日本ユネスコ国内委員会文化活動小委員会 第12回ユネスコ記憶遺産選考委員会 議事録

1.日時

平成27年3月2日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 国際課応接室

3.出席者(敬称略)

〔委員〕

島谷弘幸(委員長)、大滝則忠、西園寺裕夫、高埜利彦、高山正也、芳賀満、宮地正人

〔関係省庁〕

外務省、文化庁関係官

〔文部科学省(事務局)〕

山脇良雄国際統括官、秋葉正嗣大臣官房付、その他関係官

4.議事

【島谷委員長】
 それでは、始めたいと思います。
 本日は御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、事務局はまず定足数の確認をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 委員の現在数が8名に対しまして、御出席の委員7名でいらっしゃいますので、定足数を満たしております。
【島谷委員長】
 では、ただいまから第12回ユネスコ記憶遺産選考委員会を開催いたします。
 平成25年1月18日に決定された公開手続により、本委員会は原則として公開とすることとされております。会議の内容については議事録として公開されますので、よろしくお願いいたします。また、本日は報道関係者等の傍聴者が、報道関係が3人と関係の方がそちらにいらっしゃいます。
 それでは、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

(事務局から配付資料について説明。)

【島谷委員長】
 大丈夫でしょうか。
 それでは、早速ですが、本日の議題1に入ります。前回の委員会におきまして、国内公募の選考基準について御議論いただいたところでございますが、本日は選考基準について改めて御審議いただくとともに、公募要領についても御審議いただきます。最初に事務局から説明をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 資料2でございますけれども、こちらは選考基準(案)でございます。こちら、ユネスコが審査に当たりまして採用しております、いわゆるガイドラインの中にあります選考基準を基本的にそのまま採用してございます。
 1.といたしまして基本要件。こちらは真正性、唯一性・代替不可能性、それから世界的重要性という主な3点から構成されております。世界的重要性につきましては、時代ですとか場所、人、題材とテーマなどの小項目がございます。特に世界的重要性につきましては、その地理的な影響が世界的な広がりを持つものでなければならないとされてございます。
 2.の選考に当たって考慮する事項、こちらは5点ございます。希少性、完全性、公開性、所有者、管理者との協議、管理計画という5点を掲げさせていただいております。
 次に、資料3でございます。こちらは国内公募要領(案)でございます。まず趣旨といたしまして、ユネスコの記憶遺産につきましては、1国について2件までがユネスコの審査に付されるということから、このたび日本ユネスコ国内委員会が公募をして、2件以内の選定をするということでございます。
 2.は記憶遺産の概要でございます。おおよその内容が分かることを記載させていただいております。
 3.対象物件につきましては、ユネスコ記憶遺産の対象となる単体の記録物又はその集合体であって、その全部又は一部が日本国内に存在するものといたしまして、具体例として手書き原稿、書籍、新聞等を記載させていただいております。また、2か国以上が共同申請をする場合でございますけれども、このような共同申請につきましては、我が国に割り当てられた2件の制限から除外されるため本公募の対象とはならない。したがって、共同申請案件については、直接ユネスコに申請することとさせていただいております。
 申請資格については、当該物件に関係する個人又は団体(所有者や管理者など)とさせていただいています。
 続きまして、申請方法等につきましては主に事務的な内容でございますけれども、(3)の提出期限につきましては、平成27年6月19日、18時までとさせていただいています。
 6.の選考及び結果通知でございますが、これはユネスコ記憶遺産選考委員会において、ユネスコ記憶遺産の国内公募における選考基準(別紙1)に基づいて行うとさせていただいております。結果通知については、本年9月頃、連絡担当者に通知するということでございます。
 7.の選定件数については、2件以内でございます。
 8.選定後の選考委員会からの助言等。これは申請物件の決定の後、選考委員会が助言等を行うということでございます。
 選考スケジュールにつきましては、後ほど別の資料で説明をさせていただきます。
 10.のユネスコへ直接申請した場合の取扱いでございますが、本国内公募によらないユネスコへの申請がなされたことにより、我が国からの申請が3件以上となった場合は、国内委員会が審査に付すべき2件以内を改めて選定することとなるが、本国内公募により選定された物件が優先される。これは、ユネスコのガイドラインに基づいた記載となってございます。
 11.の公表のところは、申請があったものについては、物件名称と申請者、また選定された後には、またその物件名称と申請者を公表するということでございます。
 それから、この公募要領の別紙1が、先ほど説明をさせていただきました選定基準でございます。別紙2につきましては、選考基準の解説ということで、これはユネスコ記憶遺産登録の手引の中にございます、実際に登録された物件の例示等を抜粋して説明を加えたものでございます。
 それから、様式1、これはユネスコ記憶遺産国内公募申請書の様式でございます。こちらにつきましても、ユネスコが使用しております申請様式、これは原文、英語でございますけれども、それを一部修正の上和訳したものでございます。1.0の要約から始まりまして、申請者の詳細、記録物の識別情報、内容説明、それから4.のところ、法的情報、これは所有者、管理者など、アクセス可能性といったことがございます。5.0からは選定基準に照らした評価ということで、6が関連情報、希少性、完全性。7が利害関係者との相談。これは申請者が物件の所有者でない場合、所有者との管理状況を記載するなどということにさせていただいております。8がリスクの評価で、9、保全及びアクセス管理計画、10がその他の情報といった申請書の様式とさせていただいております。
 続きまして、資料4でございますが、こちらは今後のスケジュールを説明させていただいたものでございます。3月2日、本日でございますけれども、公募要領(選定基準を含む)ということを決定していただきまして、本日にも公募を開始させていただくということを予定しております。これにつきましては、文化活動小委員会、それから国内委員会総会に公募を開始した旨を報告いたしまして、締切りが6月19日。
 それから、実際の選考でございますけれども、7月から9月にかけまして、まず選考委員会の委員による事前評価、それから合議審査を2回程度と考えております。こちらについては、申請の状況によって多少の変更がある可能性がございます。また、物件を決定いたしました後は、また文化活動小委員会、国内委員会総会に報告をいたします。それから、9月から12月は、申請された物件に対して必要に応じて改善の助言を行います。来年1月から2月が申請者による英訳でございまして、3月にはユネスコに申請書を提出するということを予定しております。
 資料の説明は以上でございます。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。統括官、お願いいたします。
【山脇国際統括官】
 続きまして、事務局、国際統括官でございます。前回のこの選考委員会で今の公募選考に関連して、この選考委員会の位置づけとか役割についての御議論がありましたので、それについても事務局の方で整理をいたしましたので、御説明をさせていただきたいと思います。
 前回あった議論としては、記憶遺産に関連した文化戦略的な方向性についてこの委員会としてどのような関与をすべきなのかという点。それから、高山委員だったと思いますが、申請案件について事前の調整をする。例えばもう少しこの物件を加えるとか、そういうような関与をこの委員会ですべきかどうかという点についても御指摘がございました。その点について、まず事務局の考え方を整理いたしましたので、御説明したいと思います。
 基本的には、この記憶遺産に関しましては公募という方向で、一般に公募をするという形で選定するという形にいたしましたので、基本的なこの選考委員会の役割というのは、選考を中立的に行うということが第一義的に重要であろうと考えております。公平公正な選考に徹するということが、第一に非常に重要だろうと考えています。その過程で、前回ありましたのは、この記憶遺産に関連するような政策的な事項とか、基本的な考え方はこうあるべきではないかとか、今後はこういうような政策の方向性を持っていくべきだというような御議論があろうかと思います。
 そのような議論については、この委員会で意見を出していただいた上で、上位の文化活動小委員会の方に報告をさせていただいて、そこで政策的な事項を検討するという形にしたいと考えております。文化活動小委員会に委員長なり事務局なりから報告をいたしまして、そこでしっかりとした政策的な方向性を議論して、必要があれば、それをまた改善を図っていくという対応がいいのではないかというのが第1点でございます。
 もう一つ、申請案件の事前調整、積極的な関与をすべきかという御議論がありました。これにつきましても、今の最初にあった原則、中立性を保つ形で選考に徹するべきだという考え方からすると、やはり事前調整などについてはこの選考委員会は関与しない方がいいだろうと考えております。それは行わないという整理にしたいと考えております。ただし、先ほどもありましたように、選定案件が決定した後で助言をして、完全性を高めるためにいろいろな助言をするということは可能である枠組みと考えておりますので、決定した後はそういう関与はあると考えているところでございます。
 以上が、この選考委員会の役割についての前回の議論を踏まえた整理でございます。
 もう一点、今回の公募に関連して文化庁の申請の関与をどうすべきかという議論もありました。これについて、中立性を確保するという観点から、公募自体が文科省の中の国内委員会が行うという形になりますので、一つは、文科省の一つの部局である文化庁が申請の主体となることについては公平性、透明性に疑義を生じかねないということが一つと、現実問題として文化庁自体が所有する国宝とか重要文化財は非常に限られていますので、ほとんど存在しないということから、今回の公募においては文化庁自らが申請者となるということは考えてはいないという状況でございます。
 ただし、国宝、重要文化財に関連して、管理者や所有者である団体の方からの申請も期待されますので、これらの所有者、管理者の方への周知というものは文化庁を通じても、しっかりと積極的に行うと考えているところでございます。
 以上、前回御議論のありました点について、文部科学省事務局の方で考え方をまとめましたので、御紹介させていただきました。
【島谷委員長】
 どうもありがとうございました。統括官の方から3点にわたって説明を頂きましたが、公募をするということで、本選考委員会は当然ながら選考を中立の立場でやるということは第一義であると。それから、政策的な考え方、諸先生からいろいろ御意見を頂きましたけれども、それについてはこの委員会で意見を出し切った上で文化活動委員会の方で検討して、その方針に従うということになる。これも当然のことかと思います。
 二つ目に、事前調整については中立性ということを考えた場合は行わない。その代わり、決定後、9月以降になりますが、そこで助言してより良いものに仕上げていくということは当然かと思います。
 最後に、前回、文化庁の担当の方も出てくださっておりましたが、文化庁としては、同じ部局の中の一つである文化庁から出すことに関しては適切ではないということがありましたので、それを受けた形で進行しなければいけないかなと思います。ただ、所有者に対して、こういうユネスコの記憶遺産があるということは、より指定文化財については文化庁から周知をしていただいて、その上でどうされるかということはより検討する余地があるのではないかと考えております。
 今この3点について御説明を頂きましたが、これにつきまして政策的な考え方についてどうするかといった点を踏まえて、先生方に御意見を頂戴したいと思いますので、各先生、よろしくお願いいたします。
 どうぞ。
【芳賀委員】
 確認だけしたいのですが、資料4にありますように、申請物件の決定をするのは選考委員会であって、文化活動小委員会及び国内委員会総会は報告を受けるだけで、決定はしないのですね。
【野田ユネスコ協力官】
 そうです。
【島谷委員長】
 前回で確認をいたしましたけれども、前回が少しイレギュラーな状態であり、今後はレギュラーな状態に戻るというふうに承知しております。それでよろしゅうございますか。
【山脇国際統括官】
 はい。
【島谷委員長】
 はい、お願いします。
【高埜委員】
 統括官からの御説明の3点目の件でございますけれども、文化庁のお考えと申しましょうか、見通しとしては、ここを重文級所蔵の各機関から申請が出されるであろうと。その確率といいましょうか、見通しはかなり高いというふうに踏んでいらっしゃるということでしょうか。
【山脇国際統括官】
 いいですか。
【渡辺文化庁美術学芸課課長補佐】
 文化庁美術学芸課でございます。今先生がおっしゃられた確率という問題については、どの程度現実に申請が出てくるかということは承知しておりませんけれども、我々としては周知はいたしていきたいと思っております。
【高埜委員】
 周知という言葉は、広くお知らせすると、あまねくお知らせするということであります。それで、うまく数多く出てくれば大変結構だと思いますが、元々この議論の出発点になっている2年に1回、1か国で2件しか出せないということで、ここに日本が参加したのが他国に比べて遅れているわけです。せっかく貴重な国宝、重文を持っている我が国はより積極的にそのような文化遺産を発信していく必要があるのではないか、こういう考え方を一方で、私どもはかなり共通した認識を持っていると思います。
 ですから、単に周知する程度のことで、今言った少し大げさな言葉で文化戦略という言葉を使いましたが、これがスムーズに運んでいくというふうにお考えなのかどうか。またもともとからの議論に立ち返ってしまいますけれども、そのあたり文化庁はどうお考えなのかということを、もう少し踏み込んで伺わせていただければと思います。
【渡辺文化庁美術学芸課課長補佐】
 ただいま、今回の公募という形の中で手続を行っていくということについて、統括官の方から御説明がありましたように、今回そのような整理で行っていくということですので、文化庁としてはその整理にのっとって対応させていただくというふうに考えております。
【高埜委員】
 とりあえず、私は今の。
【山脇国際統括官】
 もう一つ、前回までのこの委員会の議論で、記憶遺産についての広報の在り方という面についても御指摘がありました。ですので、これは我々事務局としてもいろいろな方法で、関係の方々にこの文化遺産とか、公募とか、やり方とかいうことをしっかりとお知らせしていかなければいけないというふうに考えております。今後検討したいと思いますが、ワンストップのサイト等、これは当たり前かもしれませんが、登録物件とか、公募情報とか、先ほどありました今までどういうものが選定されているのかとか、要件とか、特に選考基準の考え方などをまとめていただきましたので、それらについてはできるだけ一つのホームページで作成をする。
 今までもしていますが、自治体等を通じた形で関係団体にしっかりと伝わるような形の広報体制も併せてやっていきたいと思っております。その一環で、文化庁のチャンネルなども当然活用していくと考えております。関連ではありません、直接ではありませんけれども。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。はい。
【野田ユネスコ協力官】
 今回は公募という方法を採りましたので、ある程度規制と申しますか、公平性に留意をするということがどうしても出てまいりますけれども、将来的には国の文化戦略といったものが日本から出していくときのシステムにできるだけ反映させられるようなやり方、公募以外のやり方というのも検討していく可能性があるのではないかと思っております。
【島谷委員長】
 将来的には公募以外のやり方ということも、今野田さんの方からありましたけれども、今回は公募で行くということですので、公募の中にそういった指定文化財をどう取り込んでいくか、出てきた場合どう対応するかということに尽きると思います。やはり指定文化財をお持ちの所有者については、手を挙げたいと思いつつ、事務手続等についてしゅん巡されている方というのはいらっしゃると思います。そういう方から手が挙がってきたというのは、申請が来るまで何も手を着けないのか、相談窓口みたいなものを文化庁が対応する余地はあるのか。
 そういった点は、私が質問するのは変なのか分かりませんが、いかがでしょうか。その辺、一番高埜先生あたりが心配されていることだと思います。今まで指定文化財、2例、3例挙がっておりますが、そういう形のお手伝いというのを文化庁ができるのか、はたまたどこがやるのか。そういうものは一切なしで、申請の中でそれは処理するのかという、そこのところが一番御心配の案件ではないかと思います。
【山脇国際統括官】
 前回も議論がありましたが、そこは公平性、中立性との観点でどうかというところが一番、最終的には判断の基準になると思っています。例えば、我々選考委員会の事務局である統括官、統括官付としても、当然問合せがあったときに、このような形の制度、あるいは申請内容、申請書類を書かなければいけないですよということは、しっかりと助言をしたり、相談に乗ったりということはいたしますので。
 それは、当然そこ、一つの物件を我々申請者と調整してということまでは踏み込めないと思います。それと同等の範囲内で、文化庁はそのチャンネルでいろいろ相談を受けたりすることは、中立性に影響しないという判断基準の下では可能だとは思っています。そこを、踏み込んで申請者とともに共同申請的な形になるというのは、やはり中立性、透明性の観点から難しいのではないかと思っております。
【島谷委員長】
 それは、統括官がおっしゃるとおりで共同申請は当然できないと思いますが、相談があった場合に、より内容について詳しい文化庁の技官、多数おりますので、そういったところと、若しくは、その方面の研究者と調整してやるということはあり得るということでしょうか。
【山脇国際統括官】
 そうですね。先ほどの繰り返しになりますが、文化庁としての位置づけとしての透明性とか中立性に疑いが掛けられないというか、疑義がない範囲内でやることはいいのではないかと思います。我々の事務局と同じような立場かと思います。
【島谷委員長】
 指導、助言の範囲でということですか。それで、申請されたものについて、本委員会及び統括官付の皆さんによって更にそれをブラッシュアップしていくという流れというふうに理解してよろしいですか。
【山脇国際統括官】
 はい、選定されたものについては、それは当然その後。
【西園寺委員】
 文化庁がこの委員会から外れるという決断がありましたね。ということは、文化庁は外れているのだから、もちろん委員会自体は中立・公平性を維持しなければいけないけれども、文化庁自体は必ずしもそれに該当はしないのではないかなと。
【島谷委員長】
 選考委員会ではないと。
【西園寺委員】
 選考委員会ではないから。それはそれなりの考え方があって、もちろん独自で申請はしないという、今回はですね。しかし、周知はすると。周知という意味の中に、高埜先生がおっしゃっておられましたけれども、もう少し踏み込んで、個別といいますか、特にこれは大事だと思われるような所有者に対しては、こういうものがありますよみたいな個別リマインドみたいなことは、別に。
 出てきたものを公平・中立に選考するというのは大事ですけれども、土俵に上げるまでの段階では、必ずしも公平・中立ということを文化庁がそこまでこだわる必要はないのではないかなという気がいたします。
【島谷委員長】
 先ほど文化庁の渡辺さんの方からも、周知をするということをおっしゃっていますので、今西園寺委員がおっしゃったような形で周知するということは当然積極的にやってくださると思います。問題は、周知した後に所有者がどのように一歩踏み出すのかどうかというときに、その相談窓口として文化庁が――相談窓口というか、ある程度力になってくれるのかどうかということが一番問題点ではないかなと思います。
 今西園寺委員からの御指摘のような形で、委員会は中立で、文化庁は委員会から外れたわけなので、そこである程度の助言、積極的な助言というか、質問に対する助言に関して応じるのはいいのではないかという意見が出たように思いますが、それにつきましてはどうでしょうか。
【野田ユネスコ協力官】
 前回、事務局から文化庁が外れていただくということを申し上げましたけれども、もう一度整理いたしました考えでは、外部の方から見ますと、どうしても文部科学省の中にある機関が事前に個別のところに働きかける等については、公平性、透明性について説明責任を十分果たすことができないのではないかということで整理をさせていただいたところでございまして、その辺、御理解を賜ればありがたいと思います。
【島谷委員長】
 今、西園寺委員からは、個別に積極的に働きかけるという発言がありましたけれども、それは均等に働きかけた結果、手が挙がってきたところに関してどうかということを私は今質問したつもりです。だから、狙い撃ちのような形でということではなくて、意見として上がってきたところで、本当にこれだけのことに対応するというのは、一所有者とか、一地方公共団体でほかの業務がありながらやるというのは結構大変なことかと思いますけれども、そこで相談を受けたときにどうかということです。
【西園寺委員】
 公募というものの中に、自薦・他薦という考え方があってもいいのではないかなというような気はする。つまり、先ほど言いましたように、土俵に上がってきたものに対しては公平中立に選考する、これは大前提だと思います。ただ、ノミネートする段階でいろいろなものが入ってくること自体は、選択の範囲が広がるわけだし、それは大事なことだと思います。少数の中から選ぶよりも、いろいろなものがあるということです。
 その中に、例えば他薦というところまで行かないまでも、文化庁が推薦するとまでは行かないまでも、やはり自ら申請していただくような多少の働きかけがあることがそんなにまずいことなのかなと。その上で、選考委員会の中で、しかも例えば文化庁が入っていて、選考の過程で公平中立が保てないということはまずいことだと思います。しかし、そこも土俵に上るまでの話で、それほど公平中立性というものが大事なのかなというような気がしますけれども。
【野田ユネスコ協力官】
 これは、どうしても、例えば上がってきた中からでも、文化庁とやりとりをしたところがあると。一方、文化庁とのやりとりは全くないところから見ますと、どうしてもそちらの方にバイアスがかかったのではないかというような疑義を生じる可能性がございますので、事前の働きかけについては、どうしても一律に情報を流しますとか、あるいは制度的なものについて御説明をするとか、質問があれば、こういった申請は対象外で認められないとか、そういったことにどうしてもとどまらざるを得ないのではないかと考えております。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。
 先生。
【高山委員】
 少しげすな、通俗的なことになるかもしれませんが、先ほど来周知をして、たくさんの案件が手を挙げてくださるということが望ましいという話が出ています。まさにそのとおりだと思いますが、それに絡んで、今私なんかが見ておりますと、関係のありそうなところにこのお話をいたしましたときに、ユネスコへの登録は大変結構だけれどということにはなりますが、しかし、そこで少し慎重になられます。これはどういうことかと言いますと、仮に手を挙げて採用されたとして、要するにユネスコに登録されたということになったときに、どういうメリットがあり、ベネフィットが得られるのか、反対にどういうオブリゲーションといいますか、制約条件が課せられるのか、そこのところが明確にならないと、手を挙げてよいかどうかが判断のしようが無い。したがって、周知の段階で手続については大変よくお知らせいただいているけれども、その手続を十分に理解した上で、さあ、申請するかどうかについてどう判断するかというところで二の足を踏んでしまうということがあるそうです。
 ですので、それは公表できるものなのかどうか知りませんが、このユネスコの記憶遺産に登録されるということがどういうメリットがあるんですよ、あるいは、どういう制約条件を課せられますよということが事前に公表できるものなのかどうかというところも、お聞かせいただけるとありがたいかなと思います。そういうげすな即物的な、どういう利点があるかなどということではなくて、高まいな精神の下でやはり貴重な文化財だから、これはユネスコにきちんと登録しておくのがそれぞれの文化財に関わっている機関なり、あるいは人物の義務だというふうに考えるべきなのか。その辺はどうでしょうか。
【島谷委員長】
 その辺は、私から答えるのが適切かどうか分かりませんけれども、記憶遺産ということになると、周知されるレベルが国の指定文化財と絡み合うところはありますけれども、違いますので、数的にも今は少ないですので、より周知の度合いが広くなるというのが一番の大きなメリットで、その文化財の保存管理の重要性というのが増すというのがあるかと思います。
 制約という意味では、選考基準にもあります、選ばれたものがどういうふうにこれから保存管理が担保されているかというのが大きな選考基準になっていますので、そこのところが十分であれば、それ以上のものというのはないと思います。担保されているというものが十分担保されなくなった段階で、記憶遺産の登録から解除されるということになると思いますので、そこのところぐらいかなと思います。ほかに何か、それに加わるようなことはございますでしょうか。
【野田ユネスコ協力官】
 先生がおっしゃるとおりということで、登録された後は、申請書に書かれているような保存、公開の計画を実施していくということが課せられる。それ以外については特にございません。
 一方、メリットについては、当然のことながら、国際登録簿に登録されたことによって認知度が高まる。重要性についても認識が高まるといったようなことかと存じております。
【島谷委員長】
 それは指定、未指定かかわらず、どちらにしてもそうですね。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね。
【島谷委員長】
 そのものについての対応というのは、余り考えなくていいのではないかと思います。申請に合致するかどうかの審査のときにそれは討議されますので。
【高山委員】
 はい。登録されたときに、多くの人たちが非常に警戒しておりますのは、登録されるのはいいけれども、その後、非常にいろいろと管理するための条件が付されるのではないだろうかということがある。しかもそれは登録時だけでなく、半永久的にその条件を守らなければならない。もっと具体的なことを言えば、管理するためのコストを一体どれぐらいの期間にわたって、どれぐらい見積もればいいのかという課題を当事者としては当然考慮しなければならないわけですね。
【島谷委員長】
 それは、選考の基準で公開だとか保存管理はうたっておりますので、十分にそれが担保されていないものは選ばれませんから。
【高山委員】
 ええ、そうであれば、要するにそれを心配して最初から手を挙げないということに行ってしまうわけですね。
【島谷委員長】
 現状で十分それが担保され……。
【高山委員】
 手を挙げて、先ほどの話ではないですけれども、土俵に上がってくれれば、そこから先はいろいろとまたできるわけです。だけれども、そこまでに至らないということになったときに、もちろん、そんなこと言わずに手を挙げてよと水面下で働きかけるということはできるのでしょうけれども。
【島谷委員長】
 現状がどうであるかということで審査されますので、新たに整えた上で審査するかしないかということではないので、それは問題はないというふうにアドバイスされていいのではないかと思います。
【高山委員】
 そうですか。
【島谷委員長】
 そのレベルにない人たちが土俵に乗ろうとすると、非常に余分なお金というか、負担が掛かると思いますけれども、十分にそれが担保されている人たちにとっては問題がなくて、申請書の書きぶりの方が問題になるということだと思います。そんなことでよろしいでしょうか。
【高山委員】
 はい。状況はそれなりに理解しました。
【島谷委員長】
 先ほど西園寺委員からありました自薦、他薦、公募であってもいいのではないかということですけれども、公募という形を採る限りにおいては、自分から手を挙げるのがやはり公募のことであろうと思います。他薦というのは、先ほど高山委員から言われたように、相談を受けたときに、それはやったらどうかみたいな形で水面下でやった結果、自ら手を挙げたものが増えてくるということは望ましいと思いますので。
 国宝、重要文化財を含む指定文化財がどのような形で政策的に行くかというのは、現状では政策的には行かない、やらないという形を文化庁としては考えているので、相談があったときにどう対応するかということに尽きると思います。働きかけについては、もうやらないという方針を決められているようですので、周知した段階で質問に対してどの程度までアドバイスをするのかということに尽きると思います。
 「東寺百合文書」にしても、「御堂関白記」にしても、かなり整合性が合うような形で周到に準備されたやに聞いておりますので、相談があったときにある程度、そこまでとは言いませんが、こういうものですよということを文化庁が積極的ではないにせよ、関与してもいいというふうに考えるかどうかと。
【西園寺委員】
 すみません、この間の議論で私、記憶がはっきりしていないのですが、国の所有している例えば国宝、こういうものは申請できないと、国が申請することはできないということでしたか。
【島谷委員長】
 文化庁は申請しないということでしたね。文化庁が管理しているものはほんのわずかにしかすぎないというのが返事でした。私は少し誤解をしていたのですが、独立行政法人のものもある種国だというふうに私は理解していたのですが、それは独法ができた段階で国から離れているというような説明を、前回田中さんがおっしゃっていました。そういうことであれば、国の施設も体力があるところ、ないところがありますので、体力のないところから申請したいと意見が出たときに、文化庁がそういう相談を受けたときにどう対応するかではないかと思います。
 独法になる以前の国有というのはかなりありましたので、それは何となしに私は2割ぐらいかなと思っていましたが、それは国から離れたと田中さんに言われて、ああ、確かに法的にはそのとおりだなと思いました。だから、そういうときにその施設から文化庁に相談が行ったときに、先ほど申し上げた「東寺百合文書」とか、「御堂関白記」だとか、「遣欧使節」だとかというような指定文化財を申請するときのような密な取組というのをしていいのか、悪いのか。それは、助言の範囲というふうにとっていいのでしょうか。
【山脇国際統括官】
 「東寺百合文書」の場合は、選考委員会として申請しているので、あれと同レベルにはまずできないとは思います。
【島谷委員長】
 できないということですね。
【山脇国際統括官】
 助言の範囲内というか、積極的な周知、関与の範囲内では公平性の疑義が生じないところではできるのではないかと思います。
【島谷委員長】
 はい、どうぞ。
【大滝委員】
 今までの議論の中では2点だけ発言させていただきたいと思います。全体として、この選考基準、それから、公募の仕方については原案どおりだろうと私は感じています。ただ、2点だけ、まず、いわゆる相談窓口という話が今出ているわけですけれども、相談窓口の対応の充実という点が今後進める上で大きなポイントではないかと思います。周知されるということは、そうである。それから、先ほど高山委員から出された、この登録制度による社会的な意義、それから個別の所有者にとって何がメリットかというところも、これは周知内容の中に含まれることではあるけれども、周知がこのレベルであれば、手続は分かるけれども、実質的な社会的効果ということについてのグローバルな社会での認識、それから国内での認識というところでは、もっと事例も含めたところで細かく周知というか、ガイドラインではないけれども、その意義を知るような広報活動ということを更に強化していただく必要があるのではないかと思います。
 それで、公平中立に進められて応募しようとするときに、今度、一歩踏み込んだ相談窓口がきちんとあるということが、やはりこの制度を充実させるためには必要ではないか。単に公表された周知内容だけでなく、やはり一歩踏み込んだ対応が必要です。保存管理計画という、我々も今までの選定の中でこの保存管理計画がきちんと組み立てられているかということも、かなり重視していました。そして、それが応募内容にとって少し別の視点を入れてもらえば完全ということはないにしても、充実した保存を行われるという見通しがつくものについて、例えば相談の窓口の中で少し踏み込んだアドバイスをしてもらうような形で応募してもらうということも必要ではないかと感じます。ですので、そこのところを、例えば保存管理計画一つ取ってみても、応募者から見れば周知されている内容、それから前例を様々検討されて、このレベルが求められているという推測はつくにしても、やはりそこのところを相談したいということがあると思うので、そこの充実がまず、相談窓口として重要ではないかというのが第1点です。
 第2点は、高埜先生が御指摘のとおり、かねてから観点として必要であるというところの文化政策としての対応という点で、私は前回までこの考えが必要であるということで考えているのですけれども、それが具体的にどういう形で公平中立を保ちながら進められるのかという難しさがあることは確かです。一方で、芳賀先生御指摘のとおり、いわゆるスーパー国宝を選ぶのではなくて、全体として文化的な価値のあるものの登録を増やしていこうという視点もあります。
 ただ、現実に2年に1回、2件という制約の中ですので、とにかくその2件を満たすものを積み上げていくということが今我々の段階だと思います。そこで、この文化政策ということに対応する仕組みとして、公平中立を守りながらどういうふうに進めるべきかという問題意識はさらに持ちながら、今回のこの次の公募を通じたという新しい仕組みの下で、どのように問題意識がうまくかみ合う形で進めることができるかという、今はその試行錯誤の一つの段階ではないかという気がします。
 先ほど統括官からお話のあった、もし政策的なところで今後再検討すべきところがあれば、その政策的なところをここで詰めて、上部委員会に上げることもある、そういう観点についての様々な再考察ということも含まれているというふうに理解されれば、まずこの段階では、初めての国内公募というところの手続にまず入って、そのプロセスの中でまた文化政策としてのという観点をもいろいろ考えながら進めるということが現実的ではないかという気がしています。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。はい。
【宮地委員】
 う余曲折あってこういう形の審査になったので、私はやはり意欲があるところが出したものを客観的に見るべきだと、この規則では。ですから、重文、国宝を持っている機関が、独法が意欲があって、認識度をもっと広めたいというところだったら、そこから積極的に出てくるだろうと。面倒と思っているところは、私は出ないんだと思います。これを出せ、出せということは、この規程ではできないということが一つ。
 ですから、この線で私は意欲のあるところ。ただし、クリアすべき点は、これは物すごく難しいですよ。出てきたものが全て、この基準は全て駄目になるかも分からない。そういう意味では、物すごくきつい基準をユネスコが、国内委員会が出しているということが一つ。
 それから、2番目は、これは高埜委員が前から言われているように、きちんと世界的なものとして認識させなければいけないのは正倉院だけれども、これは21世紀の皇室をどうするかという宮内庁の腹がない限り、私はなかなか無理だろうと思います。文化庁でも今まで随分苦労しているはずです。ただし、21世紀の皇室の問題というのは、この問題にもかかって、いろいろ苦慮をしているのではないかと私は推察はしますから、これはもう少し私的な関係で宮内庁の友人がいるときには、やはりサジェスチョンしてもいいだろうと。それだけここに出てくれば、全く問題ない世界的なものを、やはり正倉院その他は持っている。それをどう世界的に発信するのか。やはり今皇室が抱えている一つの問題だろうと私は思います。以上、2点。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。宮地委員のおっしゃるのは、本当に至極当然なことで、意欲のあるところというのが公募の観点ですので、間違いがないところかと思います。
 2番目の正倉院に関しては、これはいろいろな国内外の問題をはらんでいるので、ここで討議をするということではなくて、宮内庁及び正倉院がどうお考えになられるかということに尽きると思います。それで、もし出てくるようなことがあれば、十分討議すればいいことですので、それを待ちたいと思います。
 それで、宮地先生がおっしゃった意欲のあるところというふうに委ねるか、政策的にやるかということですけれども、ここでは今、選考基準については最終決定をしようということではなくて、冒頭統括官がおっしゃられたように幾つかの案が出れば、それを文化活動小委員会の方に出して、それを決定してもらうということでいいかと思いますので、そういった点、もう少しこうすればいいのではないかということがありましたら、遠慮なく出していただければと思います。
【野田ユネスコ協力官】
 先ほどの相談窓口でございますけれども、これは公募要領にも記載しておりますとおり、国際統括官付の方で申請に関心のある方については相談を受け付けるということを一義的にさせていただいておりますので、相談がありましたら、公平性に疑義が生じない範囲においてアドバイスを差し上げるということになると思います。
 例えば国宝、重要文化財に指定されているものを申請されたいということがあって、事実関係として文化庁に確認が必要な場合は、文化庁と相談して対応するというようなことになるかと思います。
【島谷委員長】
 それで、相談窓口が国際統括官付、それから文化庁というふうな概念的なところではなくて、そこの誰とか、そこのどの係とかいうのを明確にした方が、申請者にとってはハードルが低いと思います。何となしに、文化庁のどこにかけていいか分からないということになると、指定のときに関わった人とかいう形になって、その担当技官が十分にこのシステムが分かっているか、分かっていないかということがあると思いますので、それは一本にされた方が公平性というのはより担保されるのではないかと思います。
【野田ユネスコ協力官】
 はい、それは公募要領の方には問合せ先ということで、一義的には私どもの国際統括官付ユネスコ第3係で受け付けるということにさせていただいております。
【島谷委員長】
 その後に、文化庁に確認をするなりというときにも、同じところを紹介するような形で進行すれば問題はないかと思います。余り概念的なことで文化庁にどうぞといったときに困るのではないかなというのが、そういうふうに判断いたしました。
 それで、大滝委員から出た個別の案件でどういうメリット、デメリット――デメリットというのは今余り出ていないと思いますけれども、あるのかというのも、周知する流れの中において、「山本作兵衛」はこうだったとか、「御堂関白記」はこうだったとかいうふうに、指定されたものについての経緯みたいなものがあると、新聞等にこういうふうに注目されましたとか、展覧会に出ましたとか、問題のない範囲でお伝えするというのは意欲を増進することにはなるのではないかと思います。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね、それは御相談を受け付けます際に十分考慮して対応したいと思います。
【島谷委員長】
 それが、相談を受けたときに考慮するのか、相談しようというところでしゅん巡しているところがあるというふうに高山委員はおっしゃっている部分がありますので、そういう事例があるということを、周知するときに加えておかれると、分からないけれども相談してみようかという人、組織も増えるのではないかと思いますけれども、その辺、考慮していただければと思います。
【野田ユネスコ協力官】
 承知いたしました。
【西園寺委員】
 相談窓口というのは、これはどこかにもう明記されているんですか。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね、公募要領の一番最後に、4ページ目でございます。
【西園寺委員】
 そうですか。
【野田ユネスコ協力官】
 本件担当、連絡先ということで。実際に公募する前の段階でも、いろいろな、これは国宝、重文も含めてでございますけれども、私どもの方には相談が来ているところでございます。
【西園寺委員】
 それで、直接的に関係するかどうか分かりませんけれども、公平性、中立性という意味から、ほかの先生方も御経験あったかと思いますけれども、私のところに申請者から連絡があって、会いたいという話があって、今回も申請を準備しているので面会をというお話があって、もちろん私は個人の判断としてお断り申し上げました。これは、何か内規みたいなものでやっておいていただくと。
【島谷委員長】
 そうですね。
【西園寺委員】
 こういうふうに会えないことになっていますと断りやすいのですけれどもね、もしできれば。
【島谷委員長】
 それは、やはり作っておいた方がいいと思います。私のところにも何例かそういうのがありまして、会わないで。個人的な見解で、会うと公平性、中立性の問題でまずいからというところまでは説明しませんが、私も会っていません。
【西園寺委員】
 はっきりしていると非常に。あるいは、ここに連絡してくださいというような言い方を申し上げられれば。
【山脇国際統括官】
 分かりました。
【島谷委員長】
 それも、ここで決めることなんですかね。それは統括官の方で?
【山脇国際統括官】
 事務局として、各先生方、同じ対応になると思いますので、整理して、御連絡するようにいたします。
【島谷委員長】
 余り厳しくやって、水面下で、先ほど言ったように助言をしていいのか悪いのかというのが当然あると思いますので、問題がない範囲でこういうのがありますよと聞かれたときには、ここを紹介すると同時に、今までの事例はこういうのがありますというところまで、それぞれは言うのには差し支えないと思います。
【山脇国際統括官】
 はい。
【島谷委員長】
 全部ハードルを高くしてしまうというのはよくないと思いますので。ただ、中立性が担保されないというのもおかしいので、西園寺委員、私とか、ほかの先生方にも接点を求めてきたことはあるのではないかと思います。
 先ほどのお話がありましたように、スーパー国宝を選ぶのではないにしろ、国宝の中にはこの記憶遺産の考え方に合致しているものはかなりあると思いますので、そういう所有者が意欲を持つような形で周知徹底をしていただきたいというのが私の個人的な考え方です。こういう、ある意味通り一遍で全てが入っているようだけれども、いま一つよく分からない状況ではなくて、もう少し意欲が湧くような形の周知の仕方を工夫していただきたいなと思います。
【芳賀委員】
 その際、高山委員がおっしゃっていたデメリットは、日本のきちんとした機関で申請して、かつ通ったような機関では、日本の場合はあり得ないと、委員長がおっしゃるように、私も思います。それは多分、国として不安定なところ、あるいは自称「国」とか、ああいうレベルのところでは非常にデメリットがあるでしょうけれども、日本の場合は一切デメリットはないと思います。
 具体的な資料2、あるいは別紙1について伺いたいことがあります。これが選考基準ですね。資料2と別紙1というのは同じだと思いますけれども。まず、1.の基本要件の最初のところの文章に、「世界的重要性については、その地理的な影響が世界的な広がりを持つものでなければならない」とあります。これは前回も、その前もたしか申し上げましたが、この考えはやはり非常に西洋的な伝ぱ力重視、覇権主義的な、西洋的な考え方に依拠していると思います。
 そうすると、我々の正倉院はこの「基本要件」をクリアーすると思いますが、ほかの幾つかの国宝、重文レベルのものでも、もしかしたらここに引っかかるようなものもあるかもしれない。
【島谷委員長】
 引っかかるというのは、これに該当しないという意味ですね。
【芳賀委員】
 はい。我々は「世界的重要性」が十分あると主張しても、ユネスコから見たら該当しないかもしれない。そうすると、この「基本要件」がここになければいけないのでしょうか。
 それから、選考基準1.はユネスコが言っているから必要なのかもしれませんけれども、同様にユネスコ作成の申請書様式、原文英語を和訳してくださった別添えの4ページのところにも、5.2として「世界的な重要性」があります。この和訳によれば、この箇所では「世界的な重要性」とは、「世界の特定文化圏内に多大な影響を及ぼしたか?」と定義してあって、これが両方ともユネスコが言っていることなら、「世界的重要性」の定義が少し互いに食い違うような気がします。つまり別添え4ページの5.2には、「世界的な重要性」とは、「長期的、及び/又は世界の特定文化圏内に多大な影響を及ぼしたか?」と定義してあり、「特定文化圏内」の意味がよく分かりませんが、「特定」と言っている以上少なくとも全世界の意味ではない。
【島谷委員長】
 例えばアジアならアジアでOKだと思いますけれども。
【芳賀委員】
 はい。それに対して、ここの先ほどの資料2、あるいは別紙1の1.の基本要件の「地理的な影響が世界的な広がりを持つもの」とは全世界のように思えます。
【島谷委員長】
 これ、解釈で。
【芳賀委員】
 ええ、解釈で。だから、「世界的重要性については、その地理的な影響が世界的な広がりを持つものでなければならない」が、基本要件の第1として挙げられているので。
【島谷委員長】
 だから、1国ではなくて複数の国に及んでいれば、世界的な広がりを持つというふうに解釈をするということでいいのではないかと思います。
【芳賀委員】
 いいのではないかと、日本の我々が出しても、ユネスコがそう思ってくれるでしょうか。あるいは、日本から申請を出したい人の考えは。
【島谷委員長】
 出したい人がこれをどう思うかということですね。
【芳賀委員】
 ええ。
【島谷委員長】
 それを緩和する意味で、「遣欧使節」なんかでも、必ずしも全世界というか、キリスト教の世界という意味では全世界かも分かりませんが、日本とイタリアだとかというふうにとどまる部分があると思いますし。
【芳賀委員】
 でも、あれは当時の世界の中心のスペイン国王と教皇に向かっての使節ですし、海、太平洋と大西洋の大洋を二つ越えていますから、「地理的な影響が世界的な広がり」を持つと認められたのでしょう。
【島谷委員長】
 「東寺百合文書」にしても、「御堂関白記」にしても、そういう意味で全世界というわけではない。だから、希少問題等をはらんでいるといふうに「御堂関白記」なんかは一生懸命理由づけを書きましたけれども、そういう意味では、世界の記録という意味では大きな意味合いもあるわけですけれども。
【芳賀委員】
 ええ、私もそう思いますけれども、ただ。
【島谷委員長】
 そういうようなものを付記しておいて、こういうものが今まで立候補して登録されていますよということになると、手を挙げやすくなるのではないかなと思います。
【芳賀委員】
 はい。では、何か、ただ地理的に、世界的に広がりを持っていないと駄目とのように選考基準の基本要件の最初だけを読むと読めてしまう問題と、同時にほかの箇所ではこれもユネスコ自身が「世界の特定文化圏内に多大な影響を及ぼした」ならOKみたいに書いており食い違っている問題があるので、もう少し何か書きようがないかなと思いました。それがまず一つ。
【島谷委員長】
 これは和訳の問題という意味ですか。
【芳賀委員】
 ええ、これが実際に配布されるわけですよね、選考基準として。
【島谷委員長】
 はい、それが第1点。
【芳賀委員】
 はい。それから、めくって、細かいですが、2枚目の(注)「ユネスコ記憶遺産の対象となる物件」ですが、「ぽつ」が幾つかあって、三つ目の「ぽつ」に、「保存可能である(媒体は無生物)」とあります。これはそうでないといけないのでしょうかと。
 もしこれを厳密に当てはめたら、絹本に描かれた書画の場合、絹は生物の一部です。あるいは、今申請中の「舞鶴への生還」にシラカバに書かれている日記のようなものがありますが、シラカバは木の樹皮ですから生物の一部です。それから、これは何もまだ申請されて出ていないですけれども、私は個人的に思っていたのは皮膚の上の「入れ墨」とかは駄目なのでしょうか。私の分野では紀元5世紀末のスキタイの入れ墨とか、興味深いものが残っています。そういうものも含めるのなら、「媒体は無生物」と決めると、対象とならない物件も出てくる可能性があります。
【島谷委員長】
 そういう絹とか、シラカバとか、生物でないと科学的に言い切るのはおかしいですけれども。
【芳賀委員】
 わざわざ「注」にこう書くのはどういう意味なのかなと。この会議で決められるレベルのことではないのかもしれないですけれども。
【島谷委員長】
 生きているというのは、動物という意味ですかね。
【芳賀委員】
 今生きていないということですか。
【島谷委員長】
 恐らく。
【野田ユネスコ協力官】
 例えば人の頭の記憶の中だけにあるものとか。
【芳賀委員】
 生きている脳の中にあるとか? そういう意味ですか。
【島谷委員長】
 だから、無形とは違いますよというような感じかなとは思いますけれども、伝承芸能みたいなものとは。
【芳賀委員】
 ああ、それなら分かりました。けれども、この書類の文言で、その真意が分かるかな。
【島谷委員長】
 そういったような疑問点があったものについては、どんなささいなことでも連絡してみてくださいということを、ただ周知ということの中には、とにかくこれに関心がある方は一報をくださいというような出し方が望ましいと思いますが。
【芳賀委員】
 はい。では、とりあえず文字上の文言、あと1か所ですけれども、「ユネスコ記憶遺産の対象となる物件」の最後の「例」のところに、「手書き原稿、書籍、新聞、ポスター、図面、地図、音楽、フィルム、写真等」と書いてあります。ここに絵画とかは含まれないのですか。でも、「山本作兵衛」は絵画ですよね?
【島谷委員長】
 いや、もう入っているのではないですか、当然。
【芳賀委員】
 そうすると、絵画と、ここに書いておいてもいいと思います。
【島谷委員長】
 例としては、これはユネスコに書いてある?
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね、純粋な美術品のようなものは対象になっておりませんで、何らかの記録的な要素があるものということになります。
【芳賀委員】
 その境がよく分からないのですが。純粋な美術でも記録的な要素がないといけないのですが。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね。
【島谷委員長】
 記録的な要素があるものというのをどこかに書いておけばいいのではないですかね。
【芳賀委員】
 あるいは、「絵画」がもし該当するならば、「彫刻」、続いて「建築」は該当するのだろうか、とかなっていきます。けれども、そうするとだんだん外れるかもしれませんが。
【島谷委員長】
 記録性がないと駄目なんでしょうね。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね。
【島谷委員長】
 極端に言うと、建造物でも羽目板とか何かのところに記録が書いてある部分があって、それが重要でこの木造建築物がこうであるとかというものが立証されるようなものであれば、記憶遺産としても十二分に。
【芳賀委員】
 そうすると、ローマの凱旋門、記念門は全部記憶のためのものであり、建築でも該当することになります。
【島谷委員長】
 ええ、だから、そういうことも当然ながら検討の余地があって、それを入れるか入れないかというのはユネスコが判断するということになる。だから、それは申請者の概念としてそれも含まれると思ったら、申請してくださいと。また申請してくると、この委員会がすごい頭を悩ませることにはなると思いますが。だから門戸は広くして、それは。
【芳賀委員】
 あとは、私が実は思っていたのは、これら「ユネスコ記憶遺産の対象となる物件」は、(注)にあるように基本的に「移動可能である」とされている点です。西洋においては、ポンペイ壁画とかほとんどの絵画が基本的には不動産ですから。一方、日本の場合はほとんどが動産。例外として高松塚とかキトラがあるだけで、日本の絵画はほとんどが動産です。そういう意味で、「ユネスコ記憶遺産の対象となる物件」は「移動可能である」ものとされている時に、西洋では絵画は不動産だから、「ユネスコ記憶遺産の対象となる物件」の事例として「絵画」が入っていないのかなと、そういうふうに思っていました。
【島谷委員長】
 記憶を旨とするために描かれた絵画がたまたま美術的な要素もあるというものであれば、記憶遺産に入ってもいいと思いますけれどもね。全く個人的な解釈ですけれども。
【芳賀委員】
 要するに、どこが境か分からないわけですね。だけれども、基本的にこの書類が、なるべくみんなに周知して申請を呼び込むことを目的とするときに、現状の文言は、むしろ排除する方向であるかなと思ったので、逆にもう少し柔軟で広い条件を示し、その結果、いろいろ申請が上がってきた方が、選考において、いいものを選べますから、何かもう少し文言の可能性があるかな、と思いました。それだけです。
【島谷委員長】
 最初の観点はそれにとどまるものではないということでいいと思いますけれども、今の細かいところに関して、特に3番目に挙げられた、例として挙がっているところについて、これは選考基準は英文を和訳したものなわけですか、例も。
【野田ユネスコ協力官】
 そうです。
【島谷委員長】
 では、勝手に書き加えるわけにもいかないわけですね。
【野田ユネスコ協力官】
 絵画等についての条件を多少書き添えることは可能かと思います。実際に日本からは「山本作兵衛」ということで登録されている例もございますので、その辺は大丈夫かと思います。
【島谷委員長】
 記憶を旨とするために作られた絵画作品等も含まれるみたいな。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね、そういった趣旨のことを入れておけばよろしいかと思います。
【島谷委員長】
 また元に戻りますけれども、冒頭で統括官が提案していただいた政策的なものについては、この委員会で意見を挙げていただいて、上部の委員会に上げるという話がありまして、大滝委員から提案がありましたようなことについて、ほかの委員の先生方につきまして、こういったことについてもう少しやるべきであるとか、いや、もう十分であるとかという御意見を頂ければありがたいと思います。
 各委員、文化的なものについては絶対必要だとみんな思っているのですが、公正中立性というものについてどう担保できるかというところでしゅん巡しているところがあろうかと思うので、思われることがありましたら、遠慮なくおっしゃっていただけるとありがたいと思います。
 考えていただいている間に、事務局には先ほどから少し出ております相談窓口への対応の充実というところをやっていただきたいというのと、周知をする際に、周知は国内委員会というか、統括官付のところから周知をするということプラス、文化庁も周知をするというふうに考えてよろしいのでしょうか。
【山脇国際統括官】
 はい。
【島谷委員長】
 殊に文化庁から周知する場合は、今まで指定品でどういったものがなっているのか、個別の例としてどういう影響があったのかということも付け添えていただくと、しっかり申請してくださいよといった励ましにもなるのかなと思いますが、それは是非やっておいていただきたいなと思います。
【芳賀委員】
 これはどうでもいいことですが、「連絡先」の住所の、千代田「区」が抜けている。
【野田ユネスコ協力官】
 失礼いたしました。
【島谷委員長】
 はい、お願いします。
【大滝委員】
 先ほどのように、私自身は選考基準及び公募要領を原案どおりということですが、1点だけ少し確認させていただきたいところがあります。公募要件の3ページ目のユネスコへ直接申請した場合の取扱いの項です。これは、まず想定される事例がどういったところに起き得るというふうに考えるか? まずは、国内でいろいろな関係機関を網羅した周知が行われるという進め方をこの委員会としてもお願いしているわけで、それでなおかつ、直接申請がなされ得る場合というのは、現時点でどんなふうに考えたらいいのかというところを教えていただきたい点です。
 それから、結局3件以上になったときに、国内委員会が先に審査した2件が優先されるという考え方が、公平性を欠かないのかどうかというところが、ここでユネスコ記憶遺産のための一般指針、ここに書いてあるところの、これは一種のガイドラインだと思いますけれども、この点どのように言及されているのか。今回は公募という形で進めながら、結局前回の選考みたいなことになって、それでそもそも2件を絞り込んだところが、また3件目を選考するというところで、同じような公平性の関連で、おかしいのではないかということにならないのかどうか。これの文脈でいえば、この一般指針の中に何か手がかりがあるのかなというところですけれども、その辺を教えていただきたい。
【島谷委員長】
 まず、1例目、どういう事例が考えられるかというのと。
【野田ユネスコ協力官】
 事例といたしましては、理論上はユネスコに直接提出するということは可能であるということでございます。これはユネスコ全体の制度として、できないということはできませんので、可能性としてはあるということでございます。
 それから、公平性についてでございますが、これは先ほどのユネスコのガイドラインの4.3.3というところでございますが、少し読み上げますと、登録申請書は、どんな個人、又は政府やNGOを含むどんな組織でも提出することができる。ただし、ユネスコ記憶遺産の関連リージョナル・コミッティ又はナショナル・コミッティがあれば、これらによる、又はこれらを通じた申請が、もしない場合は、関連のユネスコ国内委員会を通じた申請が優先されるという規定がございますので、私どもとしては国内委員会を通じたというのは、公募を通じて出したものが優先されるということを、前もって記載することは問題ないと考えております。
【島谷委員長】
 もう一度私から質問させていただきますと、1点目は、どういう事例があるかないかではなくて、可能性として個人若しくは所有者が申請する道は開けているので、それがここに書いてあるというのが一つですね。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね。
【島谷委員長】
 二つ目は、優先されるということは、2例あって、もう1例、若しくはもう2例が個人申請、所有者申請がなされた場合は、国内委員会で選考されたものが優先されるというのは、全くこれを無視していいというのではなくて、もう一回審査がされるということですか。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね。基本的にはもう一回審査を形式上はするということかと思いますけれども、これを国内委員会にフィードバックがあったときにどう選ぶかというのは、国内委員会に一任をされておりますので、前もってこの2件を優先するということにしておけば、個別の審査をすることなく国内委員会を通じて出したものを審査に付すべき案件として回答することはできると考えております。
【西園寺委員】
 でも、今おっしゃったことからすると、前回みたいに差し戻しはないというふうに理解できないですか。
【野田ユネスコ協力官】
 基本的にはないと。
【西園寺委員】
 国内委員会のものを優先するんだから、3件以上になった場合にはそちらが優先されるから、3件を国内委員会に差し戻すことはないというふうに理解すれば、もうそれで別に決着ではないですかね。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね、基本的にはないものと思っておりますけども、理論上は直接出されるところがあるかもしれませんので、その場合に差し戻された場合は、自動的に国内委員会を通じて出したものを審査に付する案件として回答するというのを前もって。
【西園寺委員】
 いや、それはこちらの判断じゃなくて、ユネスコ側が、例えば国内委員会から2件出ました、それから、それ以外からも来ました。その場合には、こっちを優先しますという、ユネスコ側が判断してくれれば差し戻す必要はないわけですね。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね。恐らくその場合でも、形式的にはユネスコから問合せが来るのではないかと思っておりまして、そのときに、また一から審査をし直すのではなくて。
【西園寺委員】
 でも、その今の文章では国内委員会のものが優先されると言っているわけですから、別に差し戻す必要性が私はないように思います。
【島谷委員長】
 はい。
【大滝委員】
 恐らくそういう事例が起き得るのは、申請の手続の国内審査には時間的に締切りが前にあり、ユネスコはもっと後に、いわば理論的に直接申請できるという、そういうメリットから使われる場合もあるのではないかと思います。ただ、そういう場合でも、もしユネスコにきちんとした先ほど読み上げていただいたようなガイドラインがあるのでしたら、この添付資料の中か、それともこの10番の項目のところに、その該当のガイドラインを明記されることによって、要するにこの公募の考え方としてユネスコとしてのガイドラインがあるのだから、国内公募を優先してくださいということを、我々は公募のときに示すということで今お話があったようなところが解決されるのではないでしょうか。
 恐らく国内選考手続が公平中立の形で進んでいますから、これに誘導するという意思がこの応募要項に含まれて表記されてもいいのではないかと思います。
【島谷委員長】
 それをつけ加えたらより完全になると思いますので。恐らくこの国内に周知をした書類だとか、それを見た人は、別に個々に申請はしないと思いますので。見ない人が勝手にやった分についてはしようがないわけですけれども。いずれ、その懸念がありますので、そういった点もここに付記することが差し支えなければ、付記していただければ、ユネスコの基準としてはこうなっていますよというのはあって邪魔にはならないと思いますので、是非お願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 はい。
【芳賀委員】
 今の10.の文章だと、国内委員会が改めて選定する、ですね。そう書いてある。
【野田ユネスコ協力官】
 そうですね。何と言いますか、選定ですけれども、個別に審査することはなく、形式的にユネスコに回答するということになるかと思います。
【西園寺委員】
 これ、直接3件以上となった場合は、国内公募により選定された物件が優先される。この間の文章を取ってはいけないのですか。
【野田ユネスコ協力官】
 大丈夫だと思います。
【西園寺委員】
 そうすると、よりはっきりしますね。
【芳賀委員】
 形式上、1回開かないと駄目ですね、この文言があると。
【島谷委員長】
 そのとおりだと思います。
 十分いろいろな意見が出てはきておりますが、再三申し上げております、上の文化活動小委員会に上げるべき選考基準として、政策的な案件を付与するかしないかというところについて、微妙な状態のままで来ておりますので、現状のままだと、それは必要であるということは文化活動小委員会に言うことは可能ですが、具体的にこうすべきであるという提案はなされていないのですが、何かございますでしょうか。中立性というところで、どうしてもそれを考えると言いづらいところはあるのですが。
 より文化政策的というか、文化的に記憶遺産になるようなものについては、積極的に申請登録をしていただくようにするということに努めるということだと思います。その結果、いろいろな相談窓口までに相談が来ると思いますので、その上でうれしい悲鳴みたいな対応に迫れるようなことになると思いますので。その段階で、保存管理だとか、ここに挙げている時代性だとか、完全性だとかに担保されていないものは、出していただくのは構いませんけれども、非常に難しいですよとかいうのは、門前払いをするという意味ではなくて、助言はすることはできると思っています、申請前の段階においては。
 考え方の問題として、ユネスコの記憶遺産の選考ではありますが、今は日本からの正しい情報発信が求められている時期だと思いますので、日本の指定文化財の制度がこんなにいいんだと世界に言っても、なかなかすぐは周知してもらえませんので、この記憶遺産の考えに乗って日本文化の情報発信をつなげていくことがより重要ではないかなと思いますので、今の文化政策、文化戦略が十分であるというふうには、なかなか厳しい予算の中では難しいことだろうと思いますので、こういったものを借りて日本というものをもっと世界に発信していきたいなと思います。これはもう皆さん、全く同じ、共通だろうと思います。
【大滝委員】
 一つ、教えていただきたいのですけれども、最近、新聞報道で文化庁のこととして国内登録のことがありました。あれは記憶遺産ではないのかも、文化遺産なのかもしれませんけれども。
【島谷委員長】
 無形遺産ですね。
【大滝委員】
 無形遺産でいいですか。その国内登録という枠組みの中には、この我々が今選考する対象のものは含まれないという仕切りなのか、それとも、何かどこか境界線上のものがあるのかどうか。
【島谷委員長】
 申請の準備の段階として順番を、順番というか、候補がたくさんありますよというレベルではないかと思いますけれども。
【大滝委員】
 国内登録の仕組みを作るという新聞報道だったと思いますけれども。
【石丸文化庁伝統文化課文化財国際協力室室長】
 文化庁でございます。無形文化遺産を担当しておりますが、恐らく今お話の国内制度については無形文化遺産とは対象が異なるものなので。
【大滝委員】
 有形のもの。
【石丸文化庁伝統文化課文化財国際協力室室長】
 恐らく先生のおっしゃっておられるのは、日本遺産のことかと思うのですけれども、あれは国際的なものではなく、国内のシステムですので、直接の関係はないかと思います。
【大滝委員】
 いや、私の申し上げているのは、ユネスコの中での文化遺産というものの登録というところの仕組みと、それとまた国内で一つの仕組みを作られたのは、この1か月以内ぐらいの新聞報道だったと思いますけれども、その登録すべき対象の中に、ここで我々が選考する記憶遺産というところの枠組みがどこか共通しているのか、共通していないのか。共通していなければ、共通していないでいいのですけれども、共通するとすると、前からリージョナルな登録とか、ナショナルな登録とかいう、ユネスコの記憶遺産の仕組みの中でもあるわけで、そことの特にナショナルな登録と接点があるのかどうかというところが、今後の進め方の中でも少し関係するのかなということで質問させていただいています。
【島谷委員長】
 日本の文化財として全く関係ないということはないと思いますけれども、その登録の対象としては別というふうに考えていいのではないでしょうか。
【石丸文化庁伝統文化課文化財国際協力室室長】
 文化庁文化財部を代表して御説明いたします。先生が報道で御覧になったその制度というのが何を指されておられるのか明確でないところがございますが、例えば、無形文化遺産の関係で申し上げますと、条約上も芸能でございますとか社会習慣、伝統工芸と対象が明確になっており、記憶遺産とは全く対象が異なりますので、ここで両者が重複することはないかと存じます。また、それに対する国内制度というのも、重要無形民俗文化財でございますとか、重要無形文化財ということで記憶遺産とは対象が異なってございますので、ここと重複することもないと思います。
 ただ、先生がお読みになったのがここ1か月ということで、日本遺産という国際的なものとは直接リンクしていないものではないかと。
【大滝委員】
 大きく新聞記事に出ていました、社会面。
【石丸文化庁伝統文化課文化財国際協力室室長】
 ええ、大きく出ていたのであれば日本遺産ではないかと思いますが、あれは有形のものであろうと、無形のものであろうと、ストーリーとしてまとめて文化財の活用を図っていくという国内制度の話ですので、恐らく記憶遺産と直接リンクすることはないのではないかと思います。もし、お読みになったものが日本遺産だとすれば、今のような答えになるかと思います。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。少し明確ではないのですけれども、今のでよろしいですか。
【大滝委員】
 もし今までのここの場での議論の中でも、グローバルな登録だけでなく、リージョナルとか、ナショナルな登録の制度を生かす。最終的には、登録されることも重要であるけれども、ナショナルな登録とか、リージョナルな登録の中で、そういう取組の中で意欲のある団体が貴重な資料を保存、継承されるという仕組みが確固となるというところの重要性ということが議論されていましたので、そういったところとどういう関係があるのかというところであります。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。あと、2年に2件という公募の基準がありますので、その審査に漏れたものも、次の2年後には再申請することができるというようなことはそれぞれ理解されていると思います。そうすると、手が挙がれば挙がるほど、次から次の審査がしんどくはなるわけですけれども、そういう考え方でよろしいですね。
【野田ユネスコ協力官】
 はい。
【島谷委員長】
 では、再度確認をしたいと思いますが、公募により選考基準、選考基準の解説、それから申請書等、これ附属されておりますが、選考基準に関しましては、これでユネスコの下に基づいてやるということで行くことになろうかと思います。これについての御意見はよろしゅうございますか、この資料の2ということでございますが。
【野田ユネスコ協力官】
 例示のところをもう少し追加で。
【島谷委員長】
 加えるということですね。より幅広く例示のところが加わることになりますが。
【西園寺委員】
 少しよろしいですか。先ほど、芳賀先生がおっしゃった基本要件の、なお、(3)の世界的重要性については、その地理的な影響が世界的な広がりを持つものでなければならないという部分が、英文にもこの同様の、全くこれはそのまま訳されているということですか。ああ、これは国内か、ごめんなさい。これ、だけれども、(3)の以下の一つが世界的重要性を示されていればいいということですね。
 特に、地理的なということをここに入れる必要性というのがあるのかなという、先ほどの芳賀先生のお話を聞いていて思ったのですけれどもね。
【島谷委員長】
 ただし書きで地理的なということがあると、申請者はそこで。
【西園寺委員】
 いや、なぜこの地理的なことだけをここに強調するのかなという気はしますね。例えば、「山本作兵衛」が選ばれていますね。あれが地理的なこれに該当するのかなと、逆に言うと。あれは、この例で書いてあるように、形式及び様式でしたか、これがその選考の理由だったわけです。必ずしも地理的なものが、影響が世界的に広がっているからということで選ばれていないわけです。
 だから、この五つのうちの四つですか、どれかに該当していればいいということならば、この基本要件の中に、地理的な影響が世界的な広がりを持つものでなければならないという一文を入れる必要性があるのかなという疑問は感じます。
【島谷委員長】
 それはおっしゃるとおりですね。この基本要件の「なお」書き以下につきましては、これは国内委員会の選考基準として付与されたものなわけですか。
【野田ユネスコ協力官】
 もともとユネスコのガイドラインの方にもそういった趣旨のことが書いてあると申しますか、国内の登録簿、地域の登録簿、それから国際登録簿という3種類があるので、重要性の影響というものが、国内登録簿でありますとか、地域登録簿に該当するものについては、そちらに申請するのが適当であるというような趣旨のことが書いてございますので、それを少し端的に分かりやすく記載させていただいたのが、これです。
【島谷委員長】
 今、三つおっしゃいましたね、国内登録簿と、地域登録簿と、もう一つは。
【野田ユネスコ協力官】
 この国際登録簿です。
【島谷委員長】
 これは国際登録簿ですね。
【野田ユネスコ協力官】
 はい。
【宮地委員】
 いいですか。私はこれがあった方がいいという意見です。というのは、やはりこの条件をどう説明するのかということが、申請者の側から考えなければいけない。東寺の場合だったら、やはり密教の世界的広がりの問題がきちんと加えられて、この地理的な影響というのが欧米の人にも分かるようになる。そこはやはり申請者が工夫しなければいけないと思います。これがない限り、非常に我々が審査する場合難しくなる。完全に国内だけのものが出てくる可能性が非常に多いわけですから、私はやはりこれはきちんと説明すべきだという気がします。
【西園寺委員】
 そうすると、この間の「山本作兵衛」もこれに該当するという考え方?
【宮地委員】
 欧米の人は、考えるのは産業革命のときの労働者という。ですから、申請の文がそこが入っているかどうかは私は知りませんけれども、やはり読む人間が、ああ、これは日本だけの問題ではなくて世界的な関連性を持っている資料だと判断できる、そのような作文のものでないと、やはり私はユネスコのものには該当しないと。その線はきちんと出した方が、私はいいという意見です。
【島谷委員長】
 その際、「地理的な」というのが必要かどうかというのはどうですか。
【宮地委員】
 だけれども、東寺でもチベット密教との関連でいう、密教は日本とチベットだけということの強調、日本の密教は知られていないけれども、チベットの密教というのは全世界の人は知っていますから、私はすっと入ると思う。やはりそこは、一文説明を加えただけでインパクトは全然違ってくるのだというのが、私の意見。
【島谷委員長】
 あっても、なくても、解釈の仕方によって世界的な影響がなければいけないということで、地理的というのが非常に難しい部分はありますが。
 それでは、ここでは。
【芳賀委員】
 地理的なということに関して、個人的には、研究者としては、何回も申し上げているように、これはおかしいと思います。「西洋近代知」を「権力」的だと言った人類学者タラール・アサドの視点から、これはおかしいと思います。ただし、選考基準を周知する書類としては、現実にはこれがないとユネスコの審査を通らないのであれば、委員会としては書くべきだと思います。ただし、「地理的」というのは、本当はもっと広い曖昧な意味での「地理的」の意味ですね。「山本作兵衛」は、狭義の地理的には筑豊だけだけれども、広い地理的な意味では、産業革命という大きな地理の中の一つと認識されています。
【島谷委員長】
 まる5の形式及び様式のところで解釈されていると思います、「山本作兵衛」はね。
【芳賀委員】
 でも、やはり産業革命の末期のという、非常に世界的な「地理的」な広がりの一つです。
【島谷委員長】
 はい、どうぞ。
【大滝委員】
 私は、今委員長がおっしゃられたように世界的な重要性ということは不可欠だとして、地理的に言及するかということは、またあるかなと思いますけれども。宮地先生がおっしゃったように、我々の選考の一つの考慮点としても、ここをグローバルな、世界的なということを考えなくてはならないし、何よりも国際委員会で審査されるとき、その視点が含まれているものかどうかということが、やはり今までの申請案件の中でもいろいろあるだろうと思います。
 そうすると、常にそういうふうに説明をしていくと、グローバルな位置づけ、意味づけを説明していくということは不可欠なプロセスになると思うので、申請に当たってもここのところを押さえていただくということだろうと思うのですけれども。
 その地理的という面については、厳密にユネスコの一般的なガイドラインの中で明示されていなければ落としてもいいのだろうと思いますが、明示されていれば、その文脈の中で広くグローバルというか、世界的な意義ということを重視して、いずれ審査する側の視点が表現されているところを、日本の公募の選考基準に当たっても反映しておく必要があるのではないかと思います。
【芳賀委員】
 これは英語では何と言うのですか、本当にこう書いてあるのですか。書いてあるならば、現在のゲームのルールは現在のユネスコが作っているので、それに合わさなければ日本からの申請はゲームに負けるので、委員会としてはもうこれは明示しておかないといけない。
【島谷委員長】
 それは、おっしゃるとおりですね。
【芳賀委員】
 ただし、本当は、例えばユネスコ憲章の前文に「人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」なんて言いますが、その前提として、アテナイにとりではあって、ローマにもとりではある。けれども、京都にはとりではないので、我々は全く違う世界観を有しています。京都には本当にないですね、御土居まで、とりではね。だから、我々は全く違う平和の世界観を持っているので、それをいつか世界に言いたいです。けれども、今のゲームとしては、今のユネスコの規準を明記して遵守して書かないと。日本からの申請は負けると思う。
【大滝委員】
 それは調べていただいて、反映していただければ。
【島谷委員長】
 あるいは、ここで決めておかないと、これで公募することになりますから。それは野田さんの肩に全部が掛かってきますから。
 今日の委員会を踏まえた上で公募に入っていくことになりますので、そこだけは押さえた上で。選考基準によって選考するということは意思が統一されたというふうに考えまして、上に上げていきたいと思いますので。
【芳賀委員】
 あるいは、世界的な広がりの中に位置づけられなければならないとか。
【島谷委員長】
 それが一番いいのですけれどもね。
【芳賀委員】
 「山本作兵衛」もそういう広がりの中に位置づけられる。
【宮地委員】
 だけれども、これは申請者の作文能力だと思いますよ。その能力がなければ、やはり申請すべきではない。例えば世界遺産でカトリックの五島列島の教会群、隠れキリシタンが発見された、二百数十年後に。これは世界的な話で、物すごくインパクトがある。やはりそういうところにきちんと申請者が頭を働かさないと、これは世界遺産には、あるいはこの我々が審査している対象にはならない。
【島谷委員長】
 ここは日本語で申請していいと書いていないわけですからね。
【宮地委員】
 これは知恵者が申請者側にいるか、いないか、やはりそれも問われると思いますよ。
【芳賀委員】
 でも、選定後には助言を行うことができると、先ほどので。
【宮地委員】
 だから、それは決まった後でやればいい、それ以前はできないというのが事務局の非常にかたくなな態度ですから、私はそれはやるべきではないだろうと思います。
【秋葉大臣官房付】
 コンパニオンという、一般指針をもう少しブレークダウンした登録の手引の4.2.4というところに、how widely was that effect felt geographically?と書いてあります。
【芳賀委員】
 how wide?
【秋葉大臣官房付】
 how widely was that effect felt geographically?です。
【芳賀委員】
 effect felt geographically?
【秋葉大臣官房付】
 はい。地理的にどれだけ広くその影響が感じられていたかということが重要だということです。
【島谷委員長】
 影響が感じられたですね。
【西園寺委員】
 それがそのクライテリアの一つですか。それとも、それが非常に、これ、要するに基本要件ですね。
【秋葉大臣官房付】
 world significanceという基本要件の説明のところにこれが書かれているということです。
【島谷委員長】
 加えていただいて、宮地先生がおっしゃるように文章力を問うということにいたしましょう。これがルールだからしようがない。ルールにのっとっていくということで。
 ガイドライン、選考基準につきましてはこれで行くということでいきたいと思います。それでは、そういうふうに進行したいと思います。政策的うんぬんということにつきましては、それが望ましいけれども、具体的なものはないということ。公平性を担保するためには具体的なものはないということで、今回は。
【大滝委員】
 現段階では。
【島谷委員長】
 現段階では。それで、進行する過程、若しくは次回についてそういうものが考えられるということであれば、つけ加えていくということにしたいと思いますが、よろしゅうございまでしょうか。
 それでは、以上で、おおよその御意見が出そろったかと思います。それでは、選考基準の資料2、今確認していただきましたように決定し、一部修正はありますが、資料3の公募要領により公募を開始することでよろしゅうございますでしょうか。
【大滝委員】
 あそこの10のところは少し書き直しがあるわけですね。公募要領、このとおりですか。先ほどいろいろ御意見が出たようですけれども。
【野田ユネスコ協力官】
 まず、ユネスコのガイドラインの文言を。
【大滝委員】
 直接申請してしまった場合の取扱いについては、一部修正があるということ。
【島谷委員長】
 そうですね。修正と、それから一般指針のところについて、10については書き加えていただくということで。では、その訂正等につきましては、公募の前に私が確認させていただきましてOKというふうにしたいと思いますので。どうもありがとうございました。
 それでは、本件につきましては、必要な作業が整い次第公募を開始することとし、その旨を文化活動小委員会及び総会に報告することといたします。
 本日用意しております議題は以上でございますが、このほか特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。
 それでは、これで閉会をさせていただきます。なお、次回の委員会からは申請案件の審査を行っていただくことになります。日程については、事務局で調整の上、改めて御連絡させていただきます。本日は本当に御多忙の中、様々な討議をしていただきましてありがとうございました。出席、感謝いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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