会を有する。
  (c) 責任、尊重及び説明責任:開放性の拡大に伴い、全てのオープンサイエンスの関係者の責任は拡大し、その責任は、公の説明責任、利益相反に対する配慮、研究活動により生じ得る社会的及び生態学的な結果に対する警戒、知的健全性並びに研究に関連する倫理上の原則及び波及効果の尊重とともに、オープンサイエンスの優れた規律の基礎を形成すべきである。
  (d) 協力、参加及び包摂:科学的プロセスの全ての段階において、地理、言語、世代及び資源の境界を越えた協力が標準となるべきであり、また、学問分野間の協力は、社会的に重要な問題を解決することにおいて、社会的関係者の十分かつ効果的な参加及び疎外されてきたコミュニティの知識の包摂とともに促進されるべきである。
  (e) 柔軟性:世界中の科学の体系、関係者及び能力の多様性並びに情報通信技術を支援することに関する発展的性質により、オープンサイエンスの実践に関する万能な方法は存在しない。上述の中核的な価値を堅持し、及びこの勧告に定める他の原則を最大限遵守しつつ、オープンサイエンスへの移行及びオープンサイエンスの実践に通ずる様々な道筋を奨励する必要がある。
  (f) 持続可能性:オープンサイエンスは、可能な限り効率的かつ影響力のあるものにするため、相対的に優位ではない機関及び国からの科学の生産者の平等な参加を確保する長期的な実践、サービス、基盤及び資金提供モデルの上に構築されるべきである。オープンサイエンスの基盤は、主として非営利かつ長期的な展望であってオープンサイエンスの実践を促進し、及び最大限に可能な範囲で全ての人に対して恒常的かつ無制限のアクセスを保証するものにより組織化され、及び財政化されるべきである。

Ⅳ 行動の分野

 15 この勧告の目的を達成するために、加盟国は、国際法に従い、並びに自国の政治、行政及び法の枠組みを考慮して、次の七の分野において同時に行動をとることを勧告される。
 (i) オープンサイエンス並びに関連する利益及び課題に関する共通の理解並びにオープンサイエンスに通ずる多様な道筋を促進すること。
 16 加盟国は、科学コミュニティにおいて及び様々なオープンサイエンスの関係者の間において、この勧告に定めるオープンサイエンスに関する共通の理解を促進し、及び支持し、並びにオープンサイエンスの取組方法及び実践の多様性を尊重しつつ、制度上の、国内の及び地域の段階におけるオープンサイエンスの啓発を戦略的に計画し、及び支援することを勧告される。加盟国は、次のことを考慮することを奨励される。
  (a) オープンサイエンスは、オープンサイエンスによる利益が共有され、及び相互主義的であることを確保し、並びにデータ及び知識の不公正又は不衡平な抽出を含まないようこの勧告に定めるオープンサイエンスの価値及び原則を取り入れることを確保すること。
  (b) 公的な資金で行われた研究は、この勧告の規定(特に8の規定)によるオープンサイエンスの原則に従い実施されること及び公的な資金で行われた研究からの科学的知識(科学的出版物、開かれた研究データ、オープンソフトウェア、ソース・コード及びオープンハードウェアを含む。)は、自由にライセンス供与され、又はパブリック・ドメインに供されることを確保すること。
  (c) 非営利の、学術的な及び科学的なコミュニティの主導の出版モデルを共有財として支援することにより、出版物(人文科学及び社会科学の分野のものを含む。)の形式及び手段の多様性並びにビジネスモデルの多様性を通じて書誌多様性を奨励すること。
  (d) 科学の実践、科学的出版物及び学術交流における多言語主義を奨励すること。
  (e) 共同体のニーズ及び権利(二千七年の先住民族の権利に関する国際連合宣言で表明されているとおり、伝統的な知識に対する先住民族の権利を含む。)が、オープンサイエンスの実践において侵害されるべきでないことを確保すること。
  (f) 他の研究分野における学者、意思決定を行う者及び公衆への科学的知識の普及を支援するため、オープンサイエンスのコミュニケーションを促進すること。
  (g) オープンサイエンスの原則及び優先事項の範囲を拡大し、及び相互に共有し得る方法についての議論に民間部門を関与させること。
  (h) オープンサイエンスの利益及びその現実的かつ明白な課題(例えば、競争、一層高度な技術によるデータの抽出及び利用、知的所有権との関連、プライバシー、安全並びに公的資金による研究と民間資金による研究との間の不平等に関するもの)について、これらの課題に建設的に取り組み、並びにこの勧告に定める価値及び原則に従ってオープンサイエンスの実践を実施するために、多面的な利害関係者による開かれた議論を可能にすること。
 (ii) オープンサイエンスを可能にする政策的環境を発展させること。
 17 加盟国は、各国の個別の事情、統治構造及び憲法上の規定に従って、政策環境(オープンサイエンスの運用化及びオープンサイエンスの方法の効果的な実施(研究者の間におけるオープンサイエンスの実践を奨励するための政策を含む。)を支援する制度的、国内的、地域的及び国際的な段階における政策環境を含む。)を発展させ、又は奨励すべきである。加盟国は、透明性のある参加型の多面的な利害関係者による手続(科学コミュニティ、特にキャリアの短い研究者及びその他のオープンサイエンスの関係者との対話を含む。)を通じて、次のことを考慮することを奨励される。
  (a) 効果的な制度的及び国内的なオープンサイエンスの政策的枠組み及び法的枠組みであって、既存の国際法及び地域的な法令に適合し、並びにこの勧告に定める定義、価値及び原則並びに行動に沿ったものを策定すること。
  (b) オープンサイエンスの取組方法の多様性を尊重しつつ、個々の機関から地方の及び国際的な段階までのオープンサイエンスの政策、戦略及び行動を調和させること。
  (c) オープンサイエンスの政策、戦略及び実践におけるジェンダー平等の側面を主流にすること。
  (d) 研究実施機関(特に公的資金を受領する機関)がオープンサイエンスのための政策及び戦略を実施することを奨励すること。
  (e) 研究実施機関、大学、科学連合及び科学協会並びに学術団体が国立の科学アカデミー及びキャリアの短い研究者の団体(青年アカデミー等及び国際学術会議(ISC))と調整しつつ、オープンサイエンスの実践を奨励するためこの勧告に基づく原則の声明を採択することを奨励すること。
  (f) 国内、制度及び資金提供者の段階におけるオープンサイエンスの政策及び実践に関する不可欠な要素として市民科学及び参加型の科学の導入を促進すること。
  (g) 多面的な関係者と知識を共同で創出することができるモデルを設計し、及び非科学の協力に係る承認を確保するための指針を策定すること。
  (h) 責任ある研究及び研究者についての評定及び評価の実践であって、研究の産出、活動及び任務の多様性を認識し、質の高い科学を奨励するものを促進すること。
  (i) オープンサイエンスのための衡平な官民の間の連携を促進し、及びオープンサイエンスにおいて民間部門を関与させること。もっとも、ベンダーロックイン、優越的地位の濫用行動、公的資金で行われる科学的活動からの利益の不公正又は不衡平な抽出を防止するための適切な認定及び規則があることを条件とする。加盟国は、オープンサイエンスにおける公的利益及び公的資金の役割を考慮し、科学及びオープンサイエンスに関連するサービスの市場が、世界的なかつ公共の利益のために、及びいかなる営利団体の側からも市場の支配を受けることなく機能することを保証すべきである。
  (j) オープンサイエンスの中核的な価値及び原則に基づく科学のための資金調達及び投資についての政策及び戦略を立案し、実施し、及び監視すること。オープンサイエンスの運用化に関連する費用は、オープンサイエンスの研究、出版、データ及びコーディングの実践、オープンサイエンスの基盤及びサービスの開発及び採用、全ての関係者の能力開発並びに科学的事業に関する革新的で高度に協働的な及び参加型の取組方法に係る支援に関するものである。
 (iii) オープンサイエンスの基盤及びサービスに投資すること。
 18 オープンサイエンスは、技術的な及びデジタルの基盤及び関連サービス(それらの長期的な維持を含む。)への投資に重点を置いた、科学技術及びイノベーションへの系統的かつ長期的で戦略的な投資を必要とし、またそれに値する。これらの投資には、財源及び人的資源の双方を含むべきである。世界的な公共財としての科学を考慮して、オープンサイエンスのサービスは、不可欠な研究の基盤とみなされ、コミュニティによって規律され、及び所有され、並びに政府、資金提供者、研究コミュニティ及び研究社会の多様な関心及びニーズを反映する機関により協働で資金が供与されるべきである。加盟国は、非営利のオープンサイエンスの基盤を促進し、及び次のことへの適切な投資を確保することを奨励される。
  (a) 科学、技術及びイノベーション。また、指針として、国内総生産(GDP)の一パーセント以上が研究及び開発の経費に支出されるよう貢献するために努力を払う。
  (b) 世界中の科学者及び科学の利用者が使用するための信頼性のあるインターネット接続及び帯域幅
  (c) 国立の研究教育ネットワーク(NREN)及びその機能であって、NRENのサービスの間における最大限の相互運用性及び調和を確保するための地域協力及び国際協力を奨励するもの
  (d) 非営利の基盤(オープンサイエンスの取組方法を支援するコンピュータ関連設備並びにデジタルの公共基盤及びサービスを含む。)。これらは、研究の生産物(科学情報、データ、ソース・コード及びハードウェアの仕様を含む。)の長期保全管理並びにコミュニティによる規制、研究者の間の協力並びに研究の生産物の共有及び再利用を確保することを容易にすべきである。研究を支援するいかなる基盤又はサービスも、強固なコミュニティ主導の基盤を有し、並びに相互運用性及び包摂性を確保すべきである。オープンサイエンスのためのデジタル基盤は、可能な限り、オープンソースソフトウェアスタックを基礎とすべきである。これらの開かれた基盤は、直接の資金提供によって及び各補助金における使途が特定された一定の割合によって支援され得る。
  (e) オープンサイエンスのための統合された情報技術の基盤。これには、書誌多様性及び社会と関与を支援するため、必要に応じて高性能コンピューティング、クラウドコンピューティング及びデータ保存並びに確固とした、開かれた及びコミュニティが管理する基盤、プロトコル及び基準を含む。国内の、地域の及び国際的な段階における既存のオープンサイエンスの基盤及びサービスの統合を促進することにより断片化を回避しつつ、この基盤が全ての人にアクセス可能であり、国際的に相互接続され、及び可能な限り相互運用可能となることを確保し、並びにいくつかの中核的な仕様(特にデータ管理に関するFAIR(検索可能な、アクセス可能な、相互運用可能な及び再利用可能な)原則及びCARE(集団の利益、管理権限、責任及び倫理)原則)に従うことを確保するため、注意を払うべきである。また、科学にとって重要な全てのデジタルオブジェクト(データ、データセット、メタデータ、コード又は出版物のいずれかを問わない。)に特有の技術的な要件に対応すべきである。データ管理の基盤の能力は、全ての科学の分野のニーズに衡平に資するべきである(使用するデータの量及び性質並びに処理するために使用する方法のいかんを問わない。)。オープンサイエンスの基盤及びサービスは、科学者及びそれらを使用するその他の聴衆のニーズに向け、それらの人々の実践に適合した機能を発展させ、並びに利用者に優しいインターフェースを提示すべきである。デジタルオブジェクトの永続的識別子にも十分な注意を払うべきである。例えば、デジタルオブジェクトの各型式に応じる開かれた永続的識別子の定義及び帰属、効率的な評価、アクセス、使用及び再利用のために必要なメタデータ並びに信頼できる地域的又は世界的なデータリポジトリのネットワークによるデータの適切な管理が含まれる。
  (f) 地域的又は世界的な研究コミュニティとの間で締結されるコミュニティの協定であって、データの共有、データの形式、メタデータの規格、オントロジー及び専門用語、ツール並びに基盤のためのコミュニティの方法を定めるもの。国際的な科学の連合及び協会、地域又は国内の研究基盤並びに学術誌の編集委員会は、それぞれ、当該協定を作成することを支援する役割を有する。さらに、各種の意味を持たせた人工の産物(特に語彙、分類法、オントロジー及びメタデータの図式)の間の収れんは、学際的な研究のためのデータの相互運用性及び再利用に不可欠である。
  (g) 基盤の利用を最適化する南北協力、南南北協力及び南南協力並びに共有する、多数国間の、地域の及び国内のオープンサイエンスのプラットフォームのための共同戦略(研究協力の促進、オープンサイエンスの基盤の共有、技術支援、オープンサイエンスに関連する技術の移転及び共同開発並びに相互に合意する条件に基づく良い方法の交換を通じたものを含む。)。このような自発的活動は、オープンサイエンスのために調整された支援を提供する仕組みであって、オープンサイエンスのサービス及び研究の基盤(保存、管理及びデータコモンズを含む。)へのアクセス並びに政策、教育課程及び技術的な基準の調和を含むものである。異なる地域において進行する多くの自発的活動は、政策、実践及び技術的な仕様の観点からそれらを相互運用することが重要である。科学者が、特に低所得国及び中所得国について、このようなプラットフォームを創出し、及び使用することを可能とする資金提供の計画に投資することも重要である。
  (h) 関連性のある出版物及びデータを検索し、及び分析する過程を自動化する新世代の開かれた情報技術のツールであって、仮説を設定し、及び検証する過程を一層速くかつ効率的にするもの。これらのツール及びサービスは、人工知能の技術を使用するツールの開発及び使用により生ずる潜在的な危険及び倫理上の問題に対応しつつ、制度、国及び学問の境界を越えるオープンサイエンスの枠組みの範囲内で使用される場合において影響が最大化する。
  (i) この勧告21及び22にそれぞれ定める科学的プロセスの異なる段階における革新的な取組方法及び国際的な科学協力
  (j) オープンサイエンスの実践に向けた変化及びオープンサイエンスの実践の維持に関連する必要な費用のための資金供与並びにオープンライセンス供与の制度の促進
  (k) 非デジタル素材(例えば、試薬)のための基盤
  (l) 科学者と社会との間での知識の交換及び共同創出のためのプラットフォーム(地方の段階における市民科学及び参加型の研究を行うボランティアの組織に対する予測可能及び持続可能な資金供与を通じたものを含む。)
  (m) 国内の、地域的な及び世界的なデータ及び情報システムを補完するためのコミュニティによる監視及び情報システム
 (iv) オープンサイエンスのための人的資源、研修、教育、デジタルリテラシー及び能力開発に投資すること。
 19 オープンサイエンスは、能力開発及び人的資本への投資を必要とする。二十一世紀のデジタル時代の変化、挑戦、機会及び危険に適応するための科学の実践の転換は、新たな技術が必要とされる技能において並びにオープンサイエンスの特性及び実践において特定の研究、教育及び研修を必要とする。加盟国は、次のことを考慮することを奨励される。
  (a) オープンサイエンスの概念及び実践について系統的かつ継続的な能力開発を行うこと。この能力開発には、オープンサイエンスの指導原則及び中核的な価値に関する幅広い理解並びにデジタルリテラシー、デジタル協力の実践、データ科学及びデータ管理、収集、長期保存及び蓄積、情報リテラシー及びデータリテラシー、インターネットの安全、コンテンツの所有権及び共有並びにソフトウェア工学及びコンピュータ科学に関する専門的な技能及び能力を含めることとする。
  (b) 専門のキャリアにおいてオープンサイエンスの産物を使用するための特定の能力を必要とするキャリアの異なる段階の研究者のために、並びに民間部門及び公的部門において又は市民社会において活動する関係者のために、特定の学問分野と調和するオープンサイエンスの能力に関する枠組みについて合意し、並びにこれらの能力の獲得を支援することに関して認められた技能及び研修計画を開発すること。主要な一連のデータ科学及びデータ管理の技能、知的財産についての法律に関連する技能並びにオープンアクセスと社会の関与を確保するために必要な技能は、適当な場合には、全ての研究者の基礎的な専門知識の一部としてみなされ、及び高等教育の研究技能に係る教育課程に組み込まれるべきである。
  (c) データ科学及びデータ管理における高等教育並びに役割の専門化に投資し、並びにそれらを促進すること。オープンサイエンスの実現には、科学コミュニティと協力して、国内又は地方の段階におけるデータ管理及び開放に向けての戦略的な方向性を設定する能力を有するデータ規律者並びに合意された原則、特にFAIR原則及びCARE原則に従い、信頼できる機関又はサービスにおけるデータを管理し、及び収集する上級のかつ専門職のデータ管理者が必要である。オープンサイエンスによって提供される機会を活用するため、研究事業、研究機関及び市民社会の自発的活動については、高度なデータ科学の技能(分析、統計、機械学習、人工知能、視覚化並びに科学的な及び倫理的な責任の下でコードを書き、及びアルゴリズムを使用する能力を含む。)を求めることを必要とする。
  (d) オープンサイエンスの能力開発のための手段として、二千十九年のオープン教育資源(OER)に関するユネスコの勧告で定義されているオープン教育資源(OER)の活用を促進すること。そのため、OERは、オープンサイエンスの教育資源及び研究資源へのアクセスを増大させ、学習の成果を改善し、公的な資金供与の効果を最大にし、並びに教育者及び学習者が知識の共同創出者となるよう育成するために用いられるべきである。
  (e) 他の研究分野の学者、意思決定者及び公衆一般への科学の知識の普及を目的として、オープンサイエンスの実践に伴う科学的コミュニケーションを支援すること。科学出版物及びメディア、科学の大衆化、公開講座及び多様なソーシャルメディアのコミュニケーションによる科学の情報の普及は、科学コミュニティを越えた社会的関係者の関与を高め、科学に対する公衆の信頼を構築する。情報源の質及び適切な引用は、誤った解釈及び虚偽の情報の流布が生じないようにするため、オープンサイエンスに関する科学のコミュニケーションにとって極めて重要である。
 (v) オープンサイエンスの文化を促進し、及びオープンサイエンスのためのインセンティブを調和させること。
 20 加盟国は、自国の個別の事情、統治構造及び憲法上の規定に従い、国際的な及び国内の法的枠組みに適合する方法により、オープンサイエンスを制約する障害、特に研究及びキャリアの評価並びに表彰の制度に関連する障害の除去に積極的に取り組むことを勧告される。オープンサイエンスの運用化には、オープンサイエンスの優れた実践を奨励する、科学への貢献及びキャリアの向上についての評価が必要となる。オープンサイエンスの実践による意図しない悪影響(例えば優越的地位の濫用行動、データの移行、研究データの搾取及び私物化、科学者側の費用の増加並びに科学の出版における特定のビジネスモデルに関連する高額な論文の取扱費用等であって、全世界の科学界に不平等をもたらし、場合によっては、知的な財産及び知識の喪失を引き起こし得るもの。)の防止及び軽減にも、注意が払われる必要がある。加盟国は、次のことを考慮することを勧告される。
  (a) 現行の研究文化を変革し、他の研究者及び社会との間で共有し、協働し及び関与することについて研究者を評価し、並びに特にこの研究文化の変革を推進するキャリアの短い研究者を支援するために、多数の異なる利害関係者(学問分野及び国を越えた研究資金の提供者、大学、研究機関、出版者及び編集者並びに科学アカデミーを含む。)の取組を統合すること。
  (b) オープンサイエンスの原則と調和させるため、研究及びキャリアの評価の制度を見直すこと。オープンサイエンスへの注力には、時間、資源及び努力が必要であり、それらは従来の学術上の成果(出版物等)に自動的に転用できないが、科学と社会に重大な影響を及ぼし得ることを認め、評価の制度において知識を創出する環境における幅広い使命を考慮すべきである。これらの使命は、査読付きの国際的な学術雑誌への発表に限らず、知識の創出及び交流における様々な形態を伴う。
  (c) 次の評価制度の策定及び実施を促進すること。
   ・ 研究成果の量よりも質に焦点を合わせつつ、科学的産出を評価する方法を改善するための既存の取組(二千十二年の研究評価に関するサンフランシスコ宣言等)に基づくもの並びに学術誌に基づく基準(学術誌の影響要素等)の使用を控える多様な指標及びプロセスを目的に応じて使用するもの
   ・ 関連するあらゆる研究活動及び科学的産出(質の高いFAIRデータ及びメタデータ、良く整理された及び再利用可能なソフトウェア、プロトコル及びワークフロー、機械可読の研究結果の要約並びに社会的関係者の教育、広報及び関与を含む。)を重視するもの
   ・ 研究の影響及び知識の交流の証拠(研究過程への参加並びに政策及び方法への影響の拡大並びに学術界を越えた協力者との開かれたイノベーションへの関与等)を考慮するもの
   ・ オープンサイエンスにおいて、学問分野の多様性のために様々な方法が必要となるという事実を考慮するもの
   ・ オープンサイエンスの基準に照らし合わせた研究者の評価は、キャリア初期の研究者に特別の注意を払いつつ、キャリアの異なる段階に適合させるべきであるという事実を考慮するもの
  (d) オープンサイエンスの実践が広く認識され、並びに科学及び学術における採用及び昇進の基準として考慮されることを確保すること。
  (e) 資金提供者、研究機関、学術誌の編集委員会、学会及び出版者が、この勧告の規定に従い、科学の知識(科学出版物、開かれた研究データ、オープンソフトウェア、ソース・コード及びオープンハードウェアを含む。)への開かれたアクセスを要求し、及びそれに報いる方針を採用することを奨励すること。
  (f) 開かれた、透明性のある、及び衡平なアクセスの原則を遵守しつつ、学術交流における多様性を確保すること並びに論文の取扱費用や書籍の掲載料を無料とする非営利の出版モデル及び共同出版のモデルを支援すること。
  (g) 不平等に対処し、及び関連する優越的地位の濫用行動を防止するため、並びにオープンサイエンスの方法、産物及びデータに関する知的創作物を保護するため、効果的な規律措置及び適正な法令を実施すること。
  (h) 国際法に従い、作成者の功績を適切に認めることを条件として、パブリック・ドメイン及び既存のオープンライセンス供与制度における素材並びに著作物又は他の著作物の保護の対象となる作品の配布及び再利用を可能とする研究的及び教育的な使用のための著作権及びその他知的財産の例外(部分的又は派生的な使用を含む。)を促進すること。
  (i) 二千十七年の科学及び科学研究者に関するユネスコの勧告に従って、質の高い及び責任を有する研究を促進し、並びに科学の不当行為(結果のねつぞう及び偽造、科学の倫理規範の違反並びに盗用を含む。)を減少させるため、オープンサイエンスの実践の可能性を検討すること。
 (vi) 科学的プロセスの異なる段階においてオープンサイエンスのための革新的な取組方法を促進すること。
 21 オープンサイエンスは、科学の文化、方法論、制度及び基盤において関連する変革を必要とし、並びにその原則及び実践は、仮説の設定、方法論の開発及び試行、データの収集、分析、管理及び保存、専門家による査読並びにその他の評価の検証方法から、分析、省察及び解釈、考え及び結果の共有及び対立、伝達、配布及び入手並びに使用及び再利用に至る研究サイクル全体に適用する。オープンサイエンスは絶えず進化しており、将来新たな実践が生じることになる。加盟国は、科学的プロセスの異なる段階において開放に向けた革新的な取組方法を促進するため、次のことを考慮することを奨励される。
  (a) 研究過程の最初からオープンサイエンスを推進し、質及び再現性を向上させるために科学的プロセスの全ての段階において開放性の原則を拡張し(コミュニティ主導の協力及びその他の革新的なモデル(例えば、査読付きの最終的な出版物とは明確に区別される査読前論文)の推奨を含む。)、並びに科学的知識の普及を加速化し、及びその急速な成長を奨励するために科学の実践の多様性を尊重すること。
  (b) 適当な場合には、開かれた査読による評価(査読を行う者の身元の可能な範囲での開示、公に利用可能な審査並びにより広範なコミュニティが評価の過程において見解を提供し、及び評価の過程に参加する可能性を含む。)の実践を促進すること。
  (c) 否定的な科学の結果及び実施した研究者が期待した結果と一致しない科学の結果並びにそれらの結果に関連するデータの公開及び共有について、これらの結果も科学の知識の発展に貢献するものとして奨励し、及び評価すること。
  (d) 伝統的な科学コミュニティを越えた社会的関係者からの情報を取り込み、及び評価するための新たな参加型の方法及び検証技法(市民科学、クラウドソースに基づいた科学の計画、共同体が所有する保存機関への市民の関与その他の形態の参加型の科学を通じたものを含む。)を開発すること。
  (e) 疎外されてきたコミュニティのニーズを特定し、並びに科学、技術及びイノベーション(STI)の研究課題に組み入れられる社会的に関連する問題を強調する参加型の戦略を策定すること。
  (f) データの収集及び保管を促進し、並びに適切な期間にわたってデータを使用可能及び再利用可能なものとするために、アーカイブへのデータの寄託を容易にする戦略を策定すること。
  (g) オープンソースソフトウェア及びソース・コードの収集、保管及び利用者に優しいアクセスのために共有する基盤の開発を促進すること。
  (h) 科学的、社会的、経済的及び文化的利益を最大化し、並びに異なる学問分野の科学者が特にソフトウェア開発者、コーダー、クリエイター、イノベーター、技術者及び芸術家と相互に協力するためのハイブリッドで学際的な協力の場の創出を促進するため、学際的な形態におけるオープンデータの資源を蓄積し、及び使用することに関して科学者及び他の社会的関係者を支援すること。
  (i) 大規模な研究の基盤(例えば、物理学、天文学及び宇宙科学の分野における国際的な基盤)、並びに特に保健学、環境学、社会科学、その他の分野における協力基盤について、共有することを奨励し、相互運用性を促進し、及びオープンアクセスを強化すること。
  (j) 開かれたイノベーションの実践であって、オープンサイエンスの実践をその発見から一層迅速に転換し、及び発展させるよう連結するものを促進すること。オープンサイエンスと同様に、開かれたイノベーションと他のオープンサイエンスとの連携は、イノベーションの過程における広範かつ効果的な関与及び参加並びに新たな知識の効果的な商業化のためのビジネスモデルの発見及び開発を前提とする。
 (vii) オープンサイエンスの文脈における、デジタル、技術及び知識の格差を減少させるための国際協力及び多面的な利害関係者との協力を促進すること。
 22 加盟国は、オープンサイエンスを世界規模で促進するため、二国間であるか多国間であるかを問わず、12に定める全てのオープンサイエンスの関係者の間の国際協力を促進し、及び強化すべきである。加盟国は、科学及び社会の利益のためのオープンサイエンスの文脈における継続中の努力及び活動の利点を認識しつつ、次のことを考慮することが奨励される。
  (a) オープンサイエンスの不可分の実践の一つ、並びに科学的知識及び科学的経験の集中的な交流のための最も重要な主導的要素として、並びに科学の開放性の至上のものとして、科学の国際協力を奨励すること。
  (b) オープンサイエンスの国境を越える多面的な利害関係者との協力(既存の国際的、地域的及び世界的な協力の仕組み及び機関を活用することによるものを含む。)を促進し及び奨励すること。これには、科学的産出への普遍的なアクセス(学問分野、地理、性別、民族、言語、社会経済的事情又は他の理由のいかんを問わない。)、共有するオープンサイエンスの基盤の開発及び使用並びに技術支援及び技術移転、能力開発、リポジトリ並びに実践する共同体及び全ての国(オープンサイエンスの発展の段階のいかんを問わない。)の間の連帯に関する努力への参加を含むべきである。
  (c) オープンサイエンスの促進及び強化のための地域的及び国際的な資金調達の仕組みを確立し、並びに国際的、地域的及び国内的な努力を支援することができる仕組み(連携を含む。)を特定すること。
  (d) 最良のオープンサイエンスの実践並びにオープンサイエンスの政策、自発的活動及び実践に関する設計、策定及び実施から得られた教訓を交換するための効果的な協力のネットワークの設定及び維持を支援すること。
  (e) オープンサイエンスのための能力開発(基盤の開発、ソフトウェアの持続可能性、データの運営及び管理を含む。)における各国の間の協力を促進し、並びに国境を越えたオープンデータの搾取及び濫用を防止すること。
  (f) オープンサイエンスのための基準に関する国際的な協力を促進すること。
  (g) 加盟国及び関連する利害関係者と協議して、人類及び地球の持続可能性に関する利益に資するようオープンサイエンスを発展させるための国際協力を指導し、及び促進するオープンサイエンスの目標の設定及び採択を調整することをユネスコに委託すること。

Ⅴ 監視

 23 加盟国は、各国の個別の事情、統治構造及び憲法上の規定に従い、適当な場合には、定量的及び定性的な方法を組み合わせた方法を用いて、オープンサイエンスに関連する政策及び仕組みを監視すべきである。加盟国は、次のことを考慮することを奨励される。
  (a) 定められた目的に対するオープンサイエンスに関する政策及びインセンティブの実効性及び効率性を測定するための適当な監視及び評価の仕組み(意図しない結果及び悪影響(特にキャリアの短い研究者に対するもの)をもたらす可能性を特定するものを含む。)を導入すること。
  (b) ユネスコの支援を得て、及び多面的な利害関係者の取組方法により、オープンサイエンス及びその影響に関する進捗状況、良い方法、イノベーション及び研究報告を収集し、及び配布すること。
  (c) この勧告の実施のための監視の枠組みであって、国家の戦略的計画に含まれ、及び国際的な段階において共有される定性的及び定量的な指標を有し、短期的、中期的及び長期的な目的及び措置を有するものの策定を検討すること。オープンサイエンスの監視は、公(科学コミュニティを含む。)の監督の下で明確に維持され、並びに開かれた、いずれの者の所有権にも属さず、及び透明性のある基盤により可能な限り支援されるべきである。この監視については、民間部門を含むことができるが、民間部門に委任すべきではない。
  (d) オープンサイエンスの実効性及び長期的な効率性を把握するための戦略を策定すること。その策定は、多面的な利害関係者参加型の取組方法を含む。当該戦略は、世界的な課題に効果的に対応する包摂的かつ衡平な質の高い研究のために、科学、政策及び社会の間の関連性を強化し、透明性を向上させ、並びに説明責任を強化することに焦点を合わせることができる。

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