日本ユネスコ国内委員会科学小委員会(第7回) 議事録

1.日時

令和5年2月28日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

(委員)
沖委員長、道田委員長代理、大島委員、大谷委員、大野委員、押谷委員、河野委員、小池委員、治部委員、鈴木委員、角南委員、髙木委員、濵口委員、藤田委員、溝内委員、渡邉委員

(事務局)
岡村事務総長(文部科学省国際統括官)、加藤副事務総長(同省国際統括官付国際交渉分析官)、白井事務局次長(同省国際統括官付国際戦略企画官)、堀尾事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、その他関係官

4.議事録

【堀尾国際統括官補佐】  皆様お待たせいたしました。文部科学省国際統括官付の堀尾と申します。本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は前委員長の日比谷委員が昨年11月30日付で退任されましたので、委員長が選任されるまでは道田委員長代理において冒頭の議事進行をお願いしたいと思います。道田委員長代理、よろしくお願いいたします。
【道田委員長代理】  承知しました。
 それでは、最初に事務局の方で定足数の御確認をお願いできますか。
【堀尾国際統括官補佐】  本日は出席の委員が13名で、既に委員の過半数を超えておりますので定足数を満たしております。
 また、本日は委員に加えて、議題2で御報告いただく予定の文部科学省科学技術政策局国際戦略担当の大土井参事官及びユネスコ日本政府代表部、當間参事官に御出席いただくほか、今回の議題に関係の深い省庁や機関の方々も傍聴される予定になっております。
 また、本日は報道及び一般からの傍聴も受け付けておりまして、非公開議題1終了後からYouTube配信にて御覧いただく予定となっております。なお、報道関係者の取材は、共同通信社から取材申込みがありましたので、あらかじめお知らせいたします。
 なお、御発言は議事録として、非公開議題以外はそのままホームページで公開されますので御承知おきください。よろしくお願いいたします。
【道田委員長代理】  以上、御承知おきください。
 それでは、ただいまより第7回科学小委員会を開催いたします。
 改めまして、最初の議題が終わるまで司会進行を務めます、科学小委員会委員長代理を務めております、東京大学大気海洋研究所の道田でございます。どうぞよろしくお願いします。
 議事に先立ちまして、委員及び事務局の異動について御報告をお願いします。
【堀尾国際統括官補佐】  それでは、配付資料の参考資料1を御覧ください。委員の異動につきまして、押谷一委員、治部れんげ委員、溝内良輔委員が昨年12月1日付で任命され、本委員会の委員に就任されております。
 また、事務局の異動については、本年2月1日より大臣官房国際課長として北山浩士、また、1月1日付でユネスコ第三係長として、古舘尚史が着任しておりますので御報告いたします。
【道田委員長代理】  ありがとうございます。それでは、新たに本委員会に就任されました委員の皆様方より、一言ずつ御挨拶をお願いできればと思います。
 それでは、治部委員、よろしくお願いします。
【治部委員】  初めまして、東京工業大学の治部と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私自身は今、東工大の文系教養の部門におります。このユネスコスクール等で扱っているような多様性でありますとか、科学と文化の融合でありますとか、そういったことは授業等でよく取り扱うトピックになります。また、私のバックグラウンドはもともとビジネス媒体の記者だったので、色々なことの告知等に関与をしております。
 ほかの政府の委員の仕事ですと、内閣府の男女共同参画計画の監視専門調査会において、主にジェンダーや多様性の関連の委員や、外務省の国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)の関連委員等を長く務めてまいりました。文科省関連はこれが初めてになるのですけれども、伺いましたところ、ユネスコというのは一般に思われているような世界遺産ということだけではなくて、様々な文化外交の側面も有すると伺っておりますので、それをどのように納税者に的確に伝えていくか、それから、次世代にどんなふうに伝えていくかといったところで主に意見を述べさせていただけたらと思っております。またずっとジェンダー関連の仕事が多かったので、そうではない、ほかの文化、科学の先生方のお話が聞けることを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。
【道田委員長代理】  どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、溝内委員、お願いします。
【溝内委員】  キリンホールディングスの溝内でございます。
 私はキリングループでサステナビリティーの担当役員をさせていただいております。環境問題、気候変動だとか生物多様性、あるいは人権という課題でこれまで何度か経産省ないしは内閣府の研究会に参加させていただいております。今回、ユネスコで皆様にお世話になります。よろしくお願いいたします。
【道田委員長代理】  どうぞよろしくお願いいたします。
 押谷先生につきましては、整いましたら後ほど御挨拶いただくということにいたしまして、先に進めたいと思います。どうもお二人の先生方、ありがとうございます。
 続いて、本日の会議の配付資料について、事務局から御説明をお願いします。
【堀尾国際統括官補佐】  それでは、本日の会議資料といたしまして、メールで送らせていただきました資料については資料1-1から資料1-5、また資料2、そして参考資料を参考資料1から参考資料4を配付させていただいております。もし、お手元に届いていない、欠落している等ございましたら、事務局まで御連絡いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
 
<議題1.科学小委員会の選任【非公開】>
 「ユネスコ活動に関する法律施行令」第八条第4項に基づき、本小委員会所属委員の互選により沖委員が委員長に選出された。 

(傍聴者等の参加)

【沖委員長】  それでは、議事に入りたいと思います。
 委員長に仰せつかりました沖と申します。皆様よろしくお願い申し上げます。
 それでは、岡村国際統括官から一言御挨拶よろしいでしょうか。
【岡村国際統括官】  ありがとうございます。文部科学省の国際統括官の岡村でございます。併せて、日本ユネスコ国内委員会の事務総長を務めさせていただいております。日頃より、ユネスコ活動につきまして、御協力を頂きまして誠にありがとうございます。そして、本日も御多忙の中、第7回科学小委員会の御出席を頂きまして誠にありがとうございます。
 今まで、継続的に委員に就任されている先生方にはもう御案内のことではございますが、今回、新たな委員の方々もお迎えをしておりますので、少々御説明を差し上げたいと思います。この小委員会は、科学の発展及びその知識の共有が、ユネスコ憲章が宣言する国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進する、この前提に立ちまして、科学分野に係る国内外のユネスコ活動を通じた科学的な能力の構築の推進、そして、多様なステークホルダーを巻き込んだ様々なアプローチでの科学的知見の結びつきの強化、これを目標として審議を行うこととなっております。
 具体的には、この小委員会の下に人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画分科会、政府間水文学計画(IHP:Intergovermental Hydrological Programme)分科会、政府間海洋学委員会(IOC:Intergovernmental Oceanographic Commission)分科会における専門的な議論から御報告を頂きながら、ユネスコの科学分野における対応の方向性について御議論を頂いておるものでございます。
 さて、昨今の事情、先生方御案内のように、気候変動をはじめとしました様々な地球規模課題の発生、それから、ロシアによるウクライナ侵略などに象徴される権威主義の台頭など、これまで国際社会が大切にしてきた価値観が揺らぎつつあるところでございます。こうした中で、ユネスコが掲げる理念を再認識するとともに、その役割を見直していくことが求められることから、昨年の後半以降、教育、科学、文化、それぞれの小委員会の御議論を踏まえまして、ユネスコの国内委員会全体でこれからのユネスコの役割、それから、ユネスコ活動の在り方について御議論を頂いてまいりました。
 その報告は昨年の11月末に運営小委員会でまとめられておりまして、本日の資料にもございますが、本日の議題3「これからの時代におけるユネスコ活動の推進について」におきまして、このまとめていただいた論点を参考にしながら科学の活動の視点で更に議論を深めていただきたいと存じます。
 委員の先生方にはユネスコ活動の推進へのより一層の御支援と御協力を賜りますこと、それから、この将来に対しての御議論に対しても闊達な御意見を賜れればと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
【沖委員長】  ありがとうございました。 
 
<議題2.最近の科学分野の動きについて(報告)>
【沖委員長】  それでは、議題2「最近の科学分野における動きについて」に移りたいと思います。
 本議題では科学分野における国際的な動向、ユネスコにおける科学分野の進展、取組、前回の会議が開催されました今年度9月以降の取組等について情報共有することといたします。なお、質疑応答につきましては報告が全部終わった後にまとめてということにさせていただきたいと思います。
 まず、科学分野における全体的な国際協力の状況につきまして、文部科学省科学技術学術政策局国際戦略担当、大土井参事官より御説明いただきます。それでは、資料1-1に基づき大土井参事官、どうぞよろしくお願いいたします。
【大土井参事官】  大土井でございます。どうぞよろしくお願いします。
 まずは、ユネスコの担当というのは文部科学省において大臣官房が担当しておりますが、私が所属している部署は科学技術、研究に関する部分でございまして、私の方からユネスコも含めた国際協力、特に科学の分野の概要を御説明差し上げます。
 JST(Japan Science and Technology Agency:国立研究開発法人科学技術振興機構)のCRDS(Center for Research and Development Strategy:研究開発戦略センター)にいらっしゃる有本上席フェローが作られた絵でございます。国際分野のバイ、マルチの関係にはいろいろなカテゴライズがあります。この図はそれを模式的に示したものでございまして、上がグローバル、下がローカル、左側がアカデミア、右側がビジネスといったプロットを概念的に示したものと理解しています。
 このうち、右の上のオレンジの丸四角に国連、あるいはユネスコ、STI for SDGs(Science,Technology and Innovation for SDGs:SDGs達成のための科学技術イノベーション)フォーラムも含めてあります。これはマルチの枠組み。その右側、日本が主催しております、毎年10月に行っておりますSTSフォーラム(Science and Technology in Society forum:科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)というものがございます。これもマルチの枠組みになります。
 この一番上の左側にありますけれども、Foreign Minister Sci Adviserという外務大臣科学技術顧問に、松本洋一郎先生がなっていらっしゃいますが、それの各国の外務大臣科学顧問のネットワークというものも存在しております。そういった、これもG7でありますが、マルチの枠組みです。
 真ん中の上にG7、G20がございます。御存じのとおり、今年、日本はG7の、G20はインドが議長国になっております。後ほど紹介しますけれども、これに向けた準備を日本側、インド側それぞれ進めているという状況にございます。
 その右下、OECD(Organisation for Economic Cooperation and Development:経済協力開発機構)、ここには科学に関する枠組みは幾つかございます。ここはSTI Policyと書いてございますけれども、このOECDにはCSTP(Committee for Science and Technology Policy:科学技術政策委員会)でありますとか、GSF(Global Science Forum:グローバルサイエンスフォーラム)といった枠組みが存在していることを示しています。
 次に緑色の四角は基本的にマルチではなくて、バイの枠組みになります。こういった国々とのバイ、 2国間の連携協定、連携関係を踏まえつつ、マルチの関係性も維持しながら、日本として国際協力をどういうふうに行っていくかということを考えなければならないと思っております。
 それで、G7、G20は、政府部内あるいは各国の間で調整中でございますので、お示しすることが難しいため、前回のG7とG20、それぞれの結果を御参考まで御紹介させていただければと思っております。
 まず、前回のG7、ドイツでございますけれども、総論にありますとおり、自由、民主主義、自己決定の基本原則に対しロシアが挑戦してきているということを強く非難したということがございました。その上で、大臣コミュニケには大きく四つ記載されてございます。
 一つ目は、自由、インテグリティー、セキュリティーの確保を行うことによって自由で開かれた研究、オープンイノベーションが起きるのだろうということがまず一つ、議題の2は大気中の二酸化炭素、地球温暖化に向けたCDR(Carbon Dioxide Removal:二酸化炭素除去)の取組をみんなで連携しなきゃいけないということが二つ目、三つ目でございますが、生物多様性、気候変動、これに対する相乗的な研究を行う必要があろうと、四つ目はポストコロナの後での世の中での国際連携をどうすべきかということがコミュニケに示されたところでございます。
 同様にG20のインドネシアでございます。こちらもグリーン・ブルーエコノミーを支える生物多様性というのがテーマでございます。右の方、結果概要の真ん中にあります、国際協力、オープンサイエンスが非常に重要であるとまとまったということになっておりますが、現時点で公式になっている記録はまだ出ていないが、議論はこのような内容で行われたということでございます。
 こういったものを踏まえつつ、先ほど紹介したとおりSTSフォーラムは日本が強いイニシアティブで作ったフォーラムで、科学技術のダボス会議と位置付けております。毎年10月の第1日曜日に京都の国際会議場で開かれているものでございまして、現状は小宮山先生が理事長でございますけれど、その前は尾身幸次元財務大臣が理事長を務めておられたNPO法人が主催しているものでございます。
 総理スピーチの概要が(1)番にございますけれども、何しろ強く言われたのは、人材への投資を含めた基礎研究力の強化、あとは同志国間での国際頭脳循環の推進が総理スピーチの概要でございます。
 (2)にございますとおり、文部科学大臣も登壇いたしましたセッションがございました。研究におけるサイロの打破、要は学際的な研究をどうやっていくかということで、永岡文部科学大臣から総合知をしっかり進めていく必要があるということを言わせてもらったところでございます。
 これら、G20、G7、STSフォーラム、それぞれに対して科学の分野でどういったことが言えるかということを検討する必要があるかなと思っております。
 バイもマルチも国際的な会議が動き始めました。現状オープンになっているものでございますけれども、まず、5月にG7の教育大臣会合及び科学技術大臣会合、ここには抜けておりましたが、5月19日から21日に首脳会議も行われます。6月にはSTSフォーラムのASEAN(東南アジア諸国連合)ワークショップ、6月には日ASEAN科技会合、日ASEANの50周年イベントが8月、STSフォーラムが10月にございます。
 あと、バイの関係では、イタリア、スイス、ドイツ、ハンガリー、オランダなどとのバイ会談をそれぞれ開催の予定になっておりまして、マルチ、バイの枠組みで日本として何をPRし、何の協力を求めていくかということを議論する必要があろうかと思っております。
 道田先生も河野理事もいらっしゃるので、その中でIOCについてお話しするのは恐縮ですが、私、前任が海洋地球課長でございましたので、IOCに関しては特にいろいろお世話になりました。ユネスコの枠組みにおきましては、このIOCの枠組みは非常に重要だと思っておりますし、日本が強い分野だと思っておりますので、これはしっかり取り組まなければならない一例かなと思っております。
 次のページもまた飛ばしていただきまして、これまでが基礎情報でございますけれども、文部科学省として何を考えているかということがこのページでございます。昨年3月にまとめました国際展開に関する戦略でございます。後ほど御覧いただければと思いますが、丸の1番から丸の4番にありますのが主立ったアウトプットポイントになります。一つ目はアウトバウンド、インバウンド、国際共同研究を、ジョイント・ディグリーする、博士課程の学生の支援の推進に向けた施策を打っている状況でございます。
 それで、昨年、令和4年度の補正予算で、右上にございます先端国際共同研究推進基金というものをJSTとAMED(Japan Agency for Medical Research and Development:国立研究開発法人日本医療研究開発機構)に作りました。合計五百億円程度の基金でございます。これを生かしながら、なおかつボトムアップの活動も生かしながら国際的な展開をしていこう、そこで頭脳循環を進めていこうというのが物すごく大きな方針になります。比較的トップダウン型でありますのが先ほどの基金、あと、SICORP(Strategic International Collaborative Research Program:戦略的国際共同研究プログラム)というJST事業、あとはSATREPS(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development:地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)というODA(政府開発援助)と組んだ事業、これをトップダウンとして位置付けつつ、国間の連携の中で活用していこうと。一方で、ボトムアップとしまして、科研費の国際先導研究でありますとか、海外特別研究員制度、外国人特別研究員制度、こういうものを使いまして、学術的な支援もしっかりしていこうということが我々の大きな方針になります。
 以降は令和5年度の現時点での文部科学省関係政府予算案の詳細になります。非常に多種多様な事業がございます。私の課が持っております国際的な予算のみならず、こういった取組、各種事業も国際的な視点で捉え直して、ユネスコやOECD等、いろいろなところに活用していかなければならないと思っております。全て対応できているわけではございませんが、是非そういった視点で先生方に御議論いただければと思っております。
 以上でございます。
【沖委員長】  大土井参事官、ありがとうございました。
 それでは続きまして、ユネスコにおける科学分野の取組につきまして、ユネスコ日本政府代表部、當間参事官より御説明よろしくお願いいたします。
【當間参事官】  日頃よりお世話になっています。私は外務省のユネスコの日本政府代表部の科学担当の参事官をしています當間と申します。よろしくお願いします。
 8ページ目のユネスコとはということでございまして、先ほど岡村国際統括官からもお話がございましたけれども、前文を書かせていただいていますけれども、人の心の中に平和の砦を築かなければならないという非常に有名な箇所があり、国際の平和と人類の福祉の促進という目的を持っているということでございます。
 ユネスコはパリに事務局の本部がございます。科学関係では、教育セクター、あるいは文化、あるいはコミュニケーション・情報の分野がございます。自然科学局と、人文・社会科学局、そしてIOC事務局で運営しており、比較的ポーションとしては大きくなっております。今、アフリカが一つの地域的なプライオリティーになっており、アフリカ部が創設をされているということでございます。
 ユネスコ本部で一体何をやっているのかということについて、ユネスコの機能という観点で書かせていただきました。アイデアの実験室、あるいはクリアリングハウスというのがございます。三つ目のこの規範の設定というのが非常に大事でありまして、いろいろな原則、あるいは価値、こういったものをしっかりと規範として設定をしていく、それを各国に使ってもらうという観点から、その下の国際協力の触媒と推進力、あるいは、人が使うわけですから、能力開発といった大きく五つの柱を軸に行っているということでございます。
 ユネスコの中期戦略が2022年から29年までの期間となっており、先ほどの平和というのと持続可能な開発、SDGsは一つの課題になっていますし、優先課題としてはアフリカ、ジェンダー、ユース、我々はSIDS(Small Island Developing States:小島嶼開発途上国)と呼んでいますけれども、島国、こういうところが優先課題になっております。
 更にブレークダウンした事業計画というところで科学が何を位置付けられているのかということでございますけれども、一つは、全ての人に質の高い教育を提供するということで、その中にSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)教育がございます。次に、やはり気候変動が非常に大きな地球規模の課題になっており、ユネスコはその強みを生かして、生物多様性、あるいは水・海洋のマネジメント、あるいは防災・減災の分やでしっかり対応していくことになっております。その次の成果4でございますけれども、オープンサイエンスなど新しい科学の分野の推進について書かれています。
 10ページ目は人文社会科学についてです。成果9を見ていただくと、昨今、技術革新やデジタルといった、新しい技術がどんどん出てきており、これ自体、地球規模課題にとってプラスではありますが、一方で社会への影響もあるので、その辺りの倫理の基準、規範、枠組みの構築について書かれております。
 ユネスコは国連の一つの組織でございますけれども、国連全体として、科学技術やイノベーションはどうなっているのかということに、焦点を当てたいと思います。今年はSDGsにとって非常に重要な、中間年です。国連の水会議、仙台防災枠組み中間レビュー、STIフォーラム、そして、最後にSDGsサミット、この辺りは科学だけではないですが、非常に重要な年です。SDGsの達成については、着実に進捗している項目もございますけれども、むしろ課題としては悪化をしている項目もあって、なかなか簡単ではありません。
 11ページ目でございます。ユネスコの位置付けについて、科学、技術関係では、国連本部、そしてUNCTAD(United Nations Conference on Trade and Development)、国連貿易開発会議がございまして、加えて専門機関のユネスコ、少し細かいのですけれど、国連工業開発機関、FAO(Food and Agriculture Organization:国際連合食糧農業機関)、WHO(World Health Organization:世界保健機関)、WMO(World Meteorological Organization:世界気象機関)があります。これを見ていただきますと、科学、調査、分析、研修所で国連大学がございます。全体のコントロールをするニューヨークの本部と実際の活動を行うという意味ではユネスコの役割は非常に大きく、国連大学が主要なプレーヤーになります。
 では、科学の主要なプレーヤーたるユネスコで一体どういうことを行っているのかということについて説明いたします。世界的な規範ということで、昨今のオープンサイエンスや、科学技術の倫理ということで、最近ですとAIの倫理を策定したところでございます。現状、これを策定して、実際に実行していくという段階にございます。例えばAIについては日本がこの規範を使って、実際にどういう影響があるのかというのをいろいろチェックしながら進めていこうということで、これはアフリカで支援しているパイロット事業をやってございまして、アフリカの国からは大きな感謝を得られているということでございます。
 ちなみにこれはアフリカのためだけと思われている場合もあるかもしれませんけれど、実は、この倫理影響評価に非常に関心を持っているマイクとソフトと協定を結ぶ動きもあり、非常に影響が大きい指針、規範となっています。今、ChatGPT(生成AI)やニューロテクノロジーといった新しい技術がどんどん出てきていますので、そのような分野が今後の課題と聞いているところでございます。
 あとはSDGs、地球規模課題について、科学、技術イノベーションの取組を促進するため、STI for SDGsという取組がございます。これは本部が中心となっているところでございますけれども、ユネスコも重要なプレーヤーとして関わっており、途上国はSDGsと科学については、余りぴんと来ないところもあると思われますので、そういったロードマップのガイドラインを作って、パイロット事業を通じて加盟国にロードマップの支援をしたり、あるいは地域の役割が非常に重要ですので、我が国はSDGs未来都市ということを推進しております。更に、STEM教育も行っております。MAB・ジオパークでございますけれども、SDGsのショーケースと位置付けられてございまして、非常に重要なユネスコの指定プログラムの一つでございます。ジオパークについては細かいのですけれども、本部での課題という意味ではアフリカとか、あるいはSIDS、この優先地域に登録が少ないといったことで、ここの登録を促進するということと、あとはやはり登録後、登録して終了ではなく、いろいろな地球規模の課題、環境課題がございますので、その辺りの研究の充実、マネジメントの強化、あるいはユースの参画、持続可能な観光といった中身を高度化して、より知名度を上げながら前進していくといったことが課題と聞いてございます。
 IHPについては、今6億人以上がまだ水にアクセスできないといった課題があり、これを基に戦争が始まる可能性があるというような、非常に大きな課題でございます。だからこそ国連水会議というのがあるわけでございますけれども、そういった水の管理や水害等の地球規模課題に取り組み、科学的基盤を提供しているということでございます。海洋につきましても、観測システム、データの収集、津波の早期警報装置の分野や、災害リスク削減分野に取り組み、それぞれ水分野、海洋分野と連携をして、水害、渇水、津波、地震といった気候変動によるものとそうではない課題に、科学技術、イノベーションを使って解決の支援を行っております。こちらは今、国連のグテーレス事務総長が、Early Warning for All(すべての人に早期警報システムを)というイニシアティブを行っておりまして、ユネスコもその中で、観測、あるいは予測技術、科学の分野を主に担当しており、こういうところが連携して、地球規模課題に取り組んでおります。
 また、非常に申し上げにくいのですが、日本の存在感というのは低下をしています。アジアでいきますと、やはり中国、あるいは韓国といったところの存在感が非常に強くなってきています。昨日もIHPのビューローがございましたけれども、韓国は数人事務局に送ったりしていますし、中国もオープンサイエンスの部署に人を送り込んだり、あるいは専門家が来たりと、そういった活動をしている一方で、これはユネスコだけではございませんけれども、日本はやはり全体的に内向きになっているということがあり、非常に存在感が低下しているというのを感じざるを得ない状況になってございます。
 今後の議論におきまして、是非我が国の政府、大学、企業が積極的に活動に参画し国益を確保していくと、こういった取組を促進していただきたいと思いますし、地域の皆様でいろいろな取組、創意工夫されているものも、是非世界に提案していただければ非常に有り難いと思ってございますので、よろしくお願いします。
 以上です。
【沖委員長】  當間参事官、どうもありがとうございました。
 続きまして、前回の会議が開催されました昨年9月以降の取組につきまして、資料1-3及び資料1-4に基づき、事務局から御報告よろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  では、資料1-3、今、當間参事官からパリのユネスコ本部及び代表部の観点から御報告を頂いたのですが、日本ユネスコ国内委員会で分科会を行っておりますIOC、IHP、MAB、そして登録事業として協力しております世界ジオパークについて少し補足的に紹介させていただきます。
 まず、IOCでございますが、海洋に関する包括的な政府間委員会ということで、こちら関係省庁と、あとIOC分科会の先生方とともに事業に参画しております。現在IOCでは海洋科学の10年というのを国連とともに進めておりまして、こちらは国内委員会の設立もしております。
 IHPにつきましては、淡水の水資源管理や水害等、地球規模課題の解決に向けた科学的基盤を提供ということで、現在は第9期戦略計画に基づいた取組がされており、日本においてもこちらの戦略計画への積極的な参画を行っているところです。こちらのIHPにつきましては、カテゴリー2センター:水災害リスクマネジメント国際センター、通称ICHARMの設立や、ユネスコチェアとして京都大学、筑波大学が登録されております。
 この二つの今後考えられる取組として、IOCにつきましては海洋科学の10年への積極的な対応や、日本における成果の発信とか、あと、地域枠組みの活動強化、海洋汚染観測隊などへの対応といったところが考えられます。また、IHPにつきましては、国際水文学会と全日本的な対応の促進や外務省、JICA(国際協力機構)等との連携強化といったところがもう少し強化できるのではないかと思います。
 この二つの共通として、地球規模課題への包括的な対応ということで、どちらもそれぞれの専門分野として取り組んではいるのですけれども、やはり課題は分野横断的に取り組んでいく必要もあるということで、分野間、機関間のさらなる連携、情報共有のための仕組みづくりとか、あと、国際プロジェクトに参画する邦人職員、先ほど當間参事官も触れておりましたけれども、もう少し邦人職員や法人研究者、日本人研究者のこういった国際プロジェクトへの参画といったところを強化していってはどうかと考えております。
 次にユネスコエコパークとユネスコ世界ジオパークでございますけれども、ユネスコエコパークは生物多様性の保護と持続可能な自然と人間の共生を目的とした政府間プログラムでございまして、こちらは現在134か国で、日本は10地域が登録されております。こちらは横浜国立大学や金沢大学がユネスコチェアを設立いただいております。ユネスコエコパークの登録自治体で日本ユネスコエコパークネットワークというのを設立し、ネットワーク活動、情報共有をしていただいております。
 ユネスコ世界ジオパークの方は、地質遺産を保護し、自然や地域の文化への理解を深め、教育や地域振興等への活用を目的にした登録事業でございます。日本ジオパーク委員会を日本におけるジオパーク・ナショナル・コミッティとして日本ユネスコ国内委員会で認証し、ユネスコへの申請に係る業務を委託しております。登録自治体及び関心がある自治体によって日本ジオパークネットワークが設立されて、国内のネットワーク活動が推進されているところです。
 今後考えられる取組として、まず、国際的、政策的な動きとの連携をもう少し強化できるのではないかと。また、登録後の各地域における取組の活性化、認知度の向上とか地域創生との関係、連携の観点からの推進と、こちらでも若者の参画促進といったところが考えられて、それぞれこちらのグローバルな取組と地域でのローカルな取組の情報や成果の交換といったところが今後強化していってはどうかと考えております。
 次に、こちらはオープンサイエンスに関する勧告と、人工知能、AIの倫理に関する勧告が一昨年のユネスコ総会で採択されまして、昨年11月に国会報告をさせていただいたところです。こちらはまた資料の方を御覧いただければと思います。
 次に、資料1-4でございますが、こちらは昨年の科学小委員会、9月から今年の1月までに起こったことをまとめさせていただいておりますので、また、資料を御覧いただければと思いますが、こちらのページ18の国連海洋科学の10年で、先ほど申しました国内委員会が今年の2月22日に開催されておりますので、こちらはまた道田委員から補足説明をいただければと思います。
 次に21ページで、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、今年の2月19日から22日に第9回洪水管理国際会議が開催されておりますので、こちらをICHARMの松木委員から後ほど御紹介していただければと思います。
 以上でございます。
【沖委員長】  堀尾補佐、どうもありがとうございました。
 では、ただいま御紹介ありましたとおり、国連海洋科学の10年、日本の国内委員会の取組につきまして、道田委員から補足説明をよろしくお願いいたします。
【道田委員長代理】  ありがとうございます。今の資料の18ページの一番下のところに書いてありますが、国連海洋科学の10年、これは2017年の第72回国連総会において、2021年から2030年を国連海洋科学の10年と宣言して、でもって、海洋科学をベースに社会的課題の解決に結びつけていこうという活動なわけですけれども、各国に推進のための国内委員会を作るようにということが国連海洋科学の10年実施計画に書かれておりまして、それに従って、我が国では2021年の2月、ですから、2021年1月に始まった国連海洋科学の10年の開始直後に、国連海洋科学の10年の日本の国内委員会を発足させて、つい先日、2月22日にオンラインで第4回の国内委員会を開いたところです。
 この国内委員会につきましては、研究者に加えて関係各省庁の課長クラスの方及び内閣府の総合海洋政策推進局事務局長及び岡村統括官にも委員になって議論に参画していただいているところです。また、今日も委員として御参加の角南委員におかれては、この委員会の共同議長として、日本海洋政策学会の坂元会長とともにお二人で共同議長を務めていただいておりますし、河野委員及び私も委員になっているということでございます。
 課題はたくさんありましたけれども、関係各省庁、あるいは研究機関の取組が紹介されて、オールジャパンで取り組もうということで作っている委員会なわけですけれど、各取組に関する情報共有を行うというプラットフォームの機能を十分果たせているかなと思っています。俯瞰して全体像が見えるようにしようということから始めているわけですけれども、最低限そこはやろうということでやっていますが、そこはできているかなと思います。
 今後、この委員会の議論をベースに、更に国連海洋科学の10年に、いかに我が国として貢献していくのかということについて、よりドライビングフォースみたいな形で動ける委員会になれるといいなと思っているところです。
 なお、各国国内委員会は幾つかの国、二十、三十ぐらいだと思いますが、国内委員会が作られておりますけれども、定期的な各国の国内委員会同士の集まりというのがありまして、それに私が参加して、適宜日本の取組等を紹介しているところでございます。いずれにせよ、各国国内委員会等と連携して、世界全体で取り組む課題ですので、今後とも国内委員会の活動を含めて、我々でできることをやっていきたいなと思っているところです。
 以上でございます。
【沖委員長】  道田委員、どうもありがとうございました。
 もう1件、事務局から御紹介ありました、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)の取組につきまして、本日、IHP分科会の松木調査員がオブザーバー参加いただいておりますので、松木IHP分科会委員から補足説明をよろしくお願いいたします。
【松木IHP分科会委員】  ICHARMの松木です。発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 先週終わったところですけれども、第9回洪水管理国際会議、ICFM9というものを開催いたしました。世界から34か国、381人という研究者が集まりまして、非常に盛会裏に、かつ、この時期、一人の病気もなく、事故もなく終わることができました。皆様の御協力に感謝しております。
 ICHARMはユネスコのカテゴリー2センターということもありまして、それから、日本のプレゼンスというつもりもありまして、この会議を主催したところですが、この時期に開催しましたところ、来月、国連水会議が開催されるということ、それから、先ほど少し紹介ありましたけれども、仙台防災枠組の中間レビューが控えていることもありまして、大変多数の関係者に関心を持っていただきました。
 ユネスコ、IHPからも資金及び直接の参加も頂きました。それから、WMO、それから、国連の総会議長にも一部参加いただきました。そのようにグローバルな国際ネットワーキングの形成に一役買えたのではないかと思っております。
 ICFM9の開催につきまして、以上、報告いたします。
【沖委員長】  松木IHP分科会委員、御報告ありがとうございます。
 なお、科学分野の取組状況につきまして、小池委員から民間ユネスコ協会の取組について御報告いただけると伺っておりますので、ここで小池委員から資料1-5に基づきまして御報告よろしくお願いいたします。
【小池委員】  本日は発言の機会を頂き誠にありがとうございます。民間ユネスコから委員が四人来ておりますけれども、私は鎌倉ユネスコ協会の小池と申します。早速ですが、私たちの取組の紹介をさせていただこうと思います。
 私たち民間ユネスコの組織は、全国に約300のユネスコ協会があります。先ほど外務省のユネスコ日本政府代表部の當間参事官から、ユネスコ憲章の前文のことがありました。心の中に平和の砦を築かなければならないと。私たちユネスコ協会は、正にそういうユネスコの理念にのっとって、世界平和を願う「平和の鐘を鳴らそう」という活動とか、あるいは、地域の文化や自然を次世代に守り伝える「絵で伝えよう!わたしの町のたからもの」絵画展、そういった活動など、幅広い活動を草の根でやっております。
 また、全国各地のユネスコ協会は、科学教室の開催とか、あるいはユネスコスクールとの連携にも取り組んでおります。昨年の科学小委員会でも申し上げましたように、こうした取組は、市民の科学的な探求心の醸成とか科学リテラシーの向上に貢献するものと考えています。最近は、ESD(持続可能な開発のための教育)やSDGsの観点に立って、生物多様性の保全とか、あるいは伝統的な地域文化を発掘するような取組も増えてきておりまして、こうした民間ユネスコの活動は、日本ユネスコ国内委員会が提唱してきましたサステナビリティ・サイエンスにも貢献するものと考えております。
 私たちユネスコ協会はこれからも、地域におけるユネスコ運動の担い手として、地域の小学校、中学校、高校、大学、博物館などと連携して、草の根レベルでSDGsの達成に向けた活動を進めていきたいと思っております。
 こうした活動については、昨年9月の科学小委員会でも幾つか事例を紹介させていただきましたが、本日はその後の動きとして、2022年度のブロック研究会、私たちは全国を9つのブロックに分けてそれぞれ研究会を開催しておりますが、その中から、昨年の秋に開催されました中部西ブロックと東北ブロックの研究会で発表がありましたので、その事例を幾つか紹介させていただきたいと思います。
 先ほど言いましたように民間ユネスコからは、私のほか、柏ユネスコ協会の鈴木委員、それから富山ユネスコ協会の髙木委員、そして新しく委員になられました北海道江別ユネスコ協会の押谷一委員、四人が委員を仰せつかっておりますけれども、本日は髙木委員から、この後、中部西ブロック研究会について、その後私から、東北ブロック研究会について報告させていただきます。
 まず、中部西ブロック研究会について、髙木要志男委員、よろしくお願いいたします。
【髙木委員】  よろしくお願いいたします。富山ユネスコ協会の髙木と申します。中部西ブロック活動研究会で、ユネスコ協会が教育施設や他団体と連携を図って取り組んだ事例を二つ御紹介いたします。
 上の段を御覧ください。富山市科学博物館と連携して、ユネスコ教室「星座について学ぼう」を実施しました。左は、学芸員から早見星座盤の仕組みの説明を聞いているところ、真ん中は、子供たちが星と星を線でつないでいるところ、右側は、手作りの星座早見盤を使って、例えばあれがカシオペア座だと言って星座を探しているところです。子供たちはこのワークを通して、非常に星座の世界に引き込まれていくのがよく分かりました。
 次に、下の段の写真を御覧ください。これは、館員がコーディネーターとなりまして、公民館活動として草木染めの体験活動を実施した写真でございます。左は、シソを集めているところ、シソのほかにもヨモギ等も使いました。真ん中は、煮出した染液にクエン酸を加えると、色が変わった、きれいになったと言って歓声が上がっているところです。右は、この後も作業を続けて、水洗いや干すといった作業をした後に完成したTシャツを見せているところです。子供たちは、模様や色とか、こういう変化に大喜びでございます。
 ささやかな取組でございますが、これからもユネスコ教室でのワークショップとか自然体験を通して、子供たちが科学への関心を高め、自ら探求心を培っていく、そういう機会を提供してまいりたいと思います。
 以上でございます。
【小池委員】  髙木委員、ありがとうございました。
 次に、私から、東北ブロックの研究会の模様を紹介させていただこうと思います。スライドにありますけれども、2022年度の東北ブロック研究会は、青森ユネスコ協会が主催しまして、青森大会として2022年10月8日に開催されました。大会のサブテーマは、「縄文文化に学び、持続可能な地域社会を作ろう」ということで、これは2021年に北海道と北東北の縄文遺跡群がユネスコの世界文化遺産に登録されたことを受けて企画されたものと承知しております。
 青森大会ではまず、三内丸山遺跡センター所長の岡田康博様から「縄文遺跡群の世界的価値」と題する基調講演がありました。続いて事例発表として、最初に秋田県の北秋田市教育委員会の榎本剛治様が、「秋田県の縄文遺跡とその活用」と題して、伊勢堂岱遺跡ジュニアボランティアガイドの活動について報告されました。北秋田市では小学校4年生から高校3年生までの約50人がジュニアボランティアガイドとして伊勢堂岱遺跡のPRに取り組んでいるそうです。上の左の写真は、世界遺産に認定されたときにみんなで万歳した写真だそうです。
 次の事例、丸2ですけれども、これは岩手県の一戸町立一戸南小学校子供ガイドの活動です。「ようこそ御所野縄文公園へ」という発表では、一戸南小学校の児童が縄文時代の弓矢の製作にチャレンジしました。縄文時代に利用されていたアカソやカラムシといった草木、アカソやカラムシは麻の一種ですけれども、その茎から取った繊維、あるいはシナノキという木がありますけれども、その樹皮から取った繊維で糸をよって、どの糸が最も遠くまで矢を飛ばすことができるかという実験を行いました。この写真がその様子になります。
 3番目の事例は、青森市立三内小学校、三内西小学校、三内中学校の児童生徒による、「三内丸山遺跡探検隊~三内丸山遺跡の魅力をPRしよう~」という取組です。この三内の中学校区では、小中一貫9年間の総合的な学習の時間を使って、カラムシから取った糸で漁網をつくり、それを使って実際に地引き網をやったそうです。
 北海道、東北、北東北の17か所の縄文遺跡群がユネスコ世界遺産登録になったわけでありますけれども、1万年以上もの長い間、狩猟、漁猟、採集を基盤とした世界的にもまれな定住社会が存在したこと、あるいは遮光器土偶とか様々な考古遺産やサークルストーン、環状の列石、そういった考古遺構が明らかになったわけですけれども、そこで育まれた精緻で複雑な精神文化を伝える類いまれな物証であるということが評価されて、ユネスコの世界文化遺産に登録されたということであります。
 この研究会でおっしゃられたことですけれども、縄文人は温暖化という気候変動にも適応して、そして自然資源を巧みに利用して1万年以上にわたって平和に暮らしていたと考えられているそうです。こうした縄文人の生活文化について、地域の子供たちが専門家とともに学習し、あるいは自らがガイドとなってそれを広めていく、そういう様々な取組は、ESD、あるいはサステナビリティ・サイエンスにも深く結びついているのではないかと私は思っております。今回、この東北ブロックの皆様の発表を見ながら、それをつくづく感じました。
 なお、この発表会の模様はYouTubeで配信されておりますので、時間がありましたら御覧になってください。ここにURLを書いておきましたけれども、インターネットで「ユネスコ協会 青森大会 YouTube」で検索すれば、すぐにヒットします。私からの報告は以上になります。
 民間ユネスコでは、全国各地のユネスコ協会が様々な科学分野の活動に取り組んでおりますので、また折に触れ御紹介したいと思っております。本日はどうもありがとうございました。
【沖委員長】  ただいまの御報告、御説明を受けまして、委員の先生方皆様、御意見、御質問を頂戴できますでしょうか。各分科会に所属されている委員の方やユネスコで開催された会議に参加いただいた委員の方からの補足の説明などもございましたら、どうぞお寄せいただきますようお願いいたします。
 では順番で、まず押谷委員、自己紹介も兼ねてお願いできますでしょうか。
【押谷委員】  私は江別ユネスコ協会の押谷と申します。この12月から初めて参加させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 一つだけ。私、江別ユネスコ協会なのですが、江別を御存じの方もおられると思いますが、札幌市の隣町でございまして、人口が12万人ぐらいの町で中堅の市なのですけれども、四つの大学がございます。そして、江別ユネスコ協会では、この四つの大学と様々な形で交流を続けているところなのですけれども、今日拝見しておりまして、非常に高度な調査研究、あるいはいろいろな協議をされておられると伺っておるのですが、民間ユネスコ協会の役割ということを考えた場合に、それらの課題をより広く小中高の子供たち、あるいは一般の市民の方々にどういうフィードバックができるのかなと考えております。意見交換の場とか、そういうことがどういう場であるのかということについて非常に興味を持っておりますので、何か御示唆をいただければと思っております。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 それでは渡邉委員、お願いいたします。
【渡邉委員】  MAB計画分科会主査を務めております渡邉です。
 資料1-3の2枚目にエコパークとジオパークの取組の状況を紹介していただいています。そのほかに国際的な動きも紹介していただいていますので、その関連で少し大きな動きがありましたので、追加して報告できればと思います。
 生物多様性の関係で、生物多様性条約があって、その15回目のCOP15が昨年12月に開かれました。そこで新しい世界目標が、大分時間がかかってしまいましたけれども、ついに合意・採択をされました。これは2010年に愛知県名古屋市で行われた生物多様性のCOP10で合意した世界目標以来の新しい世界目標になります。昆明・モントリオール生物多様性枠組という名前になりました。COP10の愛知目標では生物多様性の悪化・損失を止めるというのが10年間のミッションでしたけれども、今回の新しい世界目標では、生物多様性の損失を止めるだけではなくて、その流れを逆転させて、生物多様性を回復の軌道に乗せる、いわゆるネイチャーポジティブと呼ばれているものが10年間のミッションになりました。その下に、具体的な23の目標が掲げられましたけれども、その中で注目されているのが、ここに30by30と書いてありますが、3番目の目標になります。これは、なぜ30by30かということなのですけれども、陸域、陸水域、沿岸域、海域、それぞれの生態系の少なくとも30%を保全するという目標になります。その保全する手段として、国立公園といった法制度に基づく保護地域と、そういう保護地域以外の保全エリア、例えば民間や地域の人が協力して里山を保全しているエリア、企業が水源の森として保全しているエリア、そういった保護地域以外の効果的な保全エリアも加えて、30%以上保全するという、これは数値的にも極めて意欲的な目標が合意されました。この達成に当たって、エコパークやジオパークというユネスコの認定地域が深く関わっていける目標になりますので、エコパークやジオパークの地域の現場での取組から、こういった世界として合意された30by30目標への実現のモデル的な取組として、日本の地域の現場から世界に発信していけるような、そのような動きを是非MAB計画分科会でもつくっていけたらなと思っています。
 もう一つ、「国連生態系回復の10年」というのは「国連海洋科学の10年」と同じ2021年からの10年間、国連で決められたものがあります。今回の新しい世界目標23の中にも、劣化した生態系を30%以上再生回復するという目標も位置付けられました。生態系を回復していくというのも非常に重要なテーマとして挙げられたということになります。ということで、「国連生態系回復の10年」、「国連海洋科学の10年」との連携、あるいはエコパークやジオパークの取組との連携を通じて、日本の現場からも生態系回復に向けて世界に発信していけるような動きを是非作っていきたいと思っています。
 以上、補足させていただきました。ありがとうございます。
【沖委員長】  大事な情報提供どうもありがとうございました。
 河野委員、お願いいたします。
【河野委員】  海洋研究開発機構の河野です。私、冒頭で當間参事官が御発言になった、国際的なプレゼンスが減少していると言わざるを得ないということを非常に気にしておりまして、実は科学技術学術審議会の中に海洋開発分科会というのがあるのですが、その提言が出ています。その中でも、海洋観測について議論しているときに、我が国の国際社会におけるプレゼンスを向上させることを目指して、国際委員会、国際機関等への日本からの推薦や派遣を強化することが必要というふうにうたわれているのです。海洋関係者の多くはこれが重要だと考えているのですが、ありていに言って、国連機関、あるいは国際委員会の場で、役員あるいはセコンドメントとして働いている日本人の数が大きな問題なのでしょうか。
【沖委員長】  當間参事官、よろしければコメントいただけますでしょうか。御質問と受け止めました。
【當間参事官】  ありがとうございます。数が問題ということよりも、政府全体として、国際機関になるべく邦人を送りましょうねという動きがございます。これはユネスコだけではなくて、この前もUNIDO(United Nations Industrial Development Organization:国際連合工業開発機関)の人とか、あるいは世界銀行の人とも議論したのですけれど、そこで働く日本人の方というのは、いわゆる科学技術だったり、そういうところはやはり少ないという現状があるようでございます。それによって何が問題かというと、例えば規範をつくったり、あるいはそこでプロジェクトを行うことで世界の地域に出かけていったり、要は国連バッジを持って、そこで行うときにやはり日本のプレゼンスがないと、どうしても日本のよさとかそういうところで伝わっていく日本人のイメージがどんどん薄くなってしまうというのもありますし、それが、ひいては、大学間交流だったり、あるいは民間の輸出とかそういったことにも影響しているのかなという観点から、国益を確保する観点から本当にこれでいいのかと、そういう問題意識を持っているということでございます。
【河野委員】  ありがとうございます。もし科学者にそういうところで何らかの役割を果たさせたいと思うのであれば、そういう活動も学術的な成果と並ぶぐらい重要だという雰囲気を醸成しないと、そういうところに行くよりは自分の学術の方のキャリアを作った方がいいという雰囲気になりがちで、それが何となく国際舞台の場で活躍する人材を減らしているような気が少しいたします。コメントでした。
【沖委員長】  大事な議論をありがとうございました。次の議題にも関わるかと思いますので、まだ御質問、御意見を頂戴できるかもしれませんが、次の意見交換のところでよろしくお願いしたいと思います。
 
<議題3.これからの時代におけるユネスコ活動の推進について(意見交換)>
【沖委員長】  続きまして、議題の3、これからの時代におけるユネスコ活動の推進についてに移りたいと思います。前回、9月の会議におきまして、民主主義、基本的人権、多様性の尊重、地球環境の保存といった普遍的価値を全ての国や人々が共有するとともに、一人一人が、また全ての国がこうした様々な課題を自分事として考え、行動を変容していくことが求められる中、ユネスコの理念を推進していくために、本小委員会の役割について御意見を頂きました。これらを踏まえまして、運営小委員会において整理された論点につきまして、事務局から説明をよろしくお願いいたします。
【白井国際戦略企画官】  国際戦略企画官の白井でございます。よろしくお願いします。
 今、沖先生から御紹介いただきましたけれども、今御覧いただいている資料は論点整理ということで、11月末に運営委員会の方でまとめていただいたものでございます。これを基に、今回新しい委員も加わっていただいていますので、またこれをブラッシュアップしていければと考えてございます。
 大きく二つの論点がございます。まず初めに、新しい時代におけるユネスコの理念と役割ということで、ウクライナの問題も含めてですけれども、今、国際社会が非常に大きく揺れ動いていると、地球温暖化の問題等もございます。そういった中で、教育・科学・文化を通じて平和や持続可能な社会の構築に貢献するというのが本来のユネスコの理念でございましたけれども、それを再認識するとともに、ではユネスコが今行っている活動等がそれに見合ったものになっているのかどうか、あるいはどうしていったらいいのかということについての御議論を頂きたいというのが最初の論点になります。
 二つ目の、時代に即したユネスコ活動の方向性というところ以降が、主に国内のことを念頭に置いてございます。国内では先ほど御発表いただいたユネスコ協会をはじめとして多くの方々がユネスコ活動に関わられていらっしゃいますけれども、まず丸1、新しい価値やルールの提案と議論の牽引とともに日本の積極的・効果的な貢献をしていくというところでございます。特に、當間参事官のお話にもありましたけれども、日本から積極的に新しい価値やルール、規範を設定するといったことを提案してユネスコの議論を牽引していったらどうか、例えば特にこれからフォーカスされるのは健康や食料、エネルギーといったものは問題があるのではないかという点が一つ目です。
 実際、例えばこれまでにも、教育分野のESDもそうですし、また海洋とか防災とか、日本が得意としている点、あるいは実際日本から提案して受け入れられたものもございます。こういったことを踏まえながら、より積極的・効果的な貢献を行っていってはどうでしょうか。またその際に、現在、次世代ユネスコ国内委員会という名称で、若手の方々、ユースの方々の意見を取り入れた形でユネスコ活動を進めようとしており、活動を活性化していくとともに若者世代にも広がりを目指していくという点がございます。
 また、4点目も當間参事官からお話がありましたけれども、ユネスコ事務局における日本人職員の方々の活躍を後押ししたりとか、あるいは様々な会議体における日本の研究者の方々であったり、日本から代表で行っている方を御支援して日本のプレゼンス向上を検討するというようなこともあろうかと思います。
 若者についても、最近ユネスコの会議に出ますと、若者の声をきちんと聞いたらどうかということが国に対しても問われるようになっておりますので、日本として、こういった国の様々な国際会議に出て発言できるような若者の方々を育成していくというのも重要な論点かと存じます。
 続いて丸2、多様な主体によるグローバル及びローカルなネットワークの重層化等を通じた地域の活性化という点でございます。ユネスコ活動に今多くの方々が関わっていらっしゃっておりますけれども、よりこれまで以上に多様な主体・年代の方に関わっていただくことで、活動内容をより充実させていくということが課題かと存じます。
 特に、様々なユネスコ登録事業というものがございます。エコパーク、ジオパークもそうですけれども、これが単に登録をして終わりということではなくて、それがどういうふうに発展しているのかといったことについて優良事例の収集・展開を行っていったらどうかという点が2点目でございます。
 また若者の話になりますけれども、多くの方々がユネスコで経験をして、例えばインターンシップだったり、そういった経験をされた方がまた地域に戻っていって、例えばエコパークの活動に携わったりということによって、自治体とユネスコがつながる、あるいは自治体と企業や大学等が横連携、横展開していくといったことも考えられないのかということも提案されております。
 また、企業でも今SDGsに関する活動が非常に活発になっておりますけれども、こういったものと連携していくということも重要な論点かと存じます。
 最後、丸3、ユネスコ活動に関する広報・普及戦略の強化・発信の支援という点です。現在、ユネスコ未来共創プラットフォーム事業というものを文部科学省が行っておりまして、ポータルサイトなどもかなり充実したものになってございます。そこで若者も含めた意見交換や情報発信、YouTubeなども含めて、様々な情報発信をしているような状況がございます。こういったものを活用しながら、ユネスコスクールなどで若者たちも様々活動をされていますので、広報・普及のターゲットを絞り込んでいったり、メディアを活用することでこれまで以上にユネスコ活動に御理解を頂きたいということで、更にアピールを進めてはどうかといった点が三つ目になります。
 簡単でございますが、こちらからの紹介は以上でございます。また、資料2の方では、先ほど申し上げたことをポンチ絵として概要をまとめてございます。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 ここからは、皆様から是非いろいろ、今の御紹介がありました論点につきまして、あるいは先ほどの論点につきまして、御意見を頂戴したいと思います。
 それでは、治部委員お願いいたします。
【治部委員】  今、お話のありましたユースのところについて少し意見を述べたいのですが、私は主に今、ジェンダーと政策の分野の仕事をしておりまして、その分野でも必ずユースの意見を聞くようにということは言われております。そのときに、やはりすごくネックだなと思いますのは、日本にも自分の意見をしっかり言える方、ジェンダーの分野でも意識がある方が増えてはいるのですけれども、皆様御存じのとおり中等教育までで英語とか日本語以外の言語で自分の意見を言える人がすごく少ないということになってきます。私は今、東工大で教えていまして、みんなとても優秀で数学はとても得意なのですが、英語で何かをというと、静まり返ってしまうというような状況があります。これは中等教育までで結構英語に時間は割いているので、日本語以外の言語で自分の考えを言う、自分の関心のあるような分野について何かを言えるような教育がないと結構厳しいのかなというのが現場を見ているところの感覚です。
 ただ一方で、帰国子女や、何か特別な教育を受けている私立であるとか、そういう一部のエリートの子供だけがこういったユネスコ活動等々にアクセスできたりするというのはインクルーシブではないということがあります。先ほど私、お聞きしていてとてもインプレスされたのが、地域の活動をされているということだったので、やはり科学に関心を持つような子供たちを取り込んでいくという、地域活動の中にうまくこれが取り込めればなと思います。
 もう1点、日本のプレゼンスのことで言いますと、多分G7とG20で議論できることが違っているのではないかなと思います。ジェンダーでも、G7ではLGBTとかバイオレンスの話をするのですが、G20ではほぼ扱えないという状況があります。例えば、科学技術分野でG7では扱えるのだけれども、G20では扱えていないようなことがあるとしたら、これは多分、日本が自由民主主義、法の支配、これの価値を共有するようなところでリードして扱うべきことになってくるので、何となく日本が今後力を入れておくべきことかなと思いました。あと、先ほどの河野先生の御意見はすごく興味深くお聞きしました。
 以上です。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 では溝内委員、お願いいたします。
【溝内委員】  私は生物多様性の研究を促進していただきたいと考えており、日本から新しい価値観を海外に発信する一つのコンセプトとして里山というのがあると思います。これは名古屋で開催したCOP10から日本政府が主張しておりまして、一応そのイニシアティブみたいなものが国際的にできてはいるのですけれど、ただあまり動いていないと。私は昨年の年末にCOP15、弊社のワイナリーがあるカナダのモントリオールに行ってきました。ヴィンヤードでの生物多様性の取組について、里山コンセプトは効くよということを、統計を取って科学的に立証して発表したのですけれども、ヨーロッパの方には、人手が入って生物多様性が持続できるということが、なかなか伝わりません。人手が入るイコール、プランテーション、モノカルチャーみたいなイメージをお持ちで、それは人手が入らない方がいいだろうという話になるわけです。
 しかし、田んぼだとか畑だとか農産物をつくるところはもう既に人手が入っているわけで、そこでどうやって生物多様性を回復していくのか、そのためのコンセプトとして里山が非常に有効だということが実感的に分かっているにもかかわらず、実はその実証研究が物すごく少なく、英語になっている論文も物すごく少ないという実態がございます。これは日本の地方に行けばたくさんあるわけで、それをしっかりと統計を取って、データを取って論文にし、英語にして海外に発信する、そのような科学的なバックアップがないと、良い活動もなかなか通用しないと感じますので、日本全国を挙げて取り組む活動の一つとして、里山コンセプトを科学的に立証していく、統計をしっかり取っていくということを御検討いただければということで発言させていただきました。
 以上でございます。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 それでは髙木委員、よろしくお願いいたします。
【髙木委員】  今回の資料を頂いて、私自身が十分認識していなかったことの中に、ユネスコチェアがございました。目に留めたのは、26ページの金沢大学のユネスコチェア、それから先ほどの御説明の中にもユネスコチェアについて様々な話題が上がりました。
 このユネスコチェアのことで、例えばユネスコ未来共創プラットフォーム事業として、2月15日にユネスコウィークということで、国際ウェビナーが二日目にありましたけれども、ここで金沢大学のママードウァ・アイーダ准教授が、「世代間学習のためユネスコエコパークとジオパークの融合」ということで、お話がありました。ユネスコエコパーク、白山は石川県だけではなくて4県にまたがっているものですから、私は富山にいるのですけれども、非常に身近に感じていまして、この中身、金沢大学の研究なのですけれども、世代間学習ということで、また先ほど来ありました民間のユネスコ活動としても、しっかりとこういったことに関心を持って、例えばフォーラムなりそういうものがありましたら是非参加したり、逆に、私たち民間のユネスコがどういうことができるのかなということにつきましても、今回、非常に関心高く聞いておりました。
 以上でございます。質問ではなくて意見ということでございます。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 大野委員、お願いいたします。
【大野委員】  すばらしい御発表、事例紹介ありがとうございます。
 私はジオパークで仕事をしておりまして、基本的にはジオパークの委員、あるいは審査に関わる仕事もさせていただいております。今回のお話の中で、国際的な部分に関する日本のビジビリティーが低いということが結構テーマになっているような気がしておりまして、それに対してジオパークも何とか微々たる貢献ができないかということで活動しております。
 幾つか御紹介すると、例えばジオパークに関しては、登録が終わりではなくて、その後の活動の質を担保していく必要があります。これにつきましては、実はジオパークは4年に1回再審査という仕組みがありまして、その審査を通じてその地域の持続的な活動の品質のチェックとか、あるいはジオパークのクライテリアに抵触している活動が行われていないかということがチェックされております。ですので、ジオパークに関しては、持続的な形での更新制度というものが比較的機能しているような気がしております。
 その中で、特に教育事業に関してはどこのジオパークも非常にすばらしい取組をしておりまして、中には、ジオパークの中にある高校生が国際会議の場で英語でプレゼンテーションするということが最近出始めました。ジオパークの活動を始めて今年で15年ほどになりますが、国際的な形で自分たちの地域の取組を英語で話すという人材も出始めてきていますので、そこは一つの成果が見えてきたのかなという気がいたします。
 あともう一つ、今回の資料の28ページ目に、毎年1回ジオパークで全国大会を行っておりますが、そこで初めてユースセッションというものが行われたのですけれど、実は私がそのコーディネートをさせていただきました。このユースセッションの中では、ジオパークのエリアで活動している高校生同士を集めて、互いの事例の共有や地域資源をどう未来に持続的な形で利用するかというディスカッションをしたのですけれども、そういう中で自分たちの地域のすばらしさを、よその地域を見ることで知るというチャンスをつくらせてもらいました。またそういう機会があるといいねという声も頂いておりまして、一応、ネットワークの中での形はつくったのではないかと思っています。行く行くは、このユースセッションに参加した高校生が、ユネスコ世界ジオパークの中でもユースセッションがあるのですが、そのフォーラムの場で英語で発表できるような人材を輩出できればと考えております。実際、昨年、インドネシアで行われた世界ジオパークネットワークのユースフォーラムで、初めて日本から一人、英語で日本のジオパークのプレゼンテーションをしたようですので、そういったところに人材が輩出できるような取組をジオパークの中でも進めていければと考えております。
 以上、私のコメントになりました。ありがとうございます。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 それでは、藤田委員、いかがでしょうか。
【藤田委員】  ユネスコの中で科学分野に明るい若手人材がもっと増えることによって、プレゼンスを高めて国益につながればというお話だったかなと思っておりまして、非常に重要な話で関心を持って聞いておりました。
 私は科学の研究機関に二つ所属しておりますので、文系の研究者ですけれども、たくさんサイエンティストに囲まれて日々仕事をしております。そういった中で、例えば、科学に詳しいユネスコの職員がどんな仕事をしているかを私たちは想像ができません。科学者はたくさんいますが、日本の大学でポストが必ずあるとは限らなくて、研究をしている間に、どうも研究でやっていくのは向いていないかもしれないと考える研究者、若手の人もたくさんいて、そういった人がいろいろなセカンドキャリアを考えて、研究機関から旅立って活躍していくという姿を幾つか見ております。なので、例えばなのですけれども、ユネスコで科学分野に明るい日本人の方がどういった仕事をしていて、それが職場でどういった魅力的なやりがいがあって、頑張ってきた研究の実績、経験といったものがどのように生かせるのかという、何かそういったものを聞く機会があれば、若手のサイエンティストの中には、今後のキャリアとしてそういったところに行けるのではないかと思う人もいるのではないでしょうか。
 もちろん、英語については大きなチャレンジであることは私自身も研究者として日々苦しく思っているところであるのですけれども、科学の分野の若手研究者は、若い頃から留学経験があったり、海外での発表経験があったり、海外とのゲストのやり取りの経験があったりということで、英語の実地訓練というもの、結構経験を持っている人が少なくないという印象を持っています。なので、そういった若手の研究者で、この先どうしていこうと考えているような人たちに、何か魅力的な職場としてアピールできるような場があると、若手にとっても非常にうれしいのではないかなと思います。
 以上です。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 濵口委員、いかがでしょうか。
【濵口委員】  日本ユネスコ国内委員会委員長の濵口です。皆様のお話を聞いていて、いろいろ考えておられると思いますけれど、やはり今一番必要なのは、若手の露出をいかにシステミックに行うかということだと思っています。それで、全体としても、地方自治体とか地方の各地域のユネスコ委員会の方々から推薦を受けた人を何らかの形で送れるようにしないかというような議論は今少し進んでいるところであります。
 一方で、先ほどもお話が出ていましたけれども、研究をしている方がセカンドキャリアとして迷いを持っておられる、ほかの道はないかと考えている方は結構います。私はJSTの理事長をこの3月までやっていましたが、そういう方々が、ポスドク経験者がJSTにも来ます。ファンディングのマネジメントをやられると、やはり研究現場をよく分かっているので、大分質に厚みが出てくるという実感もありました。ですから、そういう方々をどこかで安定的に雇用できるような場があれば、かなりパワフルに活動できるような人が育つだろうという実感はしています。これをどう形にしていくかというのは大きな課題なのですけれども、是非いろいろ議論させていただきたいなと思っていますので、引き続き、御意見を賜れればと思います。どうもありがとうございます。
【沖委員長】  ありがとうございます。私、個人的には、本省も含めて研究予算を扱う方は全部Ph.D(博士号)ホルダーにすべきだと思っていますけれども。
【濵口委員】  同感ですね。
【沖委員長】  是非長期的にはそうしていただければという気がします。
 角南委員、お願いできますでしょうか。
【角南委員】  世界において日本のプレゼンスの話がやはり一番大きな課題で、私もある私立大学の理工系の学生1年生を全部集めて講義しているところで、科学技術外交というのをやっているのですけれども、意外と私の話した後に、自分のキャリアを考える上で科学技術外交に関われるような科学者になりたい、どうしたらいいのですかと学生が聞きにくるのですね。若い、1年生ぐらいの学生なので、研究者というのはこれから考えるのだと思うのですが、非常にそういうキャリアがあるのだ、僕は半分外交官をやったらどうかとか、もちろんそれは研究者になった上で外交官をやったらどうかというようなことを言っているのですけれども。だから、そういうニーズというか、若い子たちには、今こういう国際社会がいろいろな科学技術に関しての課題を抱えているのは分かっているし関心もあるので、こういう人たちがうまくキャリアにつなげていくような仕組みを本気で、政府の中あるいは我々の中でも議論をしてやっていくというのが多分必要なのかもしれない。先ほど、沖先生の、全員Ph.Dにするというのも一つのアイデアだと思うのですけれども、公務員の採用もそうですし、それからJPO(Junior Professional Officer:ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)のような国連職員に行くところは全部理系の、半分は理系枠にするとか、何かそういう仕組みを考える時期に来ているのかなと思いました。
 あと、「国連海洋科学の10年」で道田先生の話もありましたし、ICHARMの松木委員もいらっしゃるので、海と水と防災と里海、里山、とにかく総合力がそのままトータルでやはりプレゼンスを高めるような科学技術外交への展開の道を考えていくと、ポテンシャルはまだまだ日本にあるのではないかなと思っています。
 以上です。ありがとうございました。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 それでは大谷委員、お願いできますでしょうか。
【大谷委員】  本日の御報告の中に、AI、そしてAI倫理の話題が何度か上がりました。そして、今回の論点整理のところで、新しい時代における、そして時代に即したというキーワードを考えますと、やはりAI技術の発展というところは少し考慮しなければいけないと考えております。
 どうしても研究者ですと、自分が掲げた目的に応じて技術を発展させるというところになりがちですが、その技術が問題になるときというのは、大体ユーザー側が想定しない使用をするということが多いです。ユネスコとしては、より最先端の技術を社会に活用していくというところで、技術者とユーザーの接点の場を設ける、あるいは、何か想定していないような問題が起こったときにフットワーク軽く動けるような仕組みが必要なのではないかと考えております。
 以上です。ありがとうございました。
【沖委員長】  ありがとうございます。
  では小池委員、もしありましたらお願いできますでしょうか。
【小池委員】  皆様から非常に有益なというか、すごく勉強になるお話をたくさんいただけてありがとうございます。
 先端で科学技術イノベーションに取り組んでいらっしゃる先生方には是非頑張ってほしいと思いますし、若手も含めて、是非科学技術イノベーションの分野で日本のプレゼンスを高めていただきたいと思うのですけれども、私、現在、民間ユネスコに身を置いて取り組んでいると、草の根のレベルでは科学に対する関心というのは実はそれほど高くなっていないのではないかという懸念が少しあります。科学を身近なものとしてなかなか感じられないということがあるのではないかと。
 そういうときに、先ほど日本の強みというふうにおっしゃっておられましたけれども、里山も里海もそうですけれども、ある意味では、これは日本が世界に対して強く発信できる自然生態系と協調した持続可能なライフスタイルなのではないかと思うのです。やはり地域の中で実践していかないとなかなかそのことに気づかないし、まして、そこに科学を持ち込もうというのも、例えば大学の先生方はお忙しくて、地域のところで市民の皆様と一緒になって研究とか実験をやってみようというのはなかなか難しいのだろうという気がするのですね。ですから、大学の研究もそうなのですが、もっと地域に軸足を置いて、地域の中でいろいろやってみるということを是非進めていただきたいなと思います。
 そういうときに、先ほど若い方、ユースについて、なかなか地域に入っていけないというような話もあったと思うのです。そういう点では、私たち民間のユネスコも、ユネスコがどういうことをやっているかということについて若い人に経験してもらう上での一番ハードルの低いゲートウェイになれたらいいなと思っていまして、それは先ほどの事例のところで報告した科学教室なんかもそうですよね。ですから、子供の頃から科学に親しむと同時に日本の良さみたいなことを是非科学的に追求していくというような方向で進んでいっていただけたらうれしいなと思う次第です。ありがとうございます。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 押谷委員、ございますでしょうか。
【押谷委員】  ただいま小池委員がおっしゃっていたような形で、民間ユネスコ運動のレベルでも、各種、様々な高度な御研究を平たくしていきたいと思っているのですが、インタープリターといいましょうか、そのような科学分野の高度な分野を是非読み砕くための形がとれていければなと思っております。そういう意味で、先ほども御紹介していただきましたけれども、民間ユネスコ協会も民間のユネスコ運動を様々な形で行っておりますので、様々な形でコミットさせていただければと思っております。正に、非常に高度な課題が山積している世の中でございますけれども、実際に動かすのはこれからの若い世代、それから一般の市民であるという立場に立っていきたいと思っておりますので、協働あるいは連携ということがキーワードになってございますので、今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。
 以上です。どうもありがとうございました。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 道田委員、渡邉委員にそれぞれお話しいただければと思いますが、どちらからでもよろしくお願いいたします。
【道田委員長代理】  では、短く2点ほど。
 まず、皆様のお話をお聞きして、里海の話も里山の話もそうですけれど、せっかく複数の科学関係の方々がここの場に集まっているので、分野間連携の強化のことを、「国連海洋科学の10年」及び「生態系回復の10年」を進めている間に是非できればいいなと思うのですよね。IOC、政府間海洋学委員会の事務局の方とも話をして、そういったことを行う必要あるよねということは賛成してくださるのですけれど、具体的に動くかというとなかなか、リソースの問題もありなかなか動かない面もありますが、ここは日本の強みかもしれないので、むしろ我々の側から何かちょっとした複合領域の意見交換会みたいなのを動かしてみるとかいうようなことも具体的な可能性としてあるのではないかなと思うのが1点。
 もう1点は、先ほど来幾つかお話が出ている、身近な科学という話があります。私は現在、漂着物学会という学会の会長を務めておりまして、学術雑誌も出している一応学術団体なのですけれど、会員の恐らく3分の2ぐらいは市民の方々です。浜歩きをしていろいろなものを見つけて博物学的な楽しみを見いだす方であるとか、あるいは昨今問題のプラスチック汚染が海岸にどういう影響を与えるかを市民の目線で研究している方々も含めて、そういったユニークな学会があって、身近な科学の入り口としては、少しながらですが貢献できているのかなと思います。このような活動を私は行っていますので、更に進めて、科学を身近にということにも貢献してまいりたいと思います。
 以上です。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 渡邉委員の後に、河野委員も最後もし付け加えるがことございましたらよろしくお願いいたします。
 では、まず渡邉委員、お願いいたします。
【渡邉委員】  溝内委員、そして小池委員から、里山、里海コンセプトという御指摘を頂きました。ありがとうございました。
 私が先ほど申し上げた30by30の実現をしていく上で、行政的な自然を守るだけではなくて、人の暮らしや営みがある場所での保全というのがとても重要なテーマになってきています。そういう意味で、この里山、里海コンセプトをどう生かしていくか、すごく大事な点だと思いました。そして、そのモデルを提供する取組としてエコパークというものを位置付けていくことが大事だなと思いました。
 それから髙木委員から、金沢大学のユネスコチェアの世代間学習という御指摘を頂きました。この舞台になっているのが白山のエコパークということで、エコパークも、大学が関わって、そして学生が関わって、ユースの参加する場を広げようという動きが活発化してきています。先ほど大野委員からジオパークでもそういう動きが出てきたと。このエコパークやジオパークというのはグローバルな動きとローカルな動きをつなぐプラットフォームの役割を持っているのではないかなと思います。こういう具体的な現場のプラットフォームをユースの参画の場としてうまく生かしていくこともこれから大事だなと思いました。
 道田委員から指摘のあった生物多様性、海、水の分野間連携、是非また具体的な動きをつくっていきたいと思います。よろしくお願いします。
【沖委員長】  ありがとうございます。
 では河野委員、最後お願いいたします。
【河野委員】  最後というのはなかなか荷が重いですけれども、お話を伺っていて、私の場合、理系の話ですけれども、たとえ学位を取ったとはいえ、アカデミア以外にも非常に価値のある活躍の場があるのだということをなるべく若年層に示せるような活動がユネスコを通じてできると、ひょっとすると今の理系離れも、あるいは国際的なプレゼンス向上のための外国で働く日本人という数も増やしていけるのかなと思いました。長く時間がかかると思いますけれど、なるべくそういった方向にユネスコの活動を持っていけると、きっと将来は、代表部にいらっしゃる方が日本のプレゼンスが少なくて困っていますと言わなくて済むような時代が来るのかもしれないと感じています。ありがとうございました。
【沖委員長】  ありがとうございました。本日、皆様方から頂きました御意見につきましては、事務局で整理いただきたいと思います。
 
<議題4.その他>
【沖委員長】  最後に、議題4、その他として何かございますでしょうか。
 では、一言よろしいでしょうか。この科学小委員会では、先端的な研究をされている方と地域で活動されている方がいて、なぜこういう構成なのかなというのを少し考えていました。本日の話を聞き、やはり、次世代の科学を担って国際社会に出てそして世界の平和に貢献する人材を育てるのだ、そのためには、先端科学の姿と、それから地域で科学の面白さ、そして自然の面白さ、ただ科学というのは広く言いますと人文社会科学も含んで、自然科学だけではない、人文社会科学の方も含めて博士課程に進む人材を増やさないといけないと思いました。日本だけが低学歴化しているという統計が出てしまっておりますので、必ずしもユネスコ活動につながらなくてもそういう人材を生んでいくというのが、私たち科学小委員会からのいろいろな知恵を絞る必要性かなと、本日の話を聞いていて思いました。
 では、事務局にお返しいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  本日はお忙しい中御出席いただきまして、また、貴重な御意見をたくさん頂きまして、ありがとうございます。
 今後の予定ですが、既に御案内しておりますとおり、来週3月6日月曜日15時から17時半までの間で、第152回日本ユネスコ国内委員会総会を開催することとなっております。本日の科学小委員会での御議論については、総会で沖委員長より御報告いただく予定になっておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【沖委員長】  それでは、これで閉会といたします。皆様方、御出席いただきまして、ありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
 

―― 了 ――

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