建築及び都市計画の国際競技に関する勧告

建築及び都市計画の国際競技に関する勧告(仮訳)

1956年12月5日 第9回ユネスコ総会選択

 1956年11月5日から、12月5日までニュー・デリーで開催された国際連合教育科学文化機関第9回総会は、
 第8回総会の際、組織者及び競技者双方の利益のため、国際競技の計画の編成を促しかつ指導するため建築及び都市計画の国際競技に関する標準規定に原則的な承認を与え、及びこの標準規定を加盟各国に伝達し、
 総会議事日程9.4.4である建築及び都市計画の国際競技に関する新提案を受理し、第8回総会の際に、これらの諸提案が加盟各国に対する勧告の手段により国際的規定の対象となるべきことを決定したので、
 1956年12月5日、下記の勧告を採択する。すなわち、総会は、加盟各国に対し本勧告に表明されている基準及び原則に自国の管轄下にある領域内で効力を与えるため国内法の形式により、又は他の方法により下記規定を適用するよう勧告する。
 総会は、加盟各国に対し、本勧告を建築及び都市計画の競技に関与する当局、諸機関ならびに、建築家及び都市計画者の国内諸団体に通報するよう勧告する。
 総会は、加盟各国が、本勧告を実施するためとった措置に関する報告を総会の定めた日時及び形式に従って総会に提出するよう勧告する。

I 定義

1.(a)本勧告の目的上、1か国以上の国の建築家又は都市計画書が参加するよう招請されたあらゆる競技は、国際競技とみなされる。
    (b)国際競技は、公開又は制限付とすることができる。すなわち、i)2又は2以上の国の国民たる技術者に対し、例外なく開放される競技は公開と見なされる。ii)組織者によって招請される、ある種の技術者に限定された競技は制限付と見なされる。
    (c)国際競技は、1又は2の審査段階で成立するものとする。

II 国際競技の組織

2.国際競技の公示には、競技種類の定義ならびに、競技目的の明確な声明を掲げなければならない。またそれは、競技の審査段階が1段階か2段階か、また公開か制限付であるか、を明示しなければならない。
3.国際競技の要項は、国際建築家連合と協議の上作成されねばならない。
4.国際競技の要項は、競技目的、問題の性質及び、設計図の作成の具体的条件を正確に指示しなければならない。
5.国際競技の諸条件及び要項は、国籍の差別なく、すべての競技者について同一のものでなければならない。
6.公開国際競技のために行なわれる公示は、国際的性格を示し、かつ、公正になされなければならない。

III 国際競技の審査

7.審査会は、大多数は、資格ある技術者から構成される。
8.審査会は、その構成員の中に競技を開催した国以外の国籍に属するものを包含しなければならない。

IV 国際競技に伴なう細目事項

9.国際競技の要項で定められる賞金、褒賞及び報酬は、計画の規模とその性質ならびに競技者に課せられた労力に比例するものでなければならない。
10.設計図の実施への参加については、十分な保証が国際競技の入賞者に付与されなければならない。設計図が実施されなかった場合は、設計図の重要性に応じて報酬を規定しなければならない。
11.国際競技のために提出される設計図については、すべての競技者の著作権および所有権を保護するために適当な措置が講ぜられねばならない。
12.国際競技の結果は公開されなければならず、また、競技に提出される設計図は、公開供覧されなければならない。
13.国際建築家連合に対するあっせんの依頼については、国際競技の際生じるあらゆる紛争の解決のために、予め定められていなければならない。
14.国際競技の組織者は本勧告の付属書に掲げられる標準規則の定めるところに準拠しなければならない。

付属書

建築および都市計画に関する国際競技の標準規則

I 序説

 本規則は、組織者及び競技者の共通の利益のために、国際競技の計画の作成を指導することを目的とする。
第1条 1か国以上の国の建築家および都市計画者が参加するよう招請される競技は国際的なものとみなされる。

II 競技の組織および公示

第2条 国際競技は、公開又は制限付である。2又はそれ以上の国からの競技者に例外なく開放された競技は公開とみなす。組織者により招請された、ある種の技術者に限定される競技は制限付とみなす。
第3条 国際競技の諸条件及び要項は、すべての競技者に対して同一のものでなければならない。
第4条 公開国際競技は、一般条件を指示して、各国の技術新聞および雑誌にできるかぎり同時に、かつ関係者が競技開始と同時に完全な要項を入手しうるように組織者によって公示されなければならない。
  この公示には、各国における競技の詳細な要項および、これに関する資料が附託される機関、ならびに、本規則第51条に従い、同要項が国際建築家連合にその助言を得るため提出された事実を掲げなければならない。
第5条 当事者に通知された要項の条件は、すべての国及びすべての競技者について全く同一のものであることを当事者が確かめることができるようにするために、この要項は国際建築家連合に正式に寄託されるものとする。
第6条 国際建築家連合の公用語(英・仏・およびロシア語)のうちのいずれにもよらない要項には、これら3か国語のうち、少くとも1つの国語によるその翻訳を付さねばならない。
第7条 国際競技は1又は2の審査段階で成立するものとする。
第8条 要項には、設計図が署名されるべきか、または、無記名で提出されるべきかを指示するものとする。

III 要項の作成

第9条 国際競技要項は、1段階または2段階で構成され、また公開または制限付であるとを問わず明確につぎのことを述べなければならない。
  a)競技目的および、組織者の意図
  b)問題の明確な性格
  c)設計図作成の具体的条件
第10条 要項には、義務的条件と、競技者にできるかぎり可能な範囲で解釈の自由を与える条件との間に、厳格な区別が設けられねばならない。
第11条 その内容は、社会的、有機的、経済的、技術的および物理的な誤った解釈をしないように、明確でなければならない。第2段階の競技に参加を許された競技者は、特別な場合組織者から、最終審査にあてられる設計図の作成に必要なすべての補足的指示を受けなければならない。
第12条 要項には、平面又は立体で必要とされる書類及び模型の数、性質、縮尺及び寸法を明示し、その書類及び模型の受付受諾及び返送の条件を明記しなければならない。競技者は、画一的標準に従い、価格評価を容易にするための資料の提供を要請されることがある。
第13条 国際競技の組織者は、原則として設計図の尺度としてメートル法を採用するものとする。その他の尺度がある場合においては、メートル法に相当するものを設計図に添付する。
第14条 組織者は、いかなる場合においても、必要とされる書類と図面の数と大きさとを最小限にするよう努力しなければならない。

IV 競技者の登録と応募

第15条 競技者は要項全体の詳細を入手したときはすみやかに、組織者に対して登録しなければならない。この登録は競技条件に対する競技者の同意を意味する。
第16条 国際競技の組織者は、競技者に対し、各人の設計図作成に必要な書類を交付するものとする。書類交付に金銭の払い込みを条件とする場合には、この金額は競技に実際に参加した競技者には返還される。
第17条 2段階競技にあっては、第1段階の審査を通過した競技者のみが最終競技に参加が許されるものとする。
第18条 最終競技に参加を許された競技者の名簿はアルファベット順に作成されかつ、発表されるものとする。
第19条 最終競技に参加を許された競技者は、特別な場合、審査会の決定に基づき組織者から、最終的競技のための設計図の作成に必要なすべての補足的指示を受けなければならない。

V 賞金、褒賞及び報酬の授与

第20条 国際競技の要項は、賞金の配分方法を定めなければならない。賞金の額は、計画の規模、必要とされた労力及び競技者に課せられた諸経費に比例しなければならない。
第21条 都市計画のための国際競技は、その性質上、工事が一般に地方当局により、かつしばしば長期間にわたって行なわれなければならないから創意の競技である。したがって組織者は、創作者の創意及び労力に報いるように賞金を配分することが特に重要である。実際上、最良の設計図の創作者は、これらの懸賞金によってのみ報いられることがありうる。
第22条 創意の競技についての賞金の性格がどのようなものであっても、工事の施行にあたって、創作者の可能な協力が排除されるようなものであってはならない。
第23条 賞金は競技結果の発表があってから、3か月以内に与えられなければならない。
第24条 要項には、競技の組織者が、入賞した設計図を用いようとするときは、正確に使用することを明記しなければならない。要項に指示されたもの以外の利用は、すべて、これをなすことができない。
  組織者が入賞した設計図を他の目的に利用し又は、なんらかの変更を考える場合は、このために、組織者及び設計の創作者との間に新しい協定を締結しなければならない。
第25条 制限付競技の場合では、招請された競技者の各々に対し正規の賞金以外にある額の支払いをすることについての規定を設けなければならない。
第26条 設計図に対する1等賞の授与は、競技の組織者に対しこの設計図の創作者に工事の施行を保証する義務を課することになる。もっとも、1等の入賞者が、工事の重要性に関して、十分なる専門的説明をし得ない場合には、審査会は、工事の施行のために、入賞者によって選ばれ、審査会での身元調査の後に承認された技術者助言をうることができることを、入賞者に勧めることができる。
第27条 要項には、同要項に定められた期間の満了したときに、組織者が設計図の実施を行なわなかった場合を定め、かつ、この場合入賞者に支払われる補償金の割合及び額を明記するものとする。この額は施行にあたって支払われる経費から控除されるものとする。
第28条 第2段階からなる競技においては、公正な額が最終競技に参加を許された競技者に授与されねばならない。この金額は、最終競技のための設計図の作成費をまかなうことを目的とするものであって、要項に明記されなければならず、かつ、最終競技のために定められた賞金とは区別されるものとする。
第29条 競技者の設計図に対する保険は組織者の負担とする。この保険の額は、いかなる場合でも設計図の最大限の価値を超えないものとする。
第30条 競技者が正規に登録した競技の取消しをする場合は、組織者は応募競技者が実際に行なった労力を補償する義務を有するものとする。

VI 著作権

第31条 設計図の創作者は、その作品につき美術的所有権を保持するものとする。創作者の正式同意なしには、いかなる変更も加えることができない。
第32条 1等の等級を与えられた設計図は組織者の所有に帰する。賞金を与えられると否とを問わず、他のいかなる設計図も、創作者との特別協定がなければ、全部又は一部であっても、これを利用することができない。
第33条 通常、いづれの設計図についても組織者の所有権は1回の施行にのみとどまるものとする。
  もっとも、競技要項は、数回の施行の場合及び、その条件を定めることができる。
第34条 すべての場合において、設計図の創作者は、要項に別段の定めのない限り複製権を保有するものとする。

VII 審査会の組織および運営

第35条 審査会は、競技開始の前に設置されるものとする。審査会の委員名簿およびその代理人の名簿は、競技要項の付属書に記載されなければならない。
第36条 審査会は、異なった国籍を有するできる限り制限された人数により構成され、かつその大多数は、資格のある技術者でなければならない。予備報告が作成されなければならない場合には、この報告の作成を担当するもの―複数の場合はそれらのもの―の氏名もまた同様に要項に記載されなければならない。
第37条 審査会の委員は、競技の組織者により、その業務の遂行にあたっては、自己の良心および競技上の利益以外の考慮には従わないことを約束することを要請される。
第38条 審査会のいかなる委員も直接たると間接たるとを問わず、競技に参加し、または、直接または間接たるとを問わず、入賞した設計図の施行に関してたづさわることはできない。
第39条 その最初の会合において、審査会は委員長及び報告者を選出するものとする。
第40条 審査会の決定は、設計図の各々につき多数決で行なわれる。賛否が同数である場合は、委員長が決定するものとする。会議議事録は報告者によって作成され、議事録は委員長および審査会のすべての委員によって署名されるものとする。
第41条 要項に明示されていないすべての図面、写真、模型、文書は考慮されず、かつ審査前に審査会により却下される。
第42条 審査会は、要項に明記された条件に従わない設計図を競技から除外することができる。
第43条 審査会のすべての決定は理由を付されかつ公開されなければならない。審査会のすべての決定は、最終決定である。
第44条 審査会の委員の旅費及び手当は、競技組織者により支払われるものとする。

VIII 設計図の展示

第45条 各競技ごとに、各国からの競技参加者は組織者により公開展示の日時と場所の通告を受けるものとする。組織者は、番組の一般条件を発表した同一技術新聞雑誌等に、この展示の場所、日時および開始時間を公示しなければならない。
第46条 競技のために提出されたすべての設計図は判定後において公開展示されるものとする。この外、すべての文書及び図面ならびに、委員長及びすべての有効審査委員の署名を掲げた委員会の報告と決定も展示されるものとする。
第47条 第2段階からなる競技においては、第1段階の審査に提出された設計図は、最終審査の結果の公示のあるまでは引きつづき秘密とされなければならない。
第48条 第42 条により、却下された設計図は、審査会の決定の理由を付して展示されるものとする。
第49条 展示の日は、競技要項に明記されなければならない。この展示は少なくとも、1週間無料で一般に公開されなければならない。
第50条 競技および公開展示の終了後1か月以内に入賞又は、買上げられなかった設計図は組織者の費用により競技者に返送されなければならない。

IX 国際建築家連合の協力

第51条 建築又は都市計画の国際競技の要項は、発表前に意見を求めるため、国際建築家連合に提出され、同連合は、都市計画競技に関するときは、国際住宅都市計画連盟と協議するものとする。
第52条 規則が遵守されることを保証するため委員会の委員の1名は、国際建築家連合によって指名されることが望ましい。
第53条 国際競技の組織者は、要項の作成、審査会の委員となる資格のある者の指名、第20条に定められたように、計画の性格と規模、競技者に必要とされる労力及び課せられる経費に応ずる賞金の額の決定、かつ必要のある場合は、組織者と競技者間に生ずる紛争を調停するために、国際建築家連合の国際競技委員会の援助を要請することができる。
  これに要するすべての費用は、組織者の負担とする。


  前記の文書は、ニュー・デリーにおいて開催され、1956年12月5日閉会を宣言された国際連合教育科学文化機関第9回総会により正当に採択された勧告の公正文書である。

  以上の証拠として、下記の者は、1956年12月5日署名した。

 総会議長
 事務局長
 認証謄本 パリ
 国際連合教育科学文化機関法律顧問

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国際統括官付