【資料7】持続可能な開発目標(SDGs)の推進に向けた推進特別分科会としての考え方(案)

持続可能な開発目標(SDGs)の推進に向けた
推進特別分科会としての考え方(案)


◆  現在政府部内において検討を進めているSDGs実施指針案において、「我が国はこれまでに、今後の世界における持続可能な経済・社会づくりの先駆者、いわば課題解決先進国として、SDGsの実施に向けた模範を国際社会に示すような実績を積み重ねてきた。今後のSDGs実施の段階においても、我が国としての強みと、更に取り組むべき課題を特定しつつ、世界のロールモデルとなることを目指し、国内実施、国際協力の両面において、世界を、誰一人取り残されることのない持続可能なものに変革するための取組を進めていくことを目指す」との基本方針を明らかにしたことは重要。
国際機関としてのユネスコ及び国内におけるユネスコ活動が、本方針を実現する上でのロールモデルとなるよう、本特別分科会としても、考え方を明確にし、国内・国外のステークホルダーに働きかけるとともに、実施状況をフォローアップしていくことが必要。

◆  地球規模の環境問題や、国境を越える移民・難民の増大、一部の若者の間の暴力的な過激化・急進化をはじめ、様々な社会的課題が存在する中、「戦争は人の心の 中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」をユネスコ憲章において謳う国際機関として、ユネスコは、多様性を包含する社会的包摂に配慮しつつ、しなやかなレジリエンスの機能を備えた、自助・共助に基づく持続可能な共生の考え方を、様々な対話を通じて世界に提示し、推し進めていくことが重要である。
このことについては、昨年日本ユネスコ国内委員会が発出したユネスコ創設70周年にあたってのステートメントにおいても、「多様性の尊重と持続可能な社会の実現」の重要性を呼びかけているところである。

◆  ユネスコ事務局において、当面ユネスコとして重要な役割を果たし得る目標として、ゴール4の教育をはじめとする、9つのゴールを特定したことは概ね妥当と考えられる。特に教育については、本分野における国際機関のリーダーとして、単にゴール4そのものの実現を目指すだけでなく、他のゴールの達成への波及効果を発揮し、必要な人材を育成するとともに、直面する課題及び対応策に関する普及・啓発等の役割を果たす観点から、総合的に取り組んでいくべきである。

◆  あわせて、我が国の提唱により『国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)』が実施され、現在その後継プログラムであるグローバル・アクション・プログラムが各国において実施されているESD(持続可能の開発のための教育)は、上記の教育が果たすべき役割を実施する上で、基幹となる取組である。ESDにおける新たな取組として、SDGsについて知り、その実現に向けた課題や、各ゴール間の複雑な関係等について考え、自ら行動できるような知識、態度、技能を身に付けるなど、学校教育をはじめ、家庭、職場、地域等のあらゆる場におけるSDGsに関する学習等を国内外で奨励していくことが重要であり、グローバル・アクション・プログラムの今後のフォローアップにおいても、かかる考え方が反映されるよう、ユネスコや各国に働きかけるべきである。
このほか教育分野においては、理数教育をはじめとする基礎教育に関する政策実施のための支援や、技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)や高等教育に関する対話など、各国が教育政策を実施する上での基盤を引き続き提供していくことが重要である。また、昨今の国境を越える移民・難民の増大、一部の若者の間の暴力的な過激化・急進化等に対抗して、社会的包摂の考え方に立脚し、多様な文化・社会を認め合う教育のあり方が問われる中、ユネスコがかかる教育のあり方について基本的考え方や優良事例を発信するなど、積極的に取り組んでいくよう求めるべきである。
なお、SDGsに関する普及啓発に取り組む際には、単に個々のゴールや解決すべき課題について取り上げるだけでなく、あらゆる人々の日常的な生活行動が、SDGsにおける課題にインパクトを与えており、また、どのような職業やその他の社会活動に従事していても、その仕事を通じてSDGsの課題解決に貢献しているとの認識を持ってもらえるような工夫が求められる。

◆  科学分野については、我が国として貢献できる分野として、感染症、海洋、環境エネルギーなどの科学技術分野での国際的取組や国内の科学者コミュニティとの連携等が挙げられる。その際、これらの取組は、ゴール9のイノベーションのみならず、ゴール3の健康、ゴール6の水や、ゴール7のエネルギー、ゴール11の持続可能な都市、ゴール13の気候変動、ゴール14の海洋、ゴール15の生物多様性、さらにいえばゴール17のSDGs全体の達成に向けた実施手段など、それぞれが多様で広汎な要素を含む目標と関連し得ることから、我が国としてどのような取組を重点的に実施すべきか、またユネスコにおいて既存の取組を含め、限られた資源をどのように活用すべきかについて、関係する国際機関や研究機関等とも十分に連携を図った上で、取組を進めていくべきである。
特に、アフリカについては、我が国において、本年8月にTICADⅥがナイロビで開催され、とりまとめられたナイロビ宣言において、「ICTを含む科学技術・イノベーションは、高付加価値産業だけでなく、食料安全保障、保健、気候変動、他の環境問題及び社会安定化といった幅広い分野における持続的な質の高い成長を実現する上で有効な手段であり、また、安全保障上の課題に対処する上でも活用し得る。」とされているところである。ユネスコにおいても、アフリカ支援はジェンダーと並ぶ横断的課題として、近年重視されているところであり、我が国による取組との積極的な連携が期待される。
あわせて、SDGsの特質を踏まえ、各分野で高度に専門的な研究分野に取り組む研究組織間の垣根を超えて、学際的な取組が奨励されるよう、ユネスコにおいて、国際的な研究者コミュニティ等との一層の連携を進めるとともに、我が国においては、自然科学と人文・社会科学との融合を更に進めていくべきである。

◆  文化分野においては、ユネスコが示した重要な役割を果たすべき分野として、ゴール11の都市において、文化遺産と自然遺産に関するターゲット11.4の達成に取り組むことが明記されているが、依然として十分に位置づけられているとは言えない。
本来、文化は、様々な文明間の対話を進める上で重要な要素であり、多種多様な文化交流を通じて、相互理解や社会的包摂の考え方が醸成され、ひいてはSDGsの達成に貢献できるよう、本分野における主導機関として、ユネスコにおける一層の取組を働きかけていくべきである。

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