ラジオ及びテレビジョンに関する統計の国際標準化に関する勧告

ラジオ及びテレビジョンに関する統計の国際標準化に関する勧告(仮訳)

1976年11月22日 第19回ユネスコ総会採択

 国際連合教育科学文化機関の総会は、1976年10月26日から11月30日までナイロビにおいてその第19回会期として会合し、
 この機関が、国際連合教育科学文化機関憲章第4条4の規定に基づき、その権限の範囲内にある諸問題を国際的に規制するための文書を作成しかつ採択することができることを考慮し、
 同憲章第8条が、特に、「各加盟国は、総会が決定する時期に及び様式で、自国の教育、科学及び文化の機関及び活動に関する……統計についての報告書をこの機関に提出しなければならない。」と規定していることを考慮し、
 ラジオ及びテレビジョンに関する統計の収集及び通報について責任を負う国内当局が、当該統計の国際的な比較可能性を改善するため、定義、分類及び表現についての一定の基準に従うことが極めて望ましいことを確信し、
 ラジオ及びテレビジョンに関する統計の国際標準化に関する提案をこの会期の議事日程の第30議題として審議し、
 その第18回会期において、この問題を同憲章第4条4にいう加盟国に対する勧告により国際的な規制の主題とすべきことを決定して、
 1976年11月22日にこの勧告を採択する。
 総会は、加盟国が、この勧告に規定する基準及び原則を自国の領域内において実施するため、必要とされる立法措置その他の措置を自国の憲法上の慣行に従つてとることにより、ラジオ及びテレビジョンに関する統計の国際標準化に関する次の諸規定を適用することを勧告する。
 総会は、加盟国が、この勧告につき、ラジオ及びテレビジョンに関する統計の収集及び通報について責任を負う当局及び事業体の注意を喚起することを勧告する。
 総会は、加盟国が、この勧告についてとつた措置に関する報告を、総会が定める時期に及び様式で、総会に提出することを勧告する

I 範囲及び定義

範囲
1 この勧告にいう統計は、各加盟国については、次の放送に関する標準的基礎に基づく情報を提供するためのものである。
 (a)国内放送
 (b)海外放送

定義
2 この勧告の対象となる統計を作成するに当たり、次の定義を用いるべきである。
 (a)放送機関  放送業務を行うことを法的に認められた機関
 (b)放送業務  一般公衆によって直接に受信されることを目的とする伝送を行う無線通信業務
       この業務は、音響の伝送、テレビジョンの伝送その他の形態の伝送を含むことができる。
 (c)無線通信  3000 ギガヘルツよりも低い周波数の電磁波であって人工的導波体のない空間を伝播するものによる電気通信
 (d)電気通信  有線、無線、光線その他の電磁気方式によるすべての種類の記号、信号、文言、影像、音響又は情報のすべての伝送、発射又は受信
 (e)国内放送  放送機関が事業を行うことを認められている国の中での一般的な受信を主たる目的とする放送事業
 (f)海外放送  放送機関が事業を行うことを認められている国の領域外での受信を主たる目的とする放送事業
 (g)音響放送(ラジオ)  音響信号のみの放送
 (h)テレビジョン  静止し又は移動する事物の瞬間的影像の放送であって音響を伴うもの又は音響を伴わないもの
 (i)送信機  ラジオ番組又はテレビジョン番組を放送するための高周波エネルギーを発生する装置
 (j)放送送信機出力  送信機が空中線に通常供給する高周波電力であって、音響送信機のための搬送波電力及びテレビジョン送信機のための変調包絡線の最大のときに生ずるもの
 (k)最大実効ふく射電力(最大ERP)  空中線に供給される電力と最大ふく射方向における半波ダイポールの空中線に係る利得との積
 (l)放送周波数帯  国際的な規制によって放送のために割り当てられる一連の周波数群
 (m)番組  事前に告知された時間帯に放送される独立した事項であって題名その他の表示が付されたもの
 (n)放送時間  番組が1又は2以上の送信機によって放送される時間
 (o)番組業務  1又は2以上の送信機によって規則的に放送され、かつ、放送機関の放送業務の中で明確な名称を有する実体を形成する連続的なラジオ番組又はテレビジョン番組
 (p)音響放送(ラジオ)受信機  無線信号によって伝達される特定の音響番組業務の要素を聴取することができる形で再構成するために空中線その他無線信号の発生源と結合された受信機
 (q)テレビジョン受信機  視聴者の用に供するある特定のテレビジョン放送の要素を聴視することができる形で再構成するために空中線その他無線信号の発生源と結合された受信機
 (r)受信免許  音響放送(ラジオ)受信機又はテレビジョン受信機を使用するために必要な許可又は契約であって通常有償のもの

II データの分類

3 この勧告の対象となる国内放送の種々の側面について、次の分類を用いるべきである。

放送機関
4 放送機関は、次のとおり分類すべきである。
 (a)組織上の地位による分類
  (i)政府放送機関  政府(中央又は連邦、国、州、地方等の政府)が、直接に又は政府が設置する別個の機関を通じて、全面的に運営する放送機関
  (ii)公共事業放送機関  法令又は規則(中央又は連邦、国、州、地方等の法令又は規則)により設置され又は認可された放送機関であって自治的組織体を構成するもの
  (ⅲ)商業放送機関  法人の又は私的な放送機関で営利を主たる目的とするもの
 (b)地理的範囲による分類
  (i)全国放送機関  国全体を対象とする放送業務を行う放送機関
  (ii)地域放送機関  一国内において地域的放送業務を行う放送機関
  (iii)地方放送機関  地方放送業務を行う放送機関
5 放送機関の財源は、その源泉により、次の種類に分類すべきである。
 (a)政府資金  通常の政府資金(中央又は連邦、国、州、地方等の通常の政府資金)から直接又は間接に受け取る収入
 (b)受信免許料  利用者によって支払われる放送の受信免許の収得金からの収入
 (c)私的寄附金  放送機関の使用のため供される私的資金
 (d)広告  商品又は事業に視聴者の注意を喚起する広告主の権利に対する見返りとして受け取る収入
 (e)その他の収入  (a)から(d)までに規定する源泉以外の源泉からの収入
6 放送機関の経常支出は、次の種類に分類すべきである。
 (a)番組経費
       番組の企画、製作及び取得に直接必要なすべての経費(人件費を含む。)であって施設維持のための固定経費を除いたもの
  (i)放送機関が自ら製作するための経費
  (ii)番組の購入、共同製作及び放送機関の間における番組交換に係る経費
 (b)製作費、伝送費その他施設費
       番組に直接には必要のないすべての経費
  (i)製作施設の維持に係る経費
  (ii)送信機操作費
  (iii)人件費、管理費及び運営費
7 放送機関に恒久的に雇用される者は、次のとおり分類すべきである。
 (a)番組要員及び報道要員
  (i)番組要員  企画、創作及び番組製作を行う者(報道職員を除く。)
  (ii)報道要員  ニュース広報等の作成に従事する者
 (b)技術要員
  (i)製作技術要員  番組製作に必要な技術的機器の操作及び維持に従事する者
  (ii)送信技術要員  送信機器及び制作センターと送信機との間の中継器の操作及び維持に従事する者
  (iii)その他の技術要員  技術的機器又は建物の設計及び設置に従事する者、研究及び調査を行う者等
 (c)運営要員  放送機関の管理又は組織及び中枢業務の提供に従事する者
 (d)その他の要員  (a)から(c)までに規定する者以外の者

送信施設
8 送信機に関する統計については、音響放送送信機とテレビジョン送信機とを区別すべきである。
 (a)音響放送送信機は、周波数帯により分類すべきである。
          長波帯ともいわれ巻LF(低周波帯)
          中波帯ともいわれるMF(中周波帯)
          短波帯ともいわれるHF(高周波帯)
          VHF(超短波帯)
          SHF(極超短波帯)
   送信機出力は、LF、MF、及びHFについては搬送波電力で明示し、また、VHF及びSHFについては最大ERPで明示する。
 (b)テレビジョン送信機は、周波数帯により分類すべきである。
          VHF(超短波帯)周波数帯1、2及び3
          UHF(極超短波帯)周波数帯4及び5
          SHF(極超短波帯)
   最大ERPは、明示すべきであり、また、白黒送信機とカラー送信機とを区分すべきである。

番組
9 国内放送の番組業務に関する統計は、次のとおり分類すべきである。
 (a)全国番組業務  全国的に放送される番組業務
 (b)地域的番組業務  言語、民族その他の文化的相違により通常区別される地域的視聴者に放送される番組業務
 (c)地方番組業務  地理的に便宜上都市、町等に区分される視聴者に放送される番組業務
10 番組に関する統計は、次のとおり分類すべきである。
 (a)機能による分類  意図された目的によって特徴づけられる番組
  (i)情報番組  事実、事件、理論若しくは予測を伝えること又は背景の説明的情報を提供することを主たる目的とする番組
            ニュース広報及びニュース解説(スポーツニュースを含む。)
            その他の情報番組(例えば、政治、経済、科学、文化及び社会の問題、特別の事件等を取り扱う番組)
  (ii)教育番組、文化番組及び宗教番組
         教育番組  教育を主たる目的とする番組であって教育学の要素を基本とするもの
            特定の教育課程(例えば、種々の学校、大学)に関する教育番組(農村開発を目的とした番組を除く。)
            農村開発を目的とする教育番組
            その他の教育番組
         文化番組  芸術的又は知的好奇心を刺激することを主たる目的とする番組
            文化公演又は文化活動と認めることができる番組
            文化の種々の分野及び現象に関して非教訓的方法により視聴者の知識を増大させることを主たる目的とする番組
         宗教番組  異なる形態の宗教活動に基づく番組又は視聴者を啓発することを目的とする同様の霊感的番組
  (iii)広告  商業上その他の広告であって料金が支払われるもの
  (iv)娯楽番組及び分類することができない番組
    娯楽番組  娯楽を主たる目的とする番組
            映画フィルム
            演劇として製作される番組(1回で完結するものであるか連続するものであるかを問わない。)
            音楽を主体とする番組(実況によるものであるか録音によるものであるかを問わない。)
            スポーツ番組(スポーツニュースを除く。)
            その他の娯楽番組
        分類することができない番組  他に分類することができない番組
 (b)番組の言語による分類
  (i)公用語で放送される番組
  (ii)公用語の方言による番組
  (iii)少数民族の言語による番組
  (iv)(i)から(iii)までに規定する言語以外の言語で放送される番組
 (c)番組の出所による分類
  (i)国内製作番組 国内で製作される番組(放送機関によるものであるかどうかを問わない。)
  (ii)輸入番組 統計を提供する国の外部の機関によって製作される番組
  (iii)国際共同製作番組 統計を提供する国の放送機関と当該国の外部の機関とが共同で製作する番組

視聴者
11(a)潜在的視聴者  ラジオ又はテレビジョン受信機を利用する者(自宅で利用する者であるか視聴集団で利用する者であるかを問わない。)の数の全人口に対する割合
 (b)受信機の推定数に関する統計は、次のとおり分類すべきである。
  (i)音響放送受信機  可能な場合には、次のとおり区分する。
           周波数変調を有するVHFの受信機
           振幅変調を有するLF、MF、HF、VHF及びSHFの受信機
           周波数及び振幅変調を有する受信機
  (ii)テレビジョン受信機  可能な場合には、次のとおり区分する。
           白黒受信機
           カラー受信機
 (c)受信免許に関する統計は、次のとおり分類すべきである。
  (i)音響のみ(ラジオ)の免許
  (ii)テレビジョンの免許
  (iii)音響のみ(ラジオ)とテレビジョンとの合同免許

海外放送
12 この勧告の対象となる海外放送の統計には、次の項目を含むべきである。
 (a)送信機の数及びその送信出力
 (b)すべての言語の年間総放送時間及び個々の言語の全体に対する割合

III 統計資料の報告

13 この勧告の対象となる統計は、毎年作成することが望ましいが、それが不可能な場合には、2年ごとに作成され、かつ、2年間の後半の年に関与すべきである。要求される情報は、2から12までに規定する定義及び分類に従って表示すべきである。この定義及び分類と国内で慣習的に使用されている定義及び分類との間の相違に注意すべきである。これらの統計は、ラジオ放送及びテレビジョン放送について別々に表示されるべきであり、また、できる限り次のすべての種類の資料を対象とすべきである。

国内放送
放送機関
14 法的に認められた機関の数
 (a)組織上の地位による分類
  (i)政府放送機関
  (ii)公共事業放送機関
  (iii)商業放送機関
 (b)地理的範囲による分類
  (i)全国放送機関
  (ii)地域放送機関
  (iii)地方放送機関
15 14(a)の放送機関の財源
 年間総収入及び次のものの総収入に対する割合
 (a)政府資金
 (b)受信免許料
 (c)私的寄附金
 (d)広告料
 (e)その他の収入
16 14(a)の放送機関の経常支出
 年間経常総支出及び次のものの総支出に対する割合
 (a)番組経費
  (i)番組製作費
  (ii)番組購入費
 (b)製作費、伝送費その他施設費
  (i)製作施設費
  (ii)伝送施設費
  (iii)人件費、管理費及び運営費
17 14(a)の放送機関に雇用される職員
 全職員数
 (a)番組要員
  (i)報道要員を除く番組要員
  (ii)報道要員
 (b)技術要員
  (i)製作技術要員
  (ii)送信技術要員
  (iii)その他の技術要員
 (c)運営要員
 (d)その他の要員

送信施設
18 次のそれぞれのものに関するラジオ送信機の総数及びその搬送波電力又は最大ERP で表示するその送信出力
 (a)低周波帯(LF)
 (b)中波帯(MF)
 (c)高周波帯(HF)
 (d)超短波帯(VHF)
 (e)極超短波帯(SHF)
19 次のそれぞれのものに関するテレビジョン送信機の総数及び最大ERP で表示するその送信出力
 (a)超短波帯(VHF)
 (b)極超短波帯(UHF)
  (c)極超短波帯(SHF)

番組
20 14(a)の放送機関の番組業務の数
 (a)全国番組業務
 (b)地域番組業務
 (c)地方番組業務
21 14(a)の放送機関の年間総放送時間
 (a)機能別の総放送時間に対する割合
  (i)情報番組
     ニュース公報及びニュース解説(スポーツニュースを含む)
     その他の情報番組
  (ii)教育番組、文化番組及び宗教番組
           教育番組
               特定の教育課程に関する教育番組(農村開発を目的とするものを除く。)
               農村開発を目的とした教育番組
               その他の教育番組
           文化番組
               文化番組又は文化活動
               文化に関する番組
           宗教番組
  (iii)広告
  (iv)娯楽番組及び分類することができない番組
        映画フィルム
        演劇
        音楽
        スポーツ番組(スポーツニュースを除く。)
        その他の娯楽番組
      分類することができない番組
 (b)番組の言語別の総放送時間に対する割合
  (i)公用語
  (ii)公用語の方言
  (iii)小数民族の言語
  (iv)その他の言語
 (c)番組の出所別の総放送時間に対する割合
  (i)国内製作
  (ii)輸入番組
  (iii)国際共同製作

視聴者
22(a)潜在的視聴者
 (b)使用受信機の推定数
  (i)ラジオ受信機
      振幅変調のみを有する受信機
      周波数変調をも有する受信機
  (ii)テレビジョン受信機
      白黒受信機
      カラー受信機
 (c)有効受信免許の数
      音響のみ(ラジオ)
      テレビジョン
      音響のみ(ラジオ)とテレビジョンとの合同

海外放送
23 海外ラジオ放送に関する統計は、次のものを含むべきである。
 (a)送信機の数及び送信出力
 (b)すべての言語の年間総放送時間及び言語別の総放送時間に対する割合

 以上は、国際連合教育科学文化機関の総会が、ナイロビで開催されて1976年11月30日に閉会を宣言されたその第19回会期において、正当に採択した勧告の真正な本文である。

 以上の証拠として、我々は、署名した。

  総会議長
  タイタ・トエット
  事務局長
  アマド=マハタール・ムボウ

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国際統括官付