日本ユネスコ国内委員会第4回文化・コミュニケーション小委員会 議事録

1.日時

令和3年9月7日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催(Webex)、文部科学省国際課応接室(12階)

3.出席者

(委員)
羽田委員長、佐藤委員長代理、大枝委員、岡崎委員、木間委員、肥塚委員、小長谷委員、西藤委員、佐野委員、髙橋委員、芳賀委員、蓮生委員、平野委員、細谷委員
(関係団体)
旭川ユネスコ協会、日本ユネスコ国内委員 林 朋子会長
学校法人稲置学園 佐々木 雅幸理事
札幌市市民文化局文化部創造都市ネットワーク担当係 加藤三千世係長
(関係省庁)
文化庁文化資源活用課文化遺産国際協力室 守山室長補佐
文化庁 地域文化創生本部暮らしの文化・アートグループ 濱田リーダー
(事務局)
田口事務総長(文部科学省国際統括官)、町田副事務総長(文部科学戦略官)、石田事務局次長(国際統括官付国際戦略企画官)、堀尾事務総長補佐(国際統括官補佐)、原事務総長補佐(国際統括官補佐)、新免ユネスコ協力官、その他関係官
 

4.議事録

【羽田委員長】  おはようございます。本日は御多忙中のところをお集まりいただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【新免ユネスコ協力官】  本日の出席委員数は、井上委員と相賀委員を除く14名です。委員の過半数でございますので、定足数を満たしております。
 本日の会議は公開として、報道関係者の取材を受け付けておりますので、あらかじめお知らせいたします。
 また、一般からの傍聴については、You Tube配信にて傍聴いただいております。
【羽田委員長】  それでは、ただいまより第4回文化・コミュニケーション小委員会を開催いたします。本日の議事進行を務めます、委員長の羽田正です。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事に先立ちまして、事務局の異動がありましたので、事務局から報告をお願いいたします。
【新免ユネスコ協力官】  事務局の異動を御報告いたします。
 本年4月1日付で町田大輔文部科学戦略官。原文絵国際統括官付国際統括官補佐。三島花国際統括官付ユネスコ振興推進係主任。宮田聖未国際統括官付企画係。そして、私、国際統括官付ユネスコ協力官の新免寛啓が着任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【羽田委員長】  それでは、田口国際統括官から一言御挨拶いただければ幸いです。
 では、田口統括官、お願いします。
【田口国際統括官】  恐縮でございます。皆さん、おはようございます。文部科学省国際統括官の田口でございます。
 本日は御多忙のところ、会議に御参加いただきありがとうございます。
 まず、冒頭、皆様には一応メールではお伝えしていると思いますが、前回のこの小委員会の後、7月2日に我が国のユネスコ加盟70周年ということで、70周年記念のオンライン会議を開催させていただいて、濱口会長、それから、ユネスコ協会連盟の鈴木理事長、ACCU(ユネスコ・アジア文化センター)の田村理事長に御挨拶いただきまして、これはYou Tubeでも配信いたしまして、多くの方に御参加いただきました。
 それに際しまして作ったのが、私の後ろにあります、日本のユネスコ加盟70周年のロゴが入った壁紙でございます。このロゴ自体は、プロに幾つか案を作ってもらって、その後は、子供たちや会員の皆様のアンケートで投票をしていただきまして選んだロゴになってございます。皆さんにもこの壁紙をお配りしたいと思いますので、御用命があれば事務局の方にお願いしたいと思ってございます。
 前回の文化・コミュニケーション小委員会では、今後、どういうことを議論するのかということで、ユネスコの創造都市事業、あるいは民間の活動について、幅広く御議論いただいてございます。
 本日、これらにつきましては、文化庁の担当者、あるいは札幌市の加藤様、旭川ユネスコ協会の林会長、あるいは稲置学園の佐々木理事に御出席いただいてございまして、それぞれの方から御発表を頂いた上で、例えば、創造都市につきましては、今後、文化庁事業との連携を図っていくとか、新しい取組を図っていきたいと考えてございます。
 それから、本年は、2年に1度開催されますユネスコ総会。これが、11月にパリで開催される予定となってございます。この総会に向けまして、文部科学省、それから、外務省からユネスコ国内委員会に対して、このユネスコ総会における我が国の基本方針について諮問がなされてございます。これに対する答申の案を御用意させていただいておりますので、これについても御議論いただきたいと思います。
 本小委員会で扱います文化・コミュニケーションというのは、今般のCOVID-19のパンデミックで、人類社会が最も影響を受けた分野であると思ってございます。
 一方で、アフガニスタンの問題をはじめとして、世界の人々の自由と平和に対する脅威が、世界中のいろいろな場所で高まりつつあると思ってございます。
 このような状況の中で、今後のウィズコロナ、あるいはポストコロナの世界で、かつ、人の心の中に平和のとりでを築く。ユネスコ憲章で宣言されたことをどうやって実現していくのか。今こそ、特にユネスコの文化・コミュニケーション分野におけるユネスコの存在意義が問われていくこととなると考えてございます。
 したがって、委員の皆様におかれても、本日、幅広い事柄について忌憚のない御意見を頂戴いただけますと幸いでございます。文部科学省としましても、皆様の御意見を踏まえて、国際社会における我が国の役割というものを果たしていきたいと考えております。
 本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 本日のアジェンダを簡潔に御説明いただきまして、後ほどの議論がうまく進むと思います。ありがとうございます。
 続いて、本日の会議の配付資料について、事務局より説明をお願いします。
【新免ユネスコ協力官】  事前にお送りさせていただいております資料の1枚目、議事次第を御覧いただければと思います。本日、議題は4つございます。その議題の番号に合わせまして、資料の1から資料の4-2までございます。また、参考資料も1から5まで5種類ございます。過不足等がありましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。
 以上です。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 それでは、議事に移ります。始めに、議題1、ユネスコ世界遺産委員会の結果についてです。
 これは、以前の委員会において、ユネスコ世界文化遺産など、文化庁が主体となって進めている案件について、本委員会においても結果の報告をしてほしいという御意見がございました。この御意見を踏まえまして、本日は、文化庁文化資源活用課文化遺産国際協力室の守山室長補佐にお越しいただきました。
 それでは、守山補佐、御報告をよろしくお願いいたします。
【守山補佐】  文化庁の守山でございます。
 本日、私から、先日、今年の7月に開催されました第44回ユネスコ世界遺産委員会について、時間の都合上、簡単ですが、御報告をさせていただきたいと思います。
 配付させていただきました資料の1でございますが、今年の世界遺産委員会は、2021年7月の後半、約半月間にわたって開催されました。世界遺産委員会は、御存知のとおり毎年1回開かれてきておりますが、昨年はコロナの影響でぎりぎりまで開催するのか、しないのか、ユネスコの方で協議が続けられたと聞いておりますが、昨年は史上初めて中止になったということで、1年置いて、今年、ようやく開催されました。しかしながら、やはりオンライン形式ということで、これも世界遺産委員会としては初めて、1つのところにみんなが集まるのではなくて、オンラインの形で開催されたということになりました。
 それによって、またいろいろ制約もありまして、なかなかフルの形での委員会、予定されていた、毎年これはやろうという議題が必ずしも全て議論できるわけではなかったという、少しイレギュラーな形の委員会になりました。ともあれ、1年置いて、ようやく今年開催されまして、昨年審議されるはずでした各国からの推薦案件、それから、今年の分の案件と、かなりボリュームはありましたが、2年分の案件の審議が行われました。
 また、それ以外にも、過去に登録されておりました世界遺産の保全状況の審査、それから、条約の運用の制度をこれからどうしていくかということなど、毎年継続してずっと審議されていることについても、今年は審議時間が限られますし、オンラインですので、1から100まで全部世界遺産委員会の場で議論というわけにはいかないということで、その前の相当な期間、ユネスコで断続的にオンラインでワーキンググループのような形であらかじめ議論を詰めておいて、そこのワーキンググループで大体話し合われた方向について、この委員会で決議を採択するといった、かなり工夫された形で、今回会合が行われました。
 資料ですが、まず初めに、「主な審議結果」として、今年何が新しく登録されたかということについて、少し簡単にまとめさせていただきました。
 先ほど申し上げたように、2年分の申請案件を審議するということになりましたので、今年は45件が審査されるということになりました。このうち、取下げ等もありましたので、約40件が審議されたということになります。
 日本からの提案につきましては、最初に、本当は昨年審議されるはずでした自然遺産の奄美・沖縄の登録が決まり、また、今年審議される予定でありました、北海道・北東北の縄文遺跡群、文化遺産としては、この縄文遺跡群が新たに世界遺産に登録されました。これは、委員会に先立って、この委員会の約1か月ほど前にイコモス(国際記念物遺跡会議)の審査結果が勧告として出ておりまして、その結果、これは世界遺産にふさわしいという勧告を事前に頂いておりました。また、勧告の内容も、今回は特段宿題みたいなものもなく、非常にいい勧告を頂き、その勧告のまま、そのとおりに登録されたということになっております。
 ここにも書いてありますとおり、今年は39件が審議されましたが、34件記載されたということで、かなり記載の割合が高くなっておりました。
 それから、保全状況審査、過去に登録されたものについて、その後の状況はどうですかということについても、オンラインで時間も限られておりましたので、厳選されたものが議論の俎上に上がって議論がなされたということでした。特に、委員会で保全状況審査の議題が始まって、割と最初の頃に議論された、イギリスのリヴァプールが、度々これまでの世界遺産委員会でも開発との関係で世界遺産としての価値を非常に損なうのではないかということがずっと懸念されて、決議もいろいろ出ておりまして、イギリス側にこうした措置を求める、あるいは、これはストップさせなさいということで、これまでもいろいろな決議が出ていたところです。そうした決議を踏まえて、今の状況がどうかということを見た場合に、これは世界遺産としての価値を維持できていないのではないかということで、リヴァプールが世界遺産のリストから削除されるという決議が採択されております。
 これは、実は、委員国の中でも意見が分かれまして、最終的にはコンセンサスではなく投票が行われて削除が決定されたということになります。
 また、ほかに日本から登録された案件につきましても、保全状況審査の対象となったものがございましたが、これはディスカッションなしで、あらかじめ用意された決議案がそのままほかの決議とともにまとめて採択されたということになります。
 さらに、世界遺産の中でも危機遺産の一覧表の更新も行われております。今回は、新たに危機遺産に追加されたものがロシア・モンタナ鉱山、ルーマニアのものですが、それが追加されております。
 また、自然遺産で、コンゴ民主共和国のサロンガ国立公園が新たに危機遺産一覧表から解除されております。
 それから、定期報告等の進捗についても報告がありました。
 さらに、今後の世界遺産の推薦の在り方、審査の在り方ということもずっと継続的に世界遺産委員会の場で審議がなされております。特に、先ほど申し上げたように、いろいろな国のいろいろな考えがあって、利害が対立するような案件につきましては、この世界遺産委員会の場で一気に議論するのではなく、ワーキンググループ等が結成されて、少しずつ時間を掛けて、何度かに分けて議論がなされてきました。
 その結果といたしまして、今後の世界遺産の推薦については、今までは推薦する国が推薦書を準備して、それを提出して、1回のチャンス、乾坤一擲みたいな感じでイコモスが審査を行うということになっていましたが、今後、2027年案件までについては、ちょっと移行期間を取りますが、それ以降については、事前評価、preliminary assessmentという制度が導入されるということが今回の委員会で正式に決定されました。
 これによりまして、推薦する国は、推薦書を出す前に事前にイコモス、あるいは自然遺産でしたらIUCN(国際自然保護連合)から、これは世界遺産としての価値がありそうだ、あるいはこういうところがもっと足りないのではないかといった、出してみないと分からないではなくて、出す前に、事前にある程度世界遺産として登録される見込みがあるか、ないかというところの審議を受けてから本推薦に進めるという制度が新たに導入されることになりました。
 これは、移行期間を経まして、2028年の審議から正式に全て義務化されるということになっております。こうした幾つかのことが新しく決まりましたが、全体としては、オンライン開催でしたので、世界中の国が参加するということで、どこかの国に集まってやると朝から晩まで1日中審議が行われますが、今回、時差も考慮しまして、毎日4時間のみの審議ということでしたので、以上のようなことが話し合われて、予定どおりに委員会が終了いたしました。
 次回は、来年、2022年の6月、ロシアのカザンにおいて開催されるということも合わせて決定されております。
 以上でございます。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 ただいまの守山補佐の御報告に対しまして、御意見、御質問がある方は、お願いします。
 いかがでしょうか。
【西藤委員】  縄文の登録というか、記載、どうもありがとうございました。皆さん方の御努力に感謝いたします。
 それで、少しお教えいただきたいのですが、資産の保全状況なのですが、明治日本の産業革命遺産の文章の中に、関連決議をいまだ十分には実施していないことを強く残念に思うと。もし差し支えがなければ、何が問題になっているのか、そのところをお教え願えればありがたいのですが。
【守山補佐】  ありがとうございます。
 明治日本の産業革命遺産は、文化財でもありますが、中に稼働中の産業遺産という、文化財ではないものも含まれているというところから、その経緯がありまして、実は内閣官房の方で世界遺産としての登録と、その後の保全ということを担当しております。文化庁は、直接には、世界遺産の資産の中の文化財の部分だけに関わっているという状況にありますので、正確にお答えできるか分かりませんが、今回の決議は、明治日本の産業革命遺産が登録された際に幾つか宿題が出ておりまして、そのうちの1つがインタープリテーションセンターということです。そのセンターについて、もっと頑張れという決議が出ていたと理解しております。
 その中で、何をもっとやればいいのかというところまでは、具体的に書かれていませんので、それはまさに世界遺産として、何がインタープリテーション(説明)として必要なのか、どういうことがあれば十分なのかというところは、専門的な観点も含めて、これから内閣官房において詳細を検討して、どうやれば応えられるのかというところは対応していくものと思っております。
 内容についての専門的な知見がこちらではなくて産業遺産にありますもので、余り正確にお答えできていないかもしれませんが、以上です。
【西藤委員】  いいえ。どうもありがとうございます。多分、ややこしい問題が絡むと思いますので、どうもありがとうございました。
【羽田委員長】  ほか、いかがでしょうか。
【佐野委員】  工房いにしえの佐野と申します。陶磁器の修復をしております。
 文化遺産を登録することと、保全していくこと、両方を検討されているということで、非常に興味深く拝聴させていただいたんですけれども、イコモスという言葉が出てきまして、私、この言葉が初めてだったので、どういう方たちで構成されているのかなということにちょっと興味を持ったので、教えていただけるとありがたいなと思いました。
【守山補佐】  大変失礼いたしました。説明が不足しておりました。
 イコモスというのは、国際NGOになりまして、事務局がパリにあり、国際記念物遺跡会議といいまして、日本でいいますと史跡や考古遺跡、建造物といったものの文化財の純然たる専門家集団と言えばいいでしょうか。国際NGOで、専門家によって結成されている組織になります。
 こちらが、そういった建物やモニュメントを含む文化財の専門家が集まっているNGOですので、非常に専門的な知見がある。その団体の目的は、文化財の保護ということで、ユネスコの方で世界遺産条約が始まったときに、世界遺産に何を登録するか、あるいはどうやってそれを維持していくかということを学術的に、専門的に検討して、世界全体で守っていこうというのが世界遺産条約ですので、専門的な知見を得る、専門的な知見を世界遺産条約に反映する機関として、世界遺産委員会の諮問機関という形で世界遺産条約の中にイコモスというものが位置付けられております。
 実際の仕事としては、各国から提案されてくる新たな推薦案件の審査、それが世界遺産として価値を持つかどうか、あるいは既に登録されている資産がきちんと文化財としての価値を損なわないように保全されているか。そういったものを学術的にチェックするというのがイコモスの役割となっております。
 大変失礼いたしました。
【佐野委員】  ありがとうございました。
【羽田委員長】  それでは、時間が押しておりますので、この辺りで次の議題に移らせていただきます。
 守山さん、どうもありがとうございました。
 続きまして、議題2、ユネスコ創造都市に関する取組の在り方及びユネスコ普及活動の活性化についてに移ります。
 従前からユネスコでは創造都市の登録事業を実施しておりますが、我が国としてふさわしい自治体を申請すること、あるいは創造都市を切り口として各地域におけるユネスコ活動の活性化や横断的な取組を進めていくということが大切であると考えております。
 そこで、先ほど、田口国際統括官から御説明がございましたように、今回、この場に5人の関係者の方にお越しいただき、御報告を頂くことにいたしました。
 簡単に御紹介しますと、最初に文部科学省の堀尾補佐、続いて、文化芸術創造都市を推進しているという立場から、文化庁地域創生本部の濱田リーダー、地方自治体の視点から国内のユネスコ創造都市を代表いただきまして、札幌市の加藤係長、それから、創造都市を切り口としてユネスコ活動の活性化を図るという民間の視点から、旭川ユネスコ協会の林会長、さらに、長年にわたり国内外の創造都市の取組の推進に御尽力いただいております、学校法人稲置学園の佐々木雅幸理事であります。
 ちょっと時間が限られておりますので、大変恐縮ですけれども、省庁の方々からは5分まで、それ以外の方々は10分までを目安に御報告を頂きまして、その後、11時30分頃までをめどに、委員の皆様で審議を頂きたいと思います。
 それでは、初めに文部科学省の堀尾補佐、よろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。国際統括官付で国内委員会事務局の堀尾と申します。よろしくお願いいたします。
 資料につきましては、資料2-1、通し番号で9ページを御覧いただきながらお聞きいただければと思います。
 ユネスコ創造都市ネットワークにつきましては、2004年にユネスコの事業として創造性を核とした都市間の国際的な連携によって地域の創造産業の発展を図り、都市の持続可能な開発を目指すものとして始まっております。各都市は、このネットワークを活用して、知識、経験の交流、人材育成、プログラムなどの協力を行うことが求められております。
 こちらは、ユネスコの創造都市の加盟都市間で年に1回、ユネスコ創造都市ネットワーク総会が加盟都市の持ち回りで、世界各国で開催されているところです。
 また、4年に1度、モニタリングレポートの提出が求められております。
 この創造都市に加盟するには、ユネスコに加盟申請をして登録が認められた場合に登録されます。現在は原則2年に1回ユネスコで公募されているところです。
 申請をする場合には、基本は都市が申請を行いますが、各国の国内委員会からの承認状、Endorsement letterが必要となっております。
 現在は80か国、246都市が登録されており、分野は7分野、文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化のいずれかを選んで申請をすることになっております。
 日本の加盟都市は以下の9都市で、今回は札幌市さんと旭川市さんの取組について御報告いただく予定になっております。
 今年4月に文化・コミュニケーション小委員会の皆様方にメールで審議をさせていただきましたが、4月にユネスコにて国際公募が開始されたことを受けて、国内委員会として国内公募を行ったところ、大分県の臼杵市から応募がありました。申請内容を、文化・コミュニケーション小委員会の下に設置されましたユネスコ創造都市ネットワーク新規加盟に係る選考ワーキンググループにおいて御審議いただき、臼杵市を推薦することを決定し、現在、臼杵市からユネスコに申請しているところです。
 臼杵市の申請概要については、次のページを御覧いただければと思います。
 そして、このユネスコ創造都市ネットワークにつきまして、今回の国内公募やこれまでのユネスコ活動の活性化についての議論を頂いている中で事務局が現状の課題として考える点を次にまとめております。
 まず、優れた国内の取組がたくさんあるわけですけれども、そういった取組をこのユネスコ創造都市ネットワークの申請、登録に結び付ける方策をもう少し考えた方がいいのではないかという点と、ユネスコ創造都市ネットワークの加盟都市においては、現在、登録都市としてそれぞれ活動を頂いておりますが、国内委員会では登録のときに議題として取り上げますが、その後、きちんとした議論や、各都市がどういった活動をしているかというのを必ずしも把握していないということから、国内における広報・普及をもう少しきちんとやっていった方がいいのではないかという点を挙げております。
 また、登録都市の分野バランスについて、現在ユネスコでは7分野指定されておりますが、このうち文学分野が日本からは未登録でございます。
 そのほか、後ほど文化庁からも説明がありますが、文化庁において文化芸術の創造性を地域振興、観光産業振興等に活用していく取組として、創造都市ネットワーク日本という事業が実施されております。こちらの事業とユネスコ創造都市ネットワークとの関係の在り方について、もう少し連携していった方がいいのではないかという意見もございます。
 そして、ユネスコの登録事業として、日本の取組をしっかり国際的に発信していくという点も課題として挙げられているところです。
 この後、ほかの関係者の方々からの状況の御報告を頂きながら、文化・コミュニケーション小委員会において、ユネスコ創造都市に関する取組の在り方及びユネスコ普及活動の活性化について御議論いただければと思っております。
 以上です。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 現状の課題というところが、まさに本日、皆様方と議論したいところであります。後ほどよろしくお願いします。
 それでは、続きまして、文化庁の濱田リーダーから報告をお願いします。
【濱田リーダー】  おはようございます。
 それでは、資料2-2を御覧ください。11ページ目になります。
 平成30年に政府では文化芸術基本法に基づき、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、文化芸術推進基本計画第1期を閣議決定しております。この計画の中には、今後の文化芸術政策の目指すべき姿として4つの目標と2018年から2022年度までの5年間の文化芸術政策の基本的な方向性、推進すべき170の基本的な施策が書かれています。
 その戦略の1つに地域の連携・協働を推進するプラットフォームの形成が位置付けられておりまして、そこには文化芸術創造都市に取り組む地方公共団体等による全国的・広域的ネットワークの充実・強化を図るとともに、海外の創造都市やユネスコ等の関係者との交流を促すこと、文化芸術の持つ創造性を地域振興、観光・産業振興等に活用し、地域課題の解決に取り組む活動を推進することが明記されております。
 この基本計画は、平成30年に閣議決定されたものですが、それに先立ちまして、文化庁においては海外での様々な動きを受けて、文化芸術の持つ創造性を生かして、産業振興や地域活性化に取り組むことが重要であるとの認識を持っておりました。
 1つの施策として、例えば、2007年、平成19年には、文化庁長官表彰に文化芸術創造都市部門を設置しまして、文化芸術創造都市の取組を行う自治体に対する表彰を始めました。
 また、2013年、平成25年には文化芸術創造都市の取組を推進する主要な自治体に対し、全国的・広域的ネットワークの充実・強化を図ることを目的として、当時の文化庁長官からネットワーク組織の立上げを要請いたしまして、横浜市をはじめとする22自治体により、創造都市ネットワーク日本、CCNJが発足されました。このCCNJでは、加盟都市間での情報交換やワークショップの実施などにより、文化芸術創造都市の活動の推進を図っており、昨年度末には117自治体までネットワークが拡大しています。
 ところで、文化庁において推進する文化芸術創造都市推進事業についてですが、これは、文化芸術の持つ創造性を地域振興、観光産業振興等に活用する文化芸術創造都市の取組を支援するために実施しているものです。基本計画にあります方向性に従って、文化芸術創造都市に取り組む自治体等による全国的・広域的ネットワークのさらなる充実・強化を図ること、また、国内外の文化芸術創造都市の取組事例を全国自治体に広く普及・啓発していくことにより、地域の文化芸術資源を活用した取組を活性化させることを目指しております。
 具体的には左下図の四角にありますように、CCNJが行うネットワークの円滑化の取組支援や文化芸術創造都市の活動促進ということでの国内外の情報収集・分析等の事業を行っております。
 国レベルで取り組む文化芸術創造都市の事業としては、例えば、右の図にありますように、国際的な創造都市事業として、国際統括官付のユネスコ創造都市ネットワークや文化庁が行っている東アジアの文化都市の事業がありまして、国内関連事業としては、先ほども御紹介しましたような文化庁長官表彰等があります。
 これまで文化庁では、地域で文化を育てる事業を支援してまいったわけですけれども、基本的には地域の主体性に任せながらやっております。しかしながら、それではネットワークづくりにおいて国レベルで支援している部分が有効に発揮しづらい部分もございますので、例えば、CCNJと国際的な創造都市の事業と連携できる仕組みを検討いたしまして、ユネスコ創造都市ネットワークや東アジア文化都市の事業を戦略的に進めていくなど、連携による効果が発揮できるような取組を今後しっかりと進めてまいりたいと考えております。
 御説明は以上でございます。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、札幌市の加藤係長からよろしくお願いします。
【加藤係長】  恐れ入ります。札幌市、加藤と申します。ただいま事務室からお話しさせていただきますので、若干事務室の雑音が入る可能性がございます。お聞き苦しいと思いますが、申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元にございます資料2-3を御覧ください。こちらの資料を基に進めさせていただきます。
 ユネスコ・メディアアーツの創造都市として札幌市は国内の唯一のメディアアーツ都市として参加しております。
 資料13ページ、札幌市について、国内5番目の人口規模、北海道の中心都市、北海道の522万人に対して、札幌市の人口は197万人。豊かな自然環境と公共交通機関などが充実した都市基盤を併せ持っております。
 14ページに続きます。札幌市は、冬、雪、ウインタースポーツの街としてよく知られています。一冬に5メートル近くもの降雪量がある積雪寒冷地域にございます。地域課題である豪雪を世界的なイベントへの昇華させた冬のフェスティバル、さっぽろ雪まつり。また、昭和47年の冬季オリンピックの開催都市として知られております。
 次、資料15ページ。観光の街、そして、食の街としても、皆様、札幌の魅力を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
 続きます。16ページ、創造的な街として2006年3月、創造都市さっぽろ宣言を行いました。創造性に富む市民が暮らし、外部との交流によって生み出された知恵が新しい産業や文化を育み、新しいコト、モノ、情報を絶えず発信していく街としての宣言になります。
 次、資料17ページ、ユネスコ創造都市ネットワーク(UCCN)。先ほど御説明がありましたとおり、創造的・文化的な産業の育成・強化により、都市の活性化を目指す世界の都市が国際的な連携・相互交流を行うことを支援する枠組みです。
 次、資料18ページ、2013年、メディアアーツ都市として、札幌市はUCCNに加盟しました。札幌市がメディアアーツ都市として目指すものは、デジタル技術を用いた新しい文化的、クリエイティブ産業の発展を目指す都市として参加しております。
 次、資料19ページ、メディアアーツ都市として目指すものとしましては、創造的な活動機会の充実。先進的なテクノロジーと自由な発想の掛け合わせ。魅力と活力ある創造性に富んだまちづくりです。
 現在、コロナ禍にあっても、引き続き、市民や企業、大学、行政が連携をして、創造的な活動を支える機会を充実させ、先進的なテクノロジーの自由な発想の組合せによる相乗効果を発揮させながら、魅力と活力のある創造性に富んだまちづくりを推進してまいりたい。これは、令和2年4月の代表質問に関する議会での秋元市長の答弁になります。
 次、資料20ページ、ユネスコ創造都市ネットワークでの目標として、ミッションステイトメントというものが掲げられております。創造性を持続可能な発展のための戦略要素と認めた加盟都市間での国際協力を強化します。官民セクター、市民、社会を巻き込んだ連携を通じ、創造性を都市開発の最も重要な要素とするため、加盟都市の取組を推奨し、強化していきます。
 また、文化部門のクリエイターや専門家のための機会を広げる、弱い立場のグループや個人のために文化的な生活に参加しやすく、近づきやすくする、文化財、文化的サービスを享受しやすくする、文化と創造性を地域の発展勢力、計画に十分に取り入れる。こういったことがミッションステイトメントの中に掲げられております。この目標を達成するため、持続可能な開発のためのアジェンダ2030年の目標達成も一緒に考えながら、市内イベントを進めております。
 先ほども御説明があったように、ユネスコ創造都市では4年に1回モニタリング報告書の提出をしております。今年、札幌は2回目の報告年となっております。
 モニタリング報告書では、加盟分野であるメディアアーツの取組について、過去4年間における取組を記載しております。SDGsに沿って、UCCNの目的達成を主眼としまして、地域レベルの取組及びユネスコ創造都市との連携、実証した主な取組、連携プロジェクト、プログラム、研究について要約することになっております。
 また、モニタリング報告書では、4年を見据えたアクションプランを示します。大きなものとしては、地域レベルのプロジェクトを3つまで明示すること。少なくとも1つについては、ネットワークが網羅する他の創造分野、異分野交流と言われるものですが、これとリンクしていなければならないとなっております。ほかの2例は、加盟創造分野、メディアアーツに対応する取組を表示することになっております。
 また、ほかに国際レベルでのネットワークの目的の実現を目指すプログラムを提示することになっております。
 ほか、この4年間のアクションプランに基づき、年間見込みの予算額を示すこととなっております。
 モニタリング報告書については、以上になります。
 続きまして、22ページ、札幌市の国際連携の取組といたしまして、メディアアーツ海外都市とのオンラインを活用した共同制作事業、City to Cityを実施しております。こちらがユネスコ創造都市ネットワークの加盟都市、メディアアーツ都市は17都市に広がっておりますが、この17都市のうち、今回は14都市となっております。プログラムに基づき、公募で参加する仕組みです。コロナで移動が制限される中、世界のユネスコメディアアーツ創造都市から選ばれる作家と、公募によりペアを組み、オンラインで3か月、デジタル作品の共同制作を行う取組になっております。
 今回は、公募により札幌在住の若手アーティストが1名選ばれました。2021年の11月以降にメディアアーツ都市のフェスティバル会議がオンラインプラットフォームで公開される予定となっております。
 続きまして、次のページですね。オンライントーク&コミュニティ形成イベントとしまして、札幌市では人材育成というものを掲げておりますので、札幌における映像シーンの現在を知るべく、企業とクリエイターにスポットを当てたオンラインイベントを開催しております。
 昨今、札幌に新設されておりますCGアニメーション制作スタジオを紹介するとともに、その設立背景について登壇いただいております。バーチャルのスペシャルチャットというオンラインツールを使用しまして、学生の方にも参加していただき、座談会を組みまして、今年度はあと2回、このようなイベントを開催する予定となっております。
 続きまして、図書・情報館を通じた連携事業を企画しております。
 こちらが、札幌を含めた国内のUCCN加盟都市9都市の映像作品の上映、また、それぞれの加盟分野にちなんだ本の紹介、クラフト作品の展示を市民交流プラザの中にあります図書・情報館というスペースで、UCCNの広報を目的として開催する予定となっております。
 主なイベントについて御紹介させていただきました。お時間いただきありがとうございました。
 札幌市からは以上になります。
【羽田委員長】  加藤様、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、旭川ユネスコ協会の林会長から御報告をお願いします。よろしくお願いします。
【林会長】  科学小委員会の委員で、旭川ユネスコ協会会長を務めます、林朋子です。職業は小児科医で、市内で開業しています。本日は、報告の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 旭川市は、大雪山国立公園の西側の上川盆地の中央にある人口約33万人の地方中核都市です。2019年にユネスコ創造都市ネットワークにデザイン部門で加盟認証されました。
 本日の報告の流れです。
 初めに、私の所属する旭川ユネスコ協会を紹介いたします。旭川ユネスコ協会は、1972年に設立された日本ユネスコ協会連名の構成団体です。日本ユネスコ協会連盟の事業を通して、寺子屋キャンペーン、東日本大震災子ども支援募金など、ユネスコの理念を普及する活動を続けています。
 加えて、3つの柱となる継続事業があります。外国青年日本語主張発表会は、旭川市の留学生による日本語のスピーチコンテストです。昨年は4人の中国、ベトナム、モンゴルの留学生を表彰しました。小中学生のユネスコ作文コンクールでは、最優秀賞の作文の表彰発表会を実施し、当会の年報で紹介しています。2つの事業は30年続いています。2000年からの継続事業であるミズナラの植樹事業では、保育園や小学生とミズナラの苗づくりから植樹までを体験します。旭川市教育委員会社会教育部文化振興課と連携し、情報共有を行っております。
 旭川市は、古くは1901年、明治34年に日本陸軍第7師団1万人が移駐した際に、家具、建具職人も移住してきたことから始まり、豊かな森林資源を生かし、今日まで長く家具の産地として知られてきました。
 表にありますように、1976年の旭川デザインシンポジウムを発端に、その後は海外からデザイナーを招聘し、国際デザインフォーラム旭川を開催するなど、先進的な海外のデザイン思想を地域に取り入れてきました。このことは、一時期家具業界が不況に陥った際にも業界が生き残る原動力となりました。
 2017年には、当市のこれまでのデザインに対する取組が評価され、国際インテリアアーキテクト/デザイナー団体連合とインテリア宣言の調印を行いました。このとき、既にユネスコ創造都市ネットワークの加盟認証を受けていた名古屋市、神戸市がありましたので、家具工業協同組合を中心として、旭川市もユネスコ創造都市ネットワーク加盟認証を目指そうという機運が生まれました。
 加盟認証後には、活動を民間が中心になって実施できるようにと、2019年3月にあさひかわ創造都市推進協議会が設立されました。この協議会は、旭川家具工業協同組合を軸に、異なる分野の19団体からなります。旭川市は、旭川ユネスコ協会の活動を承知しており、加盟認証後には、当然、連携して活動を推進していかなければならないとの認識でした。
 ページ48から55には、あさひかわ創造都市推進協議会が作成した2021年度活動レポートが添付してあります。後ほどゆっくりお目通しください。
 2019年の加盟認定後の変化ですが、旭川デザインプロデューサー育成事業には、多くの参加者があり、デザインへの理解が広がっています。旭川市経済部では、デザインへの注目度が上がり、セミナー・起業などの前向きな取組が増えてきており、多くの団体がイベントに参加しようとしていると感じています。
 あさひかわ創造都市推進協議会の本年の総会において承認されたあさひかわ創造都市理念です。旭川の街の目指す姿を「デザインの森」とし、イメージ図の中には、「ユネスコ」という片仮名の文字が明記されております。
 「VISION 実現したい未来像」は御覧のとおりです。
 「MISSION 果たすべき使命」はお示ししたとおりです。特に2では、ユネスコ創造都市ネットワークとしての活動を大項目とし、小項目には、ESDの推進も明記されています。
 理念、「VISION」、「MISSION」の作成に当たって、様々な業界の方々と議論し、ユネスコの理念についても理解を深めていただくことができました。
 デザインを切り口とした企業や一般市民への産業振興とデザインマインド醸成のための取組のごく一部を紹介します。2年連続で旭川市において開催された巡回特許庁セミナー「知財のミカタ」では、ブランドやデザイン、技術やノウハウなど、ビジネスを支える多くの知財への関心が高まりました。先ほどの創造都市理念のイメージ図の真ん中にあった「幸せのデザイン」をテーマにした小山薫堂氏の講演会は、一般市民の皆さんにとってデザインが日々の暮らしにもたらす幸せの力への気付きとなりました。
 旭川デザインウィークには、海外、道外からの来訪者が多く、市民の参加者も増えてきていたことから、ほかの企業にとってもビジネスチャンスと捉えられ、機械金属工業、食品加工業などからも参画し、業種、分野を越えた多彩なイベントへと広がりました。
 2019年の旭川デザインウィークの期間中来場者は1万8,000人に上ります。今年の旭川デザインウィーク2021は、さらに加盟認証後の初の大型イベントを開催しようと企画されました。
 旭川デザインウィーク2021の実行委員会組織図を示します。写真甲子園で知られる東川町をはじめとする旭川市近郊8町のほか、旭川ユネスコ協会を含め、約40の団体が参加しています。
 旭川ユネスコ協会は、「まちなかキャンパス」という小中学生のためのSDGsイベントに呼び掛けを行っております。
 旭川デザインウィーク2021の当市のスケジュールを示します。残念ながら新型コロナウイルス感染症の感染状況の悪化のため、旭川デザインウィークは、6月と9月の分散開催と変更され、さらに6月はオンライン開催となりました。
 旭川デザインウィーク2021の広報は、旭川市の市民広報『あさひばし』やウェブ配信のガイドブック、新聞報道によってなされます。この広報は、市民委員会などにより、市民全戸16万3,300戸に配付されました。
 旭川デザインウィーク2021の後半部分での市民が主体のイベント、「まちなかキャンパス」について御説明します。市内の高校生、専門学校生などは、SDGsを学び、成果発表の場を求めていました。資料56、57に添付いたしましたので、そちらを御覧ください。
 コロナ禍のため、「まちなかキャンパス」は、残念ながらオンライン開催となりましたが、市内の高校生やデザイン関係団体などがSDGs、デザイン、まちづくりについての成果発表をします。旭川市内の小学校5、6年生、全中学生には、この56、57ページのフライヤーが配付され、YouTubeで視聴し、先輩から学びます。今回は、参加するユネスコ創造都市ネットワークとして、日本から神戸、インドネシアのバンドン、リトアニアのカウナス、メキシコのプエブラ、フランスのサンテティエンヌ、中国、武漢、アメリカのデトロイト、フィンランドのヘルシンキ、ベルギーのコルトレイクなどからの参加も見込まれております。武漢と神戸はオンラインで参加します。
 市内唯一のユネスコスクールである旭川龍谷高校では、今回、「まちなかキャンパス」に参加するに当たり、タイのセカンダリースクール(中等教育学校)と国際交流を開始しました。龍谷高校は、アイヌ文化の探求学習を長く続けており、「まちなかキャンパス」での成果発表に期待します。
 ユネスコ創造都市ネットワークと教育機関との関わりをまとめます。
 丸1、丸2は既に説明いたしました。
 丸3。今年、旭川大学の公立化が決定し、2025年には旭川大学に地域創造デザイン学部が新設されます。
 4番目として、「まちなかキャンパス」実行委員会長の浜田氏らのNPO、北海道イノベーティブデザイン研究協議会、通称HIDERAにはユネスコ部があり、そのような教育関係のNPOが生まれています。
 旭川ユネスコ協会は、ユネスコの理念の促進のため、行政や企業と連携・協力を行っています。あさひかわ創造都市理念のイメージ図や「MISSION」には、ユネスコの理念が視覚化されています。また、詳しくは46ページから47ページを御覧ください。
 旭川デザインウィーク2021ガイドブック巻頭で推進協議会長と私が対談し、ユネスコの目指す多様性に富んだ持続可能な世界、地域づくりには、人と人との知的、精神的連体による平和の構築が欠かせないことをお伝えしています。コロナ禍では、一層この価値観の共有が望まれます。
 まとめです。デザインを切り口として、教育分野では様々な取組が進んでいます。デザインに対する市民の関心も高くなっています。ユネスコの理念は、様々な立場から発信されることにより、普及が進んでいます。
 これまでは、あさひかわ創造都市推進協議会が情報の統合・共有を行ってきましたが、旭川市のような地方中核都市ではボトムアップ型の身近な人々による啓発が可能で、次世代育成につながります。コロナ禍にあり、誰もが人と人のつながりを実感しにくくなっています。このようなときにこそ、次世代育成を心掛けて、誰もが取り残されない社会づくりが必要だと考えています。
 最後に、「科学の絵」のコンクール受賞作品を紹介します。画題は「友だちバトン」です。「友達になりたいと思った人にバトンを渡すと、すぐ友達になれます。動物などにも使えます」とのことです。
 表彰式で、作者の青木やちるさんは、旭川ユネスコ協会事務局長の教え子のお孫さんだということが判明しました。人と人は世代を超えてつながっています。
 御静聴ありがとうございました。
【羽田委員長】  どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりましたけれども、学校法人稲置学園の佐々木理事にお願いしたいと思います。
 佐々木さん、よろしくお願いします。
【佐々木理事】  佐々木でございます。
 では、画面が出るまで少ししゃべっていきますと、私は創造都市という研究を、この20年ちょっと続けております。最初のページにありますが、たまたまですが、21世紀冒頭になりますが、創造都市という概念、クリエイティブシティというものが世界的に話題になりました。
 その背景としては、1985年からEUが欧州文化首都プログラムというものを始めておりまして、そこから芸術文化による都市再生というテーマが様々な学会で取り上げられた。私の場合は、国際文化経済学会というものがあるんですが、そこで議論が始まっておりまして、左から順に、イギリス人のチャールズ・ランドリーが2000年に出しました『CREATIVE CITY』、私の本は2001年に岩波書店から出しております。そして、右の方は2002年にアメリカのリチャード・フロリダが出しました『The Rise of the Creative Class』という本であります。
 最初に概括しておきますと、チャールズ・ランドリーさんというのは、イギリス人の国際的な文化政策アドバイザーですね。彼がイギリス人の学者と議論しながら『CREATIVE CITY』という本を書きまして、これからの都市にとって大事なのは、クリエイティブに都市問題を解決するアイデアを生み出す場所、言うならばクリエイティブ・ミリュー(創造的な環境)を都市の中に作っていく。そこでは、セレンディピティ(偶然、幸運に巡り合うこと)が生ずるということになっています。
 この考え方を、国のレベルで最初に取り上げたのはイギリスの政府でありまして、当時、トニー・ブレアが首相で、Creative for the futureという政策を出し、ロンドンはクリエイティブロンドン政策を展開するということになります。
 そして、この1つのピークとして、2012年のロンドンオリンピックがございました。御承知のように、オリンピック文化プログラムというものが大変注目されたのはこのタイミングですね。クリエイティブシティというものを背景にしておりました。
 アメリカでリチャード・フロリダが出てきたタイミングというのは、アメリカの特に産業構造が大きな転換を迎えている。つまり、製造業が衰退傾向になり、例えば、自動車産業は工業ですね。そして、それに変わる新しいクリエイティブな産業群が生まれてくる。そうすると、その担い手たちはどういう場所に住むことになるのかという研究が始まりまして、フロリダが注目したのは、ハイテクの指標とLGBT、ゲイの指標が重なり合う。ですから、ゲイ、レズビアンの人たちを迎え入れる寛容性の高いところにハイテク技術者が集まりやすいんだという論理を立てたわけです。
 それで、彼の説は、3Tといいますが、タレント、テクノロジー、そして、3番目が面白いんですが、トレランス(寛容性)ということになりまして、言わば新しいアイデアを生みだす人たちを排除しない。包摂型の都市というものが発展するということを言ったわけです。
 これは、彼の本の中で出てくるグラフですが、20世紀の100年間におけるアメリカ社会の職業の変遷ですが、基本的にはクリエイティブな仕事に就く人たちの割合が総体としては3割ぐらいになってきているということを示しております。
 アメリカで最もクリエイティビティが高い、いわゆるゲイインデックスが高い町というのはサンフランシスコなんですけれども、このサンフランシスコとシリコンバレーの間にGAFAの展開があるわけですね。つまり、最先端の情報産業というものも、創造都市に集まるアーティストたちとハイテクの技術者が融合していく中に生まれてきたと考えた。
 私の本は、そういう中にあって、日本の中で創造都市をどう進めるかという考え方を展開しておりまして、2001年に続いて、2012年に岩波現代文庫版に入っております。
 平たく言いますと、20世紀を工業社会と考えますと、21世紀に本格的に展開するのは創造社会であるということで、生産、消費、流通、そして、都市の形が変わってくるということで、大量生産大量消費から、個性的文化的消費で、ものづくりも変わる。そういう中で、創造都市というものが都市の在り方として広まっていくというわけです。
 この考え方は、実はSociety5.0の中にも取り込まれていると思っています。Society4.0までが情報社会なんですけれども、経団連の資料では、Society5.0を創造社会と言っておりまして、イマジネーションとクリエイティビティが求められるし、課題の解決をそういった力でやるという形の社会の在り方になっています。
 こういう21世紀初頭における創造都市論の展開を踏まえて、ユネスコが2001年、そして、2005年には文化多様性条約を採択するということになって、具体的には都市のレベルでの多様な創造産業の発展を推進しよう。ネットワークを組んで進めようという提案をいたします。
 実は、その文化多様性条約の背景にあるのは、当時、WTO体制の下で映画やテレビ番組も含めて、貿易自由化の対象になっていって、無軌道な、無原則な貿易自由化が進んでいくと、例えば、フランス、イタリアのような映画の祖国の映画産業も危機を迎えるということがあって、主にヨーロッパの人たちから、それに対する、言わば歯止めのような形で文化多様性というものをグローバル社会の中で維持しよう、文化の画一化に対抗していこう。ここで議論されたときには、当然、グローバル化に伴って生物多様性が危機に立つということがあったので、生物多様性の概念を文化にも適用して、文化多様性という展開が行われてきました。
 先ほどから言っておりますように7つのジャンルになります。私は、当時、担当者との意見交換をしておりましたが、創造都市に7つのジャンルを設定する必要があるのかどうかという議論をやったんですが、やはり申請しやすいということもあって、差し当たり、ジャンルを選んでいる。もちろん、これだけで十分ではないではないかという議論がありまして、いまだにもっと増やしたらという議論はございます。
 現在の姿です。
 2015年の9月に国連でSDGsが決まってからは、当然ですが、ユネスコ創造都市もSDGsの実現に貢献しようということになりまして、毎年のネットワーク総会では、これが必ず議論されるということになってきています。
 ここからは、代表的な創造都市で、私が特にいいと思うところを選んで、手短にお話ししたいと思います。
 まず、私は、2000年に掛けてイタリアのボローニャ大学に留学しておりました。その関係で、当時ボローニャというのは欧州文化首都事業というものを内外的に展開しておりまして、このときの企画委員長が有名なウンベルト・エーコ教授でございまして、非常に活発な展開が行われます。
 これを背景にしまして、ボローニャはユネスコ音楽都市の認定を受けます。最も早い段階で認定を受けたということになりまして、オペラハウスがあり、現代の新しい若者たちのオーケストラがある。非常に多様な音楽都市でございます。
 アメリカ大陸では、まず、モントリオールが代表的な創造都市でございます。特にカナダの中にあって、フランス語という、言わば文化の多様性を強調するということもあり、そして、パリとのつながりが深いという町でありますが、ここが環境の面でも生物多様性の事務局を持っていたりしますので、様々な分野に広がっております。
 特に注目されるのは、シルク・ドゥ・ソレイユという芸術集団が拠点を置いている場所が、実は、北米最大のごみ捨場だったんですね。そこをサーカスアートシティに転換する。つまり、20世紀の負の遺産を芸術文化で再生していこうという大きなプロジェクトがモントリオールで進んでいるということになります。
 それから、スペインではバルセロナが注目されまして、当然、バルセロナの場合はスペインの中にあって、マドリードに対抗しながら、独自の文化的なポジションを高める力がある。
 ちょうど私は2004年に招かれたんですが、ユニバーサル・フォーラム・オブ・カルチャーというものをバルセロナが主催していまして、様々な都市の再生事業が展開されました。取り分け、現在にあっても、市民の間の文化的な取組というものは大変厚みのある町になっています。
 これまで説明してきたのは比較的有名な都市でございますが、アメリカで最初に創造都市の認定を受けたのは、実はサンフランシスコやニューヨークではなくて、サンタフェという町です。これは、ニューメキシコの砂漠の中にある人口5万人ちょっとの非常に小さい町ですが、町の歴史はアメリカの国の歴史よりも長い400年ぐらいの歴史がある。つまり、プエブロ・インディアンが住んでいて、そのプエブロ・インディアンの居住区もあったんですね。アメリカの中では、先住民族の文化というものをきちんと残し、そして、現代の最先端の文化まで反映して活動しているという意味での多様性を持った町。そして、小さい町でも、ユネスコのネットワークに入れるということで、クリエイティブ・ツーリズムというものをユネスコネットワークに提唱しております。
 大自然と芸術ということになります。
 これまでのところを一旦概括しておきますと3点ほどございまして、創造都市政策というのは、文化と創造性による都市再生事業であり、現代アートの力を活用した都市のアイデンティティの回復、それから、創造産業群を生み出す。そして、環境再生や衰退地域の住民の包摂といった成果がある。
 第2が、文化政策から都市政策、環境政策へ広がっている。
 第3が、公共部門の取組のみではなくて、アーティスト、あるいは経済界の支援を受けながら、オープンな政策展開をしてきているということになります。
 日本における取組は、ちょうど2001年から始まりました。当時、私は金沢大学におりましたので、金沢で創造都市会議を作っていただいた。そして、先ほどお話がありました旭川まで、ずっと展開してきております。
 この中で、2012年から13年に掛けて、当時、近藤誠一文化庁長官からの励ましもあって、国内のネットワークを作りましょうと。それで、このとき、カナダに創造都市ネットワークというものがございましたので、それを参考にしてネットワークを立ち上げるということにしました。
 これが一覧です。
 また、日本の代表的なケースを順番に3つ、4つ、話をしたいんですが、最初に創造都市に取り組んだのは金沢でございまして、当時の市長さんと経済同友会のリーダーですね。この官民の理事らの下で、創造都市会議というものを20年間続けておりまして、その途中でユネスコの認定を受けるということになりました。
 金沢市は2004年に21世紀美術館をオープンさせますが、当然、伝統工芸の蓄積の深いところでございますので、現代アートと工芸というものをうまく融合していくというのが大きな取組になります。
 現在、工芸文化首都を目標にしているんですが、昨年、東京にありました工芸館を金沢に移転することになりまして、国立工芸館としてオープンするということになっております。
 金沢が2018年に取り組んだのが東アジア文化都市事業ということで、これは、2014年から毎年、日中韓の間で文化都市の事業をする。欧州文化首都事業にならったものです。
 続いて、横浜ですが、横浜の場合は、ユネスコにはあえて認定を受けていないんです。独自の取組をしていますが、大変積極的な取組をしてまいります。2004年からスタートし、港湾、ウオーターフロントのところにありました古い倉庫、あるいは銀行の建物をアートセンターに切り替えていくという形で、創造界隈を形成する。そして、創造産業を振興する。
 中心事業の1つとして、横浜トリエンナーレを3年ごとに継続的に開催して、創造都市事業の継続性をこれによって担保しているということになります。
 農村部門では、丹波篠山がユネスコ加盟を実現しております。ここでは、金沢や横浜と違って、生活文化が持つ創造性に着目して、リチャード・フロリダのようなクリエイティブ・クラスということではなくて、クリエイティブに暮らすという形ですね。こういう形で小さな農村部でも世界的な創造都市のネットワークに入れるという実績を示そうとしました。
 限界集落を、集落丸ごとホテルにする、あるいは城下町の古い建物を次々とレストラン、カフェにして、城下町丸ごとホテル化というものを成功させております。
 そこでは、「食と器の国際ビエンナーレ」というものを継続開催しております。
 農協を中心にした創造都市ということでは、山形県の鶴岡市が代表でございまして、ここでは豊かな自然、多様な食材を活用した独自の食文化。それらを活用した新しいスタイルのイタリアン、奥田さんというシェフが登場し、彼が考案するレシピが伝統的な在来野菜を再生させた。「よみがえりのレシピ」という形で食文化映画祭に広がっていったわけです。
 これまでのところをまとめてみますと、4点あるかと思います。地域が直面する困難を乗り越えるために大胆な構想を持って推進を始めた。
 芸術家、文化団体、経済人、市民の協力の下で事業計画を立てた。
 従来の文化政策の枠を越えた広がりがあった。
 そして、4番目にユネスコなどの国際的、全国的な経験交流があったということになります。
 以上が私が申したいことで、もう時間が来ましたので、この資料は読んでおいていただければありがたいと思います。
 どうも御静聴ありがとうございました。
【羽田委員長】  ありがとうございました、佐々木先生。全体の枠組み、あるいは背景になるような理論的な話を頂きまして、これからのディスカッションがうまく進むのではないかと思っておりますが、時間が限られておりまして、余りたくさん時間がないんですけれども、恐らく皆様方から御質問、御意見がたくさんあるのではないかと思います。画面の挙手ボタンを押していただきまして、これからディスカッションを11時40分ぐらいまでの間、受けたいと思います。
【佐藤委員長代理】  日本ユネスコ協会連盟の佐藤でございます。
 佐々木先生をはじめ、皆さんの発表で大変勉強になりました。ありがとうございます。
 今後のこの事業の発展に向けて、幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほど、旭川の林会長から事例を発表していただきましたけれども、私も非常にいい取組で、成功しているなと思ったんですが、これが全国の事例の中では珍しい事例。協会が関与した事例としては珍しい事例で、これが一般的だと思われると、ちょっと違うということを述べたいと思います。
 民間ユネスコ運動のユネスコ協会連盟、それからユネスコ協会の会員は、この創造都市ネットワークをほとんど知らないと思います。知られていないというのが実態だという前提を頂きたいと思います。
 我が協会では、これについて何でなのかなと私なりに考えてみたところなんですけれども、ユネスコの国内委員会では、登録の申請の推薦の審査には関与しておりますけれども、その後の全国の普及に関しては、今までの普及小委員会はありますけれども、そこで議論されたこともなくて、そういう制度を聞いたことがあるなという程度の理解だと思います。そういう意味で、国内委員会でもそれほど大きな問題として今まで取り上げられていなかったのではないかなと思っております。
 それで、先ほど文化庁の紹介がありました創造都市ネットワークは、熱心な文化庁の推進によって100を超える自治体が加盟して、文化芸術を核として、地域企業と産業振興に重点を置かれた活動がされております。しかし、地方では、民間のユネスコ協会とは接点がほとんどありません。先ほどの旭川は、初のケースだと言っていいと思います。
 どうしてかというと、やはり都市の推薦の話と、その普及推進の司令塔の役割分担が、自治体と民間のユネスコ協会が別々に活動しているところから、先ほどの認定を受けているユネスコ創造都市ネットワークの加盟都市でさえ、ユネスコの精神というか、平和、教育、文化の相互理解、人権尊重という考え方については浸透していないのが実態だと思います。
 そういうことで、この問題は、文化芸術を切り口にした産業振興という観点に加えて、旭川の事例のように平和な社会を目指すユネスコ精神による市民運動の参画、協力をすることによって、より一層充実したものにすることが可能ではないかと考えております。
 そういうことが、ひいてはネットワーク日本のユネスコ創造都市ネットワークの認定の際にもプラスになるでしょうし、これと世界のユネスコ創造都市と交流することによって、よりレベルの高いことを目指していくことが可能になるのではないかと思います。そういう意味で、今後の協力関係の強化を図っていくことがよろしいかと思います。
 ただ、二手に分かれているので、交通整理とか、協力関係をどうやって作っていくかというのは、いろいろ工夫が必要だと思います。ネットワーク日本の方が進まれているので、そことどうやって連携を図っていくか。こういうことが課題だと思いますけれども、非常に期待できることだと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 時間が限られておりますので、まず、御意見、御質問を幾つか頂きまして、その後でまとめたいと思いますので、まとめてディスカッションしたいと思います。
【蓮生委員】  大阪大学の蓮生と申します。
 佐々木先生、同プロジェクトの歴史的展開の経緯を踏まえた包括的なプレゼン、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
 私も、このユネスコ創造都市ネットワークについて、ワーキンググループでの議論でも言及させていただきましたが、このユネスコのプロジェクトの趣旨は、ユネスコ本部のモニタリングレポートの評価報告書等を拝見する限りにおきましては、あくまでも各都市間の国際的ネットワークの構築と、都市相互間の交流の促進や知識の共有を通した新たな価値の創造を目指しているというのが、ユネスコ側から見たプロジェクトの特徴です。
 しかし、私が僣越ながら見ますところ、現在、国内においては、各地方自治体による創造都市ネットワークへの登録活動と、個々の都市の固有の価値の追求というものがメイン、主となってしまっていることが懸念されます。
 もちろん、それらの取組は初めの第一歩として重要かつ不可欠な活動ですし、全く否定するものではありません。しかし、それにとどまらず、さらに今後、各自治体のインターナショナル(国際的な)レベルでもアピールできるような新たな価値の創造の取組を支援するための枠組みが必要なのではないかと思います。
 その過程において、先ほどの佐々木先生のプレゼンのようなベストプラクティスの共有や、先ほど文化庁の方から御発言がありましたようなユネスコ創造都市ネットワーク、ユネスコ事業と創造都市ネットワーク日本、文化庁事業の関係の在り方の見直しなどは、大変歓迎されるべきことだと思います。
 そして、その過程において、今の佐藤委員の御発言にもございましたように、旭川の事例のような市民からのボトムアップ型の発信をすくい上げていきながら進めていくような在り方をこれから探っていきたい、議論していけたらと思っております。
 私からは以上です。よろしくお願いいたします。
【羽田委員長】  ありがとうございます。
 続けてお願いします。
【細谷委員】  福井大学の細谷でございます。
【羽田委員長】  細谷先生ですね。はい。
【細谷委員】  本日は、いろいろすばらしいプレゼンテーション、どうもありがとうございました。大変勉強させていただきました。
 私からは、できるだけかいつまんで3点申し上げたいと思います。3点とも一般的なコメントになるんですけれども、私も本日、改めて創造都市ネットワークという制度が非常に重要だということを感じました。
 1つは、ちょっと大きな話ですけれども、ポストコロナ時代に、この制度は新しい意義を持つのではないかと感じています。濱口会長から、3月でしたか、ユネスコに向けて出されたメッセージの中で、とにかくユネスコには、今、新しい時代における新しいつながりを構想して提示する役割が求められるということが、私が一番印象に残っている1行なんです。
 この創造都市というのは、まさに新しいつながりを創造する。構想して提示するという意義があると思うんですね。ほかのいろいろな世界遺産や無形遺産条約など、ユネスコの大きな制度に比べてまだ小さな制度ですけれども、ある意味で古い文化遺産ではなくて新しいものを提示していく。新しいものというのは、文化多様性条約もあるんですけれども、日本は事情があって批准できないということで足踏みしていますが、この創造都市ネットワークというものは、その観点から、非常に育てていくべき制度です。
 それで、今までの意義があったんですけれども、ポストコロナというのは、いろいろな議論が行われていますけれども、大都市中心の社会から中小都市、地方都市の時代になっていく。もちろん大都市の役割が排除されるわけではないんですけれども、その新しい意義というのはユネスコが提示する意義があると思います。それが1点目です。
 2番目は、そうした中で、僕は日本には特別な役割があると思っています。東京一極集中というものが、今後、ポストコロナにどこまで対処していくか、これからのことですけれども、だからこそ、日本には、ある意味地方のポテンシャルをさらに引き出して、ユネスコを媒介とした制度の中で、何かプラスの役割を果たしていけると思います。UCCN(ユネスコ創造都市ネットワーク)における日本の役割というのは、まだこれからだろうという気はするんですけれども、そのポテンシャルが非常にあると感じます。それが2点目です。
 3点目は、この制度は、世界遺産や無形遺産、あるいは多様性条約とも違って、是非地方都市が中心の主体的役割を果たす。もちろん政府も推薦する立場にはあるし、協力関係ですけれども、地方都市の主体性、それが世界の中でネットワークでつながってこそ、本当の新しい時代における、政府の政治的な思惑に翻弄されないユネスコならではの制度をきちんと作っていっていただきたい。ちょっと大風呂敷な議論ですけれども、その3点を申し上げたいと思います。
 以上です。
【羽田委員長】  ありがとうございます。
【木間委員】  朝日生命ユネスコクラブ東京都ユネスコ連絡協議会の木間です。本日は、御説明ありがとうございました。
 本日、ユネスコ創造都市ネットワークの事例として、旭川ユネスコ協会会長の林委員から、旭川市と旭川ユネスコ協会の事例を報告させていただきましたので、この事例も踏まえて、普及活動の観点から課題と考えていることを4点お話しさせていただきたいと思います。
 1つ目は、認知度の向上です。自分の都市が「ユネスコ創造都市ネットワーク」に加盟していても、「創造都市」と呼ばれる都市がいろいろあるので、ユネスコなのか、何なのか、どのネットワークに入っているのか住民がよく分かっていないという状況がよく見受けられますので、もっと正しく、広く広報していくことが必要だと思います。
 2つ目は、「ユネスコ創造都市ネットワーク」の加盟都市において、「ユネスコの理念」があまり理解されていないということです。「ユネスコ創造都市ネットワーク」であるにも関わらず、加盟している市民や団体などがユネスコの理念、相互理解、国際平和の構築ということを余り意識していないという状況が見受けられます。
 今年度、文化・コミュニケーション小委員会で「ユネスコ創造都市ネットワーク」の国内選考基準に、「ユネスコの理念と目的を理解した上で、それらと整合性があること」という文言を加えていただくように提案して、改訂していただきました。
 今後、国内選考に当たっては、これに沿っていることを確認して、意識付けを図っていただき、また、加盟後のモニタリングについても、こうした視点でフォローいただきたいと思います。
 3つ目は、地域のユネスコ協会との連携です。先ほどお話があったように、旭川市のように連携が取れているところが、残念ながら今のところ他にはありません。旭川市の事例では、市からユネスコ協会にお声掛けがあって、市と文化産業の推進団体、旭川ユネスコ協会との連携ができて、一緒に議論をしていく中で、ユネスコへの理念についても理解が深まったという経緯があります。また、さらにユネスコ協会を通じて他のNGOやユネスコスクールにも広がって、市民を巻き込んだ形で「ユネスコ創造都市ネットワーク」としてのイベントなどが開催されています。
 このような事例を参考にして、ほかのユネスコ創造都市や、それを目指す都市が地域ユネスコ協会と連携して、市民へ浸透を図っていけるような仕組みを作っていけるといいと思います。
 また、今、ユネスコ未来創造プラットフォームで、地域におけるユネスコの多様なステークホルダーの連携を目指していますが、旭川市の取組みはその良い事例と言えると思います。是非旭川市の事例を、地域ネットワークづくりのモデルとして、未来共創プラットフォームのウェブサイトやセミナーなどでも紹介して、他の地域のネットワークづくりの参考にしていただければと思います。
 4つ目は、ネットワーク強化の問題です。このたび、ユネスコスクールについても、学校間のネットワークとしての機能が十分に果たせていないという課題が挙げられて、改善が図られることになりました。「ユネスコ創造都市ネットワーク」についても、ネットワーク機能を充実することが課題だと思います。
 旭川市の事例では、コロナ禍でオンライン開催に変更になった「まちなかキャンパス」に国内外の「ユネスコ創造都市ネットワーク」加盟都市が参加してくれることになったという報告がありました。「ユネスコ創造都市ネットワーク」加盟都市は、国内には、まだ9都市しかありませんが、この9都市が連携・協力して、海外のユネスコ創造都市ともつながっていけるような仕組みを作っていくことが必要だと思います。
 国内には「創造都市ネットワーク日本」という立派なネットワークがあって、充実したポータルサイトも設置されており、ユネスコ創造都市9都市も全てその会員になっていますので、「創造都市ネットワーク日本」と連携して、ネットワーク機能を強化していくことも可能だと思いますし、是非そのようにしていただきたいと思います。一方、「創造都市ネットワーク日本」に加盟している都市の中でも、例えば、「東アジア文化都市」加盟都市は独自のプログラムとして、毎年、中国、韓国と交流を行っています。「ユネスコ創造都市ネットワーク」についても、独自に連携を取って、ユネスコのネットワークとして意識を高めて、海外のユネスコ創造都市とつながっていくような仕組みを考えていくことも必要なのではないかと思います。
 例えば、ユネスコ創造都市は、間もなく10都市になりますので、オンラインでもいいので、10都市で集まって、イベントを開いて、ユネスコの理念の下に情報交流するということから始めてもいいのではないかと思います。
 また、日本のユネスコ加盟70周年と合わせて、そのようなイベントを大々的に広報することで、認知度の向上にもつなげていければと思います。
 以上、4点、認知度の向上、ユネスコへの理解促進、地域ユネスコ協会や市民との連携、国内外ネットワークの強化という課題を挙げさせていただきました。これは、世界遺産や無形遺産、エコパークなど、ほかの登録事業、ユネスコスクールにも共通するものだと思います。「ユネスコ創造都市ネットワーク」において、具体的な対策を実践するとともに、他の事業についても対策を講じていければと思います。
 以上です。
【羽田委員長】  ありがとうございます。
 時間が大分迫ってきておりますので、簡潔に残りよろしくお願いいたします。
【大枝委員】  大枝です。簡潔に。
 先ほど札幌市から分かりやすい御報告を頂きましたので、札幌市の報告について、2つほど質問をさせていただきます。
 1つは、札幌市は2013年に加盟して8年になりますけれども、加盟してよかったなと思うこと、あるいは具体的な変化や効果がありましたら、1つでも、2つでも教えていただければと思います。
 2つ目は、やはり8年たっておりますので、札幌市の担当者も、最初に加盟するときは非常に情熱、熱意があったと思うんですが、8年たった今、変わらない状況なのか、あるいは活動が根付いているのか、それとも、失礼ですけれどもマンネリ化している、あるいは埋没しそうになっているなど、そういう状況について教えていただければと思います。
 以上です。
【羽田委員長】  ありがとうございます。
 質問でございますけれども、質問もまとめて最後にやりますので、続けてお願いします。
【芳賀委員】  東北大学の芳賀です。クリエイティブシティのネットワークの件に触発されて、一般的なことを申し上げたいと思います。
 いつも思うことですけれども、日本は優等生なんですね。ユネスコという先生がいて、それをよく聞く東大生みたいな優等生。逆は、できないのでしょうか。例えば、クリエイティビティ(創造性)、デザインの概念を逆に世界に提唱するとか、そういうアップストリーム(流れをさかのぼること)はできないのでしょうか。
 具体的には、クリエイティビティというと、いつもパリやら、ボローニャやら、フィレンツェやら、あるいはアメリカとか、それで少し古いのでは、たった1万8000年くらい前のアルタミラとか、ラスコーとか、そこら辺だけです。いつもヨーロッパとアメリカです。
 でも、本当は、これは東大の諏訪元先生がおっしゃるのですが、アフリカのエチオピアの、コンソの旧石器時代のアシュール型石器、そこにデザインの原点があると。175万年前です。そういうふうにおっしゃっています。そこで例えば、諏訪元先生をユネスコに派遣するとか、ヨーロッパ、アメリカ中心なんかではなくて、アフリカこそ中心だというデザインの概念の提唱をアップストリームでやれば、同時に日本はアフリカ開発会議にも力を入れていますけれども、アフリカとの連携にもなりますし、そのようなことも、これからはそれこそ創造的に行っていっても良いのではないでしょうか。
 終わります。
【羽田委員長】  どうもありがとうございます。
 これで、一応、最初に手を挙げてくださった方については終わりました。
 私の理解した限り、質問は大枝委員からのものだけだったように思いますので、札幌市の方にごく簡単に2つあった質問にお答えいただきます。よろしくお願いします。加藤係長。
【加藤係長】  御質問ありがとうございました。
 2013年から加盟してよかったというところを具体的に何点かということでしたが、このユネスコの創造都市の加盟を通じて、ほかの海外都市、また国内都市、そして、国内のCCNJといった3つの枠組みに参加でき、それぞれ交友を広げ、一番いいのはベストプラクティスの共有、都市の優良事例の共有ができたということと、それを踏まえて札幌市の取組として実施の参考にすることができたというのがよかったところかと思います。
 2点目、8年たった今、活動が根付いているのかといったことについての御質問に御回答させていただきます。
 活動としては、継続的に実施しており、先ほど申し上げたCity to Cityのようなコロナでもオンラインで海外都市と共同制作ができる。そして、その中で札幌の人材を世界に紹介できているというところが8年たった成果で、これからも継続的に根付かせていくべきだと考えております。
 簡単になりますが、札幌市からは以上となります。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 ちょっと会議の運営が不手際でございまして、もう既に時間が相当迫ってきております。委員の方々からたくさんの貴重な御意見を頂きまして、私の方で特にまとめることはいたしませんけれども、共通して皆さんおっしゃっていたことが、まず、国内の中での連携、あるいは協力関係の作り方ということと、さらに国際的なレベルでの活動支援、あるいは国際的な場でのアピール。最後に芳賀先生がおっしゃっていたことですけれども、そういったことについても御意見を頂いていると思います。
 本日は1回目でございますので、頂きました御意見、キックオフということでたくさん頂いたものを文科省で参考にしていただきまして、また次の会議で、この問題をさらに議論する、あるいはこちら側から提案するといったことにつなげていっていただければと思います。
 まだ御発言いただいていない委員の方々で御意見がございます場合には、国際統括官付のこちらの事務局の方に、大変恐縮ですけれども、メールあるいは電話、様々な手段で御意見をお寄せいただければと思います。
 議論する時間、さらに、もっと御意見いただく時間がございませんで申し訳ございませんけれども、取りあえず、本委員会として様々な御提案を重く受け止めさせていただきまして、次回の委員会につなげていくということで、この議題については終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 議題3でございます。第41回ユネスコ総会に向けた答申案(文化・コミュニケーション分野)についてということであります。この点につきまして、事務局から御説明をお願いします。
【石田国際戦略企画官】  ありがとうございます。事務局の企画官、石田でございます。
 それでは、3点目の議題について、簡略に進めさせていただきます。
 まず、本年、ユネスコでは、2年に1回総会を行うことになっておりまして、今年は総会の年でございます。総会の年におきましては、毎年日本においての対処方針を検討するために国内委員会に諮問がなされて、それに対する答申が行われるという形になっております。
 この諮問が、資料3-1でございますけれども、こちらで示されておりまして、8月の半ばに文部科学省、外務省の方から出されているという状態になっております。
 本日御審議いただきますのは、資料3-2でございます。この諮問に対する答申案を御議論いただくということでございます。
 なお、傍聴されている方々には資料3-2はドラフトでございますので、非公開とさせていただいておりますので、あらかじめ御了承ください。
 それでは、委員の皆様におかれましては、資料3-2、104ページからを御覧いただければと思います。
 今回のユネスコ総会では、中期目標、あるいは事業予算が議論されますけれども、それに対する答申という形になります。中期戦略等につきましては、これまで総会でも何度か御説明をさせていただいておりますけれども、日本の方針がある程度盛り込まれているということでございますので、それを前提に幾つか文化・コミュニケーション部分において指摘すべきところをまとめているという形で答申を構成させていただいております。
 御覧いただきますと、まず「総論」の部分でございます。「総論」の部分は1から6までございますけれども、2)のところで、一般論としてですけれども、加盟国として、引き続き我が国にとって重要なユネスコに対して積極的に関与するということを示した上で、5、6辺りでございますけれども、今回の中期戦略、1つのポイントは、新しい優先グループとして「ユース」、あるいは島嶼国の途上国に対して留意するということ。この2つの分野が新たな優先グループとして位置付けられようとしているということでございますので、そのことについて御指摘させていただいているということ。
それから、6番目でございますけれども、最初の統括官の挨拶にもありましたが、現状、アフガニスタンの情勢や、新型コロナウイルス、まだまだどう展開するか分かりません。ですので、なかなか各論に書けることはないですけれども、総論部分ではしっかりと指摘をするという形で、ここに記載させていただいております。
 それから、4ポツ以降が「文化分野」になります。「文化分野」に関しましては、まず、「文化遺産の保護」ということで、こちらについては文化審議会の答申や、あるいは無形遺産でありますと、一番下の行にありますけれども、アジア太平洋無形文化遺産研究センター、こちらが設立10年になっておりますので、こういった取組を通じてしっかりと保護促進に貢献していくということを書いております。
 それから、2と3は、本日、まさに御議論いただいた話に関係しますけれども、文化多様性条約について、締結に向けた検討を進める。
 それから、3番目の「創造都市ネットワーク」については、最後の行にございますけれども、我が国において優れた取組を行っている自治体が、本日のご発表内容にもありました通り、多くございました。こういった自治体がしっかりと登録を目指せるように検討することが必要であると書いております。
 なお、1点だけ、事前に配付しておりましたところ、木間委員から御意見いただきまして、この事業がユネスコの理念に沿った事業であるということは強調すべきだということで、「ユネスコの理念に沿った事業であることを確認しつつ」という文言を付け加えさせていただいております。
 それから、最後、「コミュニケーション・情報分野」ということになってまいりますけれども、特にコミュニケーション情報では、2のところ、「ユネスコ『世界の記憶』事業」がございます。こちらについては、2017年から凍結しておりまして、制度設計についての議論がありましたけれども、加盟国政府を通じて申請するということ。あるいは、異議申立制度を新設するといった議論の結論が出て、我が国においても申請できるような再開の見込みができてきておりますので、これについては我が国としてふさわしい記録物を選定・登録することで、国際社会における日本の深い理解の向上を図り、記録物を利用した国内における地域活性化に寄与する取組を推進することが重要であるとさせていただいております。
 最後、「普及分野」でございますけれども、普及においては、大きく「パートナーシップ」と「若者・企業のユネスコ活動への参加」という2つを掲げておりまして、「パートナーシップ」においては、ほかの国のユネスコと国内委員会等との連携をしっかりと進めていくといった内容。
 それから、若者・企業等への参加ということで、特に若者については、今般日本のユネスコ加盟70周年ということで、総会でも議論いただきましたけれども、我が国においてもユネスコ活動をしっかりと若者に訴え掛けて、訴求力を高めていかなければいけない。このために、ユネスコにおけるこの分野の活動にしっかり取り組んでいくということを書かせていただいたところでございます。
 事務局からは以上でございます。
【羽田委員長】  ありがとうございます。
 では、ただいまの御説明を受けまして、委員の方々から答申案について御質問、御意見がございましたら承りたいと思います。また挙手ボタンでよろしくお願いします。
【髙橋委員】  髙橋でございます。
 今、御説明があった答申案の骨子については、異論はありませんし、よくまとめられていると思います。特に、その中の6の「普及分野」に記載されている若者と企業が今後のユネスコ活動へ積極的に参画していくということは大変重要なポイントであると思います。
 この項目分けについて若者と企業が一緒の段落に纏められていますが、この2つは少し観点が違うように思います。それぞれが重要だということからすると、若者の参画の話と企業の参画の話は、項目を少し分けて記述してもいいのではないかと思います。
 特に私は民間企業出身なので、これまでもこういった場で申し上げてきましたが、企業にとってSDGsやESGは、単なる対外的にやっていますよということを示すだけの戦略ではもはやなくなっていて、自らの事業基盤を持続的に成長させるには、世界が持続的に発展しなければいけないという経営戦略になっていて、SDGsやESGに大きく経営資源を張ろうとしているわけです。そういった意味でユネスコ活動と企業との連携というのも、これまでとは少し違った次元に進化していくべきであるし、方々、このESGやSDGsの民間企業の取組の流れというのは、日本はどちらかというと少し遅れているのかなという気もしますが、グローバルベースでも相当進んでいる話ですので、書かれていることについては異論はないんですけれども、強調するという意味で、可能であれば少し段落を分けて、重要な項目を「パートナーシップ」、「若者」、「企業」という3つにまとめるという考え方もあるのではないかと思いました。
 以上です。
【羽田委員長】  ありがとうございます。
 続きまして、お願いします。
【細谷委員】  福井大学の細谷です。ありがとうございます。
 総論のところで、1点だけコメントを申し上げたいと思います。
 今回もおっしゃったとおりで、中期目標を新たに2022年から始まるという大きな節目ですし、先ほども言及しましたけれども、濱口会長が出されたメッセージもありますし、それを踏まえて、今のこの総会における日本ならではのコメントというんですかね。最初に統括官がおっしゃったように、今はまさに人類社会が最も影響を受けた年であったとおっしゃったんですよね。だから、そういった本当に大きな節目にふさわしい、ポストコロナのユネスコのレゾンデートル(存在価値)を見直していくという観点からの総論が、日本としてはあっていいと思うんです。
 その視点から読みますと、これは非常によくまとめられている内容ではあるんですが、もちろんこれからいろいろもんでいかれるわけですけれども、1の6)がある意味、少しその芽が出ているパラグラフではないかと思います。ここで、何かビジョンを示していただけないかなと思います。つまり、繰り返しになるんですけれども、今こそユネスコには新しい時代における新しいつながりを構想して提示する役割が求められている。それは、日本としてはどう考えるのかということです。
 そこは、私が今「こうです」とお答えを申し上げる立場には全然ないんですけれども、濱口会長のメッセージのある意味アップデートのようなことを、今度の総会では考えていただく。メッセージを出し直すという大作業は、もちろんできないことだと思いますけれども、その延長線上で、私もユネスコから出てきている中期目標案を読んだわけでもないんですけれども、それを事務局におかれては消化していただいて、何か6)を膨らませたもの、あるいは7)でもいいんですけれども、そういった具体的な大きなビジョン。その中から、各論はおのずと出てくるのではないかと思います。
 一般的なコメントだけですが、以上でございます。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 答申案につきましては、これでよろしいんですよね。まだもう一人いらっしゃいましたか。
【新免ユネスコ協力官】  西藤委員、芳賀委員の順でお願いいたします。
【羽田委員長】  そうですか。ちょっと時間が押していますので、よろしくお願いします。短めにお願いします。
【西藤委員】  冒頭、名のらず、申し訳ございませんでした。奈良県立橿原考古学研究所の西藤清秀です。
 私は、2ページ、「文化分野」の一番最後のところなのですが、「その中で我が国が、文化遺産保存修復技術やノウハウを活かして」という文言を少し変えた方がいいのではないか。そこを「世界の文化遺産の継承のため、保存遺産の将来への継承のための様々な取組」というような形で、もう少し大きく幅を持たせた方がいいような気がいたします。意見です。
【羽田委員長】  ありがとうございます。
 では、続けてお願いします。
【芳賀委員】  東北大の芳賀です。
 まず、西藤委員は、パルミラでも大活躍していらっしゃって、今おっしゃったことに賛成いたします。
 それで、私からは、1の5に「小島嶼開発途上国」に留意するとありますが、これは「世界の記憶」、特にMOWCAP(「世界の記憶」アジア太平洋地域委員会)、アジア・太平洋地域の活動においても留意していただきたいと思います。5,000万円とか5億円ではなくて、50万円とか100万円で非常に価値のあることがそれらの国でできますので、よろしくお願いいたします。
 もう一つだけ。これは総会の議題とは関係ありませんけれども、日本のユネスコ加盟70周年に関して、これをきっかけに何かを行うのでしょうか。行うべきだと思います。
 以上です。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 これでよろしいんですかね。一応、御意見いただきましたか。分かりました。
 頂きました御意見につきまして、事務局と調整いたしまして、加筆・修正を適宜させていただき、9月15日の日本ユネスコ国内委員会の総会において報告するという予定になっております。
 文言につきましては、私に一任いただくということでよろしゅうございますでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
【羽田委員長】  特に御異議ないようですので、そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは、最後、もう一つ議題がございまして、その他に移ります。事務局からお願いします。
【石田国際戦略企画官】  その他につきまして、最後、少しだけお時間ください。
 まず、1点目でございますけれども、「世界の記憶」の事業、今、少し御説明させていただきましたけれども、それに関しまして、資料4-1と4-2を御覧いただければと思います。
 前回の文化・コミュニケーション小委員会で、「世界の記憶」の事業が止まっている、凍結されている状態で前回会議をやったわけですけれども、年度が替わるということで、この文化・コミュニケーション小委員会の下にある選考小委員会の人事を御覧いただきました。
 しかしながら、無事に新しい制度が立ち上がりまして、その制度は国から推薦するという形になりましたので、政府全体で関係省庁連絡会議を作って、その中に文部科学省の国際統括官が入るという形になってまいります。これからは、この4-1にありますような審査委員会運営規則というものを統括官の下に設けるような形になってまいります。
 ですので、それを受けて、資料4-2にございます、これまであった選考委員会を解消させていただくということが1つと、資料4-1の4条辺りに線を引いていますけれども、この事業においては、日本における、いわゆるナショナル・コミッティと言っておりますけれども、これは新しくできる審査委員会になります。
 説明は以上でございます。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 ただいま御説明がありましたユネスコ「世界の記憶」選考委員会の廃止及び「世界の記憶」国内案件に関する審査委員会を我が国のナショナル・コミッティに位置付けるということにつきまして、何か御意見、御質問がある場合には挙手ボタンをお願いします。
 よろしいですか。
 それでは、ユネスコ「世界の記憶」選考委員会を廃止することにいたしまして、また、「世界の記憶」国内案件に関する審査委員会を我が国のナショナル・コミッティに位置付けるということをこの委員会として承認したことにさせていただきます。ありがとうございました。
 ほかに事務局から何かございますでしょうか。
【石田国際戦略企画官】  時間を超えておりますけれども、最後30秒だけ。先ほど、芳賀先生から70周年で何かしますかという話がありましたけれども、実はロゴなども作っているという話を統括官から最初にさせていただきましたが、政府広報で日本のユネスコ加盟70周年の30分の番組を作っていただきました。それについて、広報動画みたいなものがございますので、最後にこれだけ御覧いただいて終わりにしたいと思います。
 (動画視聴)
【石田国際戦略企画官】  以上でございます。
 24日に放送がございますので、皆さん御覧いただければと思います。以上でございます。
【羽田委員長】  24日の何時ですか。
【石田国際戦略企画官】  失礼しました。夕方の6時でございます。BS朝日でございます。
【羽田委員長】  ありがとうございました。
 ただいまの御報告につきまして、何か御意見、御質問ありますでしょうか。拍手を頂いておりますけれども、何かありますでしょうか。
 よろしいですか。
 少し時間が過ぎてしまいましたけれども、一応、本日予定しておりました議事は以上でございます。
もし皆様方から何か特別な御質問、御意見がございませんでしたら、これで閉じさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 本日、特に2番目の議題につきましては随分たくさん御意見いただいておりますので、これを参考にして、次のステップに進めていくように事務局と協力したいと思っております。また、いろいろと御意見、御支援いただくことになると思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これで文化・コミュニケーション小委員会、本日は閉会とさせていただきます。本日は御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございました。また引き続き、どうぞよろしくお願いします。

── 了 ──

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