技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)に関する勧告

技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)に関する勧告(仮訳)

2015年11月13日 第38回ユネスコ総会採択

 国際連合教育科学文化機関(以下「ユネスコ」という。)の総会は、2015年11月3日から18日までパリにおいてその第38回会期として会合し、
 全ての人の労働する権利及び教育を受ける権利を保障する世界人権宣言(1948年)第23条及び第26条並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(1966年)第6条2及び第13条に定める諸原則並びに教育における差別の防止に関する条約(1960年)、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(1979年)、技術教育及び職業教育に関する条約(1989年)、児童の権利に関する条約(1989年)及び障害者の権利に関する条約(2006年)に定める諸原則を想起し、
 技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)が教育についての普遍的な権利及び労働の権利の双方の一部を成すものとして理解されることを意識し、
 技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)が技術教育及び職業教育に関する条約(1989年)に定める「個人及び社会双方の発展という目的」を満たすことを認識し、
 ユネスコが採択した勧告、特に、教育における差別待遇の防止に関する勧告(1960年)、教員の地位に関する勧告(1966年)、国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告(1974年)、高等教育における修学及び資格証書の承認に関する勧告(1993年)、高等教育教員の地位に関する勧告(1997年)及び成人学習及び成人教育に関する勧告(2015年)の規定を想起し、
 また、国際労働機関(ILO)が採択した関連文書(1975年の人的資源の開発における職業指導及び職業訓練に関する条約(第142号)及び2004年の人的資源の開発(教育、訓練及び生涯学習)に関する勧告(第195号)を含む。)を想起し、
 2011年の国際教育標準分類に言及し、
 技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)が、社会的及び経済的な参画並びに永続する平和、責任ある市民及び持続可能な開発の実現に不可欠である人権、包摂及び公平、男女の平等並びに文化の多様性に対する理解及び尊重の促進並びに生涯学習及び共に生きるために学ぶことに対する意欲及び能力の育成に貢献するものであることを認識し、
 国際連合持続可能な開発首脳会議(2015年9月、ニューヨーク)において採択された持続可能な開発のための2030アジェンダにおける技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)の主要な役割に留意するとともに、持続的かつ包摂的な経済成長、社会的発展及び万人の利益となる環境保護の促進並びに貧困及び飢餓の撲滅に対する国際社会の約束に留意し、
 仁川宣言「教育2030(包摂的かつ公平な質の高い教育及び万人のための生涯学習に向けて)」及び教育2030行動枠組みに照らし、
 労働、市民権及び持続可能性のための学習に関するボン宣言の諸勧告(2004年)、上海コンセンサスとして知られる第3回技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練に関する国際会議「技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)の変容(労働及び生活のための技能の形成)」の諸勧告(2012年)及び持続可能な開発のための教育に関するあいち・なごや宣言(2014年)を考慮し、
 技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)における新しい傾向及び論点を反映させるため、2001年に改正された技術及び職業教育に関する勧告を改正すべきであることを、第37回会期総会決議第17号により決定し、
 この勧告が、国、地域及び国際の各段階における技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)を変容させ、拡大させ、及び強化させることを目的とし、変化する世界における各国の社会経済的な状況、統治体制及び利用可能な資源に応じて加盟国が適用すべき一般原則、目標及び指針を規定するものであることを考慮し、
 第38回会期総会文書32及びこれに附属する技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)に関する勧告案を検討して、
 1 2015年11月13日に2001年に改正された技術及び職業教育に関する勧告に代わる技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)に関する勧告を採択する。
 2 加盟国が、自国の憲法上の慣行及び統治体制に従い、自国の領域においてこの勧告の諸原則の効力を生じさせるために必要な適当な措置(立法措置その他の措置のいかんを問わない。)をとることにより、次の諸規定を適用することを勧告する。
 3 また、加盟国が、技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)について責任を負う当局及び団体並びにこれらに関係のあるその他の利害関係者に対し、この勧告について注意を喚起することを勧告する。
 4 さらに、加盟国がこの勧告に従ってとった措置について、総会が定める時期及び方法により総会に報告することを勧告する。

I この勧告の適用範囲

1 この勧告の適用上、「技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(以下「TVET」という。)」は、幅広い職業分野、生産、サービス及び生計に関連する教育、訓練及び技能の開発から成るものとして理解される。
2 TVETは、生涯学習の一環として、中等の学習段階、中等の後の学習段階及び高等の学習段階で行うことができるものであり、資格につながり得る職場に基礎を置く学習及び継続的な訓練並びに職能開発を含む。TVETは、国及び地方の状況に応じた幅広い技能の向上の機会を含む。学ぶための学習、識字及び基本的な計算技能の開発、横断的な技能及び市民としての技能は、TVETを構成する不可分の要素である。
3 この勧告の諸規定は、自国の固有の事情に応じ並びに統治体制及び憲法上の規定に従って適用される。

II 展望及び目的

展望
4 TVETは、包摂的かつ持続可能な経済成長及び競争力、社会的公平並びに環境の持続可能性を促進するため、個人、組織、企業及び地域社会に能力を与え、雇用、適切な仕事及び生涯学習を助長することにより、持続可能な開発に貢献する。

目的
5 個人に能力を与え、雇用、適切な仕事及び生涯学習を促進すること。TVETは、個人の雇用、経歴、生計及び生涯学習のため、個人の知識、技能及び能力を開発することに貢献する。TVETは、個人が、教育と労働の世界との間を移動し、学習と労働とを結び付け、自己の就業能力を維持し、情報に基づく選択を行い、及び自己の願望を満たすことに役立つ。TVETは、個人が労働市場に参入し、生計を立て、及び生涯学習を利用する機会を有することを可能にすることにより、社会的な結束に貢献する。
6 包摂的かつ持続可能な経済成長を促進すること。TVETは、組織の有効性、企業の競争力及び地域社会の発展に貢献する。TVETは、労働市場指向であり、及び労働の性質及び組織の変化(新たな産業及び職業の出現並びに科学的及び技術的な進歩を含む。)を予測し、及び助長する。TVETは、起業家的な精神を促進することにより、自営活動及び企業の成長を支援する。
7 社会的公平を促進すること。TVETは、学習機会及び社会経済的な結果の平等(男女の平等を含む。)に貢献する。TVETは、社会的、経済的及び文化的背景を有する集団のために、魅力的かつ適切な学習機会を創出する。TVETは、包摂的であり、また、いかなる形態の差別も容認しない。TVETは、責任ある市民及び民主的な参画を促進する知識、技能及び能力の開発に貢献する。
8 環境の持続可能性を促進すること。TVETは、持続可能な消費及び生産形態を促進するため、環境の持続可能性の原則を統合するとともに、社会と環境との関係に係る極めて重要な理解を促進することにより、環境に対する責任を育成する。TVETは、環境に優しい職業、経済及び社会のための知識、技能及び能力の開発に貢献する。TVETは、気候変動への対処及び環境保全を維持するために必要とされる革新及び技術的な解決策の開発に貢献する。

III 政策及び統治

政策の策定
9 加盟国は、自国の固有の事情に応じ並びに統治体制及び憲法上の規定に従い、幅広い政策分野と一致するTVETに関連する政策(教育、雇用、政府の全般的な戦略的目標並びに特に経済上、社会上及び環境上の目標を含む。)を策定すべきである。
10 加盟国は、全ての青少年及び成人が労働及び生活に関連する知識、技能及び能力を習得し、並びに一層良い労働市場及び社会的結果を創出することを指向すべき生涯学習の枠組み全体を通じ、あらゆる形態及び環境においてTVETを指導し、認識し、及び促進すべきである。
11 加盟国は、学習者、家庭及びその他の全ての利害関係者の間でTVETの公的注目度及び魅力を高め、並びに進歩、労働、生涯学習及び自己実現の可能性を利害関係者に知らせるべきである。加盟国は、各国の事情に応じ、TVETの魅力に影響を及ぼす多元的な問題に取り組み、並びに経路及び事業の浸透性及び多様性の向上、奨励措置の提供、情報及び指針の向上等の措置を促進すべきである。
12 中等の学習段階、中等の後の学習段階及び高等の学習段階におけるTVETを必要に応じて自国の教育及び訓練に関する制度及び当局に展開する加盟国は、労働市場の利害関係者を関与させるための制度的枠組みが存在すること、資格及び教育課程が関連する利害関係者との協議の上で整備されること並びに事業及び資格が透明なかつ質が保証されたものであることを確保すべきである。
13 加盟国は、中等教育、中等の後の教育及び高等教育の間の経路(柔軟な入学手続及び入学指導、単位の累積及び移行、進学準備課程並びに関連当局が承認し、及び認定する同等の制度を含む。)を整備し、その移行を助長すべきである。TVETの機関並びにその他の教育機関及び当局は、これらの措置の実施のために協力すべきである。
14 加盟国は、自国の固有の事情に応じ並びに統治体制及び憲法上の規定に従い、成人学習者による利用の機会を促進し、及び参画を拡大させること(企業、特に中小企業が自社の労働者に投資することを奨励することを含む。)により、継続的な訓練及び職能開発を支援すべきである。

統治及び規制の枠組み
15 加盟国は、公共政策に関する一義的な責任を負い、自国の公私の当事者の役割、権利、義務及び説明責任を定め、並びに利害関係者の参画及び連携を促すために、TVETに関する規制の枠組みを定め、又は強化することを考慮すべきである。
16 加盟国は、TVETの統治、管理及び資金調達のために省庁間の連携を助長し、並びに技術上、行政上及び制度上の能力を強化すべきである。
17 加盟国は、自国の統治体制に従い、関連する地域における利害関係者を関与させ、及び適当な場合には、職場に基礎を置く学習の支援に当たり業界団体と協力しつつ、TVETの機関の管理形態を構築し、又は強化することを考慮すべきである。

社会的対話、民間部門及びその他の利害関係者の関与
18 加盟国は、適当な場合には、合意された労働市場、教育、訓練及びその他の規制に従い、社会的パートナーのTVETへの参画を助長すべきである。
19 民間部門のTVETへの拡大された参画は、主要な原則(公共政策との整合性、社会的対話のための支援、責任、説明責任及び効率性を含む。)を指針とすべきである。民間部門の関与に際しては、TVETに係る政策については、その多様性(経済の全ての部門に関与する大企業、中小企業、零細企業及び家内企業を含む。)を認識すべきである。
20 加盟国は、政策の策定及び統治を拡充するため、適当な場合には、その他の利害関係者(非政府機関を含む。)並びに学習者、TVETの提供者、職員、親、青少年、伝統的な指導者、先住民の人々及びその他の代表者を関与させるべきである。

資金調達
21 加盟国は、多様な連携(官民の連携を含む。)を通じて資金源を多様化させ、及び全ての利害関係者を関与させることを目的とした措置を定めるべきである。多様化に当たっては、公平及び包摂の原則を尊重しつつ、企業、地方当局及び個人を関与させることを考慮すべきである。公的な資金調達に関する既存の枠組みに加えて、効率性及び説明責任を向上させ、及びTVETの需要を促すため、連携及び費用分担、税控除、貸付等の革新的な資金調達の仕組みを検討することができる。
22 TVETに対する意識の向上及び幅広い当事者による投資の増加並びに伝統的な投入量に応じた資源の配分及び利用の様式から実績に基づいた資金調達の様式への移行を目的として様々な形態の奨励措置及び説明責任の仕組みが構築されるべきである。
23 TVETの機関(中等の学習段階、中等の後の学習段階及び高等の学習段階を含む。)は、その運営(基盤及び設備並びにそれらの維持を含む。)のために十分な資金を有するべきである。TVETの機関は、各地域の状況に関わり、TVETの事業の質及び関連性の向上に関する新たな連携を築き、並びに収益を生み出すことができるよう、運営上及び財務上の適当な水準の自律を有するべきである。

公平及び利用の機会
24 加盟国は、極めて多様な学習及び訓練のニーズに対応するためにあらゆる形態にTVETを変容させ、及び拡大させることにより、全ての青少年及び成人が学習し、並びに自らの知識、技能及び能力を開発し、及び強化するための均等な機会を有することを確保するための措置をとるべきである。情報通信技術については、状況に応じ、利用の機会及び参画を拡大するための手段として考慮すべきである。
25 加盟国は、自国の統治体制に従い、全ての人のための質の高い基礎教育を確保し、並びにTVETに対する有意義な参画の基礎として、基本的な識字、計算能力及び横断的技能を開発することにより、就学していない青少年及び技能の低い成人のニーズに対処すべきである。教育関係者及びその他の利害関係者は、全ての人のためのTVETに必要な条件を創出し、それによりTVETが自由に選択されるようにすべきである。
26 あらゆる形態の差別(性別に基づく差別を含む。)に対する措置がとられるべきである。加盟国は、質の高いTVETに対する男女の平等な利用の機会及び参画を促進すべきである。あらゆる形態のTVETの機関、事業、教育課程、教材及び職場に基礎を置く学習は、性別に基づく定型化その他の定型化を避けるべきであり、並びに男女の平等の実現に貢献すべきである。加盟国は、入学審査の慣行に影響を及ぼす財政上の奨励措置のような、公平及び利用の機会を促進するための革新的な仕組みを採用すべきである。
27 加盟国は、費用負担を削減し、及びその他の障害を取り除くための対象を絞った支援を提供することにより、全ての不利な立場にある集団及びぜい弱な集団(疎外された農村及び遠隔地の住民を含む。)にとりTVETが一層利用しやすいものとなるようにすべきである。加盟国は、各国の状況に応じ、障害を持つ学習者、先住民の人々、非定住民、少数民族、社会的に排除された集団、移民、難民、無国籍者及び紛争又は災害の影響を受けた者並びに失業者及びぜい弱な労働者に対しても注意を払うべきである。

IV 質及び関連性

学習過程
28 加盟国は、自国の固有の事情に応じ並びに統治体制及び憲法上の規定に従い、公私のTVETの機関、職場、家庭又はその他の環境のいずれであるかを問わず、多様な学習機会を奨励すべきである。インフォーマルな学習は、自主学習、仲間同士の学習又はその他の社会的な学習形態を通じた学習のいずれであるかを問わず、奨励され、並びに適当な場合には承認及び認証の仕組みにより明らかにされるべきである。
29 学習過程については、職業分野に関連した知識、技能及び能力に加えて、基礎となる技能の上にこれを築き、並びに社会の科学的、技術的、社会的、文化的、環境的、経済的及びその他の側面に関する理解を一層深めるべきである。TVETは、全体的なものでなくてはならず、また、横断的及び起業家的な技能、健康及び労働の安全、文化的発展、責任ある市民並びに持続可能な開発に関する技能並びに労働者の権利に関する知識を開発するものであるべきである。
30 様々な形態の職場に基礎を置く学習(現職訓練、配属、見習及び企業内研修を含む。)は、促進させるべきである。職場に基礎を置く学習の質については、向上させるべきであり、また、適当な場合には、機関に基礎を置く学習又はその他の形態の学習によりこれを補完すべきである。
31 公共政策については、青少年が自らの知識、技能及び能力を開発し、並びに実務経験を得ることを支援するため、社会的対話及び官民の連携により、職場及び機関に基礎を置く学習から成る質の高い見習を助長し、及び容易にすべきである。
32 非公式経済におけるTVET(小規模企業、零細企業及び家内企業における質の高い伝統的な見習によるものを含む。)については、農村及び都市部における利害関係者を関与させることにより、これを促進すべきである。
33 情報通信技術の可能性については、TVETにおいて十分に活用すべきである。インターネット、モバイル技術及びソーシャルメディアは、遠距離の及びオンラインの配信を促進するために利用されるべきである(混合の様式並びに開かれた教育資源の開発及び利用を通じた促進を含む。)。
34 学習者の成果に関する情報を生成し、及び利用するための効果的かつ適当な評価制度については、構築すべきである。教育課程及び学習過程の評価(形成的評価を含む。)については、全ての利害関係者、特に教員及び研修指導者、関係する職業分野の代表者、監督者並びに学習者の参画を得つつ実施すべきである。学習者の全般的な成績については、多様な評価の手法(適当な場合には、自己評価及び相互評価を含む。)を用いて評価すべきである。

TVETの職員
35 資格を有する及び質の高いTVETの職員(教員、指導員、研修指導者、個別指導教員、経営者、管理者、普及員、指導職員その他の職員を含む。)を確保するため、政策及び枠組みを策定すべきである。
36 教員の地位に関する勧告(1966年)の規定、特に教員の養成、教員の更なる教育、雇用及び経歴、教員の権利及び責務、効果的な教授及び学習の条件並びに教員の給与及び社会保障に関する規定は、適用することができる。高等教育教員の地位に関する勧告(1997年)も、また、適用することができる。
37 加盟国は、職場に基礎を置く学習及びその他の環境(地域社会、遠隔地及びオンラインの学習を含む。)におけるTVETに対する考慮が一層なされるようになっていることを踏まえ、研修指導者、個別指導教員その他の学習推進者の地位、採用及び職能開発に関する政策及び枠組みを策定し、又は促進することを考慮することにより、彼らの新たな役割及び学習のニーズを一層制度的に支援し、及び認識する必要がある。TVETの職員は、適切な労働条件及び適当な報酬並びに経歴及び職能開発の機会を有すべきである。
38 教育機関及び職場におけるTVETの職員は、自らが職務を遂行する地域社会及び社会の経済的、社会的、文化的及び環境的な状況にTVETを対応させるため並びにTVETの変容及び拡大に貢献するために必要な能力を有すべきである。特に、TVETの職員は、初期の養成並びに継続的な訓練及び職能開発(企業における実務経験を含む。)並びに自らの活動について考慮し、及び変化に適応することを可能にするための支援を必要とする。TVETの職員を対象とする初期の及び継続的な職能開発には、指導及び男女の平等に関する訓練を含めるべきである。

資格制度及び学習経路
39 学習成果に基づいた及び一連の合意された基準に関連する十分に明確なかつ成果に基づく資格の枠組み又は制度については、利害関係者との協議の上で、及び職業上の基準を含む特定されたニーズに基づいて構築すべきである。
40 学習の水平的及び垂直的な進行を支援する政策又は規制の仕組みについては、構築すべきであり、また、これらには柔軟な学習経路、モジュール化、過去の学習の承認、累積及び単位の移行を含むべきである。技能の低い個人及び技能を有しない個人が更に学習する機会及び適切な仕事に就く機会のための資格証明が得られるよう奨励することについて、特別な注意が払われるべきである。
41 ノンフォーマル及びインフォーマルな学習を通じて取得された知識、技能及び能力の承認、認証及び認定のための制度については、適当な場合には、労働者の代表者、雇用主の代表者及び公の当局の三者の関与の下で促進すべきである。信頼し得る評価の手続及び質が保証された資格証明については、関連する利害関係者との協力の下で構築すべきである。
42 加盟国は、学習者及び労働者の移動に関し、国、地域及び国際の各段階における資格の相互承認を促進すべきである。

質及び質の保証
43 加盟国は、自国の固有の事情に応じ並びに統治体制及び憲法上の規定に従い、質の高いTVETのための環境を助長すべきである。質の向上のために必要な能力を形成することについて、特別な注意が払われるべきである。
44 加盟国は、関連する全ての利害関係者による参画に基づき、TVETの質を保証する制度を構築すべきである。質を保証する制度には、明確なかつ測定可能な目標及び基準、実施のための指針並びに情報還元の仕組み及び広く入手することができる評価結果を含むべきである。質の保証には、外部評価及び自己評価の双方を含むべきであり、これらを通じて制度の性能及び成果を継続的に監視し、及び向上させることができる。
45 加盟国は、TVETの機関の主導的役割及び管理の向上に努めるべきである。TVETの質及び質の保証には、教育機関の全ての職員及びその他の関連する利害関係者が関与すべきである。
46 加盟国は、自国の憲法上の規定に従い、学習者の保護を基本原則の中核に据えつつ、民間のTVETの提供者の規制、登録及び監視のための適当な法的枠組みを構築すべきである。

労働市場及び労働の世界との関連性
47 加盟国は、自国の固有の事情に応じ並びに統治体制及び憲法上の規定に従い、教育から雇用又は自営の労働の世界への移行を支援し、及び容易にすべきである。TVETの機関、職業紹介所及び雇用主の間の連携が強化されるべきであり、また、例えば起業家的な技能を教育課程に統合すること、教育課程外の活動を組織すること、新規の事業を支援する機関を設置し、並びに事業及び技術の移転のためのセンターとの連携を確立することにより、起業家的な精神及び新たな事業の創出に対する支援がなされるべきである。
48 加盟国は、適当な場合には公開されたデータを利用しつつ、TVET及び労働市場に関する情報システムを構築すべきであり、また、労働の世界における現在の及び発展するニーズ(環境に優しい職業、経済及び社会への移行に伴うニーズを含む。)とのTVETの関連性を国内において、地域において及び国際的に確保するために、制度上の能力を形成すべきである。
49 必要とされる技能を特定し、及び予測するため、例えば予測調査、観測所又は部門別の技能に関する評議会を通じ、官民の連携の仕組みを利用することができる。さらに、変化する状況に関するデータの収集及び分析並びに実施及び結果に関する系統的な監視及び評価により、TVETの関連性を高めるための取組が周知されるべきである。

情報及び指導
50 加盟国は、教育、継続的な訓練及び職能開発並びに国、地域及び国際の各段階における労働の機会に関し、最新のかつ信頼し得る支援を提供するため、関連する利害関係者と協力しつつ、公私の情報及び指導サービスの開発及び規制を促進すべきである。
51 情報及び指導については、教育、労働の世界及び一層広範な社会における社会的不平等に対処するために、全ての次元における機会の均等(男女の平等を含む。)の促進に特別な注意を払いつつ、継続的に提供すべきであり、また、一層複雑な及び多様化した経歴及び職業生活において全ての個人を援助し、及び支援することを目的とすべきである。
52 情報及び指導サービスは、情報通信技術(モバイル技術、ソーシャルネットワーク並びにマルチメディアのプラットフォーム及び手段を含む。)を通じて学習者の意思決定を支援すべきである。

V 監視及び評価

53 加盟国は、自国の固有の事情に応じ並びに統治体制及び憲法上の規定に従い、TVETに係る政策及び事業を評価すべきである。評価には、TVETに係る政策及び事業の影響及び成果に関する研究並びに広範囲の公私の当事者(個人、企業及び地域社会を含む。)にとってのTVETの費用及び利益に関する調査を含むことができる。
54 適当な手段及び指標が、合意された基準、優先事項及び目標(不利な立場にある集団及びぜい弱な集団に対する個別の目標を含む。)に対するTVETの政策の有効性及び効率性を評価するために策定されるべきである。これらの策定には、公私の機関、提供者及び事業に関する評価(自己評価を含む。)に加え、追跡調査研究及び一連の指標(利用の機会、修了率及び卒業者の雇用状況に関する指標を含む。)の策定を含めることができる。データの収集及び処理は、データの保護に関する法律に従って実施されるべきである。
55 TVETに係る戦略及び事業、基準並びに教育課程に関する情報を与えるため又は学習方法を調整するために、データの収集並びに監視及び評価から得られる情報の利用に係る制度上の能力が強化されるべきである。TVETに関する国内のデータの収集と国際的な基準及び自発的活動との間の整合性が高められるべきである。
56 TVETの監視及び評価の過程については、学習過程を向上させ、並びに所見、意思決定、透明性及び結果に対する説明責任との関係性を強化するため、関連する利害関係者の幅広い参画を確保すべきである。

VI 研究及び知識の管理

57 加盟国は、幅広い文脈におけるTVETの新たな方法論及び理解を発展させ、並びにTVETに係る政策及び意思決定のための情報を与えるため、学際的な研究への持続的な投資により、TVETのための知識基盤を深めるべきである。
58 利害関係者は、適当な場合には、研究の委託、利用及び評価に加え、知識の管理に関する戦略及び制度の策定にも関与すべきである。高等教育機関、TVETの提供者、社会的パートナーその他の関連する利害関係者の研究に係る能力は、状況に応じて利用され、及び開発されるべきである。研究の成果は、出版物及び電子的手段を通じて広く周知されるべきである。

VII 国際的な協力

59 加盟国は、知識、経験及び有望な慣行を共有することを考慮すべきであり、また、国際的なTVETに係るデータの収集を強化し、並びに国際的及び地域的なネットワーク並びに会議その他の討議の場を活用すべきである。ユネスコの国際技術職業教育訓練センター(UNEVOC)のネットワークは、加盟国が利用することができるTVETにおける相互学習及び国際協力の推進のための戦略的な資源である。
60 加盟国は、協力を促進し、相互の及び協同の支援を拡大させ、並びに能力を形成する上で、国際連合及びその関連機関、地域機関(地域の経済共同体を含む。)、関連する公私の利害関係者、市民社会の組織及び研究のネットワークと提携すべきである。

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