参考6 The Statutory Framework of the World Network(仮訳)

生物圏保存地域世界ネットワーク定款



UNESCOの「人間と生物圏(MAB)計画」の枠内で生物圏保存地域が設けられているが、その目的は、人間と生物圏との間でバランスが取れた関係を促進し実証を行うことである。生物圏保存地域は、関係国の要請を受けてMAB国際調整理事会が指定を行っている。各生物圏保存地域は、依然として所在国の主権に服しているため、その国の法律にのみ拘束されるが、世界ネットワークを形成しており、このネットワークにおいてその国の参加は任意となっている。
この生物圏保存地域世界ネットワーク定款の策定目的は、各生物圏保存地域の実効性を補強し、地域レベルと国際レベルで共通理解、意思疎通、協力関係を強化することである。この定款で企図されているのは、生物圏保存地域の認知度を広め、効果的に機能する実務上の実例を奨励・推進することである。リストから外す手続は、このように基本的に前向きなアプローチの例外として受け止めるべきであり、その国の文化事情、社会経済事情を考慮した上で慎重に検討し、関係する政府に意見聴取して初めて援用すべきものである。文言の内容を見ると、生物圏保存地域の指定、支援、推進を定める一方で、加盟国の事情や現地の事情が多様であることが考慮されている。加盟国側では、自国の特殊事情を考慮に入れた上で、生物圏保存地域に関する国内基準を練り上げて運用していくことが望ましい。

第1条 - 定義
生物圏保存地域とは、UNESCOの「人間と生物圏(MAB)計画」の枠組に基づいて国際的に認定された陸上・沿岸・海洋生態系の区域、または、これら区域の集合体をいう。

第2条 - 生物圏保存地域世界ネットワーク
1.生物圏保存地域により、生物圏保存地域世界ネットワークという名称の世界的規模のネットワークが形成されている(以下、「本ネットワーク」という)。
2.本ネットワークは、生物多様性を保全し、生物多様性の構成要素の持続可能な利用を実現し、もって、生物多様性条約その他の関連条約・法律文書の諸目標に資するものとする。
3.個々の生物圏保存地域は、所在国の主権に服していることに変わりはない。この定款の下、加盟国は自国国内法に基づいて必要と思われる措置を講じることになる。

第3条 - 機能
生物圏保存地域は、下記の3機能を組み合わせて、地域規模で保存と持続可能な発展を実現するアプローチを検討・実証する拠点になるよう努める必要がある。
(1) 保全機能 - 景観、生態系、生物種、遺伝的多様性の保全に資する。
(2) 経済と社会の発展 - 社会文化的に持続可能で生態学的にも持続可能な形で経済発展と人づくりを促進する。
(3)学術的支援 - 実証プロジェクト、環境教育・研修、保全と持続可能な発展に関する地元の問題、地域的問題、国内問題、世界的問題に関する研究・調査に役立てる。

第4条 - 基準
生物圏保存地域が指定を受けるための一般的基準は、下記のとおりである。
1.人間の介入が漸次的に行われているなど、主な生物地理的地域に典型的に見られる形で、生態系がモザイク状になっている部分が含まれていること
2.生物多様性の保全の観点から重要度が高いこと
3.地域的規模で持続可能な発展に向けたアプローチを研究・実証できること
4.第3条にいう生物圏保存地域の3機能を果たす上で適切な規模であること
5.下記の点が認められる形で、適切な形で帯状構造になっており、上記3機能が含まれていること
(a) 生物圏保存地域の保全目的、また、これらの目的を果たせる規模を保全するという目的に沿った形で、長期的な保護の対象となる核心地域が法的に形成されていること
(b) 緩衝地帯が明確化されており、核心地域を取り囲んだり隣接する形になっており、ここでは、保全目標と両立する活動のみ行うことができること
(c) それより外側に移行地域があり、そこでは持続可能な資源管理活動が促進・展開されていること
6.公的機関、地域社会、私企業が生物圏保存地域の機能の企画立案や実行などについて、適切な範囲で関与、参加できるよう組織的仕組みを設けること
7.さらに、下記の対策が講じられていること
(a) 緩衝地帯における人間の使用・活動を管理する仕組み
(b) 生物圏保存地域としての管理方針・計画
(c) この方針・計画を実行するため指定を受けた当局・仕組み
(d) 研究、観測、教育、研修に関するプログラム

第5条 - 指定手続
1.生物圏保存地域がMAB 計画国際調整理事会(ICC)から本ネットワークに加入する旨の指定を受ける場合、下記の手続によるものとする。
(a) 第4条にいう基準を考慮して候補地の検討を行った後に、加盟国から(適切と判断される場合には、国内MAB 委員会を介して)事務局に対して、関係書類を添えて推薦を行う。
(b) その内容と関係書類を事務局にて検証し、推薦に不備がある場合、推薦を行った国に対して事務局から不足情報の提供要請が行われる。
(c) 生物圏保存地域諮問委員会にて推薦内容が検討され、国際調整理事会への提言が行われる。
(d) MAB 計画の国際調整理事会が指定推薦について決定を下す。
UNESCO事務局長から関係国に対して、国際調整理事会の決定が通知される。
2.加盟国は、既存の生物圏保存地域がある場合、その適性を検討・改善し、必要に応じて範囲を拡大し、本ネットワークの範囲内できちんと機能できるようにすることが望ましい。拡張の提案の場合、上記の新規登録手続と同じ手続となる。
3.生物圏保存地域のうち、この定款の採択前に指定を受けている保存地域の場合、既に本ネットワークの一部とみなされる。そのため、この定款の規定の適用を受ける。

第6条 - 周知
1.生物圏保存地域としての指定の場合、記念の盾、資料の配布など、加盟国および関連当局から適切な形で周知を行う。
2.本ネットワークに属する生物圏保存地域に加え、その存在意義についても、適切な形で継続的に広報を行う必要がある。

第7条 - 本ネットワークへの参加
1.加盟国は、科学的研究・観測など、世界レベル、地域レベル、地域間レベルにて本ネットワークの連携活動に参加し、又は促進する。
2.関連当局は、知的財産権を考慮に入れながら、研究結果、関連の刊行物その他のデータを公表し、本ネットワークが適切に機能するようにするとともに情報交換の便益が最大になるようにする。
3.加盟国、関連当局は、本ネットワーク内の他の生物圏保存地域と連携して、環境教育・研修、人材育成を推進する。

第8条 - 地域的、テーマ別のサブネットワーク
加盟国は、生物圏保存地域の地域的・テーマ別サブネットワークの形成と協力的運用を促進し、これらサブネットワークの枠組において電子情報を含め情報の交換を推進する。

第9条 - 定期的検討
1.各生物圏保存地域の地位については、第4条の基準を踏まえて関係当局が作成し当該加盟国から事務局に対して提出される報告書に基づいて、10年ごとに定期的検討を行う。
2.この報告書については、生物圏保存地域諮問委員会が検討を行い、国際調整理事会に勧告を行うものとする。
3.国際調整理事会は、関係加盟国から提出された定例報告書を検討する。
4.指定以降または前回検討以降において生物圏保存地域の地位または運営が条件を満たすものとされ、又は改善されていると国際調整理事会が判断した場合、国際調整理事会は正式にその旨を認定する。
5.生物圏保存地域が第4条にいう基準をもはや満たしていないと国際調整理事会が判断した場合、同理事会は、関係国が自国の文化事情・社会経済事情を勘案して第4条の規定の履行確保策を講じるべきである旨の提言を行うことができる。国際調整理事会から事務局に対して、この種の措置の実行に際して当該国への支援でどのような措置を執るべきなのか明らかにする。
6.合理的期間において、生物圏保存地域が第4条にいう基準を満たしていないと国際調整理事会が判断した場合、その地区は、本ネットワークに属する生物圏保存地域とは言えないものとする。
7.国際調整理事会の決定については、UNESCO事務局長から関係加盟国に通知する。
8.自国管轄下の生物圏保存地域の本ネットワークからの脱退を加盟国が希望する場合、その旨を事務局に通知する。この通知は、国際調整理事会に参考情報として伝達される。当該地区は、本ネットワークに属する生物圏保存地域とは言えないものとする。

第10条 - 事務局
1.UNESCOは、本ネットワークの事務局としての役割を果たし、本ネットワークが適切に機能し本ネットワークを振興する職責を負う。事務局は、個々の生物圏保存地域相互間、専門家相互間の意思疎通および交流を促進するものとする。また、UNESCOも、その他の関連する取組と連動させる形で、生物圏保存地域に関して世界中どこからでもアクセスできる情報システムを構築し維持管理する。
2.個別の生物圏保存地域ならびに本ネットワークおよびサブネットワークの機能を強化するため、UNESCOは、二国間・多国間の資金援助を求めるものとする。
3.本ネットワークに属する生物圏保存地域、その目的、詳細事項を記載したリストについては、定期的に事務局が更新、公表、配布する。

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