令和2年6月10日(水曜日) 10時~12時
Web会議(ZOOMを使用)
(委員)
小長谷有紀 (コミュニケーション小委員会委員長)、羽田正(文化活動小委員会委員長)、秋永名美、井上洋一、相賀昌宏、肥塚見春、小林真理、西藤清秀、佐野智恵子、髙橋秀行、芳賀満、蓮生郁代、平野英治、細谷龍平、山口しのぶ【敬称略】
(関係省庁等)
文化庁
(文部科学省(日本ユネスコ国内委員会事務局))
大山国際統括官、亀岡文部科学戦略官、大杉国際戦略企画官、植村国際統括官補佐、堀尾国際統括官補佐、その他関係官
【小長谷委員長】 本日は御多忙のところ、オンライン会議に御参加いただきましてありがとうございます。定刻を過ぎましたので、事務局、定足数の確認をもう一度お願いします。
【植村国際統括官補佐】 本日は出席の委員が、文化活動小委員会12名、コミュニケーション小委員会7名で、それぞれ委員の過半数ですので、定足数を満たしています。
なお、本日、報道関係者の取材を受け付けておりまして、朝日新聞社及び時事通信社の方が取材されますので、あらかじめお知らせいたします。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
それでは、定足数に足りているということで、ただいまより第142回文化活動小委員会及び第100回コミュニケーション小委員会の合同小委員会を開催いたします。
本日の議事進行をいたします、コミュニケーション小委員会委員長の小長谷でございます。よろしくお願いいたします。本日は文化活動小委員会とコミュニケーション小委員会の合同小委員会となっておりますが、文化活動小委員会の方の羽田委員長と御相談の上、私が司会を務めさせていただくこととなりました。
本委員会は、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続、第1項に基づき、公開することといたします。公開部分における御発言は、議事録としてそのままホームページ等で公開されますので、御承知おきください。
また、事務局の人事異動及び本日の出席者について、事務局から、まず、御紹介願います。どうぞお願いします。
【植村国際統括官補佐】 本年4月に、文部科学戦略官/日本ユネスコ国内委員会副事務総長として、亀岡雄が着任しています。
次に、国際統括官補佐として、堀尾多香が着任しています。今日はオンラインで接続しております。
次に、国際統括官付ユネスコ第三係長として、岡本彩が着任しています。
最後に、昨年度より在籍しておりますが、今年度より、国際統括官補佐の私、植村正樹及び国際統括官付企画係長の原田真佑が、文化活動小委員会及びコミュニケーション小委員会の担当となっております。
また、本日は文化庁より、文化経済・国際課国際文化交流室長の鈴木律子、文化資源活用課文化遺産国際協力室長の石橋晶が出席しております。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。皆様方の御尊顔を拝せないのはちょっと残念なのですが、またの機会を待ちたいと思います。
それでは、大山国際統括官から一言、御挨拶を頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
【大山国際統括官】 小長谷委員長、ありがとうございます。
おはようございます。改めまして、国際統括官の大山でございます。本日の文化活動・コミュニケーションの合同小委員会の開催に際しまして、一言御挨拶を申し上げます。
本日は先生方、大変御多忙のところ、また、コロナの状況下での御参加、誠にありがとうございます。ユネスコの活動に関しまして、日頃より大変御協力を頂いておりますこと、心より感謝申し上げます。
さて、最近のユネスコ活動についてでございますが、追って本日の議事の中で、事務局からも詳細な御説明があると存じますが、ユネスコにおいては、様々な角度から新型コロナウイルスへの対応が取られているところでございます。教育、科学技術、文化の分野で、テレビ会議の形で大臣級のハイレベル会合が開催されるなど、コロナ禍において国際機関としてのリーダーシップを発揮して、こういった緊急事態において、人の心の中に平和のとりでを築くための取組が試みられ、また、進められているところでございます。
文化、コミュニケーションの分野におきましては、4月に文化大臣会合が実施されまして、日本からも、このテレビ会議に萩生田文科大臣が出席をして、我が国の文化芸術の灯を守り抜くという強い決意を表明いたしました。
また、「世界の記憶」事業に関連しては、コロナ禍において、記録物の保護・保全のためにステークホルダーが果たすべき役割を示した声明がユネスコから発表されております。
今後、コロナ禍、あるいはコロナ後の世界でのユネスコの役割、日本の役割、ユネスコ、そして日本がどのように貢献できるのかといったようなことをしっかり考えながら、国内外でのユネスコ活動の推進に取り組むとともに、我が国の取組を引き続き、国際的にもしっかり発信していければと考えております。
委員の先生方におかれましては、一層の御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げまして、御挨拶とさせていただきたいと存じます。
それでは、本日も御議論、どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。
本日の会議の配付資料について、まず、事務局より説明をお願いします。
【植村国際統括官補佐】 本日の資料は、電子媒体で昨日、お送りさせていただきましたが、議事次第に書かれてあります議題1から5に合わせて、それぞれ資料1から5という形で用意しております。また、関連資料として、附属資料1から10、それと参考1から7という形で用意させていただいております。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
<議題1 新型コロナウイルスの流行に係るユネスコの動きと、我が国の対応について>
【小長谷委員長】 それでは、今、御紹介いただきました点を踏まえて、議題1から進めたいと思います。
議題1は資料1ですね。まず、事務局から報告をお願いいたします。
【大杉国際戦略企画官】 本日、初めての専門小委がこういう形になりますので、不具合等ございますけれども、御容赦いただければと思います。よろしくお願いいたします。
資料1でございます。新型コロナウイルスの影響を踏まえたユネスコの動きということでございます。
各種会合、執行委員会が6月、7月に延期されたり、あるいは、地域戦略に関するレビュー会合が延期されたり、世界遺産委員会も延期というような流れになってございます。
そういった中でも、新型コロナウイルスといった影響への対応ということで、ユネスコでは様々な活動が行われておりまして、休校状況調査、あるいは、萩生田大臣、大山統括官も参加させていただきました教育ハイレベル会合、あるいは実務者級の会合、それから、国際教育連合ということで、民間のICT関係企業等も参加した教育支援のための組織、あるいは、「教育の未来」の中でも、コロナ危機への対応ということが議論されております。
日本からも、ユネスコ、教育という側面、それから、WHOの専門的な知見ともしっかり連携を図って、子供の安全と学習の双方を確保というようなメッセージを発しているところでございます。
また、科学も、オープンサイエンスの会合、あるいは、日本の信託基金において、アジア太平洋地域の科学に関する会合といったものが開催されております。
文化に関しましても、ハイレベル会合等、開かれておりますので、国内における対応と併せまして、文化庁のほうから御説明をお願いします。
【鈴木国際文化交流室長】 文化庁の鈴木でございます。
文化庁からは、ユネスコの提案により4月22日に開催されました、文化に係るハイレベル会合、第1回ユネスコ文化大臣会合について御説明をさせていただきます。
ユネスコの提案によって、コロナ感染症の環境下で文化をどのように促進、保護しているかというテーマで、テレビ会議が開催されました。130か国以上から大臣、副大臣が参加したことからも、非常に各国の関心が高かったことがうかがえます。各国の発言は3分以内ということで限定されていたのですけれども、それでも130か国が発言をしたということで、7時間半にわたってテレビ会議が行われました。
我が国からも萩生田大臣が出席をいたしまして、資料にも記載させていただいておりますけれども、我が国の芸術家や事業者に対するコロナ禍における支援、それから、コロナ禍においても、首里城を含め、ユネスコとともに世界遺産保全に取り組んでいくこと、また、来年に延期されましたけれども、オリンピック・パラリンピックは文化の祭典でもあるということで、これを安全で安心な大会とするため、開催国として責任を果たしていく旨を、大臣から表明をいただきました。
各国からも、様々なコロナ禍における支援の取組、また、コロナ禍における文化分野への影響、これらについて説明があったほか、多くの国から、コロナ禍、新しい状況においては、文化芸術のデジタルコンテンツ化を促進することが重要であるといったような主張が聞かれました。
本会議においては、具体的に文書が取りまとめられたり、共同声明が発出されたりということはなかったのですが、会議の概要はユネスコのホームページにも掲載されております。日本の発言についても言及していただいております。
また、ユネスコへの具体的な要望や、具体的な文化イベントの提案などが各国からありましたので、今後、こうした提案を基に、ユネスコのほうでさらに文化保護、文化セクター保護の取組が進められていくものと思います。我が国としても協力していきたいと考えております。
以上でございます。
【大杉国際戦略企画官】 資料5の文化庁の国内対応のほうも、もし何かコメントがございましたら、併せてお願いします。
【鈴木国際文化交流室長】 文化庁の国内対応ということでは、コロナの状況において、やはり文化セクターへのマイナスな影響が大きいということで、文化芸術面に特化した支援についても推進していこうということで、第2次補正予算案などで文化芸術、ライブ、エンタメ分野向けの支援策ということで、合計で1,500億円が組まれているほか、文化芸術活動への緊急総合支援パッケージ560億円などが計上されております。
文化庁といたしましても、これまでにも個別の相談窓口などを設けて、文化セクターの特殊性といいますか、フリーランスのアーティストなども含めてしっかりと支援が行き届くように、きめ細かい支援を心がけて取り組んできているところでございますが、今後、緊急事態宣言も解除されまして、文化芸術活動の今後、回復期に当たって、しっかりと文化セクターの皆さんを支援していけるように取り組んでいきたいと考えているところでございます。
【大杉国際戦略企画官】 ありがとうございます。
4ページのところで、文化関係、ユネスコの動きですけれども、博物館や美術館の閉館、経営状況の調査でありますとか、それから、記録物に関しまして、ユネスコの声明の発表ということなども行っております。附属資料5として、後ろのほうに声明本体を付けておりますので、適宜御参照いただければと思います。
それから、4ページの(4)その他の部分になりますけれども、国内委員会間の情報共有の実施ということで、オンライン会合を実施したり、それから、ユネスコの事務局長補による分野別の情報共有の場が設置されたり、あるいは、執行委員会も特別会合ということで、この週の月、火と、コロナ対応ということで開催されております。結果としては、コロナ対応まで議論が至らず、次回の執行委員会の開催形式の議論、オンラインでやるのか、手続をどうするのかという議論で終わってしまったようでありますけれども、執行委員会の特別会合も開催されております。
4ページの(4)の二つ目の丸につきましては、附属資料6と7を後ろに付けておりますので、適宜御参照いただければと思います。各文化セクター、それから、情報・コミュニケーションセクターにおいて、コロナ危機を踏まえたコミュニケーション、あるいはその影響評価でありますとか、関係者の支援ということ、あるいは様々な文化遺産の保護ということに取り組んでいる状況を、各事務局長補から代表部に向けても発信されたところでございますので、参考まで、後ろに資料を付けさせていただいております。
5ページに移らせていただきまして、先ほど文化庁さんから、国内の対応の御説明がございました。
その他科学分野、あるいは民間ユネスコ活動、ACCU、日本ユネスコ協会連盟等におきましても、これまでの活動の延長線上として、コロナ危機対応ということも考えながら、様々な御対応を頂いているところでございます。
ユネスコ、あるいは国内において、このようにコロナ危機を受けた様々な対応を行われておりますので、また、延期になった会合が順次始まってくると思いますけれども、引き続き情報提供をさせていただきたいと思います。
以上です。
【小長谷委員長】 御丁寧な御説明、ありがとうございました。
新型コロナウイルスと共に生きるという意味で、ポスト・コロナの時代において、文化やコミュニケーションの持っている意味というのは実は大きくて、ユネスコの役割というのは大きいなということを考えながら拝聴いたしました。
続きましては、議題2へ移ります。
【芳賀委員】 すみません、ここで質問があるのですが、よろしいですか。
【小長谷委員長】 まとめて聞こうと思っていましたけれども、では、どうぞお願いいたします。
【芳賀委員】 東北大学の芳賀です。
世界遺産センターが行っているソーシャルメディア・キャンペーンに、日本は参加しないのでしょうか。コロナ・ウィルスのために世界遺産のサイトは今、世界中の90%ほどが閉鎖してしまっており、そこでパリのユネスコ世界遺産センターが世界的なソーシャルメディア・キャンペーン、ハッシュタグShare Our Heritageというのをやっていますね。
そこには、ぱっと見たところ、韓国は早速入っていますし、スペイン、スウェーデン、フランス、ブラジル、タンザニア、ジャマイカ、ドイツとか、いろいろな国が入っていますが、日本からは一切、今のところ参加がないようですが、日本のプレゼンスを示すためにもこれは急いで参加すべきではないでしょうか。日本語で、日本の世界遺産サイトの現場の人に作ってもらって、ユネスコ国内委員会事務局で英語の字幕を付ければいいだけのようですが。
以上です。
【小長谷委員長】 お答えを頂けますでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 はい。こちらで。
【石橋文化遺産国際協力室長】 世界遺産を担当しております、石橋でございます。
今の御質問につきましては、実はユネスコからキャンペーンの連絡を頂いてすぐ、国内の各サイトに対しては、そういう取組が始まったので、ぜひ御参加いただけないかという呼びかけをさせて頂きました。しかし、その後なかなか進んでいないようなので、もう一度、どういう取組があるか、また、今何かお困りのことがあるかも確認しつつ、できるだけ多くの世界遺産の地元に参加いただけるようにしていきたいと思っております。
御指摘ありがとうございます。
【芳賀委員】 今の御報告も、基本的に国内の話だったので、世界に向けての発信にぜひ力を入れてください。それも早くに実現すべく、指導力を発揮してください。
【小長谷委員長】 芳賀先生、重要な御指摘、どうもありがとうございました。
<議題2 第209回ユネスコ執行委員会(文化・コミュニケーション分野)への対応について>
【小長谷委員長】 それでは、ほかにも御質問があるかもしれませんが、報告3件を全部まとめてお聞きするところを設けておりますので、先に2件目に参ります。
資料2の説明を、事務局からお願いいたします。
【大杉国際戦略企画官】 資料2-1、ページ数で7ページになりますけれども、ユネスコ執行委員会への対応についてということでございます。
延期後の日程が、6月29日から7月10日となってございますけれども、これも今、パリで様々議論があるところでございまして、現地代表部で対応するのか、あるいはオンライン開催が可能なのか、オンライン開催の場合、いろいろ手続も整えていく必要があるということで、議論が行われている最中でございます。
そういった意味では、開催についてはまだ不確定要素もございますけれども、議題につきましては、8ページ、9ページ目の横表にございますような議題が取り上げられる予定であるところでございます。
一番大きな議題といたしましては、10ページ目、事前に委員の先生方に、少しコメントも賜りましたけれども、ユネスコの中期戦略案、予算案に関する議論というものがメイントピックになってこようかと思います。
委員の先生方の御意見を踏まえて、総論につきまして、例えば、コロナ危機への対応を含む新しい課題に、しっかりと時宜に応じて対応できるよう、リソースの組替えの機動性というようなこと、あるいは、ユネスコのミッションということを踏まえて、政治性を排除し、専門家の知見を結集するというようなことを総論として、日本としても回答させていただいております。
また、各論につきましても、それぞれ文化、コミュニケーション・情報、少し特徴的なもののみ取り上げておりますけれども、先生方の御意見を踏まえて回答をさせていただいたところでございます。
中期戦略の概要につきましては、後ろの方の参考資料7にお付けしているところでございますので、こちらも適宜、御覧いただければと思います。後ろの150ページで、一番最後の方になりますけれども、中期戦略の概要につきましてはこちらに付けさせていただいているところです。
御報告は以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。
<議題3 建議のフォローアップと今後の取組の在り方について>
【小長谷委員長】 続きまして、議題3、建議のフォローアップと今後の取組の在り方についてに移ります。
資料3につきまして、事務局から、大杉企画官に御報告いただきます。それから、三つの議題に、合わせて全部、御意見がございましたらお聞きしたいと思います。
【大杉国際戦略企画官】 資料3、11ページになりますけれども、前回総会でも途中経過を御報告させていただきましたが、総会でおまとめいただいた建議の五つの提言に沿ったフォローアップ状況ということでございます。
1番目、SDGs達成に向けたESDの推進という観点、それから、13ページになりますけれども、海洋科学の10年に向けた活動状況、3番目が、加盟国間の友好、相互理解の促進のためのユネスコ改革ということで、ハイレベルリフレクショングループの状況、あるいは、「教育の未来」の状況、そして、「AIの倫理」、こちらの方には東京大学の須藤教授に御参加いただいておりますけれども、4月に第1回専門家会合が開催されておりまして、次回は恐らく8月に第2回ということになろうかと思います。現在、ワーキングを三つに分けて、勧告に向けた草案の議論をしているという状況でございます。
それから、「世界の記憶」ということでございますけれども、包括的見直し、6月までにということでございましたけれども、これもコロナの影響で、恐らく延期が予想されるところでございまして、次回の執行委員会において何らかの議論がされるのではないかということで、注目しております。
また、日本の信託基金により開催を予定しておりましたグローバル・ポリシー・フォーラムでございますけれども、こちらも当初、この春にもということでございましたが、10月に延期ということになっております。
14ページ目でございますけれども、ユネスコの登録等を地域活性化等に生かしていくという観点で、こちらも、この状況でいろいろな開催が難しくなっているところでございますけれども、今後の再開に向けて、着実にそれぞれ準備を進めているところでございます。
15ページ目の多様なステークホルダーの連携ということで、戦略的プラットフォームの構築に向けてということで、ユネスコ未来共創プラットフォームの設置ということを御提言いただいております。こちらは年度末から年度明けにかけて入札の手続を進めまして、SDGsプラットフォームという一般社団法人に、プラットフォーム事業をお願いするということになっております。こちらは既存のユネスコ活動を行うところとの連携も深めながら、また、国内委員の先生方ともぜひ意見交換などもさせていただきながら、多様な参加者ということを、裾野を広げていきたいと考えているところでございます。
また、国内委員会が審査に関わっている各種コンテスト等も、この状況が落ち着きましたら順次開催されていくと思いますので、こちらの方にも適切に対応していきたいと考えてございます。
この議題につきましては以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。
これで報告3件が続きましたけれども、全体に対しまして御意見、御質問等ございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
【大杉国際戦略企画官】 今、細谷委員、挙手いただいております。
【小長谷委員長】 どうぞお願いします。
【細谷委員】 私から、非常に総論的なことを申し上げたいと思うのですが、今このタイミングでよかったでしょうか。
【小長谷委員長】 はい、構いません。
【細谷委員】 それぞれ御報告ありがとうございました。私は、ちょっと大風呂敷なことを申し上げるように感じられるかと思いますけれども、この機会に申し上げたいのは、ユネスコは、御承知のとおり非常に分野が多岐にわたっており、「各論」の多い国際機関です。その中で、今はコロナの危機を迎えて、ユネスコは国際機関としての新しい形をどう見いだしていくべきかという「総論」を議論すべき時だと思います。この意見は、総会の方でも申し上げたいと思いますが、この小委員会は非常に関係があります。
オンライン会議を今続々と開かれていることは、コロナへの当面の対応として当然のことだと思います。より根本的に、コロナ後の世界を見据えて、ユネスコという国際機関は、これを機会に自らの役割をどう考え直していくか。執行委員会である程度の議論は始まっているようですけれども、中期計画をこれから策定するところでもありますから、こういった大きな議論が一番大事だと思います。
ユネスコの所掌事務の範囲はユネスコ憲章で定められています。国際機関としてのユネスコが比較優位を持っている機能は、もともと知識ベースで規範づくりなどを行ってきたところにあります。しかしその具体的内容は七十何年かの間に何度か変わってきています。ユネスコ憲章は時代の変化に応じて読み直されてきています。今、国連全体と、ユネスコにとっても一番大きい道標はSDGsです。SDGsも、世界がコロナの危機を乗り越えていく中で、国連全体で、またユネスコでもレビューすることになると思います。
ユネスコはここ10年間大きな危機にさらされてきて、国際機関として後退しています。その中で、ユネスコにとって新しい、ちょっと大げさかもしれないですけれども、起死回生の機会をどう生み出していくべきか、そういう大局的な議論を今じっくりやるべき時だと思います。これは外交の観点も大いに入ってきます。ですから、外務省とも御相談いただく必要があると思います。そもそも今、国際関係が非常に大きく揺れ動いている中で、ユネスコという国際機関はどういう役割を果たし得るのかという視点です。
その中でこの小委員会は、私が大事だと思いますのは、各論も多いですけれども、文化は、国連システムの中でユネスコだけが専権的に担当してきている分野です。それから、コミュニケーションは御承知のとおりユネスコ発足当初には所掌されていなかった分野です。憲章をその後読み直して、新たな「C」として加えた分野です。
ですから、そういった大きな総論的議論はこの小委員会が軸になってやっていただくのが良いのではないかと思います。
【小長谷委員長】 御提案ありがとうございました。ちょうど次の議題に直結するお話だったと思います。
今、御発言いただきました内容は受け止めて、次へ発展させていくとして、それ以外に御質問等ございましたら、お願いいたします。御意見でも構いません。
<議題4 ユネスコ加盟70周年を契機とした今後のユネスコ活動の充実について>
【小長谷委員長】 それでは、議題4に移りまして、資料を説明いただいてから、先ほどの細谷委員の御意見も加えて、また議論を進めていきたいと思います。
では、資料の説明からお願いします。
【大杉国際戦略企画官】 来年、ユネスコ加盟、日本は70周年という節目になりますけれども、9月の総会、あるいは、恐らく2月頃、再度開かれる総会におきまして、まさに今、置かれた状況を踏まえて、ユネスコ活動はどうあるべきかというようなメッセージ性のある御議論をぜひ賜れればと考えております。
また併せて、それほど大きなイベントということにはならないかもしれませんけれども、何かしら、周年をきっかけにユネスコ活動が活性化するような取組というものも、限られた予算の範囲内でありますけれども、例えばユネスコスクール全国大会を活用したり、様々な機会を周年として活用するようなことも考えていきたいと思っているところです。
そういった観点から、幅広な御意見を頂ければというのがこの議題の趣旨でございますけれども、事前に委員の先生方から、周年行事は過去にどんなことをやっているのかという資料をぜひ用意しておいてほしいということで、資料4、16ページを用意させていただきました。
過去には、ユネスコ加盟50周年という、大きな節目でございましたので、皇太子、妃両殿下をお招きして、ユネスコ加盟50周年記念式典なども実施させていただいております。その際には、記念切手の発行とか、当時の松浦事務局長によるシンポジウムとか、各地域の周年行事というようなものも、50周年ということでございましたので盛大に行われたという状況でございます。
一方、60周年でございますけれども、17ページということで、日本ユネスコ協会連盟を中心に基調講演などをお願いしたという経緯がございます。
今回、70周年でございますので、次、50周年並みに盛大にやるのは100周年あたりかなと思いますけれども、ただ、10年ごとの70周年という節目ですので、ぜひこの機会に、昨年、建議で御提案いただいたような内容を、さらに加速化させるような契機とするために、いろいろな角度から、ぜひ御意見を賜れればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
【小長谷委員長】 説明ありがとうございます。つまり大体、今、説明していただいたのはイベント系のお話なので、節目に考えるべきことというのは、イベントを実施していくこともさることながら、根本的に存在意義を考え直すというのが必要だというのが、先ほどの御提案だったと思います。
こういうことにつきまして、つまり、何か会議体をつくって考えていくということ自体は、事務局としてはどうなのでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 まさに各小委員会と総会が、そういった御議論をいただく場だと思いますので、ぜひこの場、あるいは9月の総会を活用して、そういった意義、価値というようなことも含めて、御意見を頂ければと思います。
【小長谷委員長】 分かりました。
ほかに、御意見等ございますでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 蓮生委員、挙手いただいております。
【蓮生委員】 まさに細谷先生が御指摘くださいましたように、何十周年という契機を活用して、ユネスコの存在意義を幅広く考えるということが大変重要だと思います。その意味で、今まで行ってこられたような周年事業というものはイベント中心で、どちらかと申し上げますと、大規模な会議や祝典の開催をするというアプローチが主だったように思えます。そのような従来の考え方から脱して、むしろ若い方を巻き込んだ、オンラインでのバーチャルコミュニティーの形成のようなことも含めて、議論を活性化させることができないか。方向性として、今まで議論に参加することができなかった若い方にも気軽に、かつ恒常的に議論に参加していただけるような機会を創設していくようなことも、一つの選択肢としてあるのではないかと思います。
一つの見本として、例えば国連システムでは、国連本体に関しましては『国連フォーラム』という、若い方を中心として国連職員等も参加している大規模なバーチャルなコミュニティーがございます。こちらのコミュニティーでは、国連の在り方とはどうなのかということも含めて、様々な議論がオンライン上で恒常的に行われております。参加者には学生の方も多く、若い方たちにとって非常に魅力のあるオンラインコミュニティーを形成しているようです。
そういった事例を参考にして、ユネスコの周年事業を祝典中心というアプローチから脱却して、コロナ危機を一つのきっかけとして、オンラインでのコミュニティー形成の取り組みや、若い層への積極的な働きかけをする一つの機会にしていくことができればと考えておりますが、皆さま、いかがでしょうか。
【小長谷委員長】 すばらしいですね。ユネスコ・オンラインフォーラムの御提案でしたけれども、事務局のほうはどうですか。
【大杉国際戦略企画官】 ぜひ、ユネスコ未来共創プラットフォーム事業などとも連携しながら、そういった方向性を考えてみたいと思います。ありがとうございます。
平野委員、御挙手いただいております。
【平野委員】 今のお二方の方向感、問題提起に全面的に賛成いたします。その上で、今の局面の認識の仕方について、一言コメントを申し上げたいと思います。
今日発売の7月号『文藝春秋』に、ポスト・コロナの世界を占うということで、いろいろな識者の方が寄稿されています。その中で、ビル・ゲイツが面白いことを言っていまして、これからの数年間は、1945年からの数年間にかなり似たようなことが起こるのではないかと。つまり、戦後の焼け野原からどう世界が立ち上がるかというぐらいのインパクトのある事象がコロナであるという認識です。
したがって、これはどうなるか分かりませんけれども、多分、相当非連続的な変化がここで起こる、断層が起こるということだと思います。したがって、そういう認識をユネスコとして持たなければ、外から見ていると、えらい能天気な組織だなと見られるリスクがむしろあると思います。
そういう意味では、70周年を契機に、ポスト・コロナにおけるユネスコの在り方ということにフォーカスした、いろいろな活動を始められるというのは当然、意味のあることだと思います。先ほどの国連のフォーラムと同じようなフォーラムをつくるというのも、若者を巻き込んだ、一つのアイデアだと思いますし、その関連で私、ちょっと思いますのは、ESDということで、今のユネスコは教育にも相当力を入れているわけですよね。ところが、これを日本が引っ張っていくとすると、日本のコロナ時代における教育の在り方というのは、どう見ても、世界的に物凄く遅れているのではないかと。オンライン教育一つを取っても、全然なっていないわけですよね。
したがって、足元で、リード・バイ・イグザンプルじゃないですけれども、しっかりした対応をしていないと、世界に対して発信力がないというか、説得力がないのではないかと思います。したがって、まずグローバルにいくということも大事だけれども、足元ですね。教育なら、ポスト・コロナの日本の教育はどうあるべきかということについて、少し大きな問題意識で、これは我々の小委員会の範疇を超えるかもしれませんけれども、少なくともそこをしっかり立てなければ、世界に向けて発信していく力が出てこないと思いますので、どういうふうに対応されるか分かりませんけれども、一つの問題提起として、意見させていただきました。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。日本が事例を持ってリードすることはできないのであれば、例えば世界のリーディングの事例のレファレンスを提供するというようなことでも、世界に貢献することはできるので、今の御発言にありました、状況というのをよく自己認識して、活動に生かしていくといいかなと思いました。
【平野委員】 同じことなのですが、今のお話の関連で、要するに一言で言うと、自分ができていないことを世界に対して発信することが可能かということです、ここでも私の問題意識は。そこはしっかり問題提起をしていくべきだと、どういう場でそれができるかはよく分かりませんけれども、そういう趣旨でございます。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。
【大杉国際戦略企画官】 髙橋委員、それから、山口委員、御挙手いただいております。髙橋委員からお願いします。
【髙橋委員】 髙橋です。
初めての参加なので、少し的外れかもしれませんが、企業経営という観点から見ても、新型コロナにどう対応するかというのは今、大きな問題になっている中で、SDGsという関係の中でも、今後、社会との関わりを民間企業としてどう考えていくかということが、これまでどちらかというと、SDGsとかESDの対応が形式的な企業も多かったと思いますが、新型コロナのプロセスの中で、そういうことの重要性を今まさに認識をし始めているところだと思います。
そういった中で、特に社会との関わりを、民間企業も含めてどうしていくかということを考えると、社会が健全な発展を持続することが、企業経営にとっても大事だということからすると、ユネスコの活動についても、これまで民間企業サイドの参画は随分あったかと思うのですが、今、いろいろな委員の方がおっしゃった、新型コロナとユネスコの活動、まさに今、議論すべき重要なテーマだと思うんですけれども、その中に何らかの形で、共創プラットフォームはありますし、民間の企業の意見ないし背中を押すような工夫もするといいのではないかと思いました。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。心強いお言葉と受け止めました。
【大杉国際戦略企画官】 山口委員、お願いします。
【山口委員】 コミュニケーション小委員会の山口しのぶです。よろしくお願いいたします。
先ほどの御意見にあった記念式典も含めて、ユースにフォーカスを当てるということは、コミュニケーションの分野から見ても賛成です。昨年11月参加した第40回ユネスコ総会では、プレナリーセッションでユースに焦点を当てる取り組みが印象的でした。
セッションの計画・実施から司会まで、全て若者のグループがイニチィアチブをとっており、すばらしい取組でした。一方で、やはり欧米のユースが中心となっており、アジアからの発信というのがなかなかなされていなかったというのが記憶にあります。
今回、70周年を記念して、ユネスコスクールも含めた小、中、高、大学まで含めた若い世代が、自分たちがコロナ感染症拡大の中での経験を含め、教育だけではなく、次の議題にもある、教育、文化、コミュニケーション、科学、IT分野をこれからどのように融合的に扱っていくのかということを情報発信する良い機会であると思います。若い世代が情報交換し、どのようなイノベーティブな取組が学校レベルでなされているのかというのを、日本から発信していくというのは大変効果的ではないかなと思います。
ありがとうございます。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
ほかに御意見ございますでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 細谷委員、芳賀委員、西藤委員という順番で、細谷委員からお願いします。
【細谷委員】 再度の発言ですみません。今までの御意見も伺って、二つ具体的に思ったところを述べさせていただきます。
平野委員がビル・ゲイツの発言を引用されて、今は終戦直後の数年間に匹敵する時代になるとおっしゃいました。そのとおりだと思います。1945年からの数年は、戦後の多角的平和体制をはじめとして国際秩序を完全に創り直した時でした。国連事務局長はコロナウィルスの感染拡大を第二次世界大戦以来最大の危機だと言っていますし、これは世界秩序を創り直す契機になると思います。
その観点からは一つ、既にアズレ事務局長が推進されていることで、この小委員会に関係する、AIに関わる新しい規範作りがあります。これがポスト・コロナではさらに飛躍的に重要になると思います。AIだけでなくて、IOTも現実化しつつありますし、SDGsの期限である2030年までには移動通信システムも6Gが定着するのではないかと思われます。
メディアが大きく変化する時代には、メディアは単なるツールとして見たら間違います。そのために社会の在り方が根本的に変わるということが、こういう大きな変化の時代には必要な視点だと思います。そこでのユネスコの役割は何かというと、情報通信セクターにはかなりのエクスパティーズがありますし、本当のテクニカルなエクスパティーズはITUが持っていますが、ユネスコはITUと連携しています。ユネスコは、そこに新しい規範作りの視点から、政策的な視点から取り組むという役割でリードを取れるのではないかと思います。
もう一つは、日本が何でリードできるか。今回のコロナからの教訓として、日本が実は世界を一番リードできる面があるのかなと思いますのは、ユヴァル・ノア・ハラリが言っていることです。各国がコロナにどう取り組んだか、その検証は今後されていくのでしょうけれども、強制力を持って取り組んだ国の文化と、日本のように、法的拘束力は持たせないけれども、国民の自主的な規律で感染者を少数に抑え込んだ、そのような文化との間の選択が問われると言っています。
日本は後者で成功した国として、まだ評価は分かりませんけれども、ユネスコ的にも恐らくその方向で、これは社会科学セクターも関係してくると思われますが、何かリードを取れるのではないかと考えます。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
【大杉国際戦略企画官】 芳賀委員、お願いします。
【芳賀委員】 芳賀です。
コロナ後の世界について日本から問うということでしたら、考古学として非常に大雑把な大風呂敷で言うと、農業文明について問うとか、都市文明について問うということでいいかと思います。
人類史の99%を占める、狩猟・漁労に主に依拠する生活をやめて、ついこの間、農業を始めて、定住共同生活で家畜からインフルエンザなどが人間間に感染した。それから、シュメールで都市文明を始めて、あのときからです、「三密」というのは。ですから、本来はコロナ対策は農業と都市文明をやめればいいのですが、我々の世界の半分以上は都市に住んでいるから、現実的にはもちろん無理で、ではどうしたらいいか。
だから、1945年以降というのも大きいですけれども、本来は、農業以降とシュメール以降ぐらいの大きなテーマを、日本で出してもいいかもしれません。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
【大杉国際戦略企画官】 西藤委員、お願いします。
【西藤委員】 西藤です。
まず、ユネスコに対してというわけじゃなくて、日本の中でのユネスコ教育を少し改善しないといけないのではないか。というのは、SDGsとESD、二つあって、教育のほうでESDが非常に強く叫ばれていて、我々は、私も芳賀先生と同じく考古学なのですが、今、世界遺産を含めて、文化財活動で使うときにはいつもSDGsです。ESDとSDGsに対して、どのような形で我々が説明していけるのかというのがなかなか分からないところがあって、教育の人たちは当然、ESDをよく御存じなのですが、我々がESDを使うときに、どのようにしていいのか分からない。
だから、総会のときも古賀副会長が、整理が必要じゃないかとおっしゃっていたと思うのですが、ESDを日本語に変えるとか、様々な分野のやり方があろうかと思いますが、SDGsとESDをいかにしてうまく合体し、我々が説明できるというふうになる方がいいのではないかと。そこら辺を合理的に整理していただければ、70年を迎えるに当たって、していただければ有り難いなと思います。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。今までのところ大きな見取図を持つこと、足元の実践をまず改革していくこと、いろいろな立場の方の競争的というか、協業するプラットフォームでやっていくということ、などの御意見を賜りました。
ほぼほぼ出たということでよろしいでしょうか。まだ発言いただいていない何人かの先生方、もしありましたら、挙手ボタンを押してください。
【大杉国際戦略企画官】 小林委員。
【小林委員】 小林です。
今までいろいろな御意見を伺っていて、皆さんの意見に賛成なのですけれども、これまでのユネスコの会議などにも出させていただいてきましたが、今日は、文化に関して、いろいろな御報告があって、久しぶりに「文化」が日の目を浴びたような印象を持ちました。というのは、これまでいつも伺っていて、全てが事業単位で動いていて、それぞれの個別の事業自体の報告が中心で、皆さんすごく一生懸命やってくださっていて、いろいろな成果が出ているということが分かります。
ただ、それは何のためにやっているのかという部分の共有感というのがあまりないような感じを実は持っていました。つまり、例えば世界遺産でもそうですし、それぞれの世界遺産を大事にしていく、保護していくということは、もちろんその地域が豊かになっていくとか、観光産業に資するとか、そういうことに今の時代だと結び付いていって、大事だと思うのですが、だけど、本来やるべきことは、やっぱり文化を見直して、お互いに知り合って、理解し合って、寛容性を育んでいくみたいな、これも大変大風呂敷な話になって申し訳ないのですが、そういう大きな目標のために行っていることだと思います。
つまり、個別の様々な独自の文化を見つけて、大事にして、競争をするのではなくて、それを使って何をするかという目標を、もう少し共有あるいは見直すことができないかなという感じがしています。
というのは、今、社会の分断みたいなことがいろいろなところで、いろいろな角度で起きているわけです。そういうときこそ、私たち、やはり寛容性が大事なのではないかなと改めて思い、そのときに一番有効なのは、文化を理解し合うということのような気がするのです。
したがって、それを確かめ合うようなことが、70周年で行えるといいのではないか。そのやり方は、皆さんがいろいろと御発言されている中に組み込んでいけば、できるのではないかという気がいたしました。
以上です。
【小長谷委員長】 コロナによって改めて気づかされていること、本当に新しいショックについて、ネガティブだけではなく、ポジティブなレガシーとして、改革に使えるといいなと本当に思います。ありがとうございます。
ほかにありますでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 芳賀委員、御挙手いただいておりますけれども、その前に、もしよろしければ、皆さん一言ずついかがでしょうか。
例えば、会場にいらっしゃる井上委員。
【井上委員】 初めまして、東京国立博物館の井上でございます。この会議に初めて参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
私、皆さんの意見を聞いていて思うことは、まさに最初に細谷先生がおっしゃってくださいました、ユネスコの在り方、存在意義そのものをしっかりと見詰めるべきではないだろうか、という点です。これには本当に大賛成でございまして、こういうときだからこそ、ユネスコの担うミッションというものをしっかりと維持すること、これは事務局も提案してくださっておりますけれども、それをしっかりと推し進めること、これが非常に重要だろうと思います。私も芳賀先生、西藤先生と同じで、考古学が専門なのですが、私が博物館にいることもあり、いま、文化・芸術というものが、我々が生きていく上で非常に重要なものなんだということを、来館者から強く感じるものがございます。
これを我々として、どのようにもっと広く一般の人たちに伝えていくべきなのか、これは世界の人々にも共通する課題だろうと思います。こういうことにもしっかりと取り組む必要があるのではないかなと思っております。
以上でございます。
【小長谷委員長】 事務局の方、回していただけますか、まだ御発言いただいていない方々に。
【大杉国際戦略企画官】 かしこまりました。今、御発言いただいていないのは、秋永委員、相賀委員、肥塚委員、佐野委員、それから、羽田委員長という形になりますけれども、どなたか、いかがでしょうか。
【相賀委員】 皆さんのお話、本当にそうだなと思って聞いていたのですけれども、既に、諸外国の学生とのいろいろなディベートとかやられているような事例が、私ちょっと不勉強ですけれども、あるならば、それをもうちょっと、例えばユネスコから与えた課題というか、テーマでやって、まさにテレワークというか、ネットワークの中でやるということはどうなのでしょうか。
質問になりますが、既にやられているものがあるのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 国内におきましても、様々ユースのイベント、あるいはユネスコ本部、ニューヨークの様々な国連の会議のサイドイベントとして、高校生、大学生、あるいは若手の社会人を集めて、いろいろなイベントが開催されております。
ただ、様々課題がございます。国内のものが国内だけに閉じていたり、海外のところの参加者がそもそも少なかったり、いろいろな課題がございますので、そこをしっかりつないでいきつつ、御指摘のようなテーマ、それもこの時宜に合ったものを、例えば日本のユネスコに出している信託基金を通じて支援をするとか、そういったこともしっかりつないでいくという、様々課題があるかなと思っております。
【相賀委員】 ありがとうございます。結構です。
【大杉国際戦略企画官】 ありがとうございます。
それでは、肥塚委員、いかがでしょうか。
【肥塚委員】 肥塚でございます。
皆様のいろいろな御意見をお伺いして、70周年に向けて、つまり次世代とどのように、ユネスコの考え方に賛同し、協力していただき、かつ活動につなげていくかということを考えたときに、さっき国連の一例におっしゃっていた、若い方にも参画いただくいろいろな方法を、オンラインですとかネットということで、具体例を出されていましたけれども、私も非常にそれには賛成ですし、また、次世代ということと同時に、民間に対して、ユネスコが今、どのような活動をしているか、どのような意義、存在があるかということを、もう少し世の中に知らしめるというのでしょうか。
今、ネットですとかいろいろな部分で、発信機能を持っておりますので、おやりになっていることも十分分かっているのですが、もうちょっと親しまれるような形で情報発信をすることも同時に考えて、ユネスコに興味を持っていただく、そういった活動も片や必要かなと感じました。
以上でございます。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
【大杉国際戦略企画官】 続きまして、佐野委員、いかがでしょうか。
【佐野委員】 私も、ユネスコの60周年とか70周年に向けての大きな見直しをするというのは賛成であります。
そして、若い世代を取り込んでいくというのも非常に大事なことかと思うのですが、若い世代が、コロナの危機的な状況で、文化とか芸術というものは、どちらかというと後回しにされてしまうんじゃないかという危機感をすごく感じていますし、世の中的にも、文化とか芸術というものは、まず、やはり生きていくという、経済活動とかそういうものが優先されて、文化とか芸術の活動に対する興味が薄れてしまうんじゃないかというのを、大丈夫かなと思っております。
そこら辺を、関心を引き止めるというのはなんなんですけれども、アフター・コロナ、直後の活動というのも非常に重要じゃないかと思うので、そこら辺も考えていく必要があのではないかと思いました。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。 羽田委員長、どうですか。
【羽田委員長】羽田です。皆様方の御意見、基本的に全く賛成です。私が言いたいと思っていたことを最初に細谷先生がおっしゃいました。その方向はとてもよいと思います。
70年前、第二次世界大戦が終わったときに、ユネスコが創られました。ユネスコだけではなく様々な国際機関、今話題になっているWHOもそうです、が、第二次世界大戦が終わった後に創設され今日まで続いてきました。現在がこれまで続いてきた国際秩序の再構成というか、再創成という時期にあるのなら、従来からの国際機関の見直しを考えねばならないでしょう。そういう意味で、これはユネスコだけの問題ではないだろうと思います。
当然、ユネスコ内部の改革は必要でしょうし、世界全体の秩序が変わってくる中で国同士や国と国際機関との関係の在り方自体が変わっていくのだろうと思います。その点では、ほかの国際機関との連携や意見交換もとても重要になるのではないでしょうか。
もう1点、国によって、得意分野と不得意な分野がありますが、日本の場合は、恐らく得意分野は、こういうことをやりましょうと言われそれをやることが決まったら、それを上手にこなすことです。ところが、「こういうこと」を最初に提案することはあまり得意ではない。「こういうこと」を国際的に発信して、その計画をリードしていくことがそれほど得意ではないと私は思います。
しかし、もはやそれでは駄目です。今日の委員会もそうですが、国内で様々なよい意見が出るのですから、それらをまとめてしかるべき相手にしっかりと伝えることがとても大事です。
その点で、国内での議論と、ユネスコでの意見交換をもっと連携させる必要があります。中で話していることを外にいかに効果的に伝えるか、それから、ユネスコで議論されていることをどのように国内の議論に組み込んでゆくかをよく考えねばなりません。後者は比較的よくできていると思います。国内のすぐれた提案をユネスコだけではなく国際社会全体にどのように伝え、その実現に向けての流れをつくっていくのかということに、不得意であっても、これから取り組んでゆかねばならないのだろうと思います。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。議論の仕方に関する御提案でございました。
それでは、最後になりましたが、秋永委員、よろしいでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 その後、芳賀委員、蓮生委員も挙手いただいておりますので、まず、秋永委員、お願いします。
【秋永委員】 リバネスの秋永と申します。
70周年に向けて、ユネスコの在り方を再定義というところなのですが、大きく二つありまして、1点目は、ユースの在り方や、もしくは教育の在り方について、これまでも御意見があったと思うのですけれども、やはりコロナを言い訳にしないというのを前提に、進めていくのが大事かと考えております。
様々な世界会議やイベントも、縮小や延期というのが当たり前になってきていると思いますが、例えば甲子園であるとか、スポーツの分野においても、大会を目指して、3年間という短い学生生活の中で、学業とスポーツや教養の活動を進めてきている。多分、大人に比べて子供たちの方が、2年、3年という学校生活、非常に短くて凝縮したものだと思います。
ですので、周年イベントもそうなのですけれども、全国的にそういった学校の学びの場とか活動の場を止めないということを、委員である我々、皆様が、産業界、教育界、各界で心がけていく、促していくことができればいいのかなと。そうすると周年イベントのほうも、盛り上がった企画ができるのではないかと考えております。
もう1点は、文化というところで、私はこれまでコミュニケーション小委員会、教育小委員会の方に参加させていただきましたが、文化というものを考えてみたときに、これまで、いわゆる歴史的資産について議論されることが多かったと思うのですが、もう少し広義に文化という言葉を捉えると、やはり我々、もしくは日本人としての考え方であるとか生き方といったものも、無形資産のものも入ってくるのかなと思うところです。
そういった意味では、例えば東日本大震災の後の国の発展の在り方であるとか、諸外国に比べて、例えばロックダウンのような強制的な制限をかけなくとも、自主自律で行動できる国民性であるとか、そういったことは積極的に日本として発信できるものなのかなと思います。
また、もう一つ、文化という意味では、日本の歴史や文化を考えることは多いと思うのですけれども、これから東南アジア、隣国と一体となって発展していく考え方も大事かと思っておりまして、日本だけを見ると、人口も減少傾向にあったり、少子高齢化が進んでいくところなのですが、東南アジア、今はコロナで行き来が制限されておりますが、これから大きくなっていく、発展していく、そして、平均年齢も20歳代といった諸国と、一大国として捉えれば、規模の大きな国として捉えることができます。これから盛り上がっていくというのもありますので、例えばこれを日本国の新たな発展の形「マチュアグロース」という考え方で捉えていくと、また一つ、日本の文化の考え方が新しく定義できるのではないかなと思っております。
以上です。ありがとうございます。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
【大杉国際戦略企画官】 では、芳賀委員、その後、蓮生委員、お願いします。
【芳賀委員】 芳賀です。度々申し訳ありません。ユネスコ加盟70周年について、急いで2つ。
一つは、今までの50周年、60周年を見ていますと、全て関連行事は国内で行われているけれども、もっと、せっかく日本は長年多大な拠出金を出しているわけですから、世界にプレゼンスを示していただきたい。誕生日パーティーを家の中だけでやっているのでは、少しもったいないなと思います。
具体的には、例えばパリのユネスコ本部の日本庭園の手入れをするとか、あそこでもちろんパーティーをやるとか。以前一度、日本庭園の修景は検討されていたような気もします。もちろんパーティーをやるのなら、この間、山田大使がやっていらっしゃいましたけど、裏千家などによる献茶式も良い。ユネスコ本部の安藤忠雄の建物を使うとか、あるいは原爆の話ですけど、長崎の浦上天主堂の天使像、ああいうものを使うとかが良い。要するに世界での日本のプレゼンスを、せっかくの70周年ですから、示していただきたいと思います。家の中の誕生日パーティだけではなくて。
二つ目、少し機微に触れますが、常に我々が念頭に置いておかなければいけないと思うのは、日本がユネスコに加盟したのは1951年7月ですね。それはもちろんサンフランシスコの講和条約により主権を回復する以前の話ですし、国連加盟以前の話です。つまりここには多分、いい意味での政治的な働きがあったわけです。一方で我々今、政治化を問題にしていますから、これは常に考えておくべきかと思います。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。
【大杉国際戦略企画官】 蓮生委員、お願いします。
【蓮生委員】 度々の発言、お許しください。
今、羽田先生及び芳賀先生がおっしゃってくださったことに付け加えてのコメントになりますが、日本がユネスコに対してどのように発信していくのかという、少し大局的な観点から申し上げさせていただきたいと思います。
私はユネスコで国際公務員として10年余り勤務させていただきましたが、その間感じたことは、ユネスコはいかんせんトップダウンの組織であるということでした。事務局長を中心とした、日本型経営とはちょっと違う、直接選挙で選ばれたリーダーに非常に大きな権限、裁量権が与えられたトップダウンの組織です。そのようなユネスコという組織に対して、日本が効果的に発信していくにはどうしたらいいかということは、今後とも引き続きじっくり考えていく必要があります。一つの例としては、現在、ユネスコの戦略的改革ということで、ハイレベルリフレクショングループというものが設置されておりますが、そちらに現在、委員として日本人の方も入っていらっしゃいます。そういったチャンネルも活用して、ユネスコがコロナ後の世界でどのような役割を果たしていって欲しいと私達が考えているかということをうまく伝えていくという努力も大切だと思います。
コロナを契機として分断化が加速化する世界の中で、日本がマルチラテラリズムというものの存続のために、どのような役割を果たしていきたいのか、少し抽象的なメッセージも含めて、事務局長に伝えていくことができればということを希望しております。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。
いろいろな御意見を賜りました。具体的なものから大きな理念のところまでも本当に様々な御意見を頂いて、よかったなと思います。コロナのおかげで議論できたような感じもいたします。
さて、それでは次の議題に進ませていただいてもいいでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 お願いいたします。
【小長谷委員長】 続きましては、議題5、日本ユネスコ国内委員会の機動的・効果的な運営についてに移ります。
本議題は非公開議事となります。総会に報告する際には公開とさせていただきますので、取材の方だけ御退席をお願いいたします。
(傍聴者等退席)
<議題5 日本ユネスコ国内委員会の機動的・効果的な運営について>
今後の日本ユネスコ国内委員会の機動的・効果的な運営について、委員からの御意見をいただいた。(本件については9月に開催される総会において審議予定)。
<議題6 その他>
【小長谷委員長】 それでは、最後に議題6、その他として、事務局から何かございますでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 こちらからは大丈夫です。
【小長谷委員長】 それでは、いろいろと聞き取りにくい中、あるいは接続しにくいところを超えて、何とか会議をすることができまして、本当にありがとうございました。
【大杉国際戦略企画官】 芳賀先生が御挙手いただいております。申し訳ございません。
【芳賀委員】 東北大学の芳賀です。度々すみません。最後です。
さっきから世界に出ていってほしいなんていうことを言っておきながら、今から言うことは地元への利益誘導みたいですけど、ユネスコ加盟の70周年の最初は、仙台と東北大の人々が、1947年に「人々の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とのユネスコ憲章に感動して、ユネスコの事務局長に手紙を出したところから始まったので、仙台でも何か関連行事をやってほしいなと思います。
すみません、話が一気に小さくなりました。
【小長谷委員長】 いえいえ、それは大事です。足元での活力があってこそ世界に発信できますので、それは決して矛盾しているお話ではないと思います。
【大杉国際戦略企画官】 ありがとうございます。山口委員も御挙手いただいております。
【山口委員】 よろしくお願いいたします。
再編成に関して、私も、情報交換、情報共有の場となるということで、賛成させていただきたいと思います。それに加えて、小委員会間での情報共有と、様々な議論を構築するためのセッションをどこかで、総会とは別にできればよいと考えております。
そう申しますのも、例えば今日も議題に上がりました、AIの技術革新の分野での日本の貢献につきましては、情報コミュニケーション分野における専門的な部分、例えば、ウイークAIとストロングAIの相違点などの議論や、革新的な技術の活用についてだけではなく、適正技術をどのように導入していくなど多方面からの議論が重要だと思いますので、他分野との共同開催はよいかと思います。AIの今後の活用というのは、教育分野でも大変注目を浴びています。今年の4月に、ユネスコ教育局のフラッグシッププログラムであるフューチャーズ・オブ・エデュケーション、教育の未来の国際アドバイザリーの会合に参加する機会がありました。1時間半の会合のおよそ半分の時間が教育の提供のモダリティーの話になり、どういう技術を導入していくか、その技術を導入する際の、エクイティーをどの様に考えるか、また、AIを活用していく場合、教師の観点からの利点、留意点をどのように反映させていくのかいう議論が、かなり活発になされました。
やはり文化的な観点、技術的な観点、それに科学的な観点を議論したうえで、教育の分野に取り入れるというのが、今後重要になってくると思いますので、小委員会の編成員および小委員会間で情報交換ができるシステムが構築されると、大変大きなシナジーが生まれるのではないかなと考えております。ありがとうございます。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。そうですね。三つばらばらで、総会で報告を承るという以外に、実質的な議論が相互に深まるような仕組みというのが、全員が出なくても、テーマに応じて、いろいろな人が加わって参加するということができればいいのかなと、聞いていて思いました。ありがとうございます。
ほかに御意見ありますでしょうか。
それでは、議題6、その他のほうですが、事務局から何かございますでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 こちらからはございません。大丈夫です。
【小長谷委員長】 ありがとうございました。
それでは、最後に事務局より、今後の予定についてお知らせいたします。
【植村国際統括官補佐】 本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。
今後の予定ですが、令和2年9月上旬に、第147回日本ユネスコ国内委員会総会を開催する予定となっております。詳細については、追って御連絡させていただきます。
以上です。
【小長谷委員長】 ありがとうございます。総会は人数が多いので、オンラインということになると相当大変なことになります。無事に皆様と直接お会いできることを祈っております。
しかし、コロナのおかげで議論が活性化するというのは確かなことなので、見直しが始まって、世の中を考え直すという、それでユネスコ自体も、そこにあるべき姿を考え直すということが始まっておりますので、これを機会に、いい出口が見つかればと思います。
本日は御多忙の中、御参画いただきまして本当にありがとうございました。
── 了 ──
国際統括官付