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ユネスコ活動の活性化について(建議)

 令和元年9月12日、第145回日本ユネスコ国内委員会総会において、「ユネスコ活動の活性化について」審議し、このたび建議をまとめました。 
 この建議は、日本ユネスコ国内委員会の発意により、中長期的観点から、我が国のユネスコ活動の方針等について、関係大臣に対し提言したものです。グローバル化や技術革新が急速に進展する国際社会において、SDGsに向けた取組みが進む中、課題解決先進国としての我が国が、ユネスコ活動において積極的な役割を果たしていくことが求められていることを踏まえ、下記のとおり文部科学大臣、外務大臣へ提出しました。

ユネスコ活動の活性化について(建議)

令和元年10月18日
日本ユネスコ国内委員会

 我が国のユネスコ活動は、1951年に我が国がユネスコに加盟する以前から、民間の自発的な協力活動として始まった。世界初となるユネスコ協会が仙台で誕生した後、民間のユネスコ活動は瞬く間に全国に広がり、ユネスコが駐日代表部を設置した1949年には、衆・参両院で「ユネスコ運動に関する決議」が採択され、文部省にも大臣官房渉外ユネスコ課が設置されるなど、あらゆる方面においてユネスコ活動が大きな盛り上がりを見せた。サンフランシスコ講和条約の締結前に、ユネスコ加盟という戦後初の国際機関加盟と国際社会への復帰を実現させたのは、こうした政官民の垣根を越えた熱意に支えられたユネスコ活動であった。
 それから70年を経た現在、ユネスコ活動は新たな局面を迎えている。

  複雑化する国際社会の中でのユネスコ活動

 グローバル化に伴い人やモノの流動性が高まり、国際関係はますます緊密化する一方で、グローバル化への反動も強まるなど、国際社会における情勢は複雑さを増している。また、人工知能(AI)などの技術革新が急速に進展し、将来的な社会や生活の変化が予測しにくい中にあって、持続可能な社会の在り方を展望し次世代につないでいくことが、先進国であるか開発途上国であるかを問わず共通の課題として求められている。
 ユネスコはこうした中、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、教育、科学、文化、コミュニケーション・情報等各分野の事業を実施しており、AIの倫理やガバナンスといった未来社会の在り方を見据えた事業にも取り組んでいるところである。併せて、加盟国間の友好と相互理解の促進のため、事務局長のリーダーシップの下、議論が政治化することを防ぐための改善も図られているところである。
 これからの社会の在り方をSociety 5.0と定義して各分野における改革を進めている我が国は、課題解決先進国としてユネスコにおける議論をリードする立場にある。加盟国中第2位の分担金を担う責務も踏まえ、国内外のユネスコ活動が、人類の心に「平和の砦」を築くというユネスコ設立本来の趣旨・目的を踏まえつつ活性化されるよう、積極的な役割を果たしていくことが我が国に期待されている。

  地域の活性化とユネスコ活動

 国内の地域社会に目を向けると、各地域の特色を資源として生かしつつ地方創生を図っていくことが喫緊の課題となっている。地域資源を活用した地方創生を図るためには、ユネスコの様々な登録・認定制度の枠組みに登録されることのみを目的とするのではなく、登録をきっかけに、地域の特色ある自然や文化と人間社会との共生を図る活動を活性化させ、それらを持続可能な方法で教育や観光等に活用していくべきであろう。
 また、地域におけるユネスコ活動としては、本年30周年を迎える世界寺子屋運動など、開発途上国支援のための草の根の寄付活動がイメージされることも多いが、それだけではなく、地域の実情に応じた国際理解・国際協力活動や、自然・文化保護の活動など、日本国内に向けた活動も数多く行われているところである。今後、我が国に在留する外国人の更なる増加により、身近な地域の国際化がますます進むことや、地球規模課題などへの認識の深まりにより、身近な地域に暮らしながら国際的な考え方、態度が不可欠となる状況がますます増えていくことが予想される。地域のユネスコ活動についても、こうした社会的変化の中で改めてその価値を捉えなおし、地域社会の中で外国人との相互理解を進め、多文化共生社会を実現するものとして更なる充実を図っていくことが期待される。

  ユネスコ活動の担い手

 近年、国内のユネスコ活動の担い手の高齢化や活動の縮小傾向が指摘されているところであるが、SDGsの実現に向けた諸活動全般に視野を広げれば、多くのユースや地方自治体、NPO、民間企業等が積極的に活動し、裾野は広がっているところである。今後、こうした多様なステークホルダーとも連携を深めてユネスコ活動の輪を広げ、オールジャパンで戦略的な取組を推進していくことが期待される。
 日本ユネスコ国内委員会は、2015年にユネスコが70周年を迎えた際、これからの時代のユネスコ活動がどうあるべきかについて検討し、1.新しい時代の国際社会における「知的リーダー」としての役割、2.持続可能な社会の実現への貢献、3.多様性を尊重する社会の実現への貢献、の3点をユネスコの役割として提言し、会長ステートメントとしてとりまとめたところである。こうしたこれまでの提言も受け継ぎつつ、新たな諸課題を踏まえ、政府が関係者と連携しつつ、次に挙げた事項を中心にユネスコ活動の活性化に向けた必要な措置をとることを要望し、ここに建議する。

  1. SDGs達成に向けた、持続可能な開発のための教育(ESD)の推進における主導的な役割の維持

 ESD推進のための新たな枠組みである「持続可能な開発のための教育:SDGs達成に向けて(ESD for 2030)」が本年秋に採択されることを契機に、ESD提唱国にふさわしい国内外のユネスコ活動の充実を図ること。
 その際、SDGs策定後のESDについて「SDGsの目標とESDの関係が分かりにくい」「ESDを通じてどういう力が身につくのか見えにくい」「人や時間のリソースが限られる中でどのように取り組めば効果的か知りたい」といった国内の声に応え、SDGsに関する知識を広めるのみならず、「持続可能な社会の創り手」として必要な力を育むというESDの考え方をわかりやすく整理して共有すること。また、教育関係者のみならず、民間も含めた多様なステークホルダーが連携し推進できるよう、本建議5に提言するプラットフォームの活用を図ること。あわせて、ESDの拠点であるユネスコスクールが活動の質を高め、その成果を普及することができるよう、指導の工夫・改善や国内外のネットワークづくりを支援すること。
 国際協力にあたっては、日本型教育の海外展開推進事業(EDU‐Portニッポン)等の二国間協力との連携も図りつつ、ESD推進に向けたカリキュラム改善や、先端技術の活用を含めた指導環境や指導法の改善、教員の養成・研修、安全な学校環境づくりなど、日本の経験を生かせる幅広い分野において、多様な関係者と連携した協力を進めること。また、国内の教育活動と国際協力の成果が往還するよう努めること。

 2. 「国連海洋科学の10年」に向けた活動の活性化

 2021年から始まる「国連海洋科学の10年」に向けて、持続可能な海洋の保護と利活用における科学の重要性について普及を図ること。また、ESDとの相乗効果が得られるような教育関係者との協力も含め、SDGsの達成に幅広く貢献するよう分野を越えた連携を図ること。

 3. 加盟国間の友好と相互理解の促進のためのユネスコ改革への貢献

 ユネスコの機動性を高めるための組織改革が、適正かつ効果的に実施されるようチェック機能を果たすとともに、「AIの倫理」や「教育の未来」といったユネスコの将来的な役割を見据えた戦略的イニシアティブに関し、日本の知見を生かした貢献ができるよう、信託基金を効果的に活用すること。
 また、ユネスコの各種事業に関する議論が政治化しないよう、「世界の記憶」事業の包括的見直し等を後押しするとともに、加盟国間の友好と相互理解の促進の観点からのプロジェクトの充実に協力すること。

 4. ユネスコ活動のメリットを生かした地域創生や多文化共生社会の構築

 ユネスコが登録・認定を行う世界遺産、無形文化遺産、生物圏保存地域(エコパーク)、世界ジオパーク、創造都市ネットワーク等については、多様な文化が地域創生の資源となるよう、持続可能な地域づくりという観点から教育や観光等に積極的に活用することを後押しし、好事例の展開を図ること。また、各地で蓄積されてきた文化遺産の保存修復技術や保護に向けた豊富な知見を引き続き国内外で生かせるよう、特に若い世代の関心と誇りを惹起し、文化遺産を伝承していく人材確保のための好循環が生み出されるよう努めること。
 地域のユネスコ活動については、ユネスコがいわば地域に最も近い国際機関であり、各地域のユネスコ協会等を通じて地域が世界とつながっているというメリットを生かした活動の充実や可視化を図ること。また、これまでの活動の蓄積を受け継ぎつつ、身近な地域の国際化に対応し、地域社会の中で外国人との相互理解を進める多文化共生プログラムの充実を図ること。

 5. 多様なステークホルダーの連携を深める戦略的なプラットフォームの構築

 SDGsの達成に向けて積極的に取り組むユースや地方自治体、NPO、民間企業等とともに、地域の課題解決につながるユネスコ活動の更なる充実や、活動成果の国内外への戦略的発信、国内のユネスコ活動と国際協力の成果の往還等を促進するため、世代や地域を越えて多様なステークホルダーが連携し、ユネスコ活動の未来を共創するプラットフォームの構築を図ること。


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