参考3 ユネスコエコパーク推薦地域への勧告について(報道発表資料)

(平成26年5月15日)

 ユネスコが実施する生物圏保存地域*(国内呼称:ユネスコエコパーク)に関して、我が国から昨年9月に申請を行った「只見」(福島県)及び「南アルプス」(山梨県、長野県、静岡県)の2 件の新規登録、並びに既に登録されている「志賀高原」(群馬県、長野県)の拡張登録に対する、生物圏保存地域国際諮問委員会(ユネスコ事務局長の諮問機関)の勧告内容が今般ユネスコにより公開**されました。
 今後、2014(平成26)年6月10~13日にスウェーデンにて開催されるユネスコMAB計画国際調整理事会において、登録・拡張の可否が審議・決定される予定です。

* 英名:Biosphere Reserves(BR)
**ユネスコMAB計画国際調整理事会の資料として公開

1.勧告の内容

生物圏保存地域国際諮問委員会からの勧告内容は以下のとおり。

(新規登録)
・「只見」(福島県)-「条件付き承認」*
・「南アルプス」(山梨県、長野県、静岡県)-「承認」

(拡張登録)
・「志賀高原」(群馬県、長野県)-「承認」

※ユネスコ加盟国全体での勧告の状況は以下のとおり。
(新規登録)
・申請件数29件(承認9件、条件付き承認7件、延期12件、却下1件)

(拡張登録)
・申請件数5件(承認4件、条件付き承認1件)

 今後、この勧告を受けて、2014(平成26)年6月10~13日にスウェーデンにて開催される第26回ユネスコMAB計画国際調整理事会において、登録・拡張の可否が審議・決定される予定。

* 条件は、「核心地域」、「緩衝地域」及び「移行地域」の3つの地域のうち「核心地域」、「緩衝地域」の設定(ゾーニング)に関する修正。5月15日(木曜日)までにユネスコに回答することとされており、日本ユネスコ国内委員会より回答済。

(詳細は下記のユネスコMAB計画ウェブサイトに掲載)
第26回ユネスコMAB計画国際調整理事会資料(※ユネスコのウェブサイトへリンク)

(参考)諮問機関による勧告の区分
1.承認(Approval):エコパークとして承認。
2.条件付き承認(Approval pending):追加情報の提出が必要。
3.延期(Deffered):申請書の改定が必要。次回の諮問委員会で審議。
4.却下(Rejected):エコパークとして相応しくないもの。

2.生物圏保存地域(国内呼称:ユネスコエコパーク)の概要

 ユネスコエコパーク(英名: Biosphere Reserves(BR))は、1976(昭和51)年に、ユネスコの自然科学セクターのユネスコ人間と生物圏(MAB: Man and Biosphere)計画** における一事業として開始されたもの。
 世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然地域を保護・保全する一方、ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)が目的。
「保存機能」、「経済と社会の発展」及び「学術的研究支援」の3つの機能を達成するため、ユネスコエコパークには、「核心地域」、「緩衝地域」及び「移行地域」(社会と経済の発展が図られる地域)の三つの地域(ゾーニング)の設定が求められている。
登録総数は、117か国、621地域(2013(平成25)年5月現在)。

** 人間と生物圏(MAB)計画とは、生物多様性の保護を目的に、自然及び天然資源の持続可能な利用と保護に関する科学的研究を行うユネスコの政府間事業。

3.我が国のユネスコエコパーク登録状況

・1980(昭和55)年「志賀高原」、「白山」、「大台ヶ原・大峯山」及び「屋久島」の4件の登録
・2012(平成24)年「綾」の登録
・2013(平成25)年「只見」、「南アルプス」の新規登録申請、「志賀高原」の拡張登録申請***

*** 1980(昭和55)年当時は、「保存機能」と「学術的研究支援」の機能に重点が置かれていたため、「核心地域」と「緩衝地域」の設定で申請し、登録された。その後、1995(平成7)年にユネスコによるセビリア戦略(BR世界ネットワーク定款含む)が策定され、「経済と社会の発展」の機能と「移行地域」の設定が追加されたため、1980(昭和55)年に登録された四つのユネスコエコパークについては、移行地域の設定が必要。

新規推薦地「只見」の概要について

1.推薦名称:
只見生物圏保存地域 (只見ユネスコエコパーク)

2.申請自治体:
只見町(ただみまち)(福島県)

3.特徴等:
○特徴
・核心地域及び緩衝地域の山地は、奥会津森林生態系保護地域の保存地区又は保全利用地区に設定されており、豪雪が作り出す雪食地形*の上に、ブナをはじめとする落葉広葉樹林のほか、針葉樹林、低木林及び草地等により構成されるモザイク植生が、原生的な状態で広大な面積に存在する。 *雪崩によって斜面の表土が剥ぎ取られ岩盤が露出した地形
・只見町では、2005(平成17)年及び2008(平成20)年に世界ブナサミットを開催。また、2006(平成18)年3月に「ブナと生きるまち雪と暮らすまち 奥会津只見の挑戦 真の地域価値観の創造」を理念とする第6次只見町振興計画を策定。2007(平成19)年5月に、「只見町ブナセンター」を設置するとともに、同年7 月には、「自然首都・只見」を宣言し、行政と住民の協働によるまちづくりを行ってきた。
・移行地域では、持続可能な農林水産業やエコツーリズムが展開。只見町では、今後、地域に受け継がれてきた自然環境や天然資源を拠り所とした伝統的な人々の暮らしや文化を持続的に活用し、地域の社会経済的発展や福島県の復興につなげるため、ユネスコエコパークの三つの機能に沿った取組を進め、共生モデルとして世界へ発信していく。

○面積
総面積 78,032ha
・核心地域 3,557ha (一部に福島県檜枝岐村(ひのえまたむら)を含む)
・緩衝地域 51,333ha (同上)
・移行地域 23,142ha

※ 核心地域については、奥会津森林生態系保護地域の保存地区であり、原生的な森林生態系の保護を実施。また、緩衝地域の大部分は、同森林生態系保護地域の保全利用地区であり、保存地区の緩衝帯としての機能を有する。加えて、核心地域及び緩衝地域の一部は、越後三山只見国定公園にも指定されており、豊かな自然環境が保全されている。

※ 移行地域は、里地里山が広がる農山村地域で、積雪地帯の伝統的な生活文化が継承され、山菜・キノコ類の採集、薪材の生産など森林資源の持続可能な利用も行われている。

新規推薦地「南アルプス」の概要について

1.推薦名称:
南アルプス生物圏保存地域 (南アルプスユネスコエコパーク)

2.申請自治体:
韮崎市(にらさきし)、南アルプス市(みなみあるぷすし)、北杜市(ほくとし)、早川町(はやかわちょう)(山梨県)
飯田市(いいだし)、伊那市(いなし)、富士見町(ふじみまち)、大鹿村(おおしかむら)(長野県)
静岡市(しずおかし)、川根本町(かわねほんちょう)(静岡県)

3.特徴等:
○特徴
・3,000m 峰が連なる急峻な山岳環境の中、固有種が多く生息・生育するわが国を代表する自然環境を有する。富士川水系、大井川水系及び天竜川水系の流域ごとに古来より固有の文化圏が形成され、伝統的な習慣、食文化、民俗芸能等を現代に継承している。
・従来、南アルプスの山々によって交流が阻まれてきた3 県10 市町村にわたる地域が、「高い山、深い谷が育む生物と文化の多様性」という理念の下、南アルプスユネスコエコパークとして結束。南アルプスの自然環境と文化を共有の財産と位置づけるとともに、優れた自然環境の永続的な保全と持続可能な利活用に共同で取り組むことを通じて、地域間交流を拡大し、自然の恩恵を活かした魅力ある地域づくりを図る。
・移行地域では、経済と社会の発展を目指す取組として、自然体験フィールドの提供や、南アルプス・井川エコツーリズム推進協議会などによるエコツーリズムの推進、地域の農林水産物のブランド化(米、モモ、ブドウ、茶、ジビエなど)に取り組んでいる。今後、これらの取組を南アルプスユネスコエコパークとして地域共同の取組に発展させていく。

○面積
総面積 302,474ha
・核心地域 24,970ha
・緩衝地域 72,389ha
・移行地域 205,115ha

※ 核心地域や緩衝地域は、南アルプス国立公園、南アルプス南部光岳(てかりだけ)森林生態系保護地域や、山梨県立自然公園等に設定されており、適切に保護・保全されている。

※ 移行地域は、山地斜面に広がる集落景観が特徴的。また、風土を生かした茶の栽培や、扇状地や河岸段丘上での果樹栽培が盛んで、ブランド化が図られている。また、自然体験施設が整備され、自然環境や地域の歴史・文化を生かした環境教育・エコツーリズム等が盛ん。

拡張推薦地「志賀高原」の概要について

1.名称:
志賀高原生物圏保存地域 (志賀高原ユネスコエコパーク)
*1980(昭和55)年にユネスコエコパークに登録されているものの、1995(平成7)年にユネスコエコパークの機能として、「経済と社会の発展」が追加されたため、その機能を果たす移行地域の追加設定が求められていることから、今回、移行地域の設定を含めて拡張申請を行うもの。

2.申請自治体:
山ノ内町(やまのうちまち)、高山村(たかやまむら)(長野県)
中之条町(なかのじょうまち)、嬬恋村(つまごいむら)、草津町(くさつまち)(群馬県)

3.特徴等:
○特徴
・標高800~2,300m の山地と、その間を流れる川の作用による扇状地と段丘からなる。標高1,700m 以上の亜高山帯には常緑針葉樹林が分布し、亜高山性高層湿原が発達する等豊かな自然が広がる。上信越高原国立公園の志賀高原エリアおよび菅平エリアに位置する地域。
・湯田中渋温泉郷、信州高山温泉郷、志賀高原、北志賀高原等を擁し、温泉、トレッキング、スキー等に多くの観光客が訪れる国内有数の観光地。

○面積
総面積 30,300ha (12,700ha)
・核心地域 700ha (700ha)
・緩衝地域 17,600ha (12,000ha)
・移行地域 12,000ha (0ha)
 (上記括弧内は、拡張前の面積を示す。)

※ 核心地域は、上信越高原国立公園の特別保護地区に、緩衝地域は全域が特別地域又は普通地域に指定されている。 また、緩衝地域の国有林野は、林野庁による公益重視の管理経営が行われている。

※ 移行地域では、低山や扇状地、河岸段丘に、人工林や雑木林、農地、住宅地等が広がる。移行地域として拡張申請する長野県山ノ内町及び高山村は、いずれも景観法に基づく景観行政団体であり、日本の伝統的風景である里山や温泉街を残す景観を保全・活用する地域づくりに取り組んでいる。1982(昭和57)年から推進している環境保全型農業は、日本において先進的な取り組みとして知られる。

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