日本ユネスコ国内委員会文化活動小委員会 第10回ユネスコ記憶遺産選考委員会 議事録

1.日時

平成26年12月3日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 国際課応接室

3.出席者(敬称略)

〔委員〕

島谷弘幸(委員長)、大滝則忠、西園寺裕夫、高埜利彦、芳賀満、宮地正人

〔関係省庁〕

外務省、文化庁関係官

〔文部科学省(事務局)〕

山脇良雄国際統括官、秋葉正嗣大臣官房付、その他関係官

4.議事

【島谷委員長】
 それでは、時間になりましたので、そろそろ始めたいと思います。
 本日は委員の先生方、また、関係の皆様、御多忙中のところお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 では、まず最初に、事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 本日は、出席の委員が6名、委員の過半数であります5名以上ですので、定足数を満たしております。
【島谷委員長】
 それでは、ただいまから第10回ユネスコ記憶遺産選考委員会を開催いたします。
 平成25年1月18日に決定された公開手続により本委員会は原則として公開することとされております。会議の内容については、議事録として公開されますので、どうぞよろしくお願いいたします。また、本日は、報道関係者等の傍聴者が6名でよろしいでしょうか。
【野田ユネスコ協力官】
 はい。
【島谷委員長】
 6名いらっしゃいます。
 まず、事務局の異動がありましたので、御報告をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 それでは、まず平成26年11月25日付けで、山脇国際統括官が着任しております。
【山脇国際統括官】
 先週から国際統括官に就任いたしました山脇でございます。よろしくお願い申し上げます。
 記憶遺産選考委員会という重要な任務を果たしていただきまして、本当にありがとうございます。事務局としてもしっかり対応しますので、今後よろしくお願い申し上げます。
【野田ユネスコ協力官】
 それから、平成26年7月25日付けで、秋葉大臣官房付が着任いたしております。
【秋葉大臣官房付】
 秋葉でございます。事務局を担当させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【野田ユネスコ協力官】
 それから、この12月から、二村専門職が担当として働いていただいております。
【事務局(二村)】
 事務局の二村でございます。どうぞよろしくお願いします。
【野田ユネスコ協力官】
 以上でございます。
【島谷委員長】
 続きまして、事務局から、配付資料の確認をお願いいたします。

(事務局から配付資料について説明)

<議題1>
【島谷委員長】
 ありがとうございました。
 過不足ございますでしょうか。先生方、大丈夫でしょうか。
 それでは、最初の議題に入りたいと思います。議題1、ユネスコ記憶遺産の国内選考手続等についてでございます。
 御承知のとおり、平成26年のユネスコ記憶遺産申請につきましては、当委員会において、「東寺百合文書」を国からの申請案件として選定いたしましたが、自治体等からの申請も合わせて日本から申請が4件となりました。
 これによりまして、ユネスコの審査に付する案件2件を日本として選定する必要が生じました。当初は、当委員会がその選定主体とされておりましたが、選定過程の客観性、そして公平性の確保に万全を期すため、文化活動小委員会において「ユネスコ記憶遺産の平成26年申請の選定に関する方針」を改定し、選定主体を当委員会から文化活動小委員会に改め、審査に付される2件の選定が行われました。
 こういった形で申請案件の絞り込みをするということが、今回初めての経験であったこともあり、この経験を踏まえ、今後、一度手続面も含めてユネスコ記憶遺産事業にどう取り組んでいくのかを議論すべき、というのが前回の選考委員会での御意見としてございました。
 つきましては、本日、ユネスコ記憶遺産の新たな選考・申請手続について御議論をお願いしたいと思っております。まずは、平成26年申請において行った手続等について再確認いたしたいと思いますので、事務局から説明をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 それでは、参考4を御覧いただきたいと思います。こちら、ユネスコ記憶遺産平成26年申請に係る経緯についてでございます。
 時系列で説明いたしますと、まず平成25年5月に、本委員会におきまして、「東寺百合文書」を、国からの推薦物件とすることを決定いたしました。また、26年1月には、その申請書について議論を頂いております。26年3月に、本委員会の委員長名にて、「東寺百合文書」の申請書をユネスコに提出いたしました。そして、26年4月、文化活動小委員会で、「26年申請の選定に関する方針」を決定いたしました。内容といたしましては、この選考委員会を選定主体として、文化活動小委員会の了承を得るということになってございました。26年5月でございますけれども、また選考委員会を開きまして、「東寺百合文書」を含めます4件の申請案件に関する議論を行い、2件を選定いたしました。翌月の6月には、文化活動小委員会を開催いたしましたが、このときに選定主体を「選考委員会」から「文化活動小委員会」に変更いたしまして、ユネスコの審査に付する案件2件を選定いたしました。同じ6月には、文化活動小委員会の委員長名にて、「舞鶴からの生還」、「東寺百合文書」を、審査に付する案件としてユネスコに回答いたしました。
 続きまして、参考5でございますけれども、こちらは、選考委員会で前回の推薦案件を選考いただくときの基準でございますけれども、主な点といたしましては、国宝・重要文化財に指定されている文化財その他について、戦略的に抽出する。それから、個々のオリジナルがほかにある場合でも、「集大成」としてのオリジナルとしてこれを含める。所有者については、国、地方公共団体等の公益性を有するものとする。広く人口にかいしゃしているもの等を考慮する。リスト化できるもの、保存計画、公開性が担保できる。それから、国からの推薦につきましては、最大2件のうち1件にとどめるというような基準を定めて、選考していただきました。
 それから、参考6でございますが、こちらは4件のうち2件を選定するときの方針でございまして、文化活動小委員会で決定、また改定されております。主な内容といたしましては、文化活動小委員会においてユネスコの審査に付する2件を選定する。そして、相対的に評価し、その中から2件を選定するということ。選定はあくまでも申請書に記載された内容に基づいて行うということ。また、別添の基準に基づき、申請書に記述された内容が優れているものから選定を行う。国宝・重要文化財については、これは国が指定し、重点的に保護しているものであることに留意する等ということでございまして、次のページが別添の評価基準でございますが、具体的には、真正性、それから、世界的な重要性、また、(2)に加えまして、世界的な重要性をどの程度説明しているか、これが具体的には、時間、場所、人々などの事項が挙げられております。そのほか、希少性、完全性、関係者との調整、滅失等のリスク及びそれについての対応策、管理計画、公開性が担保されているか、といったことが評価基準として定められておりました。
 事務局の説明としては、以上でございます。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。
 昨年来進めてきた案件でございますので、委員の各先生方は御承知のことかと思いますが、ただいまの説明につきまして、御質問等ございますでしょうか。
 よろしゅうございますか。今年の選考経過を再確認したものでございますので、では、次に進めたいと思います。
 それでは、次に、具体的な選考・申請方法の議論に移りたいと思います。まずは、事務局から、これも説明をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 それでは、資料2を御覧いただきたいと思います。
 こちらは、我が国におけるユネスコ記憶遺産の選考・申請手続についての案でございまして、まず1ぽつといたしまして、ユネスコへの申請物件の選考方法、(1)我が国からのユネスコ記憶遺産申請物件については一般に公募を行う。公募に当たりましては、十分な周知を行う。これは、これまで自由にユネスコに誰でも出すことができたことを改定するものでありますので、十分な周知を行う。また、以下についてもあらかじめ周知をいたします。まずは、各国からの申請は2件以内とされていますことから、3件以上の申請があった場合については、国内委員会が2件に絞り込むということ。国内委員会の公募によらない申請がなされて、3件以上となった場合は、国内委員会の公募により選定された物件が優先されるということ。これについては、ユネスコ自体の一般指針の規定に基づいて行われることでございます。
 (2)公募結果に基づき、ユネスコ記憶遺産選考委員会において、申請候補物件(2件以内)を選考し、文化活動小委員会及び国内委員会総会に結果を報告するということでございます。また、注意事項といたしまして、選考委員会の委員は、応募物件の内容を見て適宜追加する。また、膨大な応募があった場合、別途書面審査委員を委嘱して審査するということなども考慮するということでございます。
 次のページに参りまして、2ぽつのユネスコへの申請方法等でございますが、ユネスコへの申請は、あくまでも国ではなくて、公募における応募者が行う。それから、この申請につきましては、国内委員会を通じて行う。この通じて行うということは、当該申請を支持する旨記載した選考委員会委員長名の書簡、サポートレターというべきものと一緒に提出するということでございます。
 3ぽつ、申請内容等に係る国内委員会の関与でございますが、これにつきましては、申請物件が決定した後に、申請書の内容に関して申請者に適宜助言を与えるということで、具体的には、専門的知見を有する選考委員会委員又は書面審査委員などが、申請書の内容を改善するための助言を行う等が考えられるということでございます。
 4ぽつ、タイムスケジュール(予定)でございますけれども、本日の選考委員会でこの手続を決定していただく予定でございまして、これについては、選考・申請手続が変わったということを事前に一般に広報いたします。それから、来年1月から3月にかけまして、選考委員会において、選考基準の検討、それから、選考基準を含みます公募要領の決定をして、その内容については、小委員会、総会の方に報告をいたします。と同時に、公募を開始いたしまして、6月に公募締切、それから、9月には、選考委員会において申請物件の決定をして、また小委員会、総会に報告をいたします。9月から12月の間につきましては、先ほど3ぽつにございましたような申請書のブラッシュアップというべき調整をするという時間に充てております。それから、この申請書の日本語のものが固まりました後、再来年の1~2月の間に、これを申請者に英訳していただきまして、3月に締切にはユネスコに提出するというスケジュールを想定してございます。
 以上でございます。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。
 今説明していただきましたように、資料2の新たな選考、そして、申請方法の案をまとめております。本日は、主として、この二つ、資料2についての御審議を頂きたいと思っております。これが今日の主な議題でございますので、ここのところで十分に御論議いただきたいと思いますので、どなたからでも結構でございますので、御意見を賜ればと思います。よろしくお願いいたします。
 決定的に違うところは、去年は、この選考委員会、ナショナルコミッティーと言ってもいいのでしょうが、ここが決めたものと、ほかに申請したものと、4件出てきたものですから、そこのところをどう選考するかということで、この委員会が一応二つに絞り込んだわけですけれども、自分たちが選考したものと、そうでないものを合わせてやっていいのかどうかというのが論議になりまして、文化活動小委員会の方で決定するということになっていったわけですけど、今回の提案は、最初から公募して、その中から2点に絞り込んでいこうというところが特徴があるかと思いますので、それでそごがあるかないかということも含めて、各先生方には事前にこれを案としては御覧いただいているわけですけれども、改めて問題点があるかないかというところを含めまして、論議をしていただきたいと思います。
【西園寺委員】
 この選考基準についてですが、これは内規として考えるのか、それとも、ある意味ではオープンにして、公募をするときに大体基準みたいなものを出すのかによって、例えば、去年の場合には、国宝と重文というのが一つの基準になっていたと思います。国からの推薦のものにつきましては。そういうものが、もしこの選考の基準に入るとすると、そこでもう既に公募できる範囲というのが限定されてくると思いますが、その辺はどうでしょうか。
【島谷委員長】
 ここは必ずしもマストというのではなくて、一つの要件であるという理解でいいわけですね。
【秋葉大臣官房付】
 先ほど御説明させていただいた参考資料5の第2回推薦に当たっての選考基準というのは、国から前回「東寺百合文書」を推薦したわけですけれども、その選考の基準でございまして、今回は、資料2の2ページ目のタイムスケジュール(予定)のところにございますように、今後、これから来年の3月にかけて、選考基準も含めて、改めて先生方に御議論いただいて、それも含めた形での公募要領というものを御議論いただいて、決定していただきます。したがって、当然、応募する方の便宜になるような形で、審査基準もきっちり決めて、公募要領として付けるという形になろうかと考えております。
【島谷委員長】
 今の説明でよろしいですか。
【秋葉大臣官房付】
 ですから、国宝・重文に限るのか、あるいは、そういう条件を入れないのかは、今後御議論いただいて、決めていただくということです。
【西園寺委員】
 限るという基準がもし出たとすると、当然、公募できる範囲というのは限定されてくるということですね。
【秋葉大臣官房付】
 はい。
【島谷委員長】
 その場合、指定でないものが既に、炭鉱の記録だとかなっていますので、その辺の整合性が出てくるかと思いますので、それは選考委員会でどう論議するかというのは、今後の課題だということでいいですか。
【秋葉大臣官房付】
 はい。
【宮地委員】
 そこが少し分からないので、いいですか。
【島谷委員長】
 はい。
【宮地委員】
 私は、国が戦前から国宝なり重文にきちんと認めて、やはり国民の財産として大事にしようというものの審査として、私はここへ出席しています。この話を普通の人が読むと、いわば自分の地域で大事に思って、これは世界の人に知らしていいというものが申請された場合に、私はあまりふさわしくないと思います。審査のいい点として。やはり私の頭だったら、戦前から国がきちんと調査し研究して、そして国宝なり重文と価値付けしたものを世界の人に考えてもらおうと思います。そのためには私も協力しますけれども、そうではないところで、我々がなぜ必要かというのがよく分からない。正直言いまして。
 ですから、もし国宝なり重文をお持ちの機関なり自治体が、どうしてもこれは記憶遺産に登録したいという気持ちがあれば、どうぞ応募してくださいというのか、やはり国がきちんとそれについてはサジェスチョンなり何なりを今までと同じようにするのかというのが、この基準だと私は分からないということです。
【島谷委員長】
 今、宮地先生から御意見ありましたけれども、非常にこれは難しいところかと思います。今までの文化財保護的に考えてみると、極端に言うと、さほど価値がないようなものであっても、ユネスコの記憶遺産の考え方に合致しているものについては登録されていくという形になろうかと思いますが、ここで国が定めているものだけに限定してしまうのが本当にいいのかどうかというところを、皆さんの御意見をお聞きしたいと思います。
 ユネスコの記憶遺産の考え方と日本の文化財保護法における指定の考え方が、やはり少しずれているところがあると思いますので、あくまでもここの考えとしては、日本の国宝の指定の基準というよりも、ユネスコの基準に合ったものを選ぶというのが、この委員会ではないかと思いますので、かなりかぶるところはあると思いますけれども。そこのところが、例えば、申請者記述の評価基準で別添の資料がありますが、参考6の2枚目ですけれども、これがかなり前回の審査のときに、それぞれそれに合致するかしないかというので論議の対象になったかと思いますので、これはあくまでもユネスコの基準であって、日本の国宝・重要文化財のものではないものですので、それで、併せて、どう判断していくかということになろうかと思います。
【芳賀委員】
 まずただ今の議論の大前提として、この日本の選考基準を決めることは、ダブルスタンダードにはならないでしょうか。ユネスコのルールがあるのに、日本のルールを更に決める。それで、現実に日本で適用される選考基準は、日本のルールになってしまう。
 それから、もう一つは、事務方から教えていただいたことですが、他の国では基本的にユネスコのルールに従うというのがほとんどであり、あるいは、国内の規定がそもそもない。そういうときに、日本が、我が国だけかどうかは分かりませんが、特に別に国内の基準を作るのは、いかがなのでしょうか。それで良いというなら、それで良いですけれども。
【島谷委員長】
 結果的に参考6というのは、今後どういうふうな形で選考していくかということで、何件か出た場合に、どうこの委員会が決定していくかという指針を出しているように思います。基準になるのは、今、芳賀先生がおっしゃってくださったように、ユネスコの記憶遺産の基準にのっとって審査していくべきであるというのが、分かりやすい例かと思います。
 ここで国宝・重要文化財の方を出してしまうと、今、懸念されているダブルスタンダードになるので、国としては、そういう指定されているものから順番にこれを推薦していくというのが一番やりやすい方法なんですけれども、そうすると全く違う基準になってしまうかと思います。特に今回の記憶遺産のものに関しては、第1号が全然予想もされないようなものが出ていったために、では、私のところにあるものをということで、次から次へと出てきていますので、一つの村おこし、町おこしのような感じになって、それが地域創生という意味ではとてもいいことだとは思いますので。ただ、それがやみくもにたくさん出てきて、委員会の下にもう一回書面審査委員会を作るとかというような、懸念されるようなこともここに書いてありますけれども、それをどう処理をしていくかということになろうかと思います。
 宮地先生がおっしゃられたように、既にスタンダードがあるのだから、その中から選んでいけばいいではないかというお考えが当然出てくると思いますし、芳賀先生のように、ダブルスタンダードはよくないという意見もあろうかと思います。いずれにしても選んでいかなければいけないわけですので、ほかの先生方の御意見も頂きたいと思いますが、高埜先生、何か。
【高埜委員】
 今これまでの御議論は、選考基準をどういうふうに作っていくのかという、次回に検討する議論を今先取りしてやっているような形になっておりますけれども。私は、全体の方針といたしまして、それは選考基準とも大いに関係することになりますけれども、申請手続としては、原案のような形で進めていって十分だろう、構わないだろうというふうな考え方です。
 ただ、その場合に、一つ注意をしていただきたいのは、この記憶遺産については、日本は大変出発点、立ち遅れました。宮地先生おっしゃったように、大変重要な国宝・重文級のいいものをたくさん日本は持っていて、少し大げさな言い方をすれば、国家戦略として、近隣諸国と同様に、日本の持っている良いものをしっかり発信していくという、そのことは一方で見据えなければいけないだろうと思います。
 ですから、もし原案のような選考・申請手続を取るのであれば、当然、その応募の中に、文化庁ということになると思いますが、文化庁が主体となって、しっかり1件は最低でも申請していただく。それをかつて、従来は、前回までは、この選考委員会がいたしておりましたけれども、それはそうではなくて、文化庁なら文化庁が、しっかり国宝・重文級の中からいいものを選んで申請主体になる。それは広く色々なところから、自治体も含めて申請があった中の一つで、最終的にここで選考していけばよいと、そういうような考え方を私は持っております。
 ですから、今申し上げましたように、文化庁、あるいは、秋葉さんでもいいのですが、その点、国としてどういう――少し大げさに文化戦略という言い方をしましたけれども、戦略的に、例えば、韓国などは、早くからそういう方針を持っていたと思いますが、こういうような選考・申請手続にした場合、原案のような形にした場合に、国がどういうものを出していくのか、その主体はどこになるのかという、その点をしっかり担保していただいた上でというふうに私は思います。
【島谷委員長】
 問題点を整理していただいて、非常に分かりやすくなったと思います。それで、今の一つのやり方として、文化庁か、それから、秋葉さんかということが今出てきましたけれども、この選考委員会がどういう位置付けにあるかということになると、文化活動小委員会の下にあるという――上下というのはおかしいですけど、所属しているということになりますと、その上をたどっていくと、事務局というところから申請すると、やはり自分のところのものを含めて、幾つかの中から選ぶというのは、やはりいかがなものかということに、また今回と同じようなことになるのではないかと思いますので、やはり申請主体としては、もう1点出てきた文化庁なり、指定のものの中、指定に限りませんけれども、国が推薦するものから上がってきて、同じ土俵で、地方から出たものと含めて、二つなら二つに絞るということの方がスマートなような気がします。そうしないと、また自分たちが選んだものをもう一回やるときに、おかしいではないかと言って、文化活動小委員会の方でもう一回やるという形になりますので、選考委員会とは称していても、それは選考委員会にならないということになると、全く同じてつを踏むような形になるような気がします。
 大滝先生、いかがでしょうか。
【大滝委員】
 申請手続の組立てとしては、原案のようであるしかないだろうという感じはします。ただ、この原案のとおりをやるとしても、ユネスコの事務局との連携にも留意するとか、現にこの申請に向けて動きつつある自治体等には、個別にでも、この新しい手続についての周知を十分に図っていただくことが必要ではないか。こういう新しい手続を進めるということを一般的に周知するだけでなく、既に動きのあるところには丁寧に御説明されたらどうかなという気がいたします。
 それで、今の選考基準の議論にも入ってこられているわけですけど、この2年間、ここの関連に携わらせていただいて、やはり国宝とか重要文化財とかという分野から指定されることの重要性も一方でありながら、一方では、やはり自治体等の、ユネスコの記憶遺産に登録されるということの意義について、大変な期待があります。そういうことの中で、やはり国宝・重要文化財を中心としてだけ、これに国際的な動きをするということは、日本社会の全体から見ると、フラストレーションがたまるのではないかと思います。そういう点から言うと、やはりこういう新しい申請手続、それから、選考基準というものがきちんと、次回以降の議論の中で明確にさせていただいて、明確な基準をお示しして、そういう御理解の下で公募を進めて選ばせていただくしかないのではないかと思います。
 その場合、選ばせていただくときに、数多くの中から、もう既に色々な動きがあるわけですから、数多くの中から2件というところに絞り込むためには、やはり何らかの基準は、細かな基準を持たないと、客観性とか公平性ということについて説明不可能となると思いますので、そういう点での議論を経て、そういうプロセスの中で、公平性、客観性ということをできるだけ説明可能なようにしながら、2件に絞り込むというようなプロセスを踏むしかないのではないかという考えでございます。
【島谷委員長】
 ありがとうございました。
 今、ふくそう的に意見が出ておりますが、まず手続については、御提案のような形でやらざるを得ないという意見が非常に多かったと思いますが、まず、手続につきまして考えていきたいと思いますが、今お示しいただいた提案の手続で、まず問題はないというふうに、ここのところだけ少し確認をさせていただきたいのですが、いかがでしょうか。
【西園寺委員】
 従来と違うのは、一つは、申請書の内容を改善するための助言を行うというのが入りますね。
【島谷委員長】
 それは、先生、二つに選んだ後に改善するということです。
【西園寺委員】
 二つに選んだ後にですか。後という意味ですね。
【島谷委員長】
 そうですね。
【西園寺委員】
 ああ、そうですか。では、申請するに際して、より良いものになるようにということですか。
【島谷委員長】
 登録されるときに、いい状態にするためにやるのであって、申請の前にサジェスチョンするのではないということです。
【西園寺委員】
 ではないわけですね。
【島谷委員長】
 ええ。だから、それは今までと同じです。
【西園寺委員】
 そうすると、申請の、例えば、英訳などは、こちらが――変な話、国内委員会側がかなりヘルプするということですか。
【島谷委員長】
 原則は、申請母体が作ります。整合性があるかないかだけチェックをするというような形というふうに私は理解したのですが、そういうことですよね。
【西園寺委員】
 分かりました。
【芳賀委員】
 「改善するための助言」とは、あくまで「申請書類」を良くすると、そういうレベルの話ですね。
【島谷委員長】
 助言です。はい。
【芳賀委員】
 つまり、もともとの「歴史事象」について我々が何らかの事実発掘や解釈等をするのではなくて、「申請主体」のあり方等について我々が何か言及するのでもなくて、あくまで「申請書類」のレベルのみですね。論文執筆で例えれば、論文に対して査読をして、コメントと部分的書き直しの助言をするみたいな、そこに限定するわけですね。
【島谷委員長】
 そのように理解しています。例えば、評価基準というのが、先ほどの別添のところに付いていますが、評価基準と言いながら、これ、選考基準でもあると思います。それを多く満たしている方がいいわけですけど、全て満たせるかどうかは別にして、これが書いてないから、これを加えた方がいいですよというサジェスチョンはできると思います。保管の問題、保存の問題や、レターを作るとかという。そういうことだと思います。
【西園寺委員】
 例えば、二つ似たような案件が、関連している案件が出てきて、それをまとめた方がいいですよというような、そういうところまではいかないわけですね。
【島谷委員長】
 現状では、いかないですね。どうでしょうか。現状では、合わせると一本でとても良くなるけれども、普通に審査した状態で、どっちも落ちてしまうということが仮にあったとして、その次々回以降に、これ、合わせるといいですよというようなサジェスチョンをするかしないかというのは、この委員会の責務かどうかということですが。
【秋葉大臣官房付】
 そこも、具体の選考基準をこれから御議論いただいて、どう決めていくかということに関連するのではなかろうかと考えております。
【芳賀委員】今のお話とは別の、手続そのものについてですけど、今までと一つ大きく違うのは、とにかく国内で申請を二つに絞ってしまう、ということです。それはいいことだと思います。これは、原則として、私は大賛成です。
 ただし今までは、先ほどから時々議論に出てきましたが、村おこし的に、全国津々浦々で「記憶遺産申請中」とかの、のぼりやホームページを作ったりして盛んに活動しています。あれは歴史の重要性とか文化財の重要性とかを人々によく分かってもらうために、大変良いことだと思いました。それを2件に閉ざしてしまう。そういうときに、もう少し希望を保持するためにも、何か暫定リストのようなものを作ることはできますでしょうか。そうすると、「暫定リスト登録中」とか、自治体や博物館等は言えるかなと思います。何かそういうことはできないでしょうか。
【島谷委員長】
 そのような提案がありましたけれども、将来的にはどうか分かりませんが、今はそういうことは考えられてないわけですよね。
【秋葉大臣官房付】
 この手続でお認めいただいて、公募を始めて、実際どのぐらいの応募があるかということも踏まえて、検討させていただく課題かなと考えております。
【大滝委員】
 今の芳賀先生の御意見は、私もそう思います。今はオールオアナッシングで、2件のうちに認められなければ、あとは一からの出直しというような感じです。それで、ユネスコで進めている制度そのものの趣旨が、ひいては、保存されるべき対象が保存されるような社会的な仕組みがきちんと成り立って、それで保存され伝えられるということに最終的に意義があるわけですけど、今はやはりせっかく盛り上がってきたものが、2件に絞られて、2件から漏れたものについては、しぼまざるを得なくなっている。そうすると、そこの中に、まさに保存というところの危機が生ずる場合もあるというようなところで、そこのところを、国、日本として、どんなふうにこのユネスコの記憶遺産の仕組みと関連付けながらやっていくかというのは、これからまた御議論があるべきところではないかなという、基本的には同じような感想を持ちます。
【芳賀委員】
 あくまで日本国内向けの、公式でも非公式でもいいので「暫定リスト」みたいなものを誰かが作る、というのはいかがでしょうか。
【島谷委員長】
 ユネスコのこういったもので、暫定リストみたいなものを持ちながらやっているところというのはありますか。
【野田ユネスコ協力官】
 世界文化遺産とか。
【島谷委員長】
 文化遺産や、自然遺産、無形ですとか、たくさんあると思いますが。
【石丸文化財国際協力室長】
 無形文化遺産については、暫定リストはありません。
【島谷委員長】
 ない?
【秋葉大臣官房付】
 有形の世界遺産については、条約上明確に国内の暫定リストというものが定められており、その暫定リストの中から申請していくという手続になっていると承知しております。
【島谷委員長】
 その世界遺産だけですね。
【秋葉大臣官房付】
 ええ、世界遺産です。
【島谷委員長】
 とりあえずその中に入ってしまうと、少し安心するというのはありますね。それに入るためにレクをしていくというようなことも、当然できてくるわけですよね。
【芳賀委員】
 ただし、大変なのは、その暫定リストが毎回どんどん大きくなっていくことですね。
【島谷委員長】
 二つしか選ばれないわけですからね。
【西園寺委員】
 ちなみに、世界遺産は、今、どのぐらい暫定リストにプールされていますか。分からなければ結構ですが。
【田中美術学芸課長補佐】
 日本から提出している暫定リストには、十数件は残っていると思います。その中には、相当古くからずっと暫定リストにあり続けていて、ユネスコに提出されていないというものはあります。そういったことは結構、その後の負担になっていることも事実かと思われます。
【島谷委員長】
 入ったのはいいけど、ずっと出ないということになるわけですね。
【田中美術学芸課長補佐】
 暫定リストから落とすというのは、それなりの一つの決定をしなければいけないわけですけど、元々村おこし的にこれを作ろうとして提案文書を作った人たちが、暫定リストに入ったのに、それを落とすという決定をするのは大変かと思います。ただし、暫定リストにあり続けることで、次のユネスコの委員会に出るのか出るのかということを10年もやり続けると、これはまたコストのかかる話かと私は思います。
【西園寺委員】
 では、その暫定リストに入ったということは、一つのステータスになって、それをオープンにPRしているというところもあるわけですか。
【田中美術学芸課長補佐】
 しかし、目指すところは、やはり本当に世界遺産に登録されることだと思います。
 すいません、その件で、私、事務局として関わらせていただいていますので、一つ申し上げれば、これまでに、昨年の国内の選考で落ちたものというか、4件から戻ってきて落ちたものも、ユネスコに提案するという段階で、既にかなり国内的なプレイアップはされているかと思います。そういうことで、国内的な町おこし的な意味というのはあったのではないかと思います。それは、今回、こういった公募の形になったときに、国内公募に提出するという段階でも、そういう効果も考えられるのかなと思います。しかしながら、さらに落ちたものをもう一度何とか保つ形というのは、私は少しコストが高いような気がします。
【島谷委員長】
 暫定リストに入ってしまって、そのまま何もやらないという形になるよりも、入るのは、すごい安定して、気持ち的には落ち着くのですが、落ち続けた方が、ブラッシュアップするという意味では、その気持ちが持てれば、ブラッシュアップしていくと思いますがね。どこが悪かったのかという。そのどこが悪かったかということを、当委員会なり、ほかの事務局なりがサジェスチョンするかしないかというのは、また別な問題だろうと思いますけれども。
 前回二つ選んだときも、本当に議論百出して、もう本当にどれが選ばれてもいいぐらいな状況にあったと思いますが、重要性であるとか、色々なテーマを加算した結果、結局、あの二つに到達したということだったと思います。
 暫定というのは、今の段階では荷が重いのかなというような感じはしますので、一つの考え方として、そういうのが出たということにとどめたいと思います。
 まず手続について、私の方から事務局に確認させていただきたいのは、資料2の2ぽつの(1)で、ユネスコへの申請方法で、ユネスコへの申請は、公募における応募者が行うということがありました。それで、国のもの以外のものについては、国内委員会を通じて行うので、国内委員会が委員長名の書簡とともに提出するということになっていますが、これは結局、自治体が――自治体に限定できるかどうか分かりませんが、自治体若しくは公のところが出したものに委員長名を添えて申請する母体といいますか、手続自体は、事務局が行うのか、応募者が行うのか、それはどちらでしょうか。
【秋葉大臣官房付】
 あくまでも申請書の名義人は所有者なり管理者であり、その物件の所有者・管理者が申請主体となります。ただ、2件のカバーレター、表紙として、国内委員会の推薦状のような書簡を付けて、日本からはこの2件を推薦します、申請しますということです。
【島谷委員長】
 その推薦しますというのは、委員会が推薦するということですか。
【秋葉大臣官房付】
 委員会を通じて、委員長名のレターを付けて、2件の申請書をユネスコに出すということです。
【島谷委員長】
 だから、それぞれ集まって2件に絞ったのを、事務局から推薦するということですか。
【秋葉大臣官房付】
 申請書は2通出てくるわけですね。2件ございますので。その上に、カバーレターを、委員長名の書簡を付けてユネスコに出すという手続だというように考えております。
【島谷委員長】
 分かりました。それを付けて、その母体が出すのかなと思ったものですから。あくまでも事務局の方から出すということですね。
【秋葉大臣官房付】
 はい。
【島谷委員長】
 英訳等につきましても、そこが、出てきたものを、事務局のところで統括して、2点に絞り出すということですね。
【秋葉大臣官房付】
 はい。そうだと思います。
【島谷委員長】
 では、手続に関しては、この提案がかなり当を得た感じはいたしますけれども、この手続につきましては、各委員の先生方……。
【西園寺委員】
 一つだけ確認ですが、その応募者と言っているのは、今おっしゃった、所有者若しくは管理者ということですか。
【秋葉大臣官房付】
 そうでございますね。通常は所有者になろうかと思います。
【西園寺委員】
 所有者ということ。そうすると、先ほど高埜先生のお話で、例えば、国宝などは、国が、あるいは、ここの委員会が出すというような形はとれないということですか。
【島谷委員長】
 今までの「御堂関白記」は、申請者としては、陽明文庫だったわけですか。
【田中美術学芸課長補佐】
 それは選考委員長です。
【島谷委員長】
 選考委員長なわけですね。ということになれば、所有者ではないところからも出るということもあり得るということですね。
【秋葉大臣官房付】
 そうでございますね。自治体等も、当然、管理者等の立場で、申請者にはなれるというふうに考えております。
【西園寺委員】
 現実的かどうか分かりませんが、国も、そういう意味では、いいということですか。
【秋葉大臣官房付】
 国といいますか、文化庁といいますか。先ほどの御議論だと、そういうことになろうかと思います。
【高埜委員】
 いえ、先ほどの議論の回答を頂いていないんですよ、まだ。つまり、私が申し上げたように、つまり、国宝であるとか、重文であるとか、そういうものはきちんと応募されるのか、担保されるのかということに対して、文化庁なり秋葉さんからお答えを頂いていません。
【秋葉大臣官房付】
 今、資料2でお示ししている原案では、あくまでも公募という手続で応募されたものについて、先生方の選考委員会で2件を選んでいただくということで、先ほど島谷委員長のお話もございましたように、申請した側が選考するというのは利益相反ではないかという前回の御議論もあったので、あくまでもこの委員会としては申請主体にはなれない。応募されたものを選考するという立場だというふうに考えておりますので、その事務をつかさどっている私ども国際統括官付としては、申請者には当然なれないという理解でおります。
【山脇国際統括官】
 文化庁は。
【秋葉大臣官房付】
 文化庁は、我々のセクションではございませんので。
【田中美術学芸課長補佐】
 文化庁は、この会議には事務局の一部として参加させていただいておりますので、そういう意味では、統括官付と同じ立場です。
【島谷委員長】
 と、非常に難しいですよね。
【高埜委員】
 何にしても、先ほどの私の意見の繰り返しですけれども、やはりこれだけ優れた世界遺産、記憶遺産の宝を持っている我が国が、着々とユネスコ世界遺産登録に向けて申請をしていく必要があると思います。本当に後れを取ってきましたから。大変な財産を持っている。特にこれはアーカイブズ、紙媒体のものが大体念頭に置いていますので、ユネスコの方は。そうすると、和紙で墨に書かれたものは、膨大に世界中で類を見ない。そのことをしっかりと文化戦略として、国は推進しなければいけない。その主体、責任を一体どこが担うのかということを伺っているのです、先ほどから。
 ここの委員会は、選考委員会としては、先ほどの推薦、申請手続について、これを決めるのは、これで結構だと思います。ただ、やはりそれが担保されないで、いや、うちはもう一切関係ありませんで誰も考えない。だから、これまで合計国宝級が3件出ましたけれども、そういうようなもの、あるいは4件目も……失礼、3件ですね。3件目はまだ正式登録ではありませんが。こういうようなものは今後出ない可能性も出てくるのかどうなのか。そのあたりはどうお考えですか。つまり、国宝級はどこからも出なかったら、また後れを取ることになりませんかという、そういう意見ですが。
【島谷委員長】
 戦略的に情報発信するということを考えると、後退をするということですよね。日本にいいものがあるのだから、情報発信をしなければ中韓に後れを取っていくということになっているわけですから。無ければ、後れを取っても当たり前なわけですけど、あるわけですから。
【高埜委員】
 山ほどある。そのことをどういうふうにお考えになっているかということを伺っているのです。
【島谷委員長】
 どなたに答えていただくのか。これからそれをどうやったら計画的に選出できるのかということを、我々を含めて考えなければいけないことかも分からないのですが。この委員会としてというか、国としても、それはやっていかなければいけないというのは、もう間違いない共通認識だと私も皆さんも思っていると思いますので、それが変に、事務局だから出せないということで、縛られた形というのはやはりよくないと思いますので、整合性がとれて、文化庁なり――統括官付が出すというのは少しおかしいことかなと思いますけれども、何かそこから申請ができるようなシステムは必要なような気はします。
 これは今日決められることかどうか分かりませんけれども、継続的に国からのといいますか、そういう申請ができるような仕組みを、知恵を絞って考えていきたいと思いますので、その辺、高埜先生あたりも協力していただければと思います。
【山脇国際統括官】
 委員長のおっしゃるとおりの方向で、私どもとしても、省内、文化庁も含めて、先ほどの高埜先生の御意見の御趣旨にどのような対応ができるのか、しっかりと検討していきたいと思います。
【島谷委員長】
 はい。
【芳賀委員】
 選考基準でなくて、この手続について、一つ。この3ぽつのところで、「適宜助言を与える」というのは、具体的には、申請書を査読して良くする等と書いてあります。しかしここに、先ほど西園寺先生がおっしゃいましたが、似たようなものが2件とか3件とか複数申請されたとき、それらをまとめて合体して申請したら、日本からの候補としてもっと強力になるから、そういうことが書いてあってもいいのかなと思います。その「等」に含意されているのかもしれませんが、それはどうでしょうか。
【島谷委員長】
 それは最初の選考のときから助言をするのではなくて、選考に漏れたときに助言をしたらいいのかどうかというのが難しいところだと思います。それはまた先生方のお考えを聞いた上だと思いますが。先に行ってしまうと、また少し越権みたいな感じ、公平性に欠けるようなことになるかも分からないので、落ちたところで、こういうことだったらもっとよくなるのではないですかということを言う。
【芳賀委員】
 次回に向けてですか。
【島谷委員長】
 次回に向けてというサジェスチョンです。
【芳賀委員】
 あるいは、私が思ったのは、矢が1本より2本、2本より3本の方が強いから、国内の委員会で矢を束ねてユネスコに出そう、という考えがあってもいいのかなということです。
【島谷委員長】
 前回、私、感じたのは、水平社の申請書で、法政大学のものがその中に入っているのか入っていないのか、私には読み込めませんでした。それでマイナス点を付けざるを得えませんでした。今回サジェスチョンは何もしていませんけれども、ああいうときに、法政大学も一緒になって申請するかしないかというのは、大きい問題だと思います。そういうことを西園寺先生とか芳賀先生はお考えになっていらっしゃるのだと思いますが。
【芳賀委員】
 ただ、そうすると、手続としては、我々がどの段階で関与したらいいのかが不明瞭です。明瞭にした方がいいのか、しない方がいいのか、よく分からないですけど、どうでしょうか。
【島谷委員長】
 そこのところは、選考の前にやると、やはりよくないような感じはします。選考して、落選するけれども、そのものが意味があるというふうに、委員会並びに各委員の先生がそれをしていいのかどうかというのは少し分かりませんけれども、認めたものについてはサジェスチョンすると、ブラッシュアップして、いい記憶遺産の候補になるというような感じはします。それをやるかどうかについては、今日の審議ではないかと思いますけれども。
【芳賀委員】
 ただ、手続に関わることでもあります。
【島谷委員長】
 手続に関わることで。だから、1回目の手続には関わらないですよね。2回目以降の手続に関わるということになると思います。
【芳賀委員】
 この場に矢が3本ばらばらに出てきたから、我々が束ねる場合もあるでしょうし、2本しか出てないから3本目を出しなさいと我々が適切な該当者に言って、それでまとめてユネスコに持っていくこともあると思います。
【島谷委員長】
 2回目以降ですよね。
【芳賀委員】
 2回目以降ですか。要するに、国の文化戦略として、なるべく強い発信をしたいときに、そういうことがあってもいいですね。
【島谷委員長】
 1回目にそれをすると、選考委員会として正しいのかどうかと。
【芳賀委員】
 越権すぎるのかもしれない。
【島谷委員長】 
 というような感じはしないでもないです。
【芳賀委員】
 そうですね。
【島谷委員長】
 あくまでもこれが選考委員会という場であれば。推薦委員会のための資料として何本か作るということであれば、それはとてもいいことだと思います。
 確認ですが、参考6の別添の評価基準というのはオープンにしているわけですから、申請する各自治体とか団体は、これはもう当然ユネスコの評価基準として見えるわけですよね。
【秋葉大臣官房付】
 参考6の別添は、今年の6月に2件を絞り込むに際しての評価基準でございまして、ユネスコが出しているガイドラインを和訳したもののエッセンスは、参考7に付けさせていただいております。これがユネスコが示している選考基準というものでございます。
【島谷委員長】
 これをエッセンスにしたのが6の別添だということですね。
【秋葉大臣官房付】
 はい。
【島谷委員長】
 とにかくダブルスタンダードにならないためには、これをしっかり申請母体、申請者が読んでいただいて、これに適合するようなものを作っていただくということでしかないと思います。
 今、盛んに、さらにブラッシュアップしていくという意見が出ていますので、それについては、また別に討議をする必要があろうかと思います。まず素案として出ている、この手続に関しては、これでいくということでよろしゅうございますでしょうか。個々に色々問題といいますか、考えなければいけないことはあるかと思いますが。
 では、手続に関しては、これでいくということにしたいと思います。
 それから、先ほど御指摘ありました参考5は、国が選ぶ場合の選考基準であるということでしたので、国が今後、文化庁かどこか分かりませんが、申請してもらうときに、この基準でいいかどうかというのは、これは本委員会が決めることになるわけですか。
【西園寺委員】
 それがこの1月に新たに作る選考基準ということですね。去年までの第2回目の選考基準にはありますと。今度1月には第3回目の分を決めるということと理解しましたが、違いますか。
【島谷委員長】
 これは国が選ぶ場合の基準ですので。国というか、国宝・重要文化財を選ぶものの基準ですので、だから……。
【西園寺委員】
 そうだと思います。もちろん、ですから、状況は違っているわけですけれども。
【島谷委員長】
 状況が変わるので、これはまた別になる。
【西園寺委員】
 ですから、新たにこの1月に選考基準を作るということですよね。
【秋葉大臣官房付】
 はい。
【山脇国際統括官】
 この議論をもう一度。
【西園寺委員】
 そうですね。そのことは、ユネスコの言っている評価基準、ダブルスタンダードという話が出ましたけれども、評価基準と別に作るということですね、もちろん。
【秋葉大臣官房付】
 大もとは、参考7にございます、ユネスコが示している選考基準があるわけで、これだけで先生方が審査できるのであれば要らないわけでございますけれども、具体の公募で申請が上がってきた場合、これだけで選考できるかどうかということだと思います。
【西園寺委員】
 これもオープン・トゥ・パブリックですよね、評価基準。
【秋葉大臣官房付】
 そうでございます。
【西園寺委員】
 今度作る選考基準は、私が知りたかったのは、これは内規ですかということです。つまり、これはオープンにしないものですと、あくまでも委員会の中での選考基準ですよという理解でよろしいですか。
【秋葉大臣官房付】
 先ほど申し上げましたように、御議論いただいて、来年決めていただく選考基準も、公募要領の中に含めてオープンにする。
【西園寺委員】
 オープンになるわけですか。
【秋葉大臣官房付】
 ええ。申請者は、こういう基準で審査されるんだなというのをあらかじめ御理解いただいた上で申請いただく。
【西園寺委員】
 なるほど。では、ユネスコの評価基準があって委員会の選考基準がありますと、そして両方がオープンになるということですね。
【秋葉大臣官房付】
 はい。
【島谷委員長】
 これは確認ですが、国から選ぶ場合の選考基準だったわけですよね。
【秋葉大臣官房付】
 その第2回というのは、前回、「東寺百合文書」を選んだときのものでございます。
【島谷委員長】
 だから、これは全部に関わることではなくて、国が出すときの基準だったわけなので……。
【秋葉大臣官房付】
 今後、先ほど国際統括官が申し上げましたように、高埜先生の御質問に答える形で、国から国宝なり重要文化財というような貴重なものをどういう形で推薦していくかということを考える中で、当然参考にされるのかなとは思いますが、あくまでも今回の応募に対して使う審査基準ではない。
【島谷委員長】
 ないわけですね。
【秋葉大臣官房付】
 これまでの、従来のものでございます。
【島谷委員長】
 それで、先ほど私が言わせていただいたことに戻りますと、この基準を委員会が決めるのは、国が出すものについて委員会が決めるのはいいのでしょうかということです。
【山脇国際統括官】
 それは確かに委員長がおっしゃるとおり、性格が違うもので、あくまでも、この選考委員会における選考に当たっての基準。
【島谷委員長】
 基準を作るのであって、この国が出すものの基準を作ってしまうと、おかしいことになりますね。
【山脇国際統括官】
 はい。
【秋葉大臣官房付】
 それは利益相反になります。
【島谷委員長】
 ということでよろしゅうございますか。
【山脇国際統括官】
 はい。
【島谷委員長】
 大分整理されてきましたけど、手続については、これでいくということ。今言った第2回というのは、国の方なので、今回はタッチしない。次の委員会においては、どう選考していくかという選考基準を作るということまでは整理できたのではないかと思います。
【芳賀委員】
 まだ私はよく分かっていないのですが、今までは「東寺百合文書」のように、1件は国から申請した。今後は、そういうものは一切ないということですか。
【島谷委員長】
 いや、国から戦略的に出してほしいという強い要望がありましたので、それがどうやったらできるかということを考えていきましょうということです。
【芳賀委員】
 はい。そのことは、今、議論している手続には書かなくていいわけですか。例えば……。
【島谷委員長】
 極端な言い方をすると、事務局は国がやっているようなものですが、だから、そこの中において、国が出すか出さないかという選択をされて、そこに応募されなかったら、出てこないということです。
【秋葉大臣官房付】
 あくまでも国として出したものも、自治体なり個人の方が出されたものも、同じ土俵で、この委員会で御審議いただいて、評価していただくということになろうかと思います。
【島谷委員長】
 そのときに、国から出たものを一つはどうしても入れましょうかどうしましょうかというのは、また別の論議だと思います。
【芳賀委員】
 その国が出すのは、誰が……。
【島谷委員長】
 それはどういう形で出せるかどうか……。
【芳賀委員】
 これから考えるのですか。
【島谷委員長】
 ええ、これからということだと思います。先ほど田中さんがおっしゃったのは、事務局の一員として来ているので、そういう考え方で言うと、正論から言うと、文化庁からも出せませんよというふうに田中さんはおっしゃいましたが、そうすると、どこも出すところがないので、それは戦略的に高埜先生がおっしゃったことと相反するので、何とか出せる方法を論議してほしいですねということです。
【芳賀委員】
 そのことは手続とはまた違うのですか。手続の一部かと思ったのですけど、違いますか。
【島谷委員長】
 手続とは違うというふうに私は考えています。
【芳賀委員】
 はい。
【西園寺委員】
 このルールを作るときは、逆に言うと、国宝とか重要文化財みたいなもので、国が所有しているものは出せないということの縛りを作ってしまうということにもなりませんかね。
【秋葉大臣官房付】
 いえ、国として申請者になって、公募に応募すればよろしいのではないかと思ってございます。
【西園寺委員】
 それは国として出していいということなんですか。
【秋葉大臣官房付】
 はい。ただ、ほかの自治体、個人の方の申請と同じ審査基準で審査いただく。
【西園寺委員】
 そうすると、申請者は、文化庁はだめです、それから、ここのユネスコ委員会もだめですという話だとすると、国の所有物というのは、誰が申請者になるのですか。
【秋葉大臣官房付】
 国の所有物であれば国でしょうし、東京国立博物館が所有しておれば東京国立博物館、文化財機構が出せるということになります。
【西園寺委員】
 そうですか。
【島谷委員長】
 今、純粋に国の所有というのは、有形文化財の場合、建造物等もありますけれども、動かせるものであれば、今、文化庁が管轄しているものだけですので、毎年公認はしていますが、数はすごい少ないですので、大半が独立行政法人などに管理替えして、それで独法になっていますので、国のものではありますが、その法人のものという形になっています。
【西園寺委員】
 そういうことですか。
【島谷委員長】
 例えば、私どもにある東京国立博物館の「白氏詩巻」が国宝に指定されておりますが……。
【西園寺委員】
 では、可能だということですね。
【島谷委員長】
 ええ。
【西園寺委員】
 秋葉さんとこの間お話ししていたときには、確かそういうところに、根回しではないけれども、出していただくような、少し働きかけみたいなことをすることは可能だという。技術的には、そういう可能性はあるという話は、確かしたと思います。
【秋葉大臣官房付】
 もちろん、所有者であれば申請主体にはなれるということだと思います。
【島谷委員長】
 ただ、私、この委員会に入る前に、「御堂関白記」の申請のときにお手伝いしたことがありますが、とても大変です。ユネスコのこれに合致して書くようにするということは、一所有者である陽明文庫さんであるとか、仙台市であるとか、そういうところだけではとても処理できなくて、文化庁と関係、それを繰り返しやっているところと一体となってやらなければいけないので、形の上では同じ平場であるけれども、それぞれのところにそういった知識がある人がサジェスチョンしないと、申請書としてはかなりいいものにはなかなかなりづらいというのがありますので。
【西園寺委員】
 なるほど。
【大滝委員】
 別件でよろしいですか。
【島谷委員長】どうぞ。
【大滝委員】
 この申請手続で異議なしということですが。少し確認ですが、この選考委員会と、上部である文化小委員会、それから国内委員会との関係で、平成26年の申請に係る経緯に鑑みると、途中で土俵が少し変わってきたということがありますので、そういう点では、今回、このタイムスケジュールによると、3月までに、この選考委員会としての公募要領、選考基準を含むものを決定して、それを小委員会、国内委員会に報告とありますけど、そこで次回の申請はその方法で手続を取るという確定が行われるという理解でよろしいですね。
【島谷委員長】
 というふうに私は理解いたしました。
【大滝委員】
 その点は、やはり選考委員会として活動する上で、そういう押さえをきちんとしていただくことが重要だと思います。
【島谷委員長】
 前回、私も委員長として進行して、結果、そうならなかったので、非常に不本意で、私以上に先生方も不本意だったと思いますので、そうならないために、これはこういうことを考えてくださったんだと思います。それで、そういう理解でよろしいですか。
【秋葉大臣官房付】
 はい。スケジュール案に示させていただいておりますように、来年の2月、3月に開催されます文化活動小委員会、それから、ユネスコ国内委員会の総会で報告・了承を得た上で、この手続に基づいて、3月から公募に入るという形にさせていただければと考えております。
【島谷委員長】
 申請の手続については、もうそれでいいといたしまして、選考基準については、たたきはまた次の委員会までに出していただけるとして、そこで討議をするということでよければ、今日のところは、その論議については、もう次回に譲るということでよろしいでしょうか。
【秋葉大臣官房付】
 せっかくの機会でございますので、お時間もございますので、次回以降、事務局から案のようなものを示させていただく前に、先生方から、この選考基準につきまして御意見を頂ければ、それを踏まえまして、事務局の方で考えさせていただければと思いますので、御自由に忌たんのない御意見を頂戴できれば大変ありがたいと考えております。
【島谷委員長】
 それぞれが、それぞれの分野を代表して各委員になっていただいていますので、考え方が少しずつずれがあろうかと思いますので、そこのところを整合性を合わせて選考委員会にするためにはどうしたらいいかというのは、私も今非常に悩みの種ですけど、宮地先生がおっしゃったように、そういう国の指定として保存してきたところの制度を代表して、この選考委員会に入っていると言われてしまうと、文化財の価値と言われると、絶対国宝・重要文化財の方が、未指定のものに比べてどうしても高いと思います。そこだけで同じ土俵で比べてしまうと、絶対指定品が勝ってしまうという形になりますので、記憶遺産の考え方として、そうではないというところをもう少し整理する必要があろうかと思います。
 それがどういう整理の仕方ができるのかということですけど、前回、私、本当に委員長をできるかどうかということで非常に悩んで、色々検討した結果、前回は、ユネスコの基準に応じて審査しましょうということで審査をしましたけれども、次回以降もそれに尽きるのではないかと私は思っています。というのは、人類愛とか、テーマ性とか、そこに手を突っ込んでしまうと、我々では判断できないものになってしまうような気がします。それは、それも含めて考えろと言われると、とてもややこしいことになるような気がしますが、先生方、いかがでしょうか。
【宮地委員】
 いいですか。前回、皆さんも私と同じように悩んだと思います。例えば、舞鶴のあの資料は、やはり抑留問題とか、それから、ドイツとの比較とか、そのあたりがある程度通じていないと、本当は価値が分からない。ただし、私は、先ほど言ったように、東大の史料編さん所で、やはり江戸時代からの史料の保存・蓄積と、それから、国立歴史民俗博物館でのマテリアルを扱った、その範囲でしか私は言えない。第二次世界大戦をどう考えるとか、60万以上の抑留者をどう考えるか、これはもっとふさわしい人がいて、その方がやっぱりあの資料を見て、いいか悪いかを判断しなければいけないので、いわば国を媒介としないで、ローカルとグローバルが直接くっつくような今は時代ですから、もしそういうことを本気にやるのならば、私は少しふさわしくない委員だというふうに申し上げました。
 だから、そこは、この選考委員会をどう作るかという問題に関わってくるから、一つは、先ほど高埜委員が言ったように、明治以来の蓄積を日本が作っている。これは中国も朝鮮も良かれ悪しかれできていなかったことを、日本がアメリカやイギリスを見習って、明治に法律を作って、それで文部省がきちんと蓄積してきた。それはそれで、私は世界に誇っていいだろうと思います。ですから、一つぐらいはそれが入らないと、私は委員にとどまる資格がないと、非常にはっきり私はそう思います。
【島谷委員長】
 それで、1個前提にしてしまうというふうに明文化していいのか、暗黙の了解で進行していった方がいいのか、その辺が難しいと思いますので、地域の活性化と記憶遺産の普及を考えるのであれば、もうそういうことはお役所に任せてしまって、それは知りませんよというのもいかがなものかと思うので、やはり両方あるべきだと思いますが、1点は国からのものを入れるという内規のようなものがあった方がいいのか、それはもう平場でやって、その結果、国のものが落ちても仕方がないのかというのを検討しなければいけないかと思います。
【芳賀委員】
 私は高埜先生がおっしゃっているとおり、国としての文化戦略は大事だと思います。ですから、国宝・重文というのは、既に非常に厳しく国の中で選び抜かれている優れたものですから、ユネスコに申請する内の1点は国のそういうものであるべきだ、という内規とかがあってもいいかと思います。
 ただし、その上で五つ申し上げたいのです。一つは、我々はユネスコの遺産を選んでいますが、それは、我々は何も「スーパー国宝」を選んでいるのではないということ。一般に人々は、「重文」があって、「国宝」があって、その上に「スーパー国宝」としてユネスコの記憶遺産等がある、みたいにどこかしら思っていますけれど、それは違う。「県大会」、「国体」の上としての、「オリンピック」の選手を選んでいるわけではないのです。
 二つ目は、今、宮地先生がおっしゃったように、今はローカルとグローバルが直結しているのが時代の特徴ですから、それを大事にしたい。ローカルとグローバルの間に位置する国なんか、ある意味では介さないでもいいのではないでしょうか。だから、申請するもう1点は、そういう性格のものを確保したい。
 三つ目は、「村おこし」の意味でも、ローカルとグローバルが直結しているのはいいと思います。それにより、人々の文化財や歴史の重要性についての理解がより深まります。
 それから、四つ目は、現実に日本の記憶遺産の1号目が、国宝でも重文でもない、山本作兵衛の炭鉱のものですが、あれは非常に良い選考だったと私は思いますが、それとの整合性も今後も申請するにあたって考慮しないといけないと思います。
 それから最後には、私は東北から来ていますけど、前の文化庁の近藤誠一長官のときに、東日本大震災が発生し、「文化財のレスキュー事業」をしていただきました。そのときの「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業」の「2 事業の内容」には「個人」所有の「文化財等」も、と、さらに「3 事業の対象」には、「国・地方の指定の有無を問わず」と、はっきり前の文化庁長官は書いてくださいました。あれは非常に画期的で良かった。その精神は、今、大きく時代と世のすう向としてあるのではないかと思います。極端に言えば、あの震災のとき、家族写真1枚でも、家族を思い出すよすがとして大事だということが、皆わかりました。もちろん、家族写真1枚は、ユネスコレベルのものとは、話が違います。けれども、「指定の有無を問わない」という態度は、大事かなと思います。
【島谷委員長】
 非常に貴重な提言を頂きましたが、非常に相反するところがあって、どう組んでいいか難しいところがあります。
【芳賀委員】
 はい、相反しています。国宝・重文がいいという意見もあり、私は、「国・地方の指定の有無を問わず」のものも、と違うことを言っています。
【島谷委員長】
 そういう気持ちは非常に分かりまして、宮地先生と同じように、こういう文化財を扱うところにずっと一生、私、勤めていますので、それを重要にしなければいけないということを踏まえつつ、記憶遺産で、みんなが持っている、作品と呼べるようなものではないものについても、やはり情報発信する、それから、日本人のアイデンティティを伝えるためにはとても必要だという、二つの相反する考えがずっと動いているので、そういう意味で、この委員会の委員としてふさわしいのかどうかというのは、宮地先生同様に、本当に悩むところでございまして、もっとすばらしい人がたくさんいるのではないかなとは思いますが、とりあえずと言ったら大変失礼ですけど、委員になっている以上は、その責務を果たさなければいけないなというふうに今考えているところです。
【芳賀委員】
 あるいは、委員としては、そういう良い意味での二つの規準・観点――先ほど私、「ダブルスタンダード」を悪い意味で言いましたので――、「ツイン・スタンダード」とも言うべき、二つの規準・観点を、委員が有することはいいのではないか、と思います。1点は「国宝・重文」重視の観点、もう1点は「国・地方の指定の有無を問わず」の観点で、委員会が選ぶのはどうでしょうか。ユネスコへ提出する遺産の候補は、全国民の投票で選ぶわけにはもちろんいかない、これだけの、この委員会の人員内で選ぶしかないのですから。我々は、そういう二つの異なる「ツイン」の規準・観点に、明確に分けて、選ぶしかないのかもしれないと思います。
【島谷委員長】
 私の意見はともかくとして、お三方はそういう意見であるという形で、私、受け止めましたが、西園寺先生と大滝先生はいかがでしょうか。指定品との関わりという意味で。
【大滝委員】
 今ずっとお聞きしながら考えていたのは、事務局から様々なデータを出していただくことと、委員会としての意思決定は違うだろうなということです。だから、少なくとも、この選考委員会の手続の中に、きちんと選考の経過とか、公平に客観的に説明可能なように審議が行われるということは最低必要として、それに資する事務局の材料集めがあっていいのではないか。だから、事務局の活動と委員会の実際絞り込みの活動は違うという前提があるとすると、そういう一般的な御理解が頂ければ、今はまず先ほど決めたように、公募手続を得るという、次回のときはそれで進めましょうという結論ですけれども、その後のところで、事務局が国宝なり重文の中から戦略的に絞り込んで、材料をここに提出していただいて、それで、全体として、この選考委員会として、客観的に公平に絞り込みの検討を行うということも、許されなくはないのではないかという感じがずっとしています。
【島谷委員長】
 今、大滝先生が言われたのは、事務局からという言葉を使われましたが、事務局が所属する役所からということですよね。
【大滝委員】
 ええ。ですから、事務局の位置付けということになります。それで、先ほどから、やはりここの選考委員会に関与する委員としての立場から言うと、私の場合は、日本で最大書籍文化というものを担っている機関の長として、こういうところに関与させていただいているということですけれども、ただ、全体の今までの申請案件から見ても、どちらかというと、私の立場は市民代表みたいなものです。多くの利用者という、国立国会図書館の利用者の学問的な、それから、素朴な利用者としての感覚を背負いながら、そこで感ずるところで、市民代表としてここに参加させていただいているような気がしています。だから、色々この委員会の、様々な意見を集めるために、このサイズでいいかということはあるけれども、全体としては、それぞれの立場を担われていながら、そこで合議するということにならざるを得ないのではないかというように感じました。
【島谷委員長】
 ありがとうございます。
 先生のお考え、もうみんなそうだと思いますが、それぞれの立場で宮地先生も芳賀先生も選ばれてきていると思いますので、その代表としてその意見を言っているということももちろんあると思いますけれども、それ以上に、一委員として、市民代表という言葉があるかどうか分かりませんけれども、いわゆるフラットなお立場でどれがいいかというのを審議していただいているように思いますので、今、大滝先生から提案がありましたように、事務局からというか、事務局が所属しているところから出てくるものが利益相反にならないような形で担保、認識されるのであれば、文化庁が申請されても全然問題はない。その出てきたものについて審議をすればいいということになろうかと思います。
 そういう考え方をするために、前回、「東寺百合文書」については、選考委員会の委員長名でそれを出したわけですけれども、そういうときに、今度委員長名で出すとおかしなことになるので、それを委員長名で出すということは工夫の余地があると思いますので、例えば、文化庁が出すのであれば、長官名がいいのか、文化財部長がいいのか、その辺は検討していただくということで、それから出てきたものを平場で検討するということでいいのではないかと思います。
 西園寺先生、その指定している人間……。
【西園寺委員】
 委員としてふさわしいかふさわしくないかという意味で言えば、私が最もふさわしくない人間だと思います。ですから、大滝先生が市民代表なら、私は素人代表だと思っていますけれどもね。
 先ほどの国の重文とか国宝の問題について少し思うのですが、そもそもこの記憶遺産というのは国として何を目的としているかというところを考えたときに、やはり国が持っている本当に貴重なそういう文化遺産というものを、記憶遺産として世界に紹介して、記憶にとどめておくということが一番大きな目的だと思います。そういう意味から言うと、やはり国宝とか重文というものが最初のプライオリティにくるべきものだというふうに思います。そういう意味では、公募のスタイルうんぬんは別として、そういうものがやはり記憶遺産として登録されることが望ましいと思っています。それがやはり私は基本だと思っています。
 ただ、やはり地域おこしとか、そういう部分も、確かにそれは、特に結果としてそういうことになれば一番望ましい。ただ、それが第一の目的ではないというふうに思っています。その一つの逃げといいますか、方法としては、記憶遺産に関しては、グローバルなものと、リージョナルなものと、ナショナルなものという、三つのカテゴリーがあるわけですよね。だから、リージョナルなものとかナショナルなものを積極的に活用するやり方はあると思います。ですから、この記憶遺産については、国を代表するものがまず行くべきであって、それから、地域おこしとか、そういう地域の活性化のためには、リージョナル、ナショナルのカテゴリーを活用する手があるのではないかなというふうには私は思います。そちらの方の情報が私どもはあまりよく分かっていないので少し調べてみる必要があると思います。
【島谷委員長】
 今、二つの御意見を頂いたと思いますが、国の指定されている国宝・重文というのが順次登録されていくのが望ましいというのが第一義にあったと思いますので、まずそこから考えていきますと、私を含めて、今日出席している各委員は、国が培ってきた国宝・重要文化財という制度は、やはり歴史と長い積み重ねによって出てきているので、その中から選ぶのがとてもふさわしいというのでは、意見として統一できているのではないかと思います。その2件のうちの1件にするかどうするかというのは、またこれからの考え方になると思いますが、それを含むものを提出するということで、いかがでしょうか、最低意見は入れるというような、内規のような形で。それはあくまでも内規で、外に出すか出さないかというのは、出した方がスマートだとは思いますが。
【芳賀委員】
 繰り返しますけど、ただし、我々、「スーパー国宝」を選んでいるのではない。
【島谷委員長】
 ということですね。
【芳賀委員】
 「世界に認めていただく」、なんていうことではないということです。
【島谷委員長】
 西園寺先生がおっしゃっていましたけど、貴重なものを世界に紹介して、記憶にとどめるという表現をお使いになられていましたけど、世界に紹介して、記憶にとどめるということは、記憶遺産になると、日本人の記憶にもとどまりますね。世界の中の日本が、その一部ですから当たり前のことですけれども、記憶遺産になるということで、誰もが知っていた「御堂関白記」のことに関して、改めて再確認できると思います。道長は知っていても、「御堂関白記」は道長の日記だということを知らない人もいますし、それが事実で残っているということさえ知らないわけですけれども、今、私どもの博物館で国宝展を開催していますけれども、やはり国宝展というふうにやると人は来るというのは、教科書に載っている国宝だから見にいく、評価が高いから見にいく。本当は、私の立場から言うと、指定ではなくて、自分の目で、いいものはいいというのを見ろと言うのですが、それはやはり多くの方には無理なので、そういう意味で、記憶遺産というのを戦略的に情報発信していくものを、国が考え、この委員会が考えて選考していくというのが一番ふさわしいのかなとは思います。
 選考に関する、選考基準を1月に決めるということで、今、多くの先生方から意見を頂戴しましたけれども、まだ、限られた時間ではありますけれど、若干時間がありますので。
【高埜委員】
 その1月に向けてということですが、私は、ユネスコ記憶遺産の基準というものを中心に、選考基準を作ればよろしいと思います。国宝・重文であっても、十分それに合致いたします。ですから、記憶遺産のユネスコのそれに従えばいいのだろうと、そういう立場です。
 先ほどからの御意見の中で出ていなかったので、私なりのユネスコの記憶遺産の精神というか、あるいは、選考基準とか、そこには、国が決定権を持って絞り込むというか、選ぶ、そういう出し方ではなく、どこからでも審査しますという、そこの精神は、これまで選ばれた中に、例えば、少数民族のアイデンティティに関わる、そういうような遺産が含まれていると思いますね。名前を出していいかどうか分かりませんが、例えば、中国なら、少数民族のアイデンティティを示すような記憶遺産が、申請は多分させないでしょうね。国家が押さえて。そうではなくて、それは架空の話、仮定の話ですが、つまり、日本国内どこからでも出せる、国は絞らない、統制しないと、それがユネスコ記憶遺産の精神だというふうに私は解釈しています。
 ですから、これから国内向けに応募、公募する際の基準としては、ユネスコの考え方を前面に出した形。それで、先ほどから申しているように、国宝級の良いものをどんどん発信するというのは、その中で十分可能な、今までもそうでしたけれども、その基準で十分審査は通るものだと思いますので、ダブルスタンダードにならないように一本化できるだろうと思います。大きい枠で一本化できるだろうというふうに私は思いますが。
【島谷委員長】
 ありがとうございます。
 そのユネスコの精神に基づいたものでないと、本当にふさわしい記憶遺産の選考委員会にはならないと思いますので、前回苦労したのは、その表現の問題が、審査する我々自身がよく理解できないような表現というのがありますね。これをもう少し分かりやすく、例えば、真正性と言われても、何をもって言っているのかどうかがいまひとつ分からないことがあるので、これのユネスコの基準をもう一度再確認をする必要があろうかと思います。その上で、選考基準というのをもう一回作り直すというのが、一番望ましいと思いますので。
 ただ、前回、落選という言葉を使っていいのかどうか分かりませんが、推薦されなかった二つのものも恐らく出てくるのだろうと思いますので、それをどう踏まえて、どう対応していくかということも課題になってくるかと思います。その二つがもし申請されるのならば、今までの基準があって、基準が変わったので、今回がスタートだよという意識でやるとするならば、そこでまたサジェスチョンをしてはいけないということになるわけですけれども、そういう考えでよろしいでしょうか。
【秋葉大臣官房付】
 そういうことになろうかと思います。あくまでも公募に応募してくださいということです。
【島谷委員長】
 ということですよね。
【秋葉大臣官房付】
 はい。
【野田ユネスコ協力官】
 前回不採択になった理由については、評価のポイントとして公表してありますので、それに基づいて、また申請される場合は、されると思います。
【島谷委員長】
 はい。
【田中美術学芸課長補佐】
 国宝・重文から提案するべきであるというお話が、今、各先生方からありまして、そういった場合に、実際に美術工芸品の担当をしておる美術学芸課というのが何らかの形で関わることになろうかと思います。一つ申し上げておくべきことは、先ほど島谷先生がおっしゃいましたけれども、国宝・重要文化財の多くというか、ほとんど全ては、国の所有ではありません。つまり、所有者が国である例というのは非常に少なくて、それは海外に売られようとしているものを止めるために、国が予算を出して買ったようなものという数少ないものです。
 もう一つは、今、公募の形にするというときに、誰が応募者になれるかということは、今のところ議論がされていないのですが、これまでの通常のMoWの考え方からするならば、それは当然に、その文書を所有している人、若しくは、それを管理している人ということかと思います。そういった意味では、文化庁は、国宝・重要文化財の管理者ではありませんし、所有者でもないのがほとんどです。
 これまでに三つの国宝が記憶遺産に提案され、二つはもう既に登録されているわけですが、それぞれ推薦するという決定は、所有者の意向を考えずに、こちらで決めた上で、ほとんど決まったところで、こういうことで推薦することになりましたがという形でお声を掛けているわけです。そのやり方がどうなるかは別としても、実際には、推薦物件そのものに触れないと、その推薦書を今後作っていくということはできませんので、そうなったときには、必ずその所有者なり管理者と共に提案書を作っていくということになります。
 そう考えたときに、文化庁が作るということで、文化庁が指導して、いずれかの所有者と一緒に提案書を作るということは可能ですけれども、それとは全く別に、どこかの国宝を所有している財団なり、国宝を所有している博物館なりが、自発的に自分たちの持っている国宝を、さらに記憶遺産として提案してくるということもあり得るわけです。そうなったときに、一つの案件だけ文化庁が関わって作っているもの、ほかには、国宝・重要文化財であるけれども地方から直接出てきたものということで、また今年の春に行ったのと同じような複雑な議論が起こってくる可能性はある。その辺をこれから、その方法を作られるときに、決めていかなければならないと思います。
 もう一つ、私が申し上げたいのは、何らかの形で文化庁が所有している、そうなると、美術学芸課が管理していることになるわけですが、そういったものを提案するという形になっていった場合には、やはり美術学芸課としては、少なくともこの事務局からは降りなければならない、外れなければならない。こういったことの仕組みづくりにも関わるべきではない。それは、これからまだどうなるか分かりませんけれども、今の流れの話でいくと、そういうことになるのではないかというところは、事情としては申し上げておくべきことかと思います。
【島谷委員長】
 可能性としては全てあり得ることなので、整理していただいてありがとうございました。
 美学から申請してもらったら、やはり問題ありますでしょうかね。
【田中美術学芸課長補佐】
 問題ありますね。
【島谷委員長】
 美学の上にある文化財部だとか文化庁長官というのでも、やはり問題ですか。
【田中美術学芸課長補佐】
 分かりません。
【島谷委員長】
 その辺をまた論議しなければいけないと思いますが。
【高埜委員】
 それは山脇さんが色々とお考えになられて、次回お答えを出してくださると思います。その際、例えば、国際統括官の下に、そのような何か外に小委員会を、学識者、有識者、それは何でもいいです。あるいは、文化庁の外に。そういうようなところが選考、今回だったらこれを出したらいいのではないか、ついては、そのところに所有者に働きかけるとか、そういう、この委員会とは全く独立した、どちらがいいのか分かりません、そういうことを……。
【島谷委員長】
 そうですね。ここは審査するわけですから、審査するところが口を出したらおかしいですからね。
【高埜委員】
 おかしいですね。何かそういう。それは、だから、山脇さんの方でお考えいただいて、次回に。何らかの形で、国の持っている、あるいは指定している良いものが、世界に発信できるということを担保していただければ、私は方法は問いません。
【島谷委員長】
 是非考えていただきたいと思います。
 それで、田中さんが懸念された、指定で文化庁が関与しているものが議題に載ってくる、関与していないものは持ってきて、それについて、どういうふうに整合性を合わせるかというようなことがありましたけれども、これは委員長としてというのではなくて、個人の意見としてですが、それが偶然に、その年度というか、2年に1回ですけど、その年に関しては、両方指定品でも私は構わないような気がします。だから、それは皆さんにまた諮らなければいけないと思いますが、国が戦略的にやろうというものを一本柱に立てました。それ以外のもので、違う人がそれを出しましたけど、それが偶然重文なり国宝でしたということがあってもいいというふうに、私は個人的には考えますので、ほかの先生の意見を聞きながら、それが整合性があるかどうかということを踏まえて、選考基準を作っていけばいいかなとは思っております。
【秋葉大臣官房付】
 少し別の観点で、御参考ですが、参考資料7というのが、先ほど申し上げましたように、ユネスコが示している選考基準のエッセンスでございます。それで、我が国から2件申請をして、それをユネスコの国際諮問委員会、14名の専門家からなる国際諮問委員会が審査をして、登録の可否を決定するわけですけれども。ユネスコのホームページを見ますと、登録になったもの、ならなかったものの理由が書いてあります。そのほとんどが、この(2)、(3)にある世界的重要性、英語でworld significanceがなかったから落ちたという理由がほとんどでございますので、そこが一番の眼目というか、ユネスコが審査する基準になっておるということでございますので、そういう観点から選考基準も御審議いただければ大変ありがたいと考えております。
【島谷委員長】
 具体的にはそうでしょうけど、現実的には、国から2件申請したのは2件通るというのは、各国でも同じなわけですか。
【秋葉大臣官房付】
 もちろん、落ちているものもかなりたくさんあります。2件申請して、全てが通るわけではないです。world significanceがなければ落とされるということです。
【島谷委員長】
 落ちたものについての意見は、それが多いということですね。
【秋葉大臣官房付】
 ええ。理由がきちんと書いてございます。それがないので落としましたと。
【島谷委員長】
 そういう意味では、評価基準とこれ、6と7を、同じことをエッセンスを抽出したものでしょうけれども、それを踏まえた選考基準を次回作っていく必要があると思いますので、分かりやすい表現で、それがほかの公募に応じる団体も分かりやすい表現になるような形を努力する必要はあるかと思います。
 少し話は戻りますが、個人的には、ある年度によっては指定品が二つでもいいというような個人的な意見を述べさせていただきましたけど、その辺について、先生方はどういうふうに思われますか。
【大滝委員】
 それは、そこのテーブルに載ってくる案件のトータルを考慮して絞り込んだ結果として、そうなる場合もあるということはあると思いますね。
【島谷委員長】
 そういうことです。でも、それはもう絶対だめで、除外をするという考えも当然あると思います。
【大滝委員】
 ですから、やはりそこの中で何件か、少なくとも今の社会的な関心の度合いから見れば、2件とか3件の数でない数件の中から選考が行われ、結果的にその2件が残る場合もあると思います。
【島谷委員長】
 西園寺先生、いかがですか。
【西園寺委員】
 私は同じ、結果としてそうなるのは、別に全く問題ないと思います。
 一つ、次回まで、もし、先ほど申しましたリージョナルとナショナルの現状と、これからどういう方向にそれがいくのかなということを、少しお調べいただけるとありがたいなと思います。
【大滝委員】
 そのリージョナルとナショナルという関係から言えば、リージョナルというのは、どういう枠組みでリージョナルの仕組みを作れるかというのは、かなり難しい問題があると思います。それもまた探りながらも、ナショナルとインターナショナルな関係では、インターナショナルな仕組みのほかに、ナショナルの仕組みも、何か追求すべきものはないかどうか。それは先ほどの芳賀先生の御指摘の点でもあるし、関連する点もあると思います。そういう点で、とにかく人類の記憶として残すべきものがやはりきちんと残されるという仕組みを、どのようにさらにユネスコの本部でのインターナショナルな登録のほかにあり得るのかということは、考えるべきことではないのかなと思います。
【島谷委員長】
 確かに、記憶遺産だけが記憶に残すべきものではなくて、それ以外のものでも残さなければいけないものはたくさんあるわけですから、残すべきものの重要性を、これを記憶遺産を借りながら日本に世界に発信していくということを今担っていると思います。
【西園寺委員】
 ただ、しつこいようですがその記憶遺産の中に三つのカテゴリーがあって、私の理解ではリージョナルなものも、ナショナルなものも、記憶遺産の一部であることは間違いないというふうに思っています。
【島谷委員長】
 次回がとても重要なことになりそうなので、たたき台等ができましたら、その現場というよりも、事前に当然お示しいただいて、十分に検討した結果、次回を迎えたいと思います。ただ、日程調整等でとても大変なことになろうかと思いますので、その辺も十二分に考慮していただいて、1月の選考基準の検討に当たれればいいかと思いますので、事務局、大変ですが、よろしくお願いしたいと思います。
 また、先生方も、とても忙しい中、今日も出席していただきましたけれども、日程調整でも協力いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。
【芳賀委員】
 次回の選考基準は、あくまでユネスコの選考基準の、分かりやすい「部分集合」になる。
【島谷委員長】
 そういうことになりますね。
【芳賀委員】
 そうですね。ユネスコの選考基準を、より分かりやすく提示する。
【島谷委員長】
 それと、あと教えていただきたいのは、国からというか、文化庁主導でやるような申請が、どういう形でやると利益相反にならないかというようなことも、お考えいただいて、お示ししていただけるとありがたい。どの委員も、それについて戦略的にやるべきだというふうに理解しておりますので、国が考える戦略的な情報発信は何かというのも、責任は重たいでしょうけれども、考えていただいて、単発的に、これがいいからこれというのではなくて、一つの考えの下に次からの申請が入っているということが一番望ましいと思いますので、それも協議していただければと思います。
 色々意見はあると思いますし、まだ十分ではないと思いますが、今日のところは、色々意見は出していただきましたので、お示しいただいた原案どおりで決定するということでよろしゅうございますでしょうか。それでよければ、そのようにしたいと思います。
 どうもありがとうございます。
【芳賀委員】
 すいません、参考8は、これはもう関係ないのですか。
<議題2>
【島谷委員長】
 これはその他の(2)に関わることで、ユネスコの勧告について、これにつきましては、事務局から説明をしていただきますので、お願いします。
【薄葉ユネスコ第三係長】
 本日の議論と直接関係はないのですが、ユネスコの方から照会がございましたので、今回添付させていただきました。
 参考8のDRAFTは、ユネスコ記憶遺産の保存について、日本語訳させていただきますと、デジタル時代における記録遺産、ドキュメンタリー・ヘリテージの保存及びアクセスに関するユネスコ勧告でございます。これは、去年の37回ユネスコ総会で、ドキュメンタリー・ヘリテージの保存とアクセスに関する基準を設定するようにということが決定されましたので、その案を策定したものでございます。
 本勧告案は、そのドキュメンタリー・ヘリテージの適切な保存及びアクセスを確保するために加盟国がとるべき措置について書かれてございますので、委員の皆様におかれましては、それぞれのお立場で御一読、御意見いただければと思っております。また別途メールでお送りいたしましたので、御確認いただければと思います。
 以上でございます。
【西園寺委員】
 一ついいですか。要するに、記憶遺産に対して、このドキュメンタリー・ヘリテージというのは、訳では記録遺産となっていたと思いますが、その位置関係はどういうことでしょうか。
【薄葉ユネスコ第三係長】
 この訳を見ますと、ドキュメンタリー・ヘリテージには、メモリー・オブ・ザ・ワールドも含まれるという整理でございます。ドキュメンタリー・ヘリテージというのは、記憶遺産に認定された文書類も含めた、幅広い重要な記録物という理解です。
【島谷委員長】
 記録遺産の方が大きいということですね。
【薄葉ユネスコ第三係長】
 そうです。
【西園寺委員】
 そこから逆に、また記憶遺産に入ってくるものがたくさんあるだろうというような、予備軍的な。
【薄葉ユネスコ第三係長】
 そうですね。今回、そのような幅広い記録物の保護についての勧告でございます。
【島谷委員長】
 今、御説明いただきましたけれども、それにつきまして質問等ございますでしょうか。
【芳賀委員】
 少しよく分からなかったのが、ACCESS IN THE DIGITAL ERAと書いてあって、それはいいのですが、逆に、オリジナルをどう考えているのかが、よく分かりませんでした。アクセスできればいいのかなと。デジタル媒体になっているものにアクセスできればいいのかなと。
 変に勘繰ったら、文化財の返還とかしなくても、デジタルのものに外からアクセスできればもういいのかなと。だから、日本国としては、特に大きくは不利益になることはないと思いますけど、そういう意図はあるのかなとか。
【高埜委員】
 オリジナルを保存するというのは、もう前提になっているんでしょう。
【薄葉ユネスコ第三係長】
 はい、そうですね。
【高埜委員】
 その余で、ただ、それだと見に行かれないから、デジタル化して、それで世界に発信しなさいと。
【芳賀委員】
 ここでは、オリジナルの保存に関しては一切触れていないわけですか。
【田中美術学芸課長補佐】
 ここはTHE PRESERVATION OF, AND ACCESS TOですから、PRESERVATION OFというのは、保存することですよね。これはオリジナルのことを言っていると思います。それと、オリジナルも含めて、どうアクセスするかという、その二つのこと。記憶遺産事業は、もともとそのものの保存ということと、それに何らかの形でアクセスするという、その二本柱を言っていますので、そのことを言っていると思います。
【芳賀委員】
 はい。あと二つ。全体を読んだら、基本的に正の遺産のことが書いてあるイメージでした。もう皆が知っていることですが、遺産には負の遺産もありますが、それも当然入っているわけですね。何となく文面のイメージが、正の遺産のことについて主に書かれているようでしたが、でも、どこにも否定はしていないから、負の遺産も入っているのでしょう。
 それから、もう1点は、災害時の対応のことが少し書かれています。それに関しては、日本は、この間、平成26年6月に、日本学術会議の史学委員会の「文化財の保護と活用に関する分科会」が、東北大震災を踏まえて、提言「文化財の次世代への確かな継承 ―災害を前提とした保護対策の構築をめざして―」を出しています。日本としても少しずつ動き出していると思います。その他、特に日本に不利益になることはないと思います。
【島谷委員長】
 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、本日用意しております議題は以上でございますので、そのほか、特に事務局からの報告、あるいはまた、審議すべき案件はございますでしょうか。
 大丈夫ですか。事務局の方は。また報告がありましたら、メール等で連絡いただきまして、それぞれの各委員に流していただければと思います。
 それでは、本日は、長時間にわたりまして審議していただきまして、ありがとうございました。第10回ユネスコ記憶遺産選考委員会を閉会させていただきます。
 なお、次回の委員会の日程につきましては、調整をしていただくことになると思いますので、改めて連絡させていただきます。
 本日は、本当に先生方、御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

国際統括官付