オープン教育資源(OER)に関する勧告

オープン教育資源(OER)に関する勧告(仮訳)

 

2019年11月25日 第40回ユネスコ総会採択

 

前文

国際連合教育科学文化機関(以下「ユネスコ」という。)の総会は、二千十九年十一月十二日から二十七日までにフランスのパリにおいてその第四十回会期として会合し、
ユネスコ憲章前文が、「文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つ、すべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもつて果たさなければならない神聖な義務である」ことを確認していることを想起し、
情報通信技術(ICT)の分野における及びユネスコの総会が採択するこの分野における関連する決定の実施に当たってのユネスコの重要な役割を認識し、
また、ユネスコ憲章第一条が、特に目的の中でユネスコに対し、「言語及び表象による思想の自由な交流を促進するために必要な国際協定」を勧告することを委任していることを想起し、
全ての人々が、権利、義務及び基本的自由(あらゆる手段により、また、国境を越えるかどうかにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える権利(第十九条)、教育を受ける権利(第二十六条)、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、並びに科学の進歩及びその恩恵にあずかる権利並びに創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利(二十七条)を含む。)を有することを述べている世界人権宣言に具現された原則を確認し、
また、二千七年の先住民族の権利に関する国際連合宣言が、国内法令の制定及び国の政策の実施に当たっての先住民の権利を認めていることを確認し、
二千六年の障害者の権利に関する条約が、障害者の教育を受ける権利(第二十四条)及び千九百六十年の教育における差別の防止に関する条約に定める原則を認めていることに留意し、
ユネスコの総会が、二千三年のその第三十二回会期において採択した多言語主義の促進及びサイバースペースにおける情報への普遍的なアクセスに関する勧告に言及し、
また、千九百九十七年の高等教育の教員の地位に関するユネスコの勧告並びに学問の自由及び職業上の自由の一環として教員に対して「教材の選択及び改訂、教科書の選択並びに教育方法の適用にあたって、主要な役割が与えられる」ことを強調する千九百六十六年の教員の地位に関する国際労働機関及びユネスコの勧告に言及し、
「ICTと地球規模の接続性は人間の進歩を加速化させ、デジタルデバイドを埋め、知識社会を発展させる大きな潜在力がある」ことを強調する持続可能な開発のための国際連合の二千三十アジェンダの重要性を再確認し、
教育の分野における及びすべての人々への、包摂的かつ衡平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進することを国際社会に要請している持続可能な開発目標4(SDG4)の達成に当たってのユネスコの指導的役割を認識し、
さらに、SDG4の実施に関する一連の戦略的な取組方法を定める教育二千三十行動枠組が、教育を受ける機会の増大が教育及び学習の質及び関連性を改善する措置を伴うべきこと並びに特に、「教育機関及び教育計画が、安全な、環境に優しい及び容易に利用可能な施設、学習者中心で、能動的かつ協働的な教授法を用いる質の高い十分な数の教員及び教育者並びに、書籍、他の学習材、オープン教育資源及び技術であって、無差別な、学習に資する、学習者に優しい、個別の状況に応じたものであり、費用対効果の大きい及び全ての学習者(児童、青少年及び成人)に入手可能なものと共に適切かつ衡平に提供されるべき」ことを強調していることに言及し、
二千三年の世界情報社会サミットの基本宣言が、「全ての者が情報及び知識を創造し、入手し、利用し及び共有することができる人間中心の、包摂的な及び開発指向型の情報社会を構築すること」を誓約していることを認め、
また、情報通信技術(ICT)(人工知能その他のものを含む。)の発展が、言語、音声及び表象による思想の自由な交流を改善する機会を提供するのみでなく、全ての者が知識社会に参加することを確保するための課題も提示することを認識し、
さらに、質の高い基礎教育及びメディア情報リテラシーが、情報通信技術(ICT)(人工知能その他のものを含む。)を利用し、ICTから利益を得るための前提条件であることを認識し、
包摂的な知識社会の構築において、オープン教育資源(OER)が、衡平な、包摂的な、開かれた、かつ、参加型である質の高い教育を支援し、並びに教育及び学習のために利用可能な資料の範囲を拡大することにより学問の自由及び教員の職業上の自律性を促進し得ることを認識し、
経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(第十三条1)、二千七年のケープ・タウンオープン教育宣言、二千九年のオープン教育資源に関するダカール宣言、二千十二年のパリオープン教育資源宣言、国際連合ミレニアム宣言及び二千年の行動のためのダカール行動枠組の全てが、「教育についてのすべての者の権利」を認めていることを考慮し、
全ての加盟国が、包摂的な知識社会を作り出し、及び持続可能な開発のための二千三十アジェンダ、すなわち、SDG4(質の高い教育)、SDG5(ジェンダー平等)、SDG9(産業、イノベーション及びインフラ)、SDG10(国内の及び国を越える不平等の是正)、SDG16(平和、司法及び強固な制度)及びSDG17(持続可能な開発目標のためのパートナーシップ)を達成することに資する、OERを主流化するための二千十七年のリュブリャナOER行動計画に立脚して、次のとおり定める。

1 このオープン教育資源(OER)に関する勧告を二千十九年十一月二十五日に採択する。
2 加盟国が、自国の管轄内においてこの勧告の原則を実施するため、各国の憲法上の慣行及び統治体制に従い、適当な措置(立法措置又はその他の措置のいかんを問わず必要とされるものを含む。)をとることによって、この勧告の規定を適用することを勧告する。
3 また、加盟国が、この勧告について、学習、教育及び研究に責任を有する当局及び団体の注意を喚起し、並びに学習及び教育に携わっている関係する利害関係者と協議することを勧告する。
4 さらに、加盟国が、この勧告に従ってとった措置について、決定される期日及び様式で、ユネスコに報告することを勧告する。

1 定義及び適用範囲

1 オープン教育資源(OER)とは、パブリック・ドメインとなった、又はオープンライセンスの下で公開されている著作権のあるあらゆる形式及び媒体の学習、教育及び研究の資料であって、他の者による無料のアクセス、再使用、別の目的のための再利用、改訂及び再配布を認めるものをいう。
2 オープンライセンスとは、著作権者の知的所有権を尊重し、並びに公衆に教材を再使用し、別の目的のために再利用し、改訂し、及び再配布し、並びに教材にアクセスする権利を付与する許可を与えるライセンスをいう。
3 情報通信技術(ICT)は、OERへの効果的、衡平な及び包摂的なアクセス並びにOERの使用、改訂及び再配布にとって多大な可能性を提供する。ICTは、OERが全ての者(障害者及び疎外された集団又は不利な立場にある集団の個人を含む。)にとって、時及び場所のいかんを問わずアクセス可能なものとなる可能性をもたらし得る。ICTは、個々の学習者のニーズを満たし、及びジェンダー平等を効果的に促進することを助長し、並びに革新的な教育学的、教訓的、及び方法論的な取組を奨励し得る。
4 この勧告における学校部門、ノンフォーマル部門及び(適当な場合には)インフォーマル部門における利害関係者には、教員、教育者、学習者、政府機関、父母、教育の提供者及び教育機関、教育支援要員、教員研修指導者、教育政策立案者、文化施設(図書館、公文書館、博物館等)及びその利用者、情報通信技術(ICT)基盤の提供者、研究者、研究機関、市民社会組織(職業団体及び学生団体を含む。)、出版業者、公的及び民間部門、政府間機関、著作権者及び著作者、メディア団体及び放送団体並びに資金供与団体を含む。

2 目的

5 SDG4を達成するための一の主要な前提条件は、政府その他の主要な教育に関する利害関係者が、適当な場合には、質の高い教材及び研究の資料並びに教育計画の作成、収集、定期的な更新、包摂的かつ衡平なアクセスの確保並びに効果的な利用にあたり、持続的な投資及び教育上の措置を行うことである。
6 二千七年のケープ・タウンオープン教育宣言及び二千十二年のパリOER宣言で明らかにしているとおり、教材へのオープンライセンスの適用は、これらの資料のより費用対効果の大きい作成、再使用、別の目的のための再利用、改訂、再配布、収集及び質の高い保証並びにこれらの資料へのアクセス(翻訳、異なる学習及び文化的状況に即した改訂、ジェンダーに配慮した資料の開発並びに特別な教育上のニーズを有する学習者にとって代替的な及びアクセスが可能な様式の資料の作成を含むが、これらに限定されない。)のための重要な機会をもたらす。
7 さらに、OERの適切な適用は、適当な教授法、十分に設計された学習オブジェクト及び学習活動の多様性との組み合わせにより、教育の過程におけるより積極的な参加者及び多様かつ包摂的な知識社会の構成員としてのコンテンツの作成者となるよう、教育者及び学習者の双方を従事させるための一層広範で革新的な教育方法の選択肢を提供し得る。
8 さらに、OERの作成、再使用、別の目的のための再利用、改訂、再配布及び評価並びにOERへのアクセスに関する地域的及び世界的な協力及び啓発は、政府及び教育の提供者が、定められた国内の教育政策の優先事項をより費用対効果の大きいかつ持続可能なものとすることができるような方法で、自由にアクセスできるコンテンツの質の評価を行い、並びに教育及び研究に関するコンテンツの作成、ICTの基盤並びに収集への自己の投資を最適化することを可能とすることができる。
9 これらの潜在的な利益に留意して、このOER勧告の目的及び行動の分野は、次のとおりとする。
(i) 能力開発。OERを作成し、再使用し、別の目的のために再利用し、改訂し、及び再配布し、並びにOERにアクセスし、並びに自国の著作権法及び国際的な義務に適合する方法によりオープンライセンスを使用し、及び適用するための全ての主要な教育の利害関係者の能力を発展させること。
(ii) 補完的な政策の策定。政府並びに教育当局及び教育機関が、自国の関連する研究の支援を得て、公的な資金で作成された教材及び研究の資料に対するオープンライセンス供与を支援するための規制の枠組みを採用し、並びに全ての人へ質の高い包摂的な教育及び生涯学習を支援するために、OERを使用し、及び改訂を可能にするための戦略を策定することを奨励すること。
(iii) 質の高いOERへの効果的、包摂的かつ衡平なアクセス。戦略及び計画の採用を支援すること(あらゆる媒体のOERが、衡平なアクセス、共同作成、収集及び検索の可能性を最大限にするためにオープンフォーマット及びオープン標準で共有されることを確保する関連する技術的解決策を通じて支援することを含む(その支援対象は、影響を受けやすい集団及び障害者を含む。)。
(iv) OERの持続可能性モデル創出の促進。国内の、地域の及び制度上の段階におけるOERの持続可能性モデルの作成並びに新たな持続可能な形態の教育及び学習に関する計画の立案及びパイロット試験を支援し、及び奨励すること。
(v) 国際協力の促進及び推進。OERの開発投資における不必要な重複を最小限にし、並びに文化的に多様で、地域的に関連のある、ジェンダーに配慮した、アクセス可能な、及び複数の言語及び様式の教材に関する世界的な共同管理を発展させるために、利害関係者間の国際協力を支援すること。

3 行動の分野

10 この勧告は、次の五の目的に取り組むものとする。(i)OERを作成し、再使用し、改訂し、及び再配布し、並びにOERにアクセスするための利害関係者の能力の開発、(ii)補完的な政策の策定、(iii)包摂的かつ衡平な質の高いOERの奨励、(iv)OERの持続可能性モデル創出の促進、(v)国際協力の推進
(i) OERを作成し、再使用し、改訂し、及び再配布し、並びにOERにアクセスするための利害関係者の能力の開発
11 加盟国は、全ての教育部門及び段階を対象として、制度上の及び国内の段階において、OERについての能力開発、啓発、使用、作成及び共有を戦略的に計画し、及び支援することを勧告される。加盟国は、次のことを考慮することを奨励される。
(a) OERが、いかなる方法で、教育資源及び研究資源へのアクセスを増大させ、学習の成果を改善し、公的な資金供与の効果を最大にし、並びに教育者及び学習者が知識の共同創出者となるよう自律的な力を育成することができるのかについて、関連する利害関係者の間において意識を形成すること。
(b) 教育の全ての段階における研修計画の不可分の一部を成すものとして、OERを作成し、利用可能なものとし、再使用し、改訂し、及び再配布し、並びにOERにアクセスする方法について、系統的かつ継続的な能力開発(現職者及び養成者)を行うこと(教育者のための初期の研修計画についての支援を含む。)。この能力開発には、OERを理解し、並びにOERを学習、教授、研究及び日常生活に組み入れることを支援するための公の当局、政策立案者並びに質の向上及び保証に関する専門家の能力を向上させることを含めることとする。
(c) 教育及び研究の目的のための著作権のある著作物の使用に関する例外及び制限について啓発すること。これは、教育の目標の達成及びOERの発展が著作権保護の対象となる既存の著作物の関与を必要とすることを認識しつつ、広範な著作物をOERに統合することを促進するために制定されるべきである。
(d) 安全な、確実な及びプライバシーが保護される形態でOERを容易に見つけ出し、再使用し、改訂し、及び再配布し、並びにOERに容易にアクセスできることの確保を助長するため、オープンライセンスを得た手段、メタデータの相互運用のプラットフォーム及び基準(国内的及び国際的なものを含む。)を活用すること。その活用には、無料の及び自由に利用できるオープンソースの編集支援ツール、ライブラリその他のリポジトリ及び検索エンジン、長期保全のためのシステム並びに自動のOER処理及び言語翻訳(適当な又は必要な場合)のための先端技術(例えば、人工知能の方法及び手段)を含めることができる。
(e) 全てのOERの利害関係者に、OERに関連する事項(教材の著作権及びオープンライセンス供与に関する事項を含む。)に関する情報及び援助を提供するための、容易にアクセス可能な資料を利用可能なものにすること。
(f) OERの発展及び使用を奨励するため、ソフトウェア、コード及びオープンライセンスの技術的用法を習得することを目的とするデジタルリテラシー技能を促進すること。
(ii) 補完的な政策の策定
12 加盟国は、各国の個別の事情、統治構造及び憲法上の規定に従って政策的環境(効果的なOERの慣行を補完する制度上の及び国内における政策的環境を含む。)を発展させ、又は奨励すべきである。加盟国は、透明性のある参加型の手続(利害関係者との対話を含む。)を通じて、次のことを考慮することを奨励される。
(a) 公的資金で作成された教育資源であって、適当な場合には、公に許諾され、又はパブリック・ドメインに供されるものを奨励する政策又は規制の枠組みを策定し、及び実施し、並びに政策の実施及び評価のために財源及び人的資源を割り当てること。
(b) 機関に対し、各国の著作権法及び国際的な義務に適合する方法での教育者及び学習者による質の高いOERの作成、再使用、別の目的のための再利用、改訂及び再配布並びにそのようなOERへのアクセスを促す法的及び政策的な枠組みを策定し、又は更新し、並びにOERに関する質の保証の仕組みを整備し、及び当該仕組みを教育及び学習の資料に関する既存の質の保証の戦略に組み入れることを奨励し、及び支援すること。
(c) 実践の共同体を作り出し、OERを用いた教員の専門能力開発を促進し、OERの専門家のネットワークを設け、及びOERの作成を専門的又は学術上の価値として適切に認める仕組みを整備すること。
(d) 全ての利害関係者が、公開のリポジトリにおいて、標準の公開ファイルの形式を用いて、ソースファイル及びアクセス可能なOERを公開することを支援し、及び奨励する仕組みを整備すること。
(e) OERに関する政策を国内の政策的枠組み及び戦略に内包し、並びにこれらの政策を他の公表された政策及び基本原則(例えば、オープンアクセス、オープンデータ、オープンソースソフトウェア、オープンサイエンスのためのものを含む。)と調和させること。
(f) OERの潜在力及び機会を活用するために教育の転換、教育課程及び全ての学習形態の調整、拡充又は改革におけるOERの導入に取り組み、並びにOERの積極的な使用、作成及び共有を促すために異なる教育方法及び評価の方式の統合を奨励し、並びにOERが包摂的かつ衡平な質の高い教育に及ぼす影響を評価すること。
(g) OERの開発、共有及び評価に関する関連する研究計画を通じて、OERに関する研究を奨励し、及び支援すること(AI等のデジタル技術の支援を含む。)。
(h) OER、OERの基盤及び関連サービスの生産中及び使用中、プライバシー及びデータの保護について最高水準を適用する政策を策定し、及び実施すること。
(iii) 質の高いOERへの効果的、包摂的かつ衡平なアクセスの奨励
13 加盟国は、全ての利害関係者のために、包摂的かつ衡平な質の高いOERの作成、再使用、別の目的のための再利用、改訂及び再配布並びにそのようなOERへのアクセスを支援することを奨励される。利害関係者には、特に年齢、ジェンダー、身体的な能力及び社会経済的な地位のいかんを問わず学校教育及びノンフォーマル教育の環境における学習者並びに影響を受けやすい状況にある人々、先住民、遠隔の農村地域の人々(遊牧民を含む。)、紛争及び自然災害による影響を受ける地域に居住する人々、種族的少数民族、移民、難民並びに避難民を含む。全ての場合において、ジェンダー平等は確保すべきであり、及び複合的かつ交差的な形態の差別により特に不利な立場にある学習者のために、衡平及び包容に特別な注意を払うべきである。加盟国は、次のことを考慮することを勧告される。
(a) 対象の学習者のニーズ及び物的環境並びに学習者に提供されている課程又は教科の教育目的の双方を最も適切に満たすOERへのアクセスを確保すること。これには、適当な場合には、資源へアクセスするオフライン(印刷されたものを含む。)の方法を含む。
(b) OERの利害関係者が、ジェンダーに配慮した文化的及び言語的に関連するOERを開発し、並びに現地の言語(特に、使用されることが少なく、資源が不十分であり、及び消滅の危機のある先住民の言語)のOERを作成することを支援すること。
(c) ジェンダー平等、無差別、アクセスの容易さ及び包摂性の原則が、OERの作成、再使用、改訂及び再配布並びにOERへのアクセスのための戦略及び計画に反映されることを確保すること。
(d) OERへのアクセス(特に、所得の低い農村及び都市の社会によるアクセス)を拡大させて提供するため、ICTの基盤及びブロードバンド並びに他の仕組みへの公的投資を確保し、及びこれらへの私的投資を奨励すること。
(e) OERの開発及び研究を奨励すること。
(f) OERの質の保証に関する既存の根拠に基づく水準、基準及び関連する規準であって、定期的な質の保証の仕組みに基づき教育資源(公に許諾されたものか公に許諾されていないものかを問わない。)を見直すことに重点を置くものを適当な場合には、作成し、及び調整すること。
(iv) OERの持続可能性モデル創出の促進
14 加盟国は、各国の個別の事情、統治構造及び憲法上の規定に従い、包括的、包摂的及び総合的なOERの持続可能性モデルの開発を支援し、及び奨励することを勧告される。加盟国は、次のことを考慮することを奨励される。
(a) 適当な場合には、OERの作成、所有、翻訳、改訂、収集、共有、蓄積及び保管を容易にし、並びにこれらの活動に参加するための全てのOERの利害関係者の能力を向上させるため、質の高い物品及びサービスの調達の過程を拡大し、及び簡素化するための現行の規定、調達に関する方針及び規則を見直すこと。
(b) 伝統的な資金源を通じてだけでなく、教育及び学習に不可欠な資料へのアクセスに係る費用が教育者又は学習者の個人によって負担されないことを確保しつつ、OERの提供に収入及び持続可能性をもたらす可能性のある連携、協力網の形成及び寄付等の収入、メンバーシップ、望むだけ支払う方式並びにクラウドファンディングを通じた非伝統的な相互主義に基づく資金調達を通じても持続可能性モデルを促進すること。
(c) 参加、共同作成、共同での価値の創造、地域社会の連携、イノベーションの促進及び共通の目的のために人々を結びつけることに焦点を当てる組織及び国家全体において、OERを用いた他の付加価値モデルを促進し、及びその付加価値モデルについて啓発すること。
(d) OERの製品及び関連サービスの開発を支援する規制の枠組みであって、国内的及び国際的な基準並びにOERの利害関係者の利益及び価値に合致するものを制定すること。
(e) オープンライセンスの適切な実施を確保するため、この勧告に定めるオープンライセンスの正確な言語翻訳を促進すること。
(f) OERの実施及び適用のための仕組みを提供し、並びに利害関係者からの意見及びOERの継続的な改善を奨励すること。
(g) 組織間の、国内の、地域における及び国際的な協力を通じてOERモデルを確保し、開発し、及び継続的に改善するため、既存の教育及び研究に関する予算及び資金を効率的に最適化すること。
(v) 国際協力の促進及び強化
15 加盟国は、OERの開発及び使用を促進するため、二国間であるか多数国間であるかを問わず、全ての関係する利害関係者間の国際協力を促進し、及び強化すべきである。加盟国は、次のことを考慮することが奨励される。
(a) 既存の国際的、地域的及び世界的な協力の仕組み及び機関を活用して、OERの事業及び計画についての国境を越える協力及び提携を促進及び奨励すること。これには、OERの協力的な開発及び使用並びにOERに関する能力開発、リポジトリ、実践の共同体、共同研究及び全ての国(OERの発展の段階のいかんを問わない。)の間の連帯に関する努力への参加を含むべきである。
(b) OERの促進及び強化のための地域的及び国際的な資金調達の仕組みを確立し、並びに国際的、地域的及び国内的な努力を支援することができる仕組み(連携を含む。)を特定すること。
(c) 対象事項等の分野、言語、機関、地域並びに地方的、地域的及び世界的な規模における教育の段階に基づき、OERを共有する効果的な加盟国間のネットワークの設定及び維持を支援すること。
(d) 適当な場合には、教育の分野における協力に関する国際協定にOERに関する特定の条項を組み込むこと。
(e) OERについての国境を越える交流及び協力を促進するため、教育及び研究の目的のための著作権の例外及び制限に関する国際的な枠組みの作成を検討すること。
(f) 普遍的価値を促進するため、OERの現地での実施における異文化間の伝達技術の貢献、多文化集団の管理、実践共同体の設計及び共同体の調整戦略を支援すること。

4 監視

16 加盟国は、各国の個別の事情、統治構造及び憲法上の規定に従い、適当な場合には、量的及び質的な方法を組み合わせた方法を用いてOERに関連する政策及び仕組みを監視すべきである。加盟国は、次のことを考慮することが奨励される。
(a) 定められた目的に対するOERに関する政策及び奨励措置の実効性及び効率性を測定するための適当な研究の仕組みを導入すること。
(b) ユネスコ及び国際的なオープン教育界の支援を得て、OER及びその影響に関する進捗状況、良い事例、イノベーション及び研究報告を収集し、及び配布すること。
(c) OERの教育面での実効性及び長期的な投資効率を把握するための戦略を策定すること。その策定は、全ての関係する利害関係者の参加を含む。当該戦略は、包摂的かつ衡平な質の高い教育及び研究のために、学習の過程を改善すること並びに研究結果、意思決定、透明性及び説明責任の間の関連性を強化することに焦点を合わせることができる。

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