図書館統計の国際的な標準化に関する勧告

図書館統計の国際的な標準化に関する勧告(仮訳)

1970年11月13日 第16回ユネスコ総会採択

 国際連合教育科学文化機関の総会は、1970年10月12日から同年11月14日までパリで開催された第16回会期において、
 国際連合教育科学文化機関が同機関の憲章第4条4の規定に基づきその権限の範囲内にある諸問題を国際的に規制するための文書を作成しかつ採択することができることを考慮し、
 憲章第8条が「各加盟国は、総会が決定する様式で、教育、科学及び文化の活動及び機関に関する自国の法令、規則及び統計について、並びに第4条第4に規定する勧告及び条約に基づいてとった措置について、定期的にこの機関に報告しなければならない。」と規定していることを考慮し、
 図書館統計は各種類の図書館の活動に関する重要な情報を提供し及び、そのことによって、図書館の発展計画を容易にするものであることを確信し、
 図書館統計の収集及び通報について責任を有する国内機関がそのような図書館統計の国際的比較性を改善するため、定義、分類及び表章様式の問題についての一定の基準に従うことがきわめて望ましいことを確信し、
 図書館統計の国際的な標準化に関する提案をこの会期の議事日程の第20議題として審議し、第15回会期において、これらの提案が加盟国に対する勧告の形式をとる国際的文書に具体化されるべきであることを決定したので、
 1970年11月13日にこの勧告を採択する。
 総会は、国際的統計を作成するため、加盟国が、国内法その他の形式により、この勧告に定める基準及び原則を自国の管轄下にある領域内で実施するための措置をとることにより、図書館統計の定義、分類及び表章様式に関する次の規定を適用することを勧告する。
 総会は、加盟国が、図書館統計の収集及び通報について責任を有する当局及び機関にこの勧告を周知させることを勧告する。
 総会は、加盟国が、この勧告に関してとった措置に関する報告を、総会が決定する期限及び様式で総会に提出することを勧告する。

I 範囲及び定義

範囲
1 この勧告にいう統計は、2(a)に定義する図書館でいずれかの一の国に所在するものを対象とする。

定義
2 この勧告にいう統計を作成する場合には、次の定義を用いる。
  (a)図書館 呼称のいかんを問わず、印刷された図書及び定期刊行物又は他の図表的若しくは視聴覚的資料から成る組織化されたコレクション並びに情報、研究調査、教育又はレクリエーションに関し図書館利用者の必要を満す資料を提供し又はその利用を容易にするための館員の役務
  (b)(i)管理単位 1人の管理者又は単一の管理機関の下にある独立の図書館又は一群の図書館
       (ii)奉仕の拠点 利用者に対する奉仕がいずれかの独立の地区内で提供される図書館(独立であるか管理単位をなす一群の図書館の部分であるかを問わない。)、独立の図書館、中央図書館及び図書館分館(静的なものであるか動的なもの(自動車図書館、船舶図書館及び列車図書館)であるかを問わない。)は、それらのものが利用者に直接に奉仕する場合には、奉仕の拠点とみなす。ただし、自動車図書館が停車する場合は、奉仕の拠点とみなさない。
  (c)コレクション 図書館がその利用者に提供するすべての図書館資料
  (d)年間増加資料 購入、寄贈、交換その他の方法により、1年の期間内にコレクションに加えられるすべての資料
  (e)印刷という用語は、性質のいかんを問わず、すべての複写方法(マイクロプリンティングを除く。)について用いる。
  (f)定期刊行物 同一表題の下に規則的又は不規則的な間隔を置いて期限を定めずに出版されるシリーズの一の号をなし、シリーズの各号に一連の番号又は日付が付される出版物。新聞及び年1 回又は1 年をこえる期間ごとに発行される出版物も、この定義に含む。
  (g)表題 完結した体裁を備えている印刷された出版物(1冊で出版されるか2冊以上で出版されるかを問わない。)を示すために用いる用語
  (h)冊一の製本又は帙に含まれている印刷された又は手書きの作品の物理的単位
  (i)図書館利用者 図書館の奉仕を利用する者
  (j)登録された借用者 図書館の資料を帯出して図書館外で利用するためその図書館に登録されている者
  (k)通常経費 図書館の運営に要する経費。この経費の総額のうち、次のものに限り別個に表示する。
     (i)職員経費 給料、賃金、諸手当及び他の関連費用に使用した金銭の総額
     (ii)収書経費 図書館が取得するすべての資料(印刷された資料、手書きの資料及び視聴覚資料)の費用
  (l)資本経費 固定資産、たとえば、建築用地、新築した建物、増築した建物及び設備(当初の蔵書並びに新築し及び拡張した建物のための備品を含む。)の取得又は追加に要する経費。この経費の総額のうち、次のものは、別個に表示する。
      (i)用地及び建物の経費 建築用地の取得又は追加のための経費並びに新築した建物及び拡張した建物の経費
     (ii)その他の資本経費
  (m)司書 図書館学又は情報科学の一般的訓練を受けて図書館に雇用されているすべての者。その訓練は、正規の方法によるものであるか又は図書館内で一定の監督の下で執務時間を延長して行なわれるものであるかを問わない。

II 図書館の分類

3 2(a)の定義に該当する図書館を次のとおり分類し及び細分類する。
  (a)国立図書館 呼称のいかんを問わず、法律又は他の規則により、当該国において発行されたすべての重要な出版物を取得し及び保存し並びに「納本」図書館としての機能を果たす責任を有する図書館。また、この種の図書館は、通常、次のいずれかの機能を有する。全国出版物目録を作成し、外国の文献(自国に関する図書を含む。)の大量の代表的コレクションを収蔵し及びこれを常時整備し、全国文献情報センターとしての業務を行ない、総合目録を編集し、並びに、過去に遡及して全国出版物目録を刊行する機能を有する。「国立」と呼称されている図書館であっても、その機能がこの(a)の定義に相当しないものは、「国立図書館」に分類してはならない。
  (b)高等教育機関の図書館 大学その他の第三段階の教育の機関の学生及び教員に対して第一義的に奉仕する図書館。この図書館は、公衆に対しても公開することができる。この種の図書館については次の区分を行なう。
     (i)大学の中央図書館又は一群の図書館(個々の所在地は異なるが館長は同一人であるものに限る。)
     (ii)大学の研究所又は学部の附属図書館であるが大学の中央図書館の指揮又は管理の下にないもの
     (iii)大学の部分でない高等教育機関の附属図書館
  (c)その他の主要な非専門的図書館 学術的性格の非専門的図書館であって、特定の地域については国立図書館の機能を営むことがあるが高等教育機関の図書館でなく、また、国立図書館でないもの
  (d)学校図書館 第三段階の教育水準よりも低いすべての種類の学校に附属している図書館であって、公衆に対して公開することができるが、第一義的にはその学校の生徒及び教員に奉仕するもの。同一学校内の2以上の学級による利用のための別個のコレクションは、単一の図書館とみなすものとし、一の管理単位及び一の奉仕の拠点とみなす。
  (e)専門図書館 協会、政府機関、議会、研究所(大学の研究所を除く。学会、職業団体、博物館、商社、企業体、商工会議所等又は他の組織が維持する図書館であって、そのコレクションの大部分が特定の分野又は主題(たとえば、自然科学、社会科学、農業、化学、医学、経済学、工学、法律又は歴史)を扱うもの。この種の図書館については次の区分を行なう。
     (i)資料及び奉仕を必要とするすべての者に対してこれらを提供する図書館
     (ii)図書館の維持について責任を有する組織に属しない専門家が利用する場合があるが、主として本来の利用者に対する情報の提供のためのコレクションを有し及び奉仕を提供する図書館
  (f)公共図書館 無償で又は名目的な手数料で共同社会又は地域の住民に奉仕する図書館であって、公衆又は特定の種類の利用者(児童、軍隊の構成員、病院の患者、受刑者、勤労者、被用者等)に奉仕するもの。この種の図書館については次の区分を行なう。
     (i)本来の意味での公共図書館、すなわち、全部又は大部分の経費について当局から財政的援助を受けている図書館(市立図書館又は地域図書館)
     (ii)私的源泉から資金の供給を受けている図書館
4 各図書館は、その一義的機能に従って、3の分類のうちいずれか一にのみ属させる。
5 「管理単位」とみなされる学校図書館及び公共図書館は、さらに、そのコレクションの大きさに従って次のいずれか一の区分に分類する。コレクションの大きさは、印刷された資料及び手書きの資料についてのみいう。
  (a) 公共図書館
     (i)2,000冊まで
     (ii)2,001冊から5,000冊まで
     (iii)5,001冊から10,000冊まで
     (iv)10,000冊をこえるもの
  (b)学校図書館
     (i)2,000冊まで
     (ii)2,001冊から5,000冊まで
     (iii)5,000冊をこえるもの

III 統計資料の報告

6 この勧告にいう統計は、3年の定期的間隔を置いて作成する。入手した情報は、2から5までの規定に合致させる。この勧告に含まれる定義及び分類と国内で慣習的に使用されている定義及び分類との間の相違には注意を払う。
7 図書館統計は、別段の定めがある場合を除くほか、次に掲げる種類の資料を含む。期間に関する資料とは、当該一の年間についての資料をいうものとし、その期間には、連続する2の調査の間の期間を含まない。
  (a)図書館の数
     (i)管理単位
     (ii)奉仕の拠点
        静的なもの
       動的なもの
  (b)奉仕の対象となる者の数
     (i)3(f)(i)に定義する公共図書館の奉仕の対象となる者の数、すなわち、公共図書館が奉仕する地区の住民の総数
     (ii)学校図書館の奉仕の対象となる者の数、すなわち、学校図書館の奉仕の提供を受ける初等及び中等の学校の生徒及び教員の総数
     (iii)高等教育機関の図書館の奉仕の対象となる者の数、すなわち、大学その他の第3段階の高等教育の機関の図書館の奉仕を利用する資格を有する学生、教育職員及び事務職員の総数
  (c)コレクション
    図書館のコレクションに関する情報は、次に掲げる資料であって利用者に提供されるもの(貸出中の資料を含む。)のみを対象とする。
     (i)図書及び定期刊行物(排架された書架のメートル及び冊数による。)
     (ii)手書きの資料(排架された書架のメートル及び冊数による。)
     (iii)図書、定期刊行物及び手書きの資料のマイクロフォーム
           (a)マイクロフィルム(ロールの数による。)
           (b)その他のマイクロフォーム(物理的単位の数による。)
  (d)増加資料
     コレクションに対する増加資料に関する統計は、次に掲げる資料のみを対象とする。
     (i)図書(表題及び冊数による。)
     (ii)手書きの資料(日録の単位の数による。)
     (iii)マイクロフォーム
           (a)マイクロフィルム(ロールの数によって数える。)
           (b)その他のマイクロフォーム(物理的単位によって数える。)
  (e)現に刊行されている定期刊行物の表題の数、すなわち、当該一の年間に図書館が受け入れた表題の数
  (f)登録された借用者の数 所定の年において登録されている借用者のみを数える。専門図書館については、登録されている借用者の数を数えない。
  (g)貸し出された資料及び貸し出す代りに提供する写しの数
     (i)貸し出された図書、定期刊行物及び手書きの資料(冊数によって数える。)
     (ii)資料の原本の代りとするために作成された写し(写しの冊数によって数える。)
  (h)国内における相互貸借 別個の管理単位間の貸借のみを数える。
    貸出資料
     (i)図書、定期刊行物及び手書きの資料(冊数によって数える。)
      (ii)資料の原本の代りとするために作成された写し(写しの冊数によって数える。)
  (i)国際的な相互貸借
     (a)他の国に貸し出した資料
        (i)図書、定期刊行物及び手書きの資料(冊数によって数える。)
        (ii)資料の原本の代りとするために作成した写し(写しの冊数によって数える。)
     (b)他の国から借り受けた資料
        (i)図書、定期刊行物及び手書きの資料(冊数によって数える。)
        (ii)資料の原本の代りに借り受けた写し(写しの冊数によって数える。)
  (j)写真複写その他の写し
  図書館がその利用者のために作成した写し(硬貨で作動する複写機で図書館の構内に備えられているものによって作成した写しを除く。)及び相互貸借にあたり資料の原本の代りとするための写しは、次の方法で数える。
      (i)紙の写し  枚数による。
     (ii)マイクロフィルム  こま数による。
      (iii)マイクロフィッシュ  件数による。
  (k)通常経費
     (i)総額
     (ii)職員経費
     (iii)収書経費
  (l)資本経費
     (i)総額
     (ii)用地及び建物の経費
     (iii)その他
  (m)図書館職員
     (i)職員の総数
       常勤
      非常勤(常勤に換算して数える。)
     (ii)図書館学の修了証書を保有している司書
        常勤
       非常勤(常勤に換算して数える。)
     (iii)図書館内で一定の監督の下で執務時間を延長して行なわれる訓練を受けた司書
        常勤
       非常勤(常勤に換算して数える。)

  以上は、国際連合教育科学文化機関の総会が、パリで開催されて1970年11月14日に閉会を宣言されたその第16回会期において、正当に採択した勧告の真正な本文である。

  以上の証拠として、われわれは、1970年11月17日に署名した。

  総会議長
  アティリオ・デロロ・マイニ
  事務局長
  ルネ・マウ

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