第36回日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会人間と生物圏(MAB)計画分科会議事要録

1.日時

平成28年8月12日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3階 3F3特別会議室

3.出席者

(委員)
礒田博子(主査、国内委員)、重政子(国内委員)、伊藤元己、岩熊敏夫、大澤雅彦、鬼頭秀一、佐藤哲、服部保、正木隆、松田裕之
(関係省庁)
外務省、農林水産省、林野庁、水産庁、環境省関係官
(文部科学省(事務局))
森本国際統括官、福田国際戦略企画官、本岡ユネスコ協力官、その他関係官

4.議事要録

【礒田主査】
本日は、御多忙のところ御出席いただきありがとうございます。定刻になりましたので、事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】
本日は、出席の委員が10名、委員の過半数7名以上でございますので、定足数を満たしております。
【礒田主査】
それでは、ただいまから第36回MAB計画分科会を開催します。
本日の議事のうち議題4.平成28年ユネスコエコパーク申請についてに関しましては、公開することにより、当事者又は第三者の権利、利益や公共の利益を害するおそれがあると認めますので、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続第1項に基づき非公開とさせていただきます。非公開の部分を除いて、御発言は議事録として、そのままホームページで公開されますので、御承知おきください。
続きまして、前回の分科会以降、事務局の異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】
平成28年6月17日付けで国際統括官に森本浩一が着任しております。
【森本国際統括官】
どうぞよろしくお願いいたします。
【本岡ユネスコ協力官】
また、本年4月11日付けで、私、ユネスコ協力官に本岡が着任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
では、続きまして、統括官の森本から一言御挨拶させていただきます。
【森本国際統括官】
ただいま紹介のありました国際統括官、森本でございます。
6月に着任して、早速、ユネスコの方に、ボコバ事務局長ほかの皆様に御挨拶方々伺わせていただきました。それで、やっぱり感じたことは、日本に対する期待感が非常に高いということとともに、日本だけのロジックでは世界はなかなか動かない、ということでございます。 いろんな意味で今、ユネスコの活動は注目を集めておりますし、良い面、悪い面、両面あるんですけども、歴史ある活動をさらに発展させて、日本が国際的な活動の中でどのような貢献が果たせるのか、顔の見える日本というものを目指していくことができればと思っております。
今日は、持続可能な開発目標の話も後ほど議題として出てくるかと思うんですけれども、やはり国際的なアジェンダの大きな目標、それから共通の目標がございますので、そういったものと足並みをそろえた活動が展開できるといいかなというふうに思っております。そういう意味で、忌憚のない御意見を頂いて、日本の進むべき方向性を目指していければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【礒田主査】
それでは、次に事務局から配付資料の確認をお願いします。

(事務局から配付資料について確認)

【礒田主査】
それでは、議題1に入ります。まずは事務局から活動報告の概要について説明をお願いします。
【本岡ユネスコ協力官】
では、資料2を御覧いただけますでしょうか。
まず1ページ目、第27回MAB計画国際調整理事会でございます。これは、昨年6月8日~12日にパリのユネスコ本部で開催されまして、我が国からは松田分科会委員、文科省からほか2名が出席いたしました。この理事会では、2015年から2025年までのMAB戦略が採択されました。
続きまして、第14回EABRNの開催でございます。昨年の10月6日~9日にかけて日本ユネスコ国内委員会がユネスコ北京事務所、志賀高原ユネスコエコパークとともに、長野県山ノ内町において開催いたしました。この会議には日本、中国、カザフスタン、モンゴル、韓国、ロシアのMAB関係者、約40名が参加したと聞いております。この分科会からは礒田主査、岩熊委員、佐藤委員、文科省からは前ユネスコ協力官が参加いたしました。この会議におきましては、メンバー国間のよいコミュニケーションの場となり、友好を深める機会となったと聞いております。
続いて、ページをおめくりいただきまして、第3回JBRNの開催でございます。昨年の10月6日~8日に志賀高原ユネスコエコパークにおいて開催されたもので、先ほどのEABRNとの合同開催となりました。ここでは、日本ユネスコエコパークネットワークを7つの登録地域を主体とした新しいネットワーク組織とすることが決定されたところでございます。
続きまして、2ページ下の部分でございますけれども、本年の3月18日~19日にペルーのリマで第28回MAB計画国際調整理事会が開催されました。ここでは3件の拡張登録、1つは「白山」、2つ目が「大台ヶ原・大峯山・大杉谷」、3つ目が「屋久島・口永良部島」が決定されたところでございます。併せてリマ行動計画の採択も行われました。
この第28回MAB計画国際調整理事会と、これに先がけ開催された第4回生物圏保存地域世界大会につきましては、議題2におきまして岩熊委員から御説明がありますので、詳細は割愛させていただきます。
続いて、3ページ目でございます。上の部分にございますフォーラムの開催でございますけれども、これは、先ほど申し上げました拡張登録の一つ、大台ヶ原・大峯山・大杉谷ユネスコエコパークの拡張登録が決定されたことを受けたフォーラムでございまして、本分科会の礒田主査から認定証が手交されました。
続きまして、第4回JBRN大会の開催でございます。これは、本年7月25日~26日に国際連合大学本部において開催されました。併せて、アジアのユネスコエコパークをテーマとした国際シンポジウムも開催されたところでございます。
その他、4ページ目以降につきましては、表に記載のとおりということで割愛させていただきます。以上でございます。
【礒田主査】
ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問等ありましたらお願いいたします。
【松田委員】
では1点。5ページ目の2段目、2030アジェンダに向けた現地のネットワークということで、アジア太平洋ユネスコエコパークネットワーク会議併催ということでやられていて、日本からは日本ユネスコエコパークネットワークの中村さんが旅費付きで招待されていたんだろうと思います。そういう形で、リマの計画以来、日本は研究者ベース、あるいは政府ベースではなくて、地元ベースというか、市町村ベースなんですけども、の取組が非常に盛んであるというふうに思われているようで、中村さんはたしか2度ぐらいほかのところにも行っているということで、そういう動きが大変注目されていると思います。
ちなみに、この会合、たしかIHP、水文学の方との連携であるということを後から知ったのですが、注目すべきと思います。今後、ひょっとしたらMABとIHPが連携するような事業も、日本も関わった形で進められるんじゃないかと思います。そういうことも、ここの記述に入れた方がいいのかもしれないと私の方で思いましたので、情報を入れさせていただきました。ありがとうございました。
【本岡ユネスコ協力官】
ありがとうございます。御指摘のとおりでございまして、まず白山ユネスコエコパーク協議会の中村さんに関しましては、5ページ目の一番上にありますインドネシアのワカトビで開催された会議の方にも御出席いただきまして、日本のエコパークにおける取組を非常に分かりやすい形で全世界に発信していただいたと認識してございます。続いて、ユネスコのほかの事業との連携の推進については、2015年から2025年のMAB戦略の中でも記載がございます。5ページ二番目に記載の「2030アジェンダに向けた現地の連携の促進」という会議は、それを受けた形でのIHP(国際水文学計画)という、水に関する研究ネットワークとの連携を深めるという意味で、MABと合同開催がなされた会議でございます。残念ながらユネスコ国内委員会事務局から出張はできなかったんですけれども、この事業は、日本の信託基金、J-FITと呼んでおりますけれども、このJ-FITから拠出金を出した形での開催となってございます。これから日本も、こうしたユネスコのほかの事業との連携を進める形で支援してまいりたいと思っております。これに関しては、後ほど議題3でもまた御意見を頂戴したいと思ってございます。よろしくお願いいたします。
【礒田主査】
ほかございますでしょうか。ほかに御質問等ないようでしたら、本議題は以上といたします。ありがとうございました。
それでは、議題2に入ります。本年3月18日~19日に第28回MAB計画国際調整理事会がペルーのリマで開催され、日本からは本分科会の岩熊委員ほかが出席されました。また、理事会に先立ち、14日~17日に第4回生物圏保存地域(BR)世界大会が同じくペルーのリマで開催されました。日本からは本分科会より岩熊委員、松田委員ほか、各BRの関係者も出席されました。
国際調整理事会及び世界大会の概要について、岩熊委員から御報告をお願いしたいと思います。
【岩熊委員】
岩熊から御説明いたします。時間の順番からいきますと、資料4のBR世界大会の方が先ですので、資料4から御説明申し上げます。
2016年3月14日~17日までの4日間、リマコンベンションセンターで開催されました。1,000名強だと思いますが、115か国から参加がございました。
概要は、MABに関する国内委員会、BRに関わる専門家等々が集まりまして、今後10年間のBRに関する行動計画、リマアクションプランを採択するということ。それから、特にこのリマアクションプラン等含めまして、調整理事会の方に報告を上げるという形で進めてございます。
日本からは、私以外に、こちらにいらっしゃいます松田先生、それから文部科学省からは髙橋さん、それからBR関係者として松井さん、田中さん、中村さん、飯田さんが御参加になり、さらにJICAから長谷川さん、本多さん、大澤さん、大西さんと大元さん、そしてIshizawaさん、これらの方々が御参加になられました。
会期は4日間ですけれども、開会、基調講演は飛ばさせていただいて、全体会議に入ります。ハン生態学・地球科学部長は、今年度いっぱいが任期ですけれども、MABの戦略について説明されました。資料4の3ページの4番としてありますけれども、10箇所のBR、5地域について各2つのエコパーク、生物圏保存地域の成功例について、事例研究紹介がなされました。
それから、2日目にワークショップが開催されました。ワークショップは全部で3シリーズありまして、地域のネットワーク、これはEABRNも入りますけれども、地域ごとに7か所、それから、生態系及び生態系学的課題に関するワークショップが7つ。この翌日に開催されたBRに関する課題に関しての7つのワークショップです。さらに、その後に13のサイドイベントがございました。これらに、今日いらっしゃる松田先生も含めまして多くの日本の参加者の方が関わってこられたということは、後でざっと御説明申し上げます。
3ページの中頃、2日目に全体会議の中で、ワークショップの紹介が行われました。2日目の午前中に、7つのワークショップ、EABRNも含めまして7か所でそれぞれの地域ネットワークのワークショップを開催いたしました。EABRNに関しましては、日本、韓国、それから北朝鮮、中国、ロシア、カザフスタン、モンゴル、これらの国々の方が参加されて、各国のエコパークの取組について、日本からは中村さんが只見のBRについて成功例として御説明をされました。もう一つは、リマ行動計画にどのような案を出すかということが討議され、そこでは、行動計画について少し盛り込んだ方がいいという意見が出され、それが事務局の方に提出されてございます。
2日目は、生態系ワークショップで国連大学のいしかわ・かなざわユニットの飯田さんが白山の取組について発表されました。3日目になりますと、BRに関するワークショップが開催されました。複数認定の相乗効果に関しましては、松田先生からサイドイベントとしての趣旨説明と御発表がなされ、田中先生、飯田先生、それから中村先生、この3人の方から発表がされました。あと、サイドイベントでメソアメリカについては、JICAの長谷川さんが、コスタリカを中心として、生物多様性の保全に関わる温暖化対策、国際協力機関間の連携が必要であるという観点で、スペイン語を中心にしたセッションをとりまとめました。
4日目の全体会議で、リマ行動計画原案について、幾つか改定案が出されています。特にAの3.4管理運営のところにユネスコチェアとか、ユネスコスクールを実例として盛り込むという形で、3月の案よりも拡張されたものが報告されています。
最後に、リマ宣言というのがございまして、これも特に異議はないという形で、リマアクションプランとリマ宣言、両方が承認されたということで、BR大会は終了いたしました。
次に、MAB調整理事会は、日本からの3件の拡張登録が認定されるかどうかということが一番重要だったわけです。資料3を見ていただきますと、私以外に文科省からは野田さん、それからエコパーク関係、これは、3地域の白山、大台ヶ原・大峯山それから屋久島、それぞれから代表として中村さん、飯田さん、松井さん、田中さん、この4名の方が御参加になられています。
2ページ目を御覧ください。活動報告につきましては、6番のところに、BR世界大会で地域のネットワークでまとめ上げられたものが、報告されてございます。
3ページに入りまして、3月19日、この日がまとめになるわけですけれども、新規BR、10番の拡張/修正の提案がございました。諮問委員会の勧告に基づいて、新規のBRが20件、それから、我が国からは3件、拡張/修正BR案が出ておりましたけれども、それを含む9件が承認され、そして、2件の既存BRが辞退するということで、最終的には120か国、669件のBRが今、登録されているということになります。承認された後に、「白山」「大台ヶ原・大峯山・大杉谷」「屋久島・口永良部島」それぞれの代表者の皆さんが御挨拶をしました。
あと、出口戦略の実施状況についての議論がなされました。項目12ですけども、基準を満たしていないBRは、2016年9月30日までに当該勧告に対する回答を行わなければならないということでございました。
リマ行動計画につきましては、BR大会の文言がそのまま認められました。4ページの項目14でございます。
それから、リマ宣言。これも、実は3月の会議のときに配布したものよりも項目が7、8個増えております。特定の国から、やはりそれなりに重要な役割を果たしているということを盛り込むべきとかで幾つかの修正がなされてございます。
一つ気がついたことですけれども、今回、2日間で国際調整理事会を開催いたしました。非常にタイトで、最初の日、つまり、BR大会で出されたいろいろな修正を調整理事会に盛り込むという形で事務局は取りまとめるのですけれども、スクリーンに映し出される議案の文言が、かなり脱落があって、注意して見ていないと抜けていることに気がつかなかったりする。そのまま通ったりすると大変ですので、一々そこでストップを掛けると、それでまた時間を掛けてしまうということで、進行がかなりきつかったということがございます。
もう一つは、ラポルトゥールとかビューローメンバー、これらは副議長というんですけれども、選ぶときに、開催国であるペルーが当然ながら副議長として立候補して、多くの国は賛成したんですが、どうしても自分の国がなるんだといって譲らない方がいたので、午前中のほとんどの時間をそれで費やしました。多数が賛成しているのだからいいじゃないかとなったのですが、最終的に無記名の投票にしろということで、またすごく時間を掛けてしまいまして、事務局が大変でした。やはり3日間ぐらいの日数を掛けていただくように今後はしていただきたいと思っております。
以上でございます。
【礒田主査】
ありがとうございました。ただいまの御説明について御質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
御質問等ないようでしたら、本議題は以上といたします。岩熊委員と松田委員におかれましては会議への御出席、ありがとうございました。
それでは、議題3に入ります。MAB計画については、2015年~2025年の10年間のMAB活動の新たな戦略に当たるMAB戦略、それに対応するものとしてBRに携わる多様なステークホルダーがとるべき具体的な行動について定めたリマ行動計画が策定されました。
本分科会は、我が国におけるMABナショナル・コミッティとして、MAB戦略及びリマ行動計画に位置付けられておりますところ、我が国において本戦略及び行動計画へどのように対応していくべきか、本日は御意見を頂きたいと考えております。
まずは事務局から説明をお願いします。
【本岡ユネスコ協力官】
ありがとうございます。では、資料5を御覧いただけますでしょうか。
MAB戦略及びリマ行動計画を受けまして、我が国においてどのように推進すべきかについて御意見を頂戴できればと考えてございます。御議論のきっかけとしまして、3つほど論点を簡単に御説明させていただきますので、御意見を頂戴できればと思います。
まず、1つ目は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成の観点から、ユネスコエコパークを通じてどのような貢献が可能かという点でございます。
まず、SDGsについてでございますが、1枚ページをおめくいただけますでしょうか。この資料の上のところにございますけれども、まずSDGsとは、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継となっておりまして、2015年9月の国連サミットで全会一致で採択されたものでございます。これは、先進国を含む国際社会全体の開発目標として、2015年~2030年までの15年間を期限とする包括的な17の目標を設定したものでございます。その17の目標は、資料の下半分にございますけれども、例えば貧困ですとか飢餓、保健、教育など、目標自体が多岐にわたっておりますけれども、ユネスコエコパークに一番関係するところの目標としましては、15番の陸上資源のところに「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進」などに関する記載がございます。このSDGsに関しましては、MAB戦略の世界的状況の項目の中でも触れられておりまして、SDGsの達成に向けてMAB戦略をしっかりと推進していくべきであるということが記載されてございます。
2つ目の観点でございますけれども、ユネスコが実施するほかの事業、IOCやIHP、ESD、その他、ユネスコスクール等との連携の在り方についてどのように考えるべきかということでございます。これは、MAB戦略の中でも戦略目標の3、若しくは戦略行動計画Cに主に関わってくる事項でございます。その中でもユネスコエコパークは、サスティナビリティ・サイエンスやESDの運用を可能にし、主流化の役割を負うという記載もございますし、先ほど松田委員からお話がありましたとおり、本年7月にはインドネシアのバリでユネスコエコパークとIHPとの合同会議も開催されているところでございまして、日本でも、こうしたほかのユネスコ事業との連携を是非推進していきたいと思っておりますので、この観点から、特にお知恵をおかりしたいと思っておりますので、御意見を頂ければと思っております。
3つ目の観点としましては、我が国におけるBR活動をより活性化させ、ビジビリティを高める観点から、各地域や関係省庁、関係団体が実施する取組を共有し、国際的に発信していくことが有益ではないか。この戦略的行動分野のB、C、Dに関係する部分でございます。
既に本分科会の委員の皆様ですとか、JBRNの皆様の御協力により、情報発信はこれまでもされてきたところとは認識しておりますけれども、新たにMAB戦略、若しくはリマ行動計画が策定されましたことを受けまして、さらなる情報発信の方策についてアドバイスを頂ければと考えてございます。
これ以外の論点も含めまして御意見を頂戴できればと思いますので、是非よろしくお願いいたします。以上でございます。
【礒田主査】
ありがとうございました。ただいまの説明について、御意見等ありましたらお願いいたします。
まずはSDGsの達成の観点から何か御意見等頂けますでしょうか。
【鬼頭委員】
まず、SDGsの関係ですが、今の説明だと、例えば目標の15とか、ある意味では14とか、そういうところが関係しているというような説明がされたんですけども、要するに以前のミレニアム開発目標というのが、一つは、いわゆる途上国対象であったということと非常に限られた開発目標というような形で、どちらかというと専門家を中心にして作成されたと思うんですけども、今回のSDGsは、かなりいろんな国々といろんなステークホルダーが関わって、先進国も含めた形で、よりトータルに開発目標というのを、要するに途上国の問題だけではなく先進国も含めて、どうあるかというような形で捉えられたものだし、今までリオのサミット以来、ずっとこのような持続可能な開発の在り方というのを、自然環境だけではなくて、より社会的な問題、もちろん経済的な問題、さらに言えば非常に先進的、文化的な問題もトータルに捉えて考えるというような形の大きな流れの中で、今回、SDGsという形でまとめられたというふうに私は理解しているんです。
そういうふうに考えますと、実はMABにおいて、今までのコア、バッファーからはトランジションエリアを含めた形で拡大してきたというところが、これに非常に関係していて、いわば優良な自然をどういうふうに保全するかというような観点だけではなくて、それも含めた形で、我々の周辺の地域が持続可能な、まさにここで言うように持続可能な開発がいかに実現するかという形でトランジションエリアが策定されているわけですし、その中で、ある意味では、こういう貧困とか飢餓とか保健とかというところが一見関係ないようにも見えますけれども、例えば今、日本においても過疎の地域において、どうやって人々が生き生き生きられるか、あるいは、いろんな福祉、文化的な向上みたいなものを考えていくのに、ただ単に今までの非常に狭い福祉政策とか、そういうようなことだけではなくて、こういうより広い自然環境を背景にした形で、地域の自然資源をいかにきちんと根差しながら、その地域における持続的な開発をよりしていくかというようなところに根差してトランジションエリアというのは制定されているので、まさにMABがトランジションエリアも含めた形で策定されて、特にコア、バッファーとの関係、その中で、いかにその地域において持続可能な開発がどういうようなレベルにおいて行われているかというところが、まさにSDGsの17の目標に非常に密接に関係しているというふうに私は感じています。
ですから、ある意味では、SDGsという形で国連の大きな開発目標として定められたことにより、MABにおけるコア、バッファー、トランジションエリアにおける、特にトランジションエリアにおける地域社会の在り方、特に自然環境とそこの持続可能な開発、経済的な生活、あるいは文化的な生活との関係をいかにうまく発展させていくか。つまり、BRを策定することによって、一つのモデルとして、そういうようなものを考え、それがモデルとして、日本だけじゃなくてアジアとかを含めた形で、今後、SDGsがきちんと実現していくようなモデルとしてMAB計画のBRを考えていくという形で考えれば、非常に整合性があるところであり、今までのなぜMABがトランジションエリアも含めてやっているのか。しかも、トランジションエリアとして、どういうようなものを我々が重要なものであり、しかも、指定したことによって、その地域がトランジションエリアを含めて、さらに、その地域社会がより豊かに、自然環境も保全され、経済的にもいい状況になるためにはどうするかということを、今後、MABで検討していくというようなところに非常に意味があるのではないかというふうに思っています。
そういう意味では、実は2番目のESDもそうで、ESDが、今まで環境教育というところの枠からなかなか抜け出ない。ユネスコスクールという形で指定していろいろやっているんですけども、SDGsが考えているような広範な枠組みの中で、次世代をどういうふうに育成していくかという非常に重要な課題なわけですけども、だから、より一層、トランジションエリアにおける、ユネスコスクールにおけるESDを推進していくということが、MABの目標を実現していくということと、SDGsを実現していくということをより統合的にやっていくという意味で、大変意味があるだろうというふうに思っています。
【礒田主査】
ありがとうございました。
ただいまの鬼頭委員の御発言については、恐らく目標9のインフラやイノベーションなどにも非常に近いものかと思います。
【鬼頭委員】
そうですね。それもそうですし、多分、17全部に関係していると思うんですね。さっき言ったように貧困というのは、過疎とか、そういうようなところをどうするかという話になりますし、飢餓というのは、日本はなかなか関係ないですけども、でも、国際的に考えると、いろんな地域でこれからBRを設定したときに、その辺の飢餓とか保健とか、さらには水環境なんていうのは、今の水文学の話も出てきそうですけど、そういうのが関係しているでしょう。ですから、なるべく17の目標みたいなものを、どれを重要視するということではなくて、やはり今後、BRでトランジションエリアの活動を評価し、さらにどういうふうにエンカレッジしていくかといったときに、こういうものを一つの指標として考えるということ。ですから、私は、SDGsの17項目というのは、一種のレファレンスとして考えていく。要するに、それぞれの社会におけるいろんな活動を、自分たちが今どこにいるのか、しかも、これをどういうふうに広げていくかということをレファレンスで考えていくということで、非常に意味があるだろうと思いますし、今、特にSDGsに関連していろんな活動が行われていますけども、おおむね、いろんな市民活動などでもそういう意見が結構見られるということを補足しておきます。
【礒田主査】
佐藤委員。
【佐藤委員】
恐らく、今の話とほぼ同じことを申し上げたいんですけれども、全部が相互に連関しているというのがSDGsの特徴でして、この相互に連関しているもの全てが持続可能な開発という大前提、特にMABが掲げているようなトランジションエリアにおける持続可能な開発というものの根幹をなすものだろうというふうに考えられますので、これは、個別に一つ一つ断片で捉えるのではなく、持続可能な開発をやっていくときに、これ全体が様々な相互関係の中で行動していくんだというふうに考えて、MABの運営の中で、これを中心に据えていくというぐらいのアプローチが正確なのではないかという気がいたします。ですので、繰り返しになりますけれども、これは全部が関連するんだということを確認していただければと思います。
【礒田主査】
分かりました。
【重委員】
その意見に賛成です。
【礒田主査】
松田委員。
【松田委員】
この基礎資料の120ページ、リマ行動計画の最初を御覧いただきたいんですけども、先ほどの協力官のお話にもありましたが、この生物圏保存地域は、持続可能な開発目標と多国間環境協定の実施に寄与するモデルとして位置付ける。つまり、自然が一番豊かなところの世界遺産に次ぐようなものという意味ではなくて、そのコミュニティが持続可能な開発を模範となってやっていくモデルになるんだというところが中心です。
資料2の最後の6ページ目を御覧いただきたいんですけども、1月23日に白山でユネスコジオパークの誕生記念フォーラムがあり、私は呼ばれて行ったんですけども、そのときに私、元事務局長の松浦先生、それから、ジオパーク世界の中心物人物であるマッキーバーさん、この3人が講演したんですが、全員がSDGsが重要だと。つまり、そのときはジオバークですが、ジオパークは、どちらかというと自然の地理的な遺産と、それから、それを利用した地域活性というような話だったんですけど、これからはSDGs全体を取り込むということがユネスコの公式プログラムになる意味なんだというふうにおっしゃっていました。私もそういうふうに申しました。
そういう意味で、全部相互に連関しているというとおりなんですけども、ある意味では各自治体の、これは環境政策課がやること、これは教育委員会がやること、ではなくて、地域が本来、そういう持続可能な地域づくりとしてやられていること、これをむしろMAB計画の中に位置付けていただく中で、これをやっていく。逆に言えば、何かしゃくし定規に、MABになったから、これをやんなきゃいけないというような受け身的な発想じゃなくて、本来必要だと思っていることを積極的にやっていただいて、それをMABに生かしていただきたい、そういうふうに思っているところです。
【重委員】
今のSDGsの17のターゲットが全部つながっている、関連しているという見知と意識、そのことを教育するのがESDの人材育成の教育だろうというふうに思いますので、是非、専門家の皆様方も、その意識をいろんな方にお伝えいただけると、ESDの理解が深まるのではないかというふうに思います。
【礒田主査】
SDGsとの関連について、ほかに御意見等頂けますでしょうか。よろしいでしょうか。
ただいまESDとの関連なども出てきておりますけれども、IOCやIHP等との関わりについては何か御意見等ございますか。
【松田委員】
では、私から。実は私、海の方も少しやっているんですけども、海の方で今、盛んに議論されているのは海洋空間計画というように、海域という面をどういうふうに管理していくか。様々なステークホルダー、つまり、漁業であったり、もちろん海運であったり、レジャーであったり、いろいろ関わってくるというのがホットな話題なんです。そのIOC側の文書などを拝見すると、最初の海洋空間に関するガイドラインがMABとの共同で書かれていたりします。そういう意味では、最初からMABも、いわばゾーニング的な意識で大きく関心を持っていたんだろうと。ただ、実際、MAB計画は陸域の方を中心にやられているような意識がありまして、海のそういうところになかなか至っていないというところがあります。一つは、沿岸の管理であれば、大いに関係するということで、IOCの方々と密接にリンクすることができると思います。
実は今、国連海洋法条約などで、今月末も私、国連に行くんですけども、公海上の海の資源は誰のものかというような、一部哲学的な、逆に言えば海底資源を探索したい人にとっては生々しいような問題があります。そのときに、MAB計画でやっているような人間と自然の関わり、どういうふうに調整したらいいかというようなアイデアが生かされていけばいいと思います。どうやったらいいかなんですけど、具体的には、日本のプレゼンスがIOCの中でかなり高いと聞いておりますので、日本の海洋関係者、IOCの関係者と我々MABの委員が連携して、国内で何かやってみるというのも一つの手ではないかと思います。
それは、IHPに関しても同じでして、先ほどのリマの会議ですけど、森本統括官はビデオメッセージを流されたと伺ったんですが、残念ながらMABの関係者としては、招待された白山の中村真介さんだけだったんですけど、IHPの関係者は確か3人ぐらい参加されていたというふうに私は記録上は読み取れました。その中でもIHPとMABで、日本の中でも連携したいという話が出たと聞いておりますので、まず国内で、そういう関係者同士で何かイベントを考えてみるということから始めたいと僕は思っております。
【礒田主査】
ありがとうございます。
そのほか、他の事業との連携について何か御意見等ございますでしょうか。では、佐藤委員。
【佐藤委員】
考え方の一つの在り方として、もしかすると、例えば海洋に関しても、水文に関しても、教育に関しても、基本的にはMAB計画のパーツであるというふうに見ることが十分にできると思うんです。そういうふうに見てしまうと、余りにもMABが偉そうで怒られるかもしれませんが。ただ、逆に言うとMABが掲げているような、本当に自然環境と調和した形での社会の持続可能な発展という一つのビジョンの構成要素としてこれを捉えて、それぞれの必要な場面において共同していくというのが、MABとしては一番よいのではないかという気がいたします。
【礒田主査】
ありがとうございます。
その中で、やはり各地域とか関係省庁とか、また団体との関係性というのも非常に重要になってきますけれども、こちらについて何か御意見等頂けますでしょうか。
【松田委員】
じゃ、よろしいですか。
【礒田主査】
はい。
【松田委員】
まずMAB計画、そういう意味では国際的なものなんですけども、結構、今、日本のMAB計画が、それなりに活性化しているということが知られてきているみたいで、いろんなところからコンタクトがあります。一番特徴的なコンタクトはJICAです。リマの大会にも3人ぐらい参加されていましたけど、非常に力を入れていて、JICAが途上国援助をする際に、向こうの国のMAB計画を支援するという形が、かなり分かりやすい例として言われているように思います。
もう一つは、国連大学が今年のネットワーク会合の場を、渋谷の国連大学本部でホストいただいたということ。実際にやられているのは、その中の高等研究所いしかわ・かなざわユニットというところなんですけども、今まで里山やジオパークをやられていた国連大学の機関が、今、MAB計画を大量に支援していただいている。ちょっと前までは、地球研の佐藤さんのプロジェクトで大変御支援頂きましたけど、そういう形でだんだん広がってきています。その中で、国際的な役目が果たせるというのが、まず一番大きなところかなと。
国内の環境省や林野庁は、エコパークの今までの取組の中でかなり御理解いただいて、御支援も頂いていると思っておりまして、それは今後とも進められると思います。
そういう意味では、多分、IOC関係では、学会とか、そういうものとのつながりも含めていろいろ検討すればいいんじゃないかと。先ほど佐藤さんが全部、MABのパーツだというとMABが一番偉そうだというふうなことをおっしゃいましたけど、幸か不幸か、どちらかというとMABの活動が今まであまり活性化されていなかったようなので、むしろ、彼らに支援頂いて、理解いただくという面で、ただ、みんな、MABの趣旨はいいことだと理解いただいているという意味で、そういう意味で偉そうじゃなく助けていただくという意味で、割と素直に連携ができるかなと。それは、実はジオパークとの関係も同じなんですが、そういうふうに私は思っております。
【礒田主査】
ただいまの御意見は、国際的に発信していくという点で、JICAや国連大学との連携が非常に重要ということでありますし、また、研究者集団としての学会活動の中でもいろいろ連携をということだと思います。
ほかにございますでしょうか。関連省庁の方から何かございましたら、よろしいでしょうか。
いろいろ御意見頂きましたので、頂きました御意見を踏まえまして、引き続き本分科会としての対応について検討してまいりたいと思います。ありがとうございました。
それでは、議題4に入ります。本議題は非公開となりますので、傍聴者の方は御退室ください。

<議題4.平成28年ユネスコエコパーク申請について>
平成28年ユネスコエコパーク申請地域について審議を行った結果、「祖母・傾・大崩」(大分県、宮崎県)、「みなかみ」(群馬県、新潟県)をユネスコに推薦することを決定した。

お問合せ先

国際統括官付