教育統計の国際的標準化に関する勧告

教育統計の国際的標準化に関する勧告(仮訳)


1958年12月3日 第10回ユネスコ総会採択


 国際連合教育科学文化機関の総会は、1958年11月4日から12月5日まで、その第10回会期としてパリで会合し、
 ユネスコ憲章第8条が、「加盟各国は総会が決定する方式で教育・科学及び文化の領域における活動および機関に関する法令、規則および統計につき、定期報告を提出する」旨規定していることを考慮し、
 教育に関する統計資料を編集し報告することに責任を有する国内当局が、その資料の国際的比較を容易にするため、標準化された定義、分類および作表方法について、或る程度の基準により措置されることが極めて望ましいことを確認し、
 会期議事日程の1.5.3.1議題である教育統計の国際標準化に関する提案を審議し、
 総会の第9回会期において、これらの提案が加盟各国に対する勧告として国際的規制の対象となるべきことを決定し、
 1958年12月3日にこの勧告を採択する。
 総会は加盟各国に対し、国際的統計の制定のため、国内法またはその他の方式で各国の権限下にある領域内で、この勧告に作成された基準及び原則を実施せしめるための措置を講ずることにより、教育に関する統計資料の定義へ分類及び作表方法に関する下記規定を適用するよう勧告する。
 総会は、加盟各国に対し、本勧告を教育統計の編集および通報の任に当る当局及び諸機関に知らせるよう勧告する。
 総会は加盟各国が、総会が定める期日及び様式により、加盟各国がこの勧告について行なった措置に関する報告を総会に提出するよう勧告する。

I 非識字に関する統計

定義
1.下記定義は統計関係に使用される。
(a)読み書き能力者
  日常生活に関連を有する事実につき、簡単且つ短い文章を理解しながら読み且つ書くことのできる者。
(b)非識字者
  日常生活に関連を有する事実につき、簡単且つ短い文章を理解しながら読み且つ書くことのできない者。

測定の方法
2.下記方法の1つが、読み書き能力者及び非識字者数を決定するために使用されうる。
(a)全般的国勢調査又は人口サンプル調査において上記定義に関連を有する1つ又は数個の質問を行なう。
(b)特別調査の場合、この目的のため特に考案された能力標準試験による。
  この方法は、他の方法で得られた資料を統制し、又は系統的誤謬を矯正するために使用される。
(c)不可能な場合は、つぎの推定によって行なう。
 (i)学校定員に基づく特別調査又はサンプル調査
 (ii)人口統計学上の資料と関連する定期的な学校統計
 (iii)国民の教育水準に関連する資料

分類
3.まず、10才及びこれ以上の国民を2つの群、即ち、読み書き能力者及び非識字者に分類する。
4.これら各々の群は、性別及び年令別に細分される。年令群はつぎのとおり、
10~14.15~19.20~24.25~34.35~44.45~54.55~64.65才及びそれ以上。
5.必要ある場合は、下記細分が同じく使用される。
(a)都市人口及び村落人口
(b)統計上、国内で常時識別されている人種層
(c)社会層

II 国民の教育水準に関する統計

定義
6.下記定義は統計関係に使用される。
  人間の教育水準は、自国又は他国の教育制度で、本人によって達成された最終学年又は最高の教育課程に応ずる水準である。

教育水準の測定
7.人間の教育水準を測定するには下記方式が使用される。
(a)国勢調査又は人口サンプル調査において上記の定義に関連を有する1つ又は数個の質問を行なう。
(b)不可能な場合は、下記推定によって行なう。
 (i)前回の国勢調査又は他の調査結果
 (ii)学校在籍者及び試験、修業証書、交付された学位又は卒業証書に関する資料

分類
8.まず、15才及びそれ以上の国民は、できうれば、修了した最終学年により、又は、少くとも入手した学位で特に定められた水準で分類される。
  可能な場合は、各段階ごとの教育の種類(課程)についても区分する。
9.これらの各種分類は性別、年令別に細分される。年令群は下記のとおり。
15~19.20~24.25~34.35~44.45~54.55~64.65才及びそれ以上。
10.必要ある場合は、下記の細分が同じく使用される。
(a)都市人口及び村落人口
(b)統計上、国内で常時識別される人種層
(c)社会層

III 教育施設の統計

定義
11.下記定義は統計関係に使用される。
(a)生徒(学生)とは、教育段階の如何を問わず、系統的教育を受けるべく教育施設に在籍するもの。
 (i)全日制生徒(学生)とは、十分長期間にわたり、全日制教育を受けるために在籍するもの。
 (ii)定時制生徒(学生)とは、全日制生徒(学生)ではないもの。
(b)教師とは、生徒(学生)群の教育に直接従事するもの。校長ならびに視学官、管理者及びその他のものは正規に教育の職務を行使している教師のグループには入らない。
 (i)常勤教師とは、各国において、特定の教育段階で通常常勤とみなされる時間数、教授に従事するもの。
 (ii)非常勤教師とは、常勤教師でないもの。
(c)学年とは、通常1年間で教授される課程。
(d)学級とは、1学期間1人又は数人の教師により、通常、一緒に教えられる生徒(学生)群。
(e)学校(教育施設)とは1人の教師または直接の長のもとにおける2人以上の教師により、ある種の形式と程度の教育を1カ年又は数カ年にわたって受ける生徒(学生)の集団。
 (i)公立学校とは、財源の出所如何にかかわらず、その運用が公共機関(国、連邦、州、地方)によって保証されている学校。
 (ii)私立学校とは、公共機関から財政援助を受けているか否かにかかわらず、その運用が公共機関によって保証されていない学校。
  私立学校は、公共機関からの財政援助を受けているか否かによって補助学校及び非補助学校に分類される。
(f)義務教育年令人口とは、義務的全日制教育の年令の限度内に入る全人口。

分類
12.教育は、できるだけ下記段階に分類される。
(a)第1段階以前の教育:第1段階の教育を受けるには、あまりにも若年の児童の教育を提供するもの(例えば、保育園、幼稚園または幼児園)
(b)第1段階の教育:学習の手段としての基礎教育を行うことを主たる機能とするもの(例えば、小学校、初等学校)
(c)第2段階の教育:第1段階での、少くとも、4カ年間の教育を前提とし、一般又は専門化した、あるいは、この両者を合わせて養成を行なうもの(例えば、中学校、中等学校、高等学校、職業学校、ならびに、この段階の教員養成学校)
(d)第3段階の教育:入学に関する最小限の条件として第2段階の全教育を成功をもって終了したか、あるいは、これと同程度の学力の証拠を示しうるもの(例えば、大学、教員養成カレッジ、高等専門学校)
13.一般に段階別に分類されない教育は、下記標題の1つに表わされる。
(a)特殊教育:身体不自由児、精神薄弱児、社会的不適応児及びその他、あらゆる特殊児童のためのすべての一般教育又は職業教育を含む。
(b) その他の型の教育
14.第2段階の教育は、できるだけ、下記形式に細分さるべきである。
(a)一般教育:生徒をして、直接に一定の営業または職業のために準備せしめることを目的としないもの。必要ある場合は、この一般教育は下記のように細分されるべきである。
 (i)下級:生徒の興味と適性を考慮して生徒をしてより上級の種々の型の教育を受けるよう準備させるための一般教育(例えば、下級中学校、下級中等学校、下級高等学校)
 (ii)上級:生徒の興味と適性を考慮して、教育がある程度相異するもの(例えば、上級中学校、上級中等学校、上級高等学校)
(b)職業教育:一般の教育とは異なって、直接生徒をして営業又は職業に従事せしめるために準備せしめることを目的とする。
  必要ある場合は、職業教育は下記のように細分されるべきである。
 (i)主として実用的教育
 (ii)主として技術的及び科学的教育
(c)教員養成:生徒をして教職に従事せしめるために準備せしめることを目的とするもの。
15.第3段階の教育は、できるだけ下記形式に分類されるべきである。
(a)大学又は、これと同等で学士号を与える施設。
(b)大学以外の施設での教員教育。
(c)大学以外の施設でのその他の教育。

作表
16.下記の基準に従う作表が定期的に作成され、且つその数字は11~15 項記載の定義及び分類にできるだけ一致されなければならない。各国教育制度の特質は常に考慮されなければならないから、国際的な定義及び分類との間に存在する相異は常に報知されるべきである。
  公立及び私立学校に関する数字は、できるだけ、別箇に提出されるべきである。
  必要ある場合は、私立学校は補助金の有無によって細分されることができる。
(a)第1段階以前の教育
 (i)学校数
 (ii)性別、資格別(各国の慣例に従う)教員数
 (iii)性別生徒数
(b)第1段階の教育
 (i)学校数
 (ii)性別、資格別(各国の慣例に従う)教員数
    必要ある場合は、常勤、非常勤教員間に区別を設ける。
 (iii)性別生徒数
(c)第2段階の教育
  教員養成は含まず、必要ある場合は、一般教育(下級及び上級)及び大まかな分類による職業教育間に区別を設ける。
 (i)学校数
 (ii)性別、資格別(各国の慣例に従う)教員数
    必要ある場合は、常勤、非常勤教員間に区別を設ける。
 (iii)性別生徒数。必要ある場合は、全日制、定時制生徒間に区別を設ける。
 (iv)性別中等学校卒業者数
(d)第3段階の教育
    大学以外の学校における教員教育は含まず、可能な場合は、大学又はこれと同等の施設での教育と、大学以外の施設での教育間に区別を設ける。
 (i)学校数
 (ii)性別教員数
 (iii)性別、国籍別、研究分野別生徒数(不可能な場合、性別、研究分野別)。
       学部学生と大学院学生とは、必要ある場合、別箇に作表されるべきである。
 (iv)性別第1学年学生数
 (v)研究分野及び学位または免許状の種類で分類された、その年度に学位または免許状を得た学生数
(e)教員教育
  できるだけ、第2段階と第3段階の学校間に差異を設ける。必要ある場合、授業を受ける生徒(学生)の目的とする学校段階別にも区別が設けられるべきである。
 (i)学校数及び他の分類に含まれる学校に属する教員教育の学級数
 (ii)性別教員数
 (iii)性別生徒(学生)数
     必要ある場合は、全日制、定時制別に生徒(学生)を区別する。
 (iv)性別第1学年生徒(学生)数
 (v)性別、免許状別、または専門別で、その年度に学業を終了した生徒(学生)数
(f)特殊教育
  できるだけ盲児、精神薄弱児、少年犯罪者等のための特殊教育の種々の種類間に区別を設ける
 (i)学校数、及び他の種類に含まれる学校に属する特殊教育の学級数
 (ii)性別、資格別(各国の慣例に従う)教員数
 (iii)性別生徒数
(g)その他の教育
  できるだけ、このような教育の種々の種類間に区別を設ける。
 (i)学校数及び(又は)学級数
 (ii)性別教員数
 (iii)性別生徒(学生)数
(h)一般表
  (i)人口資料。5~24才の人口は、最近の国勢調査および現時点で行なわれた推計に基づき、年令別、性別に分類さるべきである。不可能な場合は、少くとも5~9.10~14.15~19.20~24才の年令層ごとに、且つ義務教育年令人口については別箇に、このような情報が提供されるべきである。
 (ii)年令別及び性別、又は学年別及び性別の生徒(学生)数で、異なった教育段階及び種類間に区別が設けられているもの。
 (iii)年令別又は学年別に分類された生徒(学生)数の表と、全日制または定時制の出席別に分類された生徒(学生)数の表とは、できるだけ別個に作成すべきである。
 (iv)第1段階および第2段階の生徒は、別個にまたは共に、できるだけ学年、性及び年令別に分類されるべきである。
 (iv)第1段階の学校に対しては、学級は、生徒数に従って下記群に分類されるべきである。生徒数15人以下、15~49(各国は、必要度に応じて、小群を設けうる)、50及びそれ以上。

  各群の生徒総数はできうれば、記入されなければならない。

IV 教育財政に関する統計

定義
17.下記定義は統計関係に使用される。
(a)収入:予算配当、補助金、授業料、寄付として受けた財産の現金価格を含め、学校当局が受領し又はその利用に供する現金。
(b)支出:学校当局により、または学校のために物品又は役務に対してなされる財政上の義務。
(c)経常支出:資本支出及び債務償還を除き、学校当局が行なう一切の経費
(d)資本支出:土地、建物、構造物及び設備等に関する支出。
(e)債務償還:利息支払及び借款の償却。

分類
18.一定の会計年度の教育財政に関する統計資料は、できるだけ、下記のように分類される。
(a)収入
 (i)中央又は連邦政府、国又は州当局、郡・市又は他の地方当局のごとき公共機関からのもの。
 (ii)その他の財源からのもの(授業料、父兄からの支払い、寄付等を含む)
(b)支出
 (i)経常支出(利息支払いを含まず)
    管理費、または一般的統制のための費用;できるだけ下記により分類された教授費:
    教員及びその他教育に直接援助を供与するものに対する給与、その他の教授費:
    その他の経常支出
 (ii)資本支出(債務償還を含まず)
  教育支出、非教育支出(寄宿舎、学生食堂、書店等)
  (iii)債務償還

作表
19.表には、その用途別による支出及びその財源別による収入とが記載されるべきであり、この勧告の12~15 項及び18 項記載の分類にできるだけ相応した細分に依拠するが、各国の行政的、財政的慣例を尊重するものとする。
  できうれば、公立学校及び私立学校間の支出を区別し、また教授費とその他の勘定を区別し、且つ第3段階の教育に充当される支出と他の段階に関連する支出間に区別を設けるべきである。

 以上は、国際連合教育科学文化機関の総会が、パリで開催し、1958年12月5日に閉会を宣言したその第10回総会において正当に採択した勧告の正文である。

 以上の証拠として、1958年12月5日、下名はこの協定に署名した。

 総会議長
 事務局長
 認証謄本 パリ
 国際連合教育科学文化機関法律顧問


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