第1回ESD特別分科会 議事録

1. 日時

平成27年3月26日(木曜日)10時00分~12時00分

2. 場所

文部科学省国際課応接室(12階)

3. 出席者

(委員)
見上一幸(座長)、岡本弥彦、北村友人、清原洋一、後藤顕一、佐藤郡衛、重政子、
髙橋香代、田村学、手島利夫、林原行雄、〔敬称略〕

(事務局)
山脇良雄日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)、
籾井圭子日本ユネスコ国内委員会事務次長(文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)、その他関係官

4. 議事

【見上座長】 
 それでは、予定の時間よりは若干早いのですが、皆様おそろいですので始めさせていただきたいと思います。本日は、御多用の中、御出席いただきましてありがとうございます。司会進行を務めさせていただきます見上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 ただ今から、第1回のESD特別分科会を開催したいと思います。
 本特別分科会は、ESDに関するユネスコ世界会議の成果を踏まえまして、ESDの更なる推進に向けた検討を目的として、日本ユネスコ国内委員会教育小委員会に設置されたものでございます。本日、第1回を開催いたします。
 第1回の開催に当たりまして、まず、事務局、山脇国際統括官から御挨拶をお願いいたします。

【山脇国際統括官】 
 本日は、御多忙のところ、ESD特別分科会に御出席を賜りまして本当にありがとうございます。ただ今、見上座長からございましたように、去年の11月にESDの世界会議が愛知名古屋、そして関連の会議が岡山で開催されました。持続可能な開発のための教育(ESD)の10年を振り返り、今後のグローバルアクションプログラムの正式発足でありますとか、「あいち・なごや宣言」の採択など、大きな成果が上げられたものと思います。
 一方、その後を受けて、ESDを更にどう進めるのかというのは大きな課題ということで、これについて、この分科会で議論をしていただきたいと考えております。
 今後、学校教育の中においてもESDを広めて深めていくということが大きな課題になろうと思います。教員の研修でありますとか指導法など、多面的な検討が必要かと思っております。
 また、中教審では、現在、学習指導要領についての議論が並行して行われています。そこでは、アクティブ・ラーニングなどESDと関連の深いことも検討はされているということになっております。初等中等教育局とも連携しながら検討を進めていきたいと思っております。
 また、ESDは多様なステークホルダーが連携をすることが大事だということが大きな特徴だと思います。それがまた、昨年の世界会議の成果でもあったと思います。これらをつないで、若者とか地域、NPO、企業などを更に連携を深めていくにはどうしたらいいか、それらも課題かなと思っています。
 一方で、ESDをめぐる課題もまだ残されていると思います。浸透度はまだ限定的ではないかというふうな見方もあります。ユネスコスクールは900校を超えましたけれども、さらにこれを質的にどう向上するかというような課題も残っているかと存じます。
 このESDの特別分科会で、これらを議論していただいて、ESDの充実強化のためのフォローアップ計画を取りまとめていきたいと考えておりますので、忌たんのない御審議のほどをよろしくお願い申し上げます。

【見上座長】
 ありがとうございました。
 続きまして、座長代理につきまして、事務局からまず説明をお願いしたいと思います。

【本村国際統括官補佐】 
 お手元にもお配りしておりますけれども、「ESD特別分科会設置要綱」第三条第4項に基づきまして、座長が座長代理を指名していただくことになっておりますので、見上座長より御指名いただければと思います。

【見上座長】 
 それでは、ルールに従いまして、座長代理を指名させていただきます。
 座長代理は、現在、岡山大学理事・副学長でいらっしゃいます阿部委員にお願いしたいと思います。阿部委員は本日御欠席ですけれども、事前に御快諾いただいております。御了承いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 なお、本日は、佐藤委員が11時頃、所用が重なっておられるということで、途中退席されますが、なるべくそれまでにいろいろな御発言を頂ければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、配付資料の説明をお願いいたします。

【本村国際統括官補佐】 
 それでは、お手元の配付資料ですけれども、資料1といたしまして、ESDの更なる推進に向けた取組(検討項目案)でございます。資料2といたしまして、同じく現状と課題でございます。資料3といたしまして、学校教育におけるESDの課題と今後の方向性。資料4といたしまして、学校現場から見たESDの課題と今後の方向性をお配りしております。
 また、参考といたしまして、1から5までお手元に配付しておりますので、不足している資料がございましたら、事務局までお申し付けください。
 以上でございます。

【見上座長】 
 過不足ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

【本村国際統括官補佐】 
 失礼いたしました。お手元の資料に加えまして、席上配付資料といたしまして、先生方の前にネームプレートの横に置いております資料といたしまして、高校の総合学習の時間の指導要領、また、中学の学習指導要領がございます。この2冊につきましては、大変申し訳ございませんが、会議終了後、回収させていただきますので、そのままお残しいただければと思います。
 加えまして、道徳の小学校の学習指導要領案でございます。
 また、手島委員の八名川小学校のESDの研究と実践というピンク色の冊子もお配りしておりますので、併せて御活用いただければと思います。
 以上でございます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 八名川小学校のものは頂いていっていいんですね。

【本村国際統括官補佐】 
 それは、はい。すみません、この2冊だけ、申し訳ありませんが、お手元に残していただければと思います。

【見上座長】 
 よろしくお願いいたします。
 では、続きまして、早速、議題に入りたいと思いますが、今後のESDの推進方策についてということで、まずは事務局の方から、資料1、2を基に御説明いただきたいと思います。

【本村国際統括官補佐】 
 それでは、お手元の資料1、2を御覧いただければと思います。1の方で、ESDの世界会議フォローアップといたしまして、ESDを広める、ESDを深める、ESDを国際的に浸透・充実させる取組、この三本柱で整理しております各検討項目がございます。これに従いまして、主な検討項目ごとに、現状と課題を整理したものが資料2でございます。この資料2に基づいて説明させていただきます。
 ページをおめくりいただきまして、まず1ページでございますけれども、ユネスコスクール、これまでESDの推進拠点として進めてまいりましたけれども、現状として、このグラフにありますように、近年かなり、ユネスコスクールの数は913校まで増えてまいりましたけれども、課題として、まだまだ地域の偏在、まだまだユネスコスクールがない県も2県ございますし、市町村に偏っているという課題が見られます。
 また、(2)の方でグラフを示しておりますけれども、国内のユネスコスクール同士の交流がまだ53%、海外のユネスコスクールとの交流実績が25%と、交流実績がまだ少ないという課題がございます。
 2ページでございますけれども、ESDに関する教員養成、研修につきましても、ESDの世界会議の成果文書から抜粋したものがそちらに掲載しておりますけれども、この中でも教員養成、研修の重要性が指摘されております。
 一枚おめくりいただきまして3ページでございますけれども、現状として、一部の大学、教員養成大学、教育学部等でESDの関連科目が開講されている例もございます。また、これまでユネスコスクールを中心に、例えば全国大会ですとか、各地域ごとの研修会という形でESDに関する研修は行われてきております。参加条件につきましても、アンケートの結果、73%の学校が参加したと答えておりますけれども、この研修の内容の実効性、有効性が果たしてどういう有効なものなのかという検証の必要性もございます。また、参加しなかったという教員も27%いらっしゃいますが、例えば、旅費が出なかったという理由で参加できなかった方もいらっしゃるというふうに聞いております。
 4ページでございますけれども、ESDの教育効果につきまして、こちらも、例えば日本ユネスコ国内委員会の議論の中、あるいは、各方面からの指摘で、やはりESDをこれまで取り組んできて、どういう教育面での効果があったのか、成果が得られたのか、あと、どうやって評価をしていくのかというところがまだまだ確立されていないのではないかということで、これが今後の課題として挙げられるのではないかと思います。
 また、5ページでございますけれども、ESDの教科横断的な学びということで、これまでも、例えば国立教育政策研究所の事業で研究指定校の事業において、教科間の連携の実践の取組という形で進めておられたり、教材につきましても、環境省、JICA、ユネスコ等が教科横断的な教材開発をやっております。また、教科横断的な指導計画として、ESDカレンダーがユネスコスクール間で普及は着実にしておるという現状はございますけれども、課題としてそういった開発された教材を十分に生かし切れていないということですとか、中学、高校においては、教科の特性が強く、教科横断的な指導計画を立てる同意が得られにくいという現状がございます。
 その他、6ページ以降でございますけれども、それぞれ現状と課題について整理しておりますけれども、時間の関係で省略させていただきます。適宜御参照頂ければと思います。
 事務局からは以上でございます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 まずは、事務局から説明いたしましたが、この資料について何か今聞いておきたいことはございますでしょうか。
 それでは、また議論の中で、この資料も行ったり来たりということでお願いしたいと思います。
 では、続きまして、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、田村委員から御説明いただきたいと思います。「学校教育におけるESDの課題と今後の方向性」ということでお願いできますでしょうか。

【田村委員】 
 田村です。どうぞよろしくお願いします。
 お手元の資料3、机上に御用意いただきました中学校の学習指導要領、それから道徳の学習指導要領案、それから、総合的な学習の時間の指導資料をいつでも出るような状況にしていただきたいと思います。では、資料3を基に説明をさせていただきたいと思います。
 学校教育におけるESDの課題と今後の方向性ということです。着実にESDの取組が広がっているという事実はあるかと思いますが、今後一層の充実に向けて、面的な拡大と質的な向上を目指すことが重要ではないかと考えています。面的な拡大を進めていくためには、教育課程上にどう位置付けるかということが一番ポイントになってくると考えています。
 その上で、教科、総合的な学習の時間、その両者の関係を捉えなければならないわけです。現在、ESDについてどのようになっているかといいますと、この黄色の中学校の学習指導要領を御覧いただきますと、例えば、社会科ですと、44ページのところの上から3行目ぐらいのところに、「持続可能な社会を形成する」と、こんな形で中学校社会科の学習指導要領に書かれていることになります。
 中学校の理科はどうなっているかといいますと、62ページの一番下のところに「持続可能な社会を作ることが」と書かれていて、このような記述が入っています。
 今度は道徳の方を御覧いただければと思いますが、12ページのところに、これは内容の取り扱いになるのですけれども、(6)の上から3行目に、「例えば社会の持続可能な発展などの」と書かれている。様々な形で記述されているという状況の中で、今後どのように充実させていくかが考えられるであろうということです。
 このことが面的な拡大です。
 質的な向上という意味ではより一層プロセスを充実し、その充実したプロセスの中に相互作用のディスカッションなどのインタラクションが入り、リフレクションし続けるということを提案したいと思います。
 では、資料3をめくっていただければと思います。
 国立教育政策研究所の方でここに示されたような七つの能力と、六つの概念を育成し、子供たちに育てていく必要があるとまとめてきました。こういったものについては、今後より精度を高めて分かりやすくしていく必要があると思いますけれども、ここで能力の育成といったコンピテンシー、そして概念といったコンテンツ的なものが明示されていることが、今後の学習指導要領改訂の流れとリンクする形で整理されているということがいえるかと思います。
 このことが実は総合的な学習の時間と非常に関係が深いので、下の方のシートに入っていきたいと思いますけれども、ESDの観点で見たとき日本の教育課程上の強みというのは、総合的な学習の時間が教育課程上にあるということがいえるのではないかと考えています。つまり、各教科の中にESD的な要素を入れることはもちろんですけれども、それぞれの学校が自分の判断の中で、先ほどのESDで示された能力や概念の形成といったものに近付く活動が、総合的な学習の時間で実施しやすい状況になっているということです。
 そこで、総合的な学習の時間と教科との違いをシートを使いながら説明しますと、左側に書いてあるのが教科で、右側が総合的な学習の時間ということになります。グレーの色が付いているところが、ナショナルスタンダードとして国が規定しているところ、つまり、教科は教科目標を決め、学年の目標も定め、内容も定め、評価も国がおよそ示している。しかしながら、具体の学習活動は各学校が判断しながら適切に工夫しています。一方、総合的な学習の時間は、国が目標を定めたものの、どのような学校の目標、つまり、具体的に言うと、先ほどの資質、能力です。そして、何を学ぶかといった内容、そして具体の学習活動や評価も学校に任されているというカリキュラムの特徴があるということです。
 内容、これは何を学ぶかの内容です。一方、資質・能力・態度、これはどのように学ぶかといった能力です。この両者をもって一般的には各学校は単元といったユニット、一連の問題解決のまとまりを作るわけです。
 今度は上の方のシートを御覧いただければと思いますが、この何を学ぶかと、どのように学ぶかを総合的な学習の時間は各学校が定めましょうとしてあるということになります。しかしながら、各学校が定めるといってもなかなか学校の判断は難しいので、このことについて学習指導要領上は例示をしていまして、例えばといったものが示されているということになるわけです。御覧いただいて分かるとおり、ここに示されている例示、例えば、資質・能力・態度であれば、学習方法、自分自身、他社や社会と書きましたが、こういった能力が、実は先ほどのESDで規定している七つの能力と重ねて考えることができるわけです。
 したがって、各学校でESDを充実したいとお考えの学校は、うちの学校は総合的な学習の時間で、先ほど国研が提示しているような能力を意識しながら育成するということが考えられる。一方、何を学ぶかといった内容のところは、先ほどの六つの概念といったものを参考にしながら、うちの学校ではこういった概念形成をしていきたいということを考えながら実践していけるわけです。つまり、総合的な学習の時間のカリキュラムを作っていく構造と、このESDに関する示してきているものが非常にリンクしやすく整理されているので、この辺を学校が理解していただければ、先ほど紹介した日本の教育課程のESDにおける強みといえる総合的な学習の時間において、より一層の充実を図っていくことが考えられるのではないかと思います。これが面的拡大についての説明です。
 もう一つが、質的向上についてでありますが、一番最後のシートを御覧いただければと思います。
 中心的には、能力を育成し、正にESD的な価値を子供たちが獲得していくということになりますと、一方的に教師が教え込むという学習活動ではなくて、子供が自ら学ぶプロセスが充実するような学習が展開されなければいけないということになるかと思います。子供たちが自ら学び、共に学ぶようなプロセスを充実するときに、総合的な学習の時間では、この最終スライドにあるような四つのプロセスをスパイラルに右肩上がりに高まるような学習活動を提案していまして、こういった形で探究的な学習を行っていただいているということです。
 となってきますと、先ほどのようなカリキュラムが整備された上で、さらにこういったイメージを持って各学校がプロセスを充実するような学習活動を展開していく。このプロセスの中に、一人だけの学びではなくて、異なる他者との協働といったものが入る、インタラクションが入ってくるということと、もう一つは、自分の学びを自己内省し見つめるようなリフレクションが位置付けられていくことによって、恐らく充実し、期待する能力の育成や価値観といったものが形成されていくのではないかということが考えられるということです。
 この正にプロセスの充実こそが、今話題になっているアクティブ・ラーニングということとほぼ同じイメージを持っていただいていいのではないかと考えます。今後の学習指導要領改訂と重なる部分が大きいですので、この辺の整理がうまく整っていくと、好ましい方向に向かう可能性があるのではないかということであります。
 早口で申し訳ありません。ここまでで終わらせていただきます。ありがとうございました。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 ただ今の御説明で、何か今聞いておきたいことはございますか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、これも御意見はまた後ほど伺うことにいたしまして、江東区立八名川小学校校長の手島委員から、資料4に基づきまして、「学校現場から見たESDの課題と今後の方向性」ということで、御説明いただければと思います。

【手島委員】 
 おはようございます。江東区立八名川小学校の校長で手島と申します。
 ユネスコスクールの一員としてESDの推進に取り組んでおりますが、仲間のユネスコスクールの校長たちと、これからどういうふうになってしまうのだろうか、また、どういうふうに進めていったらいいのだろうかということについて話をしながらまとめたものが、資料4に書かれている内容です。
 学校にとってESDの価値がどうだったんだろうなということを、実際に現場の学校でどういうふうに感じているかということをまずお話しします。
 いわゆる思考力、判断力、表現力、実践力が高まったとかということも大事なんだけれども、ESDへの取組を通じて子供が問題意識を持って学べるようになってきました。昨日小学校の子供たちは卒業式を迎えて、卒業式の場で一言ずつ自分の決意を話して卒業していきました。その言葉を聞いていますと、世界というものを意識して、自分がそこでどう生きていくのかとか、生き方を考えたり、これからどう学んでいくのかという、中学校での学びについて意識をしたような言葉が大変多く見られるようになりました。これはESDの取組の中で変わってきたことなのです。子供が自分自身の学びですとか、地域への誇りを持つということが大変大事なことだと思います。
 正答のないような問題についていろいろ話し合う中で、少数の意見に対しても大変大切に扱うようになります。そうすると、温かな人間関係ということにもつながってくるので、このESDの学びというのは大変価値があるように思います。
 本校の子供たちが卒業してもう4年経つわけです。今回が5年目の子供なんですが、その4年間の子供たちが中学校へ行ってそれぞれ活躍して、中学校の雰囲気が変わってきているということも実感しました。ESDを日本中の教育にうまく取り入れていくことが大事なのだと思います。
 二つ目ですが、ESDの世界会議に参加させていただいて、世界のいろいろな情報に接することができました。その中から、やはり日本というのは大変恵まれた中でESDを推進する基盤ができているということを実感しました。学習指導要領だけでなく、教育振興基本計画にも二度にわたって書き込まれているわけです。そういうものを踏まえて、学校としてESDに取り組もうとすれば、総合の時間をうまく利用させていただきながら実践することができる。つまり、法令に違反することなくESDを推進することができるということが有り難いことだと思いました。
 それから、それは初等中等局長様と国際統括官様の連名による通達を出していただける、こういうことも幸せなことで、他国には例のない日本のすばらしさだと感じました。
 では、実際に学校現場でESDがどうなのかという話になるのですが、3番のところの下から2行目辺りです。実際に通達はあるんですが、現場にうまく届いていないのです。さらりとサイドテーブルに片付けられてしまうような現状があるわけです。都道府県の教育委員会からは、このESDに積極的に取り組むという姿勢が余り感じられません。そういうところから、やはり区市町村の教育委員会にも同じような状態があるのかなというふうに感じられます。いろいろな校長たちの話を直接聞いてみるのですが、実際にESDという言葉は知っているけれども関心は薄い。自分の学校でやるべきことだというふうな意識か足りない。これが国内の大方の現状なのではないかというふうに思います。
 ユネスコスクールの中にも、もちろんいろいろな課題はありますが、それは3枚目のところにグラフなどで示してあります。もちろんそれはこれから私たちが一生懸命克服していかなければいけない質の充実ということです。
 さて、4番目のところなんですが、各学校で地域に根差したESDの取組が進められることが大事だと思っております。そういう意味で言いますと、校長が意識を持って教育課程の中にESDのことを書き込む、そして経営方針に明確に位置付けるということと、全校体制でそれに取り組むということが大事だと思っています。
 それから、そのためのカリキュラムも大事だと思います。総合がいま一つうまく進まなかったときに、10年前、15年前ぐらいにESDカレンダーというのができていて、色分けした視点で教科・領域をつなげながら、学びを深めていくとか、体験を位置付けていくとかということができていれば、総合の進み具合はもっと違ってきたのではなかろうかというような悔しい思いもしております。ESDカレンダーというものについては、このピンクの冊子の35、6ページ辺りを見ていただくと分かるのですが、5年生の取組で、総合では、カーボンマイナスこどもアクション「地震だ!こんなときどうする!」という単元をいろいろな教科・領域とどうつなげるかという構造図になっているんです。これはイメージ図ですので、教科横断的なイメージを持っていることが大事だなと思います。
  その具体的な実践の進め方については、36ページに書かれています。その一番下には、地域人材、関係機関とのつながりというものも位置付けられています。
 それから、その冊子の一番最初のところに、ペラの一枚の資料が入っています。実はこれ、私が八名川小学校に着任して1年間、ESDカレンダーはこういうものだよとサンプルを見せながら作らせた研究冊子の資料なのです。つまり、中身がすかすか、ほかの教科とも余りつながっていない。でも、このすかすかが大事だったと私は今思っているんです。つまり、教員が実際に自分がこの単元で、この教科・領域とつなげて指導した。つなげて指導したらうまくいったとか、子供の体験をうまく位置付けることができたとかというようなことが実感できたのです。つまり、それは教師の指導観が変わったのです。教科・領域を今までそれぞれの目標に向かって指導して、どれだけできたか評価しておしまいという形ではなくて、それをつなげて深めていくということが学校教育の中でできるようになった、こういう価値があるのではないかと思うんです。
 最後に、では、これをどういうふうにして進めていったらいいのかというお話です。先ほどの5番のところに戻るんですが、まず、各都道府県の教育委員会の方々に、もっとESDについての関心を高めていただくように、これは文部科学省からの御指導、御助言が頂けたらいいのではないかなというふうにせん越ながら思います。
 それから、いろいろな研修が必要なんだろうと思うのです。そして、校長たちにも直接伝える場、例えば、全連小ですとか、校長会等があるわけですので、そういう場で、ESDというのは大事なんだ、これがこの先の日本の教育の方向性をぐっと高めていくことができる重要な取組になるんだというようなことをお伝えいただけると有り難いと思います。
 それから、先ほどの1年目の資料をお見せしたのは、研修会をやるときに、形だけESDカレンダーを作れというような形になりがちだと思ったので、私はあえてこれを持ってきたのです。つまり、カレンダーさえ作ればESDが進んだと言うけれども、学校の現場にとっては、形だけ作らせられて意味が分からないものは、余分な作業が一つ増えただけであります。どこかにあるものをコピーして、名前だけ変えて、自分たちの学校のですというふうにカリキュラムに載せれば、それで事は済むんだと、そういう発想に現場はなりがちなのです。形を整えることよりも、現場の教師の発想が変わったり、指導観が変わっていくような研修の在り方を進めていかなければいけないと思います。ユネスコスクールにとっても、その具体的な中身の充実のところで進めていかないといけないなと思っております。
 長くなってすみません。失礼しました。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 田村委員、手島委員から、御説明を伺いましたけれども、田村委員の方からは、最後のところで、アクティブ・ラーニングと同じというような御説明がございました。私も全くそうだなと。ただ、そのためには、やっぱり質の向上をしなければいけない。授業等、教育の質の向上が大事だと思います。その意味では、国研が出してくださった能力、ESDで育まれる能力の幾つかが具体的な形でお示しいただいていますので、そういうものを使って、子供たちの能力がどう伸びているかということを量りながら、授業改善ができるようになるのかなというふうに感じました。
 また、手島委員の方からは、先生が開発されたカレンダーで、皆さん、それに倣ってやっていらっしゃるんですが、今ここの一枚目の資料にあったように、開発された地域では、こういうシンプルなところからスタートしているんですね。ところが、今、ややもすると、とにかくESDをやるようになった、さあ、始めよう、じゃあ、うちは何をテーマにしようか、じゃあ、ESDカレンダーだ。そうすると、もう一気に総合学習につなげて、全部の教科で取り組もうというような張り切った考えがある。一気にそういうふうに形から入ってしまうと、なかなか本来のESDが進まないというところもあるのかと思います。
 それでは、これから今後のESDの推進方策ということにつきまして、皆様から御意見を伺いたいと思います。
 話の進め方といたしましては、資料1として一枚物を用意していただきました。これはESDのさらなる推進に向けた取組というものでございますが、まず最初は、ESDを広める、それから続いて深める、そして国際的な浸透ということの三点について、まず御意見を頂いた上で、さらに今後のESDにとって大事なところはどこかというような形で御議論いただけると有り難いと思います。
 今、事務局からの説明では、資料によりますと、ユネスコスクールのかずが900校を既に超えたというデータがございますが、その一方で、まだユネスコスクールが1校もないという県もあるようでございますので、その辺りを含めて、もし御意見がございましたら、お願いしたいと思います。
 青森県は、今は全く動きがないんですか。

【本村国際統括官補佐】 
 まだ、そうですね、申請も含めて1件、大学の方から相談はございますけれども、小・中・高からは、まだ問い合わせはございません。

【見上座長】 
 教育委員会とか大学関係者に会うと、ユネスコスクールに加盟しそうだという感触はあるのですが、最後のブレークスルーというか、最後のところが厳しいのかもしれませんね。
 はい、どうぞ。

【北村委員】 
 ユネスコスクール、本当にそういう意味では、宮城教育大、岡山大のように大学がこれまでかなりサポートしたりして数が増えたこともあると思うんですが、やっぱり普通の小・中、高校だともう少しいけるかもしれないんですが、申請することはすごく大変なハードルですので、学校だけでできることではありませんので、もちろんこれまでどおり大学からの支援は大事だと思うんですが、何かもう少しユネスコスクールの在り方を二段階で考えてもいいのかなという、直接ユネスコの方に申請するようなところと同時に、もう少し国内でユネスコスクールが、必ずしもユネスコスクールとして認定されないかもしれないけれども、そういうユネスコの理念や事業に関心を持っている学校と連携するような、これをユネスコスクールとは呼ばないかもしれないですけれども、国内でもう少し学校間で連携すれば、その申請のハードルみたいなところでつまずかないで、実質的にやりたいことをもう少しネットワークを広げながらやれるような、何かそういった柔軟な考え方も今後必要になってくるのではないかなと思いまして、単にユネスコスクールの数を増やせばいいという段階から、今はもう質を高めるところに入ってきていますので、必ずしも英語で書類を作ったりとか、そういったハードルを超えていくというところでつまずかないような方策がこれから考えられる必要があるのかなというふうに思っています。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 500校を超えたところでどうするかというところで、前に御意見が出たかと思いますが、事務局としては、今、このままとりあえずはということでしょうか。パリのオフィスの方も日本からの申請がどんどん増えているので、手いっぱいだとかというお話もお聞きしたんですが。

【籾井国際戦略企画官】 
 数については、特段上限を設けて、これ以上は作りませんという性質のものではないのかなとは思っています。
 一方で、数だけが増えていけばいいというものではないので、ユネスコスクールの中の実質的な活動をどう担保するかということとともに、今までユネスコスクールを推進拠点としてESDを進めてきたというところが、どうもユネスコスクールだけがESDをやっていればいいというふうにも誤解されがちなので、そうではなく、全ての学校でESDをやってもらうことが重要なんだということをどう伝えて、実際に現場で取り組んでいただくかというのが、正にこれから御議論いただきたい課題の一つなのかなというふうに考えております。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 一つは、ユネスコスクールの数……。
 重委員、手が挙がりました。どうぞ。

【重委員】 
 どうぞおっしゃってから。

【見上座長】 
 ユネスコスクールの数を増やすということがESDの拡大につながるということもありましたけれども、その一方で、実際にはESDをやっておられて、ユネスコスクールに入らなくても活動したいという学校も随分ありますので、そういった観点ももう一つ必要かもしれませんね。
 重委員、どうぞ。

【重委員】 
 すみません。先ほど、手島先生がおっしゃった指導者の指導観が変わるという、これがすごく大事で、ユネスコスクールそのものは確かに増えたんですけれども、私たち民の立場で拝見していますと、名前だけじゃないのというようなことが、大変失礼ですけれども多いんですね。先生方がそこを御理解いただくためのプロセスを、今までの教育観とは違いますから、そこを丁寧に、国も、それから先生方の研修などでも丁寧にやらない限り変わらないというふうに私は思います。

【北村委員】
 同感です。

【見上座長】 
 なるほどね。ありがとうございます。
 どうぞ、佐藤委員。

【佐藤委員】 
 すみません、私、50分に失礼させていただきたいので、少し全体的なお話をさせていただければと思います。

【見上座長】 
 はい、お願いいたします。

【佐藤委員】 
 私、実は今、目白大学に勤めさせていただいているんですけれども、以前は東京学芸大学で長いこと国際理解教育に取り組んでまいりました。その経験を踏まえますと、やはり今の議論にも関わってくるんですけれども、ユネスコスクールイコールESDではない、ESDをどう進めるかということをやっぱり重点的に考えた方がいいのではないか。そうすると、これまでのユネスコが進めてきた国際教育、その実践というのも日本の小・中・高等学校の中でかなり蓄積をされているわけで、それをどういうふうにして成果と課題を考えていくのかというところが、やっぱり非常に大きな問題だろうと思うんです。
 最初に、三つほどあると思うんですけれども、一つは、これまでのユネスコを中心にした国際教育、国際理解教育というのは、どうしても学校で入っていくときに何をやるか、内容が先行してしまうんですね。そうすると、内容が先行してしまうと、どうしても形骸化、形式化してしまうという問題がずっと続いてきているんですね。
 今、田村委員の方からお話がありましたけれども、今回、概念形成であるとか、資質・能力というものが明確になっていく。そうすると、ここで挙げられている資質・能力というのは、実は国際教育の中で挙げられている資質・能力とかなり一貫性もあるんですね。概念形成という概念を基にして単元を構成していくというのは、実はIBの発想と極めて似ているんですね。PYPなんて、正しく幾つかの概念があって、その概念を基にして、その教科の内容を構成していくということをやっているわけですから、ある意味では、非常にグローバルな視点というふうにいえるのではないか。そうすると、その概念形成であるとか、資質・能力、つまり、狙いをはっきりさせるということがまず第一の大きな……。そこが実は、今まで抽象度が高過ぎたんだろうと思うんです。これをどういうふうにして、学校の現場に下ろしていくときに、この資質・能力というようなものを具体化できるかというところが、実践を深めていく上での大きな一つの論点なのではないかというのが一つ目です。
 二つ目は、やはり今議論になっていますように、教員研修、つまり、学校を中心に、学校を基礎にしたカリキュラム開発、これほど実は今まで日本の学校の中で極めて難しいんですね。つまり、今までは、やはり指導要領があって、内容があるわけですから、目標があって、内容があって、評価がある。しかし、その学校を中心にしてやるということは非常に論理的に、理念的には分かるんだけれども、これは一体どうしたらいいのか。そうすると、さっき言ったカレンダーを作って終わりになってしまうということだろうと思います。
 ですから、教員の資質、こういうものを担う教員の研修の在り方というものを、かなり根本から考えないと、なかなか伝わっていかない。総合学習は、最初はやはり失敗したと言われるのは、多分そこだろうと思うんです。ですから、改めて教員の研修というものをどう進めたらいいのか、しかも、学校を中心にしたカリキュラム開発というものを考えていくときの研修の在り方。どうしても授業の方法であるとか、教材開発というところに行ってしまうんですけれども、もちろんそれも必要だろうと思います。ただ、それ以上に、学校を中心にしたカリキュラム開発を行っていく上での研修というものをどう考えたらいいのか。
 もう一つ、それを考えていく上で、公立学校の宿命で、それをずっとやってきた先生が異動になってしまうと、その学校が終わってしまうんですね。これの継続性をどう進めたらいいのかということを、もう少し広めていくためには必要だろうというふうに思います。
 そして三つ目に、やはり今も、今日出ておりますけれども、NPO、NGOなども含めた地域との連携が不可欠ですよね。私、関心を持ってユネスコの共同学校という戦後間もなくの頃のユネスコの協同学校の川崎などの例を幾つか調べたことがあるんですけれども、非常に地域の様々なところと結び付いて、地域をいかに改革するのかという視点が、教育に対する戦後教育の夢みたいなものがありましたね。つまり、社会を作り替えていく、地域を作り替えていくという、そのユネスコのそういう理念が非常に強く表れているんですね、いろいろな資料を見ていきますと。そういうように、ただの連携ではなくて、地域をいかに作り替えていくのか、そういうような視点をこの学校と、学校だけの力ではできませんので、その辺のところをどういうふうにして連携を持たせていくのか、あるいは、連携という言葉がいいのか、両方Win-Winの関係をどう作っていくのかということを、やっぱり学校的視点だけでいいのかと言われると、必ずしもそうでもないような気もしますので、そういうことをNPO、NGOとの連携、そういうところを改めて議論をする必要があるのかというようなことを今、いろいろお話を伺って感じた次第でございます。
 すみません、早口でお話しをしてしまいますけれども、また次回以降に、少しまた議論させていただければと思います。ありがとうございます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。大変重要な指摘を何点か頂いたと思います。
 どうぞ、後藤委員、お願いします。

【後藤委員】 
 よろしくお願いいたします。
 私は、先ほどの田村委員の御説明にもあった学校におけるESDの事務局をやらせていただきました。また、昨年のユネスコの世界会議において、ESDコンセプトを話し合うワークショップの事務局もやらせていただきました。先ほど、佐藤委員がお話しされた、「学校におけるという部分だけではない広がりをどういうふうに作っていくか」ということについて、世界大会の担当ワークショップの議論を踏まえてお話をさせていただきます。ESDコンセプトワークショップには世界各国のいろいろな立場の方が参加者としていらっしゃいました。ワークショップにおけるGAPについても話し合いの中で、国研が作成した「ESDの概念や育成したい能力」というものを提示し、どのように受け止められるか、参加者から御意見をいただき、いわばレビューをいたしました。参加者からは「学校におけるという部分だけではない」一般的に社会においても、同様に、国研が提示したESDの概念や能力で結び付けることができるだろうという意見を頂きました。
 国研においても議論も踏まえつつ、ESDのフォローアップをどのように取り組んでいくかについて内部で協議をしました。そこで、まずESDの理解を深めるためにリーフレットを作成し、田村委員のお言葉を借れば、「面的、それから質的な拡大」というものを目指すこととしております。本日、本来ならば、配布できればよかったのですが、間に合いませんでしたので、次の会に見ていただけると存じます。国際統括官付の皆様とも連絡を取らせていただき作成しましたが、このリーフレットで示したかったことは、ESDを通じた「質的拡大、向上」のためには、子供たちの資質・能力、さらには先生方の資質・能力を向上していくことが重要であること、そのためのさらに視点は何かというと、「何のためにやるのか」という目的観こそが重要で、その柱がなくなってしまうと、どうしても形式的、形骸化していくのではないかと感じているところであります。そこで、作成したリーフレットには、「何のためにやるのか」といったところに魂を入れたつもりですので、それが、うまく伝わっていけば良いなという想いでおります。今後、御覧いただいて、御意見を賜ることができればと存じます。
 先ほど出されましたユネスコスクールの関わりについても、リーフレットの中の最後のページのQ&A、Q3のAに、「ESDの推進拠点であるユネスコスクールに加盟すると、国内外のユネスコスクールとの交流の機会や、様々な先進的な取組事例を学ぶ機会が増えるでしょう」ということを入れ込んで、広がりを期待しているところでございます。これら、さらに御意見を頂ければと思います。
 よろしくお願いします。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 ほかに御意見ございませんでしょうか。
 どうぞ、髙橋委員。

【髙橋委員】 
 ESDを広める基盤としての教員養成についてお話をさせていただければと思います。
 岡山大学で平成21年度、文科省の大学教育推進プログラム「総合大学が担う特色ある教員養成の質保証」という取組をいたしました。そのときに、環境の岡山大学として、岡山大学で教員免許を取る教員には、必ずESDの理念を学ばせるという仕組みを構築しまして、「ESDの理念を持ち、四つの力で構成される教育実践力をバランス良く身に付けた反省的で創造的な教員」という全学教職課程の教員像を示しました。そのときに、教職の必修科目の教職論の教科書を作成しまして、必ずESDを入れることにしました。第4章「未来に向かう学校教員の社会的使命-ESDの観点から」ということで、桑原先生、川田先生が書いております。そして、その文章のところに、「ESDはこれまでの教育と異なる全く新しい取組ではない。これまでの教育実践を持続可能な社会の構築との関わりの中で捉え直し、持続可能な社会の構築を意識化しながらつなぎ合わせていく取組である。正に教員は持続可能な未来を作る最前線に立っているのである」という文章です。
必ず教職を取る者はこれを学ぶこと、もちろん、実践力を保証するまでのものはありませんが、ESDを広める基盤として、教員養成教育において少なくともESDの考え方を入れるということも大切だと思います。
 

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 特に私も感じているんですが、教員養成の段階で、教師の能力をよほど伸ばしておかないといけないと思います。先ほど、手島先生がおっしゃったように、総合的学習の時間に、その能力が教員に備わっていれば、もっともっと総合的な学習の時間の効果は上がったのだろうという気もいたします。そういう意味では、今でも遅くないので、是非また頑張っていきたい、いかなければいけないだろうと思います。
  どうぞ、手島委員。

【手島委員】 
 度々で失礼します。
 先ほどのこの国立教育政策研究所でおまとめいただいた概念の形成ですとか、能力・態度の育成ということは、これは本当に大事なことだと思って、分かりやすくまとめていただいてパンフレットにしていただいたのは、全国のユネスコスクールで大変参考にさせていただいているんです。
 ただ、私たちが単元を構成するときに、例えば、批判的に思考し、判断する力をどう育てるかという形で単元を作ったりはしないので、この教材とこの教材はこういう視点でつながっているんだからというような、さっきのESDカレンダーのような形でつなげていくのです。そういう環境の視点ですとか、国際理解あるいは文化理解の視点ですとか、あるいは人権の視点ですとかというような、そういうところからつないでいくようになるのです。ですから、これをそのまま単元構成だとかに持ち込むわけにはいかなかったんですね。そこでやはり苦労したんです。それのための単元構成をするような学校が出てきてしまったりしているのも現状であったんです。ですから、それをいかにうまく形にしていくかというところは、私どもの苦しんだところなのです。
 一つの案としては、さっきのこのピンクの冊子の81ページ辺りを見ていただくと、今、私どもが考えているのは、こういう形でというのがあるのですが、つまり、子供たちが勉強を進めていくときには、学習過程があるわけですね。そこの学習過程のどの段階で、例えば表の一番左側のところですけれども、問題を見いだす力、そこで批判的に思考する力だとか、コミュニケーション、あるいは多面的・総合的に考えるとか、未来を予測して計画を立てるとかというような力が入ってくるのかなというふうに考えたんです。
 これでもまだ不十分だとは思うんですけれども、つまり、私たちが単元を構成するときにはどうするのかというと、具体的には、これで言うと、その先の85、86ページのような単元展開を考えていくんですね。その場面の中に、どの場面で、どんな活動を入れながら、どんな力を育てていくのかというのを具体化していかない限り、それを授業の形に表すことができないと思うんです。そういうことがESDを実際の学校現場に根付かせることにとても大事なことのように思うんです。
 研修の重要性について先ほどからお話があるのはそのとおりで、教員の研修もそうだし、学生さんたちの研修も重要なんですが、今のような現場を分かっていて、そこに生かせるような指導ができる人が少しでも多く育っていってほしいなと思っているところです。
 以上です。

【見上座長】 
 ありがとうございました。具体的なお話で。
 清原委員、どうぞ。

【清原委員】 
 実際、広めるというときに、それを広めようとしていろいろなところで動いてくれているんですが、例えば、各学校に『Science Window』という雑誌が、これはJST(科学技術振興機構)で作っているんですが、そこで「つなぐ」というテーマで冊子を作ったときに、そこに当然、ESDというものが入るだろうということで編集担当が計画してくれたんですが、じゃあ、ESDと言ったときに概念が非常に広過ぎるので、どう捉えたらいいか、編集長自体が迷っていた。それで私のところに相談に来て、具体的な意味はどうなんでしょうかということだったんですが、いろいろな目指しているところの位置付け、人権から全ていろいろな視点が入っていますけれども、じゃあ、学校教育の中でそれがその要素として行われていないかというと、いや、それは行われていますよねと言ったら納得してくださいました。問題は、それらを、ただそれが単独で存在するのではなくて、いかにつなぐという意識、その冊子のテーマのように、つなぐという意識をいかに学校が持つかということが重要でしょうということを話しまして、ふだん取り組まれていることを少しでもそういう視点で見直すだけでもESDに一歩近付くんですよということで、ちょっとメッセージは私からも出させてもらったんですが、なかなかその辺が意外と伝わっていないなというのを感じます。
 伝わりにくいなというあともう一つは、クリティカル・シンキングを批判的思考とか、悲観的にうんぬんかんぬんという表現をするんですが、これが別のところでちょっと、それだけで1時間ぐらい議論したことがあるんですが、そもそもあれは直訳であって、日本人にフィットする訳ではないだろうと。だから、むしろここの手島先生のところで言うと、多面的・総合的に考え、それをもっといろいろな視点から深く考えていこうとか、そういうことなんだろうけれども、批判的というふうに言ってしまうと、どうも日本人はそこで引いてしまうのではないかということがあるので、何かその辺りもちょっと見直すということは、広める意味では重要かなというのを感じております。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 広めるという観点で、皆さんから活発な御意見を頂きました。一つは、ユネスコスクールは100校近くまで非常に順調に増えてはきており、ユネスコスクールに入って、さらにESDを進めようという学校が自然といっぱい増えてくると思います。本日の御議論では、まずはESDを学校で受け入れてもらうような形にすることが大事ではないかという御意見が多かったかと思います。
 その中で特に狙いをはっきりさせる、何のためにやるかということをはっきりさせる、そういったことが、結果的には、今、清原委員もおっしゃったように、学校の理解、さらには、教育委員会の理解が広がって、学習指導要領に素直に入っていくような形、あるいは、入ったとして、素直にできるような形になっていくのだろうというふうに思います。
 ということで、とにかくESDの問題点は幾つかあるけれども、今御指摘いただいたような観点をクリアしながら努力すれば広がるというような感触というか、私としては受け取らせていただきました。
 特に重要な点は、学校だけでなくて、地域に広げるということが大事ではないかというようなこともあろうかと思います。地域が受け入れてくれれば、自然と学校も担当の先生が交代しても、素直に継続しやすいということになるのかもしれません。
 次に深めるというところで御意見を頂戴できればと思います。いかがでしょうか、何でも結構でございます。
 先ほどの広めるというところでも、質を高めるということに関連した御発言がございましたが。
 はい、どうぞ。

【林原委員】 
 今日出席の皆さんは、教育の専門家の方ばかりで、私だけが素人でございまして、発言するのもおこがましく感じていますけれども、せっかくメンバーに入れていただきましたので、今日のテーマに直接関係するかどうか分かりませんし、あるいは、とんちんかんなことを申し上げるかもしれないんですが、申し上げたいと思います。
 
【見上座長】 
 お願いいたします。

【林原委員】 
 実は、このユネスコ国内委員に御指名いただく前は、ESDということは全く存じませんで、ユネスコ国内委員になりまして、初めてESDというものを教えていただきました。ESDは日本の発案だそうですけれども、大変すばらしい考え方だなということで非常に感心いたしております。
 なぜかといいますと、デベロップメントというのはどこでも行うわけですよね。例えば、私は今、実業界におりますけれども、企業も成長しないといけないということを誰でも言うのですが、大事なのはやっぱりサステナビリティでありまして、企業だってただ成長すればいいということではなくて、サステナブルに成長しなければいけない。つまり、非常に大きな収益を上げるけれども、その次の年に大幅赤字になって企業が危機に陥るということは避けなければいけないわけです。教育でも確かにサステナビリティというのは非常に大事だということで、このESDというものを中心テーマにされたことは、非常に高い見識だと思っております。
 もう一つ、ESDが指導要領に入ったということを伺ったのですけれども、先ほど拝聴しますと、配布された資料の中の何ページかに持続可能という言葉が入っていることだけであると、それだと非常にまだパンチ力がないのではないかと思います。

【見上座長】 
 そうですね。

【林原委員】 
 この厚い資料の中のほんの一部に持続可能という言葉が入っていても、なかなか現場で理解していただくのは厳しいのではないかなと感じております。
 教育について素人ですけれども、例えば、教科というのは、私が小学校時代とか中学校時代とほとんど変わっていないように思います。大学も同様だと思います。その中でESDという新しい概念を教育課程に入れるというのは、そう簡単ではない。教育だけではなく、企業なども同様だと思うんですけれども、いわゆるバーチカルなラインというのは大体確立しているのですけれども、それをホリゾンタルに見るものというのは、必ずしも実践されていないように思います。学問についても、大学は学部ごとに専門領域が決められていますが、今求められているのは、いわゆるホリゾンタルな学際的な研究が大事であるということです。ホリゾンタルに見るとなると、正に多面的に見ることになりますが、それは非常に大事でありますけれども、一方では学校では科目ごとに分かれており、あるものについては理科だし、あるものは社会科だし、あるものは国語かもしれない。それをどうやってホリゾンタルに推進するかというのは、すごく難しいと思います。非常に概念が広くなってしまいます。
 それから思いますのは、これもちょっと的が外れているかもしれませんけれども、各学校なり、各地域なり、教育委員会というお話もございましたけれども、創意工夫でフォーカスするところを地域の特性に合わせて、ESDを推進することが効果的ではないかというように感じています。
 例えば、貴重な里山を持っているような地域では、緑の維持のためのESDを推進するとか、あるいは、工場が多い地域では、環境問題にフォーカスするとか、都会では、私は特にそう思うんですけれども、都市景観をよくするためのESDとか、そういった地域特性を生かしたESDが効果的でないかと思います。今たまたま世界では、特に中東情勢もあり、いわゆる多様性というものがもっと認めようということが主張されていることと合致するのではないかと思います。
 ESDにはいろいろなテーマが含まれるわけですから、各地域で、各々の学校、各々の先生の創意工夫で身近のある具体的なテーマを課題として選び、そのテーマについてホリゾンタルにアプローチすれば、ユネスコスクールであろうと、ユネスコスクール外であろうとも、ESDがもっともっと発展するのではないかというふうに感じました。ちょっと見当外れだったかもしれないんですけれども、私の意見です。

【見上座長】 
 ありがとうございます。大変大事なポイントだと思います。ホリゾンタルに見るというのは、私なども大学にいて、大学の先生は苦手なんですね。自分の御専門のところはしっかり抱えていらっしゃるんですけれども、ちょっとでも違うと、全部が全部ではございませんが、もう受け入れにくいところがあるんです。ですから、そういう学校教育、あるいは子供の頃からそういったホリゾンタルな考え方、見方というものを一つはこのESDを通じて養成できるのではないかというのは、本当にうなずけるし、御指摘のとおりだと思います。
 また、地域特性に合わせるというのは、これはまた本当に自分たちの生活、大人も意見も聞けるし、地域も巻き込める、それから地域ごとにいろいろな課題が違いますので、オリジナルのものを出していけるという点でも、とてもいいんじゃないか、大事なんじゃないかなというふうに思いました。
 重委員、お願いいたします。

【重委員】 
 ESDを深めるというところで、先ほどからの広めるというところとかなりリンクさせないといけないというのがありますけれども、一番大事なのは、つないでいく、深めていく力量がどの辺にあるかということがとても大事で、ユネスコスクールの活動でも、民間のいろいろな活動団体でもそうだと思いますが、例えば、ガールスカウトの活動プログラムの国際理解教育だったり、環境教育だったり、ESD的な活動の説明をすると、私たち、やってきたことよね、今もやっているわよね、大丈夫よね、ESDのことをやっているわよねと、これで終わってしまうんです。ですから、それをつなげて、深めていくための力を付ける人材養成が必要ではないかなというふうに思います。
ESD-Jといたしましては、今、ESDコーディネーターの養成というカリキュラムや映像教材の作成を基に、研修を行っているのですが、ESDコーディネーターとして地域ごとの課題を探していく、その地域の特性に合わせて課題解決の手法を見付けていくということが、なかなか皆さん、できにくい部分。表面に現れている問題の解決のための活動はたやすいので、それで一丁上がりになりがちになってしまうのです。その課題が、どこへつながっていくのかという背景、起因があって、どういう活動をすれば持続可能になっていくのかの問題の根本原因への意識が薄いとまた同じような問題・課題が出てきて、その対処を繰り返す…という事になっていることが多々あります。つながりを深めていくために、ESDコーデネーター養成、コンソーシアムの人材育成等が急務かと思われます。

【見上座長】 
 はい、どうぞ。手島先生。

【手島委員】 
 先ほどの林原委員のホリゾンタルに見るということは、現場の校長たちにとって一番苦手とするところでありまして、例えば私は社会科の専門教科を持っているんです、私は体育の専門教科を持っているんです、社会科には社会科の王道があります、こういうふうに豪語するわけです。どうしてもそこからはみ出ようとしない。ほかの教科のことはその専門がやればいい、こういう人の集まりなわけなんです。その人たちが自分の教科の枠を超えてやることの必要性をまず理解することが大事なのだろうというふうに思うんです。そこがうまくいかないと、総合は総合として取り組む人がいなくなってしまう、なかなか育ちにくいところなんだろうと。それはいろいろな教科の専門性を持っていていいんだけれども、それを総合的につないでいく、そういう視点を持った校長たちが育たない限りだめなんだということだなと感じます。
 それからもう一つは、重先生がおっしゃったコーディネーターの話なんですが、コーディネーターの方たちが、いろいろな企業ですとか、NPOですとかの方が、学校に授業に協力してくださるんです。そのときに一番問題になるのは、学年ごとの学習指導要領の内容を十分に把握していないということと、それから、その単元を通じた学習過程を理解していない人が大半なんです。例えば問題意識を持たせたいんだという授業をするのか、知識をここで専門性を持って与えたいのかというのか、その区別がうまくついていないので、全部を教えて、感想を言わせて、分かったねなんて言って帰っていくわけです。そういうのは学習過程を壊して、子供の学びを奪ってしまうので、なかなか難しい問題だと思うんです。
 ですから、コーディネーターの方たちに、教育の専門性というものもやはりある程度身に付けていただく必要があるのだろうなと思います。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 岡本委員、お願いいたします。

【岡本委員】 
 失礼します。つながりという言葉が、先ほどからずっと出てきています。私も学校でのESDの研修などに呼ばれて行くことが多いのですが、やはりまずは、ESDという言葉自体が、先ほどのESDを広めるというところにも関係しますが、なかなか学校の先生方に受け入れられにくいのが現状です。そのときに一番簡単には、ESDは「つながり教育」ですよという言い方をさせていただいています。別にESDが言われる前から、また今、手島委員もおっしゃったように、教科間の連携をしていきましょうとか、教員から子供たちへの一方向的な教授ではなくて、双方向的、あるいは子供同士のつながり、それから学校外の人とのつながりとか、そういうこともどんどんやっていきましょうとか、そういうことを言われてきていたんですけれども、なかなかそれが浸透してこなかったというのも現実だと思います。そういう意味では、ESDがこれだけ言われ出したということは、そこに一つメスを入れるいい機会になるのではないかと私は捉えています。
 先ほど来、国研で提案した六つの構成概念、七つの能力・態度というものが紹介されているのですが、実はもう一つ、「三つのつながり」というのも併せて提案されています。これは今述べたように、国語は国語、英語は英語、理科は理科とかというのではなくて、もっと「教材のつながり」をどんどん図りながら学習活動を進めていきましょうという視点を与えています。それから、先ほど言いましたように、いろいろな「人のつながり」を重視しましょうということも与えています。それから、もう一つの三つ目のつながりは、「能力・態度のつながり」と言われているのですが、要するに、関心を持ったり、知識を獲得したりするだけではなく、いろいろな能力を結び付け、それをさらに実践や行動につなげていきましょうということです。そうでないと、ESDも絵に描いた餅になってしまうということです。ですから、こういういろいろなものをどんどんつなげていくというのが根底にあるのがESDだと思っています。
 そういう意味では、この国研の枠組みというのは学校の先生方にとても分かりやすい、いい資料になってきているのではないかなと思います。
 ただ、今一つ、これも先ほど手島委員がおっしゃったのですが、まだ具体性に欠けるところがありますので、今後もっと実践事例などを収集して広めていく必要があり、これがESDを深めることにつながると思います。
 以前、環境教育の推進が言われ始めたとき、学習指導要領にはなかったので、当時の文部省が環境教育指導資料というものを作りました。小学校編、中・高校編、実践編の3種類がありました。それらが発行されたときは、それらを受けて、地方の教育委員会が地域レベルの環境教育の指導資料をいっぱい作ったんですね。それで結構、環境教育が根付いてきたというふうに思っています。
 環境教育については、また改訂版がどんどん出てきていますけれども、ESDについても、国研のこのリーフレットや研究報告書はあるんですけれども、具体的な実践事例を集めたような指導資料的なものがまだ少ないですし、特にこれも先ほど林原委員がおっしゃったように、地域独特のいろいろな課題で展開できるのがESDですから、いろいろな地域のいろいろな事例を集めて、それを全国に発信できるようなことができたらいいのではないかと思います。これはESDを広めることともつながると思うんですが。
 それから最後にもう一点、先ほど、コーディネーターという話もあったんですけれども、学校外の方が学校に入ってきても、なかなかうまく機能しないということもやはりあると思います。これは、先ほどの「人のつながり」の一つの課題でもあります。これについては、今日、環境省さんも来られていますけれども、環境省の方でカリキュラムデザイン研修というのを数年前からやっておられて、これは学校の先生と学校外の人が一緒になって学校のカリキュラムを作るという研修なんですね。私も数度、オブザーバーで参加させていただいたんですが、非常にいい研修です。今まで学校の先生の研修と言ったら、学校の先生だけで教育委員会とか教育センターだけでやっていて、学校教育の中だけでやっているんですが、学校外の社会教育をやっている方々と一緒になって学校教育を作っていくことも大切だと思います。そうすると、今度は、社会教育をやっている方も、こんなふうに学校のカリキュラムはできていたのか、こんな能力・態度が必要だったのかとか、逆に社会教育をやっている方の研修にもなっていくのです。これも、つながりだと思うんですけれども、こういった研修を深めていくことが大切なのかなと思っています。
 以上です。
 
【見上座長】 
 ありがとうございました。
 今、つながりが大事だという御指摘ですけれども、私自身、もともと環境教育に関わったので、この環境教育の最初の指針というのは、すごく良くできているなと思っております。今御指摘のように、地方にもすぐ広がったんだと思います。 
 では、北村委員。

【北村委員】 
 ありがとうございます。
 今までもう既に委員の先生方がおっしゃっている、つなげるというところで、小・中・高だけでなく大学を考えたときに、今非常に言われるのがトランスディシプリナリーという、超学際とかと訳されたりしますが、今まで学校領域の中で学際的ということは言われますが、結局は専門家たちだけが集まって議論してしまう、研究してしまう。そうではなくて、トランスする、トランスバースに、きちんと市民であるとか社会に生きている人々と共に研究をしたりすることが大事だというのが、大学の学問でも非常に今言われるようになっている中で、トランスディシプリナリーで非常に大事なのは、出発点が市民感覚とか、そこに生きている人たちが直面している問題、関心、こういうところから出発するというのが大事ですので、先ほど御指摘が幾つかあったような外の方々か入ってくるのがすごく大事だと思うのは、その人たちこそが問題を知っている、課題を知っているので、それを学校にうまく持ってきてもらうということが大事だと思いますので、これは小・中・高だけではなくて大学も含めて教育全体で、このトランスディシプリナリーなアプローチというのは、ESDが正に目指しているところと軌を一にしているのだなということを感じております。それがまず一つ目のコメントです。
 二つ目が、教育効果ということで、今後深めていくに当たって、どうしても学力との関係の問題が出てくると思うんですけれども、どのようにESDが、いわゆる広い意味での学力の向上につながるのかということで、これはOECDの方でも21世紀型学力等でノンコグニティブなものを含めて広く学力を捉えましょうという話をしているわけですので、ESDの方向性というのは広く国際的に認められていると思うのですが、やはりなかなか評価の機軸となる指標だとかが明示化されていないところがありますので、これはもう日本からむしろ積極的に発信する、次の国際にもつながってしまいますが、全国学力調査等やっていますので、ああいう中でB問題等を含めて、こういうところでESDの成果を見られるのではないかというところをもっと発信していくことが、それは対外的、国際的にもそうなんですけれども、国内的にも多くの学校や保護者、教育関係者たちがESDにもう少し理解を深める上では大事ではないかなと思っています。
 ただ、その中で気を付けなければいけないことが、やはりより創造的な学びをしようとなったときに、地域間格差とか、学校間格差がむしろ助長される恐れもあるのではないかなと思うんです。つまり、こういったESD的な学びがやりやすい地域とか、家庭環境とか、そういったものでかえってこういった学びを進めれば進めるほど格差を広げる可能性もないわけではないと思います。その意味では、やはり学校が基盤になって、日本中の学校がきちんとこういった学びを進めていくことで、格差の問題も起こらないような体制を作っていくことが大事だと思いますので、ユネスコスクールだけではなく、日本中の学校がこういった学びを進める、それがやはりすごく大事なのかなと思っております。
 以上です。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 田村委員、どうぞ。

【田村委員】 
 実は僕が担当しているのは総合的な学習の時間ですけれども、過去において少し滞った時期があったものの、ここに来てかなり改善されてきて充実してきているという状況です。そこでは、地域の特色を生かしたものを取り上げながら、現代社会の横断的な課題を扱うということですので、今ほど林原委員ですとか、皆さんの御指摘のようなところが実践しやすくなってきているという状況だと思います。
 では、どのような問題が生じたかというと、今の御指摘のように、学校にカリキュラムを任せるので、結果的に差が出てしまう。非常にいいものはあるけれども、そうでないところも出てくるということでした。そこで上は伸びるけれども、下も一定のレベルを担保しようということで、学習指導要領の改訂等を進めてきたところですが、先ほどから繰り返しますが、そういったものが日本はナショナルスタンダードとして明確に、小・中・高等学校に教育課程上、時間が担保されているということが強みで、ESD的なチャレンジがしやすいものが明確に教育課程上、つまり、学校で言えば子供の時間表にあるということが強みであると思っています。
 最近はどういう傾向が出ているかといいますと、総合的な学習の時間で、先ほどのプロセスの探究的に学ぶことをしていくと、学力・学習状況調査のA問題とB問題と見事に相関が出てきていて、探究的な学習を意識している子供ほどスコアが高い。しかも、A問題、B問題でいうと、いわゆるB問題の活用型がスコアが高いという結果がきれいに出てきているという状況です。
 そうなってきますと、それをより確かに、質を高めるためにしていかなければいけないこととして、これまでの話題も踏まえて三つほど確認したいなと思います。一つ目は、ユネスコスクールに登録をしていないけれども、ESDとしては充実しているという学校は、もう全国にかなりあるかと思います。現在の学習指導要領の教育課程の基準を踏まえてやっているわけですが、その結果、ESD的になっているという学校さんの場合は、ESDが提言している能力や概念といったものと、学習指導要領の基準とがどうつながっているか、クリアに見せてあげないと、理解が進まないかなと考えます。これが一つ目であります。
 二つ目は、各学校がカリキュラムを作るとなると、その方法を見せていかなければいけないということになるかと思います。
 三つ目が、カリキュラムだけを作っても、具体の実践に至るには、またそこに一つ壁がありますので、今度は、学習活動がイメージできるようなものも提供してあげなければいけない。
 つまり、一つ目が教育課程の基準とESDの接点を明確にする。二つ目がカリキュラムがデザインできるようなものを提供する。そして、三つ目が具体の学習活動がイメージできるものを用意するということが行われていくと、今後、質が高まり広がるのかなと。
 その一つのサンプルとして、今日御協議いただいたこの総合的な学習の時間の指導資料は結構参考になるかと思いまして、例えば、開いていただいた72ページのところからが具体的なカリキュラムをどうデザインするかといったものが紹介されているわけです。これはESDに特化をしていませんけれども、先ほどの能力をここに当てはめていけば、当然、ESD的になっていくということです。カリキュラムを作るということは、どうしても国内的にはまだ十分行われていなかったわけです。つまり、日本の学校はかなり教科書が優れて用意されているがゆえに、余りオリジナルなカリキュラムをデザインしなくてよかったわけですが、この総合的な学習の時間が入り、状況が変わりつつあるということは、ESDを広げ深めることにも参考になるのではないかと思います。
 
【見上座長】 
 ありがとうございます。
 総合学習、あるいはESDによって今まで一部の教科だけでカリキュラムを組んでやっていた学校の活動から一歩進んで、ホリゾンタルに見るような、そういう枠ができたということだろうと思います。ですから、今はとっても大事な時期で、質を少しでも高めるということは、日本の教育にとってもすごく大事なことだろうと思います。今御指摘のように、B問題、確かに力が上がっているという非常に心強いお答えがありましたし、私、地元で、例えば気仙沼市などに聞いてみますと、小学校のうちに総合的な学習の時間、ESDをやると、子供たちがいろいろな意味で元気になる。その場ですぐに学力がどう伸びたというのでは、ないんだそうですが、その子供たちが中学校へ行ったときに、自主的に何かやるとか、発言が出てくるとか、中学生が変わったという変化が出ていると聞きました。ただ、この子がこう変わりましたという具体的なところまではまだ蓄積がないので、残念ながらうまく説明できないようです。
 それから、ちょっと蛇足になってしまうかもしれませんが、先日、3月11日に、私、中央教育審議会の教育課程の先生方の前で事例を報告させていただいた資料がございます。参考3の13ページを見ていただければと思います。スライドの番号で13でございます。ここに下のところに、ESDコンピテンシーの獲得というところがございまして、これは本学の先生方が、気仙沼市全体の幼稚園から高校までの全学校がESD、ユネスコスクールに入っているものですから、そこを調査させていただいて、その結果がこのスライド番号13の図なんです。
 それで、私、このグラフの一番上にある「批判的に考える力」がかなり付いたかなと期待して見たのですが、残念ながら、低いんですね。これは国研で出しておられる能力の中のいわゆるクリティカル・シンキングの部分なんです。気仙沼市に聞いてみましたら、やはり学校の先生方は、これを批判というふうに、文字どおり日本語にとってしまって、どう料理していいか分からない。結局、余り人の批判はよくないので、しないような形で授業をやってしまった結果なんですというお話でした。
 ですから、そういった意味でも、もう少し丁寧に時間を掛けて、先生方に対するアプローチも必要かなと、そんな資料としてここに挙げさせていただきました。
 いずれにしても、国研がある指標を出してくださいましたので、それを使って、それでどういう力が付いたという議論は、今ようやくできるような段階になってきたのかなというふうに思います。
 どうぞ、ほかに。

【後藤委員】 
 ESDの実践の今後について、評価について、どういうふうに見取ればいいのかについて検討する必要があると感じます。ESDについても多くの実践報告が示されていますが、実践報告の多くは「あれをやった、これもやった」という多岐にわたる実践報告が載せられている感が否めません。先生方の御努力の賜物ではあるのですが、ここで課題の一つとして受け止めなければならないのが、様々な実践に対して、一方的にお話をされることが多い点にあるということです。これからのESDを考えるためにも、これからはより評価という視点を持ち合わせる必要があるのではないかということです。ESDの取組は、正に文字通り持続可能でなければならないということでございます。例えば、総合的な学習の時間のループ型の評価観等に基づいて、行ったことをクリティカルに振り返り、実践を見直して、さらに改善に資する次の取組に向かっていくことが大切ではないかと思っている。そして、こういう評価観が大事ではないかと考えています。ESDの評価においても一回限りの一方向の言わばリニア式の評価観ではなく、評価を何度も回すぐるぐる回す言わばループ型の評価観に変わっていく必要があるかと思います。ESDを初めて取り組むとそれは新しい取組ですから一筋縄でいかない場合もあり、うまくいかないこともあるわけですよ。そのうまくいかないことに対していかに向き合うか、評価し、その評価に基づき、いかに改善するかという姿勢、そんな評価観に変えていく必要性、「いいんだよと、まずは取り組むことですよ」といえるような懐の広さと深さ、うまくいかないことを認めながら、次に更なる改善に向かっていくような評価観を基にした実践を、学校全体で、社会全体で持っていく必要があるのではないかなと思っております。

【見上座長】 
 ありがとうございます。
 はい、どうぞ、岡本委員。

【岡本委員】 
 関連してですけれども、今、後藤委員がおっしゃったように、ESDが浸透していって問題解決的な学習などもどんどん展開していくようになると、評価についても今まで学校の中で本当に正しい評価観が定着してきたのかという疑問を持ってしまいます。簡単に評価、評価と言うと、どうしても総括的な評価ばかりで、数量的な評価ばかりで、受験との関係もありますが、ですけれども、これからはそうではいけないと思います。いわゆるアクティブ・ラーニングの評価などもそれに当たると思います。ですから、学習指導要領が変わるごとに、指導要録が改訂されるごとに、評価観も少しずつ変わってきたかと思いますが、ESDが入ってきたことで、さらに評価観についても新たな時代がやってくるのではないかと思います。私もまだ明確な結論を持っているわけではないですけれども、評価の研究を進めていく余地がいっぱいあるのではないかと思います。それがESDを深めることにもなるし、もっと言えば、教育全体の深まりにもつながるのではないかと思っています。
 以上です。
 
【見上座長】 
 ありがとうございます。
 どうぞ、清原委員。

【清原委員】 
 先ほどもちょっと出たんですが、課題を見付けるというのは、実際は相当難しい話だという。
 あと、学習についての先生方の考え方というのも、どちらかというと、今までは定着型の考え方が非常に強かったかなと思うんです。ただ、実際に学習を深めるということはどういうことかというと、最初は当然、教師側からある程度提示しながら、少し誘導しながら当然疑問を持たせるわけですが、その中で学習をした結果、これは教科であっても、総合的な学習の時間であってもそうなんですが、それで全て分かったということがゴールではなくて、むしろ深い学習をすれば、疑問が本当は深まって、一つぐらいの疑問しかなかったのが、深く分かったことで10ぐらい生じた、それが本当の深い学びなのであって、そういう意識をいかに先生方に持っていただくかというのも非常に重要な視点かなというのを常日頃感じているところです。

【見上座長】 
 今、清原委員がおっしゃったことに関連して、私が教育委員会の方から伺った話では、要するに、子供が自主的に考えるアクティブ・ラーニングをするためには先生や周りの人たちは、良きファシリテーターであると聞いたことがあります。
 ですから、、入り口は国際理解であったり、環境であったり、人権であったりいろいろですが、ゴールはサステナビリティがゴールです。問題を、地域に根差して問題解決しようということで、考え方としてクリティカル・シンキングなどいろいろな能力を開発しながらゴールに近付く。先ほどおっしゃったように、決してそこには解が一つであったり、本当にそれで全部分かったということではなくて、一つの問題の解を得ても、その先には恐らく次の問題が出てくる。そういうところを経験するということは、子供にとっても大事なのかなというふうに今御意見を伺いました。
 ほかに、どうぞ御意見をよろしくお願いいたします。

【手島委員】 
 そういう学びが大事だということは、私どもも分かっております。そして、この総合的な学習の時間の指導資料は、小学校版も出て、こういうふうに高等学校編まで出ているということもすごくすばらしいなと、出たときに目の覚めるような思いをして拝見しました。
 ただ、そこに見ようとしない人たちがいかにも多過ぎて、そこを見れば宝の山が入っているのに見ようとしない。必要性を感じていない現状を何とか変えていかなければいけない。そのことは、この国際統括官付きのユネスコの分科会だけでできることではなくて、日本の教育をどういうふうに進めていくのかというような大きな流れを一生懸命作っていかなければいけないと思うのです。そういうところをどう作るかというのが、このESDを進める一番の鍵ではないかなと思っております。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 重要なことは、なかなか関心を示してくれない方を、どう目を覚ますというか、気付かせるかということでしょうか。

【手島委員】 
 そう。トップダウンはなるべくしたくないという思いはあるんです。ESDでしたら、ボトムアップで行かせたいんだけれども、それに取り組むことに関心とか、意欲とかというのになかなか火がつかないというところが問題なんだろうと思うのです。そこを何とか仕掛けていくことが日本のESDを広めて深めていくためにどうしても必要なことだと思っています。

【見上座長】 
 はい、どうぞ。

【北村委員】 
 非常にささやかな例なんですけれども、何年間か教員の免許更新講習でESDをテーマにして、上智大学にいた頃に何年かやりまして、そうすると、大体毎年百数十名の先生が講習を受けられて、ESDを御存じですか、数年前ですけれども、御存じですかと聞くと、百数十人いて、十数人ぐらいの方が聞いたことあると。ESDを少しでも説明できますか、お一人お二人ぐらいかなという感じなんですね。でも、3日間ぐらいの教員の免許更新の講習の中で、いろいろな実践例を御紹介したり、そこにある問題も含めて御紹介すると、かなり終わった後に先生方が、先ほどから出ていたように、もう今までやってきたことだと、でも、やってきたことをもう一度見直す非常にいい機会だったと。恐らく免許更新のような講習の場合は、そういう意味が本当は大事なんだと思うんです。日々忙しい中で、先生方はお時間ない中で過ごしている。でも、ちょっと現場を離れられるときに、うまくそういう機会を捕まえて、やっぱりESDのことを知っていっていただくような、非常にささやかなことではありますが、そういった具体的な努力を積み重ねないと、なかなか現場の先生方は大変じゃないかなというのが個人的な思いなんですけれども。

【見上座長】 
 はい、どうぞ、手島委員。

【手島委員】 
 もう少し付け足します。
 そういうふうにして研修を受けてきた先生が現場に戻るんです。そうすると、こういうことをやりたいんだけれどもと言ったときに、トップがそのことを理解できていないのが一番問題なんです。ですから、結局、学校全体として変わらない。その人がやったら、そのクラスあるいは学年は何かいい取組ができる。ところが、学校としてカリキュラムを作るところまで、その人、個人1人、2人の力ではできないという現状があるのです。ですから、やっぱり校長たちの意識をどう変えていくかというところに大きな課題があって、総合をもっと広めたい、そして総合を進めることでESDが広まるだろうというところになかなかつながらないもどかしさ、悔しさを感じているのです。

【見上座長】 
 とにかく持続可能性ということがうたわれているということがすごい力になったと思います。ですから、これからもやはり学習指導要領とか、具体的な形で示されているということを強くアピールできるようにしていかないといけないでしょうね。
 それともう一つは、関心を示してくれない人たちに対しては、どこかパイロットモデルがあって、例えばその地域が子供たちが変わってきている、成績がよくなった、考え方がしっかりしている、あるいはグローバルな考えが身に付いているとか、何かそういうことを外から評価されていることを示すことも大事かもしれませんね。
 気仙沼市で、私どもはある一つの学校に月に1回ぐらいいの頻度で支援に行っていたら、隣の地区の保護者の方が我々の活動のところに来られて、何かここの小学校の子供は、すごく得をしている。いいことをやっている。どうして自分の子供のところはそういう人が誰も来ない、どうしたらいいか、あんたのところは国立大学だから、ちゃんとサービスは公平にしなさいよと言われことがあるんですけれども、そういうふうに地域が歓迎してくださるような形で認めていただくと、恐らく地域全体が盛り上がるのだろうと思います。

【見上座長】 
 はい、どうぞ。

【田村委員】 
 このESDという考え方は、決して教育だけにとどまる話ではなくて、未来社会をどうしていくかという話でありますから、学齢期の子供たちだけの話ではもちろんないということで、様々な主体が取り組んでいるわけです。もっとそういう意味では広く社会として、特に日本のように少子高齢化が進んでいくような国においては、より一層早くこういった国民的意識を持たなければ、多分いけないという状況が迫っているんだと思うんです。そういったような社会的な側面での視点を一つ持つことが全体としての学校教育の推進にもつながるのではないかというのが一点目です。
 二つ目が、今度は逆に教育的な面に絞り込みますけれども、話題がどうしても子供たちがどう育ったかというふうな議論になってくるんですけれども、実はこのESDの取組をしていくと、先ほどのように、学校の中に多くの地域の皆さんから入ってもらった方がいいという話題も出てくるし、子供たちがどんどん地域に出ていってアクションを起こすべきではないかという声も出てくると、学校というものの存在が随分変わってきて、学校という施設の持つ社会資本的価値が今まで以上に高まっていく可能性が圧倒的に出てくるんだと思うんです。こういった考え方が、今話題になっているコミュニティ・スクールなどと連動する話でありますから、そういったものを積極的にアピールするといいますか、そのことこそが実は各地域のコアとしての学校施設の持つ社会資本的価値を高めていく。これがよくOECDが言っている再学校化シナリオと言われる学校の持つ価値がより高まるというシナリオの一つだと考えています。このことも、このESDが推進していく可能性としてどこかに押さえておくと、また幅広くいろいろな支援を頂けるのではないかと考えます。

【見上座長】 
 ありがとうございました。
 重要な視点で、最初、広めるところでもユネスコスクールから入ってしまったものですから、どうしても学校ということだったんですが、地域が大事という御意見も頂きました。要するに、学校以外の、子供たち以外の、大人もそのことに対してちゃんと理解を進めるということも、広める上で大事なことだろうと思います。 深めるという観点でおよそ御意見を頂いたかと思いますが。
 それでは、最後に、国際的に浸透・充実させる取組というのがございますが、ここでひとつ御意見をいただければと思います。

【手島委員】 
 すみません。

【見上座長】 
 はい、手島委員、お願いします。

【手島委員】 
 そこへ行く前にもう一つ、先ほど落としたので……。

【見上座長】 
 はい、どうぞ、結構です。

【手島委員】 
 ESDを深めるといったときに、ユネスコスクールの問題もやっぱり重要だと思うんですね。そのときに、全国大会の在り方を十分検討していく必要があるかなと思いました。つまり、今までちょっとトップダウン的な話がそこで多かった。そして、相互の連携とか、地域ごとのまとまりを全国大会の中で作るとか、あるいは、ただの事例発表ではなく、お互いに何かを作っていくような、そういう大会の在り方というのを何か工夫していく必要がありそうだと思っております。

【見上座長】
 いかがでしょう。いわゆるASPNetというのはネットワークなので、学校間交流という観点でも大事でしょうか。

【手島委員】  
 はい。

【見上座長】 
 そういったことが全国大会を契機に広がるといいということですね。

【手島委員】 
 地域ごとのネットワークも重要だと思いますので、そういうものをうまく充実させる場にもしていければいいなというふうに思います。

【見上座長】
 そのことは次の、今これから議論いただく国際化にもつながるグローバルな能力の育成にもつながると思います。
 どうぞ、御意見をお願いいたします。
 どうぞ、北村委員。

【北村委員】 
 今度は抽象的な大きな話からコメントさせていただきたいんですけれども、今年はESDだけではなく教育全体にとって非常に重要な年ですね。5月に韓国の仁川で世界教育フォーラムが開かれ、9月には国連で恐らくSDGs(持続可能な開発目標)が採択されます。その中で、教育目標の中ではESDとグローバル・シチズンシップ教育という二つが目標の中に恐らく入るだろうということで、今、調整が進んでいるわけですので、大きな教育全体を見たときに、国際的にもESDというのが重要だということは改めて位置付けられるわけですが、それでもやはり、みんなESDとかグローバル・シチズンシップ教育は何だかよく分からないよねというようなことをいまだに議論してしまっていて、一つの問題が、先ほど評価のところでもコメントさせていただいたんですけれども、結局、これとこれとこれを見て、それを何年かかけてちゃんと追い掛けましょうということが国際的にもできていないために、みんな何となく具体性を持てずに、ESDもせっかく10年やっても、じゃあ、10年間で何がどう変わったのかということを結局ユネスコは示せなかった面があるわけですね。ですので、昨年の世界大会でもそこはかなり批判が出たところだと思うんですけれども。
 そういう意味で、これから世界教育フォーラムでも、国連のSDGsでも、恐らく2030年というような目標年を決めたりして、ESDも推進しましょうということに国際的になっていくわけですから、これが先ほど僕がちょっと申し上げた日本が、じゃあ、少なくともESDを推進するというときに、これから15年間、これとこれとこれをきちんと毎年毎年測定していって、こんなに変わりましたよということを示していくことが、日本が提唱して、しかも今、先導している取組ですので、やはり責任を持ってやる。そして、もちろんこれは日本だけでやる必要はないわけですので、ここにもあるスウェーデン、ドイツだとか、アジアでも韓国であるとか、熱心な国がありますので、一緒に議論しながら提唱していくことが大事でしょうし、その意味でもう一つ言えば、国連大学をきちんと活用すること、せっかく日本に本部のある国連大学の活用とか、そういったことも含めて考える必要があるかなと最初に思います。

【見上座長】 
 ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思います。
 今はどうなんでしょう。国連大学でそういった声とか、あるいは、世界でもそういうものが出ているというようなことはございますでしょうか。

【北村委員】
 国連大学の方とも話をしていまして、あそこの竹本所長、あるいは武内副学長先生とお話ししていますけれども、国連大の方でもインスティチュートを中心にESDをこれから推進していくための具体的な方策も考えたいということで検討はされているようですので、そこともっともっと議論をしてやっていく必要があるのではないかなと思います。

【見上座長】 
 そうですね。国連大学との連携というのもとても大事かと思います。
 林原委員。

【林原委員】 
 思い付きなので実現可能性があるかどうか分かりませんけれども、日本には、特に東京には、インターナショナルスクールが幾つかあります。アメリカのインターナショナルスクールは調布に大きいスクールがあり、それから瀬田にもあります。イギリスのスクールも渋谷にあり、カナダやドイツもあるはずです。ほかの国はちょっと知りませんけれども。
 私はずっと日本の銀行に勤務し、ロンドンに駐在したことがあるんですが、我々の時代は、海外に転勤すると、子供の受験が不利になるとか、帰国子女だと日本の学校になじめないとか、大変心配しました。今はちょっと違うかもしれませんけれども、我々の時代は子供の教育問題が海外勤務者の最大の悩みでした。今、私は外資系の会社に勤務しており、アメリカ人をはじめ多国籍の方が勤務しているんですけれども、子供の教育問題には余り心配していないですね。東京のインターナショナル・スクールの教育の質は大変高いんだそうです。
 それで、先方がアクセプトするか分かりませんけれども、インターナショナルスクールにユネスコスクールに加盟してもらえれば、いわば東京で国際交流が図れますから、非常にいいんじゃないかなと思います。インターナショナルスクールは日本の教育制度上、どのように位置付けられるか、文科省の方に教えていただかないと分かりませんが、トライしてみたらおもしろいと思います。もしそのご意向があれば、私のところに有力な父兄もおりますから、喜んで仲介致します。
 
【見上座長】 
 それはおもしろいかもしれませんね。

【林原委員】 
 誘ってみることはいつでも構いません。

【見上座長】 
 ありがとうございます。貴重な御指摘だと思います。
 現在はないんでしたか。

【本村国際統括官補佐】 
 今はインターナショナルスクールはございません。

【見上座長】 
 インターナショナルスクールは入っていないですよね。

【林原委員】 
 誘ったことがあるんですか。誘ったことが。

【本村国際統括官補佐】 
 直接こちらからというのはないですね。

【見上座長】 
 今の規定では、別にハードルはないですよね。

【本村国際統括官補佐】 
 実際、要綱、いわゆる学校以外でも何校か認定はされていますので……。

【見上座長】 
 大丈夫ですね。

【本村国際統括官補佐】 
 はい。

【見上座長】 
 では、是非インターナショナルスクールにもお声掛けして。
 ほかにございますでしょうか。
 今いろいろなところでグローバル化、特に大学が非常に声高らかに、教員養成の大学であっても、グローバル化は避けられないというか、言わないと何となく資格を失うような感じがしています。
 ただ、大学生になってから急に英語だとか国際交流とか言っても、なかなか敷居が高いというところがございますので、本当は小学校ぐらいから自然に海外の片言の英語でも、お互いの母語でもいいので、何かできると非常にいいのだろうと思います。それができて初めてASPNetの本来の姿になるのだろうと思います。
 そういう意味では、今、日本に900校もあるというのは、日本のグローバル化にとって非常にいいチャンスです。ですから、ユネスコスクールを大いにまず活用するというのはとても大事なような気がしています。
 ただ、学校は非常に忙しいので、何か手間隙掛けないといけないものについては、周りからいろいろサポートしなければいけないという問題はあろうかと思います。
 はい、どうぞ。

【北村委員】
 すみません。

【見上座長】 
 はい、お願いします。

【北村委員】 
 今、先生のお話を伺って、私も常に思っていることでもあるんですが、日本の学校の中でグローバル化というときに、例えばジェットプログラムのような形で海外の人が来て、英語のアシスタントをしたりしてという、外国人の存在がいたり、あるいは、地域にいる外国の方に学校に来ていただいて話をするとかあるんですけれども、最近よく見られる事例で、グローバル化、グローバル化がどうも英語一辺倒になる傾向の中で、日系ブラジル人の方を呼ぶのに、英語で話をしてくださいと頼んだりする。一石二鳥だと学校側は思うわけですよね。英語に触れさせる機会にもなるし、外国の方に会えるしと。ところが、これは決定的に間違っていますよね。今、多分そういうところでぐちゃぐちゃに学校現場でなっていて、でも、何とかしなければいけないというので、みんな何とか少しでも効率よくとなってしまっているのがすごく不幸だと思うんです。むしろESDの多様性とか、多面性とかという考え方からすれば、日系ブラジル人の方が来たら、やっぱりポルトガル語を教えていただくとか、別にそれでも構わないわけですし、もしかすると、今までは英語が中心で、ジェットプログラムのようなものは英語でやっていますけれども、ほかの言語のティーチングアシスタントをほかの国から来ていただいてやってもらうなんていう発想がこれから出てきても、本来構わないわけです。例えば中国語を教えるような人たちが中学や高校に入って少しアシスタントになるとか、ESDと直接関係ないように見えるんですが、実はESD的な学びを学校で広めていくときに、そういう発想をしていかないと、グローバル、グローバル、それがイコール英語になっていく危険性がすごくあると思いますので、ちょっとESDというのが実はそういう風潮に対しても、実は一つの問題提起ができるのではないかということを感じたりしております。

【見上座長】 
 ですから、ESDの活動というのは、相手の学校に対して自分が意見を言う、教えてあげる、伝えるものがある、というものがないと、それこそハロー、ハローと言って終わってしまうという、そういう状況だと思うので、そういう意味では、今のESDの活動というのはとってもいい、特に地域に根差したテーマであれば、なおいいと思うので、そういうものをベースにネットワークを使ってグローバル化を図るということは、すごくいい状況に今来ているといえます。ですから、我々のサポートがうまくできるかどうかということにかかっているのかなとも思います。
 今、北村委員に御指摘いただきましてありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。そろそろ時間も……。

【重委員】 
 すみません。

【見上座長】 
 重委員、どうぞ。

【重委員】 
 「GAPに対応した国内実施計画等の策定」というふうに、ここの中に入っているのは私はちょっと気になります。GAPそのものは、国際的だけではなくて、国内の私たちが推進するESDの包括的なプログラムだろうというふうに思いますと、ここの中に入るというのはちょっと、ここで限定させてしまうのかという懸念がありますし、じゃあ、国内実施計画の中にどういう書き方をするのかというのが気になります。この国内実施計画は御準備していらっしゃると伺っていますけれども、もちろん私たちにも意見を言うチャンスがあるだろうとは思いますが、ESD10年の始まりの時には、民間の私たちが中心になって地域ミーテイングやワークショップを行い、そこから出てきた意見を国内実施計画の中に随分落としていただいたのです。今回はそういう傾向がまだ見受けられないので、よく分からないのですけれども。
 それともう一つ、この委員会そのものが、国際統括官付の諮問委員会という位置付けですよね。ESDの分科会の設置要綱を拝見すると、日本ユネスコ国内委員会教育小委員会の中に「ESD特別分科会」として設けられている。

【見上座長】 
 そうですね。

【重委員】 
 ここでの検討は、具体的な内容の検討なのか、推進のためのフレームを中心に検討するのか、どういう形で反映していくのか、他の検討委員会等との関係等というのが、ちょっと分からなくて、この委員会の位置付け等を含めて教えていただければ。

【見上座長】 
 この辺、事務局、よろしいですか。

【籾井国際戦略企画官】 
 まず一点目の国内実施計画のところですけれども、今たまたま国際の枠組みも踏まえつつ、今後、国内の実施計画を作っていこうということで、ある意味、便宜上のここの枠組みにはめていますけれども、当然国内実施計画ですので、別に外だけを向いてというよりは、国内でどういう取組をしていくかということになります。
 それで、今、関係省庁とまだいろいろ、作業は若干遅れてはいるんですけれども、調整中で、当然、策定の段階では円卓会議もやる予定ですし、御意見は伺う予定にしております。
 それから、この委員会の位置付けですけれども、まずはいろいろな課題の洗い出しを今している状況で、これから具体的に何をどうしていくかというのは、議論を見ながらではありますけれども、この資料1のスケジュールのところにもございますけれども、こちらでの御議論を踏まえまして、今申し上げた国内実施計画は政府全体としての実施計画ですので、文科省のものに限らず、他省庁いろいろ入ってくるわけなんですけれども、ここでの議論は、より教育の分野に特化したもの、文部科学省案件に特化したものとして、フォローアップ計画としてまとめて、必要があれば、今後、概算要求していったりとか、政策に生かしていったりというような形になります。
 なので、報告書という形で何らかまとめまして、対外的には発表はすることになると思います。

【見上座長】 
 まずはそういうことで御了解いただけますか。

【重委員】 
 はい。

【見上座長】 
 よろしくお願いいたします。
 全体的なところで更に議論を深めるようにお願いしようかなと思ったんですが、時間が来てしまいました。まだ御意見たくさんあろうかと思いますが、本日は以上にしたいと思います。御意見ありがとうございました。
 今日の御議論いただいた内容を事務局で論点整理していただいて、次回の分科会で特に焦点を当てて議論するところがございましたら、提案させていただきたいというふうに思います。
 もしまだ御発言、これも言えばよかったというようなことがございましたら、4月10日金曜日までに事務局までということで、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
 本日の議題の2のその他ですが、特にほかに審議をお願いすることはございますでしょうか。
 事務局としてはよろしいですか。

【本村国際統括官補佐】 
 事務局からはございません。

【見上座長】 
 皆様方からは、何かございますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 では、本日は以上にしたいと思います。進行不慣れで申し訳ございませんでした。
 事前に事務局から御連絡行っているかと思いますが、次回は4月21日火曜日、2時から4時に開催予定でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、御多忙のところ、本当にありがとうございました。

―― 了 ――

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国際統括官付